(この法律の目的)
第一條 この法律は、社会教育法(昭和二十四年法律第二百七号)の精神に基き、博物館の設置及び運営に関して必要な事項を定め、その健全な発達を図り、もつて国民の教育、学術及び文化の発展に寄與することを目的とする。
(定義)
第二條 この法律において「博物館」とは、歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料を收集し、保管(育成を含む。以下同じ。)し、展示して教育的配慮の下に一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーシヨン等に資するために必要な事業を行い、あわせてこれらの資料に関する調査研究をすることを目的とする機関(社会教育法による公民館及び図書館法(昭和二十五年法律第百十八号)による図書館を除く。)のうち、地方公共団体又は民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四條の法人若しくは宗教法人が設置するもので第二章の規定による登録を受けたものをいう。
2 この法律において、「公立博物館」とは、地方公共団体の設置する博物館をいい、「私立博物館」とは、民法第三十四條の法人又は宗教法人の設置する博物館をいう。
3 この法律において「博物館資料」とは、博物館が收集し、保管し、又は展示する資料をいう。
(博物館の事業)
第三條 博物館は、前條第一項に規定する目的を達成するため、おおむね左に掲げる事業を行う。
一 実物、標本、模写、模型、文献、図表、写真、フイルム、レコード等の博物館資料を豊富に收集し、保管し、及び展示すること。
二 分館を設置し、又は博物館資料を当該博物館外で展示すること。
三 一般公衆に対して、博物館資料の利用に関し必要な説明、助言、指導等を行い、又は研究室、実験室、工作室、図書館等を設置してこれを利用させること。
四 博物館資料に関する専門的、技術的な調査研究を行うこと。
五 博物館資料の保管及び展示等に関する技術的研究を行うこと。
六 博物館資料に関する案内書、解説書、目録、図録、年報、調査研究の報告書等を作成し、及び頒布すること。
七 博物館資料に関する講演会、講習会、映写会、研究会等を主催し、及びその開催を援助すること。
八 当該博物館の所在地又はその周辺にある文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)の適用を受ける文化財について、解説書又は目録を作成する等一般公衆の当該文化財の利用の便を図ること。
九 他の博物館、国立博物館、国立科学博物館等と緊密に連絡し、協力し、刊行物及び情報の交換、博物館資料の相互貸借等を行うこと。
十 学校、図書館、研究所、公民館等の教育、学術又は文化に関する諸施設と協力し、その活動を援助すること。
2 博物館は、その事業を行うに当つては、土地の事情を考慮し、国民の実生活の向上に資し、更に学校教育を援助し得るようにも留意しなければならない。
(館長、学芸員その他の職員)
2 館長は、館務を掌理し、所属職員を監督して、博物館の任務の達成に努める。
4 学芸員は、博物館資料の收集、保管、展示及び調査研究その他これと関連する事業についての専門的事項をつかさどる。
5 学芸員は、そのつかさどる専門的事項の区分に従い、人文科学学芸員又は自然科学学芸員と称する。
6 博物館に、館長及び学芸員のほか、学芸員補その他の職員を置くことができる。
(学芸員及び学芸員補の資格)
第五條 左の各号の一に該当する者は、文部省令の定めるところにより人文科学学芸員又は自然科学学芸員となる資格を有する。
一 学士の称号を有する者で、大学において博物館に関する科目の單位を修得したもの
二 学士の称号を有する者で、第六條の規定による学芸員の講習において博物館に関する科目の單位を修得したもの
三 大学に二年以上在学し、博物館に関する科目の單位を含めて六十二單位以上を修得した者で、三年以上学芸員補の職にあつたもの
四 大学に二年以上在学し、六十二單位以上を修得し、三年以上学芸員補の職にあつた者で、第六條の規定による学芸員の講習において博物館に関する科目の單位を修得したもの
五 六年以上学芸員補の職にあつた者で、第六條の規定による学芸員の講習において博物館に関する科目の單位を修得したもの
2 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第五十六條第一項の規定により大学に入学することのできる者は、学芸員補となる資格を有する。
3 第一項各号の規定により大学又は学芸員の講習において修得すべき博物館に関する科目の單位は、文部省令で定める。
(学芸員の講習)
第六條 学芸員の講習は、文部大臣の委嘱を受けた大学が行う。
2 前項の講習に関し必要な事項は、文部省令で定める。
(指導、助言)
第七條 文部大臣は、都道府県の教育委員会に対し、都道府県の教育委員会は、市(特別区を含む。以下同じ。)町村の教育委員会及び私立博物館に対し、その求めに応じて、博物館の設置及び運営に関して、専門的、技術的な指導又は助言を與えることができる。
(設置及び運営上望ましい基準)
第八條 文部大臣は、博物館の健全な発達を図るために、博物館の設置及び運営上望ましい基準を定め、これを教育委員会に提示するとともに一般公衆に対して示すものとする。
(博物館資料の輸送運賃及び料金)
第九條 博物館資料の日本国有鉄道による輸送に関する運賃及び料金については、国有鉄道運賃法(昭和二十三年法律第百十二号)第八條の規定の適用があるものとする。