覚せい剤取締法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第177号
公布年月日: 昭和29年6月12日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

覚せい剤取締法制定後も、常用者は70万人以上に達し、青少年を中心に全国的な濫用が深刻化している。特に現在流通している覚せい剤の多くが密造品であることから、密造取締りの強化が急務となっている。そこで、覚せい剤の範囲拡張、罰則の強化、研究目的での使用許可制度の整備、保管営業所の設置、廃棄規定の厳格化など、取締法施行後の運用上の支障を改善し、最近の状況に即応するため、本法改正案を提出するものである。

参照した発言:
第19回国会 参議院 厚生委員会 第46号

審議経過

第19回国会

参議院
(昭和29年5月25日)
(昭和29年5月26日)
(昭和29年5月27日)
衆議院
(昭和29年5月28日)
参議院
(昭和29年5月28日)
衆議院
(昭和29年5月29日)
(昭和29年5月31日)
(昭和29年6月15日)
参議院
(昭和29年6月15日)
覚せい剤取締法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
昭和二十九年六月十二日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百七十七号
覚せい剤取締法の一部を改正する法律
覚せい剤取締法(昭和二十六年法律第二百五十二号)の一部を次のように改正する。
第二条を次のように改める。
(用語の意義)
第二条 この法律で「覚せい剤」とは、左に掲げる物をいう。
一 フエニルアミノプロパン、フエニルメチルアミノプロパン及び各その塩類
二 前号に掲げる物と同種の覚せい作用を有する物であつて政令で指定するもの
三 前二号に掲げる物のいずれかを含有する物
2 この法律で「覚せい剤製造業者」とは、覚せい剤を製造し、且つ、その製造した覚せい剤を覚せい剤施用機関又は覚せい剤研究者に譲り渡すことを業とすることができるものとして、この法律の規定により指定を受けた者をいう。
3 この法律で「覚せい剤施用機関」とは、覚せい剤の施用を行うことができるものとして、この法律の規定により指定を受けた病院又は診療所をいう。
4 この法律で「覚せい剤研究者」とは、学術研究のため、覚せい剤を使用することができ、また、厚生大臣の許可を受けた場合に限り覚せい剤を製造することができるものとして、この法律の規定により指定を受けた者をいう。
第十四条第一項中「診療に従事する医師から」を「診療に従事する医師又は覚せい剤研究者から」に改め、同条第二項第二号中「又は覚せい剤研究者に覚せい剤を譲り渡す場合」を「若しくは覚せい剤研究者に覚せい剤を譲り渡し、又は覚せい剤の保管換をする場合」に改める。
第十五条第一項中「その業務の目的のために製造する場合」の下に「及び覚せい剤研究者が厚生大臣の許可を受けて研究のために製造する場合」を加える。
第十七条第三項中「診療に従事する医師」の下に「又は覚せい剤研究者」を加える。
第十八条第一項中「診療に従事する医師」の下に「又は覚せい剤研究者」を加える。
第十九条第二号及び第四号中「診療に従事する医師」の下に「又は覚せい剤研究者」を加える。
第二十条第五項中「覚せい剤研究者は、」の下に「厚生省令の定めるところにより厚生大臣の許可を受けた場合の外は、」を加え、「施用し」を「施用し、又は施用のため交付し」に改め、同条に次の一項を加える。
6 覚せい剤研究者が覚せい剤を施用のため交付する場合には、第四項の規定を準用する。
第二十二条を次のように改める。
(保管及び保管換)
第二十二条 覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関の管理者又は覚せい剤研究者は、その所有し又は管理する覚せい剤をその製造所、病院若しくは診療所又は研究所内において保管しなければならない。但し、覚せい剤製造業者は、覚せい剤を保管すべき営業所(以下「覚せい剤保管営業所」という。)を定めて、その旨を当該営業所の所在地の都道府県知事を経て厚生大臣に届け出た場合には、その所有する覚せい剤を覚せい剤保管営業所において保管し、及びその製造所と覚せい剤保管営業所との間又は覚せい剤保管営業所相互の間において保管換することができる。
2 前項但書の覚せい剤保管営業所は、覚せい剤製造業者の営業所であつて、且つ、薬事法に規定する薬剤師が置かれている営業所でなければならない。
3 第一項の保管は、かぎをかけた堅固な場所において行わなければならない。
(廃棄)
第二十二条の二 覚せい剤製造業者、覚せい剤施用機関の開設者又は覚せい剤研究者は、その所有する覚せい剤を廃棄しようとするときは、その製造所(覚せい剤保管営業所において保管するものについてはその保管営業所)、病院若しくは診療所又は研究所の所在地の都道府県知事に届け出て当該職員の立会の下に行わなければならない。
第二十三条中「その所在地」を「その製造所(覚せい剤保管営業所において保管するものについてはその保管営業所)の所在地」に改める。
第二十四条第一項及び第二項中「その製造所」の下に「(覚せい剤保管営業所において保管するものについてはその保管営業所)」を加える。
第二十六条の次に次の一条を加える。
(遺失覚せい剤の帰属)
第二十六条の二 地方公共団体に属する警察の警察署長が遺失物法(明治三十二年法律第八十七号)の規定により保管する物件が覚せい剤である場合においてその交付を受ける者がないときは、当該覚せい剤の所有権は、同法第十五条(受取人のない物の帰属)の規定にかかわらず国庫に帰属する。この場合においては、当該警察署長は、当該覚せい剤をすみやかに国庫に引き渡さなければならない。
第二十八条第一項中「その製造所」を「その製造所若しくは覚せい剤保管営業所」に改め、同項第一号中「譲り受け、」の下に「保管換し、」を加え、同項第二号中「並びに製造所」を「並びに製造所若しくは覚せい剤保管営業所」に改める。
第三十条中「研究のため使用した」を「研究のため使用し、若しくは製造した」に改め、「品名及び数量」の下に「並びにその年の十一月三十日において管理し又は所有した覚せい剤の品名及び数量」を加える。
第三十二条第一項中「覚せい剤製造業者の製造所」の下に「若しくは覚せい剤保管営業所」を加える。
第三十三条第一項中「第二十四条第三項」を「第二十二条の二(廃棄)、第二十四条第三項」に改め、同条第二項中「第二十四条第三項」を「第二十二条の二若しくは第二十四条第三項」に改める。
第三十八条第一項第一号中「千円」を「二千円」に改める。
第三十九条を次のように改める。
(譲渡証、譲受証及び証紙の代価)
第三十九条 第十八条(譲渡証及び譲受証)に規定する譲渡証又は譲受証の用紙を必要とする者は都道府県に、第二十一条第一項(製造した覚せい剤の証紙による封入)に規定する証紙を必要とする者は国庫に、それぞれ代価として、実費の範囲内において厚生省令で定める額を支払わなければならない。
第四十一条を次のように改める。
(刑罰)
第四十一条 左の各号の一に該当する者は、五年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
一 第十三条(輸入の禁止)の規定に違反した者
二 第十四条第一項(所持の禁止)の規定に違反した者
三 第十五条第一項(製造の禁止)の規定に違反した者
四 第十七条第一項から第三項まで(譲渡及び譲受の制限及び禁止)の規定に違反した者
五 第十九条(使用の禁止)の規定に違反した者
2 前項の刑は、情状により併科することができる。
3 第一項第一号及び第三号から第五号までの未遂罪は、これを罰する。
4 営利の目的で又は常習として第一項の違反行為をした者は、七年以下の懲役に処し、又は情状により七年以下の懲役及び五十万円以下の罰金に処する。
第四十一条の二 左の各号の一に該当する者は、三年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
一 第十五条第三項(製造の制限)の規定に違反した者
二 第二十条第一項から第三項まで(覚せい剤施用機関において診療に従事する医師についての施用の制限)又は第五項(覚せい剤研究者についての施用の制限)の規定に違反した者
2 前項の刑は、情状により併科することができる。
3 第一項の未遂罪は、これを罰する。
第四十一条の三 前二条の場合においては、犯人が所有し、又は所持する覚せい剤は、没収する。但し、犯人以外の所有に係るときは、没収しないことができる。
第四十二条第一項中第七号を第八号とし、以下順次一号ずつ繰り下げ、同項第六号中「(保管方法)」を「(保管及び保管換)」に改め、同号の次に次の一号を加える。
七 第二十二条の二(廃棄)の規定に違反した者
第四十三条第六号中「第四項」を「第四項(同条第六項で準用する場合を含む。)」に改める。
第四十五条中「第四十一条及び第四十二条」を「第四十一条、第四十一条の二及び第四十二条」に改め、同条但書を削る。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
(経過規定)
2 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
(厚生省設置法の一部改正)
3 厚生省設置法(昭和二十四年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。
第五条第四十八号中「覚せい剤施用機関の指定を行い、並びにその指定を取り消すこと。」を「覚せい剤施用機関の指定を行い、及びその指定を取り消し、並びに覚せい剤研究者が研究のため他人に対して覚せい剤を施用し、又は覚せい剤を製造することを許可すること。」に改める。
(厚生省関係法令の整理に関する法律の一部改正)
4 厚生省関係法令の整理に関する法律(昭和二十九年法律第百三十六号)の一部を次のように改正する。
第十一条のうち第二十九条第一号及び第四号中「品名及び数量」を「品名、数量及び保管場所」に改める。
厚生大臣 草葉隆円
内閣総理大臣 吉田茂