公共工事の前払金保証事業に関する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和二十七年六月十二日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百八十四号
公共工事の前払金保証事業に関する法律
目次
第一章
総則(第一條・第二條)
第二章
登録(第三條―第十一條)
第三章
前払金保証事業(第十二條―第二十條)
第四章
監督(第二十一條―第二十四條)
第五章
雑則(第二十五條―第二十八條)
第六章
罰則(第二十九條―第二十四條)
附則
第一章 総則
(この法律の目的)
第一條 この法律は、公共工事に関する前金払の適正且つ円滑な実施を確保するため、前払金保証事業の登録及びその事業の運営の準則を定めることにより、前払金保証事業の健全な発達を図り、もつて公共工事の適正な施工に寄与することを目的とする。
(定義)
第二條 この法律において「公共工事」とは、国、日本国有鉄道、日本専売公社又は地方公共団体その他の公共団体の発注する土木建築に関する工事をいい、資源の開発等についての重要な土木建築に関する工事であつて、建設大臣の指定するものを含むものとする。
2 この法律において「前払金の保証」とは、公共工事に関してその発注者が前金払をする場合において、請負者から保証料を受け取り、当該請負者が債務を履行しないために発注者がその工事の請負契約を解除したときに、前金払をした額(出来形払をしたときは、その金額を加えた額)から当該工事の既済部分に対する代価に相当する額を控除した額(前金払をした額に出来形払をした額を加えた場合においては、前金払をした額を限度とする。以下「保証金」という。)の支払を当該請負者に代つて引き受けることをいう。
3 この法律において「前払金保証事業」とは、前払金の保証をすることを目的とする事業をいう。
4 この法律において「保証事業会社」とは、第五條の規定により建設大臣の登録を受けて前払金保証事業を営む会社をいう。
第二章 登録
(登録)
第三條 前払金保証事業を営もうとする者は、この法律で定めるところにより、登録を受けなければならない。
(登録の申請)
第四條 前條の登録を受けようとする者(以下「登録申請者」という。)は、建設省令で定めるところにより、左に掲げる事項を記載した登録申請書を建設大臣に提出しなければならない。
一 商号
二 本店、支店その他政令で定める営業に使用する場所の名称及び所在地
三 資本の額
四 取締役及び監査役(以下「役員」という。)の氏名
2 前項の登録申請書には、左に掲げる書類を添附しなければならない。
一 定款及び事業方法書
二 役員の履歴書及びその者が第六條第一項第五号の規定に該当しないことを誓約する書面
三 収支の見積その他建設省令で定める事項を記載した事業計画書
3 前項第一号の事業方法書には、保証の目的の範囲、支店及び政令で定める営業に使用する場所の権限に関する事項、保証限度、保証金額及び保証期間の制限、前払金の保証に関する契約(以下「保証契約」という。)の締結の手続に関する事項、保証の拒否の基準に関する事項その他建設省令で定める事項を記載しなければならない。
(登録の実施及び登録の通知)
第五條 前條の規定による登録の申請があつた場合においては、第六條の規定により登録を拒否する場合を除く外、建設大臣は、遅滞なく、前條第一項各号に掲げる事項並びに登録年月日及び登録番号を保証事業会社登録簿に登録しなければならない。
2 建設大臣は、前項の規定による登録をした場合においては、遅滞なく、その旨を当該登録申請者に通知しなければならない。
(登録の拒否)
第六條 建設大臣は、第四條の規定による登録の申請があつた場合において、登録申請者が左の各号の一に該当するものであると認められるとき、又は登録申請書若しくはその添附書類のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときは、登録申請者に通知して聴聞を行つた後、その登録を拒否しなければならない。
一 資本の額が三千万円以上の株式会社でないこと。
二 定款の規定又は事業方法書若しくは事業計画書の内容が法令に違反し、又は事業の適正な運営を確保するのに十分でないこと。
三 第二十二條の規定により登録を取り消され、取消の日から五年を経過しないこと。
四 この法律の規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終つた後又は執行を受けることがないこととなつた日から五年を経過しないこと。
五 役員のうちに、破産者で復権を得ない者、禁こ以上の刑若しくはこの法律により罰金以上の刑に処せられ、その執行を終つた後若しくは執行を受けることがないこととなつた日から五年を経過するまでの者又は第二十二條の規定により登録を取り消された会社の役員で、当該処分のあつた日以前三十日以内にその職にあつたものであり、且つ、当該処分があつた日から五年を経過しないものがあること。
2 建設大臣は、前項の規定により登録を拒否しようとするときは、あらかじめ聴聞の事項、場所及び期日を通知した上、その職員をして、当該登録申請者について聴聞させなければならない。この場合において、登録申請者が正当な理由がなくて聴聞に応じないときは、聴聞をしないで登録を拒否することができる。
3 建設大臣は、前項の規定によりその職員をして聴聞させる場合において必要があると認めるときは、参考人の出頭を求めて、その職員をしてその意見を聴取させなければならない。
4 前項の規定により出頭を求められた参考人は、政令で定めるところにより、旅費、日当その他の費用を請求することができる。
5 建設大臣は、第一項の規定により登録を拒否したときは、遅滞なく、理由を附してその旨を登録申請者に通知しなければならない。
(申請による登録の変更)
第七條 保証事業会社は、第四條第一項各号に掲げる事項又は同條第二項第一号に掲げる書類について変更しようとするときは、遅滞なく、その旨を記載した登録変更申請書を建設大臣に提出しなければならない。
2 前項の場合においては、その変更を証する書面を登録変更申請書に添附しなければならない。但し、その変更が政令で定める営業に使用する場所の名称及び所在地に関するもの並びに事業方法書に関するものであるときは、この限りでない。
3 第一項の規定による登録の変更の申請が新たに就任した役員に係るものであるときは、当該役員の履歴書及びその者が前條第一項第五号の規定に該当しないことを誓約する書面を登録変更申請書に添附しなければならない。
4 前二條の規定は、第一項の規定による登録の変更の申請について準用する。この場合において、第五條第一項及び第六條第一項中「登録の申請」とあるのは「登録の変更の申請」と、第五條第一項中「前條第一項各号に掲げる事項」とあるのは「登録の変更の申請に係る事項」と、第五條第二項並びに第六條第一項、第二項及び第五項中「登録申請者」とあるのは「保証事業会社」と読み替えるものとする。
(営業の不開始又は休止に基く登録の取消)
第八條 建設大臣は、第二十二條の規定により登録を取り消す場合を除く外、保証事業会社が第五條第一項の規定による登録を受けた日から三月以内に営業を開始しないとき、又は引き続き三月以上その営業を休止したときは、当該保証事業会社に通知して聴聞を行つた後、その登録を取り消すことができる。
2 第六條第二項から第四項までの規定は、前項の規定により聴聞をしようとする場合について準用する。この場合において、第六條第二項中「拒否しようとするときは、」とあるのは「取り消そうとするときは、」と、「登録申請者」とあるのは「保証事業会社」と、「拒否することができる。」とあるのは「取り消すことができる。」と読み替えるものとする。
(廃業等の届出)
第九條 保証事業会社が左の各号の一に掲げる場合に該当することとなつたときは、当該各号に掲げる者は、遅滞なく、その旨を建設大臣に届け出なければならない。
一 会社が合併に因り消滅した場合においては、その業務を執行する役員であつた者
二 破産に因り解散した場合においては、その破産管財人
三 会社が合併又は破産以外の事由に因り解散した場合においては、その清算人
四 前払金保証事業を廃止した場合においては、当該保証事業会社の業務を執行する役員であつた者
(登録のまつ消)
第十條 建設大臣は、左の各号の一に掲げる場合においては、保証事業会社登録簿につき、当該保証事業会社に関する登録をまつ消しなければならない。
一 第八條第一項又は第二十二條の規定により登録を取り消した場合
二 前條の規定による届出があつた場合
三 建設大臣が前條各号の一に掲げる場合に該当するものと認めて、当該各号に掲げる者に通知して聴聞を行つた後、その事実を確認した場合
2 第六條第二項から第四項までの規定は、前項第三号の規定により聴聞をしようとする場合について準用する。この場合において、第六條第二項中「拒否」とあるのは「まつ消」と、「登録申請者」とあるのは「第九條各号の一に掲げる者」と読み替えるものとする。
(登録のまつ消の場合における保証契約の措置)
第十一條 前條の規定により登録がまつ消された場合においては、当該保証事業会社であつた者又は第九條第一号に規定する場合において合併後存続する会社若しくは合併に因り設立された会社は、その登録のまつ消前に締結された保証契約については、その保証契約が結了するまでは、第三條の規定にかかわらず、当該保証契約の目的の範囲内においては、なお保証事業会社とみなす。
第三章 前払金保証事業
(保証約款)
第十二條 保証事業会社は、保証契約を締結しようとするときは、あらかじめ建設大臣の承認を受けた前払金保証約款(以下「保証約款」という。)に基かなければならない。
2 保証約款においては、左に掲げる事項を定めなければならない。
一 保証料の料率及び支払に関する事項
二 保証金の額の決定及び支払に関する事項
三 第十七條第二項の規定により徴収すべき金額及び保証基金の払いもどしに関する事項
四 保証契約の解約に関する事項
五 その他建設省令で定める事項
3 保証事業会社は、第一項の規定による承認を受けようとするときは、承認申請書に保証約款を記載した書類を添えて、これを建設大臣に提出しなければならない。
4 建設大臣は、前項の規定による承認の申請があつた場合においては、第五項の規定により承認を拒否する場合を除く外、遅滞なく、その承認をしなければならない。
5 建設大臣は、第三項の規定による承認の申請があつた場合において、保証約款の内容が法令に違反し、若しくは公正な運営を確保するため適当でないとき、又は保証約款を記載した書類のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事項の記載が欠けているときは、当該保証事業会社に通知して聴聞を行つた後、その承認を拒否しなければならない。
6 第六條第二項から第四項までの規定は、前項の規定により聴聞をしようとする場合について準用する。この場合において、第六條第二項中「登録」とあるのは「承認」と、「登録申請者」とあるのは「保証事業会社」と読み替えるものとする。
7 建設大臣は、第四項又は第五項の規定により承認をし、又は承認を拒否した場合においては、遅滞なく、その旨を書面をもって当該保証事業会社に通知しなければならない。この場合において、承認を拒否する旨の通知には、その理由を示さなければならない。
8 保証事業会社は、保証約款を変更しようとするときは、その変更しようとする事項について建設大臣の承認を受けなければならない。
9 第六條第二項から第四項まで並びに第三項から第五項まで及び第七項の規定は、前項の規定による変更の承認の場合について準用する。この場合において、第六條第二項中「登録」とあるのは「変更の承認」と、「登録申請者」とあるのは「保証事業会社」と読み替えるものとする。
(保証金の支払)
第十三條 保証契約に係る公共工事の発注者は、保証契約の締結を條件として前金払をした場合においては、当該保証契約の利益を享受する旨の意思表示があつたものとみなす。
2 前項に規定する発注者は、当該工事の請負者がその責に帰すべき事由に因り債務を履行しないためにその請負契約を解除したときは、保証事業会社に対して、保証契約で定めるところにより、書面をもつて保証金の支払を請求することができる。
3 前項の請求があつた場合においては、保証事業会社は、同項の書面を受理した日から三十日以内に保証金を支払わなければならない。
(保証料の払いもどし)
第十四條 保証事業会社は、第五條の規定により登録を受けた日の属する事業年度以降三事業年度を限つて、保証約款で定めるところにより、保証契約を締結した請負者(以下「保証契約者」という。)が支払つた保証料の総額に応じて保証料の一部を当該保証契約者に対して払いもどすことができる。
2 保証事業会社が前項の規定により保証料の一部を払いもどしたときは、その金額は、払いもどしをした当該事業年度の保証事業会社の所得の計算上、法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)第九條第一項に規定する総損金に算入する。
3 前項の規定は、法人税法第十八條から第二十五條までの規定による申告書に前項の規定の適用を受けようとする旨及び払いもどした保証料の額に関する事項の記載がない場合においては、税務署長において特別の事情があると認める場合を除く外、適用しない。
(責任準備金の計上)
第十五條 保証事業会社は、事業年度末においてまだ経過していない保証契約があるときは、そのまだ経過していない保証期間に対応する保証料の総額に相当する金額を事業年度ごとに責任準備金として計上しなければならない。
2 保証事業会社が前項の規定により責任準備金を計上した場合においては、その計上した金額は、当該計上した事業年度における当該保証事業会社の所得の計算上、法人税法第九條第一項に規定する総損金に算入する。
3 前項の規定により総損金に算入された責任準備金の金額は、その翌事業年度における保証事業会社の所得の計算上、法人税法第九條第一項に規定する総益金に算入する。
(支払備金の積立)
第十六條 保証事業会社は、決算期ごとに左の各号の一に掲げる金額がある場合においては、支払備金として当該各号に掲げる金額を積み立てなければならない。
一 当該事業年度において締結された保証契約に基いて支払うべき保証金その他の金額のうちに決算期までにその支払が終らないものがある場合においては、その金額
二 当該事業年度において締結された保証契約に基いて支払う義務が生じたと認められる保証金その他の金額がある場合においては、その支払うべきものと認められる金額
三 現に保証金その他の金額について訴訟が係属しているために支払つていないものがある場合においては、その金額
(保証基金の積立)
第十七條 保証事業会社は、定款で定めるところにより、保証基金を設けなければならない。
2 保証事業会社は、前項の保証基金を積み立てるため、保証約款で定めるところにより、保証契約ごとに当該保証契約者から保証約款で定める金額を徴収することができる。
3 保証事業会社は、責任準備金をもつて保証債務を支払うことができない場合においては、当該保証債務の弁済に充てる場合に限り、保証基金を使用することができる。
(保証契約の解約)
第十八條 保証事業会社は、発注者の責に帰すべき事由に因り請負契約が解除された場合においては、発注者の同意を得ないで保証契約を解約することができる。
2 保証事業会社は、保証契約者から申入があり、且つ、発注者が同意した場合においては、保証契約を解約することができる。
(兼業の制限)
第十九條 保証事業会社は、左に掲げる事業の外、他の事業を営んではならない。
一 公共工事の請負者が銀行その他の政令で定める金融機関から当該工事に関する資金(設備の取得及び改良に関する資金を除く。)の貸付を受ける場合において、その債務を保証する事業
二 前払金保証事業に附随する事業
(常務役員の専業主義)
第二十條 保証事業会社の常務に従事する役員が他の会社の常務に従事しようとするときは、建設大臣の認可を受けなければならない。
第四章 監督
(事業改善の命令)
第二十一條 建設大臣は、保証事業会社の行う事業について発注者又は請負者の利便を阻害している事実があると認めるときは、中央建設業審議会の意見を聞いた上で、当該保証事業会社に対して、事業方法書又は保証約款を変更することを命ずることができる。
(違反行為等に対する処分)
第二十二條 建設大臣は、保証事業会社又はその役員がこの法律又はこの法律に基く命令に違反していると認めるときは、当該保証事業会社又は役員に対して、違反是正のための必要な指示をし、又は違反是正のための適当な措置をとるべきことを命ずることができる。
2 建設大臣は、保証事業会社又はその役員が左の各号の一に該当すると認めるときは、中央建設業審議会の意見を聞いた上で、理由を示し、その登録を取り消し、若しくは六月以内の期間を定めて事業の停止を命じ、又は役員の解任を命ずることができる。
一 この法律若しくはこの法律に基く命令又はこれらに基く処分に違反したとき。
二 第六條第一項第一号、第二号、第四号又は第五号に該当することとなつたとき。
三 不正の手段により第五條の規定による登録を受けたとき。
3 建設大臣は、前項の規定による処分をしようとする場合においては、中央建設業審議会の意見を聞く前に、あらかじめその職員をして、当該保証事業会社又はその役員について聴聞させなければならない。
4 第六條第二項から第四項までの規定は、前項の規定による聴聞について準用する。この場合において、第六條第二項中「登録申請者」とあるのは「保証事業会社又はその役員」と、「登録を拒否しようとするときは、」とあるのは「処分をしようとする場合にあつては、」と、「登録を拒否することができる。」とあるのは「処分することができる。」と読み替えるものとする。
(事業報告書の提出)
第二十三條 保証事業会社は、事業年度ごとに、建設省令で定める様式による事業報告書を作成し、毎事業年度経過後三月以内に、建設大臣に提出しなければならない。
(報告及び検査)
第二十四條 建設大臣は、第一條の目的を達成するため必要があると認めるときは、保証事業会社に対しその行う事業に関して報告若しくは資料の提出を命じ、又はその職員をして当該保証事業会社の業務若しくは財産の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
2 前項の職員は、同項の規定により検査をする場合においては、その身分を示す証票を携帯し、関係人の請求があるときは、これを呈示しなければならない。
3 第一項の検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
第五章 雑則
(審査の請求)
第二十五條 土木建築に関する工事の請負を業とする者は、建設省令で定めるところにより、保証事業会社又はその役員について第二十二條第二項各号の一に該当する事実があると認めるとき、又は保証事業会社の行う事業について土木建築に関する工事の請負を業とする者の利便を不当に阻害している事実があると認められるときは、建設大臣に審査の請求をすることができる。
2 建設大臣は、前項の審査の請求を受けたときは、明らかに審査の請求に係る事実がないと認める場合を除き、その職員をして当該審査の請求をした者及び当該審査の請求に係る保証事業会社又はその役員について聴聞させなければならない。
3 第六條第二項前段、第三項及び第四項の規定は、前項の規定による聴聞について準用する。この場合において、第六條第二項中「登録を拒否しようとするときは、」とあるのは「審査の請求を受けたときは、」と、「登録申請者」とあるのは「当該審査の請求をした者及び当該審査の請求に係る保証事業会社又はその役員」と読み替えるものとする。
4 建設大臣は、前二項の規定による審査の結果、保証事業会社又はその役員について第二十二條第二項各号の一に該当する事実があると認めたときは同項に規定する処分をし、又、土木建築に関する工事の請負を業とする者の利便を不当に阻害している事実があると認めたときは第二十一條に規定する処分若しくは必要な指示をし、若しくは適当な措置をとるべきことを勧告することができる。
(大蔵大臣との協議)
第二十六條 建設大臣は、第五條、第六條、第十二條、第二十一條又は第二十二條に規定する処分をしようとするときは、あらかじめ大蔵大臣に協議しなければならない。
(前払金の使途の監査)
第二十七條 保証事業会社は、保証契約の締結を條件として、発注者が請負者に前払金を支払った場合においては、当該請負者が前払金を適正に当該工事に使用しているかどうかについて、厳正な監査を行わなければならない。
(不適用規定)
第二十八條 第十九條及び第二十條の規定は、銀行その他の政令で定める者が第五條の規定により登録を受けて前払金保証事業を営む場合については、適用しない。
第六章 罰則
(罰則)
第二十九條 保証事業会社の役員又は職員がその職務に関して、賄ろを収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、これを二年以下の懲役に処する。
2 前項の場合において、収受した賄ろは、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。
3 第一項の賄ろを供与し、又はその申込若しくは約束をした者は、二年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
第三十條 第三條の規定に違反して登録を受けないで前払金保証事業を営んだ者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第三十一條 左の各号の一に該当する者は、十万円以下の罰金に処する。
一 不正の手段により第五條の規定による登録を受けた者
二 第十二條第一項の規定による承認を受けた保証約款によらないで保証契約を締結した者
三 第十七條第一項の規定に違反して保証基金を設けなかった者
四 第十九條の規定に違反して同條各号に掲げる事業以外の事業を営んだ者
五 第二十二條第二項の規定による営業の停止の命令に違反した者
第三十二條 左の各号の一に該当する者は、五万円以下の罰金に処する。
一 第七條第一項の規定による申請をせず、又は虚偽の申請をした者
二 第十七條第三項の規定に違反して保証基金を使用した者
三 第二十條の規定に違反して他の会社の常務に従事した者
四 第二十一條の規定による命令に違反した者
第三十三條 左の各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する。
一 第二十三條又は第二十四條第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
二 第二十四條第一項の規定による資料の提出をせず、又は虚偽の資料を提出した者
三 第二十四條第一項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
第三十四條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関し前四條の違反行為をしたときは、その行為者を罰する外、その法人又は人に対しても、各本條の罰金刑を科する。但し、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため、当該業務に対し相当の注意及び監督が尽されたことの証明があつたときは、その法人又は人については、この限りでない。
附 則
1 この法律は、公布の日から起算して六十日をこえない期間内において政令で定める日から施行する。
2 保証事業会社が第五條の規定による登録を受けた日の属する事業年度において計上すべき責任準備金は、第十五條第一項の規定にかかわらず、保証料の総額に政令で定める割合を乗じて得た金額によることができる。第十五條第二項及び第三項の規定は、この場合について準用する。
3 事業者団体法(昭和二十三年法律第百九十一号)の一部を次のように改正する。
第六條第一項第四号中への次に次のように加える。
ト 公共工事の前払金保証事業に関する法律(昭和二十七年法律第百八十四号)第五條の規定に基いて登録を受けた保証事業会社
4 建設省設置法(昭和二十三年法律第百十三号)の一部を次のように改正する。
第三條第二十五号の次に次の一号を加える。
二十五の二 公共工事に関する前払金保証事業に関する法律(昭和二十七年法律第百八十四号)の施行に関する事務を管理すること。
第四條第四項中「第二十五号、第二十六号」を「第二十五号から第二十六号まで」に改める。
5 建設業法(昭和二十四年法律第百号)の一部を次のように改正する。
第三十三條第一項中「建設大臣又は都道府県知事」を「他の法律によりその権限に属せしめられた事項を処理する外、建設大臣又は都道府県知事」に改める。
大蔵大臣 池田勇人
建設大臣 野田卯一
内閣総理大臣 吉田茂
公共工事の前払金保証事業に関する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和二十七年六月十二日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百八十四号
公共工事の前払金保証事業に関する法律
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
登録(第三条―第十一条)
第三章
前払金保証事業(第十二条―第二十条)
第四章
監督(第二十一条―第二十四条)
第五章
雑則(第二十五条―第二十八条)
第六章
罰則(第二十九条―第二十四条)
附則
第一章 総則
(この法律の目的)
第一条 この法律は、公共工事に関する前金払の適正且つ円滑な実施を確保するため、前払金保証事業の登録及びその事業の運営の準則を定めることにより、前払金保証事業の健全な発達を図り、もつて公共工事の適正な施工に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「公共工事」とは、国、日本国有鉄道、日本専売公社又は地方公共団体その他の公共団体の発注する土木建築に関する工事をいい、資源の開発等についての重要な土木建築に関する工事であつて、建設大臣の指定するものを含むものとする。
2 この法律において「前払金の保証」とは、公共工事に関してその発注者が前金払をする場合において、請負者から保証料を受け取り、当該請負者が債務を履行しないために発注者がその工事の請負契約を解除したときに、前金払をした額(出来形払をしたときは、その金額を加えた額)から当該工事の既済部分に対する代価に相当する額を控除した額(前金払をした額に出来形払をした額を加えた場合においては、前金払をした額を限度とする。以下「保証金」という。)の支払を当該請負者に代つて引き受けることをいう。
3 この法律において「前払金保証事業」とは、前払金の保証をすることを目的とする事業をいう。
4 この法律において「保証事業会社」とは、第五条の規定により建設大臣の登録を受けて前払金保証事業を営む会社をいう。
第二章 登録
(登録)
第三条 前払金保証事業を営もうとする者は、この法律で定めるところにより、登録を受けなければならない。
(登録の申請)
第四条 前条の登録を受けようとする者(以下「登録申請者」という。)は、建設省令で定めるところにより、左に掲げる事項を記載した登録申請書を建設大臣に提出しなければならない。
一 商号
二 本店、支店その他政令で定める営業に使用する場所の名称及び所在地
三 資本の額
四 取締役及び監査役(以下「役員」という。)の氏名
2 前項の登録申請書には、左に掲げる書類を添附しなければならない。
一 定款及び事業方法書
二 役員の履歴書及びその者が第六条第一項第五号の規定に該当しないことを誓約する書面
三 収支の見積その他建設省令で定める事項を記載した事業計画書
3 前項第一号の事業方法書には、保証の目的の範囲、支店及び政令で定める営業に使用する場所の権限に関する事項、保証限度、保証金額及び保証期間の制限、前払金の保証に関する契約(以下「保証契約」という。)の締結の手続に関する事項、保証の拒否の基準に関する事項その他建設省令で定める事項を記載しなければならない。
(登録の実施及び登録の通知)
第五条 前条の規定による登録の申請があつた場合においては、第六条の規定により登録を拒否する場合を除く外、建設大臣は、遅滞なく、前条第一項各号に掲げる事項並びに登録年月日及び登録番号を保証事業会社登録簿に登録しなければならない。
2 建設大臣は、前項の規定による登録をした場合においては、遅滞なく、その旨を当該登録申請者に通知しなければならない。
(登録の拒否)
第六条 建設大臣は、第四条の規定による登録の申請があつた場合において、登録申請者が左の各号の一に該当するものであると認められるとき、又は登録申請書若しくはその添附書類のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときは、登録申請者に通知して聴聞を行つた後、その登録を拒否しなければならない。
一 資本の額が三千万円以上の株式会社でないこと。
二 定款の規定又は事業方法書若しくは事業計画書の内容が法令に違反し、又は事業の適正な運営を確保するのに十分でないこと。
三 第二十二条の規定により登録を取り消され、取消の日から五年を経過しないこと。
四 この法律の規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終つた後又は執行を受けることがないこととなつた日から五年を経過しないこと。
五 役員のうちに、破産者で復権を得ない者、禁こ以上の刑若しくはこの法律により罰金以上の刑に処せられ、その執行を終つた後若しくは執行を受けることがないこととなつた日から五年を経過するまでの者又は第二十二条の規定により登録を取り消された会社の役員で、当該処分のあつた日以前三十日以内にその職にあつたものであり、且つ、当該処分があつた日から五年を経過しないものがあること。
2 建設大臣は、前項の規定により登録を拒否しようとするときは、あらかじめ聴聞の事項、場所及び期日を通知した上、その職員をして、当該登録申請者について聴聞させなければならない。この場合において、登録申請者が正当な理由がなくて聴聞に応じないときは、聴聞をしないで登録を拒否することができる。
3 建設大臣は、前項の規定によりその職員をして聴聞させる場合において必要があると認めるときは、参考人の出頭を求めて、その職員をしてその意見を聴取させなければならない。
4 前項の規定により出頭を求められた参考人は、政令で定めるところにより、旅費、日当その他の費用を請求することができる。
5 建設大臣は、第一項の規定により登録を拒否したときは、遅滞なく、理由を附してその旨を登録申請者に通知しなければならない。
(申請による登録の変更)
第七条 保証事業会社は、第四条第一項各号に掲げる事項又は同条第二項第一号に掲げる書類について変更しようとするときは、遅滞なく、その旨を記載した登録変更申請書を建設大臣に提出しなければならない。
2 前項の場合においては、その変更を証する書面を登録変更申請書に添附しなければならない。但し、その変更が政令で定める営業に使用する場所の名称及び所在地に関するもの並びに事業方法書に関するものであるときは、この限りでない。
3 第一項の規定による登録の変更の申請が新たに就任した役員に係るものであるときは、当該役員の履歴書及びその者が前条第一項第五号の規定に該当しないことを誓約する書面を登録変更申請書に添附しなければならない。
4 前二条の規定は、第一項の規定による登録の変更の申請について準用する。この場合において、第五条第一項及び第六条第一項中「登録の申請」とあるのは「登録の変更の申請」と、第五条第一項中「前条第一項各号に掲げる事項」とあるのは「登録の変更の申請に係る事項」と、第五条第二項並びに第六条第一項、第二項及び第五項中「登録申請者」とあるのは「保証事業会社」と読み替えるものとする。
(営業の不開始又は休止に基く登録の取消)
第八条 建設大臣は、第二十二条の規定により登録を取り消す場合を除く外、保証事業会社が第五条第一項の規定による登録を受けた日から三月以内に営業を開始しないとき、又は引き続き三月以上その営業を休止したときは、当該保証事業会社に通知して聴聞を行つた後、その登録を取り消すことができる。
2 第六条第二項から第四項までの規定は、前項の規定により聴聞をしようとする場合について準用する。この場合において、第六条第二項中「拒否しようとするときは、」とあるのは「取り消そうとするときは、」と、「登録申請者」とあるのは「保証事業会社」と、「拒否することができる。」とあるのは「取り消すことができる。」と読み替えるものとする。
(廃業等の届出)
第九条 保証事業会社が左の各号の一に掲げる場合に該当することとなつたときは、当該各号に掲げる者は、遅滞なく、その旨を建設大臣に届け出なければならない。
一 会社が合併に因り消滅した場合においては、その業務を執行する役員であつた者
二 破産に因り解散した場合においては、その破産管財人
三 会社が合併又は破産以外の事由に因り解散した場合においては、その清算人
四 前払金保証事業を廃止した場合においては、当該保証事業会社の業務を執行する役員であつた者
(登録のまつ消)
第十条 建設大臣は、左の各号の一に掲げる場合においては、保証事業会社登録簿につき、当該保証事業会社に関する登録をまつ消しなければならない。
一 第八条第一項又は第二十二条の規定により登録を取り消した場合
二 前条の規定による届出があつた場合
三 建設大臣が前条各号の一に掲げる場合に該当するものと認めて、当該各号に掲げる者に通知して聴聞を行つた後、その事実を確認した場合
2 第六条第二項から第四項までの規定は、前項第三号の規定により聴聞をしようとする場合について準用する。この場合において、第六条第二項中「拒否」とあるのは「まつ消」と、「登録申請者」とあるのは「第九条各号の一に掲げる者」と読み替えるものとする。
(登録のまつ消の場合における保証契約の措置)
第十一条 前条の規定により登録がまつ消された場合においては、当該保証事業会社であつた者又は第九条第一号に規定する場合において合併後存続する会社若しくは合併に因り設立された会社は、その登録のまつ消前に締結された保証契約については、その保証契約が結了するまでは、第三条の規定にかかわらず、当該保証契約の目的の範囲内においては、なお保証事業会社とみなす。
第三章 前払金保証事業
(保証約款)
第十二条 保証事業会社は、保証契約を締結しようとするときは、あらかじめ建設大臣の承認を受けた前払金保証約款(以下「保証約款」という。)に基かなければならない。
2 保証約款においては、左に掲げる事項を定めなければならない。
一 保証料の料率及び支払に関する事項
二 保証金の額の決定及び支払に関する事項
三 第十七条第二項の規定により徴収すべき金額及び保証基金の払いもどしに関する事項
四 保証契約の解約に関する事項
五 その他建設省令で定める事項
3 保証事業会社は、第一項の規定による承認を受けようとするときは、承認申請書に保証約款を記載した書類を添えて、これを建設大臣に提出しなければならない。
4 建設大臣は、前項の規定による承認の申請があつた場合においては、第五項の規定により承認を拒否する場合を除く外、遅滞なく、その承認をしなければならない。
5 建設大臣は、第三項の規定による承認の申請があつた場合において、保証約款の内容が法令に違反し、若しくは公正な運営を確保するため適当でないとき、又は保証約款を記載した書類のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事項の記載が欠けているときは、当該保証事業会社に通知して聴聞を行つた後、その承認を拒否しなければならない。
6 第六条第二項から第四項までの規定は、前項の規定により聴聞をしようとする場合について準用する。この場合において、第六条第二項中「登録」とあるのは「承認」と、「登録申請者」とあるのは「保証事業会社」と読み替えるものとする。
7 建設大臣は、第四項又は第五項の規定により承認をし、又は承認を拒否した場合においては、遅滞なく、その旨を書面をもって当該保証事業会社に通知しなければならない。この場合において、承認を拒否する旨の通知には、その理由を示さなければならない。
8 保証事業会社は、保証約款を変更しようとするときは、その変更しようとする事項について建設大臣の承認を受けなければならない。
9 第六条第二項から第四項まで並びに第三項から第五項まで及び第七項の規定は、前項の規定による変更の承認の場合について準用する。この場合において、第六条第二項中「登録」とあるのは「変更の承認」と、「登録申請者」とあるのは「保証事業会社」と読み替えるものとする。
(保証金の支払)
第十三条 保証契約に係る公共工事の発注者は、保証契約の締結を条件として前金払をした場合においては、当該保証契約の利益を享受する旨の意思表示があつたものとみなす。
2 前項に規定する発注者は、当該工事の請負者がその責に帰すべき事由に因り債務を履行しないためにその請負契約を解除したときは、保証事業会社に対して、保証契約で定めるところにより、書面をもつて保証金の支払を請求することができる。
3 前項の請求があつた場合においては、保証事業会社は、同項の書面を受理した日から三十日以内に保証金を支払わなければならない。
(保証料の払いもどし)
第十四条 保証事業会社は、第五条の規定により登録を受けた日の属する事業年度以降三事業年度を限つて、保証約款で定めるところにより、保証契約を締結した請負者(以下「保証契約者」という。)が支払つた保証料の総額に応じて保証料の一部を当該保証契約者に対して払いもどすことができる。
2 保証事業会社が前項の規定により保証料の一部を払いもどしたときは、その金額は、払いもどしをした当該事業年度の保証事業会社の所得の計算上、法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)第九条第一項に規定する総損金に算入する。
3 前項の規定は、法人税法第十八条から第二十五条までの規定による申告書に前項の規定の適用を受けようとする旨及び払いもどした保証料の額に関する事項の記載がない場合においては、税務署長において特別の事情があると認める場合を除く外、適用しない。
(責任準備金の計上)
第十五条 保証事業会社は、事業年度末においてまだ経過していない保証契約があるときは、そのまだ経過していない保証期間に対応する保証料の総額に相当する金額を事業年度ごとに責任準備金として計上しなければならない。
2 保証事業会社が前項の規定により責任準備金を計上した場合においては、その計上した金額は、当該計上した事業年度における当該保証事業会社の所得の計算上、法人税法第九条第一項に規定する総損金に算入する。
3 前項の規定により総損金に算入された責任準備金の金額は、その翌事業年度における保証事業会社の所得の計算上、法人税法第九条第一項に規定する総益金に算入する。
(支払備金の積立)
第十六条 保証事業会社は、決算期ごとに左の各号の一に掲げる金額がある場合においては、支払備金として当該各号に掲げる金額を積み立てなければならない。
一 当該事業年度において締結された保証契約に基いて支払うべき保証金その他の金額のうちに決算期までにその支払が終らないものがある場合においては、その金額
二 当該事業年度において締結された保証契約に基いて支払う義務が生じたと認められる保証金その他の金額がある場合においては、その支払うべきものと認められる金額
三 現に保証金その他の金額について訴訟が係属しているために支払つていないものがある場合においては、その金額
(保証基金の積立)
第十七条 保証事業会社は、定款で定めるところにより、保証基金を設けなければならない。
2 保証事業会社は、前項の保証基金を積み立てるため、保証約款で定めるところにより、保証契約ごとに当該保証契約者から保証約款で定める金額を徴収することができる。
3 保証事業会社は、責任準備金をもつて保証債務を支払うことができない場合においては、当該保証債務の弁済に充てる場合に限り、保証基金を使用することができる。
(保証契約の解約)
第十八条 保証事業会社は、発注者の責に帰すべき事由に因り請負契約が解除された場合においては、発注者の同意を得ないで保証契約を解約することができる。
2 保証事業会社は、保証契約者から申入があり、且つ、発注者が同意した場合においては、保証契約を解約することができる。
(兼業の制限)
第十九条 保証事業会社は、左に掲げる事業の外、他の事業を営んではならない。
一 公共工事の請負者が銀行その他の政令で定める金融機関から当該工事に関する資金(設備の取得及び改良に関する資金を除く。)の貸付を受ける場合において、その債務を保証する事業
二 前払金保証事業に附随する事業
(常務役員の専業主義)
第二十条 保証事業会社の常務に従事する役員が他の会社の常務に従事しようとするときは、建設大臣の認可を受けなければならない。
第四章 監督
(事業改善の命令)
第二十一条 建設大臣は、保証事業会社の行う事業について発注者又は請負者の利便を阻害している事実があると認めるときは、中央建設業審議会の意見を聞いた上で、当該保証事業会社に対して、事業方法書又は保証約款を変更することを命ずることができる。
(違反行為等に対する処分)
第二十二条 建設大臣は、保証事業会社又はその役員がこの法律又はこの法律に基く命令に違反していると認めるときは、当該保証事業会社又は役員に対して、違反是正のための必要な指示をし、又は違反是正のための適当な措置をとるべきことを命ずることができる。
2 建設大臣は、保証事業会社又はその役員が左の各号の一に該当すると認めるときは、中央建設業審議会の意見を聞いた上で、理由を示し、その登録を取り消し、若しくは六月以内の期間を定めて事業の停止を命じ、又は役員の解任を命ずることができる。
一 この法律若しくはこの法律に基く命令又はこれらに基く処分に違反したとき。
二 第六条第一項第一号、第二号、第四号又は第五号に該当することとなつたとき。
三 不正の手段により第五条の規定による登録を受けたとき。
3 建設大臣は、前項の規定による処分をしようとする場合においては、中央建設業審議会の意見を聞く前に、あらかじめその職員をして、当該保証事業会社又はその役員について聴聞させなければならない。
4 第六条第二項から第四項までの規定は、前項の規定による聴聞について準用する。この場合において、第六条第二項中「登録申請者」とあるのは「保証事業会社又はその役員」と、「登録を拒否しようとするときは、」とあるのは「処分をしようとする場合にあつては、」と、「登録を拒否することができる。」とあるのは「処分することができる。」と読み替えるものとする。
(事業報告書の提出)
第二十三条 保証事業会社は、事業年度ごとに、建設省令で定める様式による事業報告書を作成し、毎事業年度経過後三月以内に、建設大臣に提出しなければならない。
(報告及び検査)
第二十四条 建設大臣は、第一条の目的を達成するため必要があると認めるときは、保証事業会社に対しその行う事業に関して報告若しくは資料の提出を命じ、又はその職員をして当該保証事業会社の業務若しくは財産の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
2 前項の職員は、同項の規定により検査をする場合においては、その身分を示す証票を携帯し、関係人の請求があるときは、これを呈示しなければならない。
3 第一項の検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
第五章 雑則
(審査の請求)
第二十五条 土木建築に関する工事の請負を業とする者は、建設省令で定めるところにより、保証事業会社又はその役員について第二十二条第二項各号の一に該当する事実があると認めるとき、又は保証事業会社の行う事業について土木建築に関する工事の請負を業とする者の利便を不当に阻害している事実があると認められるときは、建設大臣に審査の請求をすることができる。
2 建設大臣は、前項の審査の請求を受けたときは、明らかに審査の請求に係る事実がないと認める場合を除き、その職員をして当該審査の請求をした者及び当該審査の請求に係る保証事業会社又はその役員について聴聞させなければならない。
3 第六条第二項前段、第三項及び第四項の規定は、前項の規定による聴聞について準用する。この場合において、第六条第二項中「登録を拒否しようとするときは、」とあるのは「審査の請求を受けたときは、」と、「登録申請者」とあるのは「当該審査の請求をした者及び当該審査の請求に係る保証事業会社又はその役員」と読み替えるものとする。
4 建設大臣は、前二項の規定による審査の結果、保証事業会社又はその役員について第二十二条第二項各号の一に該当する事実があると認めたときは同項に規定する処分をし、又、土木建築に関する工事の請負を業とする者の利便を不当に阻害している事実があると認めたときは第二十一条に規定する処分若しくは必要な指示をし、若しくは適当な措置をとるべきことを勧告することができる。
(大蔵大臣との協議)
第二十六条 建設大臣は、第五条、第六条、第十二条、第二十一条又は第二十二条に規定する処分をしようとするときは、あらかじめ大蔵大臣に協議しなければならない。
(前払金の使途の監査)
第二十七条 保証事業会社は、保証契約の締結を条件として、発注者が請負者に前払金を支払った場合においては、当該請負者が前払金を適正に当該工事に使用しているかどうかについて、厳正な監査を行わなければならない。
(不適用規定)
第二十八条 第十九条及び第二十条の規定は、銀行その他の政令で定める者が第五条の規定により登録を受けて前払金保証事業を営む場合については、適用しない。
第六章 罰則
(罰則)
第二十九条 保証事業会社の役員又は職員がその職務に関して、賄ろを収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、これを二年以下の懲役に処する。
2 前項の場合において、収受した賄ろは、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。
3 第一項の賄ろを供与し、又はその申込若しくは約束をした者は、二年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
第三十条 第三条の規定に違反して登録を受けないで前払金保証事業を営んだ者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第三十一条 左の各号の一に該当する者は、十万円以下の罰金に処する。
一 不正の手段により第五条の規定による登録を受けた者
二 第十二条第一項の規定による承認を受けた保証約款によらないで保証契約を締結した者
三 第十七条第一項の規定に違反して保証基金を設けなかった者
四 第十九条の規定に違反して同条各号に掲げる事業以外の事業を営んだ者
五 第二十二条第二項の規定による営業の停止の命令に違反した者
第三十二条 左の各号の一に該当する者は、五万円以下の罰金に処する。
一 第七条第一項の規定による申請をせず、又は虚偽の申請をした者
二 第十七条第三項の規定に違反して保証基金を使用した者
三 第二十条の規定に違反して他の会社の常務に従事した者
四 第二十一条の規定による命令に違反した者
第三十三条 左の各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する。
一 第二十三条又は第二十四条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
二 第二十四条第一項の規定による資料の提出をせず、又は虚偽の資料を提出した者
三 第二十四条第一項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
第三十四条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関し前四条の違反行為をしたときは、その行為者を罰する外、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。但し、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため、当該業務に対し相当の注意及び監督が尽されたことの証明があつたときは、その法人又は人については、この限りでない。
附 則
1 この法律は、公布の日から起算して六十日をこえない期間内において政令で定める日から施行する。
2 保証事業会社が第五条の規定による登録を受けた日の属する事業年度において計上すべき責任準備金は、第十五条第一項の規定にかかわらず、保証料の総額に政令で定める割合を乗じて得た金額によることができる。第十五条第二項及び第三項の規定は、この場合について準用する。
3 事業者団体法(昭和二十三年法律第百九十一号)の一部を次のように改正する。
第六条第一項第四号中への次に次のように加える。
ト 公共工事の前払金保証事業に関する法律(昭和二十七年法律第百八十四号)第五条の規定に基いて登録を受けた保証事業会社
4 建設省設置法(昭和二十三年法律第百十三号)の一部を次のように改正する。
第三条第二十五号の次に次の一号を加える。
二十五の二 公共工事に関する前払金保証事業に関する法律(昭和二十七年法律第百八十四号)の施行に関する事務を管理すること。
第四条第四項中「第二十五号、第二十六号」を「第二十五号から第二十六号まで」に改める。
5 建設業法(昭和二十四年法律第百号)の一部を次のように改正する。
第三十三条第一項中「建設大臣又は都道府県知事」を「他の法律によりその権限に属せしめられた事項を処理する外、建設大臣又は都道府県知事」に改める。
大蔵大臣 池田勇人
建設大臣 野田卯一
内閣総理大臣 吉田茂