各省官制通則
法令番号: 勅令第百二十二號
公布年月日: 明治26年10月31日
法令の形式: 勅令
朕各省官制通則ノ改正ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十六年十月三十日
內閣總理大臣 伯爵 伊藤博文
遞信大臣 伯爵 黑田淸隆
海軍大臣 伯爵 西鄕從道
內務大臣 伯爵 井上馨
陸軍大臣 伯爵 大山巖
農商務大臣 伯爵 後藤象二郞
外務大臣 陸奧宗光
大藏大臣 渡邊國武
文部大臣 井上毅
司法大臣 芳川顯正
勅令第百二十二號
各省官制通則
第一條 本則ハ外務、內務、大藏、陸軍、海軍、司法、文部、農商務、遞信ノ各省ニ適用ス
第二條 各省大臣ハ主任ノ事務ニ付其ノ責ニ任ス
主任ノ明瞭ナラサル事務ニシテ兩省以上ニ關涉スルモノアルトキハ閣議ニ提出シテ其ノ主任ヲ定ム
第三條 各省大臣ハ主任ノ事務ニ付法律勅令ノ制定、廢止及改正ヲ要スルコトアルトキハ案ヲ具ヘ閣議ニ提出スヘシ
第四條 各省大臣ハ主任ノ事務ニ付其ノ職權若クハ特別ノ委任ニ依リ省令ヲ發スルコトヲ得
第五條 各省大臣ハ主任ノ事務ニ付警視總監、北海道廳長官、府縣知事ニ指令又ハ訓令ヲ下スコトヲ得
第六條 各省大臣ハ主任ノ事務ニ付警視總監、北海道廳長官、府縣知事ヲ監督ス若シ警視總監、北海道廳長官、府縣知事ノ命令又ハ處分ノ成規ニ違ヒ公益ヲ害シ又ハ權限ヲ犯スモノアリト認ムルトキハ其ノ命令又ハ處分ヲ停止シ又ハ取消スコトヲ得
第七條 各省大臣ハ所部ノ官吏ヲ統督シ奏任官ノ進退ハ內閣總理大臣ヲ經テ之ヲ上奏シ判任官以下ハ之ヲ專行ス
地方官廳奏任官ノ進退ハ內閣總理大臣ヲ經テ內務大臣之ヲ上奏ス但收稅長ノ進退ハ內閣總理大臣ヲ經テ大藏大臣之ヲ上奏ス
第八條 各省大臣ハ內閣總理大臣ヲ經テ所部ノ官吏ノ敍位敍勳ヲ上奏ス
地方官廳官吏ノ敍位敍勳ハ前條第二項ノ例ニ依ル
第九條 各省大臣事故アルトキハ法律勅令ニ副署シ省務ヲ敷奏シ內閣ノ議ニ列シ及省令ヲ發スルコトヲ除クノ外其ノ職務ヲ臨時次官ニ代理セシムルコトヲ得
第十條 各省ニ大臣官房ヲ置ク
大臣官房ニ於テハ左ノ事務ヲ掌ル
一 機密ニ屬スル事項
二 官吏ノ進退身分ニ關スル事項
三 大臣ノ官印及省印ノ管守ニ關スル事項
四 公文書類及成案文書ノ接受發送ニ關スル事項
五 統計報吿ノ調製ニ關スル事項
六 公文書類ノ編纂保存ニ關スル事項
七 本省所管ノ經費及諸收入ノ豫算、決算竝會計ニ關スル事項
八 本省所管ノ官有財產及物品ニ關スル事項
九 其ノ他各省官制ニ依リ特ニ大臣官房ノ所掌ニ屬セシムル事項
陸軍省海軍省ニ於テハ前項第七第八ノ事務ヲ掌ラシムル爲特ニ局ヲ置クコトヲ得
第十一條 各省ノ便宜ニ從ヒ大臣官房ノ事務ヲ各局ニ於テ處理セシムルコトヲ得
第十二條 各省中省務ヲ分掌スル爲局ヲ置ク其ノ分掌事務ハ各省官制ニ於テ之ヲ定ム
第十三條 大臣官房及各局ノ分課ハ各省大臣ノ定ムル所ニ依ル
陸軍省海軍省中ノ分課ハ各其ノ省官制ニ於テ之ヲ定ム
第十四條 各省ニ左ノ職員ヲ置ク
次官
局長
參事官
祕書官
書記官
第十五條 各省次官ハ一人勅任トス
第十六條 次官ハ大臣ヲ佐ケ省務ヲ整理シ各局部ノ事務ヲ監督ス
第十七條 各局局長ハ一人勅任又ハ奏任トシ各省官制ニ於テ之ヲ定ム
第十八條 局長ハ大臣又ハ次官ノ命ヲ承ケ其ノ主務ヲ掌理シ及局中各課ノ事務ヲ指揮監督ス
第十九條 參事官ハ奏任トス大臣又ハ次官ノ命ヲ承ケ審議立案ヲ掌ル
第二十條 參事官ハ其ノ省ノ便宜ニ從ヒ局課ニ兼勤シ若クハ臨時命ヲ承ケ其ノ事務ヲ助ク
第二十一條 祕書官ハ奏任トス大臣ノ命ヲ承ケ機密事務ヲ掌リ又ハ臨時命ヲ承ケ各局課ノ事務ヲ助ク
第二十二條 書記官ハ奏任トス大臣又ハ次官ノ命ヲ承ケ大臣官房ノ事務ヲ掌リ又ハ各局ノ事務ヲ助ク
第二十三條 各省專任祕書官ハ一人トス但外務省ニ於テハ專任二人ヲ置クコトヲ得
各省專任參事官專任書記官ハ併セテ八人以下トシ其ノ定員ハ各省官制ニ於テ之ヲ定ム
第二十四條 大臣官房及局中各課ニ課長一人ヲ置キ奏任官又ハ判任官ヲ以テ之ニ充ツ課長ハ命ヲ上官ニ承ケ課務ヲ掌理ス
陸軍省海軍省中ノ課長ハ各其ノ省官制ノ定ムル所ニ依ル
第二十五條 屬ハ判任トス上官ノ指揮ヲ承ケ庶務ニ從事ス
第二十六條 各省判任官ノ定員ハ各省官制ニ於テ之ヲ定ム
第二十七條 本則ニ揭クルモノヽ外各省特別ノ職員ヲ置クコトヲ要スルモノハ各省官制ニ於テ之ヲ定ム
附 則
第二十八條 本令ハ明治二十六年十一月十日ヨリ施行ス
朕各省官制通則ノ改正ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十六年十月三十日
内閣総理大臣 伯爵 伊藤博文
逓信大臣 伯爵 黒田清隆
海軍大臣 伯爵 西郷従道
内務大臣 伯爵 井上馨
陸軍大臣 伯爵 大山巌
農商務大臣 伯爵 後藤象二郎
外務大臣 陸奥宗光
大蔵大臣 渡辺国武
文部大臣 井上毅
司法大臣 芳川顕正
勅令第百二十二号
各省官制通則
第一条 本則ハ外務、内務、大蔵、陸軍、海軍、司法、文部、農商務、逓信ノ各省ニ適用ス
第二条 各省大臣ハ主任ノ事務ニ付其ノ責ニ任ス
主任ノ明瞭ナラサル事務ニシテ両省以上ニ関渉スルモノアルトキハ閣議ニ提出シテ其ノ主任ヲ定ム
第三条 各省大臣ハ主任ノ事務ニ付法律勅令ノ制定、廃止及改正ヲ要スルコトアルトキハ案ヲ具ヘ閣議ニ提出スヘシ
第四条 各省大臣ハ主任ノ事務ニ付其ノ職権若クハ特別ノ委任ニ依リ省令ヲ発スルコトヲ得
第五条 各省大臣ハ主任ノ事務ニ付警視総監、北海道庁長官、府県知事ニ指令又ハ訓令ヲ下スコトヲ得
第六条 各省大臣ハ主任ノ事務ニ付警視総監、北海道庁長官、府県知事ヲ監督ス若シ警視総監、北海道庁長官、府県知事ノ命令又ハ処分ノ成規ニ違ヒ公益ヲ害シ又ハ権限ヲ犯スモノアリト認ムルトキハ其ノ命令又ハ処分ヲ停止シ又ハ取消スコトヲ得
第七条 各省大臣ハ所部ノ官吏ヲ統督シ奏任官ノ進退ハ内閣総理大臣ヲ経テ之ヲ上奏シ判任官以下ハ之ヲ専行ス
地方官庁奏任官ノ進退ハ内閣総理大臣ヲ経テ内務大臣之ヲ上奏ス但収税長ノ進退ハ内閣総理大臣ヲ経テ大蔵大臣之ヲ上奏ス
第八条 各省大臣ハ内閣総理大臣ヲ経テ所部ノ官吏ノ叙位叙勲ヲ上奏ス
地方官庁官吏ノ叙位叙勲ハ前条第二項ノ例ニ依ル
第九条 各省大臣事故アルトキハ法律勅令ニ副署シ省務ヲ敷奏シ内閣ノ議ニ列シ及省令ヲ発スルコトヲ除クノ外其ノ職務ヲ臨時次官ニ代理セシムルコトヲ得
第十条 各省ニ大臣官房ヲ置ク
大臣官房ニ於テハ左ノ事務ヲ掌ル
一 機密ニ属スル事項
二 官吏ノ進退身分ニ関スル事項
三 大臣ノ官印及省印ノ管守ニ関スル事項
四 公文書類及成案文書ノ接受発送ニ関スル事項
五 統計報告ノ調製ニ関スル事項
六 公文書類ノ編纂保存ニ関スル事項
七 本省所管ノ経費及諸収入ノ予算、決算並会計ニ関スル事項
八 本省所管ノ官有財産及物品ニ関スル事項
九 其ノ他各省官制ニ依リ特ニ大臣官房ノ所掌ニ属セシムル事項
陸軍省海軍省ニ於テハ前項第七第八ノ事務ヲ掌ラシムル為特ニ局ヲ置クコトヲ得
第十一条 各省ノ便宜ニ従ヒ大臣官房ノ事務ヲ各局ニ於テ処理セシムルコトヲ得
第十二条 各省中省務ヲ分掌スル為局ヲ置ク其ノ分掌事務ハ各省官制ニ於テ之ヲ定ム
第十三条 大臣官房及各局ノ分課ハ各省大臣ノ定ムル所ニ依ル
陸軍省海軍省中ノ分課ハ各其ノ省官制ニ於テ之ヲ定ム
第十四条 各省ニ左ノ職員ヲ置ク
次官
局長
参事官
秘書官
書記官
第十五条 各省次官ハ一人勅任トス
第十六条 次官ハ大臣ヲ佐ケ省務ヲ整理シ各局部ノ事務ヲ監督ス
第十七条 各局局長ハ一人勅任又ハ奏任トシ各省官制ニ於テ之ヲ定ム
第十八条 局長ハ大臣又ハ次官ノ命ヲ承ケ其ノ主務ヲ掌理シ及局中各課ノ事務ヲ指揮監督ス
第十九条 参事官ハ奏任トス大臣又ハ次官ノ命ヲ承ケ審議立案ヲ掌ル
第二十条 参事官ハ其ノ省ノ便宜ニ従ヒ局課ニ兼勤シ若クハ臨時命ヲ承ケ其ノ事務ヲ助ク
第二十一条 秘書官ハ奏任トス大臣ノ命ヲ承ケ機密事務ヲ掌リ又ハ臨時命ヲ承ケ各局課ノ事務ヲ助ク
第二十二条 書記官ハ奏任トス大臣又ハ次官ノ命ヲ承ケ大臣官房ノ事務ヲ掌リ又ハ各局ノ事務ヲ助ク
第二十三条 各省専任秘書官ハ一人トス但外務省ニ於テハ専任二人ヲ置クコトヲ得
各省専任参事官専任書記官ハ併セテ八人以下トシ其ノ定員ハ各省官制ニ於テ之ヲ定ム
第二十四条 大臣官房及局中各課ニ課長一人ヲ置キ奏任官又ハ判任官ヲ以テ之ニ充ツ課長ハ命ヲ上官ニ承ケ課務ヲ掌理ス
陸軍省海軍省中ノ課長ハ各其ノ省官制ノ定ムル所ニ依ル
第二十五条 属ハ判任トス上官ノ指揮ヲ承ケ庶務ニ従事ス
第二十六条 各省判任官ノ定員ハ各省官制ニ於テ之ヲ定ム
第二十七条 本則ニ掲クルモノヽ外各省特別ノ職員ヲ置クコトヲ要スルモノハ各省官制ニ於テ之ヲ定ム
附 則
第二十八条 本令ハ明治二十六年十一月十日ヨリ施行ス