朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル地方稅法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十五年三月二十九日
內閣總理大臣 米內光政
大藏大臣 櫻內幸雄
內務大臣 伯爵 兒玉秀雄
厚生大臣 吉田茂
法律第六十號
地方稅法目次
第一章
總則
第一節
通則
第二節
賦課
第三節
徵收
第一款
普通徵收
第二款
特別徵收
第二章
普通稅
第一節
府縣稅
第一款
附加稅
第二款
獨立稅
第二節
市町村稅
第一款
附加稅
第二款
獨立稅
第三章
目的稅
第四章
補則
地方稅法
第一章 總則
第一節 通則
第一條 本法ニ於テ地方團體トハ府縣及市町村ヲ、地方稅トハ府縣稅及市町村稅ヲ謂フ
本法ニ於テ條例トハ府縣條例及市町村條例ヲ謂フ
本法中府縣ニ關スル規定ハ北海道地方費ニ、市町村ニ關スル規定ハ町村制ニ代ル制ヲ施行スル地ノ町村ニ之ヲ準用ス
前項ノ場合ニ於テハ府縣稅、府縣知事、府縣吏員、府縣參事會又ハ府縣條例トアルハ夫々北海道地方稅、北海道廳長官、北海道地方費吏員、北海道參事會又ハ北海道條例トシ市町村稅、市町村長、市町村吏員、市町村會又ハ市町村條例トアルハ夫々町村制ニ代ル制ヲ施行スル地ノ町村ノ町村稅、町村長、町村吏員、町村會又ハ町村條例若ハ町村條例ニ代ル町村規則トス
本法中市町村ニ關スル規定ヲ北海道ノ市ニ適用スル場合ニ於テハ府縣知事又ハ府縣參事會トアルハ夫々北海道廳長官又ハ北海道參事會トス
第二條 府縣稅トシテ課スルコトヲ得ベキモノ左ノ如シ
一 普通稅
國稅附加稅
獨立稅
二 目的稅
市町村稅トシテ課スルコトヲ得ベキモノ左ノ如シ
一 普通稅
國稅附加稅
府縣稅附加稅
獨立稅
二 目的稅
第三條 地方團體ニ於テ地方稅及其ノ賦課徵收ニ關シ必要ナル事項ヲ定ムルハ條例ヲ以テ之ヲ爲スベシ
第二節 賦課
第四條 地方團體內ニ住所、居所、家屋敷、事務所又ハ營業所ヲ有スル者ハ地方稅ヲ納ムル義務ヲ負フ
地方團體內ニ住所、居所、家屋敷、事務所又ハ營業所ヲ有セズト雖モ地方團體內ニ於テ土地、家屋又ハ物件ヲ所有シ、使用シ又ハ占有スル者ハ其ノ土地、家屋若ハ物件又ハ其ノ收入ニ對シ課スル地方稅ヲ、地方團體內ニ於テ一定ノ行爲ヲ爲ス者ハ其ノ行爲ニ對シ課スル地方稅ヲ納ムル義務ヲ負フ
第五條 法人合併シタル場合ニ於テ合併後存續スル法人又ハ合併ニ因リ設立シタル法人ハ合併ニ因リ消滅シタル法人ニ賦課セラルベキ地方稅ヲ納ムル義務ヲ負フ
法人解散シタル場合ニ於テ其ノ法人ニ賦課セラルベキ地方稅ヲ納付セズシテ殘餘財產ヲ分配シタルトキハ淸算人ハ殘餘財產ノ價額ヲ限度トシテ連帶シテ其ノ法人ニ賦課セラルベキ地方稅ヲ納ムル義務ヲ負フ
相續開始アリタル場合ニ於テ相續人又ハ相續財團ハ相續開始前ノ事實ニ付被相續人ニ賦課セラルベキ地方稅ヲ納ムル義務ヲ負フ但シ國籍喪失ニ因ル相續人又ハ限定承認ヲ爲シタル相續人ハ相續ニ因リテ得タル財產ノ價額ヲ限度トシテ其ノ義務ヲ負ヒ戶主ノ死亡以外ノ原因ニ因リ家督相續ノ開始アリタルトキハ被相續人モ亦其ノ義務ヲ負フ
第六條 納稅義務者ノ地方團體外ニ於テ所有シ、使用シ若ハ占有スル土地、家屋若ハ物件又ハ其ノ收入ニ對シテハ地方稅ヲ課スルコトヲ得ズ地方團體外ニ於テ營業所ヲ設ケテ爲ス營業又ハ其ノ收入ニ對シ亦同ジ
第七條 數府縣ニ於テ營業所ヲ設ケテ營業ヲ爲ス者ニ關係府縣ニ於テ賦課スル營業稅附加稅(營業稅割ヲ含ム)ノ課稅標準タルベキ本稅額ハ本稅ヲ決定シタル稅務官署ノ定ムル所ニ依ル
稅務官署ハ本稅ヲ決定シタルトキハ直ニ前項ノ規定ニ依リ本稅額ヲ定メ之ヲ關係府縣知事ニ通知スベシ
關係府縣知事ニ於テ第一項ノ規定ニ依リ稅務官署ノ定メタル本稅額ニ異議アルトキハ內務大臣及大藏大臣本稅額ヲ定ム
前項ノ異議ハ其ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ三十日以內ニ之ヲ申出ヅベシ
內務大臣及大藏大臣第三項ノ異議ノ申出ヲ受理シタルトキハ三月以內ニ之ヲ決定スベシ
第八條 同一府縣內又ハ數府縣內ノ數市町村ニ於テ營業所ヲ設ケテ營業ヲ爲ス者ニ關係市町村ニ於テ賦課スル營業稅附加稅(營業稅割ヲ含ム)ノ課稅標準タルベキ本稅額ハ左ノ各號ノ定ムル所ニ依ル
一 關係市町村同一府縣內ニ在ルトキハ當該市町村ニ付府縣知事ノ定ムル額
二 關係市町村數府縣ニ亙ル場合ニ於テ一府縣內ノ關係市町村一ナルトキハ前條ノ規定ニ依リ定リタル當該府縣ノ本稅額
三 關係市町村數府縣ニ亙ル場合ニ於テ一府縣內ノ關係市町村二以上ナルトキハ前條ノ規定ニ依リ定リタル當該府縣ノ本稅額ニ基キ當該市町村ニ付府縣知事ノ定ムル額
前項ノ規定ニ依リ定リタル本稅額ハ府縣知事直ニ之ヲ關係市町村長ニ通知スベシ
關係市町村長ニ於テ第一項第一號又ハ第三號ノ規定ニ依リ府縣知事ノ定メタル本稅額ニ異議アルトキハ本稅額ハ內務大臣及大藏大臣之ヲ定ム
前條第四項及第五項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第九條 鑛區又ハ砂鑛區ガ數府縣又ハ數市町村ニ亙ル場合ニ關係地方團體ニ於テ賦課スル鑛區稅附加稅ノ課稅標準タルベキ本稅額ハ鑛區又ハ砂鑛區ノ面積ニ依リ本稅ヲ按分シタルモノニ依ル
漁場ガ數市町村ニ亙ル場合ニ關係市町村ニ於テ賦課スル漁業權稅附加稅ノ課稅標準タルベキ本稅額ハ漁場ノ面積ニ依リ本稅ヲ按分シタルモノニ依ル
第十條 年稅又ハ期稅タル地方稅ノ賦課期日後納稅義務ノ發生シタル者ニハ其ノ發生シタル月ノ翌月ヨリ月割ヲ以テ地方稅ヲ賦課ス
前項ノ地方稅ノ賦課期日後納稅義務ノ消滅シタル者ニハ其ノ消滅シタル月迄月割ヲ以テ地方稅ヲ賦課ス
第一項ノ地方稅ノ賦課後其ノ課稅客體ノ承繼アリタル場合ニ於テハ前ノ納稅者ノ納稅ヲ以テ後ノ納稅義務者ノ納稅ト看做シ前二項ノ規定ヲ適用セズ
命令ヲ以テ指定スル稅目ニ付テハ第二項ノ規定ニ拘ラズ賦課後納稅義務消滅スルモ旣ニ交付シタル徵稅令書又ハ徵稅傳令書ニ記載シタル賦課額ハ之ヲ變更セズ
月稅タル地方稅ノ賦課期日後納稅義務ノ發生シタル者ニハ其ノ發生シタル月ノ翌月ヨリ地方稅ヲ賦課シ其ノ賦課期日後納稅義務ノ消滅シタル者ニハ其ノ消滅シタル月分ノ全額ヲ賦課ス
一ノ地方團體ニ於テ納稅義務消滅シ他ノ地方團體ニ於テ納稅義務發生シタルトキハ納稅義務ノ發生シタル地方團體ハ納稅義務ノ消滅シタル地方團體ニ於テ賦課シタル部分ニ付テハ地方稅ヲ賦課スルコトヲ得ズ
第十一條 國稅附加稅(地租割、家屋稅割及營業稅割ヲ含ム)ノ賦課率ハ本稅ノ屬スル年ノ四月一日ニ始ル年度ノ賦課率ニ依ル但シ法人ノ營業稅附加稅(營業稅割ヲ含ム)ノ賦課率ハ法人ノ事業年度終了ノ日又ハ合併若ハ解散ノ日ノ屬スル年度ノ賦課率ニ依ル
府縣稅附加稅(府縣稅獨立稅割及市町村稅獨立稅割ヲ含ム)ノ賦課率ハ本稅ノ屬スル年度ノ賦課率ニ依ル
第十二條 左ニ揭グルモノニ對シテハ地方稅ヲ課スルコトヲ得ズ但シ第一號、第三號及第四號ニ揭グル土地、家屋又ハ物件ヲ他ニ使用收益セシムル場合ニ於テ其ノ使用收益ヲ爲ス者ニ課スルハ此ノ限ニ在ラズ
一 神社、寺院又ハ敎會ノ用ニ供スル建物及其ノ境內地又ハ構內地但シ有料ニテ使用スルモノヲ除ク
二 國、地方團體其ノ他勅令ヲ以テ指定スル公共團體ノ事業又ハ行爲
三 國、地方團體其ノ他勅令ヲ以テ指定スル公共團體ニ於テ公用又ハ公共用ニ供スル家屋又ハ物件但シ有料ニテ使用スルモノヲ除ク
四 國有ノ土地、家屋又ハ物件
五 地租法第六十五條及第六十六條ノ規定ニ依リ地租ヲ免除セラレタル土地但シ其ノ年度分ニ限ル
前項ニ揭グルモノヲ除クノ外地方稅ヲ課スルコトヲ得ザルモノハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第十三條 地方團體ハ公益上其ノ他ノ事由ニ因リ課稅ヲ不適當トスルトキハ課稅ヲ爲サザルコトヲ得
地方團體ハ公益上其ノ他ノ事由ニ因リ必要アルトキハ不均一ノ課稅ヲ爲スコトヲ得
第十四條 地方團體ノ一部ニ對シ特ニ利益アル事件ニ關シテハ地方團體ハ不均一ノ課稅ヲ爲シ又ハ其ノ一部ニ課稅ヲ爲スコトヲ得
第三節 徵收
第一款 普通徵收
第十五條 市町村ハ其ノ市町村內ノ府縣稅ヲ徵收シ之ヲ府縣ニ納入スルノ義務ヲ負フ但シ第十七條第二項、第三十五條第一項又ハ第四十二條第一項ノ規定ニ依リ徵收スルモノニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
府縣ハ前項ノ規定ニ依ル徵收ノ費用ヲ補償スル爲徵收金額及徵稅傳令書數ニ應ジ府縣條例ノ定ムル所ニ依リ其ノ市町村ニ對シ取扱費ヲ交付スベシ
前項ノ規定ニ依ル府縣條例ノ規定ハ內務大臣ノ許可ヲ受クベシ
第十六條 市町村避クベカラザル事故ニ因リ旣收ノ府縣稅ヲ失ヒタルトキハ府縣知事ハ其ノ申請ニ依リ稅金納入ノ義務ヲ免除スベシ
府縣知事前項ノ申請ヲ受理シタル日ヨリ三月以內ニ前項ノ規定ニ依ル免除ヲ爲サザルトキハ市町村ハ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル訴願ノ提起ハ處分ヲ受ケタル日又ハ之ヲ受ケズシテ前項ノ期間ヲ經過シタルトキヨリ二十一日以內ニ之ヲ爲スベシ
內務大臣訴願ヲ受理シタルトキハ三月以內ニ之ヲ裁決スベシ
第十七條 府縣稅ヲ賦課徵收セントスルトキハ府縣知事又ハ其ノ委任ヲ受ケタル官吏若ハ府縣吏員ハ市町村ニ對シ徵稅命令書ヲ發シ市町村長又ハ其ノ委任ヲ受ケタル市町村吏員ハ徵稅命令書ニ依リ徵稅傳令書ヲ調製シ之ヲ納稅者ニ交付スベシ
府縣知事又ハ其ノ委任ヲ受ケタル官吏若ハ府縣吏員ハ納稅者ニ對シ直接ニ徵稅令書ヲ交付スルコトヲ得
第十八條 市町村稅ヲ賦課徵收セントスルトキハ市町村長又ハ其ノ委任ヲ受ケタル市町村吏員ハ徵稅令書ヲ納稅者ニ交付スベシ
第十九條 第十七條第一項ノ徵稅傳令書又ハ前條ノ徵稅令書ヲ受ケタル納稅者ハ其ノ稅金ヲ市町村ニ拂込ミ其ノ領收證ヲ得テ納稅ノ義務ヲ了ス
第十七條第二項ノ徵稅令書ヲ受ケタル納稅者ハ其ノ稅金ヲ府縣ニ拂込ミ其ノ領收證ヲ得テ納稅ノ義務ヲ了ス
市町村ハ其ノ徵收シタル府縣稅ヲ府縣ニ拂込ミ其ノ領收證ヲ得テ稅金納入ノ義務ヲ了ス
稅金ノ拂込又ハ納入ニ付郵便振替貯金ノ方法ニ依リタル場合ニ於テハ納稅者又ハ市町村ハ稅金ヲ郵便官署ニ拂込ムニ依リテ其ノ義務ヲ了ス
第二十條 府縣稅ノ賦課ヲ受ケタル者其ノ賦課ニ付違法又ハ錯誤アリト認ムルトキハ徵稅令書又ハ徵稅傳令書ノ交付ヲ受ケタル日ヨリ三十日以內ニ府縣知事ニ異議ノ申立ヲ爲スコトヲ得
市町村稅ノ賦課ヲ受ケタル者其ノ賦課ニ付違法又ハ錯誤アリト認ムルトキハ徵稅令書ノ交付ヲ受ケタル日ヨリ三十日以內ニ市町村長ニ異議ノ申立ヲ爲スコトヲ得
前二項ノ異議ノ申立アリタルトキハ府縣知事又ハ市町村長ハ七日以內ニ之ヲ府縣參事會又ハ市參事會若ハ町村會ノ決定ニ付スベシ
前項ノ決定ヲ受ケタル者其ノ決定ニ不服アルトキハ府縣稅ニ付テハ行政裁判所ニ出訴シ市町村稅ニ付テハ府縣參事會ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アルトキハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得第六項ノ訴願ニ對スル裁決ニ不服アルトキ亦同ジ
第三項ノ府縣參事會ノ決定ニ付テハ府縣知事又ハ其ノ委任ヲ受ケタル官吏若ハ府縣吏員ヨリモ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第三項ノ市參事會又ハ町村會ノ決定ニ付テハ市町村長又ハ其ノ委任ヲ受ケタル市町村吏員ヨリモ府縣參事會ニ訴願スルコトヲ得
第四項ノ裁決又ハ前項ノ訴願ニ對スル裁決ニ付テハ市町村長若ハ其ノ委任ヲ受ケタル市町村吏員又ハ府縣知事ヨリモ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
府縣制第百二十八條及第百二十八條ノ二ノ規定ハ前七項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十一條 府縣稅ノ徵稅令書若ハ徵稅傳令書又ハ市町村稅ノ徵稅令書ヲ受ケタル納稅者納期限迄ニ稅金ヲ完納セザルトキハ府縣知事若ハ其ノ委任ヲ受ケタル官吏若ハ吏員又ハ市町村長若ハ其ノ委任ヲ受ケタル市町村吏員ハ遲クトモ納期限後二十日目迄ニ督促狀ヲ發スベシ
督促狀ニハ條例ヲ以テ定ムル期間內ニ於テ相當ノ期限ヲ指定スベシ
特別ノ事情アル地方團體ニ於テハ條例ヲ以テ第一項ニ規定スル期限ト異リタル期限ヲ定ムルコトヲ得
第二十二條 前條ノ督促狀ヲ發シタルトキハ手數料ヲ徵收スベシ
前項ノ手數料ノ額ハ條例ヲ以テ之ヲ規定スベシ
府縣稅ニ關シ市町村吏員ヲシテ督促狀ヲ發セシメタル場合ニ於ケル手數料ハ其ノ市町村ノ收入トス
第二十三條 第二十一條ノ規定ニ依ル督促ヲ受ケタル者督促狀ノ指定期限迄ニ稅金及督促手數料ヲ完納セザルトキハ府縣知事若ハ其ノ委任ヲ受ケタル官吏若ハ吏員又ハ市町村長若ハ其ノ委任ヲ受ケタル市町村吏員ハ條例ヲ以テ定ムル期間內ニ國稅滯納處分ノ例ニ依リ之ヲ處分スベシ
前項ノ規定ニ依ル處分ニ不服アル者ハ府縣參事會ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アルトキハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ付テハ府縣稅ニ在リテハ府縣知事又ハ其ノ委任ヲ受ケタル官吏若ハ吏員、市町村稅ニ在リテハ市町村長若ハ其ノ委任ヲ受ケタル市町村吏員又ハ府縣知事ヨリモ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第一項ノ規定ニ依ル處分中差押物件ノ公賣ハ差押處分ノ確定ニ至ル迄之ヲ停止ス
第一項ノ規定ニ依ル處分ハ其ノ地方團體ノ區域外ニ於テモ亦之ヲ爲スコトヲ得
府縣制第三十八條、第百二十八條及第百二十八條ノ二ノ規定ハ第二項及第三項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十四條 督促ヲ爲シタル場合ニ於テハ一日ニ付稅金額ノ一萬分ノ四以內ニ於テ條例ノ定ムル割合ヲ以テ納期限ノ翌日ヨリ稅金完納又ハ財產差押ノ日ノ前日迄ノ日數ニ依リ計算シタル延滯金ヲ徵收スベシ但シ左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラズ
一 徵稅令書又ハ徵稅傳令書一通ノ稅金額五圓未滿ナルトキ
二 納期ヲ繰上ゲ徵收ヲ爲ストキ
三 納稅者ノ住所及居所ガ不明ナル爲又ハ帝國內ニ在ラザル爲公示送達ノ方法ニ依リ納稅ノ命令又ハ督促ヲ爲シタルトキ
四 滯納ニ付酌量スベキ情狀アリト認ムルトキ
督促狀ノ指定期限迄ニ稅金及督促手數料ヲ完納シタルトキハ延滯金ハ之ヲ徵收セズ
第二十五條 府縣ノ徵收金(府縣稅竝ニ其ノ督促手數料、延滯金及滯納處分費)ハ國ノ徵收金ニ、市町村ノ徵收金(市町村稅竝ニ其ノ督促手數料、延滯金及滯納處分費)ハ府縣ノ徵收金ニ次デ先取特權ヲ有シ其ノ追徵、還付及時效ニ付テハ國稅ノ例ニ依ル但シ附加稅タル地方稅ニシテ本稅ノ決定ニ因リ賦課シ得ルニ至ルモノノ時效ハ本稅決定ノ日ヨリ進行ス
第二十三條第二項及第三項竝ニ府縣制第百二十八條及第百二十八條ノ二ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十六條 納稅者左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ旣ニ徵稅令書又ハ徵稅傳令書ヲ交付シタル地方稅ニ付テハ納期前ト雖モ納稅義務ノ確定シタル稅金ノ全額ヲ徵收スルコトヲ得
一 國稅、地方稅其ノ他ノ公課又ハ徵收ノ囑託ヲ受ケタル滿洲國ノ國稅二付滯納處分ヲ受クルトキ
二 强制執行ヲ受クルトキ
三 破產ノ宣吿ヲ受ケタルトキ
四 相續人限定承認ヲ爲シタルトキ
五 競賣ノ開始アリタルトキ
六 法人解散シタルトキ
七 納稅者逋脫ヲ圖ルノ所爲アリト認ムルトキ
前項ノ規定ニ依ル徵收ニ付テハ國稅徵收ノ例ニ依ル
第二十七條 府縣知事又ハ市町村長ハ條例ノ定ムル所ニ依リ納稅者中特別ノ事情アル者ニ對シ納稅延期ヲ許スコトヲ得
第二十八條 府縣知事又ハ市町村長ハ特別ノ事情アル場合又ハ特別ノ事情アル者ニ限リ府縣參事會又ハ市町村會ノ議決ヲ經テ地方稅ヲ減免スルコトヲ得
第二十九條 法人合併シタル場合ニ於テ合併ニ因リ消滅シタル法人ノ未納ニ係ル地方稅竝ニ其ノ督促手數料、延滯金及滯納處分費アルトキハ合併後存續スル法人又ハ合併ニ因リ設立シタル法人之ヲ納付スル義務ヲ負フ
法人解散シタル場合ニ於テ其ノ法人ノ未納ニ係ル地方稅竝ニ其ノ督促手數料、延滯金及滯納處分費ヲ納付セズシテ殘餘財產ヲ分配シタルトキハ淸算人ハ殘餘財產ノ價額ヲ限度トシテ連帶シテ之ヲ納付スル義務ヲ負フ
相續開始アリタル場合ニ於テ相續開始前ノ事實ニ付被相續人ノ未納ニ係ル地方稅竝ニ其ノ督促手數料、延滯金及滯納處分費アルトキハ相續人又ハ相續財團之ヲ納付スル義務ヲ負フ伹シ國籍喪失ニ因ル相續人又ハ限定承認ヲ爲シタル相續人ハ相續ニ因リテ得タル財產ノ價額ヲ限度トシテ其ノ義務ヲ負ヒ戶主ノ死亡以外ノ原因ニ因リ家督相續ノ開始アリタルトキハ被相續人モ亦其ノ義務ヲ負フ
第三十條 共有物、共同事業、共同事業ニ因リ生ジタル物件又ハ共同行爲ニ對スル地方稅竝ニ其ノ督促手數料、延滯金及滯納處分費ハ納稅者連帶シテ之ヲ納付スル義務ヲ負フ
公賣及競賣以外ノ原因ニ因リ鑛業權ノ移轉アリタル場合ニ於テ未納ニ係ル地方稅竝ニ其ノ督促手數料、延滯金及滯納處分費アルトキハ新鑛業權者ハ舊鑛業權者ト連帶シテ之ヲ納付スル義務ヲ負フ
第三十一條 同一年度ノ地方稅ニシテ旣納ノ稅金過納ナルトキハ爾後ノ納期ニ於テ徵收スベキ同一稅目ノ稅金ニ充ツルコトヲ得
第三十二條 納稅義務者納稅地ニ住所、居所、事務所及營業所ヲ有セザルトキハ納稅ニ關スル事項ヲ處理セシムル爲納稅地ニ於テ納稅管理人ヲ定メ府縣稅ニ付テハ府縣知事ニ、市町村稅ニ付テハ市町村長ニ之ヲ申吿スベシ其ノ納稅管理人ヲ變更シタルトキ亦同ジ
第三十三條 徵稅令書、徵稅傳令書、督促狀及滯納處分ニ關スル書類ハ名宛人ノ住所、居所、事務所又ハ營業所ニ送達ス名宛人ガ相續財團ニシテ財產管理人アルトキハ財產管理人ノ住所又ハ居所ニ送達ス
納稅管理人アルトキハ徵稅令書、徵稅傳令書及督促狀ニ限リ其ノ住所、居所、事務所又ハ營業所ニ送達ス
第三十四條 書類ノ送達ヲ受クベキ者ガ其ノ住所、居所、事務所若ハ營業所ニ於テ書類ノ受取ヲ拒ミタルトキ又ハ其ノ者ノ住所、居所、事務所及營業所ガ不明ナルトキ若ハ帝國內ニ在ラザルトキハ書類ノ要旨ヲ公吿シ公吿ノ初日ヨリ七日ヲ經過シタルトキハ書類ノ送達アリタルモノト看做ス
前項ノ規定ニ依ル公吿ハ地方團體ノ揭示場ニ之ヲ爲スベシ
第二款 特別徵收
第三十五條 地方團體ハ內務大臣及大藏大臣ノ指定スル地方稅ニ付テハ其ノ徵收ノ便宜ヲ有スル者ヲシテ之ヲ徵收セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル徵收義務者(以下特別徵收義務者ト稱ス)ハ地方團體ニ對シ其ノ徵收スベキ地方稅ヲ納入スルノ義務ヲ負フ
第一項ノ地方稅ノ徵收ニ付テハ第十七條又ハ第十八條ノ規定ニ依ラザルコトヲ得
第三十六條 特別徵收義務者其ノ徵收スベキ地方稅ヲ正當ノ事由ニ因リ徵收スルコト能ハザリシトキハ府縣知事又ハ市町村長ハ特別徵收義務者ノ申請ニ依リ之ニ相當スル旣納ノ金額ヲ還付スベシ
府縣知事又ハ市町村長前項ノ申請ヲ受理シタル日ヨリ三月以內ニ前項ノ規定ニ依ル還付ヲ爲サザルトキハ特別徵收義務者ハ府縣稅ニ付テハ內務大臣ニ訴願シ市町村稅ニ付テハ府縣參事會ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アルトキハ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ付テハ市町村長又ハ府縣知事ヨリモ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得
第十六條第三項及第四項竝ニ府縣制第百二十八條ノ二第二項ノ規定ハ前二項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第一項ノ規定ニ依ル還付ノ方法ハ條例ヲ以テ之ヲ規定スベシ
第三十七條 第三十五條第一項ノ規定ニ依リ地方稅ヲ徵收セシムル場合ニ於テハ納稅者ハ其ノ稅金ヲ特別徵收義務者ニ拂込ムニ依リテ納稅ノ義務ヲ了ス
特別徵收義務者ハ其ノ徵收スベキ地方稅ニ相當スル金額ヲ府縣稅ニ付テハ府縣ニ、市町村稅ニ付テハ市町村ニ拂込ミ其ノ領收證ヲ得テ稅金ノ徵收及納入ノ義務ヲ了ス
第三十八條 特別徵收義務者ハ其ノ徵收スベキ地方稅ニ相當スル金額ヲ條例ヲ以テ定ムル期日迄ニ府縣稅ニ付テハ府縣ニ、市町村稅ニ付テハ市町村ニ納入スベシ
第三十九條 特別徵收義務者其ノ徵收スベキ地方稅ニ相當スル金額ヲ條例ヲ以テ定ムル期日迄ニ納入セザルトキハ府縣知事若ハ其ノ委任ヲ受ケタル官吏若ハ府縣吏員又ハ市町村長若ハ其ノ委任ヲ受ケタル市町村吏員ハ相當ノ期限ヲ指定シ督促狀ヲ發スベシ
第四十條 特別徵收義務者避クベカラザル事故ニ因リ旣收ノ稅金ヲ失ヒタルトキハ府縣知事又ハ市町村長ハ其ノ申請ニ依リ稅金納入ノ義務ヲ免除スベシ
府縣知事又ハ市町村長前項ノ申請ヲ受理シタル日ヨリ三月以內ニ前項ノ規定ニ依ル免除ヲ爲サザルトキハ特別徵收義務者ハ府縣稅ニ付テハ內務大臣ニ訴願シ市町村稅ニ付テハ府縣參事會ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アルトキハ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ付テハ市町村長又ハ府縣知事ヨリモ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得
第十六條第三項及第四項竝ニ府縣制第百二十八條ノ二第二項ノ規定ハ前二項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第四十一條 第五條、第十五條第二項及第三項、第十九條第四項、第二十二條第一項及第二項、第二十三條乃至第二十六條、第二十九條、第三十條第一項竝ニ第三十一條ノ規定ハ第三十五條第一項ノ規定ニ依リ地方稅ヲ徵收セシムル場合ノ納入金ニ付之ヲ準用ス此ノ場合ニ於テハ第十五條第三項中內務大臣トアルハ市町村條例ノ規定ニ付テハ府縣知事トス
第四十二條 地方團體ハ內務大臣及大藏大臣ノ指定スル地方稅ニ付テハ第十七條及第十八條ノ規定ニ依ラズ其ノ地方團體ニ於テ發行スル證紙ヲ以テ地方稅ヲ拂込マシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ地方團體ハ證憑書類其ノ他ノモノニ證紙ヲ貼用セシメ又ハ證紙金額ニ相當スル現金ノ納付ヲ受ケ納稅濟印ノ押捺ヲ爲シ證紙ノ貼用ニ代ヘシムルコトヲ得
證紙ヲ貼用スルトキハ證紙ヲ貼用シタルモノノ紙面ト證紙ノ彩紋トニカケテ當該地方團體ノ印章又ハ特別徵收義務者ノ印章若ハ署名ヲ以テ判明ニ之ヲ消スベシ
第四十三條 本法ニ依リ地方稅、督促手數料、延滯金若ハ滯納處分費ヲ納付スベキ者又ハ其ノ者ノ財產ガ當該地方團體外ニ在ルトキハ府縣知事若ハ其ノ委任ヲ受ケタル官吏若ハ吏員又ハ市町村長若ハ其ノ委任ヲ受ケタル市町村吏員ハ本人又ハ財產所在地ノ當該官吏又ハ吏員ニ其ノ徵收ヲ囑託スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於ケル徵收金ノ徵收ハ囑託ヲ受ケタル者ノ屬スル地方團體ニ於ケル徵收ノ例ニ依ル
第一項ノ規定ニ依リ徵收ノ囑託ヲ爲シタル場合ニ於テハ囑託ニ係ル事務及送金ニ要スル費用ハ囑託ヲ受ケタル者ノ屬スル地方團體ノ負擔トシ囑託ニ係ル事務ニ伴フ督促手數料及滯納處分費ハ囑託ヲ受ケタル者ノ屬スル地方團體ノ收入トス
第二章 普通稅
第一節 府縣稅
第一款 附加稅
第四十四條 國稅附加稅トシテ課スルコトヲ得ベキ府縣稅左ノ如シ
地租附加稅
家屋稅附加稅
營業稅附加稅
鑛區稅附加稅
地租附加稅ノ課稅ニ付テハ地租法第七十條ノ規定ニ依ル地租ノ免除ハ之ヲ爲サザルモノト看做ス
第四十五條 地租附加稅、家屋稅附加稅及營業稅附加稅ノ賦課率ハ同一府縣ニ於テハ之ヲ同一ト爲スベシ但シ負擔ノ均衡上特ニ必要アルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第四十六條 地租附加稅、家屋稅附加稅又ハ營業稅附加稅ノ賦課率ガ本稅ノ百分ノ百ヲ超ユルトキハ內務大臣及大藏大臣ノ許可ヲ受クベシ但シ左ニ揭グル場合ニ於テ賦課率ガ本稅ノ百分ノ百二十ヲ超エザルトキハ此ノ限ニ在ラズ
一 災害應急費、災害復舊費、傳染病豫防費及國營事業費負擔金ニ充ツル爲借入レタル負債ノ元利償還ノ爲費用ヲ要スルトキ
二 災害應急又ハ復舊ノ爲費用ヲ要スルトキ
三 傳染病豫防ノ爲費用ヲ要スルトキ
第四十七條 鑛區稅附加稅ノ賦課率ハ本稅ノ百分ノ十ヲ超ユルコトヲ得ズ
第二款 獨立稅
第四十八條 獨立稅トシテ課スルコトヲ得ベキ府縣稅左ノ如シ
段別稅
船舶稅
自動車稅
電柱稅
不動產取得稅
漁業權稅
狩獵者稅
藝妓稅
第四十九條 段別稅ハ減租年期地及免租年期地(減租年期地又ハ免租年期地ニ類スル土地ヲ含ム以下之ニ同ジ)ニ對シ評定賃貸價格ヲ標準トシテ其ノ所有者(質權又ハ百年ヨリ長キ存續期間ノ定アル地上權ノ目的タル土地ニ付テハ其ノ質權者又ハ地上權者)ニ之ヲ課ス但シ減租年期地又ハ免租年期地ト爲リタル年ノ四月一日ニ始ル年度及其ノ翌年度ヨリ二年度間ハ之ヲ課スルコトヲ得ズ
前項ノ評定賃貸價格ハ類地ノ賃貸價格ニ比準シ當該土地ノ品位及情況ニ應ジ府縣條例ノ定ムル所ニ依リ府縣知事之ヲ定ムベシ
段別稅ノ賦課率ハ地租ノ稅率ニ其ノ府縣ニ於ケル地租附加稅ノ賦課率ヲ乘ジタルモノヲ超ユルコトヲ得ズ
府縣ノ全部又ハ一部ニ亙ル災害又ハ天候不順ニ因リ收穫皆無ニ歸シタル田畑ニ付テハ納稅義務者ノ申請ニ依リ其ノ年度分ノ段別稅ハ之ヲ免除スベシ
段別稅ヲ課スル府縣ニ於テハ減租年期地ニ對シテハ地租附加稅ヲ課スルコトヲ得ズ但シ第一項但書ノ規定ニ依リ段別稅ヲ課セザル期間地租附加稅ヲ課スルハ此ノ限ニ在ラズ
段別稅ハ耕地整理法第十三條ノ三ノ規定ニ依ル耕地整理減租年期地ニ對シテハ之ヲ課スルコトヲ得ズ但シ開墾減租年期、地目變換減租年期若ハ荒地免租年期ノ許可ヲ受ケタル場合又ハ耕地整理法第十六條ノ三ノ規定、其ノ準用規定若ハ昭和六年法律第二十九號附則第十五條ノ規定ニ依リ賃貸價格ガ定メラレタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第五十條 船舶稅ハ總噸數二十噸以上ノ船舶ニ對シ主タル定繫場所在ノ府縣ニ於テ其ノ所有者ニ之ヲ課ス
主タル定繫場不明ナルトキハ定繫場所在ノ府縣中船籍港ノ存スル府縣ニ主タル定繫場アルモノト看做ス
前二項ノ規定ノ適用ニ付關係府縣知事意見ヲ異ニスルトキハ其ノ申出ニ依リ內務大臣之ヲ定ム
第五十一條 自動車稅ハ自動車ニ對シ主タル定置場所在ノ府縣ニ於テ其ノ所有者ニ之ヲ課ス
第五十二條 電柱稅ハ電柱ニ對シ其ノ所在ノ府縣ニ於テ其ノ所有者ニ之ヲ課ス
第五十三條 不動產取得稅ハ不動產ノ取得ニ對シ其ノ不動產所在ノ府縣ニ於テ其ノ取得者ニ之ヲ課ス
左ニ揭グル不動產ノ取得ニ對シテハ不動產取得稅ヲ課スルコトヲ得ズ
一 家督相續又ハ遺產相續ニ因ル不動產ノ取得
二 法人ノ合併ニ因ル不動產ノ取得
三 保險業法ニ依リ會社ガ其ノ保險契約全部ノ移轉契約ニ依リテ不動產ヲ移轉スル場合ニ於ケル不動產ノ取得
四 委託者ヨリ受託者ニ信託財產ヲ移ス場合ニ於ケル不動產ノ取得
五 委託者ノミガ信託財產ノ元本ノ受益者タル信託ニ因リ受託者ヨリ受益者ニ信託財產ヲ移ス場合ニ於ケル不動產ノ取得
六 信託ノ受託者交迭ノ場合ニ於ケル新受託者ノ不動產ノ取得
第五十四條 漁業權稅ハ漁業權(入漁權ヲ除ク)又ハ其ノ取得ニ對シ其ノ漁場所在ノ府縣ニ於テ其ノ漁業權者又ハ漁業權取得者ニ之ヲ課ス
前條第二項第一號及第二號ノ規定ハ前項ノ漁業權ノ取得ニ對スル漁業權稅ノ課稅ニ付之ヲ準用ス
第五十五條 狩獵者稅ハ狩獵ノ免許ヲ受クル者ニ對シ其ノ住所地所在ノ府縣ニ於テ之ヲ課ス
第五十六條 藝妓稅ハ藝妓其ノ他之ニ類スル者ニ對シ其ノ住所地所在ノ府縣ニ於テ之ヲ課ス
第二節 市町村稅
第一款 附加稅
第五十七條 國稅附加稅トシテ課スルコトヲ得ベキ市町村稅左ノ如シ
地租附加稅
家屋稅附加稅
營業稅附加稅
鑛區稅附加稅
第四十四條第二項ノ規定ハ前項ノ地租附加稅ノ課稅ニ付之ヲ準用ス
第五十八條 府縣附加稅トシテ課スルコトヲ得ベキ市町村稅左ノ如シ
段別稅附加稅
船舶稅附加稅
自動車稅附加稅
電柱稅附加稅
不動產取得稅附加稅
漁業權稅附加稅
狩獵者稅附加稅
藝妓稅附加稅
第五十九條 地租附加稅、家屋稅附加稅及營業稅附加稅ノ賦課率ハ同一市町村ニ於テハ之ヲ同一ト爲スベシ但シ負擔ノ均衡上特ニ必要アル場合ニ於テ府縣知事ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第六十條 府縣稅附加稅(段別稅附加稅ヲ除ク)ノ賦課率ハ同一市町村ニ於テハ之ヲ同一ト爲スベシ但シ負擔ノ均衡上特ニ必要アルトキハ此ノ限ニ在ラズ
段別稅附加稅ノ賦課率ハ地租ノ稅率ニ其ノ市町村ニ於ケル地租附加稅ノ賦課率ヲ乘ジタルモノヲ當該府縣ニ於ケル段別稅ノ賦課率ヲ以テ除シテ得タルモノヲ超ユルコトヲ得ズ
第六十一條 地租附加稅、家屋稅附加稅又ハ營業稅附加稅ノ賦課率ガ本稅ノ百分ノ二百ヲ超ユルトキハ府縣知事ノ許可ヲ受クベシ但シ左ニ揭グル場合ニ於テ賦課率ガ本稅ノ百分ノ二百四十ヲ超エザルトキハ此ノ限ニ在ラズ
一 小學校營繕費、災害應急費、災害復舊費、傳染病豫防費及國營事業費負擔金ニ充ツル爲借入レタル負債ノ元利償還ノ爲費用ヲ要スルトキ
二 災害應急又ハ復舊ノ爲費用ヲ要スルトキ
三 傳染病豫防ノ爲費用ヲ要スルトキ
第六十二條 鑛區稅附加稅ノ賦課率ハ本稅ノ百分ノ十ヲ超ユルコトヲ得ズ
第二款 獨立稅
第六十三條 獨立稅トシテ課スルコトヲ得ベキ市町村稅左ノ如シ
市町村民稅
舟稅
自轉車稅
荷車稅
金庫稅
扇風機稅
屠畜稅
犬稅
府縣ニ於テ第四十八條ニ揭グル獨立稅ヲ課セザルモノアルトキハ市町村ハ之ヲ市町村ノ獨立稅トシテ課スルコトヲ得
市町村ハ前二項ニ揭グルモノノ外別ニ稅目ヲ起シテ獨立稅ヲ課スルコトヲ得
前項ノ獨立稅ノ新設及變更ニ付テハ內務大臣及大藏大臣ノ許可ヲ受クベシ
第六十四條 市町村民稅ハ左ニ揭グル者ニ對シ之ヲ課ス但シ貧困ニ因リ生活ノ爲公私ノ救助ヲ受ケ又ハ扶助ヲ受クル者ニ對シテハ此ノ限ニ在ラズ
一 市町村內ニ一戶ヲ構フル個人又ハ一戶ヲ構ヘザルモ獨立ノ生計ヲ營ム個人
二 前號ニ該當セザルモ市町村內ニ事務所、營業所又ハ家屋敷ヲ有スル個人
三 市町村內ニ事務所又ハ營業所ヲ有スル法人
前項第三號ノ法人ニ付テハ其ノ事務所又ハ營業所每ニ市町村民稅ヲ課ス
第六十五條 市町村民稅ノ賦課期日ハ十月一日トス
前項ニ定ムルモノノ外市町村民稅ノ課稅方法ハ市町村條例ヲ以テ之ヲ規定スベシ
第六條及第十條ノ規定ハ市町村民稅ニ付テハ之ヲ適用セズ
第六十六條 市町村民稅ノ納稅義務者一人ニ對スル賦課額ハ左ノ金額ヲ超ユルコトヲ得ズ
人口七十萬以上ノ市 二千圓
其ノ他ノ市 千五百圓
町村 千圓
市町村民稅ノ賦課總額ハ左ノ金額ニ第六十四條ニ定ムル納稅義務者數ヲ乘ジタル額ヲ超ユルコトヲ得ズ
人口七十萬以上ノ市 八圓
其ノ他ノ市 六圓
町村 四圓
前二項ノ規定ノ適用ニ付テハ第六十四條第一項第三號ノ法人ハ其ノ事務所又ハ營業所每ニ獨立ノ納稅義務者ト看做ス
第六十七條 舟稅ハ總噸數二十噸未滿ノ舟ニ對シ主タル定繫所所在ノ市町村ニ於テ其ノ所有者ニ之ヲ課ス
主タル定繫所不明ナルトキハ定繫所所在ノ市町村中船籍港ノ存スル市町村ニ主タル定繫所アルモノト看做ス
前二項ノ規定ノ適用ニ付關係市町村長意見ヲ異ニスルトキハ其ノ申出ニ依リ府縣知事(關係市町村數府縣ニ亙ル場合ニ於テハ內務大臣)之ヲ定ム
第六十八條 自轉車稅ハ自轉車ニ對シ其ノ定置所所在ノ市町村ニ於テ其ノ所有者ニ之ヲ課ス
第六十九條 荷車稅ハ荷車ニ對シ其ノ定置所所在ノ市町村ニ於テ其ノ所有者ニ之ヲ課ス
第七十條 金庫稅ハ金庫ニ對シ其ノ所在ノ市町村ニ於テ其ノ所有者ニ之ヲ課ス
第七十一條 扇風機稅ハ扇風機ニ對シ其ノ所在ノ市町村ニ於テ其ノ使用者ニ之ヲ課ス
第七十二條 屠畜稅ハ屠畜ニ對シ其ノ屠殺場所在ノ市町村ニ於テ其ノ獸畜ノ所有者ニ之ヲ課ス
第七十三條 犬稅ハ犬ニ對シ其ノ飼育所所在ノ市町村ニ於テ其ノ所有者ニ之ヲ課ス
第七十四條 第四十九條乃至第五十六條ノ規定ハ第六十三條第二項ノ規定ニ依ル獨立稅ノ課稅ニ付之ヲ準用ス此ノ場合ニ於テハ第五十條第三項中內務大臣トアルハ府縣知事(關係市町村數府縣ニ亙ル場合ニ於テハ內務大臣)トス
第三章 目的稅
第七十五條 府縣ハ都市計畫法ノ施行ニ要スル費用ニ充ツル爲左ノ都市計畫稅ヲ課スルコトヲ得
地租割 地租ノ百分ノ二十五以內
家屋稅割 家屋稅ノ百分ノ二十五以內
營業稅割 營業稅ノ百分ノ二十五以內
府縣稅獨立稅割 府縣稅獨立稅ノ百分ノ十三以內
第四十四條第二項ノ規定ハ前項ノ地租割ノ課稅ニ付之ヲ準用ス
第七十六條 市町村ハ都市計畫法ノ施行ニ要スル費用ニ充ツル爲左ノ都市計畫稅ヲ課スルコトヲ得
地租割 地租ノ百分ノ六十八以內
家屋稅割 家屋稅ノ百分ノ六十八以內
營業稅割 營業稅ノ百分ノ六十八以內
府縣稅獨立稅割 府縣稅獨立稅ノ百分ノ三十四以內
市町村稅獨立稅割 市町村稅獨立稅ノ百分ノ三十四以內
市町村民稅ニ對シテハ市町村稅獨立稅割ヲ課スルコトヲ得ズ
市町村ハ第一項ニ揭グルモノノ外別ニ稅目ヲ起シテ都市計畫稅ヲ課スルコトヲ得
前項ノ都市計畫稅ノ新設及變更ニ付テハ內務大臣及大藏大臣ノ許可ヲ受クベシ
第四十四條第二項ノ規定ハ第一項ノ地租割ノ課稅ニ付之ヲ準用ス
第七十七條 府縣ハ水利ニ關スル事業ニ要スル費用ニ充ツル爲該事業ニ因リ特ニ利益ヲ受クル土地ニ對シ左ノ水利稅ヲ課スルコトヲ得
地租割
段別割
第四十四條第二項ノ規定ハ前項ノ地租割ノ課稅ニ、第四十九條第四項ノ規定ハ前項ノ段別割ノ課稅ニ付之ヲ準用ス
水利稅ノ賦課額(數年ヲ期シテ賦課スルトキハ其ノ總額)ハ當該土地ノ受益ノ限度ヲ超ユルコトヲ得ズ
第七十八條 市町村ハ水利ニ關スル事業其ノ他土地ノ利益ト爲ルベキ事業ニ要スル費用ニ充ツル爲該事業ニ因リ特ニ利益ヲ受クル土地ニ對シ左ノ水利地益稅ヲ課スルコトヲ得
地租割
段別割
第四十四條第二項ノ規定ハ前項ノ地租割ノ課稅ニ、第四十九條第四項ノ規定ハ前項ノ段別割ノ課稅ニ付之ヲ準用ス
前條第三項ノ規定ハ水利地益稅ノ課稅ニ付之ヲ準用ス
第七十九條 市町村ハ共同作業場、共同倉庫、共同集荷場其ノ他之ニ類スル施設ニ要スル費用ニ充ツル爲該施設ニ因リ特ニ利益ヲ受クル者ニ對シ共同施設稅ヲ課スルコトヲ得
共同施設稅ノ新設及變更ニ付テハ府縣知事ノ許可ヲ受クベシ
共同施設稅ノ賦課額(數年ヲ期シテ賦課スルトキハ其ノ總額)ハ當該納稅義務者ノ受益ノ限度ヲ超ユルコトヲ得ズ
第四條及第六條ノ規定ハ共同施設稅ニ付テハ之ヲ適用セズ
第四章 補則
第八十條 詐僞其ノ他不正ノ行爲ニ依リ地方稅ヲ逋脫シタル者ニ對シテハ條例ヲ以テ其ノ逋脫シタル金額ノ五倍ニ相當スル金額(其ノ金額十圓未滿ナルトキハ十圓)以下ノ過料ヲ科スル規定ヲ設クルコトヲ得
前項ニ定ムルモノノ外地方稅ノ賦課徵收ニ關シテハ條例ヲ以テ二十圓以下ノ過料ヲ科スル規定ヲ設クルコトヲ得
府縣稅ノ賦課徵收ニ關シ過料ヲ科セラレタル者其ノ處分ニ不服アルトキハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
市町村稅ノ賦課徵收ニ關シ過料ヲ科セラレタル者其ノ處分ニ不服アルトキハ府縣參事會ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アルトキハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ付テハ市町村長又ハ府縣知事ヨリモ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第二十一條乃至第二十三條及第二十五條竝ニ府縣制第百二十八條及第百二十八條ノ二ノ規定ハ前五項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第八十一條 地方稅ノ賦課ニ關シ必要アル場合ニ於テハ當該官吏及吏員ハ日出ヨリ日沒迄ノ間、事業經營者ニ關シテハ仍其ノ執務時間內家宅、事務所若ハ營業所ニ臨檢シ又ハ帳簿物件ノ檢査ヲ爲スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ當該官吏及吏員ハ其ノ身分ヲ證明スベキ證票ヲ携帶スベシ
第八十二條 町村組合ニシテ町村事務ノ全部ヲ共同處理スルモノハ本法ノ適用ニ付テハ之ヲ一町村、其ノ組合會ハ之ヲ町村會、其ノ組合管理者ハ之ヲ町村長、其ノ組合吏員ハ之ヲ町村吏員、其ノ組合條例ハ之ヲ町村條例ト看做ス
第八十三條 本法又ハ他ノ法律ニ定ムルモノヲ除クノ外地方稅及其ノ賦課徵收ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第八十四條 本法ニ依リ府縣知事ノ許可ヲ要スル事項ニシテ勅令ヲ以テ指定スルモノハ其ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ許可ヲ受クベシ
本法ニ依リ主務大臣ノ許可ヲ要スル事項ニ付テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ許可ノ職權ハ之ヲ府縣知事ニ委任スルコトヲ得
本法ニ依リ主務大臣又ハ府縣知事ノ許可ヲ要スル事項ニシテ輕易ナルモノニ付テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ許可ヲ受ケシメザルコトヲ得
第八十五條 主務大臣又ハ府縣知事ノ許可ヲ要スル事項ニ付テハ主務大臣又ハ府縣知事ハ許可申請ノ趣旨ニ反セズト認ムル範圍內ニ於テ更正シテ許可ヲ與フルコトヲ得
第八十六條 島嶼ニ於ケル地方稅及其ノ賦課徵收ニ關シ本法ニ依リ難キ事項ニ付テハ勅令ヲ以テ別段ノ定ヲ爲スコトヲ得
附 則
第八十七條 本法ハ昭和十五年度分地方稅ヨリ之ヲ適用ス但シ家屋稅附加稅及家屋稅割ニ關スル規定ハ昭和十七年度分ヨリ之ヲ適用ス
昭和十六年度分迄ニ限リ段別稅及同附加稅ノ課稅ニ關シ本法ニ依リ難キ事情アルトキハ府縣ニ在リテハ內務大臣及大藏大臣、市町村ニ在リテハ府縣知事ノ許可ヲ受ケ別段ノ規定ヲ設クルコトヲ得
宗敎團體法第三十五條第一項ノ佛堂ノ用ニ供スル建物及其ノ境內地ニ對シテハ有料ニテ使用セシムルモノヲ除クノ外之ニ地方稅ヲ課スルコトヲ得ズ
第八十八條 明治四十一年法律第三十七號及大正十五年法律第二十四號ハ昭和十四年度分限リ之ヲ廢止ス
家屋稅及同附加稅ニ關シテハ前項ノ規定ニ拘ラズ昭和十六年度分迄ニ限リ仍從前ノ規定ニ依ル
第八十九條 昭和十四年度分以前ノ所得稅附加稅、營業收益稅附加稅及鑛產稅附加稅ニシテ昭和十五年四月一日以後ニ於テ本稅ノ決定セラルルモノノ賦課ニ付テハ第七條及第八條ノ例ニ依ル
第九十條 昭和十四年法律第七十八號第一條第一項ノ規定ニ依リ讓與セラルル不動產ノ取得ニ對シテハ命令ノ定ムル所ニ依リ不動產取得稅ヲ課スルコトヲ得ズ
第九十一條 市制第百六十七條第六號又ハ町村制第百四十七條第六號ノ規定ニ依リ許可ヲ受ケタル特別稅ニシテ本法施行ノ際現ニ存スルモノハ內務大臣及大藏大臣ノ指定スル稅目ニ限リ第六十三條第四項ノ規定ニ依リ許可ヲ受ケタル獨立稅ト看做ス
第九十二條 
都市計畫法第八條ヲ削除ス
昭和十四年度分以前ノ都市計畫特別稅ニ關シテハ仍從前ノ規定ニ依ル此ノ場合ニ於テハ第八十九條ノ規定ハ營業收益稅割ノ課稅ニ付之ヲ準用ス
都市計畫特別稅家屋稅ニ關シテハ昭和十六年度分迄ニ限リ仍從前ノ規定ニ依ル
第九十三條 昭和十五年度及昭和十六年度分ノ家屋稅、家屋稅附加稅及都市計畫特別稅家屋稅ノ賦課ノ制限ニ關シテハ命令ヲ以テ別段ノ定ヲ爲スコトヲ得
昭和十五年度及昭和十六年度分ノ家屋稅ノ課稅標準タルベキ家屋ノ賃貸價格ハ大正十五年法律第二十四號第十條ノ規定ニ依ル家屋ノ賃貸價格ニ付命令ノ定ムル所ニ依リ政府ニ於テ補整ヲ加ヘタルモノニ依ル
家屋稅、家屋稅附加稅及都市計畫特別稅家屋稅ノ賦課ニ關シテハ前項ノ規定ニ依ル家屋ノ賃貸價格ノ補整ヲ理由トシテ異議ノ申立竝ニ訴願及訴訟ノ提起ヲ爲スコトヲ得ズ
第九十四條 罹災救助基金法中左ノ通改正ス
第四條 削除
第十五條ノ二中「且地租、營業收益稅及所得稅ノ附加稅ノ賦課ガ明治四十一年法律第三十七號第一條乃至第三條ノ制限ニ達シ」ヲ削ル
昭和十四年度分以前ノ同法第四條ノ規定ニ依ル附加稅ニ關シテハ仍從前ノ規定ニ依ル
第九十五條 
昭和七年法律第三十三號附則第二項中「且地租、營業收益稅及所得稅ノ附加稅ノ賦課ガ明治四十一年法律第三十七號第一條乃至第三條ノ制限ニ達シ」ヲ削ル
第九十六條 本法施行ノ際必要ナル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル地方税法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十五年三月二十九日
内閣総理大臣 米内光政
大蔵大臣 桜内幸雄
内務大臣 伯爵 児玉秀雄
厚生大臣 吉田茂
法律第六十号
地方税法目次
第一章
総則
第一節
通則
第二節
賦課
第三節
徴収
第一款
普通徴収
第二款
特別徴収
第二章
普通税
第一節
府県税
第一款
附加税
第二款
独立税
第二節
市町村税
第一款
附加税
第二款
独立税
第三章
目的税
第四章
補則
地方税法
第一章 総則
第一節 通則
第一条 本法ニ於テ地方団体トハ府県及市町村ヲ、地方税トハ府県税及市町村税ヲ謂フ
本法ニ於テ条例トハ府県条例及市町村条例ヲ謂フ
本法中府県ニ関スル規定ハ北海道地方費ニ、市町村ニ関スル規定ハ町村制ニ代ル制ヲ施行スル地ノ町村ニ之ヲ準用ス
前項ノ場合ニ於テハ府県税、府県知事、府県吏員、府県参事会又ハ府県条例トアルハ夫々北海道地方税、北海道庁長官、北海道地方費吏員、北海道参事会又ハ北海道条例トシ市町村税、市町村長、市町村吏員、市町村会又ハ市町村条例トアルハ夫々町村制ニ代ル制ヲ施行スル地ノ町村ノ町村税、町村長、町村吏員、町村会又ハ町村条例若ハ町村条例ニ代ル町村規則トス
本法中市町村ニ関スル規定ヲ北海道ノ市ニ適用スル場合ニ於テハ府県知事又ハ府県参事会トアルハ夫々北海道庁長官又ハ北海道参事会トス
第二条 府県税トシテ課スルコトヲ得ベキモノ左ノ如シ
一 普通税
国税附加税
独立税
二 目的税
市町村税トシテ課スルコトヲ得ベキモノ左ノ如シ
一 普通税
国税附加税
府県税附加税
独立税
二 目的税
第三条 地方団体ニ於テ地方税及其ノ賦課徴収ニ関シ必要ナル事項ヲ定ムルハ条例ヲ以テ之ヲ為スベシ
第二節 賦課
第四条 地方団体内ニ住所、居所、家屋敷、事務所又ハ営業所ヲ有スル者ハ地方税ヲ納ムル義務ヲ負フ
地方団体内ニ住所、居所、家屋敷、事務所又ハ営業所ヲ有セズト雖モ地方団体内ニ於テ土地、家屋又ハ物件ヲ所有シ、使用シ又ハ占有スル者ハ其ノ土地、家屋若ハ物件又ハ其ノ収入ニ対シ課スル地方税ヲ、地方団体内ニ於テ一定ノ行為ヲ為ス者ハ其ノ行為ニ対シ課スル地方税ヲ納ムル義務ヲ負フ
第五条 法人合併シタル場合ニ於テ合併後存続スル法人又ハ合併ニ因リ設立シタル法人ハ合併ニ因リ消滅シタル法人ニ賦課セラルベキ地方税ヲ納ムル義務ヲ負フ
法人解散シタル場合ニ於テ其ノ法人ニ賦課セラルベキ地方税ヲ納付セズシテ残余財産ヲ分配シタルトキハ清算人ハ残余財産ノ価額ヲ限度トシテ連帯シテ其ノ法人ニ賦課セラルベキ地方税ヲ納ムル義務ヲ負フ
相続開始アリタル場合ニ於テ相続人又ハ相続財団ハ相続開始前ノ事実ニ付被相続人ニ賦課セラルベキ地方税ヲ納ムル義務ヲ負フ但シ国籍喪失ニ因ル相続人又ハ限定承認ヲ為シタル相続人ハ相続ニ因リテ得タル財産ノ価額ヲ限度トシテ其ノ義務ヲ負ヒ戸主ノ死亡以外ノ原因ニ因リ家督相続ノ開始アリタルトキハ被相続人モ亦其ノ義務ヲ負フ
第六条 納税義務者ノ地方団体外ニ於テ所有シ、使用シ若ハ占有スル土地、家屋若ハ物件又ハ其ノ収入ニ対シテハ地方税ヲ課スルコトヲ得ズ地方団体外ニ於テ営業所ヲ設ケテ為ス営業又ハ其ノ収入ニ対シ亦同ジ
第七条 数府県ニ於テ営業所ヲ設ケテ営業ヲ為ス者ニ関係府県ニ於テ賦課スル営業税附加税(営業税割ヲ含ム)ノ課税標準タルベキ本税額ハ本税ヲ決定シタル税務官署ノ定ムル所ニ依ル
税務官署ハ本税ヲ決定シタルトキハ直ニ前項ノ規定ニ依リ本税額ヲ定メ之ヲ関係府県知事ニ通知スベシ
関係府県知事ニ於テ第一項ノ規定ニ依リ税務官署ノ定メタル本税額ニ異議アルトキハ内務大臣及大蔵大臣本税額ヲ定ム
前項ノ異議ハ其ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ三十日以内ニ之ヲ申出ヅベシ
内務大臣及大蔵大臣第三項ノ異議ノ申出ヲ受理シタルトキハ三月以内ニ之ヲ決定スベシ
第八条 同一府県内又ハ数府県内ノ数市町村ニ於テ営業所ヲ設ケテ営業ヲ為ス者ニ関係市町村ニ於テ賦課スル営業税附加税(営業税割ヲ含ム)ノ課税標準タルベキ本税額ハ左ノ各号ノ定ムル所ニ依ル
一 関係市町村同一府県内ニ在ルトキハ当該市町村ニ付府県知事ノ定ムル額
二 関係市町村数府県ニ亘ル場合ニ於テ一府県内ノ関係市町村一ナルトキハ前条ノ規定ニ依リ定リタル当該府県ノ本税額
三 関係市町村数府県ニ亘ル場合ニ於テ一府県内ノ関係市町村二以上ナルトキハ前条ノ規定ニ依リ定リタル当該府県ノ本税額ニ基キ当該市町村ニ付府県知事ノ定ムル額
前項ノ規定ニ依リ定リタル本税額ハ府県知事直ニ之ヲ関係市町村長ニ通知スベシ
関係市町村長ニ於テ第一項第一号又ハ第三号ノ規定ニ依リ府県知事ノ定メタル本税額ニ異議アルトキハ本税額ハ内務大臣及大蔵大臣之ヲ定ム
前条第四項及第五項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第九条 鉱区又ハ砂鉱区ガ数府県又ハ数市町村ニ亘ル場合ニ関係地方団体ニ於テ賦課スル鉱区税附加税ノ課税標準タルベキ本税額ハ鉱区又ハ砂鉱区ノ面積ニ依リ本税ヲ按分シタルモノニ依ル
漁場ガ数市町村ニ亘ル場合ニ関係市町村ニ於テ賦課スル漁業権税附加税ノ課税標準タルベキ本税額ハ漁場ノ面積ニ依リ本税ヲ按分シタルモノニ依ル
第十条 年税又ハ期税タル地方税ノ賦課期日後納税義務ノ発生シタル者ニハ其ノ発生シタル月ノ翌月ヨリ月割ヲ以テ地方税ヲ賦課ス
前項ノ地方税ノ賦課期日後納税義務ノ消滅シタル者ニハ其ノ消滅シタル月迄月割ヲ以テ地方税ヲ賦課ス
第一項ノ地方税ノ賦課後其ノ課税客体ノ承継アリタル場合ニ於テハ前ノ納税者ノ納税ヲ以テ後ノ納税義務者ノ納税ト看做シ前二項ノ規定ヲ適用セズ
命令ヲ以テ指定スル税目ニ付テハ第二項ノ規定ニ拘ラズ賦課後納税義務消滅スルモ既ニ交付シタル徴税令書又ハ徴税伝令書ニ記載シタル賦課額ハ之ヲ変更セズ
月税タル地方税ノ賦課期日後納税義務ノ発生シタル者ニハ其ノ発生シタル月ノ翌月ヨリ地方税ヲ賦課シ其ノ賦課期日後納税義務ノ消滅シタル者ニハ其ノ消滅シタル月分ノ全額ヲ賦課ス
一ノ地方団体ニ於テ納税義務消滅シ他ノ地方団体ニ於テ納税義務発生シタルトキハ納税義務ノ発生シタル地方団体ハ納税義務ノ消滅シタル地方団体ニ於テ賦課シタル部分ニ付テハ地方税ヲ賦課スルコトヲ得ズ
第十一条 国税附加税(地租割、家屋税割及営業税割ヲ含ム)ノ賦課率ハ本税ノ属スル年ノ四月一日ニ始ル年度ノ賦課率ニ依ル但シ法人ノ営業税附加税(営業税割ヲ含ム)ノ賦課率ハ法人ノ事業年度終了ノ日又ハ合併若ハ解散ノ日ノ属スル年度ノ賦課率ニ依ル
府県税附加税(府県税独立税割及市町村税独立税割ヲ含ム)ノ賦課率ハ本税ノ属スル年度ノ賦課率ニ依ル
第十二条 左ニ掲グルモノニ対シテハ地方税ヲ課スルコトヲ得ズ但シ第一号、第三号及第四号ニ掲グル土地、家屋又ハ物件ヲ他ニ使用収益セシムル場合ニ於テ其ノ使用収益ヲ為ス者ニ課スルハ此ノ限ニ在ラズ
一 神社、寺院又ハ教会ノ用ニ供スル建物及其ノ境内地又ハ構内地但シ有料ニテ使用スルモノヲ除ク
二 国、地方団体其ノ他勅令ヲ以テ指定スル公共団体ノ事業又ハ行為
三 国、地方団体其ノ他勅令ヲ以テ指定スル公共団体ニ於テ公用又ハ公共用ニ供スル家屋又ハ物件但シ有料ニテ使用スルモノヲ除ク
四 国有ノ土地、家屋又ハ物件
五 地租法第六十五条及第六十六条ノ規定ニ依リ地租ヲ免除セラレタル土地但シ其ノ年度分ニ限ル
前項ニ掲グルモノヲ除クノ外地方税ヲ課スルコトヲ得ザルモノハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第十三条 地方団体ハ公益上其ノ他ノ事由ニ因リ課税ヲ不適当トスルトキハ課税ヲ為サザルコトヲ得
地方団体ハ公益上其ノ他ノ事由ニ因リ必要アルトキハ不均一ノ課税ヲ為スコトヲ得
第十四条 地方団体ノ一部ニ対シ特ニ利益アル事件ニ関シテハ地方団体ハ不均一ノ課税ヲ為シ又ハ其ノ一部ニ課税ヲ為スコトヲ得
第三節 徴収
第一款 普通徴収
第十五条 市町村ハ其ノ市町村内ノ府県税ヲ徴収シ之ヲ府県ニ納入スルノ義務ヲ負フ但シ第十七条第二項、第三十五条第一項又ハ第四十二条第一項ノ規定ニ依リ徴収スルモノニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
府県ハ前項ノ規定ニ依ル徴収ノ費用ヲ補償スル為徴収金額及徴税伝令書数ニ応ジ府県条例ノ定ムル所ニ依リ其ノ市町村ニ対シ取扱費ヲ交付スベシ
前項ノ規定ニ依ル府県条例ノ規定ハ内務大臣ノ許可ヲ受クベシ
第十六条 市町村避クベカラザル事故ニ因リ既収ノ府県税ヲ失ヒタルトキハ府県知事ハ其ノ申請ニ依リ税金納入ノ義務ヲ免除スベシ
府県知事前項ノ申請ヲ受理シタル日ヨリ三月以内ニ前項ノ規定ニ依ル免除ヲ為サザルトキハ市町村ハ内務大臣ニ訴願スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル訴願ノ提起ハ処分ヲ受ケタル日又ハ之ヲ受ケズシテ前項ノ期間ヲ経過シタルトキヨリ二十一日以内ニ之ヲ為スベシ
内務大臣訴願ヲ受理シタルトキハ三月以内ニ之ヲ裁決スベシ
第十七条 府県税ヲ賦課徴収セントスルトキハ府県知事又ハ其ノ委任ヲ受ケタル官吏若ハ府県吏員ハ市町村ニ対シ徴税命令書ヲ発シ市町村長又ハ其ノ委任ヲ受ケタル市町村吏員ハ徴税命令書ニ依リ徴税伝令書ヲ調製シ之ヲ納税者ニ交付スベシ
府県知事又ハ其ノ委任ヲ受ケタル官吏若ハ府県吏員ハ納税者ニ対シ直接ニ徴税令書ヲ交付スルコトヲ得
第十八条 市町村税ヲ賦課徴収セントスルトキハ市町村長又ハ其ノ委任ヲ受ケタル市町村吏員ハ徴税令書ヲ納税者ニ交付スベシ
第十九条 第十七条第一項ノ徴税伝令書又ハ前条ノ徴税令書ヲ受ケタル納税者ハ其ノ税金ヲ市町村ニ払込ミ其ノ領収証ヲ得テ納税ノ義務ヲ了ス
第十七条第二項ノ徴税令書ヲ受ケタル納税者ハ其ノ税金ヲ府県ニ払込ミ其ノ領収証ヲ得テ納税ノ義務ヲ了ス
市町村ハ其ノ徴収シタル府県税ヲ府県ニ払込ミ其ノ領収証ヲ得テ税金納入ノ義務ヲ了ス
税金ノ払込又ハ納入ニ付郵便振替貯金ノ方法ニ依リタル場合ニ於テハ納税者又ハ市町村ハ税金ヲ郵便官署ニ払込ムニ依リテ其ノ義務ヲ了ス
第二十条 府県税ノ賦課ヲ受ケタル者其ノ賦課ニ付違法又ハ錯誤アリト認ムルトキハ徴税令書又ハ徴税伝令書ノ交付ヲ受ケタル日ヨリ三十日以内ニ府県知事ニ異議ノ申立ヲ為スコトヲ得
市町村税ノ賦課ヲ受ケタル者其ノ賦課ニ付違法又ハ錯誤アリト認ムルトキハ徴税令書ノ交付ヲ受ケタル日ヨリ三十日以内ニ市町村長ニ異議ノ申立ヲ為スコトヲ得
前二項ノ異議ノ申立アリタルトキハ府県知事又ハ市町村長ハ七日以内ニ之ヲ府県参事会又ハ市参事会若ハ町村会ノ決定ニ付スベシ
前項ノ決定ヲ受ケタル者其ノ決定ニ不服アルトキハ府県税ニ付テハ行政裁判所ニ出訴シ市町村税ニ付テハ府県参事会ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アルトキハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得第六項ノ訴願ニ対スル裁決ニ不服アルトキ亦同ジ
第三項ノ府県参事会ノ決定ニ付テハ府県知事又ハ其ノ委任ヲ受ケタル官吏若ハ府県吏員ヨリモ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第三項ノ市参事会又ハ町村会ノ決定ニ付テハ市町村長又ハ其ノ委任ヲ受ケタル市町村吏員ヨリモ府県参事会ニ訴願スルコトヲ得
第四項ノ裁決又ハ前項ノ訴願ニ対スル裁決ニ付テハ市町村長若ハ其ノ委任ヲ受ケタル市町村吏員又ハ府県知事ヨリモ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
府県制第百二十八条及第百二十八条ノ二ノ規定ハ前七項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十一条 府県税ノ徴税令書若ハ徴税伝令書又ハ市町村税ノ徴税令書ヲ受ケタル納税者納期限迄ニ税金ヲ完納セザルトキハ府県知事若ハ其ノ委任ヲ受ケタル官吏若ハ吏員又ハ市町村長若ハ其ノ委任ヲ受ケタル市町村吏員ハ遅クトモ納期限後二十日目迄ニ督促状ヲ発スベシ
督促状ニハ条例ヲ以テ定ムル期間内ニ於テ相当ノ期限ヲ指定スベシ
特別ノ事情アル地方団体ニ於テハ条例ヲ以テ第一項ニ規定スル期限ト異リタル期限ヲ定ムルコトヲ得
第二十二条 前条ノ督促状ヲ発シタルトキハ手数料ヲ徴収スベシ
前項ノ手数料ノ額ハ条例ヲ以テ之ヲ規定スベシ
府県税ニ関シ市町村吏員ヲシテ督促状ヲ発セシメタル場合ニ於ケル手数料ハ其ノ市町村ノ収入トス
第二十三条 第二十一条ノ規定ニ依ル督促ヲ受ケタル者督促状ノ指定期限迄ニ税金及督促手数料ヲ完納セザルトキハ府県知事若ハ其ノ委任ヲ受ケタル官吏若ハ吏員又ハ市町村長若ハ其ノ委任ヲ受ケタル市町村吏員ハ条例ヲ以テ定ムル期間内ニ国税滞納処分ノ例ニ依リ之ヲ処分スベシ
前項ノ規定ニ依ル処分ニ不服アル者ハ府県参事会ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アルトキハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ付テハ府県税ニ在リテハ府県知事又ハ其ノ委任ヲ受ケタル官吏若ハ吏員、市町村税ニ在リテハ市町村長若ハ其ノ委任ヲ受ケタル市町村吏員又ハ府県知事ヨリモ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第一項ノ規定ニ依ル処分中差押物件ノ公売ハ差押処分ノ確定ニ至ル迄之ヲ停止ス
第一項ノ規定ニ依ル処分ハ其ノ地方団体ノ区域外ニ於テモ亦之ヲ為スコトヲ得
府県制第三十八条、第百二十八条及第百二十八条ノ二ノ規定ハ第二項及第三項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十四条 督促ヲ為シタル場合ニ於テハ一日ニ付税金額ノ一万分ノ四以内ニ於テ条例ノ定ムル割合ヲ以テ納期限ノ翌日ヨリ税金完納又ハ財産差押ノ日ノ前日迄ノ日数ニ依リ計算シタル延滞金ヲ徴収スベシ但シ左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラズ
一 徴税令書又ハ徴税伝令書一通ノ税金額五円未満ナルトキ
二 納期ヲ繰上ゲ徴収ヲ為ストキ
三 納税者ノ住所及居所ガ不明ナル為又ハ帝国内ニ在ラザル為公示送達ノ方法ニ依リ納税ノ命令又ハ督促ヲ為シタルトキ
四 滞納ニ付酌量スベキ情状アリト認ムルトキ
督促状ノ指定期限迄ニ税金及督促手数料ヲ完納シタルトキハ延滞金ハ之ヲ徴収セズ
第二十五条 府県ノ徴収金(府県税並ニ其ノ督促手数料、延滞金及滞納処分費)ハ国ノ徴収金ニ、市町村ノ徴収金(市町村税並ニ其ノ督促手数料、延滞金及滞納処分費)ハ府県ノ徴収金ニ次デ先取特権ヲ有シ其ノ追徴、還付及時効ニ付テハ国税ノ例ニ依ル但シ附加税タル地方税ニシテ本税ノ決定ニ因リ賦課シ得ルニ至ルモノノ時効ハ本税決定ノ日ヨリ進行ス
第二十三条第二項及第三項並ニ府県制第百二十八条及第百二十八条ノ二ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十六条 納税者左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ既ニ徴税令書又ハ徴税伝令書ヲ交付シタル地方税ニ付テハ納期前ト雖モ納税義務ノ確定シタル税金ノ全額ヲ徴収スルコトヲ得
一 国税、地方税其ノ他ノ公課又ハ徴収ノ嘱託ヲ受ケタル満洲国ノ国税二付滞納処分ヲ受クルトキ
二 強制執行ヲ受クルトキ
三 破産ノ宣告ヲ受ケタルトキ
四 相続人限定承認ヲ為シタルトキ
五 競売ノ開始アリタルトキ
六 法人解散シタルトキ
七 納税者逋脱ヲ図ルノ所為アリト認ムルトキ
前項ノ規定ニ依ル徴収ニ付テハ国税徴収ノ例ニ依ル
第二十七条 府県知事又ハ市町村長ハ条例ノ定ムル所ニ依リ納税者中特別ノ事情アル者ニ対シ納税延期ヲ許スコトヲ得
第二十八条 府県知事又ハ市町村長ハ特別ノ事情アル場合又ハ特別ノ事情アル者ニ限リ府県参事会又ハ市町村会ノ議決ヲ経テ地方税ヲ減免スルコトヲ得
第二十九条 法人合併シタル場合ニ於テ合併ニ因リ消滅シタル法人ノ未納ニ係ル地方税並ニ其ノ督促手数料、延滞金及滞納処分費アルトキハ合併後存続スル法人又ハ合併ニ因リ設立シタル法人之ヲ納付スル義務ヲ負フ
法人解散シタル場合ニ於テ其ノ法人ノ未納ニ係ル地方税並ニ其ノ督促手数料、延滞金及滞納処分費ヲ納付セズシテ残余財産ヲ分配シタルトキハ清算人ハ残余財産ノ価額ヲ限度トシテ連帯シテ之ヲ納付スル義務ヲ負フ
相続開始アリタル場合ニ於テ相続開始前ノ事実ニ付被相続人ノ未納ニ係ル地方税並ニ其ノ督促手数料、延滞金及滞納処分費アルトキハ相続人又ハ相続財団之ヲ納付スル義務ヲ負フ但シ国籍喪失ニ因ル相続人又ハ限定承認ヲ為シタル相続人ハ相続ニ因リテ得タル財産ノ価額ヲ限度トシテ其ノ義務ヲ負ヒ戸主ノ死亡以外ノ原因ニ因リ家督相続ノ開始アリタルトキハ被相続人モ亦其ノ義務ヲ負フ
第三十条 共有物、共同事業、共同事業ニ因リ生ジタル物件又ハ共同行為ニ対スル地方税並ニ其ノ督促手数料、延滞金及滞納処分費ハ納税者連帯シテ之ヲ納付スル義務ヲ負フ
公売及競売以外ノ原因ニ因リ鉱業権ノ移転アリタル場合ニ於テ未納ニ係ル地方税並ニ其ノ督促手数料、延滞金及滞納処分費アルトキハ新鉱業権者ハ旧鉱業権者ト連帯シテ之ヲ納付スル義務ヲ負フ
第三十一条 同一年度ノ地方税ニシテ既納ノ税金過納ナルトキハ爾後ノ納期ニ於テ徴収スベキ同一税目ノ税金ニ充ツルコトヲ得
第三十二条 納税義務者納税地ニ住所、居所、事務所及営業所ヲ有セザルトキハ納税ニ関スル事項ヲ処理セシムル為納税地ニ於テ納税管理人ヲ定メ府県税ニ付テハ府県知事ニ、市町村税ニ付テハ市町村長ニ之ヲ申告スベシ其ノ納税管理人ヲ変更シタルトキ亦同ジ
第三十三条 徴税令書、徴税伝令書、督促状及滞納処分ニ関スル書類ハ名宛人ノ住所、居所、事務所又ハ営業所ニ送達ス名宛人ガ相続財団ニシテ財産管理人アルトキハ財産管理人ノ住所又ハ居所ニ送達ス
納税管理人アルトキハ徴税令書、徴税伝令書及督促状ニ限リ其ノ住所、居所、事務所又ハ営業所ニ送達ス
第三十四条 書類ノ送達ヲ受クベキ者ガ其ノ住所、居所、事務所若ハ営業所ニ於テ書類ノ受取ヲ拒ミタルトキ又ハ其ノ者ノ住所、居所、事務所及営業所ガ不明ナルトキ若ハ帝国内ニ在ラザルトキハ書類ノ要旨ヲ公告シ公告ノ初日ヨリ七日ヲ経過シタルトキハ書類ノ送達アリタルモノト看做ス
前項ノ規定ニ依ル公告ハ地方団体ノ掲示場ニ之ヲ為スベシ
第二款 特別徴収
第三十五条 地方団体ハ内務大臣及大蔵大臣ノ指定スル地方税ニ付テハ其ノ徴収ノ便宜ヲ有スル者ヲシテ之ヲ徴収セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル徴収義務者(以下特別徴収義務者ト称ス)ハ地方団体ニ対シ其ノ徴収スベキ地方税ヲ納入スルノ義務ヲ負フ
第一項ノ地方税ノ徴収ニ付テハ第十七条又ハ第十八条ノ規定ニ依ラザルコトヲ得
第三十六条 特別徴収義務者其ノ徴収スベキ地方税ヲ正当ノ事由ニ因リ徴収スルコト能ハザリシトキハ府県知事又ハ市町村長ハ特別徴収義務者ノ申請ニ依リ之ニ相当スル既納ノ金額ヲ還付スベシ
府県知事又ハ市町村長前項ノ申請ヲ受理シタル日ヨリ三月以内ニ前項ノ規定ニ依ル還付ヲ為サザルトキハ特別徴収義務者ハ府県税ニ付テハ内務大臣ニ訴願シ市町村税ニ付テハ府県参事会ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アルトキハ内務大臣ニ訴願スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ付テハ市町村長又ハ府県知事ヨリモ内務大臣ニ訴願スルコトヲ得
第十六条第三項及第四項並ニ府県制第百二十八条ノ二第二項ノ規定ハ前二項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第一項ノ規定ニ依ル還付ノ方法ハ条例ヲ以テ之ヲ規定スベシ
第三十七条 第三十五条第一項ノ規定ニ依リ地方税ヲ徴収セシムル場合ニ於テハ納税者ハ其ノ税金ヲ特別徴収義務者ニ払込ムニ依リテ納税ノ義務ヲ了ス
特別徴収義務者ハ其ノ徴収スベキ地方税ニ相当スル金額ヲ府県税ニ付テハ府県ニ、市町村税ニ付テハ市町村ニ払込ミ其ノ領収証ヲ得テ税金ノ徴収及納入ノ義務ヲ了ス
第三十八条 特別徴収義務者ハ其ノ徴収スベキ地方税ニ相当スル金額ヲ条例ヲ以テ定ムル期日迄ニ府県税ニ付テハ府県ニ、市町村税ニ付テハ市町村ニ納入スベシ
第三十九条 特別徴収義務者其ノ徴収スベキ地方税ニ相当スル金額ヲ条例ヲ以テ定ムル期日迄ニ納入セザルトキハ府県知事若ハ其ノ委任ヲ受ケタル官吏若ハ府県吏員又ハ市町村長若ハ其ノ委任ヲ受ケタル市町村吏員ハ相当ノ期限ヲ指定シ督促状ヲ発スベシ
第四十条 特別徴収義務者避クベカラザル事故ニ因リ既収ノ税金ヲ失ヒタルトキハ府県知事又ハ市町村長ハ其ノ申請ニ依リ税金納入ノ義務ヲ免除スベシ
府県知事又ハ市町村長前項ノ申請ヲ受理シタル日ヨリ三月以内ニ前項ノ規定ニ依ル免除ヲ為サザルトキハ特別徴収義務者ハ府県税ニ付テハ内務大臣ニ訴願シ市町村税ニ付テハ府県参事会ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アルトキハ内務大臣ニ訴願スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ付テハ市町村長又ハ府県知事ヨリモ内務大臣ニ訴願スルコトヲ得
第十六条第三項及第四項並ニ府県制第百二十八条ノ二第二項ノ規定ハ前二項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第四十一条 第五条、第十五条第二項及第三項、第十九条第四項、第二十二条第一項及第二項、第二十三条乃至第二十六条、第二十九条、第三十条第一項並ニ第三十一条ノ規定ハ第三十五条第一項ノ規定ニ依リ地方税ヲ徴収セシムル場合ノ納入金ニ付之ヲ準用ス此ノ場合ニ於テハ第十五条第三項中内務大臣トアルハ市町村条例ノ規定ニ付テハ府県知事トス
第四十二条 地方団体ハ内務大臣及大蔵大臣ノ指定スル地方税ニ付テハ第十七条及第十八条ノ規定ニ依ラズ其ノ地方団体ニ於テ発行スル証紙ヲ以テ地方税ヲ払込マシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ地方団体ハ証憑書類其ノ他ノモノニ証紙ヲ貼用セシメ又ハ証紙金額ニ相当スル現金ノ納付ヲ受ケ納税済印ノ押捺ヲ為シ証紙ノ貼用ニ代ヘシムルコトヲ得
証紙ヲ貼用スルトキハ証紙ヲ貼用シタルモノノ紙面ト証紙ノ彩紋トニカケテ当該地方団体ノ印章又ハ特別徴収義務者ノ印章若ハ署名ヲ以テ判明ニ之ヲ消スベシ
第四十三条 本法ニ依リ地方税、督促手数料、延滞金若ハ滞納処分費ヲ納付スベキ者又ハ其ノ者ノ財産ガ当該地方団体外ニ在ルトキハ府県知事若ハ其ノ委任ヲ受ケタル官吏若ハ吏員又ハ市町村長若ハ其ノ委任ヲ受ケタル市町村吏員ハ本人又ハ財産所在地ノ当該官吏又ハ吏員ニ其ノ徴収ヲ嘱託スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於ケル徴収金ノ徴収ハ嘱託ヲ受ケタル者ノ属スル地方団体ニ於ケル徴収ノ例ニ依ル
第一項ノ規定ニ依リ徴収ノ嘱託ヲ為シタル場合ニ於テハ嘱託ニ係ル事務及送金ニ要スル費用ハ嘱託ヲ受ケタル者ノ属スル地方団体ノ負担トシ嘱託ニ係ル事務ニ伴フ督促手数料及滞納処分費ハ嘱託ヲ受ケタル者ノ属スル地方団体ノ収入トス
第二章 普通税
第一節 府県税
第一款 附加税
第四十四条 国税附加税トシテ課スルコトヲ得ベキ府県税左ノ如シ
地租附加税
家屋税附加税
営業税附加税
鉱区税附加税
地租附加税ノ課税ニ付テハ地租法第七十条ノ規定ニ依ル地租ノ免除ハ之ヲ為サザルモノト看做ス
第四十五条 地租附加税、家屋税附加税及営業税附加税ノ賦課率ハ同一府県ニ於テハ之ヲ同一ト為スベシ但シ負担ノ均衡上特ニ必要アルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第四十六条 地租附加税、家屋税附加税又ハ営業税附加税ノ賦課率ガ本税ノ百分ノ百ヲ超ユルトキハ内務大臣及大蔵大臣ノ許可ヲ受クベシ但シ左ニ掲グル場合ニ於テ賦課率ガ本税ノ百分ノ百二十ヲ超エザルトキハ此ノ限ニ在ラズ
一 災害応急費、災害復旧費、伝染病予防費及国営事業費負担金ニ充ツル為借入レタル負債ノ元利償還ノ為費用ヲ要スルトキ
二 災害応急又ハ復旧ノ為費用ヲ要スルトキ
三 伝染病予防ノ為費用ヲ要スルトキ
第四十七条 鉱区税附加税ノ賦課率ハ本税ノ百分ノ十ヲ超ユルコトヲ得ズ
第二款 独立税
第四十八条 独立税トシテ課スルコトヲ得ベキ府県税左ノ如シ
段別税
船舶税
自動車税
電柱税
不動産取得税
漁業権税
狩猟者税
芸妓税
第四十九条 段別税ハ減租年期地及免租年期地(減租年期地又ハ免租年期地ニ類スル土地ヲ含ム以下之ニ同ジ)ニ対シ評定賃貸価格ヲ標準トシテ其ノ所有者(質権又ハ百年ヨリ長キ存続期間ノ定アル地上権ノ目的タル土地ニ付テハ其ノ質権者又ハ地上権者)ニ之ヲ課ス但シ減租年期地又ハ免租年期地ト為リタル年ノ四月一日ニ始ル年度及其ノ翌年度ヨリ二年度間ハ之ヲ課スルコトヲ得ズ
前項ノ評定賃貸価格ハ類地ノ賃貸価格ニ比準シ当該土地ノ品位及情況ニ応ジ府県条例ノ定ムル所ニ依リ府県知事之ヲ定ムベシ
段別税ノ賦課率ハ地租ノ税率ニ其ノ府県ニ於ケル地租附加税ノ賦課率ヲ乗ジタルモノヲ超ユルコトヲ得ズ
府県ノ全部又ハ一部ニ亘ル災害又ハ天候不順ニ因リ収穫皆無ニ帰シタル田畑ニ付テハ納税義務者ノ申請ニ依リ其ノ年度分ノ段別税ハ之ヲ免除スベシ
段別税ヲ課スル府県ニ於テハ減租年期地ニ対シテハ地租附加税ヲ課スルコトヲ得ズ但シ第一項但書ノ規定ニ依リ段別税ヲ課セザル期間地租附加税ヲ課スルハ此ノ限ニ在ラズ
段別税ハ耕地整理法第十三条ノ三ノ規定ニ依ル耕地整理減租年期地ニ対シテハ之ヲ課スルコトヲ得ズ但シ開墾減租年期、地目変換減租年期若ハ荒地免租年期ノ許可ヲ受ケタル場合又ハ耕地整理法第十六条ノ三ノ規定、其ノ準用規定若ハ昭和六年法律第二十九号附則第十五条ノ規定ニ依リ賃貸価格ガ定メラレタル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第五十条 船舶税ハ総噸数二十噸以上ノ船舶ニ対シ主タル定繋場所在ノ府県ニ於テ其ノ所有者ニ之ヲ課ス
主タル定繋場不明ナルトキハ定繋場所在ノ府県中船籍港ノ存スル府県ニ主タル定繋場アルモノト看做ス
前二項ノ規定ノ適用ニ付関係府県知事意見ヲ異ニスルトキハ其ノ申出ニ依リ内務大臣之ヲ定ム
第五十一条 自動車税ハ自動車ニ対シ主タル定置場所在ノ府県ニ於テ其ノ所有者ニ之ヲ課ス
第五十二条 電柱税ハ電柱ニ対シ其ノ所在ノ府県ニ於テ其ノ所有者ニ之ヲ課ス
第五十三条 不動産取得税ハ不動産ノ取得ニ対シ其ノ不動産所在ノ府県ニ於テ其ノ取得者ニ之ヲ課ス
左ニ掲グル不動産ノ取得ニ対シテハ不動産取得税ヲ課スルコトヲ得ズ
一 家督相続又ハ遺産相続ニ因ル不動産ノ取得
二 法人ノ合併ニ因ル不動産ノ取得
三 保険業法ニ依リ会社ガ其ノ保険契約全部ノ移転契約ニ依リテ不動産ヲ移転スル場合ニ於ケル不動産ノ取得
四 委託者ヨリ受託者ニ信託財産ヲ移ス場合ニ於ケル不動産ノ取得
五 委託者ノミガ信託財産ノ元本ノ受益者タル信託ニ因リ受託者ヨリ受益者ニ信託財産ヲ移ス場合ニ於ケル不動産ノ取得
六 信託ノ受託者交迭ノ場合ニ於ケル新受託者ノ不動産ノ取得
第五十四条 漁業権税ハ漁業権(入漁権ヲ除ク)又ハ其ノ取得ニ対シ其ノ漁場所在ノ府県ニ於テ其ノ漁業権者又ハ漁業権取得者ニ之ヲ課ス
前条第二項第一号及第二号ノ規定ハ前項ノ漁業権ノ取得ニ対スル漁業権税ノ課税ニ付之ヲ準用ス
第五十五条 狩猟者税ハ狩猟ノ免許ヲ受クル者ニ対シ其ノ住所地所在ノ府県ニ於テ之ヲ課ス
第五十六条 芸妓税ハ芸妓其ノ他之ニ類スル者ニ対シ其ノ住所地所在ノ府県ニ於テ之ヲ課ス
第二節 市町村税
第一款 附加税
第五十七条 国税附加税トシテ課スルコトヲ得ベキ市町村税左ノ如シ
地租附加税
家屋税附加税
営業税附加税
鉱区税附加税
第四十四条第二項ノ規定ハ前項ノ地租附加税ノ課税ニ付之ヲ準用ス
第五十八条 府県附加税トシテ課スルコトヲ得ベキ市町村税左ノ如シ
段別税附加税
船舶税附加税
自動車税附加税
電柱税附加税
不動産取得税附加税
漁業権税附加税
狩猟者税附加税
芸妓税附加税
第五十九条 地租附加税、家屋税附加税及営業税附加税ノ賦課率ハ同一市町村ニ於テハ之ヲ同一ト為スベシ但シ負担ノ均衡上特ニ必要アル場合ニ於テ府県知事ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
第六十条 府県税附加税(段別税附加税ヲ除ク)ノ賦課率ハ同一市町村ニ於テハ之ヲ同一ト為スベシ但シ負担ノ均衡上特ニ必要アルトキハ此ノ限ニ在ラズ
段別税附加税ノ賦課率ハ地租ノ税率ニ其ノ市町村ニ於ケル地租附加税ノ賦課率ヲ乗ジタルモノヲ当該府県ニ於ケル段別税ノ賦課率ヲ以テ除シテ得タルモノヲ超ユルコトヲ得ズ
第六十一条 地租附加税、家屋税附加税又ハ営業税附加税ノ賦課率ガ本税ノ百分ノ二百ヲ超ユルトキハ府県知事ノ許可ヲ受クベシ但シ左ニ掲グル場合ニ於テ賦課率ガ本税ノ百分ノ二百四十ヲ超エザルトキハ此ノ限ニ在ラズ
一 小学校営繕費、災害応急費、災害復旧費、伝染病予防費及国営事業費負担金ニ充ツル為借入レタル負債ノ元利償還ノ為費用ヲ要スルトキ
二 災害応急又ハ復旧ノ為費用ヲ要スルトキ
三 伝染病予防ノ為費用ヲ要スルトキ
第六十二条 鉱区税附加税ノ賦課率ハ本税ノ百分ノ十ヲ超ユルコトヲ得ズ
第二款 独立税
第六十三条 独立税トシテ課スルコトヲ得ベキ市町村税左ノ如シ
市町村民税
舟税
自転車税
荷車税
金庫税
扇風機税
屠畜税
犬税
府県ニ於テ第四十八条ニ掲グル独立税ヲ課セザルモノアルトキハ市町村ハ之ヲ市町村ノ独立税トシテ課スルコトヲ得
市町村ハ前二項ニ掲グルモノノ外別ニ税目ヲ起シテ独立税ヲ課スルコトヲ得
前項ノ独立税ノ新設及変更ニ付テハ内務大臣及大蔵大臣ノ許可ヲ受クベシ
第六十四条 市町村民税ハ左ニ掲グル者ニ対シ之ヲ課ス但シ貧困ニ因リ生活ノ為公私ノ救助ヲ受ケ又ハ扶助ヲ受クル者ニ対シテハ此ノ限ニ在ラズ
一 市町村内ニ一戸ヲ構フル個人又ハ一戸ヲ構ヘザルモ独立ノ生計ヲ営ム個人
二 前号ニ該当セザルモ市町村内ニ事務所、営業所又ハ家屋敷ヲ有スル個人
三 市町村内ニ事務所又ハ営業所ヲ有スル法人
前項第三号ノ法人ニ付テハ其ノ事務所又ハ営業所毎ニ市町村民税ヲ課ス
第六十五条 市町村民税ノ賦課期日ハ十月一日トス
前項ニ定ムルモノノ外市町村民税ノ課税方法ハ市町村条例ヲ以テ之ヲ規定スベシ
第六条及第十条ノ規定ハ市町村民税ニ付テハ之ヲ適用セズ
第六十六条 市町村民税ノ納税義務者一人ニ対スル賦課額ハ左ノ金額ヲ超ユルコトヲ得ズ
人口七十万以上ノ市 二千円
其ノ他ノ市 千五百円
町村 千円
市町村民税ノ賦課総額ハ左ノ金額ニ第六十四条ニ定ムル納税義務者数ヲ乗ジタル額ヲ超ユルコトヲ得ズ
人口七十万以上ノ市 八円
其ノ他ノ市 六円
町村 四円
前二項ノ規定ノ適用ニ付テハ第六十四条第一項第三号ノ法人ハ其ノ事務所又ハ営業所毎ニ独立ノ納税義務者ト看做ス
第六十七条 舟税ハ総噸数二十噸未満ノ舟ニ対シ主タル定繋所所在ノ市町村ニ於テ其ノ所有者ニ之ヲ課ス
主タル定繋所不明ナルトキハ定繋所所在ノ市町村中船籍港ノ存スル市町村ニ主タル定繋所アルモノト看做ス
前二項ノ規定ノ適用ニ付関係市町村長意見ヲ異ニスルトキハ其ノ申出ニ依リ府県知事(関係市町村数府県ニ亘ル場合ニ於テハ内務大臣)之ヲ定ム
第六十八条 自転車税ハ自転車ニ対シ其ノ定置所所在ノ市町村ニ於テ其ノ所有者ニ之ヲ課ス
第六十九条 荷車税ハ荷車ニ対シ其ノ定置所所在ノ市町村ニ於テ其ノ所有者ニ之ヲ課ス
第七十条 金庫税ハ金庫ニ対シ其ノ所在ノ市町村ニ於テ其ノ所有者ニ之ヲ課ス
第七十一条 扇風機税ハ扇風機ニ対シ其ノ所在ノ市町村ニ於テ其ノ使用者ニ之ヲ課ス
第七十二条 屠畜税ハ屠畜ニ対シ其ノ屠殺場所在ノ市町村ニ於テ其ノ獣畜ノ所有者ニ之ヲ課ス
第七十三条 犬税ハ犬ニ対シ其ノ飼育所所在ノ市町村ニ於テ其ノ所有者ニ之ヲ課ス
第七十四条 第四十九条乃至第五十六条ノ規定ハ第六十三条第二項ノ規定ニ依ル独立税ノ課税ニ付之ヲ準用ス此ノ場合ニ於テハ第五十条第三項中内務大臣トアルハ府県知事(関係市町村数府県ニ亘ル場合ニ於テハ内務大臣)トス
第三章 目的税
第七十五条 府県ハ都市計画法ノ施行ニ要スル費用ニ充ツル為左ノ都市計画税ヲ課スルコトヲ得
地租割 地租ノ百分ノ二十五以内
家屋税割 家屋税ノ百分ノ二十五以内
営業税割 営業税ノ百分ノ二十五以内
府県税独立税割 府県税独立税ノ百分ノ十三以内
第四十四条第二項ノ規定ハ前項ノ地租割ノ課税ニ付之ヲ準用ス
第七十六条 市町村ハ都市計画法ノ施行ニ要スル費用ニ充ツル為左ノ都市計画税ヲ課スルコトヲ得
地租割 地租ノ百分ノ六十八以内
家屋税割 家屋税ノ百分ノ六十八以内
営業税割 営業税ノ百分ノ六十八以内
府県税独立税割 府県税独立税ノ百分ノ三十四以内
市町村税独立税割 市町村税独立税ノ百分ノ三十四以内
市町村民税ニ対シテハ市町村税独立税割ヲ課スルコトヲ得ズ
市町村ハ第一項ニ掲グルモノノ外別ニ税目ヲ起シテ都市計画税ヲ課スルコトヲ得
前項ノ都市計画税ノ新設及変更ニ付テハ内務大臣及大蔵大臣ノ許可ヲ受クベシ
第四十四条第二項ノ規定ハ第一項ノ地租割ノ課税ニ付之ヲ準用ス
第七十七条 府県ハ水利ニ関スル事業ニ要スル費用ニ充ツル為該事業ニ因リ特ニ利益ヲ受クル土地ニ対シ左ノ水利税ヲ課スルコトヲ得
地租割
段別割
第四十四条第二項ノ規定ハ前項ノ地租割ノ課税ニ、第四十九条第四項ノ規定ハ前項ノ段別割ノ課税ニ付之ヲ準用ス
水利税ノ賦課額(数年ヲ期シテ賦課スルトキハ其ノ総額)ハ当該土地ノ受益ノ限度ヲ超ユルコトヲ得ズ
第七十八条 市町村ハ水利ニ関スル事業其ノ他土地ノ利益ト為ルベキ事業ニ要スル費用ニ充ツル為該事業ニ因リ特ニ利益ヲ受クル土地ニ対シ左ノ水利地益税ヲ課スルコトヲ得
地租割
段別割
第四十四条第二項ノ規定ハ前項ノ地租割ノ課税ニ、第四十九条第四項ノ規定ハ前項ノ段別割ノ課税ニ付之ヲ準用ス
前条第三項ノ規定ハ水利地益税ノ課税ニ付之ヲ準用ス
第七十九条 市町村ハ共同作業場、共同倉庫、共同集荷場其ノ他之ニ類スル施設ニ要スル費用ニ充ツル為該施設ニ因リ特ニ利益ヲ受クル者ニ対シ共同施設税ヲ課スルコトヲ得
共同施設税ノ新設及変更ニ付テハ府県知事ノ許可ヲ受クベシ
共同施設税ノ賦課額(数年ヲ期シテ賦課スルトキハ其ノ総額)ハ当該納税義務者ノ受益ノ限度ヲ超ユルコトヲ得ズ
第四条及第六条ノ規定ハ共同施設税ニ付テハ之ヲ適用セズ
第四章 補則
第八十条 詐偽其ノ他不正ノ行為ニ依リ地方税ヲ逋脱シタル者ニ対シテハ条例ヲ以テ其ノ逋脱シタル金額ノ五倍ニ相当スル金額(其ノ金額十円未満ナルトキハ十円)以下ノ過料ヲ科スル規定ヲ設クルコトヲ得
前項ニ定ムルモノノ外地方税ノ賦課徴収ニ関シテハ条例ヲ以テ二十円以下ノ過料ヲ科スル規定ヲ設クルコトヲ得
府県税ノ賦課徴収ニ関シ過料ヲ科セラレタル者其ノ処分ニ不服アルトキハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
市町村税ノ賦課徴収ニ関シ過料ヲ科セラレタル者其ノ処分ニ不服アルトキハ府県参事会ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アルトキハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ付テハ市町村長又ハ府県知事ヨリモ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第二十一条乃至第二十三条及第二十五条並ニ府県制第百二十八条及第百二十八条ノ二ノ規定ハ前五項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第八十一条 地方税ノ賦課ニ関シ必要アル場合ニ於テハ当該官吏及吏員ハ日出ヨリ日没迄ノ間、事業経営者ニ関シテハ仍其ノ執務時間内家宅、事務所若ハ営業所ニ臨検シ又ハ帳簿物件ノ検査ヲ為スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ当該官吏及吏員ハ其ノ身分ヲ証明スベキ証票ヲ携帯スベシ
第八十二条 町村組合ニシテ町村事務ノ全部ヲ共同処理スルモノハ本法ノ適用ニ付テハ之ヲ一町村、其ノ組合会ハ之ヲ町村会、其ノ組合管理者ハ之ヲ町村長、其ノ組合吏員ハ之ヲ町村吏員、其ノ組合条例ハ之ヲ町村条例ト看做ス
第八十三条 本法又ハ他ノ法律ニ定ムルモノヲ除クノ外地方税及其ノ賦課徴収ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第八十四条 本法ニ依リ府県知事ノ許可ヲ要スル事項ニシテ勅令ヲ以テ指定スルモノハ其ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ許可ヲ受クベシ
本法ニ依リ主務大臣ノ許可ヲ要スル事項ニ付テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ許可ノ職権ハ之ヲ府県知事ニ委任スルコトヲ得
本法ニ依リ主務大臣又ハ府県知事ノ許可ヲ要スル事項ニシテ軽易ナルモノニ付テハ勅令ノ定ムル所ニ依リ許可ヲ受ケシメザルコトヲ得
第八十五条 主務大臣又ハ府県知事ノ許可ヲ要スル事項ニ付テハ主務大臣又ハ府県知事ハ許可申請ノ趣旨ニ反セズト認ムル範囲内ニ於テ更正シテ許可ヲ与フルコトヲ得
第八十六条 島嶼ニ於ケル地方税及其ノ賦課徴収ニ関シ本法ニ依リ難キ事項ニ付テハ勅令ヲ以テ別段ノ定ヲ為スコトヲ得
附 則
第八十七条 本法ハ昭和十五年度分地方税ヨリ之ヲ適用ス但シ家屋税附加税及家屋税割ニ関スル規定ハ昭和十七年度分ヨリ之ヲ適用ス
昭和十六年度分迄ニ限リ段別税及同附加税ノ課税ニ関シ本法ニ依リ難キ事情アルトキハ府県ニ在リテハ内務大臣及大蔵大臣、市町村ニ在リテハ府県知事ノ許可ヲ受ケ別段ノ規定ヲ設クルコトヲ得
宗教団体法第三十五条第一項ノ仏堂ノ用ニ供スル建物及其ノ境内地ニ対シテハ有料ニテ使用セシムルモノヲ除クノ外之ニ地方税ヲ課スルコトヲ得ズ
第八十八条 明治四十一年法律第三十七号及大正十五年法律第二十四号ハ昭和十四年度分限リ之ヲ廃止ス
家屋税及同附加税ニ関シテハ前項ノ規定ニ拘ラズ昭和十六年度分迄ニ限リ仍従前ノ規定ニ依ル
第八十九条 昭和十四年度分以前ノ所得税附加税、営業収益税附加税及鉱産税附加税ニシテ昭和十五年四月一日以後ニ於テ本税ノ決定セラルルモノノ賦課ニ付テハ第七条及第八条ノ例ニ依ル
第九十条 昭和十四年法律第七十八号第一条第一項ノ規定ニ依リ譲与セラルル不動産ノ取得ニ対シテハ命令ノ定ムル所ニ依リ不動産取得税ヲ課スルコトヲ得ズ
第九十一条 市制第百六十七条第六号又ハ町村制第百四十七条第六号ノ規定ニ依リ許可ヲ受ケタル特別税ニシテ本法施行ノ際現ニ存スルモノハ内務大臣及大蔵大臣ノ指定スル税目ニ限リ第六十三条第四項ノ規定ニ依リ許可ヲ受ケタル独立税ト看做ス
第九十二条 
都市計画法第八条ヲ削除ス
昭和十四年度分以前ノ都市計画特別税ニ関シテハ仍従前ノ規定ニ依ル此ノ場合ニ於テハ第八十九条ノ規定ハ営業収益税割ノ課税ニ付之ヲ準用ス
都市計画特別税家屋税ニ関シテハ昭和十六年度分迄ニ限リ仍従前ノ規定ニ依ル
第九十三条 昭和十五年度及昭和十六年度分ノ家屋税、家屋税附加税及都市計画特別税家屋税ノ賦課ノ制限ニ関シテハ命令ヲ以テ別段ノ定ヲ為スコトヲ得
昭和十五年度及昭和十六年度分ノ家屋税ノ課税標準タルベキ家屋ノ賃貸価格ハ大正十五年法律第二十四号第十条ノ規定ニ依ル家屋ノ賃貸価格ニ付命令ノ定ムル所ニ依リ政府ニ於テ補整ヲ加ヘタルモノニ依ル
家屋税、家屋税附加税及都市計画特別税家屋税ノ賦課ニ関シテハ前項ノ規定ニ依ル家屋ノ賃貸価格ノ補整ヲ理由トシテ異議ノ申立並ニ訴願及訴訟ノ提起ヲ為スコトヲ得ズ
第九十四条 罹災救助基金法中左ノ通改正ス
第四条 削除
第十五条ノ二中「且地租、営業収益税及所得税ノ附加税ノ賦課ガ明治四十一年法律第三十七号第一条乃至第三条ノ制限ニ達シ」ヲ削ル
昭和十四年度分以前ノ同法第四条ノ規定ニ依ル附加税ニ関シテハ仍従前ノ規定ニ依ル
第九十五条 
昭和七年法律第三十三号附則第二項中「且地租、営業収益税及所得税ノ附加税ノ賦課ガ明治四十一年法律第三十七号第一条乃至第三条ノ制限ニ達シ」ヲ削ル
第九十六条 本法施行ノ際必要ナル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム