朕は、枢密顧問の諮詢を経て、帝國議会の協賛を経た会計檢査院法を改正する法律を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十二年四月十八日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第七十三号
会計檢査院法目次
第一章
組織
第一節
総則
第二節
檢査官
第三節
檢査官会議
第四節
事務総局
第二章
権限
第一節
総制
第二節
檢査の範囲
第三節
檢査の方法
第四節
檢査報告
第五節
会計事務職員の責任
第六節
雜則
第三章
会計檢査院規則
会計檢査院法
第一章 組織
第一節 総則
第一條 会計檢査院は、内閣に対し独立の地位を有する。
第二條 会計檢査院は、三人の檢査官を以て構成する檢査官会議と事務総局を以てこれを組織する。
第三條 会計檢査院の長は、檢査官のうちから互選した者について、内閣においてこれを命ずる。
第二節 檢査官
第四條 檢査官は、両議院の同意を経て、内閣がこれを任命する。
檢査官の任命について、衆議院が同意して参議院が同意しない場合においては、日本國憲法第六十七條第二項の場合の例により、衆議院の同意を以て両議院の同意とする。
檢査官の任免は、天皇がこれを認証する。
檢査官は、年額五万円の俸給を受ける。
第五條 檢査官の任期は、七年とし、一回に限り再任されることができる。
檢査官が任期中に欠けたときは、後任の檢査官は、前任者の残任期間在任する。
檢査官は、満六十五才に達したときは、退官する。
第六條 檢査官は、他の檢査官の合議により、心身の故障のため職務の執行ができないと決定され、又は職務上の義務に違反する事実があると決定された場合において、両議院の議決があつたときは、退官する。
第四條第二項の規定は、前項の場合に、これを準用する。
第七條 檢査官は、刑事裁判により禁錮以上の刑に処せられたときは、その官を失う。
第八條 檢査官は、前二條の場合を除いては、その意に反してその官を失うことがない。
第九條 檢査官は、他の官を兼ね、又は國会議員、若しくは地方公共團体の吏員若しくは議会の議員となることができない。
第三節 檢査官会議
第十條 檢査官会議の議長は、院長を以て、これに充てる。
第十一條 左の事項は、檢査官会議でこれを決する。
一 第三十八條の規定による会計檢査院規則の制定又は改廃
二 第二十九條の規定による檢査報告
三 第二十三條の規定による檢査を受けるものの決定
四 第二十四條の規定による計算証明に関する事項
五 第三十一條の規定による処分の要求
六 第三十二條の規定による出納職員の檢定
七 第三十五條の規定による審査決定
八 第三十六條の規定による意見の表示又は処置の要求
九 第三十七條の規定による意見の表示
第四節 事務総局
第十二條 事務総局は、檢査官会議の指揮監督の下に、庶務並びに檢査及び審査の事務を掌る。
事務総局に官房及び左の四局を置く。
檢査第一局
檢査第二局
檢査第三局
檢査第四局
官房及び各局の事務の分掌及び分課は、会計檢査院規則の定めるところによる。
第十三條 事務総局に、事務総長一人、事務総局次長一人、祕書官、事務官及び技官を置く。
事務総長及び次長は、一級とし、祕書官は二級、事務官は一級、二級又は三級、技官は二級又は三級とする。
一級事務官は專任十一人とする。
第十四條 一級官吏は、檢査官の合議で決するところにより、内閣でその任免、進退を行う。
事務総長及び次長については、官吏の任用敍級の資格に関する法令の規定は、これを適用しない。
二級官吏は、檢査官の同意を経て事務総長の指名するところにより、内閣総理大臣においてその任免、進退を行う。
三級官吏は、事務総長においてその任免、進退を行う。
第十五條 事務総長は、事務総局の局務を統理し、公文に署名する。
次長は、事務総長を補佐し、その欠けたとき又は事故があるときは、その職務を行う。
第十六條 各局長は、事務総長の推薦により、檢査官の同意を経て一級の事務官のうちから、院長がこれを補する。
各局長は、局務を掌理する。
第十七條 祕書官は、檢査官の命を受けて、機密に関する事務に從事する。
事務官は、官房又は各局の課長となり、又は局課に分属し、上官の指揮を受け、庶務、檢査又は審査の事務に從事する。
第十八條 技官は、各局課に分属し、上官の指揮を受け、技術に從事する。
第十九條 会計檢査院は、会計檢査院規則の定めるところにより事務総局の支局を置くことができる。
第二章 権限
第一節 総則
第二十條 会計檢査院は、日本國憲法第九十條の規定により國の收入支出の決算の檢査を行う外、法律に定める会計の檢査を行う。
会計檢査院は、常時会計檢査を行い、会計経理を監督し、その適正を期し、且つ、是正を図る。
第二十一條 会計檢査院は、檢査の結果により、國の收入支出の決算を確認する。
第二節 檢査の範囲
第二十二條 会計檢査院の檢査を必要とするものは、左の通りである。
一 國の毎月の收入支出
二 國の所有する現金及び國有財產の受拂
三 國の債権の得喪又は國債その他の債務の増減
四 日本銀行が國のために取り扱う現金、貴金属及び有價証券の受拂
五 國が資本金の二分の一以上を出資している法人の会計
六 法律により特に会計檢査院の檢査に付するものと定められた会計
第二十三條 会計檢査院は、必要と認めるとき又は内閣の請求があるときは、左に掲げる会計経理の檢査をすることができる。
一 國の所有又は保管する物品及び有價証券又は國の保管する現金
二 國以外のものが國のために取り扱う現金、物品又は有價証券の受拂
三 國が直接又は間接に補助金、奬励金、助成金等を交付し又は貸付金、損失補償等の財政援助を與えているものの会計
四 國が資本金の一部を出資しているものの会計
五 國が資本金を出資したものが更に出資しているものの会計
六 國が借入金の元金又は利子の支拂を保証しているものの会計
七 國の工事の請負人及び國に対する物品の納入者のその契約に関する会計
会計檢査院が前項の規定により檢査をするときは、これを関係者に通知するものとする。
第三節 檢査の方法
第二十四條 会計檢査院の檢査を受けるものは、会計檢査院の定める計算証明の規程により、常時に、計算書及び証拠書類を、会計檢査院に提出しなければならない。
國が所有し又は保管する現金、物品及び有價証券の受拂については、前項の計算書及び証拠書類に代えて、会計檢査院の指定する他の書類を会計檢査院に提出することができる。
第二十五條 会計檢査院は、常時又は臨時に職員を派遣して、実地の檢査をすることができる。
第二十六條 会計檢査院は、檢査上の必要により檢査を受けるものに帳簿、書類若しくは報告の提出を求め、又は関係者に質問し若しくは出頭を求めることができる。
第二十七條 会計檢査院の檢査を受ける会計経理に関し左の事実があるときは、本属長官又は監督官廳その他これに準ずる責任のある者は、直ちに、その旨を会計檢査院に報告しなければならない。
一 会計に関係のある犯罪が発覚したとき
二 現金、有價証券その他の財產の亡失を発見したとき
第二十八條 会計檢査院は、檢査上の必要により、官廳、公共團体その他の者に対し、資料の提出、鑑定等を依頼することができる。
第四節 檢査報告
第二十九條 日本國憲法第九十條により作成する檢査報告には、左の事項を掲記しなければならない。
一 國の收入支出の決算の確認
二 國の收入支出の決算金額と日本銀行の提出した計算書の金額との不符合の有無
三 檢査の結果法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項の有無
四 予備費の支出で國会の承諾をうける手続を採らなかつたものの有無
五 第三十一條の規定により懲戒の処分を要求した事項及びその結果
六 第三十二條の規定による出納職員に対する檢定
七 第三十四條の規定により意見を表示し又は処置を要求した事項及びその結果
八 第三十六條の規定により意見を表示し又は処置を要求した事項及びその結果
第三十條 会計檢査院は、前條の檢査報告に関し、國会に出席して説明することを必要と認めるときは、檢査官をして出席せしめ又は書面でこれを説明することができる。
第五節 会計事務職員の責任
第三十一條 会計檢査院は、檢査の結果國の会計事務を処理する職員が故意又は重大な過失により著しく國に損害を與えたと認めるときは、本属長官その他監督の責任に当る者に対し懲戒の処分を要求することができる。
前項の規定は、國の会計事務を処理する職員が計算書及び証拠書類の提出を怠る等計算証明の規程を守らない場合又は第二十六條の規定による要求を受けこれに應じない場合に、これを準用する。
第三十二條 会計檢査院は、出納職員が現金又は物品を亡失毀損したときは、善良な管理者の注意を怠つたため國に損害を與えた事実があるかどうかを審理し、その弁償責任の有無を檢定する。
会計檢査院が弁償責任があると檢定したときは、本属長官その他出納職員を監督する責任のある者は、前項の檢定に從つて弁償を命じなければならない。
第一項の弁償責任は恩赦によらなければ減免されない。
会計檢査院は、第一項の規定により出納職員の弁償責任がないと檢定した場合においても、計算書及び証拠書類の誤謬脱漏等によりその檢定が不当であることを発見したときは五年間を限り再檢定をすることができる。前二項の規定はこの場合に、これを準用する。
第三十三條 会計檢査院は、檢査の結果國の会計事務を処理する職員に職務上の犯罪があると認めたときは、その事件を檢察廳に通告しなければならない。
第六節 雜則
第三十四條 会計檢査院は、檢査の進行に伴い、会計経理に関し法令に違反し又は不当であると認める事項がある場合には、直ちに、本属長官又は関係者に対し当該会計経理について意見を表示し又は適宜の処置を要求し及びその後の経理について是正改善の処置をさせることができる。
第三十五條 会計檢査院は、國の会計事務を処理する職員の会計経理の取扱に関し、利害関係人から審査の要求があつたときは、これを審査し、その結果是正を要するものがあると認めるときは、その判定を主務官廳その他の責任者に通知しなければならない。
主務官廳又は責任者は、前項の通知を受けたときは、その通知された判定に基いて適当な措置を採らなければならない。
第三十六條 会計檢査院は、檢査の結果法令、制度又は行政に関し改善を必要とする事項があると認めるときは、主務官廳その他の責任者に意見を表示し又は改善の処置を要求することができる。
第三十七條 会計檢査院は、左の場合には予めその通知を受け、これに対し意見を表示することができる。
一 國の会計経理に関する法令を制定し又は改廃するとき
二 國の現金、物品及び有價証券の出納並びに簿記に関する規程を制定し又は改廃するとき
國の会計事務を処理する職員がその職務の執行に関し疑義のある事項につき会計檢査院の意見を求めたときは、会計檢査院は、これに対し意見を表示しなければならない。
第三章 会計檢査院規則
第三十八條 この法律に定めるものの外、会計檢査に関し必要な規則は、会計檢査院がこれを定める。
附 則
第一條 この法律は、日本國憲法施行の日から、これを施行する。
第二條 左の法律は、これを廃止する。
明治二十九年法律第九十一號(會計檢査官退官ニ關スル法律)
會計檢査官懲戒法
第三條 この法律施行前の事由に因る出納官吏の弁償責任に関する第三十二條第三項及び第四項の改正規定の適用については、從前の規定による判決は、これを同條第一項の改正規定による檢定とみなす。
第四條 この法律施行の際現に存する会計檢査院事務章程その他会計檢査院の制定に係る会計檢査に関する諸規程に定めた事項は、第三十八條の改正規定による会計檢査院規則の制定があるまでは、なお從前の例による。
第五條 この法律施行の際現に在職する会計檢査院長は、この法律により、会計檢査院の長の任命があるまでは、会計檢査院の長の地位にあるものとする。
前項の会計檢査院長及びこの法律施行の際現に在職する部長又は檢査官のうち、同項の会計檢査院長の指名する者二人は、この法律により、檢査官の任命があるまでは、檢査官の職務を行うものとする。
この法律施行の際現に在職する会計檢査院長は、この法律により、事務総長の任命があるまでは、事務総長の職務を行うものとする。
第六條 この法律施行の際現に在職する部長、檢査官、書記官、副檢査官、理事官及び書記は、別に辞令を発せられないときは、同俸給を以て事務官に任ぜられ、勅任の者は一級、奏任の者は二級、判任の者は三級に敍せられたものとする。
この法律施行の際現に休職中の会計檢査院の職員は、別に辞令を発せられないときは、休職のまま、前項の例により事務官に任ぜられたものとする。
第七條 この法律により初めて任命される檢査官のうち二人の任期は、第五條第一項の規定にかかわらず、一人については三年、他の一人については五年とする。
朕は、枢密顧問の諮詢を経て、帝国議会の協賛を経た会計検査院法を改正する法律を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十二年四月十八日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第七十三号
会計検査院法目次
第一章
組織
第一節
総則
第二節
検査官
第三節
検査官会議
第四節
事務総局
第二章
権限
第一節
総制
第二節
検査の範囲
第三節
検査の方法
第四節
検査報告
第五節
会計事務職員の責任
第六節
雑則
第三章
会計検査院規則
会計検査院法
第一章 組織
第一節 総則
第一条 会計検査院は、内閣に対し独立の地位を有する。
第二条 会計検査院は、三人の検査官を以て構成する検査官会議と事務総局を以てこれを組織する。
第三条 会計検査院の長は、検査官のうちから互選した者について、内閣においてこれを命ずる。
第二節 検査官
第四条 検査官は、両議院の同意を経て、内閣がこれを任命する。
検査官の任命について、衆議院が同意して参議院が同意しない場合においては、日本国憲法第六十七条第二項の場合の例により、衆議院の同意を以て両議院の同意とする。
検査官の任免は、天皇がこれを認証する。
検査官は、年額五万円の俸給を受ける。
第五条 検査官の任期は、七年とし、一回に限り再任されることができる。
検査官が任期中に欠けたときは、後任の検査官は、前任者の残任期間在任する。
検査官は、満六十五才に達したときは、退官する。
第六条 検査官は、他の検査官の合議により、心身の故障のため職務の執行ができないと決定され、又は職務上の義務に違反する事実があると決定された場合において、両議院の議決があつたときは、退官する。
第四条第二項の規定は、前項の場合に、これを準用する。
第七条 検査官は、刑事裁判により禁錮以上の刑に処せられたときは、その官を失う。
第八条 検査官は、前二条の場合を除いては、その意に反してその官を失うことがない。
第九条 検査官は、他の官を兼ね、又は国会議員、若しくは地方公共団体の吏員若しくは議会の議員となることができない。
第三節 検査官会議
第十条 検査官会議の議長は、院長を以て、これに充てる。
第十一条 左の事項は、検査官会議でこれを決する。
一 第三十八条の規定による会計検査院規則の制定又は改廃
二 第二十九条の規定による検査報告
三 第二十三条の規定による検査を受けるものの決定
四 第二十四条の規定による計算証明に関する事項
五 第三十一条の規定による処分の要求
六 第三十二条の規定による出納職員の検定
七 第三十五条の規定による審査決定
八 第三十六条の規定による意見の表示又は処置の要求
九 第三十七条の規定による意見の表示
第四節 事務総局
第十二条 事務総局は、検査官会議の指揮監督の下に、庶務並びに検査及び審査の事務を掌る。
事務総局に官房及び左の四局を置く。
検査第一局
検査第二局
検査第三局
検査第四局
官房及び各局の事務の分掌及び分課は、会計検査院規則の定めるところによる。
第十三条 事務総局に、事務総長一人、事務総局次長一人、秘書官、事務官及び技官を置く。
事務総長及び次長は、一級とし、秘書官は二級、事務官は一級、二級又は三級、技官は二級又は三級とする。
一級事務官は専任十一人とする。
第十四条 一級官吏は、検査官の合議で決するところにより、内閣でその任免、進退を行う。
事務総長及び次長については、官吏の任用叙級の資格に関する法令の規定は、これを適用しない。
二級官吏は、検査官の同意を経て事務総長の指名するところにより、内閣総理大臣においてその任免、進退を行う。
三級官吏は、事務総長においてその任免、進退を行う。
第十五条 事務総長は、事務総局の局務を統理し、公文に署名する。
次長は、事務総長を補佐し、その欠けたとき又は事故があるときは、その職務を行う。
第十六条 各局長は、事務総長の推薦により、検査官の同意を経て一級の事務官のうちから、院長がこれを補する。
各局長は、局務を掌理する。
第十七条 秘書官は、検査官の命を受けて、機密に関する事務に従事する。
事務官は、官房又は各局の課長となり、又は局課に分属し、上官の指揮を受け、庶務、検査又は審査の事務に従事する。
第十八条 技官は、各局課に分属し、上官の指揮を受け、技術に従事する。
第十九条 会計検査院は、会計検査院規則の定めるところにより事務総局の支局を置くことができる。
第二章 権限
第一節 総則
第二十条 会計検査院は、日本国憲法第九十条の規定により国の収入支出の決算の検査を行う外、法律に定める会計の検査を行う。
会計検査院は、常時会計検査を行い、会計経理を監督し、その適正を期し、且つ、是正を図る。
第二十一条 会計検査院は、検査の結果により、国の収入支出の決算を確認する。
第二節 検査の範囲
第二十二条 会計検査院の検査を必要とするものは、左の通りである。
一 国の毎月の収入支出
二 国の所有する現金及び国有財産の受払
三 国の債権の得喪又は国債その他の債務の増減
四 日本銀行が国のために取り扱う現金、貴金属及び有価証券の受払
五 国が資本金の二分の一以上を出資している法人の会計
六 法律により特に会計検査院の検査に付するものと定められた会計
第二十三条 会計検査院は、必要と認めるとき又は内閣の請求があるときは、左に掲げる会計経理の検査をすることができる。
一 国の所有又は保管する物品及び有価証券又は国の保管する現金
二 国以外のものが国のために取り扱う現金、物品又は有価証券の受払
三 国が直接又は間接に補助金、奨励金、助成金等を交付し又は貸付金、損失補償等の財政援助を与えているものの会計
四 国が資本金の一部を出資しているものの会計
五 国が資本金を出資したものが更に出資しているものの会計
六 国が借入金の元金又は利子の支払を保証しているものの会計
七 国の工事の請負人及び国に対する物品の納入者のその契約に関する会計
会計検査院が前項の規定により検査をするときは、これを関係者に通知するものとする。
第三節 検査の方法
第二十四条 会計検査院の検査を受けるものは、会計検査院の定める計算証明の規程により、常時に、計算書及び証拠書類を、会計検査院に提出しなければならない。
国が所有し又は保管する現金、物品及び有価証券の受払については、前項の計算書及び証拠書類に代えて、会計検査院の指定する他の書類を会計検査院に提出することができる。
第二十五条 会計検査院は、常時又は臨時に職員を派遣して、実地の検査をすることができる。
第二十六条 会計検査院は、検査上の必要により検査を受けるものに帳簿、書類若しくは報告の提出を求め、又は関係者に質問し若しくは出頭を求めることができる。
第二十七条 会計検査院の検査を受ける会計経理に関し左の事実があるときは、本属長官又は監督官庁その他これに準ずる責任のある者は、直ちに、その旨を会計検査院に報告しなければならない。
一 会計に関係のある犯罪が発覚したとき
二 現金、有価証券その他の財産の亡失を発見したとき
第二十八条 会計検査院は、検査上の必要により、官庁、公共団体その他の者に対し、資料の提出、鑑定等を依頼することができる。
第四節 検査報告
第二十九条 日本国憲法第九十条により作成する検査報告には、左の事項を掲記しなければならない。
一 国の収入支出の決算の確認
二 国の収入支出の決算金額と日本銀行の提出した計算書の金額との不符合の有無
三 検査の結果法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項の有無
四 予備費の支出で国会の承諾をうける手続を採らなかつたものの有無
五 第三十一条の規定により懲戒の処分を要求した事項及びその結果
六 第三十二条の規定による出納職員に対する検定
七 第三十四条の規定により意見を表示し又は処置を要求した事項及びその結果
八 第三十六条の規定により意見を表示し又は処置を要求した事項及びその結果
第三十条 会計検査院は、前条の検査報告に関し、国会に出席して説明することを必要と認めるときは、検査官をして出席せしめ又は書面でこれを説明することができる。
第五節 会計事務職員の責任
第三十一条 会計検査院は、検査の結果国の会計事務を処理する職員が故意又は重大な過失により著しく国に損害を与えたと認めるときは、本属長官その他監督の責任に当る者に対し懲戒の処分を要求することができる。
前項の規定は、国の会計事務を処理する職員が計算書及び証拠書類の提出を怠る等計算証明の規程を守らない場合又は第二十六条の規定による要求を受けこれに応じない場合に、これを準用する。
第三十二条 会計検査院は、出納職員が現金又は物品を亡失毀損したときは、善良な管理者の注意を怠つたため国に損害を与えた事実があるかどうかを審理し、その弁償責任の有無を検定する。
会計検査院が弁償責任があると検定したときは、本属長官その他出納職員を監督する責任のある者は、前項の検定に従つて弁償を命じなければならない。
第一項の弁償責任は恩赦によらなければ減免されない。
会計検査院は、第一項の規定により出納職員の弁償責任がないと検定した場合においても、計算書及び証拠書類の誤謬脱漏等によりその検定が不当であることを発見したときは五年間を限り再検定をすることができる。前二項の規定はこの場合に、これを準用する。
第三十三条 会計検査院は、検査の結果国の会計事務を処理する職員に職務上の犯罪があると認めたときは、その事件を検察庁に通告しなければならない。
第六節 雑則
第三十四条 会計検査院は、検査の進行に伴い、会計経理に関し法令に違反し又は不当であると認める事項がある場合には、直ちに、本属長官又は関係者に対し当該会計経理について意見を表示し又は適宜の処置を要求し及びその後の経理について是正改善の処置をさせることができる。
第三十五条 会計検査院は、国の会計事務を処理する職員の会計経理の取扱に関し、利害関係人から審査の要求があつたときは、これを審査し、その結果是正を要するものがあると認めるときは、その判定を主務官庁その他の責任者に通知しなければならない。
主務官庁又は責任者は、前項の通知を受けたときは、その通知された判定に基いて適当な措置を採らなければならない。
第三十六条 会計検査院は、検査の結果法令、制度又は行政に関し改善を必要とする事項があると認めるときは、主務官庁その他の責任者に意見を表示し又は改善の処置を要求することができる。
第三十七条 会計検査院は、左の場合には予めその通知を受け、これに対し意見を表示することができる。
一 国の会計経理に関する法令を制定し又は改廃するとき
二 国の現金、物品及び有価証券の出納並びに簿記に関する規程を制定し又は改廃するとき
国の会計事務を処理する職員がその職務の執行に関し疑義のある事項につき会計検査院の意見を求めたときは、会計検査院は、これに対し意見を表示しなければならない。
第三章 会計検査院規則
第三十八条 この法律に定めるものの外、会計検査に関し必要な規則は、会計検査院がこれを定める。
附 則
第一条 この法律は、日本国憲法施行の日から、これを施行する。
第二条 左の法律は、これを廃止する。
明治二十九年法律第九十一号(会計検査官退官ニ関スル法律)
会計検査官懲戒法
第三条 この法律施行前の事由に因る出納官吏の弁償責任に関する第三十二条第三項及び第四項の改正規定の適用については、従前の規定による判決は、これを同条第一項の改正規定による検定とみなす。
第四条 この法律施行の際現に存する会計検査院事務章程その他会計検査院の制定に係る会計検査に関する諸規程に定めた事項は、第三十八条の改正規定による会計検査院規則の制定があるまでは、なお従前の例による。
第五条 この法律施行の際現に在職する会計検査院長は、この法律により、会計検査院の長の任命があるまでは、会計検査院の長の地位にあるものとする。
前項の会計検査院長及びこの法律施行の際現に在職する部長又は検査官のうち、同項の会計検査院長の指名する者二人は、この法律により、検査官の任命があるまでは、検査官の職務を行うものとする。
この法律施行の際現に在職する会計検査院長は、この法律により、事務総長の任命があるまでは、事務総長の職務を行うものとする。
第六条 この法律施行の際現に在職する部長、検査官、書記官、副検査官、理事官及び書記は、別に辞令を発せられないときは、同俸給を以て事務官に任ぜられ、勅任の者は一級、奏任の者は二級、判任の者は三級に叙せられたものとする。
この法律施行の際現に休職中の会計検査院の職員は、別に辞令を発せられないときは、休職のまま、前項の例により事務官に任ぜられたものとする。
第七条 この法律により初めて任命される検査官のうち二人の任期は、第五条第一項の規定にかかわらず、一人については三年、他の一人については五年とする。