日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う所得税法等の臨時特例に関する法律
法令番号: 法律第111号
公布年月日: 昭和27年4月28日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

日米安全保障条約第三条に基づく行政協定の締結に伴い、米国駐留軍の構成員、軍属及びその家族に対する課税について特例を設ける必要が生じたため、本法案を提出した。具体的には、米軍関係者が軍施設内での勤務で得る給与所得等への所得税免除、米国の個人・法人が米軍施設の建設・運営に関する契約に基づく事業から得る所得への課税免除、米軍関係者の相続・贈与による個人用動産への相続税免除、米軍の公用での交通機関利用への通行税免除、軍関係機関発行の証書への印紙税免除、米軍用物品への物品税・揮発油税免除などの措置を講じることとしている。

参照した発言:
第13回国会 衆議院 大蔵委員会 第42号

審議経過

第13回国会

参議院
(昭和27年3月28日)
衆議院
(昭和27年3月29日)
(昭和27年4月1日)
(昭和27年4月2日)
参議院
(昭和27年4月2日)
衆議院
(昭和27年4月3日)
参議院
(昭和27年4月3日)
衆議院
(昭和27年4月10日)
(昭和27年4月11日)
参議院
(昭和27年4月11日)
衆議院
(昭和27年4月14日)
(昭和27年4月15日)
参議院
(昭和27年4月16日)
(昭和27年4月17日)
(昭和27年4月21日)
(昭和27年4月23日)
衆議院
(昭和27年7月31日)
参議院
(昭和27年7月31日)
日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定の実施に伴う所得税法等の臨時特例に関する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和二十七年四月二十八日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百十一号
日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定の実施に伴う所得税法等の臨時特例に関する法律
(目的)
第一條 この法律は、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定を実施するため、所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)、法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)、相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)、富裕税法(昭和二十五年法律第百七十四号)、通行税法(昭和十五年法律第四十三号)、印紙税法(明治三十二年法律第五十四号)、物品税法(昭和十五年法律第四十号)及び揮発油税法(昭和二十四年法律第四十四号)の特例を設けることを目的とする。
(定義)
第二條 この法律において「合衆国」とは、アメリカ合衆国をいう。
2 この法律において「合衆国軍隊」とは、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約(以下「條約」という。)に基き日本国の領域及びその附近に配備される合衆国の陸軍、海軍又は空軍をいう。
3 この法律において「合衆国軍隊の構成員」とは、合衆国軍隊に属する軍人で現に服役中のものをいう。
4 この法律において「軍属」とは、合衆国の国籍を有する文民で合衆国軍隊に雇用され、これに勤務し、又はこれに随伴するもの(通常日本国に在留する者並びに通常合衆国に居住する個人及びその者又は合衆国の法律に基いて設立され、若しくは組織された法人の被用者で合衆国軍隊のための合衆国政府との契約の履行のみを目的として日本国にあるものを除く。)をいう。
5 この法律において「家族」とは、合衆国軍隊の構成員又は軍属の配偶者及び二十一歳未満の子並びに父母及び二十一歳以上の子でその生計費の十分の五以上を合衆国軍隊の構成員又は軍属が負担するものをいう。
6 この法律において「合衆国軍隊の使用する施設及び区域」とは、條約第一條に掲げる目的の遂行のために合衆国軍隊が使用することに日本国が同意した施設及び区域をいう。
7 この法律において「軍人用販売機関等」とは、合衆国軍隊が公認し、且つ、規制する海軍販売所、ピー・エツクス、食堂、社交クラブ、劇場、新聞発行所その他の合衆国の歳出外資金により合衆国軍隊の使用する施設及び区域内に設置された諸機関で、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにこれらの者の家族の利用に供せられるものをいう。
(所得税法の特例)
第三條 左に掲げる所得については、所得税を課さない。
一 合衆国軍隊の構成員、軍属又はこれらの者の家族が、合衆国軍隊における勤務又は合衆国軍隊若しくは軍人用販売機関等による雇用に因り受ける所得
二 合衆国軍隊の構成員、軍属又はこれらの者の家族が、これらの者として一時的に日本国に滞在するためにのみ日本国において有する資産(不動産及び不動産の上に存する権利並びに投資のため又は事業を行うために有する資産を含まない。)を他のこれらの者に譲渡し、贈与し、又は遺贈した場合において、当該譲渡、贈与又は遺贈に因り生ずる所得
三 通常合衆国に居住する個人で、合衆国軍隊の使用する施設及び区域の建設、維持又は運営(軍人用販売機関等の建設、維持又は運営を除く。以下同じ。)に関して合衆国政府と締結した契約(以下「建設等契約」という。)に基き日本国において当該契約に係る建設、維持又は運営のみの事業をなすもの(以下「個人契約者」という。)の当該契約(合衆国において締結されたものに限る。)に係る建設、維持又は運営の事業から生ずる所得
四 建設等契約を締結した個人契約者又は合衆国の法律に基いて設立され、若しくは組織された法人で建設等契約に基き日本国において当該契約に係る建設、維持又は運営のみの事業をなすもの(以下「法人契約者」という。)の被用者(通常合衆国に居住する者で当該事業に従事するためにのみ日本国にあるものに限る。以下同じ。)が、当該個人契約者又は法人契約者から当該建設等契約(合衆国において締結されたものに限る。)に係る建設、維持又は運営の業務に従事することに因る対価として受ける所得
五 個人契約者が、その締結した建設等契約に係る建設、維持又は運営のみの用に供するため日本国において有する資産で使用又は保存に因る減もう等に因り減価するもの(家屋を除く。)を、法人契約者又は他の個人契約者に対し、当該法人契約者又は個人契約者の締結した建設等契約に係る建設、維持又は運営の事業の用に供するため譲渡し、贈与し、又は遺贈した場合において、当該譲渡、贈与又は遺贈に因り生ずる所得で、合衆国軍隊の権限ある官憲により当該譲渡、贈与又は遺贈に因る所得である旨の証明がされたもの
六 個人契約者又はその者若しくは法人契約者の被用者が、当該個人契約者の締結した建設等契約に係る建設、維持若しくは運営の事業のためにのみ、又は当該被用者が被用されている個人契約者若しくは法人契約者の締結した建設等契約に係る建設、維持若しくは運営の業務に従事するためにのみ日本国に滞在することにより日本国において有する資産(不動産及び不動産の上に存する権利、投資のため又は他の事業を行うために有する資産並びに前号に規定する資産を含まない。)を、他の個人契約者、個人契約者若しくは法人契約者の他の被用者若しくは法人契約者又は合衆国軍隊、合衆国軍隊の構成員、軍属若しくは合衆国軍隊の構成員若しくは軍属の家族に対して譲渡し、贈与し、又は遺贈した場合において、当該譲渡、贈与又は遺贈に因り生ずる所得で、合衆国軍隊の権限ある官憲により当該譲渡、贈与又は遺贈に因る所得である旨の証明がされたもの
七 軍人用販売機関等が合衆国軍隊の構成員、軍属若しくはこれらの者の家族又は個人契約者、法人契約者若しくは個人契約者若しくは法人契約者の被用者に対してなす商品の販売又は役務の提供から生ずる所得
2 合衆国軍隊の構成員、軍属若しくはこれらの者の家族又は個人契約者若しくはその者若しくは法人契約者の被用者が、前項第一号、第三号又は第四号に掲げる所得につき、日本国に居所を有することにより合衆国の所得税を課せられない場合には、当該所得については、同項の規定は、適用しない。
3 合衆国軍隊の構成員、軍属、これらの者の家族、個人契約者若しくはその者若しくは法人契約者の被用者又は軍人用販売機関等に対する所得税法の適用については、これらの者は、当該合衆国軍隊の構成員、軍属若しくはこれらの者の家族がこれらの者として日本国に滞在する期間、当該個人契約者がその締結した建設等契約に係る建設、維持若しくは運営の事業のためにのみ日本国に滞在する期間、当該被用者が被用されている個人契約者若しくは法人契約者が締結した建設等契約に係る建設、維持若しくは運営の業務に従事するためにのみ日本国に滞在する期間又は軍人用販売機関等が軍人用販売機関等である期間は、これらの者が同法施行地に住所及び居所を有していない期間とみなす。
(法人税法の特例)
第四條 左に掲げる所得については、法人税を課さない。
一 法人契約者の締結した建設等契約(合衆国において締結されたものに限る。)に係る建設、維持又は運営の事業から生ずる所得
二 法人契約者が、その締結した建設等契約に係る建設、維持又は運営の事業のみの用に供するため日本国において有する資産で使用又は保存に因る減もう等に因り減価するもの(家屋を除く。)を、個人契約者又は他の法人契約者に対し、当該個人契約者又は他の法人契約者の締結した建設等契約に係る建設、維持又は運営の事業の用に供するため譲渡した場合における当該譲渡に因り生ずる所得で、合衆国軍隊の権限ある官憲により当該譲渡に因る所得である旨の証明がされたもの
三 法人契約者が前條第一項第五号又は前号に規定する資産を譲渡、贈与又は遺贈に因り取得した場合における当該取得に因り生ずる所得で、合衆国軍隊の権限ある官憲により当該取得に因る所得である旨の証明がなされたもの
(相続税法の特例)
第五條 左に掲げる資産の価額は、相続税の課税価格に算入しない。
一 合衆国軍隊の構成員、軍属又はこれらの者の家族が相続、贈与又は遺贈に因り第三條第一項第二号又は第六号に規定する資産を取得した場合における当該資産の価額
二 個人契約者又はその者若しくは法人契約者の被用者が相続、贈与又は遺贈に因り第三條第一項第五号又は第六号に規定する資産を取得した場合における当該資産の価額
2 合衆国軍隊の構成員、軍属又はこれらの者の家族に対する相続税法の適用については、これらの者がこれらの者として日本国に滞在する期間は、これらの者が同法の施行地に住所を有していない期間とみなす。
(富裕税法の特例)
第六條 第三條第二項に規定する個人については、当該個人が日本国において有する同條第一項第二号、第五号又は第六号に規定する資産の価額は、富裕税の課税価格に算入しない。
2 合衆国軍隊の構成員、軍属又はこれらの者の家族に対する富裕税法の適用については、これらの者がこれらの者として日本国に滞在する期間は、これらの者が同法の施行地に住所及び居所を有していない期間とみなす。
(通行税法の特例)
第七條 合衆国軍隊の構成員が、合衆国軍隊の用務を遂行するため通行税法第一條に規定する汽車等の乗客となる場合において、合衆国軍隊の権限ある官憲の発給する当該用務の証明書の提示があつたときは、当該構成員については、通行税を課さない。
(印紙税法の特例)
第八條 合衆国軍隊及び軍人用販売機関等が発する証書及び帳簿については、印紙税を課さない。
(物品税法の特例)
第九條 政令で定める手続により所轄税務署長の承認を受けて製造場から移出する物品税法第一條に規定する物品で左に掲げるものについては、政令で定める手続により、物品税を免除する。
一 合衆国軍隊又は合衆国軍隊の公認調達機関が合衆国軍隊の用に供するために購入するもの
二 個人契約者又は法人契約者がその締結した建設等契約に係る建設、維持又は運営のみの事業の用に供するために使用又は消費する物品で合衆国軍隊の用に供されるもの及び当該事業をなすためにこれらの者が使用又は消費する物品で政令で定めるもの
2 前項の規定の適用を受けた物品で所轄税務署長の指定した期間内に同項各号に規定する用途に供されたことの証明がされないものについては、製造者から直ちにその物品税を徴収する。但し、災害その他やむを得ない事由に因り滅失したものについて、所轄税務署長の承認を受けたときは、この限りでない。
(揮発油税法の特例)
第十條 政令で定める手続により所轄税務署長の承認を受けて製造場から引き取る揮発油税法第二條第一項に規定する揮発油で左に掲げるものについては、政令で定める手続により、揮発油税を免除する。
一 合衆国軍隊又は合衆国軍隊の公認調達機関が合衆国軍隊の用に供するために購入するもの
二 個人契約者又は法人契約者がその締結した建設等契約に係る建設、維持又は運営のみの事業をなすために消費するもの
2 前條第二項の規定は、前項の規定の適用を受けた揮発油で所轄税務署長の指定した期間内に同項各号に規定する用途に供されたことの証明がされないものについて準用する。この場合において、前條第二項中「物品税」とあるのは、「揮発油税」と読み替えるものとする。
(免税物品等の譲渡禁止)
第十一條 前二條の規定により物品税又は揮発油税の免除を受けた物品又は揮発油は、第九條第一項各号及び前條第一項各号に規定する用途以外の用途に供するために譲り渡し、又は譲り受けてはならない。但し、政令で定める手続により所轄税務署長の承認を受けた場合は、この限りでない。
2 前項の規定に違反した者は、五年以下の懲役若しくは五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
3 第一項但書の規定による承認を受けて譲り受けた場合又は前項の場合においては、譲受人から、直ちに当該譲受に係る物品又は揮発油に対する物品税又は揮発油税を徴収する。
4 第二項の罪を犯した者には、刑法(明治四十年法律第四十号)第四十八條第二項、第六十三條及び第六十六條の規定は、適用しない。但し、懲役の刑に処する場合又は懲役及び罰金を併科する場合における懲役刑については、この限りでない。
5 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して第二項の違反行為をしたときは、その行為者を罰する外、その法人又は人に対し、同項の罰金刑を科する。
附 則
1 この法律は、條約の効力発生の日から施行する。
2 この法律施行の際までに連合国軍から製造の注文を受けた物品税法第一條に規定する物品で、合衆国軍隊に納入するためこの法律施行の日から三月以内に製造場から移出するものについては、物品税を免除する。
3 前項に規定する製造の注文を受けた物品の製造者は、この法律施行の際当該注文に係る物品でまだ製造場から移出されないものがあるときは、当該物品の品名、数量、単価、価額、発注者の名称及び製造場の場所を記載した書類を、この法律施行後一月以内(当該期間内に製造場から移出する当該物品がある場合には、当該移出の日まで)に所轄税務署に提出しなければならない。
4 物品税法の一部を次のように改正する。
第十三條に次の二項を加える。
第一項第一号ノ適用ヲ受ケタル物品ニシテ既ニ物品税ヲ課セラレタル又ハ課セラルベキモノナルトキハ第九條ノ規定ニ準ジ命令ノ定ムル所ニ依リ物品税ニ相当スル金額(物品税額判明セザルトキハ命令ヲ以テ定ムル金額)ヲ控除シ若ハ還付シ又ハ当該金額ニ相当スル金額ヲ命令ノ定ムル所ニ依リ交付ス
第一項第一号ノ適用ヲ受ケタル物品ヲ命令ノ定ムル手続ニ依リ購入シタル者命令ノ定ムル期間内ニ当該物品ヲ輸出セザルトキハ第二項ノ規定ニ拘ラズ直ニ購入者ヨリ其ノ物品税ヲ徴収ス但シ災害其ノ他己ムコトヲ得ザル事由ニ因リ滅失シタルモノニ付政府ノ承認ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
大蔵大臣 池田勇人
内閣総理大臣 吉田茂
日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う所得税法等の臨時特例に関する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和二十七年四月二十八日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百十一号
日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う所得税法等の臨時特例に関する法律
(目的)
第一条 この法律は、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定を実施するため、所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)、法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)、相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)、富裕税法(昭和二十五年法律第百七十四号)、通行税法(昭和十五年法律第四十三号)、印紙税法(明治三十二年法律第五十四号)、物品税法(昭和十五年法律第四十号)及び揮発油税法(昭和二十四年法律第四十四号)の特例を設けることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「合衆国」とは、アメリカ合衆国をいう。
2 この法律において「合衆国軍隊」とは、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約(以下「条約」という。)に基き日本国の領域及びその附近に配備される合衆国の陸軍、海軍又は空軍をいう。
3 この法律において「合衆国軍隊の構成員」とは、合衆国軍隊に属する軍人で現に服役中のものをいう。
4 この法律において「軍属」とは、合衆国の国籍を有する文民で合衆国軍隊に雇用され、これに勤務し、又はこれに随伴するもの(通常日本国に在留する者並びに通常合衆国に居住する個人及びその者又は合衆国の法律に基いて設立され、若しくは組織された法人の被用者で合衆国軍隊のための合衆国政府との契約の履行のみを目的として日本国にあるものを除く。)をいう。
5 この法律において「家族」とは、合衆国軍隊の構成員又は軍属の配偶者及び二十一歳未満の子並びに父母及び二十一歳以上の子でその生計費の十分の五以上を合衆国軍隊の構成員又は軍属が負担するものをいう。
6 この法律において「合衆国軍隊の使用する施設及び区域」とは、条約第一条に掲げる目的の遂行のために合衆国軍隊が使用することに日本国が同意した施設及び区域をいう。
7 この法律において「軍人用販売機関等」とは、合衆国軍隊が公認し、且つ、規制する海軍販売所、ピー・エツクス、食堂、社交クラブ、劇場、新聞発行所その他の合衆国の歳出外資金により合衆国軍隊の使用する施設及び区域内に設置された諸機関で、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにこれらの者の家族の利用に供せられるものをいう。
(所得税法の特例)
第三条 左に掲げる所得については、所得税を課さない。
一 合衆国軍隊の構成員、軍属又はこれらの者の家族が、合衆国軍隊における勤務又は合衆国軍隊若しくは軍人用販売機関等による雇用に因り受ける所得
二 合衆国軍隊の構成員、軍属又はこれらの者の家族が、これらの者として一時的に日本国に滞在するためにのみ日本国において有する資産(不動産及び不動産の上に存する権利並びに投資のため又は事業を行うために有する資産を含まない。)を他のこれらの者に譲渡し、贈与し、又は遺贈した場合において、当該譲渡、贈与又は遺贈に因り生ずる所得
三 通常合衆国に居住する個人で、合衆国軍隊の使用する施設及び区域の建設、維持又は運営(軍人用販売機関等の建設、維持又は運営を除く。以下同じ。)に関して合衆国政府と締結した契約(以下「建設等契約」という。)に基き日本国において当該契約に係る建設、維持又は運営のみの事業をなすもの(以下「個人契約者」という。)の当該契約(合衆国において締結されたものに限る。)に係る建設、維持又は運営の事業から生ずる所得
四 建設等契約を締結した個人契約者又は合衆国の法律に基いて設立され、若しくは組織された法人で建設等契約に基き日本国において当該契約に係る建設、維持又は運営のみの事業をなすもの(以下「法人契約者」という。)の被用者(通常合衆国に居住する者で当該事業に従事するためにのみ日本国にあるものに限る。以下同じ。)が、当該個人契約者又は法人契約者から当該建設等契約(合衆国において締結されたものに限る。)に係る建設、維持又は運営の業務に従事することに因る対価として受ける所得
五 個人契約者が、その締結した建設等契約に係る建設、維持又は運営のみの用に供するため日本国において有する資産で使用又は保存に因る減もう等に因り減価するもの(家屋を除く。)を、法人契約者又は他の個人契約者に対し、当該法人契約者又は個人契約者の締結した建設等契約に係る建設、維持又は運営の事業の用に供するため譲渡し、贈与し、又は遺贈した場合において、当該譲渡、贈与又は遺贈に因り生ずる所得で、合衆国軍隊の権限ある官憲により当該譲渡、贈与又は遺贈に因る所得である旨の証明がされたもの
六 個人契約者又はその者若しくは法人契約者の被用者が、当該個人契約者の締結した建設等契約に係る建設、維持若しくは運営の事業のためにのみ、又は当該被用者が被用されている個人契約者若しくは法人契約者の締結した建設等契約に係る建設、維持若しくは運営の業務に従事するためにのみ日本国に滞在することにより日本国において有する資産(不動産及び不動産の上に存する権利、投資のため又は他の事業を行うために有する資産並びに前号に規定する資産を含まない。)を、他の個人契約者、個人契約者若しくは法人契約者の他の被用者若しくは法人契約者又は合衆国軍隊、合衆国軍隊の構成員、軍属若しくは合衆国軍隊の構成員若しくは軍属の家族に対して譲渡し、贈与し、又は遺贈した場合において、当該譲渡、贈与又は遺贈に因り生ずる所得で、合衆国軍隊の権限ある官憲により当該譲渡、贈与又は遺贈に因る所得である旨の証明がされたもの
七 軍人用販売機関等が合衆国軍隊の構成員、軍属若しくはこれらの者の家族又は個人契約者、法人契約者若しくは個人契約者若しくは法人契約者の被用者に対してなす商品の販売又は役務の提供から生ずる所得
2 合衆国軍隊の構成員、軍属若しくはこれらの者の家族又は個人契約者若しくはその者若しくは法人契約者の被用者が、前項第一号、第三号又は第四号に掲げる所得につき、日本国に居所を有することにより合衆国の所得税を課せられない場合には、当該所得については、同項の規定は、適用しない。
3 合衆国軍隊の構成員、軍属、これらの者の家族、個人契約者若しくはその者若しくは法人契約者の被用者又は軍人用販売機関等に対する所得税法の適用については、これらの者は、当該合衆国軍隊の構成員、軍属若しくはこれらの者の家族がこれらの者として日本国に滞在する期間、当該個人契約者がその締結した建設等契約に係る建設、維持若しくは運営の事業のためにのみ日本国に滞在する期間、当該被用者が被用されている個人契約者若しくは法人契約者が締結した建設等契約に係る建設、維持若しくは運営の業務に従事するためにのみ日本国に滞在する期間又は軍人用販売機関等が軍人用販売機関等である期間は、これらの者が同法施行地に住所及び居所を有していない期間とみなす。
(法人税法の特例)
第四条 左に掲げる所得については、法人税を課さない。
一 法人契約者の締結した建設等契約(合衆国において締結されたものに限る。)に係る建設、維持又は運営の事業から生ずる所得
二 法人契約者が、その締結した建設等契約に係る建設、維持又は運営の事業のみの用に供するため日本国において有する資産で使用又は保存に因る減もう等に因り減価するもの(家屋を除く。)を、個人契約者又は他の法人契約者に対し、当該個人契約者又は他の法人契約者の締結した建設等契約に係る建設、維持又は運営の事業の用に供するため譲渡した場合における当該譲渡に因り生ずる所得で、合衆国軍隊の権限ある官憲により当該譲渡に因る所得である旨の証明がされたもの
三 法人契約者が前条第一項第五号又は前号に規定する資産を譲渡、贈与又は遺贈に因り取得した場合における当該取得に因り生ずる所得で、合衆国軍隊の権限ある官憲により当該取得に因る所得である旨の証明がなされたもの
(相続税法の特例)
第五条 左に掲げる資産の価額は、相続税の課税価格に算入しない。
一 合衆国軍隊の構成員、軍属又はこれらの者の家族が相続、贈与又は遺贈に因り第三条第一項第二号又は第六号に規定する資産を取得した場合における当該資産の価額
二 個人契約者又はその者若しくは法人契約者の被用者が相続、贈与又は遺贈に因り第三条第一項第五号又は第六号に規定する資産を取得した場合における当該資産の価額
2 合衆国軍隊の構成員、軍属又はこれらの者の家族に対する相続税法の適用については、これらの者がこれらの者として日本国に滞在する期間は、これらの者が同法の施行地に住所を有していない期間とみなす。
(富裕税法の特例)
第六条 第三条第二項に規定する個人については、当該個人が日本国において有する同条第一項第二号、第五号又は第六号に規定する資産の価額は、富裕税の課税価格に算入しない。
2 合衆国軍隊の構成員、軍属又はこれらの者の家族に対する富裕税法の適用については、これらの者がこれらの者として日本国に滞在する期間は、これらの者が同法の施行地に住所及び居所を有していない期間とみなす。
(通行税法の特例)
第七条 合衆国軍隊の構成員が、合衆国軍隊の用務を遂行するため通行税法第一条に規定する汽車等の乗客となる場合において、合衆国軍隊の権限ある官憲の発給する当該用務の証明書の提示があつたときは、当該構成員については、通行税を課さない。
(印紙税法の特例)
第八条 合衆国軍隊及び軍人用販売機関等が発する証書及び帳簿については、印紙税を課さない。
(物品税法の特例)
第九条 政令で定める手続により所轄税務署長の承認を受けて製造場から移出する物品税法第一条に規定する物品で左に掲げるものについては、政令で定める手続により、物品税を免除する。
一 合衆国軍隊又は合衆国軍隊の公認調達機関が合衆国軍隊の用に供するために購入するもの
二 個人契約者又は法人契約者がその締結した建設等契約に係る建設、維持又は運営のみの事業の用に供するために使用又は消費する物品で合衆国軍隊の用に供されるもの及び当該事業をなすためにこれらの者が使用又は消費する物品で政令で定めるもの
2 前項の規定の適用を受けた物品で所轄税務署長の指定した期間内に同項各号に規定する用途に供されたことの証明がされないものについては、製造者から直ちにその物品税を徴収する。但し、災害その他やむを得ない事由に因り滅失したものについて、所轄税務署長の承認を受けたときは、この限りでない。
(揮発油税法の特例)
第十条 政令で定める手続により所轄税務署長の承認を受けて製造場から引き取る揮発油税法第二条第一項に規定する揮発油で左に掲げるものについては、政令で定める手続により、揮発油税を免除する。
一 合衆国軍隊又は合衆国軍隊の公認調達機関が合衆国軍隊の用に供するために購入するもの
二 個人契約者又は法人契約者がその締結した建設等契約に係る建設、維持又は運営のみの事業をなすために消費するもの
2 前条第二項の規定は、前項の規定の適用を受けた揮発油で所轄税務署長の指定した期間内に同項各号に規定する用途に供されたことの証明がされないものについて準用する。この場合において、前条第二項中「物品税」とあるのは、「揮発油税」と読み替えるものとする。
(免税物品等の譲渡禁止)
第十一条 前二条の規定により物品税又は揮発油税の免除を受けた物品又は揮発油は、第九条第一項各号及び前条第一項各号に規定する用途以外の用途に供するために譲り渡し、又は譲り受けてはならない。但し、政令で定める手続により所轄税務署長の承認を受けた場合は、この限りでない。
2 前項の規定に違反した者は、五年以下の懲役若しくは五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
3 第一項但書の規定による承認を受けて譲り受けた場合又は前項の場合においては、譲受人から、直ちに当該譲受に係る物品又は揮発油に対する物品税又は揮発油税を徴収する。
4 第二項の罪を犯した者には、刑法(明治四十年法律第四十号)第四十八条第二項、第六十三条及び第六十六条の規定は、適用しない。但し、懲役の刑に処する場合又は懲役及び罰金を併科する場合における懲役刑については、この限りでない。
5 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して第二項の違反行為をしたときは、その行為者を罰する外、その法人又は人に対し、同項の罰金刑を科する。
附 則
1 この法律は、条約の効力発生の日から施行する。
2 この法律施行の際までに連合国軍から製造の注文を受けた物品税法第一条に規定する物品で、合衆国軍隊に納入するためこの法律施行の日から三月以内に製造場から移出するものについては、物品税を免除する。
3 前項に規定する製造の注文を受けた物品の製造者は、この法律施行の際当該注文に係る物品でまだ製造場から移出されないものがあるときは、当該物品の品名、数量、単価、価額、発注者の名称及び製造場の場所を記載した書類を、この法律施行後一月以内(当該期間内に製造場から移出する当該物品がある場合には、当該移出の日まで)に所轄税務署に提出しなければならない。
4 物品税法の一部を次のように改正する。
第十三条に次の二項を加える。
第一項第一号ノ適用ヲ受ケタル物品ニシテ既ニ物品税ヲ課セラレタル又ハ課セラルベキモノナルトキハ第九条ノ規定ニ準ジ命令ノ定ムル所ニ依リ物品税ニ相当スル金額(物品税額判明セザルトキハ命令ヲ以テ定ムル金額)ヲ控除シ若ハ還付シ又ハ当該金額ニ相当スル金額ヲ命令ノ定ムル所ニ依リ交付ス
第一項第一号ノ適用ヲ受ケタル物品ヲ命令ノ定ムル手続ニ依リ購入シタル者命令ノ定ムル期間内ニ当該物品ヲ輸出セザルトキハ第二項ノ規定ニ拘ラズ直ニ購入者ヨリ其ノ物品税ヲ徴収ス但シ災害其ノ他己ムコトヲ得ザル事由ニ因リ滅失シタルモノニ付政府ノ承認ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
大蔵大臣 池田勇人
内閣総理大臣 吉田茂