朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル公有水面埋立法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正十年四月八日
內閣總理大臣 原敬
內務大臣 床次竹二郞
法律第五十七號
公有水面埋立法
第一條 本法ニ於テ公有水面ト稱スルハ河、海、湖、沼其ノ他ノ公共ノ用ニ供スル水流又ハ水面ニシテ國ノ所有ニ屬スルモノヲ謂ヒ埋立ト稱スルハ公有水面ノ埋立ヲ謂フ
公有水面ノ干拓ハ本法ノ適用ニ付テハ之ヲ埋立ト看做ス
本法ハ耕地整理法ニ依ル溝渠又ハ溜池ノ變更ノ爲必要ナル埋立其ノ他勅令ヲ以テ指定スル埋立ニ付之ヲ適用セス
第二條 埋立ヲ爲サムトスル者ハ地方長官ノ免許ヲ受クヘシ
第三條 前條ノ免許ハ地方長官期間ヲ指定シテ地元市町村會ノ意見ヲ徵シ之ヲ爲スヘシ
第四條 地方長官ハ埋立ニ關スル工事ノ施行區域內ニ於ケル公有水面ニ關シ權利ヲ有スル者アルトキハ左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ヲ除クノ外埋立ノ免許ヲ爲スコトヲ得ス
一 其ノ公有水面ニ關シ權利ヲ有スル者埋立ニ同意シタルトキ
二 其ノ埋立ニ因リテ生スル利益ノ程度カ損害ノ程度ヲ著シク超過スルトキ
三 其ノ埋立カ法令ニ依リ土地ヲ收用又ハ使用スルコトヲ得ル事業ノ爲必要ナルトキ
第五條 前條ニ於テ公有水面ニ關シ權利ヲ有スル者ト稱スルハ左ノ各號ノ一ニ該當スル者ヲ謂フ
一 法令ニ依リ公有水面占用ノ許可ヲ受ケタル者
二 漁業權者又ハ入漁權者
三 法令ニ依リ公有水面ヨリ引水ヲ爲シ又ハ公有水面ニ排水ヲ爲ス許可ヲ受ケタル者
四 慣習ニ依リ公有水面ヨリ引水ヲ爲シ又ハ公有水面ニ排水ヲ爲ス者
第六條 埋立ノ免許ヲ受ケタル者ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ第四條ノ權利ヲ有スル者ニ對シ其ノ損害ノ補償ヲ爲シ又ハ其ノ損害ノ防止ノ施設ヲ爲スヘシ
漁業權者及入漁權者ノ前項ノ規定ニ依ル補償ヲ受クル權利ハ共同シテ之ヲ有スルモノトス
第一項ノ補償又ハ施設ニ關シ協議調ハサルトキ又ハ協議ヲ爲スコト能ハサルトキハ地方長官ノ裁定ヲ求ムヘシ
第七條 前條ノ規定ニ依リ漁業權者ニ對シ損害ノ補償ヲ爲スヘキ場合ニ於テ其ノ漁業權カ登錄シタル先取特權又ハ抵當權ノ目的タルトキハ埋立ノ免許ヲ受ケタル者ハ其ノ補償ノ金額ヲ供託スヘシ但シ先取特權者又ハ抵當權者ノ同意ヲ得タルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ規定ハ埋立ニ關スル工事ノ施行區域內ニ於ケル公有水面ニ付存スル漁業權又ハ入漁權カ訴訟ノ目的タル爲訴訟當事者ヨリ請求アリタル場合ニ之ヲ準用ス
登錄シタル先取特權若ハ抵當權ヲ有スル者又ハ訴訟當事者ハ前二項ノ規定ニ依ル供託金ニ對シテモ其ノ權利ヲ行フコトヲ得
第八條 埋立ノ免許ヲ受ケタル者ハ第六條ノ規定ニ依リ損害ノ補償ヲ爲スヘキ場合ニ於テハ其ノ補償ヲ爲シ又ハ前條ノ規定ニ依ル供託ヲ爲シタル後ニ非サレハ第四條ノ權利ヲ有スル者ニ損害ヲ生スヘキ工事ニ著手スルコトヲ得ス但シ其ノ權利ヲ有スル者ノ同意ヲ得タルトキ又ハ地方長官ノ裁定シタル補償ノ金額ヲ供託シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
埋立ノ免許ヲ受ケタル者ハ第六條ノ規定ニ依リ損害防止ノ施設ヲ爲スヘキ場合ニ於テハ其ノ施設ヲ爲シタル後ニ非サレハ第四條ノ權利ヲ有スル者ニ損害ヲ生スヘキ工事ニ著手スルコトヲ得ス但シ其ノ權利ヲ有スル者ノ同意ヲ得タルトキハ此ノ限ニ在ラス
第九條 第六條ノ規定ニ依リ損害ノ補償ヲ爲スヘキ漁業權ヲ目的トスル先取特權又ハ抵當權ヲ有スル者ハ前條第一項但書ノ規定ニ依ル供託金ニ對シテモ其ノ權利ヲ行フコトヲ得
第十條 公有水面ノ利用ニ關シテ爲シタル施設カ埋立ノ爲其ノ效用ヲ妨ケラルルトキハ地方長官ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ埋立ノ免許ヲ受ケタル者ヲシテ其ノ施設ヲ爲シタル者ニ對シ之ニ代ルヘキ施設若ハ其ノ效用ヲ保全スル爲必要ナル施設ヲ爲サシメ又ハ損害ノ全部若ハ一部ヲ補償セシムルコトヲ得
第十一條 地方長官埋立ヲ免許シタルトキハ其ノ免許ノ日及其ノ事件ノ要領ヲ告示スヘシ
第十二條 地方長官ハ埋立ニ付免許料ヲ徵收スルコトヲ得
前項ノ免許料ノ徵收及歸屬ニ關シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十三條 埋立ノ免許ヲ受ケタル者ハ埋立ニ關スル工事ノ著手及工事ノ竣功ヲ地方長官ノ指定スル期間內ニ爲スヘシ
地方長官正當ノ事由アリト認ムルトキハ前項ノ期間ノ伸長ヲ許可スルコトヲ得
第十四條 埋立ノ免許ヲ受ケタル者埋立ニ關スル測量又ハ工事ノ爲必要アルトキハ地方長官ノ許可ヲ受ケ他人ノ土地ニ立入リ又ハ其ノ土地ヲ一時材料置場トシテ使用スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル立入又ハ使用ヲ爲サムトスル者ハ其ノ日時及場所ヲ少クトモ五日前ニ其ノ土地ノ市町村長ニ通知スヘシ
市町村長前項ノ規定ニ依ル通知ヲ受ケタルトキハ其ノ旨土地ノ占有者ニ通知スヘシ通知スルコト能ハサルトキハ告示スヘシ
前三項ノ規定ハ埋立ノ免許ヲ受ケムトスル者ニ關シ之ヲ準用ス
第十五條 前條ノ規定ニ依ル立入又ハ使用ニ因リテ生シタル損害ハ其ノ立入又ハ使用ヲ爲シタル者之ヲ補償スヘシ
第十六條 埋立ノ免許ヲ受ケタル者ハ地方長官ノ許可ヲ受クルニ非サレハ埋立ヲ爲ス權利ヲ他人ニ讓渡スルコトヲ得ス
前項ノ規定ニ依リ埋立ヲ爲ス權利ヲ讓受ケタル者ハ埋立ニ關スル法令又ハ之ニ基キテ爲ス處分若ハ其ノ條件ニ依リ讓渡人ニ生シタル權利義務ヲ承繼ス但シ第六條第一項、第十條又ハ前條ノ規定ニ依ル義務ハ讓渡人及讓受人連帶シテ之ヲ負フ
第十七條 埋立ノ免許ヲ受ケタル者ノ相續人ハ其ノ被相續人ノ有シタル埋立ヲ爲ス權利ヲ承繼ス
前條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十八條 埋立ヲ爲ス會社ノ發起人カ會社成立ノ後ニ於テ會社ノ爲ス埋立ニ付免許ヲ受ケタル場合ニ於テ會社成立シタルトキハ埋立ヲ爲ス權利其ノ他ノ埋立ニ關スル法令又ハ之ニ基キテ爲ス處分若ハ其ノ條件ニ依リ生シタル權利義務ハ會社之ヲ承繼ス
第十九條 埋立ノ免許ヲ受ケタル會社合併ニ因リテ消滅シタルトキハ埋立ヲ爲ス權利其ノ他ノ埋立ニ關スル法令又ハ之ニ基キテ爲ス處分若ハ其ノ條件ニ依リ生シタル權利義務ハ合併後存續スル會社又ハ合併ニ因リテ成立シタル會社之ヲ承繼ス
第二十條 前三條ノ規定ニ依リ權利義務ヲ承繼シタル者ハ其ノ承繼ノ日ヨリ起算シ十四日內ニ地方長官ニ屆出ツヘシ
第二十一條 第十六條乃至第十九條ノ規定ニ依ル權利義務ノ承繼アリタル場合ニ於テハ本法ノ適用ニ付テハ其ノ權利義務ヲ承繼シタル者ヲ以テ埋立ノ免許ヲ受ケタル者トス
第二十二條 埋立ノ免許ヲ受ケタル者ハ埋立ニ關スル工事竣功シタルトキハ遲滯ナク地方長官ニ竣功認可ヲ申請スヘシ
第二十三條 埋立ノ免許ヲ受ケタル者ハ前條ノ竣功認可前ニ於テ埋立地ヲ使用スルコトヲ得但シ埋立地ニ埋立ニ關スル工事用ニ非サル工作物ヲ設置セムトスルトキハ命令ヲ以テ指定スル場合ヲ除クノ外地方長官ノ許可ヲ受クヘシ
第二十四條 第二十二條ノ竣功認可アリタルトキハ埋立ノ免許ヲ受ケタル者ハ其ノ竣功認可ノ日ニ於テ埋立地ノ所有權ヲ取得ス但シ公用又ハ公共ノ用ニ供スル爲必要ナル埋立地ニシテ埋立ノ免許條件ヲ以テ特別ノ定ヲ爲シタルモノハ此ノ限ニ在ラス
前項但書ノ埋立地ノ歸屬ニ付テハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十五條 公共ノ用ニ供スル國有地ニシテ埋立ニ關スル工事ノ施行ニ因リ不用ニ歸シタルモノハ勅令ノ定ムル所ニ依リ有償又ハ無償ニテ埋立ノ免許ヲ受ケタル者ニ之ヲ下付スルコトヲ得
第二十六條 前二條ノ規定ハ耕地整理法第十一條ノ規定ノ適用ヲ妨ケス
第二十七條 埋立地ニ關スル權利ノ設定又ハ讓渡ニ付テハ埋立ノ免許條件ヲ以テ地方長官ノ許可ヲ受クヘキ旨ヲ定ムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ埋立地ニ關スル處分ノ制限ヲ定メタル場合ニ於テハ地方長官ハ第二十二條ノ竣功認可ヲ爲シタル後遲滯ナク其ノ登記ヲ登記所ニ囑託スヘシ
不動產登記法第百二十九條ノ規定ハ前項ノ登記ニ付之ヲ準用ス
地方長官登記シタル處分ノ制限ノ全部又ハ一部ヲ解除シタルトキハ遲滯ナク其ノ登記ノ抹消又ハ變更ヲ登記所ニ囑託スヘシ
第二十八條 前條第二項ノ登記ヲ爲シタル埋立地ニ關スル權利ノ設定又ハ讓渡ニシテ同條第一項ノ許可ヲ受クヘキモノハ其ノ許可ヲ受クルニ非サレハ效力ヲ生セス
第二十九條 前條ノ許可ヲ受ケ權利ヲ取得シタル者ヲ除クノ外第二十七條第二項ノ登記ヲ爲シタル埋立地ニ關スル權利ヲ取得シタル者ハ其ノ取得ノ日ヨリ起算シ十四日內ニ地方長官ニ屆出ツヘシ
第三十條 地方長官ハ前二條ノ埋立地ニ關スル權利ヲ取得シタル者ニ對シ埋立ノ免許條件ノ範圍內ニ於テ義務ヲ命スルコトヲ得
第三十一條 第八條第一項ノ規定ニ依リ埋立ニ關スル工事ニ著手スルコトヲ得ル場合ニ於テハ地方長官ハ其ノ工事ノ施行區域內ニ於ケル公有水面ニ存スル工作物其ノ他ノ物件ノ除却ヲ其ノ所有者ニ命スルコトヲ得
第三十二條 左ニ揭クル場合ニ於テハ埋立ニ關スル工事竣功認可前ニ限リ地方長官ハ埋立ノ免許ヲ受ケタル者ニ對シ本法若ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依リテ其ノ爲シタル免許其ノ他ノ處分ヲ取消シ其ノ效力ヲ制限シ若ハ其ノ條件ヲ變更シ、埋立ニ關スル工事ノ施行區域內ニ於ケル公有水面ニ存スル工作物其ノ他ノ物件ヲ改築若ハ除却セシメ、損害ヲ防止スル爲必要ナル施設ヲ爲サシメ又ハ原狀囘復ヲ爲サシムルコトヲ得
一 埋立ニ關スル法令ノ規定又ハ之ニ基キテ爲ス處分ニ違反シタルトキ
二 埋立ニ關スル法令ニ依ル免許其ノ他ノ處分ノ條件ニ違反シタルトキ
三 詐欺ノ手段ヲ以テ埋立ニ關スル法令ニ依ル免許其ノ他ノ處分ヲ受ケタルトキ
四 埋立ニ關スル工事施行ノ方法公害ヲ生スルノ虞アルトキ
五 公有水面ノ狀況ノ變更ニ因リ必要ヲ生シタルトキ
六 公害ヲ除却シ又ハ輕減スル爲必要ナルトキ
七 前號ノ場合ヲ除クノ外法令ニ依リ土地ヲ收用又ハ使用スルコトヲ得ル事業ノ爲必要ナルトキ
前項第七號ノ場合ニ於テ損害ヲ受ケタル者アルトキハ地方長官ハ同號ノ事業ヲ爲ス者ヲシテ損害ノ全部又ハ一部ヲ補償セシムルコトヲ得
第三十三條 埋立ニ關スル工事竣功認可後埋立ニ關スル法令ニ依ル免許其ノ他ノ處分ノ條件又ハ第三十條ノ規定ニ依リ命スル義務ニ違反スル者アルトキハ地方長官ハ其ノ違反ニ因リテ生シタル事實ヲ更正セシメ又ハ其ノ違反ニ因リテ生スル損害ヲ防止スル爲必要ナル施設ヲ爲サシムルコトヲ得
第三十四條 左ニ揭クル場合ニ於テハ埋立ノ免許ハ其ノ效力ヲ失フ但シ地方長官ハ宥恕スヘキ事由アリト認ムルトキハ效力ヲ失ヒタル日ヨリ起算シ三月內ニ限リ其ノ效力ヲ復活セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ埋立ノ免許ハ始ヨリ其ノ效力ヲ失ハサリシモノト看做ス
一 免許條件ニ依リ埋立ニ關スル工事ノ實施設計認可ノ申請ヲ要スル場合ニ於テ申請ニ對シ不認可ノ處分アリタルトキ又ハ免許條件ニ於テ指定スル期間內ニ申請ヲ爲ササルトキ
二 第十三條ノ期間內ニ埋立ニ關スル工事ノ著手又ハ工事ノ竣功ヲ爲ササルトキ
前項但書ノ規定ニ依リ免許ノ效力ヲ復活セシメタル場合ニ於テハ地方長官ハ免許條件ヲ變更スルコトヲ得
第三十五條 埋立ノ免許ノ效力消滅シタル場合ニ於テハ免許ヲ受ケタル者ハ埋立ニ關スル工事ノ施行區域內ニ於ケル公有水面ヲ原狀ニ囘復スヘシ但シ地方長官ハ原狀囘復ノ必要ナシト認ムルモノ又ハ原狀囘復ヲ爲スコト能ハスト認ムルモノニ付埋立ノ免許ヲ受ケタル者ノ申請アルトキ又ハ催告ヲ爲スニ拘ラス其ノ申請ナキトキハ原狀囘復ノ義務ヲ免除スルコトヲ得
前項但書ノ義務ヲ免除シタル場合ニ於テハ地方長官ハ埋立ニ關スル工事ノ施行區域內ニ於ケル公有水面ニ存スル土砂其ノ他ノ物件ヲ無償ニテ國ノ所有ニ屬セシムルコトヲ得
第三十六條 第三十二條第一項及前條ノ規定ハ埋立ノ免許ヲ受ケスシテ埋立工事ヲ爲シタル者ニ關シ之ヲ準用ス
埋立ノ免許ヲ受ケスシテ埋立工事ヲ爲シタル者アル場合ニ於テ地方長官原狀囘復ノ必要ナシト認ムルトキハ埋立ノ追認ヲ爲スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ追認ノ日ニ於テ埋立ノ免許アリタルモノト看做ス
埋立ノ免許ニ關スル規定ハ前項ノ埋立ノ追認ニ關シ之ヲ準用ス
第三十七條 地方長官第六條第三項ノ裁定ヲ爲シ又ハ第十條若ハ第三十二條第二項ノ規定ニ依ル補償ヲ爲サシムル場合ニ於テ鑑定人ノ意見ヲ聞キタルトキハ其ノ鑑定ニ要スル費用ハ第三十二條第二項ノ場合ニ於テハ同項ノ事業ヲ爲ス者、其ノ他ノ場合ニ於テハ埋立ノ免許ヲ受ケタル者ノ負擔トス
第三十八條 第十二條ノ免許料ニシテ國ニ歸屬スルモノ及前條ノ鑑定ニ要スル費用ハ地方長官國稅滯納處分ノ例ニ依リ之ヲ徵收スルコトヲ得但シ先取特權ノ順位ハ國稅ニ次クモノトス
第三十九條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ一年以下ノ懲役又ハ三千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 埋立ノ免許ヲ受ケスシテ埋立工事ヲ爲シタル者
二 詐欺ノ手段ヲ以テ埋立ニ關スル法令ニ依ル免許其ノ他ノ處分ヲ受ケタル者
三 埋立ニ關スル法令ニ依ル免許其ノ他ノ處分ノ條件ニ違反シ公有水面ノ公共ノ利用ヲ妨害シタル者
第四十條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ二千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第二十三條但書ノ規定ニ違反シ工作物ヲ設置シタル者
二 第二十七條第二項ノ登記ヲ爲シタル埋立地ニ於テ埋立ニ關スル法令ニ依ル免許其ノ他ノ處分ノ條件ニ違反シ工事ヲ爲シタル者
三 第三十條ノ規定ニ依リ命スル義務ニ違反シ埋立地ニ於テ工事ヲ爲シタル者
第四十一條 第二十條又ハ第二十九條ノ規定ニ依ル屆出ヲ怠リタル者ハ百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
第四十二條 國ニ於テ埋立ヲ爲サムトスルトキハ當該官廳地方長官ノ承認ヲ受クヘシ
埋立ニ關スル工事竣功シタルトキハ當該官廳直ニ地方長官ニ之ヲ通知スヘシ
第三條乃至第十一條、第十四條、第十五條、第三十一條、第三十七條及第四十四條ノ規定ハ第一項ノ埋立ニ關シ之ヲ準用ス但シ第十四條ノ規定ノ準用ニ依リ地方長官ノ許可ヲ受クヘキ場合ニ於テハ之ニ代ヘ地方長官ニ通知スヘシ
第四十三條 地方長官ハ公共ノ用ニ供スル爲必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ國ニ於テ埋立ヲ爲シタル埋立地ノ一部ヲ公共團體ニ歸屬セシムルコトヲ得
第四十四條 第六條第三項ノ規定ニ依ル補償ノ裁定ニ不服アル者ハ其ノ裁定書ノ送付ヲ受ケタル日ヨリ起算シ六月內ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ訴願シ又ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得ス
第四十五條 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ規定シタル事項ニ付行政廳ノ爲シタル處分ニ不服アル者ハ訴願スルコトヲ得
本法ニ依リ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得ル場合ニ於テハ主務大臣ニ訴願スルコトヲ得ス
第四十六條 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ規定シタル事項ニ付行政廳ノ爲シタル違法處分ニ因リ權利ヲ毀損セラレタリトスル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第四十七條 本法ニ依リ地方長官ノ職權ニ屬スル事項ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受ケシムルコトヲ得
第四十八條 本法ニ依リ地方長官ノ職權ニ屬スル事項ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ輕易ナルモノニ限リ下級行政廳ニ之ヲ委任スルコトヲ得
第四十九條 本法中市會又ハ市長ニ關スル規定ハ北海道區制又ハ沖繩縣區制ニ依ル區ニ付テハ區會又ハ區長ニ關シ之ヲ適用ス
本法中町村會又ハ町村長ニ關スル規定ハ町村制ヲ施行セサル地ニ付テハ町村會又ハ町村長ニ準スルモノニ關シ之ヲ適用ス
第五十條 本法ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ公有水面ノ一部ヲ區劃シ永久的設備ヲ築造スル場合ニ之ヲ準用ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行前爲シタル處分及之ニ附シタル條件ハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ牴觸セサル限リ本法ニ依リ爲シタル處分及之ニ附シタル條件ト看做ス但シ地方長官ハ公益上必要アリト認ムルトキハ本法施行ノ日ヨリ起算シ三月內ニ限リ第三十二條ノ規定ニ拘ラス處分ニ附シタル條件ヲ變更シ又ハ處分ニ條件ヲ附スルコトヲ得
地方長官ニ對スル申請其ノ他ノ埋立ニ關スル手續ニシテ本法施行前爲シタルモノハ本法ニ依リ之ヲ爲シタルモノト看做ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル公有水面埋立法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正十年四月八日
内閣総理大臣 原敬
内務大臣 床次竹二郎
法律第五十七号
公有水面埋立法
第一条 本法ニ於テ公有水面ト称スルハ河、海、湖、沼其ノ他ノ公共ノ用ニ供スル水流又ハ水面ニシテ国ノ所有ニ属スルモノヲ謂ヒ埋立ト称スルハ公有水面ノ埋立ヲ謂フ
公有水面ノ干拓ハ本法ノ適用ニ付テハ之ヲ埋立ト看做ス
本法ハ耕地整理法ニ依ル溝渠又ハ溜池ノ変更ノ為必要ナル埋立其ノ他勅令ヲ以テ指定スル埋立ニ付之ヲ適用セス
第二条 埋立ヲ為サムトスル者ハ地方長官ノ免許ヲ受クヘシ
第三条 前条ノ免許ハ地方長官期間ヲ指定シテ地元市町村会ノ意見ヲ徴シ之ヲ為スヘシ
第四条 地方長官ハ埋立ニ関スル工事ノ施行区域内ニ於ケル公有水面ニ関シ権利ヲ有スル者アルトキハ左ノ各号ノ一ニ該当スル場合ヲ除クノ外埋立ノ免許ヲ為スコトヲ得ス
一 其ノ公有水面ニ関シ権利ヲ有スル者埋立ニ同意シタルトキ
二 其ノ埋立ニ因リテ生スル利益ノ程度カ損害ノ程度ヲ著シク超過スルトキ
三 其ノ埋立カ法令ニ依リ土地ヲ収用又ハ使用スルコトヲ得ル事業ノ為必要ナルトキ
第五条 前条ニ於テ公有水面ニ関シ権利ヲ有スル者ト称スルハ左ノ各号ノ一ニ該当スル者ヲ謂フ
一 法令ニ依リ公有水面占用ノ許可ヲ受ケタル者
二 漁業権者又ハ入漁権者
三 法令ニ依リ公有水面ヨリ引水ヲ為シ又ハ公有水面ニ排水ヲ為ス許可ヲ受ケタル者
四 慣習ニ依リ公有水面ヨリ引水ヲ為シ又ハ公有水面ニ排水ヲ為ス者
第六条 埋立ノ免許ヲ受ケタル者ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ第四条ノ権利ヲ有スル者ニ対シ其ノ損害ノ補償ヲ為シ又ハ其ノ損害ノ防止ノ施設ヲ為スヘシ
漁業権者及入漁権者ノ前項ノ規定ニ依ル補償ヲ受クル権利ハ共同シテ之ヲ有スルモノトス
第一項ノ補償又ハ施設ニ関シ協議調ハサルトキ又ハ協議ヲ為スコト能ハサルトキハ地方長官ノ裁定ヲ求ムヘシ
第七条 前条ノ規定ニ依リ漁業権者ニ対シ損害ノ補償ヲ為スヘキ場合ニ於テ其ノ漁業権カ登録シタル先取特権又ハ抵当権ノ目的タルトキハ埋立ノ免許ヲ受ケタル者ハ其ノ補償ノ金額ヲ供託スヘシ但シ先取特権者又ハ抵当権者ノ同意ヲ得タルトキハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ規定ハ埋立ニ関スル工事ノ施行区域内ニ於ケル公有水面ニ付存スル漁業権又ハ入漁権カ訴訟ノ目的タル為訴訟当事者ヨリ請求アリタル場合ニ之ヲ準用ス
登録シタル先取特権若ハ抵当権ヲ有スル者又ハ訴訟当事者ハ前二項ノ規定ニ依ル供託金ニ対シテモ其ノ権利ヲ行フコトヲ得
第八条 埋立ノ免許ヲ受ケタル者ハ第六条ノ規定ニ依リ損害ノ補償ヲ為スヘキ場合ニ於テハ其ノ補償ヲ為シ又ハ前条ノ規定ニ依ル供託ヲ為シタル後ニ非サレハ第四条ノ権利ヲ有スル者ニ損害ヲ生スヘキ工事ニ著手スルコトヲ得ス但シ其ノ権利ヲ有スル者ノ同意ヲ得タルトキ又ハ地方長官ノ裁定シタル補償ノ金額ヲ供託シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
埋立ノ免許ヲ受ケタル者ハ第六条ノ規定ニ依リ損害防止ノ施設ヲ為スヘキ場合ニ於テハ其ノ施設ヲ為シタル後ニ非サレハ第四条ノ権利ヲ有スル者ニ損害ヲ生スヘキ工事ニ著手スルコトヲ得ス但シ其ノ権利ヲ有スル者ノ同意ヲ得タルトキハ此ノ限ニ在ラス
第九条 第六条ノ規定ニ依リ損害ノ補償ヲ為スヘキ漁業権ヲ目的トスル先取特権又ハ抵当権ヲ有スル者ハ前条第一項但書ノ規定ニ依ル供託金ニ対シテモ其ノ権利ヲ行フコトヲ得
第十条 公有水面ノ利用ニ関シテ為シタル施設カ埋立ノ為其ノ効用ヲ妨ケラルルトキハ地方長官ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ埋立ノ免許ヲ受ケタル者ヲシテ其ノ施設ヲ為シタル者ニ対シ之ニ代ルヘキ施設若ハ其ノ効用ヲ保全スル為必要ナル施設ヲ為サシメ又ハ損害ノ全部若ハ一部ヲ補償セシムルコトヲ得
第十一条 地方長官埋立ヲ免許シタルトキハ其ノ免許ノ日及其ノ事件ノ要領ヲ告示スヘシ
第十二条 地方長官ハ埋立ニ付免許料ヲ徴収スルコトヲ得
前項ノ免許料ノ徴収及帰属ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十三条 埋立ノ免許ヲ受ケタル者ハ埋立ニ関スル工事ノ著手及工事ノ竣功ヲ地方長官ノ指定スル期間内ニ為スヘシ
地方長官正当ノ事由アリト認ムルトキハ前項ノ期間ノ伸長ヲ許可スルコトヲ得
第十四条 埋立ノ免許ヲ受ケタル者埋立ニ関スル測量又ハ工事ノ為必要アルトキハ地方長官ノ許可ヲ受ケ他人ノ土地ニ立入リ又ハ其ノ土地ヲ一時材料置場トシテ使用スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル立入又ハ使用ヲ為サムトスル者ハ其ノ日時及場所ヲ少クトモ五日前ニ其ノ土地ノ市町村長ニ通知スヘシ
市町村長前項ノ規定ニ依ル通知ヲ受ケタルトキハ其ノ旨土地ノ占有者ニ通知スヘシ通知スルコト能ハサルトキハ告示スヘシ
前三項ノ規定ハ埋立ノ免許ヲ受ケムトスル者ニ関シ之ヲ準用ス
第十五条 前条ノ規定ニ依ル立入又ハ使用ニ因リテ生シタル損害ハ其ノ立入又ハ使用ヲ為シタル者之ヲ補償スヘシ
第十六条 埋立ノ免許ヲ受ケタル者ハ地方長官ノ許可ヲ受クルニ非サレハ埋立ヲ為ス権利ヲ他人ニ譲渡スルコトヲ得ス
前項ノ規定ニ依リ埋立ヲ為ス権利ヲ譲受ケタル者ハ埋立ニ関スル法令又ハ之ニ基キテ為ス処分若ハ其ノ条件ニ依リ譲渡人ニ生シタル権利義務ヲ承継ス但シ第六条第一項、第十条又ハ前条ノ規定ニ依ル義務ハ譲渡人及譲受人連帯シテ之ヲ負フ
第十七条 埋立ノ免許ヲ受ケタル者ノ相続人ハ其ノ被相続人ノ有シタル埋立ヲ為ス権利ヲ承継ス
前条第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第十八条 埋立ヲ為ス会社ノ発起人カ会社成立ノ後ニ於テ会社ノ為ス埋立ニ付免許ヲ受ケタル場合ニ於テ会社成立シタルトキハ埋立ヲ為ス権利其ノ他ノ埋立ニ関スル法令又ハ之ニ基キテ為ス処分若ハ其ノ条件ニ依リ生シタル権利義務ハ会社之ヲ承継ス
第十九条 埋立ノ免許ヲ受ケタル会社合併ニ因リテ消滅シタルトキハ埋立ヲ為ス権利其ノ他ノ埋立ニ関スル法令又ハ之ニ基キテ為ス処分若ハ其ノ条件ニ依リ生シタル権利義務ハ合併後存続スル会社又ハ合併ニ因リテ成立シタル会社之ヲ承継ス
第二十条 前三条ノ規定ニ依リ権利義務ヲ承継シタル者ハ其ノ承継ノ日ヨリ起算シ十四日内ニ地方長官ニ届出ツヘシ
第二十一条 第十六条乃至第十九条ノ規定ニ依ル権利義務ノ承継アリタル場合ニ於テハ本法ノ適用ニ付テハ其ノ権利義務ヲ承継シタル者ヲ以テ埋立ノ免許ヲ受ケタル者トス
第二十二条 埋立ノ免許ヲ受ケタル者ハ埋立ニ関スル工事竣功シタルトキハ遅滞ナク地方長官ニ竣功認可ヲ申請スヘシ
第二十三条 埋立ノ免許ヲ受ケタル者ハ前条ノ竣功認可前ニ於テ埋立地ヲ使用スルコトヲ得但シ埋立地ニ埋立ニ関スル工事用ニ非サル工作物ヲ設置セムトスルトキハ命令ヲ以テ指定スル場合ヲ除クノ外地方長官ノ許可ヲ受クヘシ
第二十四条 第二十二条ノ竣功認可アリタルトキハ埋立ノ免許ヲ受ケタル者ハ其ノ竣功認可ノ日ニ於テ埋立地ノ所有権ヲ取得ス但シ公用又ハ公共ノ用ニ供スル為必要ナル埋立地ニシテ埋立ノ免許条件ヲ以テ特別ノ定ヲ為シタルモノハ此ノ限ニ在ラス
前項但書ノ埋立地ノ帰属ニ付テハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十五条 公共ノ用ニ供スル国有地ニシテ埋立ニ関スル工事ノ施行ニ因リ不用ニ帰シタルモノハ勅令ノ定ムル所ニ依リ有償又ハ無償ニテ埋立ノ免許ヲ受ケタル者ニ之ヲ下付スルコトヲ得
第二十六条 前二条ノ規定ハ耕地整理法第十一条ノ規定ノ適用ヲ妨ケス
第二十七条 埋立地ニ関スル権利ノ設定又ハ譲渡ニ付テハ埋立ノ免許条件ヲ以テ地方長官ノ許可ヲ受クヘキ旨ヲ定ムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ埋立地ニ関スル処分ノ制限ヲ定メタル場合ニ於テハ地方長官ハ第二十二条ノ竣功認可ヲ為シタル後遅滞ナク其ノ登記ヲ登記所ニ嘱託スヘシ
不動産登記法第百二十九条ノ規定ハ前項ノ登記ニ付之ヲ準用ス
地方長官登記シタル処分ノ制限ノ全部又ハ一部ヲ解除シタルトキハ遅滞ナク其ノ登記ノ抹消又ハ変更ヲ登記所ニ嘱託スヘシ
第二十八条 前条第二項ノ登記ヲ為シタル埋立地ニ関スル権利ノ設定又ハ譲渡ニシテ同条第一項ノ許可ヲ受クヘキモノハ其ノ許可ヲ受クルニ非サレハ効力ヲ生セス
第二十九条 前条ノ許可ヲ受ケ権利ヲ取得シタル者ヲ除クノ外第二十七条第二項ノ登記ヲ為シタル埋立地ニ関スル権利ヲ取得シタル者ハ其ノ取得ノ日ヨリ起算シ十四日内ニ地方長官ニ届出ツヘシ
第三十条 地方長官ハ前二条ノ埋立地ニ関スル権利ヲ取得シタル者ニ対シ埋立ノ免許条件ノ範囲内ニ於テ義務ヲ命スルコトヲ得
第三十一条 第八条第一項ノ規定ニ依リ埋立ニ関スル工事ニ著手スルコトヲ得ル場合ニ於テハ地方長官ハ其ノ工事ノ施行区域内ニ於ケル公有水面ニ存スル工作物其ノ他ノ物件ノ除却ヲ其ノ所有者ニ命スルコトヲ得
第三十二条 左ニ掲クル場合ニ於テハ埋立ニ関スル工事竣功認可前ニ限リ地方長官ハ埋立ノ免許ヲ受ケタル者ニ対シ本法若ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ依リテ其ノ為シタル免許其ノ他ノ処分ヲ取消シ其ノ効力ヲ制限シ若ハ其ノ条件ヲ変更シ、埋立ニ関スル工事ノ施行区域内ニ於ケル公有水面ニ存スル工作物其ノ他ノ物件ヲ改築若ハ除却セシメ、損害ヲ防止スル為必要ナル施設ヲ為サシメ又ハ原状回復ヲ為サシムルコトヲ得
一 埋立ニ関スル法令ノ規定又ハ之ニ基キテ為ス処分ニ違反シタルトキ
二 埋立ニ関スル法令ニ依ル免許其ノ他ノ処分ノ条件ニ違反シタルトキ
三 詐欺ノ手段ヲ以テ埋立ニ関スル法令ニ依ル免許其ノ他ノ処分ヲ受ケタルトキ
四 埋立ニ関スル工事施行ノ方法公害ヲ生スルノ虞アルトキ
五 公有水面ノ状況ノ変更ニ因リ必要ヲ生シタルトキ
六 公害ヲ除却シ又ハ軽減スル為必要ナルトキ
七 前号ノ場合ヲ除クノ外法令ニ依リ土地ヲ収用又ハ使用スルコトヲ得ル事業ノ為必要ナルトキ
前項第七号ノ場合ニ於テ損害ヲ受ケタル者アルトキハ地方長官ハ同号ノ事業ヲ為ス者ヲシテ損害ノ全部又ハ一部ヲ補償セシムルコトヲ得
第三十三条 埋立ニ関スル工事竣功認可後埋立ニ関スル法令ニ依ル免許其ノ他ノ処分ノ条件又ハ第三十条ノ規定ニ依リ命スル義務ニ違反スル者アルトキハ地方長官ハ其ノ違反ニ因リテ生シタル事実ヲ更正セシメ又ハ其ノ違反ニ因リテ生スル損害ヲ防止スル為必要ナル施設ヲ為サシムルコトヲ得
第三十四条 左ニ掲クル場合ニ於テハ埋立ノ免許ハ其ノ効力ヲ失フ但シ地方長官ハ宥恕スヘキ事由アリト認ムルトキハ効力ヲ失ヒタル日ヨリ起算シ三月内ニ限リ其ノ効力ヲ復活セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ埋立ノ免許ハ始ヨリ其ノ効力ヲ失ハサリシモノト看做ス
一 免許条件ニ依リ埋立ニ関スル工事ノ実施設計認可ノ申請ヲ要スル場合ニ於テ申請ニ対シ不認可ノ処分アリタルトキ又ハ免許条件ニ於テ指定スル期間内ニ申請ヲ為ササルトキ
二 第十三条ノ期間内ニ埋立ニ関スル工事ノ著手又ハ工事ノ竣功ヲ為ササルトキ
前項但書ノ規定ニ依リ免許ノ効力ヲ復活セシメタル場合ニ於テハ地方長官ハ免許条件ヲ変更スルコトヲ得
第三十五条 埋立ノ免許ノ効力消滅シタル場合ニ於テハ免許ヲ受ケタル者ハ埋立ニ関スル工事ノ施行区域内ニ於ケル公有水面ヲ原状ニ回復スヘシ但シ地方長官ハ原状回復ノ必要ナシト認ムルモノ又ハ原状回復ヲ為スコト能ハスト認ムルモノニ付埋立ノ免許ヲ受ケタル者ノ申請アルトキ又ハ催告ヲ為スニ拘ラス其ノ申請ナキトキハ原状回復ノ義務ヲ免除スルコトヲ得
前項但書ノ義務ヲ免除シタル場合ニ於テハ地方長官ハ埋立ニ関スル工事ノ施行区域内ニ於ケル公有水面ニ存スル土砂其ノ他ノ物件ヲ無償ニテ国ノ所有ニ属セシムルコトヲ得
第三十六条 第三十二条第一項及前条ノ規定ハ埋立ノ免許ヲ受ケスシテ埋立工事ヲ為シタル者ニ関シ之ヲ準用ス
埋立ノ免許ヲ受ケスシテ埋立工事ヲ為シタル者アル場合ニ於テ地方長官原状回復ノ必要ナシト認ムルトキハ埋立ノ追認ヲ為スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ追認ノ日ニ於テ埋立ノ免許アリタルモノト看做ス
埋立ノ免許ニ関スル規定ハ前項ノ埋立ノ追認ニ関シ之ヲ準用ス
第三十七条 地方長官第六条第三項ノ裁定ヲ為シ又ハ第十条若ハ第三十二条第二項ノ規定ニ依ル補償ヲ為サシムル場合ニ於テ鑑定人ノ意見ヲ聞キタルトキハ其ノ鑑定ニ要スル費用ハ第三十二条第二項ノ場合ニ於テハ同項ノ事業ヲ為ス者、其ノ他ノ場合ニ於テハ埋立ノ免許ヲ受ケタル者ノ負担トス
第三十八条 第十二条ノ免許料ニシテ国ニ帰属スルモノ及前条ノ鑑定ニ要スル費用ハ地方長官国税滞納処分ノ例ニ依リ之ヲ徴収スルコトヲ得但シ先取特権ノ順位ハ国税ニ次クモノトス
第三十九条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ一年以下ノ懲役又ハ三千円以下ノ罰金ニ処ス
一 埋立ノ免許ヲ受ケスシテ埋立工事ヲ為シタル者
二 詐欺ノ手段ヲ以テ埋立ニ関スル法令ニ依ル免許其ノ他ノ処分ヲ受ケタル者
三 埋立ニ関スル法令ニ依ル免許其ノ他ノ処分ノ条件ニ違反シ公有水面ノ公共ノ利用ヲ妨害シタル者
第四十条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ二千円以下ノ罰金ニ処ス
一 第二十三条但書ノ規定ニ違反シ工作物ヲ設置シタル者
二 第二十七条第二項ノ登記ヲ為シタル埋立地ニ於テ埋立ニ関スル法令ニ依ル免許其ノ他ノ処分ノ条件ニ違反シ工事ヲ為シタル者
三 第三十条ノ規定ニ依リ命スル義務ニ違反シ埋立地ニ於テ工事ヲ為シタル者
第四十一条 第二十条又ハ第二十九条ノ規定ニ依ル届出ヲ怠リタル者ハ百円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス
第四十二条 国ニ於テ埋立ヲ為サムトスルトキハ当該官庁地方長官ノ承認ヲ受クヘシ
埋立ニ関スル工事竣功シタルトキハ当該官庁直ニ地方長官ニ之ヲ通知スヘシ
第三条乃至第十一条、第十四条、第十五条、第三十一条、第三十七条及第四十四条ノ規定ハ第一項ノ埋立ニ関シ之ヲ準用ス但シ第十四条ノ規定ノ準用ニ依リ地方長官ノ許可ヲ受クヘキ場合ニ於テハ之ニ代ヘ地方長官ニ通知スヘシ
第四十三条 地方長官ハ公共ノ用ニ供スル為必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ国ニ於テ埋立ヲ為シタル埋立地ノ一部ヲ公共団体ニ帰属セシムルコトヲ得
第四十四条 第六条第三項ノ規定ニ依ル補償ノ裁定ニ不服アル者ハ其ノ裁定書ノ送付ヲ受ケタル日ヨリ起算シ六月内ニ通常裁判所ニ出訴スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ訴願シ又ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得ス
第四十五条 本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ規定シタル事項ニ付行政庁ノ為シタル処分ニ不服アル者ハ訴願スルコトヲ得
本法ニ依リ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得ル場合ニ於テハ主務大臣ニ訴願スルコトヲ得ス
第四十六条 本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ規定シタル事項ニ付行政庁ノ為シタル違法処分ニ因リ権利ヲ毀損セラレタリトスル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第四十七条 本法ニ依リ地方長官ノ職権ニ属スル事項ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受ケシムルコトヲ得
第四十八条 本法ニ依リ地方長官ノ職権ニ属スル事項ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ其ノ軽易ナルモノニ限リ下級行政庁ニ之ヲ委任スルコトヲ得
第四十九条 本法中市会又ハ市長ニ関スル規定ハ北海道区制又ハ沖縄県区制ニ依ル区ニ付テハ区会又ハ区長ニ関シ之ヲ適用ス
本法中町村会又ハ町村長ニ関スル規定ハ町村制ヲ施行セサル地ニ付テハ町村会又ハ町村長ニ準スルモノニ関シ之ヲ適用ス
第五十条 本法ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ公有水面ノ一部ヲ区画シ永久的設備ヲ築造スル場合ニ之ヲ準用ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
本法施行前為シタル処分及之ニ附シタル条件ハ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ牴触セサル限リ本法ニ依リ為シタル処分及之ニ附シタル条件ト看做ス但シ地方長官ハ公益上必要アリト認ムルトキハ本法施行ノ日ヨリ起算シ三月内ニ限リ第三十二条ノ規定ニ拘ラス処分ニ附シタル条件ヲ変更シ又ハ処分ニ条件ヲ附スルコトヲ得
地方長官ニ対スル申請其ノ他ノ埋立ニ関スル手続ニシテ本法施行前為シタルモノハ本法ニ依リ之ヲ為シタルモノト看做ス