原子爆弾被爆者の医療等に関する法律の一部を改正する法律
法令番号: 法律第136号
公布年月日: 昭和35年8月1日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

原子爆弾被爆者の医療等に関する法律による健康診断や原爆症患者への医療給付に加え、放射線を多量に浴びた被爆者は一般的に疾病にかかりやすく治癒しにくい状況にあり、また原爆症を誘発する恐れもあることから、原爆症以外の負傷や疾病についても国が医療給付を行うこととする。また、原爆症患者のうち一定所得以下の者に対し、医療を受けている期間中、月額二千円を限度として医療手当を支給することで、被爆者が安心して医療を受けられるようにするため、法改正を行うものである。

参照した発言:
第34回国会 衆議院 社会労働委員会 第24号

審議経過

第34回国会

参議院
(昭和35年3月17日)
衆議院
(昭和35年4月5日)
参議院
(昭和35年4月7日)
衆議院
(昭和35年7月12日)
参議院
(昭和35年7月12日)
衆議院
(昭和35年7月15日)
(昭和35年7月15日)
参議院
(昭和35年7月15日)
(昭和35年7月15日)
(昭和35年7月15日)
原子爆弾被爆者の医療等に関する法律の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和三十五年八月一日
内閣総理大臣 池田勇人
法律第百三十六号
原子爆弾被爆者の医療等に関する法律の一部を改正する法律
原子爆弾被爆者の医療等に関する法律(昭和三十二年法律第四十一号)の一部を次のように改正する。
目次中「節三章 医療(第七条―第十四条)」を「第三章 医療(第七条―第十四条の八)」に改める。
第三章中第十四条の次に次の七条を加える。
(一般疾病医療費の支給)
第十四条の二 厚生大臣は、原子爆弾の放射線を多量に浴びた被爆者で政令で定めるもの(以下「特別被爆者」という。)が、負傷又は疾病(第七条第一項の規定による医療の給付を受けることができる負傷又は疾病、遺伝性疾病、先天性疾病及び厚生大臣の定めるその他の負傷又は疾病を除く。)につき、都道府県知事が次条の規定により指定する医療機関(以下「被爆者一般疾病医療機関」という。)から第七条第二項各号に規定する医療を受け、又は緊急その他やむを得ない理由により被爆者一般疾病医療機関以外の医療機関からこれらの医療を受けたときは、その者に対し、当該医療に要した費用の額を限度として、一般疾病医療費を支給することができる。ただし、その者が、当該負傷若しくは疾病につき、健康保険法(大正十一年法律第七十号)、船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)、日雇労働者健康保険法(昭和二十八年法律第二百七号)、国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)、国家公務員共済組合法(昭和三十三年法律第百二十八号。他の法律において準用し、又は例による場合を含む。)、公共企業体職員等共済組合法(昭和三十一年法律第百三十四号)、市町村職員共済組合法(昭和二十九年法律第二百四号)、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)、労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)、船員法(昭和二十二年法律第百号)若しくは日本学校安全会法(昭和三十四年法律第百九十八号)の規定により医療に関する給付を受け、若しくは受けることができたとき、又は当該医療が法令の規定により国若しくは地方公共団体の負担による医療に関する給付として行なわれたときは、当該医療に要した費用の額から当該医療に関する給付の額を控除した額(その者が国民健康保険法による療養の給付を受け、又は受けることができたときは、当該療養の給付に関する同法の規定による一部負担金に相当する額とし、当該医療が法令の規定により国又は地方公共団体の負担による医療の現物給付として行なわれたときは、当該医療に関する給付について行なわれた実費徴収の額とする。)の限度において支給するものとする。
2 前項の医療に要した費用の額の算定については、前条第二項の規定を準用する。
3 特別被爆者が被爆者一般疾病医療機関から医療を受けた場合においては、厚生大臣は、一般疾病医療費として当該被爆者に支給すべき額の限度において、その者が当該医療に関し当該医療機関に支払うべき費用を、当該被爆者に代わり、当該医療機関に支払うことができる。
4 前項の規定による支払があつたときは、当該被爆者に対し、一般疾病医療費の支給があつたものとみなす。
5 国民健康保険の被保険者である特別被爆者が、第一項に規定する負傷又は疾病について国民健康保険法による療養取扱機関である被爆者一般疾病医療機関から医療を受ける場合には、同法の規定により当該医療機関に支払うべき一部負担金は、同法第四十二条第一項の規定にかかわらず、当該医療に関し厚生大臣が第三項の規定による支払をしない旨の決定をするまでは、支払うことを要しない。
(被爆者一般疾病医療機関)
第十四条の三 都道府県知事は、その開設者の同意を得て、前条第三項の規定による支払を受けることができる病院若しくは診療所又は薬局を指定する。
2 被爆者一般疾病医療機関は、三十日以上の予告期間を設けて、その指定を辞退することができる。
3 都道府県知事は、被爆者一般疾病医療機関に前条第三項の規定による支払を受けるについて著しく不適当であると認められる理由があるときは、その指定を取り消すことができる。
4 第九条第四項の規定は、前項の場合に準用する。
第十四条の四 厚生大臣は、第十四条の二第三項の規定による支払をなすべき額を決定するに当たつては、社会保険診療報酬支払基金法に定める審査委員会の意見を聞かなければならない。
2 国は、第十四条の二第三項の規定による支払に関する事務を社会保険診療報酬支払基金に委託することができる。
(報告の請求等)
第十四条の五 第十三条の規定は、第十四条の二第三項の規定による支払のため必要がある場合に、第十四条第三項の規定は、一般疾病医療費を支給するについて必要がある場合に、それぞれ準用する。
(一般疾病医療費の支給の制限)
第十四条の六 特別被爆者が、自己の故意の犯罪行為により、又は故意に負傷し、又は疾病にかかつたときは、当該負傷又は疾病に係る一般疾病医療費の支給は、行なわない。
第十四条の七 特別被爆者が、闘争、泥酔又は著しい不行跡によつて負傷し、又は疾病にかかつたときは、当該負傷又は疾病に係る一般疾病医療費の支給は、その全部又は一部を行なわないことができる。特別被爆者が、重大な過失により、負傷し、若しくは疾病にかかつたとき、又は正当な理由がなくて療養に関する指示に従わなかつたときも、同様とする。
(医療手当)
第十四条の八 都道府県知事は、被爆者に対し、政令の定めるところにより、その者が第七条第一項の規定による医療の給付を受けている期間、月額二千円を限度として、医療手当を支給することができる。
第二十条中「都道府県知事が行う事務に要する費用」を「都道府県知事が行なう事務に要する費用及び医療手当の支給に要する費用」に、「長崎市の長が行う事務に要する費用」を「長崎市の長が行なう事務に要する費用及び医療手当の支給に要する費用」に改める。
第二十四条中「第十四条第三項」の下に「(第十四条の五において準用する場合を含む。)」を加える。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
(社会保険診療報酬支払基金法の一部改正)
2 社会保険診療報酬支払基金法(昭和二十三年法律第百二十九号)の一部を次のように改正する。
第十三条第二項中「原子爆弾被爆者の医療等に関する法律(昭和三十二年法律第四十一号)第十二条第三項」の下に「若しくは第十四条の四第一項」を、「医療機関の請求することのできる診療報酬の額」の下に「又は被爆者一般疾病医療機関に支払うべき額」を、「原子爆弾被爆者の医療等に関する法律第十二条第四項」の下に「若しくは第十四条の四第二項」を、「医療機関に対する診療報酬」の下に「又は一般疾病医療費に相当する額」を加える。
厚生大臣 中山マサ
内閣総理大臣 池田勇人