(助成の基準)
第二條 政府は、農業に関する諸原理及びその應用に関する科学的試驗研究を助長するため、本章の規定に從い、都道府縣及びその他の試驗研究機関に対し補助金又は委託金(以下本章中資金という。)を交付する。
2 前項の資金は、農業に関する地方的な事情と必要性とを正しく考慮して適当と考えられる特定の試驗研究で、農業及び農民生活に直接関係し、國の農業事情からみて緊要と認められ、且つ不必要に重複していないものを助長するために交付されなければならない。
3 本章の規定により資金の交付を受ける試驗研究機関の数は、いずれの年度においても、全國を通じて七十五を超えることはできない。
4 農業に関する都道府縣の試驗場以外の試驗研究機関における試驗研究を助長するために交付される資金は、第一項の資金の総額の二割を超えてはならない。
(農林大臣の任務)
第三條 農林大臣は、農事試驗場その他の試驗研究機関における試驗研究につき、その重複反復を避け、成果を高め、結果報告の形式を統一するために、結果報告の具体的方法を示すとともに、随時、最も重要と考えられる檢討方向を示し、その他この法律の目的を最善に達成するため必要な忠告及び助力を與えなければならない。
(助成の申請)
第四條 本章の規定により資金の交付を受け、又は受けようとする都道府縣又はその他の試驗研究機関は、毎年一月三十一日までに、農林大臣の定める樣式により、資金の交付申請書を、次年度において施行しようとする事業の計画書及び経費見積書並びに過去一箇年間における農業に関する試驗研究の実績報告書とともに、農林大臣に提出しなければならない。
2 前項の実績報告書は、いずれの年度においても、都道府縣又はその他の試驗研究機関が本章の規定により次年度の資金の割当の決定を受ける以前において、農林大臣の承認を受けなければならない。その承認を受けないものは、次年度の資金の割当の決定を受けることができない。
(資金の割当)
第五條 農林大臣は、前條の提出書類を審査の上、都道府縣又はその他の試驗研究機関別に、毎年三月三十一日までに、本章の目的のために定められた予算の範囲内において、事業を指定し事業別に資金の割当を決定しなければならない。但し、予算成立の遅延のため三月三十一日までにその決定ができない場合には、予算成立後一箇月以内にこれを決定しなければならない。
(助成の承諾)
第六條 都道府縣又はその他の試驗研究機関は、前條の規定により割当の決定を受けこれを承諾するときは、その割当決定に基いて実施する旨の承諾書を、遅滯なく農林大臣に提出しなければならない。承諾書には、左に掲げる書類を添付しなければならない。
(計画の変更)
第七條 都道府縣又はその他の試驗研究機関が、承諾書を提出した後、前條各号の書類に記載した事項に重要な変更を加えようとするときは、あらかじめ農林大臣の承認を受けなければならない。
(資金の流用禁止)
第八條 本章の規定により交付される資金は、直接と間接とを問わず、これを諸建物の購入、建造、保全若しくは修理若しくは土地の購入若しくは借入に使用し、又は指定された事業以外に、若しくは指定された事業の間に流用してはならない。
(資金の還付)
第九條 農林大臣は、本章の規定により資金の交付を受けた都道府縣又はその他の試驗研究機関が左の各号の一に該当するときは、資金の全部又は一部の還付を命ずることができる。
2 農林大臣は、都道府縣又はその他の試驗研究機関が前項の規定により還付を命ぜられた場合正当な理由がないのに還付しないときは、当該都道府縣又はその他の試驗研究機関に対する資金の割当又は交付をしない。
(收支決算書)
第十條 本章の規定により資金の交付を受けた都道府縣又はその他の試驗研究機関は、農林大臣の定める樣式により、收支決算書を、次年度六月三十日までに農林大臣に提出しなければならない。
(年次報告書)
第十一條 農林大臣は、毎年度、都道府縣又はその他の試驗研究機関が本章の規定により資金の交付を受けて実施した事業と農業に関する國立の試驗研究機関の試驗研究事業とを檢討整理しなければならない。
2 農林大臣は、前項の檢討整理の結果及び本章の目的のために定められた予算の支出額の年次報告書を作成し、これを大藏大臣に送付しなければならない。
3 内閣は、前項の年次報告書を、財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第四十條の規定による歳入歳出決算の添附書類として、國会に提出するものとする。
(異議の申立)
第十二條 農林大臣は、二年以上継続して資金を交付することを承認した試驗研究事業につき、その継続に必要な予算が成立している場合において、都道府縣又はその他の試驗研究機関が左の各号の一に該当することを事由として当該資金の割当又は交付をしないときは、その事実及び事由を遅滯なく内閣総理大臣に報告するとともに当該都道府縣又はその他の試驗研究機関に通知しなければならない。
二 第九條第一項の規定により命ぜられた資金の還付をしないことにつき正当な理由がないこと。
2 前項の通知を受けた都道府縣又はその他の試驗研究機関は、その通知に係る事由に不服があるときは、その通知を受けた日から一箇月以内に、内閣総理大臣に対し異議の申立をすることができる。
3 内閣総理大臣は、前項の異議の申立があつたときは、その申立を受けた日から一箇月以内にその当否を決定しなければならない。異議の申立を正当と認める決定があつたときは、農林大臣は、当該資金の割当又は交付をしなければならない。
4 農林大臣は、第二項の期間内に異議の申立がない場合又は異議の申立を不当と認める決定があつた場合には、当該資金を他の都道府縣又はその他の試驗研究機関に割り当てることができる。