南洋庁官制
法令番号: 勅令第百七號
公布年月日: 大正11年3月31日
法令の形式: 勅令
朕樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ南洋廳官制ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
攝政名
大正十一年三月三十日
內閣總理大臣兼大藏大臣 子爵 高橋是淸
海軍大臣 男爵 加藤友三郞
農商務大臣 男爵 山本達雄
遞信大臣 野田卯太郞
勅令第百七號
南洋廳官制
第一條 南洋群島ニ南洋廳ヲ置ク
第二條 南洋廳ニ左ノ職員ヲ置ク
長官 勅任
部長 三人 奏任
事務官 專任八人 奏任
警視 專任一人 奏任
技師 專任四人 奏任
屬 專任五十六人 判任
警部 專任八人 判任
技手 專任十六人 判任
警部補 專任十人 判任
第三條 長官ハ內閣總理大臣ノ指揮監督ヲ承ケ部內ノ政務ヲ管理ス但シ郵便及電信ニ關スル事務ニ付テハ遞信大臣、貨幣銀行及關稅ニ關スル事務ニ付テハ大藏大臣、度量衡及計量ニ關スル事務ニ付テハ農商務大臣ノ監督ヲ承ク
第四條 長官ハ其ノ職權又ハ特別ノ委任ニ依リ廳令ヲ發シ之ニ一年以下ノ懲役若ハ禁錮、拘留、二百圓以下ノ罰金又ハ科料ノ罰則ヲ附スルコトヲ得
第五條 長官ハ安寧秩序ヲ保持スル爲臨時緊急ヲ要スル場合ニ於テハ前條ノ制限ヲ超ユル罰則ヲ附シタル命令ヲ發スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リテ發シタル命令ハ公布後直ニ內閣總理大臣ヲ經テ勅裁ヲ請フヘシ勅裁ヲ得サルトキハ長官ハ直ニ其ノ命令ノ將來ニ向テ效力ナキコトヲ公布スヘシ
第六條 長官ハ其ノ管轄區域ノ安寧秩序ヲ保持スル爲必要アリト認ムルトキハ鎭守府司令長官又ハ附近ノ海軍主席指揮官ニ兵力ノ使用ヲ請求スルコトヲ得
第七條 長官ハ所部ノ職員ヲ指揮監督シ高等官ノ功過ハ內閣總理大臣ニ具狀シ判任官以下ノ進退ハ之ヲ行フ
第八條 長官ハ所轄官廳ノ命令又ハ處分ニシテ成規ニ違ヒ、公益ヲ害シ又ハ權限ヲ犯スモノアリト認ムルトキハ其ノ命令又ハ處分ヲ取消シ又ハ停止スルコトヲ得
第九條 長官ハ其ノ職權ニ屬スル事務ノ一部ヲ所轄官廳ニ委任スルコトヲ得
第十條 南洋廳ニ長官官房及左ノ三部ヲ置ク
內務部
財務部
拓殖部
長官官房及各部ノ事務分掌ハ內閣總理大臣ノ認可ヲ經テ長官之ヲ定ム
第十一條 南洋廳管內須要ノ地ニ南洋廳支廳ヲ置ク其ノ名稱、位置及管轄區域ハ內閣總理大臣ノ認可ヲ經テ長官之ヲ定ム
第十二條 長官ハ支廳ノ事務ヲ分掌セシムル爲支廳出張所ヲ置クコトヲ得其ノ名稱、位置及管轄區域ハ長官之ヲ定ム
第十三條 部長ハ長官ノ命ヲ承ケ部務ヲ掌理シ部下ノ職員ヲ指揮監督ス
第十四條 事務官ハ支廳長タル者ヲ除クノ外上官ノ命ヲ承ケ事務ヲ分掌ス
第十五條 支廳長ハ事務官ヲ以テ之ニ充ツ長官ノ指揮監督ヲ承ケ法律命令ヲ執行シ部內ノ行政事務ヲ掌理シ部下ノ職員ヲ指揮監督ス
第十六條 支廳長ハ部內ノ行政事務ニ付其ノ職權又ハ特別ノ委任ニ依リ支廳令ヲ發スルコトヲ得
第十七條 支廳出張所長ハ屬又ハ警部ヲ以テ之ニ充ツ上官ノ指揮監督ヲ承ケ所務ヲ掌理ス
第十八條 警視ハ上官ノ命ヲ承ケ警察、衞生及監獄ノ事務ヲ掌リ其ノ執行ニ關シ警部、警部補及巡査ヲ指揮監督ス
第十九條 技師ハ上官ノ命ヲ承ケ技術ヲ掌ル
第二十條 屬ハ上官ノ指揮ヲ承ケ庶務ニ從事ス
第二十一條 警部ハ上官ノ指揮ヲ承ケ警察、衞生及監獄ノ事務ニ從事シ部下ノ警部補及巡査ヲ指揮監督ス
第二十二條 技手ハ上官ノ指揮ヲ承ケ技術ニ從事ス
第二十三條 警部補ハ上官ノ指揮ヲ承ケ警察、衞生及監獄ノ事務ニ從事シ部下ノ巡査ヲ指揮監督ス
第二十四條 氣象ニ關スル事務ヲ掌ラシムル爲南洋廳ニ觀測所ヲ置ク其ノ名稱及位置ハ長官之ヲ定ム
觀測所長ハ技手ヲ以テ之ニ充ツ長官ノ指揮監督ヲ承ケ所務ヲ掌理ス
第二十五條 南洋廳ニ巡査ヲ置ク判任官ノ待遇トス
巡査ノ定員ハ長官之ヲ定ム
附 則
本令ハ大正十一年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
大正七年勅令第二百六十七號ハ之ヲ廢止ス
本令施行ノ際現ニ臨時南洋群島防備隊ニ在勤スル者別ニ辭令書ヲ交付セラレサルトキハ海軍書記生ハ南洋廳屬ニ、海軍警部ハ南洋廳警部ニ、海軍技官補ハ南洋廳技手ニ、海軍警部補ハ南洋廳警部補ニ、海軍巡査ハ南洋廳巡査ニ同俸給ヲ以テ任セラレタルモノトス
朕枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ南洋庁官制ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
摂政名
大正十一年三月三十日
内閣総理大臣兼大蔵大臣 子爵 高橋是清
海軍大臣 男爵 加藤友三郎
農商務大臣 男爵 山本達雄
逓信大臣 野田卯太郎
勅令第百七号
南洋庁官制
第一条 南洋群島ニ南洋庁ヲ置ク
第二条 南洋庁ニ左ノ職員ヲ置ク
長官 勅任
部長 三人 奏任
事務官 専任八人 奏任
警視 専任一人 奏任
技師 専任四人 奏任
属 専任五十六人 判任
警部 専任八人 判任
技手 専任十六人 判任
警部補 専任十人 判任
第三条 長官ハ内閣総理大臣ノ指揮監督ヲ承ケ部内ノ政務ヲ管理ス但シ郵便及電信ニ関スル事務ニ付テハ逓信大臣、貨幣銀行及関税ニ関スル事務ニ付テハ大蔵大臣、度量衡及計量ニ関スル事務ニ付テハ農商務大臣ノ監督ヲ承ク
第四条 長官ハ其ノ職権又ハ特別ノ委任ニ依リ庁令ヲ発シ之ニ一年以下ノ懲役若ハ禁錮、拘留、二百円以下ノ罰金又ハ科料ノ罰則ヲ附スルコトヲ得
第五条 長官ハ安寧秩序ヲ保持スル為臨時緊急ヲ要スル場合ニ於テハ前条ノ制限ヲ超ユル罰則ヲ附シタル命令ヲ発スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リテ発シタル命令ハ公布後直ニ内閣総理大臣ヲ経テ勅裁ヲ請フヘシ勅裁ヲ得サルトキハ長官ハ直ニ其ノ命令ノ将来ニ向テ効力ナキコトヲ公布スヘシ
第六条 長官ハ其ノ管轄区域ノ安寧秩序ヲ保持スル為必要アリト認ムルトキハ鎮守府司令長官又ハ附近ノ海軍主席指揮官ニ兵力ノ使用ヲ請求スルコトヲ得
第七条 長官ハ所部ノ職員ヲ指揮監督シ高等官ノ功過ハ内閣総理大臣ニ具状シ判任官以下ノ進退ハ之ヲ行フ
第八条 長官ハ所轄官庁ノ命令又ハ処分ニシテ成規ニ違ヒ、公益ヲ害シ又ハ権限ヲ犯スモノアリト認ムルトキハ其ノ命令又ハ処分ヲ取消シ又ハ停止スルコトヲ得
第九条 長官ハ其ノ職権ニ属スル事務ノ一部ヲ所轄官庁ニ委任スルコトヲ得
第十条 南洋庁ニ長官官房及左ノ三部ヲ置ク
内務部
財務部
拓殖部
長官官房及各部ノ事務分掌ハ内閣総理大臣ノ認可ヲ経テ長官之ヲ定ム
第十一条 南洋庁管内須要ノ地ニ南洋庁支庁ヲ置ク其ノ名称、位置及管轄区域ハ内閣総理大臣ノ認可ヲ経テ長官之ヲ定ム
第十二条 長官ハ支庁ノ事務ヲ分掌セシムル為支庁出張所ヲ置クコトヲ得其ノ名称、位置及管轄区域ハ長官之ヲ定ム
第十三条 部長ハ長官ノ命ヲ承ケ部務ヲ掌理シ部下ノ職員ヲ指揮監督ス
第十四条 事務官ハ支庁長タル者ヲ除クノ外上官ノ命ヲ承ケ事務ヲ分掌ス
第十五条 支庁長ハ事務官ヲ以テ之ニ充ツ長官ノ指揮監督ヲ承ケ法律命令ヲ執行シ部内ノ行政事務ヲ掌理シ部下ノ職員ヲ指揮監督ス
第十六条 支庁長ハ部内ノ行政事務ニ付其ノ職権又ハ特別ノ委任ニ依リ支庁令ヲ発スルコトヲ得
第十七条 支庁出張所長ハ属又ハ警部ヲ以テ之ニ充ツ上官ノ指揮監督ヲ承ケ所務ヲ掌理ス
第十八条 警視ハ上官ノ命ヲ承ケ警察、衛生及監獄ノ事務ヲ掌リ其ノ執行ニ関シ警部、警部補及巡査ヲ指揮監督ス
第十九条 技師ハ上官ノ命ヲ承ケ技術ヲ掌ル
第二十条 属ハ上官ノ指揮ヲ承ケ庶務ニ従事ス
第二十一条 警部ハ上官ノ指揮ヲ承ケ警察、衛生及監獄ノ事務ニ従事シ部下ノ警部補及巡査ヲ指揮監督ス
第二十二条 技手ハ上官ノ指揮ヲ承ケ技術ニ従事ス
第二十三条 警部補ハ上官ノ指揮ヲ承ケ警察、衛生及監獄ノ事務ニ従事シ部下ノ巡査ヲ指揮監督ス
第二十四条 気象ニ関スル事務ヲ掌ラシムル為南洋庁ニ観測所ヲ置ク其ノ名称及位置ハ長官之ヲ定ム
観測所長ハ技手ヲ以テ之ニ充ツ長官ノ指揮監督ヲ承ケ所務ヲ掌理ス
第二十五条 南洋庁ニ巡査ヲ置ク判任官ノ待遇トス
巡査ノ定員ハ長官之ヲ定ム
附 則
本令ハ大正十一年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
大正七年勅令第二百六十七号ハ之ヲ廃止ス
本令施行ノ際現ニ臨時南洋群島防備隊ニ在勤スル者別ニ辞令書ヲ交付セラレサルトキハ海軍書記生ハ南洋庁属ニ、海軍警部ハ南洋庁警部ニ、海軍技官補ハ南洋庁技手ニ、海軍警部補ハ南洋庁警部補ニ、海軍巡査ハ南洋庁巡査ニ同俸給ヲ以テ任セラレタルモノトス