覚せい剤取締法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十六年六月三十日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第二百五十二号
覚せい剤取締法
目次
第一章
総則(第一條・第二條)
第二章
指定及び届出(第三條―第十二條)
第三章
禁止及び制限(第十三條―第二十條)
第四章
取扱(第二十一條―第二十七條)
第五章
業務に関する記録及び報告(第二十八條―第三十條)
第六章
監督(第三十一條―第三十四條)
第七章
雑則(第三十五條―第四十條)
第八章
罰則(第四十一條―第四十五條)
附則
第一章 総則
(この法律の目的)
第一條 この法律は、覚せい剤の濫用による保健衞生上の危害を防止するため、その輸入、所持、製造、讓渡、讓受及び使用に関して必要な取締を行うことを目的とする。
(用語の意義)
第二條 この法律において使用する用語の意義は、左の各号に定めるところによる。
一 「覚せい剤」とは、フエニルアミノプロパン、フエニルメチルアミノプロパン及び各その塩類並びにこれらのいずれかを含有する製剤をいう。
二 「覚せい剤製造業者」とは、覚せい剤を製造し、且つ、その製造した覚せい剤を覚せい剤施用機関又は覚せい剤研究者に讓り渡すことを業とすることができるものとして、この法律の規定により指定を受けた者をいう。
三 「覚せい剤施用機関」とは、覚せい剤の施用を行うことができるものとして、この法律の規定により指定を受けた病院又は診療所をいう。
四 「覚せい剤研究者」とは、学術研究のため覚せい剤を使用することができるものとして、この法律の規定により指定を受けた者をいう。
第二章 指定及び届出
(指定の要件)
第三條 覚せい剤製造業者の指定は製造所ごとに厚生大臣が、覚せい剤施用機関又は覚せい剤研究者の指定は病院若しくは診療所又は研究所ごとにその所在地の都道府県知事が、左の各号に掲げる資格を有するもののうち適当と認めるものについて行う。
一 覚せい剤製造業者については、薬事法(昭和二十三年法律第百九十七号)第二十六條第一項(医薬品製造業の登録)の規定により医薬品製造業の登録を受けている者
二 覚せい剤施用機関については、精神病院その他診療上覚せい剤の施用を必要とする病院又は診療所
三 覚せい剤研究者については、覚せい剤に関し相当の知識を持ち、且つ、研究上覚せい剤の使用を必要とする者
2 覚せい剤施用機関及び覚せい剤研究者の指定に関する基準は、厚生省令で定める。
(指定の申請手続)
第四條 覚せい剤製造業者の指定を受けようとする者は、製造所ごとに、その製造所の所在地の都道府県知事を経て厚生大臣に申請書を出さなければならない。
2 覚せい剤施用機関又は覚せい剤研究者の指定を受けようとする者は、病院若しくは診療所又は研究所ごとに、その所在地の都道府県知事に申請書を出さなければならない。
(指定証)
第五條 覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関又は覚せい剤研究者の指定をしたときは、厚生大臣は当該製造業者に対して、都道府県知事は当該施用機関の開設者又は当該研究者に対して、それぞれ指定証を交付しなければならない。
2 覚せい剤製造業者に対する指定証の交付は、その製造所の所在地の都道府県知事を経て行うものとする。
3 指定証は、讓り渡し、又は貸與してはならない。
(指定の有効期間)
第六條 覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関又は覚せい剤研究者の指定の有効期間は、指定の日からその翌年の十二月三十一日までとする。
(指定の失効)
第七條 覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関又は覚せい剤研究者について、指定の有効期間が満了したとき及び指定の取消があつたときの外、第九條(業務の廃止等の届出)に規定する事由が生じたときは、指定はその効力を失う。
(指定の取消)
第八條 覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関の開設者、覚せい剤施用機関の管理者(医療法(昭和二十三年法律第二百五号)の規定による当該病院又は診療所の管理者をいう。以下同じ。)、覚せい剤施用機関において診療に従事する医師若しくは覚せい剤研究者がこの法律の規定若しくはこの法律の規定に基く処分に違反したとき、又は覚せい剤研究者について第三條第一項(指定の要件)第三号に掲げる資格がなくなつたときは、厚生大臣は覚せい剤製造業者について、都道府県知事は覚せい剤施用機関又は覚せい剤研究者について、それぞれその指定を取り消すことができる。
2 厚生大臣又は都道府県知事は、前項に規定する処分をしようとするときは、その期日の二週間前までに、処分の理由並びに聽問の期日及び場所を当該処分を受ける覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関の開設者又は覚せい剤研究者に通知し、且つ、その者又はその代理人の出頭を求めて聽問を行わなければならない。
3 聽問においては、当該処分を受ける者又はその代理人は、自己又は本人のために釈明をし、且つ、有利な証拠を提出することができる。
4 厚生大臣又は都道府県知事は、当該処分を受ける者又はその代理人が正当な理由がなくて聽問に応じなかつたときは、聽問を行わないで第一項に規定する処分をすることができる。
(業務の廃止等の届出)
第九條 覚せい剤製造業者は、左の各号の一に該当する場合にはその事由の生じた日から十五日以内に、その製造所の所在地の都道府県知事を経て厚生大臣に指定証を添えてその旨を届け出なければならない。
一 その製造所における覚せい剤製造の業務を廃止したとき。
二 薬事法第二十六條第二項(登録の有効期間)の規定により医薬品製造業の登録の有効期間が満了してその更新を受けなかつたとき。
三 薬事法第四十六條第三項(登録の取消及び業務の停止)の規定により医薬品製造業の登録を取り消されたとき。
2 覚せい剤施用機関の開設者は、左の各号の一に該当する場合にはその事由の生じた日から十五日以内に、その病院又は診療所の所在地の都道府県知事に指定証を添えてその旨を届け出なければならない。
一 覚せい剤施用機関である病院又は診療所を廃止したとき。
二 覚せい剤施用機関である病院又は診療所において第三條第二項(指定の基準)の規定による指定基準に定める診療科名の診療を廃止したとき。
三 医療法第二十九條(開設許可の取消及び閉鎖命令)の規定により、覚せい剤施用機関たる病院又は診療所の開設の許可を取り消されたとき。
3 覚せい剤研究者は、当該研究所における覚せい剤の使用を必要とする研究を廃止したときは廃止の日から十五日以内に、その研究所の所在地の都道府県知事に指定証を添えてその旨を届け出なければならない。
4 前三項の規定による届出は、覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関の開設者又は覚せい剤研究者が、死亡した場合にはその相続人が、解散した場合にはその清算人又は合併後存続し若しくは合併により設立された法人がしなければならない。
(指定証の返納及び提出)
第十條 覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関又は覚せい剤研究者の指定が効力を失つたときは、前條に規定する場合を除いて、指定が効力を失つた日から十五日以内に、覚せい剤製造業者であつた者はその製造所の所在地の都道府県知事を経て厚生大臣に、覚せい剤施用機関の開設者であつた者又は覚せい剤研究者であつた者はその病院若しくは診療所又は研究所の所在地の都道府県知事にそれぞれ指定証を返納しなければならない。
2 覚せい剤製造業者が薬事法第四十六條第三項(登録の取消及び業務の停止)の規定による業務停止の処分を受けたとき、又は覚せい剤施用機関の開設者が医療法第二十九條(開設許可の取消及び閉鎖命令)の規定による閉鎖命令の処分を受けたときは、その処分を受けた日から十五日以内に、覚せい剤製造業者はその製造所の所在地の都道府県知事を経て厚生大臣に、覚せい剤施用機関の開設者はその病院又は診療所の所在地の都道府県知事にそれぞれ指定証を提出しなければならない。
3 前項の場合においては、厚生大臣又は都道府県知事は、指定証に処分の要旨を記載し、業務停止期間又は閉鎖期間の満了後すみやかに、覚せい剤製造業者又は覚せい剤施用機関の開設者に指定証を返還しなければならない。
(指定証の再交付)
第十一條 指定証をき損し、又は亡失したときは、覚せい剤製造業者はその製造所の所在地の都道府県知事を経て厚生大臣に、覚せい剤施用機関の開設者又は覚せい剤研究者はその病院若しくは診療所又は研究所の所在地の都道府県知事に指定証の再交付を申請することができる。
2 再交付を申請した後亡失した指定証を発見したときは十五日以内に、覚せい剤製造業者はその製造所の所在地の都道府県知事を経て厚生大臣に、覚せい剤施用機関の開設者又は覚せい剤研究者はその病院若しくは診療所又は研究所の所在地の都道府県知事にそれぞれ旧指定証を返納しなければならない。
(氏名又は住所等の変更届)
第十二條 覚せい剤製造業者は、その氏名(法人にあつてはその名称)若しくは住所又は製造所の名称を変更したときは十五日以内に、その製造所の所在地の都道府県知事を経て厚生大臣に指定証を添えてその旨を届け出なければならない。
2 覚せい剤施用機関の開設者は、その覚せい剤施用機関の名称を変更したときは十五日以内に、その病院又は診療所の所在地の都道府県知事に指定証を添えてその旨を届け出なければならない。
3 覚せい剤研究者は、その氏名若しくは住所を変更し、又は研究所の名称の変更があつたときは十五日以内に、その研究所の所在地の都道府県知事に指定証を添えてその旨を届け出なければならない。
4 前三項の場合においては、厚生大臣又は都道府県知事は、すみやかに指定証を訂正して返還しなければならない。
第三章 禁止及び制限
(輸入の禁止)
第十三條 何人も、覚せい剤を輸入してはならない。
(所持の禁止)
第十四條 覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関の開設者及び管理者、覚せい剤施用機関において診療に従事する医師、覚せい剤研究者並びに覚せい剤施用機関において診療に従事する医師から施用のため交付を受けた者の外は、何人も、覚せい剤を所持してはならない。
2 左の各号の一に該当する場合には、前項の規定は適用しない。
一 覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関の管理者、覚せい剤施用機関において診療に従事する医師又は覚せい剤研究者の業務上の補助者がその業務のために覚せい剤を所持する場合
二 覚せい剤製造業者が覚せい剤施用機関又は覚せい剤研究者に覚せい剤を讓り渡す場合において、郵便又は物の運送の業務に従事する者がその業務を行う必要上覚せい剤を所持する場合
三 覚せい剤施用機関において診療に従事する医師から施用のため交付を受ける者の看護に当る者がその者のために覚せい剤を所持する場合
四 法令に基いてする行為につき覚せい剤を所持する場合
(製造の禁止及び制限)
第十五條 覚せい剤製造業者がその業務の目的のために製造する場合の外は、何人も、覚せい剤を製造してはならない。
2 厚生大臣は、毎年一月から三月まで、四月から六月まで、七月から九月まで及び十月から十二月までの期間ごとに、各覚せい剤製造業者の製造数量を定めることができる。
3 覚せい剤製造業者は、前項の規定により厚生大臣が定めた数量をこえて、覚せい剤を製造してはならない。
(覚せい剤施用機関の管理者)
第十六條 覚せい剤施用機関において施用する覚せい剤の讓受に関する事務及び覚せい剤施用機関において讓り受けた覚せい剤の管理は、当該施用機関の管理者がしなければならない。
2 覚せい剤施用機関の開設者は、当該施用機関の管理者に覚せい剤の讓受に関する事務及び讓り受けた覚せい剤の管理をさせなければならない。
(讓渡及び讓受の制限及び禁止)
第十七條 覚せい剤製造業者は、その製造した覚せい剤を覚せい剤施用機関及び覚せい剤研究者以外の者に讓り渡してはならない。
2 覚せい剤施用機関又は覚せい剤研究者は、覚せい剤製造業者以外の者から覚せい剤を讓り受けてはならない。
3 前二項の場合及び覚せい剤施用機関において診療に従事する医師が覚せい剤を施用のため交付する場合の外は、何人も、覚せい剤を讓り渡し、又は讓り受けてはならない。
4 法令による職務の執行につき覚せい剤を讓り渡し、又は讓り受ける場合には、前項の規定は適用しない。
(讓渡証及び讓受証)
第十八條 覚せい剤を讓り渡し、又は讓り受ける場合(覚せい剤施用機関において診療に従事する医師が覚せい剤を施用のため交付する場合を除く。)には、讓渡人は都道府県の発行する讓渡証の用紙に讓受人は都道府県の発行する讓受証の用紙に、それぞれ必要な事項を記載し、且つ、印をおして相手方に交付しなければならない。
2 前項の規定により讓渡証又は讓受証の交付を受けた者は、讓受又は讓渡の日から二年間、これを保存しなければならない。
3 讓渡証及び讓受証は、第一項の規定による場合の外は、他人に讓り渡してはならない。
(使用の禁止)
第十九條 左の各号に掲げる場合の外は、何人も、覚せい剤を使用してはならない。
一 覚せい剤製造業者が製造のため使用する場合
二 覚せい剤施用機関において診療に従事する医師が施用する場合
三 覚せい剤研究者が研究のため使用する場合
四 覚せい剤施用機関において診療に従事する医師から施用のため交付を受けた者が施用する場合
五 法令に基いてする行為につき使用する場合
(施用の制限)
第二十條 覚せい剤施用機関において診療に従事する医師は、その診療に従事している覚せい剤施用機関の管理者の管理する覚せい剤でなければ、施用し、又は施用のため交付してはならない。
2 前項の医師は、他人の診療以外の目的に覚せい剤を施用し、又は施用のため交付してはならない。
3 第一項の医師は、覚せい剤の中毒者に対し、その中毒を緩和し又は治療するために覚せい剤を施用し、又は施用のため交付してはならない。
4 第一項の医師が覚せい剤を施用のため交付する場合においては、交付を受ける者の住所、氏名、年齢、施用方法及び施用期間を記載した書面に当該医師の署名をして、これを同時に交付しなければならない。
5 覚せい剤研究者は、研究のため他人に対して覚せい剤を施用してはならない。
第四章 取扱
(証紙による封入)
第二十一條 覚せい剤製造業者は、その製造した覚せい剤を厚生省令の定めるところにより、容器に納め、且つ、政府発行の証紙で封を施さなければならない。
2 覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関及び覚せい剤研究者は、前項の規定により封を施した覚せい剤でなければ、讓り渡し、又は讓り受けてはならない。
3 法令による職務の執行につき覚せい剤を讓り渡し、又は讓り受ける場合には、前項の規定は適用しない。
(保管方法)
第二十二條 覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関の管理者又は覚せい剤研究者は、その所有し又は管理する覚せい剤をその製造所、病院若しくは診療所又は研究所内の鍵をかけた堅固な場所に保管しなければならない。
(事故の届出)
第二十三條 覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関の管理者又は覚せい剤研究者は、その所有し又は管理する覚せい剤を喪失し、盗み取られ、又はその所在が不明となつたときは、すみやかにその覚せい剤の品名及び数量その他事故の状況を明らかにするため必要な事項を、覚せい剤製造業者にあつてはその所在地の都道府県知事を経て厚生大臣に、覚せい剤施用機関の管理者又は覚せい剤研究者にあつてはその病院若しくは診療所又は研究所の所在地の都道府県知事にそれぞれ届け出なければならない。
(指定の失効の場合の措置義務)
第二十四條 覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関又は覚せい剤研究者の指定が効力を失つたときは(次條に規定する指定の申請をした場合にはその申請に対する拒否の処分があつたときとする。)指定が効力を失つた日(次條に規定する指定の申請をした場合にはその申請に対する拒否の処分があつた日とする。以下本條において同じ。)から十五日以内に、覚せい剤製造業者であつた者はその製造所の所在地の都道府県知事を経て厚生大臣に、覚せい剤施用機関の開設者であつた者又は覚せい剤研究者であつた者はその病院若しくは診療所又は研究所の所在地の都道府県知事にそれぞれ指定が効力を失つた際その者が所有していた覚せい剤の品名及び数量を報告しなければならない。
2 前項の場合において、覚せい剤製造業者であつた者、覚せい剤施用機関の開設者であつた者又は覚せい剤研究者であつた者は、指定が効力を失つた日から三十日以内に、その所有する覚せい剤を覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関又は覚せい剤研究者であるものに讓り渡し、且つ、讓り渡した覚せい剤の品名及び数量並びに讓受人の氏名(法人にあつてはその名称)及び住所を覚せい剤製造業者についてはその製造所の所在地の都道府県知事を経て厚生大臣に、覚せい剤施用機関又は覚せい剤研究者についてはその病院若しくは診療所又は研究所の所在地の都道府県知事にそれぞれ報告しなければならない。
3 前項の期限内に当該覚せい剤を讓り渡すことができなかつた場合には、覚せい剤製造業者であつた者、覚せい剤施用機関の開設者であつた者又は覚せい剤研究者であつた者は、すみやかに当該職員の立会を求めその指示を受けて当該覚せい剤を処分しなければならない。
4 第一項の規定による報告、第二項の規定による讓渡及び報告並びに前項の規定による処分は、覚せい剤製造業者であつた者、覚せい剤施用機関の開設者であつた者又は覚せい剤研究者であつた者が、死亡した場合にはその相続人が、解散した場合にはその清算人又は合併後存続し若しくは合併により設立された法人がしなければならない。
5 前三項の場合においては、覚せい剤製造業者であつた者、覚せい剤施用機関の開設者であつた者、覚せい剤研究者であつた者及びこれらの者の相続人、清算人又は合併後存続し若しくは合併により設立された法人については、指定が効力を失つた日から同項の規定による讓渡又は処分をするまでの間は、第十四條第一項(所持の禁止)の規定は適用せず、又、これらの者の業務上の補助者については同條第二項(所持禁止の例外)第一号の規定を、郵便又は物の運送の業務に従事する者については同項第二号の規定を準用する。
6 第二項及び第四項の場合には、第十七條(讓渡及び讓受の制限及び禁止)及び第二十一條第二項(証紙による封を施さない覚せい剤の讓渡及び讓受の禁止)の規定は適用しない。
(再指定の場合の特例)
第二十五條 覚せい剤製造業者であつた者、覚せい剤施用機関の開設者であつた者又は覚せい剤研究者であつた者が第六條(指定の有効期間)に規定する指定の有効期間の満了前に、又は指定の有効期間の満了後三十日以内に、更に覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関又は覚せい剤研究者であることの指定の申請をした場合には、その申請に対する厚生大臣又は都道府県知事の許否の処分があるまでは、それらの者及び当該覚せい剤施用機関の管理者であつた者については第十四條第一項(所持の禁止)及び前條の規定は適用しない。
(違法の覚せい剤の処分)
第二十六條 厚生大臣又は都道府県知事は、この法律の規定に違反して輸入され、所持され、製造され、讓り渡され、讓り受けられ、又は施用のため交付された覚せい剤について、この法律の目的を達成するため必要な処分をすることができる。
2 都道府県知事は、前項に規定する処分をしたときは、厚生大臣にその処分の結果を報告しなければならない。
(国庫に帰属した覚せい剤の処分)
第二十七條 厚生大臣は、法令の規定により国庫に帰属した覚せい剤について、大蔵大臣と協議の上、この法律の目的を達成するため必要な処分をすることができる。
第五章 業務に関する記録及び報告
(帳簿)
第二十八條 覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関の管理者及び覚せい剤研究者は、それぞれその製造所、病院若しくは診療所又は研究所ごとに帳簿を備え、左に掲げる事項を記入しなければならない。
一 製造し、讓り渡し、讓り受け、施用し、施用のため交付し、又は研究のため使用した覚せい剤の品名及び数量並びにその年月日
二 讓渡又は讓受の相手方の氏名(法人にあつてはその名称)及び住所並びに製造所、覚せい剤施用機関又は研究所の名称及び所在場所
三 第二十三條(事故の届出)の規定により届出をした覚せい剤の品名及び数量
2 前項に規定する者は、同項の帳簿を最終の記入をした日から二年間保存しなければならない。
(覚せい剤製造業者の報告)
第二十九條 覚せい剤製造業者は、左に掲げる事項を翌月十日までに、その製造所の所在地の都道府県知事を経て厚生大臣に報告しなければならない。
一 月初に所有した覚せい剤の品名及び数量
二 その月中に製造した覚せい剤の品名及び数量
三 その月中に讓り渡した覚せい剤の品名及び数量
四 月末に所有した覚せい剤の品名及び数量
(覚せい剤施用機関の管理者及び覚せい剤研究者の報告)
第三十條 覚せい剤施用機関の管理者又は覚せい剤研究者は、毎年十二月十五日までに、その指定を受けた日(指定を受けた年の翌年にあつては前年の十二月一日)からその年の十一月三十日までに讓り受け、施用し、施用のため交付し、又は研究のため使用した覚せい剤の品名及び数量をその病院若しくは診療所又は研究所の所在地の都道府県知事に報告しなければならない。
第六章 監督
(報告の徴收)
第三十一條 厚生大臣又は都道府県知事は、覚せい剤の取締上必要があるときは、覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関の開設者若しくは管理者又は覚せい剤研究者について必要な報告を徴することができる。
(立入検査、收去及び質問)
第三十二條 厚生大臣又は都道府県知事は、覚せい剤の取締上必要があるときは、当該職員をして覚せい剤製造業者の製造所、覚せい剤施用機関である病院若しくは診療所又は覚せい剤研究者の研究所に立ち入らせ、帳簿その他の物件を検査させ、覚せい剤若しくは覚せい剤であることの疑のある物を試験のため必要な最小分量に限り收去し、又は覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関の開設者若しくは管理者、覚せい剤施用機関において診療に従事する医師、覚せい剤研究者その他の関係者について質問をさせることができる。
2 前項の規定は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(薬事監視員の権限)
第三十三條 第二十四條第三項(指定失効の際に所有していた覚せい剤の処分)及び前條第一項に規定する当該職員の職権は、薬事法第五十條(薬事監視員の設置)に規定する薬事監視員が行う。
2 薬事監視員は、第二十四條第三項の規定による覚せい剤の処分に立ち会う場合又は前條第一項の規定により立ち入り、検査し、收去し、若しくは質問する場合には、その身分を示す証票を携帶し、関係人の請求があつたときは、これを呈示しなければならない。
(都道府県知事の意見具申)
第三十四條 都道府県知事は、覚せい剤製造業者について第八條第一項(指定の取消)に規定する処分を必要と認めるときは、その旨を厚生大臣に具申しなければならない。
第七章 雑則
(国又は都道府県の開設する覚せい剤施用機関の指定手続)
第三十五條 厚生大臣は、国の開設する病院又は診療所について、第三條第一項(指定の要件)中指定権者に関する部分の規定及び第四條第二項(指定の申請手続)の規定にかかわらず、主務大臣と協議の上覚せい剤施用機関の指定を行うことができる。
2 都道府県知事は、都道府県の開設する病院又は診療所について、第四條第二項の規定にかかわらず、覚せい剤施用機関の指定を行うことができる。
(国又は地方公共団体の開設する覚せい剤施用機関における届出等の義務者の変更)
第三十六條 国又は地方公共団体の開設する覚せい剤施用機関については左の各号に掲げる届出、指定証の返納及び報告は、当該施用機関の管理者(管理者がない場合には開設者の指定する職員)が、国の開設する覚せい剤施用機関にあつてはその病院又は診療所の所在地の都道府県知事を経て厚生大臣に、地方公共団体の開設する覚せい剤施用機関にあつてはその病院又は診療所の所在地の都道府県知事に対してしなければならない。
一 第九條第二項(診療廃止等の届出)の規定による届出
二 第十條第一項(指定失効の場合における指定証の返納)の規定による指定証の返納
三 第十一條第二項(再交付申請後発見した旧指定証の返納)の規定による旧指定証の返納
四 第十二條第二項(名称変更の届出)の規定による届出
五 第二十四條第一項(指定失効の際に所有していた覚せい剤の品名及び数量の報告)及び第二項(指定失効の際に所有していた覚せい剤の讓渡及びその報告)の規定による報告
2 国又は地方公共団体の開設する覚せい剤施用機関については、第二十四條第二項(指定失効の際に所有していた覚せい剤の讓渡及びその報告)又は第三項(指定失効の際に所有していた覚せい剤の処分)の規定による覚せい剤の讓渡又は処分は、当該施用機関の管理者(管理者がない場合には開設者の指定する職員)がしなければならない。
3 前項の場合には、第二十四條第五項(所持禁止の例外)及び第六項(讓渡及び讓受の制限及び禁止の例外)の規定を準用する。
(国の開設する覚せい剤施用機関の特例の委任)
第三十七條 この法律に定めるものの外、国の開設する覚せい剤施用機関にこの法律の規定を適用するについて必要な特例は、厚生省令で定める。
(手数料)
第三十八條 左の各号に掲げる者は、それぞれ当該各号に定める額の手数料を納めなければならない。
一 覚せい剤製造業者の指定の申請をする者 千円
二 覚せい剤施用機関の指定の申請をする者 五百円
三 覚せい剤研究者の指定の申請をする者 三百円
四 指定証の再交付の申請をする者 百円
2 前項第一号の手数料及び第四号中覚せい剤製造業者の指定証の再交付を申請する者の手数料については、その半額を国庫の收入とし、その残額を都道府県の收入とし、その他の手数料については、全額を都道府県の收入とする。
(讓渡証、讓受証及び証紙の代価)
第三十九條 第十八條(讓渡証及び讓受証)に規定する讓渡証又は讓受証の用紙を必要とする者は、代価として一枚につき二円を都道府県に、第二十一條第一項(製造した覚せい剤の証紙による封入)に規定する証紙を必要とする者は、代価として一枚につき二十銭を国庫にそれぞれ支拂わなければならない。
(経由庁がある場合の期限の特例)
第四十條 この法律の規定により都道府県知事を経て厚生大臣に対してする届出、指定証の返納若しくは提出又は報告については、当該規定に定める期限内に都道府県知事に対して届出書、指定証又は報告書が提出されたときは、それらの行為は所定の期限内になされたものとする。
第八章 罰則
(刑罰)
第四十一條 左の各号の一に該当する者は、三年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
一 第十三條(輸入の禁止)の規定に違反した者
二 第十四條第一項(所持の禁止)の規定に違反した者
三 第十五條第一項(製造の禁止)又は第三項(製造の制限)の規定に違反した者
四 第十七條第一項から第三項まで(讓渡及び讓受の制限及び禁止)の規定に違反した者
五 第十九條(使用の禁止)の規定に違反した者
六 第二十條第一項から第三項まで(覚せい剤施用機関において診療に従事する医師についての施用の制限)又は第五項(覚せい剤研究者についての施用の制限)の規定に違反した者
2 第一項の刑は、情状により併科することができる。
3 第一項第一号及び第三号から第六号までの未遂罪は、これを罰する。
第四十二條 左の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
一 第五條第三項(指定証の讓渡及び貸與の禁止)の規定に違反した者
二 第十六條(覚せい剤施用機関の管理者)の規定に違反した者
三 第十八條第一項(讓渡証及び讓受証の交付)の規定に違反して讓渡証又は讓受証を交付せず、又はそれに虚僞の記載をした者
四 第十八條第三項(讓渡証及び讓受証の讓渡の禁止)の規定に違反した者
五 第二十一條第一項(証紙による封入)又は第二項(証紙による封を施さない覚せい剤の讓渡及び讓受の禁止)の規定に違反した者
六 第二十二條(保管方法)の規定に違反した者
七 第二十三條(事故の届出)の規定による届出をせず、又は虚僞の届出をした者
八 第二十四條第一項(指定失効の際に所有していた覚せい剤の品名及び数量の報告)、第二項(指定失効の際に所有していた覚せい剤の讓渡及びその報告)若しくは第四項(死亡又は解散の場合における報告義務の転移)の規定又は同條第一項及び第二項に関する第三十六條第一項(国又は地方公共団体の開設する覚せい剤施用機関における届出等の義務者の変更)の規定による報告をせず、又は虚僞の報告をした者
九 第二十四條第三項(指定失効の際に所有していた覚せい剤の処分)の規定に違反して覚せい剤を処分した者
十 第二十八條第一項(帳簿の備付及び記入)の規定による帳簿の備付をせず、又は帳簿の記入をせず、若しくは虚僞の記入をした者
十一 第二十九條(覚せい剤製造業者の報告)の規定による報告をせず、又は虚僞の報告をした者
十二 第三十條(覚せい剤施用機関の管理者及び覚せい剤研究者の報告)の規定による報告をせず、又は虚僞の報告をした者
2 前項の刑は、情状により併科することができる。
(行政罰)
第四十三條 左の各号の一に該当する者(法人であるときはその代表者)は、一万円以下の過料に処する。
一 第九條(業務の停止等の届出)又は同條第二項に関する第三十六條第一項(国又は地方公共団体の開設する覚せい剤施用機関における届出等の義務者の変更)の規定に違反した者
二 第十條第一項(指定証の返納)若しくは第二項(指定証の提出)又は同條第一項に関する第三十六條第一項の規定に違反した者
三 第十一條第二項(旧指定証の返納)又は同條同項に関する第三十六條第一項の規定に違反した者
四 第十二條(氏名又は住所等の変更届)又は同條第二項に関する第三十六條第一項の規定に違反した者
五 第十八條第二項(讓渡証及び讓受証の保存)の規定に違反した者
六 第二十條第四項(施用のための交付の手続)の規定に違反した者
七 第二十八條第二項(帳簿の保存)の規定に違反した者
八 第三十一條(報告の徴取)の規定による報告をせず、又は虚僞の報告をした者
九 第三十二條第一項(立入検査、收去及び質問)の規定による立入検査若しくは收去を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して答弁をせず、若しくは虚僞の陳述をした者
(管理者の処罰)
第四十四條 覚せい剤施用機関(開設者が国又は地方公共団体であるものを除く。)について、第十七條第二項(覚せい剤製造業者以外の者からの讓受の禁止)の規定に違反する行為(未遂の場合を含む。)、第十八條第一項(讓渡証及び讓受証の交付)若しくは第三項(讓渡証及び讓受証の讓渡の禁止)の規定に違反する行為又は第二十一條第二項(証紙による封を施さない覚せい剤の讓渡及び讓受の禁止)の規定に違反する行為があつたときは、当該施用機関の開設者を罰するの外、その管理者に対しても第四十一條又は第四十二條の刑を科する。但し、当該管理者がその違反行為を知らなかつたときは、この限りでない。
2 国又は地方公共団体の開設する覚せい剤施用機関について第五條第三項(指定証の讓渡及び貸與の禁止)、第十八條(讓渡証及び讓受証の交付、保存及び讓渡禁止)又は第二十一條第二項(証紙による封を施さない覚せい剤の讓渡及び讓受の禁止)の規定に違反する行為があつたときは、当該施用機関の管理者に対して第四十二條の刑又は前條の過料を科する。
(両罰規定)
第四十五條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関して第四十一條及び第四十二條の違反行為をしたときは、行為者を罰する外その法人又は人に対しても各本條の罰金刑を科する。但し、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため、その業務について相当の注意及び監督が盡されたことの証明があつたときは、その法人又は人については、この限りでない。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して三十日を経過した日から、施行する。
(覚せい剤所有の届出)
2 この法律施行の際現に覚せい剤を所有している者は、この法律施行後十五日以内に、その氏名(法人にあつてはその名称)、住所及び職業並びに所有している覚せい剤の品名及び数量を住所の所在地の都道府県知事を経て厚生大臣に届け出なければならない。
(経過的讓渡措置)
3 前項の届出をした者(この法律の規定により指定を受けた覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関の開設者及び覚せい剤研究者を除く。)は、この法律施行の日から三十日間は、その所有する覚せい剤をこの法律の規定により指定を受けた覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関又は覚せい剤研究者に讓り渡すことができる。
4 前項の規定により覚せい剤の讓渡及び讓受がなされた場合には、讓渡人及び讓受人の氏名(法人にあつてはその名称)、住所並びにその覚せい剤の品名及び数量を讓渡人及び讓受人連署の上、讓受人の製造所、病院若しくは診療所又は研究所の所在地の都道府県知事を経て厚生大臣に報告しなければならない。
5 第二項に規定する者については、この法律施行の日から同項の規定による届出をするまでの間は、第十四條第一項(所持の禁止)の規定は適用しない。
6 第二項の規定による届出をした者については、第三項の規定による讓渡をするまでの間は、第十四條第一項(所持の禁止)の規定は適用しない。
7 前二項の場合には、前二項に規定する者の業務上の補助者については第十四條第二項(所持禁止の例外)第一号の規定を、郵便又は物の運送の業務に従事する者については同項第二号の規定を準用する。
8 第三項の規定による讓渡については、第十七條(讓渡又は讓受の制限及び禁止)、第十八條(讓渡証及び讓受証)及び第二十一條第二項(証紙による封を施さない覚せい剤の讓渡及び讓受の禁止)の規定は適用しない。
9 覚せい剤製造業者の指定を受けた者がこの法律施行後初めて指定を受けた時に所有していた覚せい剤又は第三項の規定により讓り受けた覚せい剤は、この法律の規定によりその製造業者が製造したものとみなす。
(薬事法の一部改正)
10 薬事法の一部を次のように改正する。
第四十六條第三項を次のように改める。
3 厚生大臣は医薬品、用具又は化粧品の製造業者又は輸入販売業者について、都道府県知事は薬局開設者又は医薬品の販売業者について、この法律その他薬事に関する法律又はこれらの法律に基く省令若しくは処分に違反する行為があつたときは、その登録を取り消し、又は期間を定めてその業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。
(厚生省設置法の一部改正)
11 厚生省設置法(昭和二十四年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。
第五條第四十八号の次に次の一号を加える。
四十八の二 覚せい剤取締法(昭和二十六年法律第二百五十二号)の規定に基き覚せい剤製造業者及び国の開設する覚せい剤施用機関の指定を行い、並びにその指定を取り消すこと。
第十一條中第七号を第八号とし、以下順次一号ずつ繰り下げ、第六号の次に次の一号を加える。
七 覚せい剤の取締及び処分を行うこと。
厚生大臣 黒川武雄
内閣総理大臣 吉田茂
覚せい剤取締法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十六年六月三十日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第二百五十二号
覚せい剤取締法
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
指定及び届出(第三条―第十二条)
第三章
禁止及び制限(第十三条―第二十条)
第四章
取扱(第二十一条―第二十七条)
第五章
業務に関する記録及び報告(第二十八条―第三十条)
第六章
監督(第三十一条―第三十四条)
第七章
雑則(第三十五条―第四十条)
第八章
罰則(第四十一条―第四十五条)
附則
第一章 総則
(この法律の目的)
第一条 この法律は、覚せい剤の濫用による保健衛生上の危害を防止するため、その輸入、所持、製造、譲渡、譲受及び使用に関して必要な取締を行うことを目的とする。
(用語の意義)
第二条 この法律において使用する用語の意義は、左の各号に定めるところによる。
一 「覚せい剤」とは、フエニルアミノプロパン、フエニルメチルアミノプロパン及び各その塩類並びにこれらのいずれかを含有する製剤をいう。
二 「覚せい剤製造業者」とは、覚せい剤を製造し、且つ、その製造した覚せい剤を覚せい剤施用機関又は覚せい剤研究者に譲り渡すことを業とすることができるものとして、この法律の規定により指定を受けた者をいう。
三 「覚せい剤施用機関」とは、覚せい剤の施用を行うことができるものとして、この法律の規定により指定を受けた病院又は診療所をいう。
四 「覚せい剤研究者」とは、学術研究のため覚せい剤を使用することができるものとして、この法律の規定により指定を受けた者をいう。
第二章 指定及び届出
(指定の要件)
第三条 覚せい剤製造業者の指定は製造所ごとに厚生大臣が、覚せい剤施用機関又は覚せい剤研究者の指定は病院若しくは診療所又は研究所ごとにその所在地の都道府県知事が、左の各号に掲げる資格を有するもののうち適当と認めるものについて行う。
一 覚せい剤製造業者については、薬事法(昭和二十三年法律第百九十七号)第二十六条第一項(医薬品製造業の登録)の規定により医薬品製造業の登録を受けている者
二 覚せい剤施用機関については、精神病院その他診療上覚せい剤の施用を必要とする病院又は診療所
三 覚せい剤研究者については、覚せい剤に関し相当の知識を持ち、且つ、研究上覚せい剤の使用を必要とする者
2 覚せい剤施用機関及び覚せい剤研究者の指定に関する基準は、厚生省令で定める。
(指定の申請手続)
第四条 覚せい剤製造業者の指定を受けようとする者は、製造所ごとに、その製造所の所在地の都道府県知事を経て厚生大臣に申請書を出さなければならない。
2 覚せい剤施用機関又は覚せい剤研究者の指定を受けようとする者は、病院若しくは診療所又は研究所ごとに、その所在地の都道府県知事に申請書を出さなければならない。
(指定証)
第五条 覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関又は覚せい剤研究者の指定をしたときは、厚生大臣は当該製造業者に対して、都道府県知事は当該施用機関の開設者又は当該研究者に対して、それぞれ指定証を交付しなければならない。
2 覚せい剤製造業者に対する指定証の交付は、その製造所の所在地の都道府県知事を経て行うものとする。
3 指定証は、譲り渡し、又は貸与してはならない。
(指定の有効期間)
第六条 覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関又は覚せい剤研究者の指定の有効期間は、指定の日からその翌年の十二月三十一日までとする。
(指定の失効)
第七条 覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関又は覚せい剤研究者について、指定の有効期間が満了したとき及び指定の取消があつたときの外、第九条(業務の廃止等の届出)に規定する事由が生じたときは、指定はその効力を失う。
(指定の取消)
第八条 覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関の開設者、覚せい剤施用機関の管理者(医療法(昭和二十三年法律第二百五号)の規定による当該病院又は診療所の管理者をいう。以下同じ。)、覚せい剤施用機関において診療に従事する医師若しくは覚せい剤研究者がこの法律の規定若しくはこの法律の規定に基く処分に違反したとき、又は覚せい剤研究者について第三条第一項(指定の要件)第三号に掲げる資格がなくなつたときは、厚生大臣は覚せい剤製造業者について、都道府県知事は覚せい剤施用機関又は覚せい剤研究者について、それぞれその指定を取り消すことができる。
2 厚生大臣又は都道府県知事は、前項に規定する処分をしようとするときは、その期日の二週間前までに、処分の理由並びに聴問の期日及び場所を当該処分を受ける覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関の開設者又は覚せい剤研究者に通知し、且つ、その者又はその代理人の出頭を求めて聴問を行わなければならない。
3 聴問においては、当該処分を受ける者又はその代理人は、自己又は本人のために釈明をし、且つ、有利な証拠を提出することができる。
4 厚生大臣又は都道府県知事は、当該処分を受ける者又はその代理人が正当な理由がなくて聴問に応じなかつたときは、聴問を行わないで第一項に規定する処分をすることができる。
(業務の廃止等の届出)
第九条 覚せい剤製造業者は、左の各号の一に該当する場合にはその事由の生じた日から十五日以内に、その製造所の所在地の都道府県知事を経て厚生大臣に指定証を添えてその旨を届け出なければならない。
一 その製造所における覚せい剤製造の業務を廃止したとき。
二 薬事法第二十六条第二項(登録の有効期間)の規定により医薬品製造業の登録の有効期間が満了してその更新を受けなかつたとき。
三 薬事法第四十六条第三項(登録の取消及び業務の停止)の規定により医薬品製造業の登録を取り消されたとき。
2 覚せい剤施用機関の開設者は、左の各号の一に該当する場合にはその事由の生じた日から十五日以内に、その病院又は診療所の所在地の都道府県知事に指定証を添えてその旨を届け出なければならない。
一 覚せい剤施用機関である病院又は診療所を廃止したとき。
二 覚せい剤施用機関である病院又は診療所において第三条第二項(指定の基準)の規定による指定基準に定める診療科名の診療を廃止したとき。
三 医療法第二十九条(開設許可の取消及び閉鎖命令)の規定により、覚せい剤施用機関たる病院又は診療所の開設の許可を取り消されたとき。
3 覚せい剤研究者は、当該研究所における覚せい剤の使用を必要とする研究を廃止したときは廃止の日から十五日以内に、その研究所の所在地の都道府県知事に指定証を添えてその旨を届け出なければならない。
4 前三項の規定による届出は、覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関の開設者又は覚せい剤研究者が、死亡した場合にはその相続人が、解散した場合にはその清算人又は合併後存続し若しくは合併により設立された法人がしなければならない。
(指定証の返納及び提出)
第十条 覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関又は覚せい剤研究者の指定が効力を失つたときは、前条に規定する場合を除いて、指定が効力を失つた日から十五日以内に、覚せい剤製造業者であつた者はその製造所の所在地の都道府県知事を経て厚生大臣に、覚せい剤施用機関の開設者であつた者又は覚せい剤研究者であつた者はその病院若しくは診療所又は研究所の所在地の都道府県知事にそれぞれ指定証を返納しなければならない。
2 覚せい剤製造業者が薬事法第四十六条第三項(登録の取消及び業務の停止)の規定による業務停止の処分を受けたとき、又は覚せい剤施用機関の開設者が医療法第二十九条(開設許可の取消及び閉鎖命令)の規定による閉鎖命令の処分を受けたときは、その処分を受けた日から十五日以内に、覚せい剤製造業者はその製造所の所在地の都道府県知事を経て厚生大臣に、覚せい剤施用機関の開設者はその病院又は診療所の所在地の都道府県知事にそれぞれ指定証を提出しなければならない。
3 前項の場合においては、厚生大臣又は都道府県知事は、指定証に処分の要旨を記載し、業務停止期間又は閉鎖期間の満了後すみやかに、覚せい剤製造業者又は覚せい剤施用機関の開設者に指定証を返還しなければならない。
(指定証の再交付)
第十一条 指定証をき損し、又は亡失したときは、覚せい剤製造業者はその製造所の所在地の都道府県知事を経て厚生大臣に、覚せい剤施用機関の開設者又は覚せい剤研究者はその病院若しくは診療所又は研究所の所在地の都道府県知事に指定証の再交付を申請することができる。
2 再交付を申請した後亡失した指定証を発見したときは十五日以内に、覚せい剤製造業者はその製造所の所在地の都道府県知事を経て厚生大臣に、覚せい剤施用機関の開設者又は覚せい剤研究者はその病院若しくは診療所又は研究所の所在地の都道府県知事にそれぞれ旧指定証を返納しなければならない。
(氏名又は住所等の変更届)
第十二条 覚せい剤製造業者は、その氏名(法人にあつてはその名称)若しくは住所又は製造所の名称を変更したときは十五日以内に、その製造所の所在地の都道府県知事を経て厚生大臣に指定証を添えてその旨を届け出なければならない。
2 覚せい剤施用機関の開設者は、その覚せい剤施用機関の名称を変更したときは十五日以内に、その病院又は診療所の所在地の都道府県知事に指定証を添えてその旨を届け出なければならない。
3 覚せい剤研究者は、その氏名若しくは住所を変更し、又は研究所の名称の変更があつたときは十五日以内に、その研究所の所在地の都道府県知事に指定証を添えてその旨を届け出なければならない。
4 前三項の場合においては、厚生大臣又は都道府県知事は、すみやかに指定証を訂正して返還しなければならない。
第三章 禁止及び制限
(輸入の禁止)
第十三条 何人も、覚せい剤を輸入してはならない。
(所持の禁止)
第十四条 覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関の開設者及び管理者、覚せい剤施用機関において診療に従事する医師、覚せい剤研究者並びに覚せい剤施用機関において診療に従事する医師から施用のため交付を受けた者の外は、何人も、覚せい剤を所持してはならない。
2 左の各号の一に該当する場合には、前項の規定は適用しない。
一 覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関の管理者、覚せい剤施用機関において診療に従事する医師又は覚せい剤研究者の業務上の補助者がその業務のために覚せい剤を所持する場合
二 覚せい剤製造業者が覚せい剤施用機関又は覚せい剤研究者に覚せい剤を譲り渡す場合において、郵便又は物の運送の業務に従事する者がその業務を行う必要上覚せい剤を所持する場合
三 覚せい剤施用機関において診療に従事する医師から施用のため交付を受ける者の看護に当る者がその者のために覚せい剤を所持する場合
四 法令に基いてする行為につき覚せい剤を所持する場合
(製造の禁止及び制限)
第十五条 覚せい剤製造業者がその業務の目的のために製造する場合の外は、何人も、覚せい剤を製造してはならない。
2 厚生大臣は、毎年一月から三月まで、四月から六月まで、七月から九月まで及び十月から十二月までの期間ごとに、各覚せい剤製造業者の製造数量を定めることができる。
3 覚せい剤製造業者は、前項の規定により厚生大臣が定めた数量をこえて、覚せい剤を製造してはならない。
(覚せい剤施用機関の管理者)
第十六条 覚せい剤施用機関において施用する覚せい剤の譲受に関する事務及び覚せい剤施用機関において譲り受けた覚せい剤の管理は、当該施用機関の管理者がしなければならない。
2 覚せい剤施用機関の開設者は、当該施用機関の管理者に覚せい剤の譲受に関する事務及び譲り受けた覚せい剤の管理をさせなければならない。
(譲渡及び譲受の制限及び禁止)
第十七条 覚せい剤製造業者は、その製造した覚せい剤を覚せい剤施用機関及び覚せい剤研究者以外の者に譲り渡してはならない。
2 覚せい剤施用機関又は覚せい剤研究者は、覚せい剤製造業者以外の者から覚せい剤を譲り受けてはならない。
3 前二項の場合及び覚せい剤施用機関において診療に従事する医師が覚せい剤を施用のため交付する場合の外は、何人も、覚せい剤を譲り渡し、又は譲り受けてはならない。
4 法令による職務の執行につき覚せい剤を譲り渡し、又は譲り受ける場合には、前項の規定は適用しない。
(譲渡証及び譲受証)
第十八条 覚せい剤を譲り渡し、又は譲り受ける場合(覚せい剤施用機関において診療に従事する医師が覚せい剤を施用のため交付する場合を除く。)には、譲渡人は都道府県の発行する譲渡証の用紙に譲受人は都道府県の発行する譲受証の用紙に、それぞれ必要な事項を記載し、且つ、印をおして相手方に交付しなければならない。
2 前項の規定により譲渡証又は譲受証の交付を受けた者は、譲受又は譲渡の日から二年間、これを保存しなければならない。
3 譲渡証及び譲受証は、第一項の規定による場合の外は、他人に譲り渡してはならない。
(使用の禁止)
第十九条 左の各号に掲げる場合の外は、何人も、覚せい剤を使用してはならない。
一 覚せい剤製造業者が製造のため使用する場合
二 覚せい剤施用機関において診療に従事する医師が施用する場合
三 覚せい剤研究者が研究のため使用する場合
四 覚せい剤施用機関において診療に従事する医師から施用のため交付を受けた者が施用する場合
五 法令に基いてする行為につき使用する場合
(施用の制限)
第二十条 覚せい剤施用機関において診療に従事する医師は、その診療に従事している覚せい剤施用機関の管理者の管理する覚せい剤でなければ、施用し、又は施用のため交付してはならない。
2 前項の医師は、他人の診療以外の目的に覚せい剤を施用し、又は施用のため交付してはならない。
3 第一項の医師は、覚せい剤の中毒者に対し、その中毒を緩和し又は治療するために覚せい剤を施用し、又は施用のため交付してはならない。
4 第一項の医師が覚せい剤を施用のため交付する場合においては、交付を受ける者の住所、氏名、年齢、施用方法及び施用期間を記載した書面に当該医師の署名をして、これを同時に交付しなければならない。
5 覚せい剤研究者は、研究のため他人に対して覚せい剤を施用してはならない。
第四章 取扱
(証紙による封入)
第二十一条 覚せい剤製造業者は、その製造した覚せい剤を厚生省令の定めるところにより、容器に納め、且つ、政府発行の証紙で封を施さなければならない。
2 覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関及び覚せい剤研究者は、前項の規定により封を施した覚せい剤でなければ、譲り渡し、又は譲り受けてはならない。
3 法令による職務の執行につき覚せい剤を譲り渡し、又は譲り受ける場合には、前項の規定は適用しない。
(保管方法)
第二十二条 覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関の管理者又は覚せい剤研究者は、その所有し又は管理する覚せい剤をその製造所、病院若しくは診療所又は研究所内の鍵をかけた堅固な場所に保管しなければならない。
(事故の届出)
第二十三条 覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関の管理者又は覚せい剤研究者は、その所有し又は管理する覚せい剤を喪失し、盗み取られ、又はその所在が不明となつたときは、すみやかにその覚せい剤の品名及び数量その他事故の状況を明らかにするため必要な事項を、覚せい剤製造業者にあつてはその所在地の都道府県知事を経て厚生大臣に、覚せい剤施用機関の管理者又は覚せい剤研究者にあつてはその病院若しくは診療所又は研究所の所在地の都道府県知事にそれぞれ届け出なければならない。
(指定の失効の場合の措置義務)
第二十四条 覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関又は覚せい剤研究者の指定が効力を失つたときは(次条に規定する指定の申請をした場合にはその申請に対する拒否の処分があつたときとする。)指定が効力を失つた日(次条に規定する指定の申請をした場合にはその申請に対する拒否の処分があつた日とする。以下本条において同じ。)から十五日以内に、覚せい剤製造業者であつた者はその製造所の所在地の都道府県知事を経て厚生大臣に、覚せい剤施用機関の開設者であつた者又は覚せい剤研究者であつた者はその病院若しくは診療所又は研究所の所在地の都道府県知事にそれぞれ指定が効力を失つた際その者が所有していた覚せい剤の品名及び数量を報告しなければならない。
2 前項の場合において、覚せい剤製造業者であつた者、覚せい剤施用機関の開設者であつた者又は覚せい剤研究者であつた者は、指定が効力を失つた日から三十日以内に、その所有する覚せい剤を覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関又は覚せい剤研究者であるものに譲り渡し、且つ、譲り渡した覚せい剤の品名及び数量並びに譲受人の氏名(法人にあつてはその名称)及び住所を覚せい剤製造業者についてはその製造所の所在地の都道府県知事を経て厚生大臣に、覚せい剤施用機関又は覚せい剤研究者についてはその病院若しくは診療所又は研究所の所在地の都道府県知事にそれぞれ報告しなければならない。
3 前項の期限内に当該覚せい剤を譲り渡すことができなかつた場合には、覚せい剤製造業者であつた者、覚せい剤施用機関の開設者であつた者又は覚せい剤研究者であつた者は、すみやかに当該職員の立会を求めその指示を受けて当該覚せい剤を処分しなければならない。
4 第一項の規定による報告、第二項の規定による譲渡及び報告並びに前項の規定による処分は、覚せい剤製造業者であつた者、覚せい剤施用機関の開設者であつた者又は覚せい剤研究者であつた者が、死亡した場合にはその相続人が、解散した場合にはその清算人又は合併後存続し若しくは合併により設立された法人がしなければならない。
5 前三項の場合においては、覚せい剤製造業者であつた者、覚せい剤施用機関の開設者であつた者、覚せい剤研究者であつた者及びこれらの者の相続人、清算人又は合併後存続し若しくは合併により設立された法人については、指定が効力を失つた日から同項の規定による譲渡又は処分をするまでの間は、第十四条第一項(所持の禁止)の規定は適用せず、又、これらの者の業務上の補助者については同条第二項(所持禁止の例外)第一号の規定を、郵便又は物の運送の業務に従事する者については同項第二号の規定を準用する。
6 第二項及び第四項の場合には、第十七条(譲渡及び譲受の制限及び禁止)及び第二十一条第二項(証紙による封を施さない覚せい剤の譲渡及び譲受の禁止)の規定は適用しない。
(再指定の場合の特例)
第二十五条 覚せい剤製造業者であつた者、覚せい剤施用機関の開設者であつた者又は覚せい剤研究者であつた者が第六条(指定の有効期間)に規定する指定の有効期間の満了前に、又は指定の有効期間の満了後三十日以内に、更に覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関又は覚せい剤研究者であることの指定の申請をした場合には、その申請に対する厚生大臣又は都道府県知事の許否の処分があるまでは、それらの者及び当該覚せい剤施用機関の管理者であつた者については第十四条第一項(所持の禁止)及び前条の規定は適用しない。
(違法の覚せい剤の処分)
第二十六条 厚生大臣又は都道府県知事は、この法律の規定に違反して輸入され、所持され、製造され、譲り渡され、譲り受けられ、又は施用のため交付された覚せい剤について、この法律の目的を達成するため必要な処分をすることができる。
2 都道府県知事は、前項に規定する処分をしたときは、厚生大臣にその処分の結果を報告しなければならない。
(国庫に帰属した覚せい剤の処分)
第二十七条 厚生大臣は、法令の規定により国庫に帰属した覚せい剤について、大蔵大臣と協議の上、この法律の目的を達成するため必要な処分をすることができる。
第五章 業務に関する記録及び報告
(帳簿)
第二十八条 覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関の管理者及び覚せい剤研究者は、それぞれその製造所、病院若しくは診療所又は研究所ごとに帳簿を備え、左に掲げる事項を記入しなければならない。
一 製造し、譲り渡し、譲り受け、施用し、施用のため交付し、又は研究のため使用した覚せい剤の品名及び数量並びにその年月日
二 譲渡又は譲受の相手方の氏名(法人にあつてはその名称)及び住所並びに製造所、覚せい剤施用機関又は研究所の名称及び所在場所
三 第二十三条(事故の届出)の規定により届出をした覚せい剤の品名及び数量
2 前項に規定する者は、同項の帳簿を最終の記入をした日から二年間保存しなければならない。
(覚せい剤製造業者の報告)
第二十九条 覚せい剤製造業者は、左に掲げる事項を翌月十日までに、その製造所の所在地の都道府県知事を経て厚生大臣に報告しなければならない。
一 月初に所有した覚せい剤の品名及び数量
二 その月中に製造した覚せい剤の品名及び数量
三 その月中に譲り渡した覚せい剤の品名及び数量
四 月末に所有した覚せい剤の品名及び数量
(覚せい剤施用機関の管理者及び覚せい剤研究者の報告)
第三十条 覚せい剤施用機関の管理者又は覚せい剤研究者は、毎年十二月十五日までに、その指定を受けた日(指定を受けた年の翌年にあつては前年の十二月一日)からその年の十一月三十日までに譲り受け、施用し、施用のため交付し、又は研究のため使用した覚せい剤の品名及び数量をその病院若しくは診療所又は研究所の所在地の都道府県知事に報告しなければならない。
第六章 監督
(報告の徴収)
第三十一条 厚生大臣又は都道府県知事は、覚せい剤の取締上必要があるときは、覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関の開設者若しくは管理者又は覚せい剤研究者について必要な報告を徴することができる。
(立入検査、収去及び質問)
第三十二条 厚生大臣又は都道府県知事は、覚せい剤の取締上必要があるときは、当該職員をして覚せい剤製造業者の製造所、覚せい剤施用機関である病院若しくは診療所又は覚せい剤研究者の研究所に立ち入らせ、帳簿その他の物件を検査させ、覚せい剤若しくは覚せい剤であることの疑のある物を試験のため必要な最小分量に限り収去し、又は覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関の開設者若しくは管理者、覚せい剤施用機関において診療に従事する医師、覚せい剤研究者その他の関係者について質問をさせることができる。
2 前項の規定は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(薬事監視員の権限)
第三十三条 第二十四条第三項(指定失効の際に所有していた覚せい剤の処分)及び前条第一項に規定する当該職員の職権は、薬事法第五十条(薬事監視員の設置)に規定する薬事監視員が行う。
2 薬事監視員は、第二十四条第三項の規定による覚せい剤の処分に立ち会う場合又は前条第一項の規定により立ち入り、検査し、収去し、若しくは質問する場合には、その身分を示す証票を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを呈示しなければならない。
(都道府県知事の意見具申)
第三十四条 都道府県知事は、覚せい剤製造業者について第八条第一項(指定の取消)に規定する処分を必要と認めるときは、その旨を厚生大臣に具申しなければならない。
第七章 雑則
(国又は都道府県の開設する覚せい剤施用機関の指定手続)
第三十五条 厚生大臣は、国の開設する病院又は診療所について、第三条第一項(指定の要件)中指定権者に関する部分の規定及び第四条第二項(指定の申請手続)の規定にかかわらず、主務大臣と協議の上覚せい剤施用機関の指定を行うことができる。
2 都道府県知事は、都道府県の開設する病院又は診療所について、第四条第二項の規定にかかわらず、覚せい剤施用機関の指定を行うことができる。
(国又は地方公共団体の開設する覚せい剤施用機関における届出等の義務者の変更)
第三十六条 国又は地方公共団体の開設する覚せい剤施用機関については左の各号に掲げる届出、指定証の返納及び報告は、当該施用機関の管理者(管理者がない場合には開設者の指定する職員)が、国の開設する覚せい剤施用機関にあつてはその病院又は診療所の所在地の都道府県知事を経て厚生大臣に、地方公共団体の開設する覚せい剤施用機関にあつてはその病院又は診療所の所在地の都道府県知事に対してしなければならない。
一 第九条第二項(診療廃止等の届出)の規定による届出
二 第十条第一項(指定失効の場合における指定証の返納)の規定による指定証の返納
三 第十一条第二項(再交付申請後発見した旧指定証の返納)の規定による旧指定証の返納
四 第十二条第二項(名称変更の届出)の規定による届出
五 第二十四条第一項(指定失効の際に所有していた覚せい剤の品名及び数量の報告)及び第二項(指定失効の際に所有していた覚せい剤の譲渡及びその報告)の規定による報告
2 国又は地方公共団体の開設する覚せい剤施用機関については、第二十四条第二項(指定失効の際に所有していた覚せい剤の譲渡及びその報告)又は第三項(指定失効の際に所有していた覚せい剤の処分)の規定による覚せい剤の譲渡又は処分は、当該施用機関の管理者(管理者がない場合には開設者の指定する職員)がしなければならない。
3 前項の場合には、第二十四条第五項(所持禁止の例外)及び第六項(譲渡及び譲受の制限及び禁止の例外)の規定を準用する。
(国の開設する覚せい剤施用機関の特例の委任)
第三十七条 この法律に定めるものの外、国の開設する覚せい剤施用機関にこの法律の規定を適用するについて必要な特例は、厚生省令で定める。
(手数料)
第三十八条 左の各号に掲げる者は、それぞれ当該各号に定める額の手数料を納めなければならない。
一 覚せい剤製造業者の指定の申請をする者 千円
二 覚せい剤施用機関の指定の申請をする者 五百円
三 覚せい剤研究者の指定の申請をする者 三百円
四 指定証の再交付の申請をする者 百円
2 前項第一号の手数料及び第四号中覚せい剤製造業者の指定証の再交付を申請する者の手数料については、その半額を国庫の収入とし、その残額を都道府県の収入とし、その他の手数料については、全額を都道府県の収入とする。
(譲渡証、譲受証及び証紙の代価)
第三十九条 第十八条(譲渡証及び譲受証)に規定する譲渡証又は譲受証の用紙を必要とする者は、代価として一枚につき二円を都道府県に、第二十一条第一項(製造した覚せい剤の証紙による封入)に規定する証紙を必要とする者は、代価として一枚につき二十銭を国庫にそれぞれ支払わなければならない。
(経由庁がある場合の期限の特例)
第四十条 この法律の規定により都道府県知事を経て厚生大臣に対してする届出、指定証の返納若しくは提出又は報告については、当該規定に定める期限内に都道府県知事に対して届出書、指定証又は報告書が提出されたときは、それらの行為は所定の期限内になされたものとする。
第八章 罰則
(刑罰)
第四十一条 左の各号の一に該当する者は、三年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
一 第十三条(輸入の禁止)の規定に違反した者
二 第十四条第一項(所持の禁止)の規定に違反した者
三 第十五条第一項(製造の禁止)又は第三項(製造の制限)の規定に違反した者
四 第十七条第一項から第三項まで(譲渡及び譲受の制限及び禁止)の規定に違反した者
五 第十九条(使用の禁止)の規定に違反した者
六 第二十条第一項から第三項まで(覚せい剤施用機関において診療に従事する医師についての施用の制限)又は第五項(覚せい剤研究者についての施用の制限)の規定に違反した者
2 第一項の刑は、情状により併科することができる。
3 第一項第一号及び第三号から第六号までの未遂罪は、これを罰する。
第四十二条 左の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
一 第五条第三項(指定証の譲渡及び貸与の禁止)の規定に違反した者
二 第十六条(覚せい剤施用機関の管理者)の規定に違反した者
三 第十八条第一項(譲渡証及び譲受証の交付)の規定に違反して譲渡証又は譲受証を交付せず、又はそれに虚偽の記載をした者
四 第十八条第三項(譲渡証及び譲受証の譲渡の禁止)の規定に違反した者
五 第二十一条第一項(証紙による封入)又は第二項(証紙による封を施さない覚せい剤の譲渡及び譲受の禁止)の規定に違反した者
六 第二十二条(保管方法)の規定に違反した者
七 第二十三条(事故の届出)の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
八 第二十四条第一項(指定失効の際に所有していた覚せい剤の品名及び数量の報告)、第二項(指定失効の際に所有していた覚せい剤の譲渡及びその報告)若しくは第四項(死亡又は解散の場合における報告義務の転移)の規定又は同条第一項及び第二項に関する第三十六条第一項(国又は地方公共団体の開設する覚せい剤施用機関における届出等の義務者の変更)の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
九 第二十四条第三項(指定失効の際に所有していた覚せい剤の処分)の規定に違反して覚せい剤を処分した者
十 第二十八条第一項(帳簿の備付及び記入)の規定による帳簿の備付をせず、又は帳簿の記入をせず、若しくは虚偽の記入をした者
十一 第二十九条(覚せい剤製造業者の報告)の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
十二 第三十条(覚せい剤施用機関の管理者及び覚せい剤研究者の報告)の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
2 前項の刑は、情状により併科することができる。
(行政罰)
第四十三条 左の各号の一に該当する者(法人であるときはその代表者)は、一万円以下の過料に処する。
一 第九条(業務の停止等の届出)又は同条第二項に関する第三十六条第一項(国又は地方公共団体の開設する覚せい剤施用機関における届出等の義務者の変更)の規定に違反した者
二 第十条第一項(指定証の返納)若しくは第二項(指定証の提出)又は同条第一項に関する第三十六条第一項の規定に違反した者
三 第十一条第二項(旧指定証の返納)又は同条同項に関する第三十六条第一項の規定に違反した者
四 第十二条(氏名又は住所等の変更届)又は同条第二項に関する第三十六条第一項の規定に違反した者
五 第十八条第二項(譲渡証及び譲受証の保存)の規定に違反した者
六 第二十条第四項(施用のための交付の手続)の規定に違反した者
七 第二十八条第二項(帳簿の保存)の規定に違反した者
八 第三十一条(報告の徴取)の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
九 第三十二条第一項(立入検査、収去及び質問)の規定による立入検査若しくは収去を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の陳述をした者
(管理者の処罰)
第四十四条 覚せい剤施用機関(開設者が国又は地方公共団体であるものを除く。)について、第十七条第二項(覚せい剤製造業者以外の者からの譲受の禁止)の規定に違反する行為(未遂の場合を含む。)、第十八条第一項(譲渡証及び譲受証の交付)若しくは第三項(譲渡証及び譲受証の譲渡の禁止)の規定に違反する行為又は第二十一条第二項(証紙による封を施さない覚せい剤の譲渡及び譲受の禁止)の規定に違反する行為があつたときは、当該施用機関の開設者を罰するの外、その管理者に対しても第四十一条又は第四十二条の刑を科する。但し、当該管理者がその違反行為を知らなかつたときは、この限りでない。
2 国又は地方公共団体の開設する覚せい剤施用機関について第五条第三項(指定証の譲渡及び貸与の禁止)、第十八条(譲渡証及び譲受証の交付、保存及び譲渡禁止)又は第二十一条第二項(証紙による封を施さない覚せい剤の譲渡及び譲受の禁止)の規定に違反する行為があつたときは、当該施用機関の管理者に対して第四十二条の刑又は前条の過料を科する。
(両罰規定)
第四十五条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関して第四十一条及び第四十二条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外その法人又は人に対しても各本条の罰金刑を科する。但し、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため、その業務について相当の注意及び監督が尽されたことの証明があつたときは、その法人又は人については、この限りでない。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して三十日を経過した日から、施行する。
(覚せい剤所有の届出)
2 この法律施行の際現に覚せい剤を所有している者は、この法律施行後十五日以内に、その氏名(法人にあつてはその名称)、住所及び職業並びに所有している覚せい剤の品名及び数量を住所の所在地の都道府県知事を経て厚生大臣に届け出なければならない。
(経過的譲渡措置)
3 前項の届出をした者(この法律の規定により指定を受けた覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関の開設者及び覚せい剤研究者を除く。)は、この法律施行の日から三十日間は、その所有する覚せい剤をこの法律の規定により指定を受けた覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関又は覚せい剤研究者に譲り渡すことができる。
4 前項の規定により覚せい剤の譲渡及び譲受がなされた場合には、譲渡人及び譲受人の氏名(法人にあつてはその名称)、住所並びにその覚せい剤の品名及び数量を譲渡人及び譲受人連署の上、譲受人の製造所、病院若しくは診療所又は研究所の所在地の都道府県知事を経て厚生大臣に報告しなければならない。
5 第二項に規定する者については、この法律施行の日から同項の規定による届出をするまでの間は、第十四条第一項(所持の禁止)の規定は適用しない。
6 第二項の規定による届出をした者については、第三項の規定による譲渡をするまでの間は、第十四条第一項(所持の禁止)の規定は適用しない。
7 前二項の場合には、前二項に規定する者の業務上の補助者については第十四条第二項(所持禁止の例外)第一号の規定を、郵便又は物の運送の業務に従事する者については同項第二号の規定を準用する。
8 第三項の規定による譲渡については、第十七条(譲渡又は譲受の制限及び禁止)、第十八条(譲渡証及び譲受証)及び第二十一条第二項(証紙による封を施さない覚せい剤の譲渡及び譲受の禁止)の規定は適用しない。
9 覚せい剤製造業者の指定を受けた者がこの法律施行後初めて指定を受けた時に所有していた覚せい剤又は第三項の規定により譲り受けた覚せい剤は、この法律の規定によりその製造業者が製造したものとみなす。
(薬事法の一部改正)
10 薬事法の一部を次のように改正する。
第四十六条第三項を次のように改める。
3 厚生大臣は医薬品、用具又は化粧品の製造業者又は輸入販売業者について、都道府県知事は薬局開設者又は医薬品の販売業者について、この法律その他薬事に関する法律又はこれらの法律に基く省令若しくは処分に違反する行為があつたときは、その登録を取り消し、又は期間を定めてその業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。
(厚生省設置法の一部改正)
11 厚生省設置法(昭和二十四年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。
第五条第四十八号の次に次の一号を加える。
四十八の二 覚せい剤取締法(昭和二十六年法律第二百五十二号)の規定に基き覚せい剤製造業者及び国の開設する覚せい剤施用機関の指定を行い、並びにその指定を取り消すこと。
第十一条中第七号を第八号とし、以下順次一号ずつ繰り下げ、第六号の次に次の一号を加える。
七 覚せい剤の取締及び処分を行うこと。
厚生大臣 黒川武雄
内閣総理大臣 吉田茂