(医療の給付)
第七条 厚生大臣は、原子爆弾の傷害作用に起因して負傷し、又は疾病にかかり、現に医療を要する状態にある被爆者に対し、必要な医療の給付を行う。ただし、当該負傷又は疾病が原子爆弾の放射能に起因するものでないときは、その者の治ゆ能力が原子爆弾の放射能の影響を受けているため現に医療を要する状態にある場合に限る。
3 医療の給付は、厚生大臣が第九条第一項の規定により指定する医療機関(以下「指定医療機関」という。)に委託して行うものとする。
(認定)
第八条 前条第一項の規定により医療の給付を受けようとする者は、あらかじめ、当該負傷又は疾病が原子爆弾の傷害作用に起因する旨の厚生大臣の認定を受けなければならない。
2 厚生大臣は、前項の認定を行うに当つては、原子爆弾被爆者医療審議会の意見を聞かなければならない。ただし、当該負傷又は疾病が原子爆弾の傷害作用に起因すること又は起因しないことが明らかであるときは、この限りでない。
(医療機関の指定)
第九条 厚生大臣は、その開設者の同意を得て、第七条の規定による医療を担当させる病院若しくは診療所又は薬局を指定する。
2 指定医療機関は、三十日以上の予告期間を設けて、その指定を辞退することができる。
3 指定医療機関が次条第一項の規定に違反したとき、担当医師に変更があつたとき、その他指定医療機関に第七条の規定による医療を担当させるについて著しく不適当であると認められる理由があるときは、厚生大臣は、その指定を取り消すことができる。
4 厚生大臣は、前項の規定により指定を取り消す場合には、当該医療機関の開設者に対して、弁明の機会を与えなければならない。この場合においては、あらかじめ、書面をもつて、弁明をなすべき日時、場所及び当該処分をなすべき理由を通知しなければならない。
5 厚生大臣は、医療機関の指定又は指定の取消を行うに当つては、あらかじめ原子爆弾被爆者医療審議会の意見を聞かなければならない。
(指定医療機関の義務)
第十条 指定医療機関は、厚生大臣の定めるところにより、医療を担当しなければならない。
2 指定医療機関は、医療を行うについて、厚生大臣の行う指導に従わなければならない。
(診療方針及び診療報酬)
第十一条 指定医療機関の診療方針及び診療報酬は、健康保険の診療方針及び診療報酬の例による。
2 前項に規定する診療方針及び診療報酬の例によることができないとき、及びこれによることを適当としないときの診療方針及び診療報酬は、厚生大臣が原子爆弾被爆者医療審議会の意見を聞いて定めるところによる。
(診療報酬の審査及び支払)
第十二条 厚生大臣は、指定医療機関の診療内容及び診療報酬の請求を随時審査し、かつ、指定医療機関が前条の規定によつて請求することができる診療報酬の額を決定することができる。
2 指定医療機関は、厚生大臣が行う前項の決定に従わなければならない。
3 厚生大臣は、第一項の規定により指定医療機関が請求することのできる診療報酬の額を決定するに当つては、社会保険診療報酬支払基金法(昭和二十三年法律第百二十九号)に定める審査委員会の意見を聞かなければならない。
4 国は、指定医療機関に対する診療報酬の支払に関する事務を社会保険診療報酬支払基金に委託することができる。
(報告の請求及び検査)
第十三条 厚生大臣は、前条第一項の審査のため必要があるときは、指定医療機関の管理者に対して必要な報告を求め、又は当該職員をして指定医療機関についてその管理者の同意を得て、実地に診療録その他の帳簿書類を検査させることができる。
2 指定医療機関の管理者が、正当な理由がなく、前項の報告の求に応ぜず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の同意を拒んだときは、厚生大臣は、当該指定医療機関に対する診療報酬の支払を一時差し止めることができる。
(医療費の支給)
第十四条 厚生大臣は、被爆者が、緊急その他やむを得ない理由により、指定医療機関以外の者から第七条第二項各号に規定する医療を受けた場合において、必要があると認めるときは、医療の給付に代えて、医療費を支給することができる。被爆者が指定医療機関から第七条第二項各号に規定する医療を受けた場合において、当該医療が緊急その他やむを得ない理由により同条第一項の規定によらないで行われたものであるときも、同様とする。
2 前項の規定によつて支給する医療費の額は、第十一条の規定により指定医療機関が請求することができる診療報酬の例により算定した額とする。ただし、現に要した費用の額をこえることができない。
3 厚生大臣は、第一項の規定により医療費を支給するについて必要があるときは、当該医療を行つた者又はこれを使用する者に対し、その行つた医療に関し、報告若しくは診療録若しくは帳簿書類その他の物件の提示を命じ、又は当該職員をして質問させることができる。