農業改良助長法
法令番号: 法律第165号
公布年月日: 昭和23年7月15日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

食糧増産のため、農業に関する科学的技術の発達とその普及を図ることが緊要である。現状では、国立農業関係試験場や大学等の各機関で行われている試験研究に重複が多いため、各機関の連携を強化し、効率的な研究を推進する必要がある。また、試験研究の成果普及については、農業会解体後の情勢や国家財政を考慮し、組織的な普及技術者の設置による新方式を採用することとした。これらの目的達成のため、農林省と都道府県の緊密な協力のもと、国庫助成に関する法律として本法案を提案するものである。

参照した発言:
第2回国会 参議院 農林委員会 第8号

審議経過

第2回国会

参議院
(昭和23年6月11日)
(昭和23年6月14日)
衆議院
(昭和23年6月16日)
(昭和23年6月23日)
(昭和23年6月24日)
(昭和23年6月26日)
参議院
(昭和23年7月4日)
衆議院
(昭和23年7月5日)
参議院
(昭和23年7月5日)
(昭和23年7月5日)
農業改良助長法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十三年七月十五日
内閣総理大臣 芦田均
法律第百六十五号
農業改良助長法
第一章 総則
(法律の目的)
第一條 この法律は、能率的な農法の発達、農業生産の増大及び農民生活の改善のために、農民が農業に関する諸問題につき有益、適切且つ実用的な知識を得、これを普及交換して公共の福祉を増進することを目的とする。
2 この法律は、蚕糸業に関する試驗研究及び普及事業には、これを適用しない。
第二章 農業に関する試驗研究の助長
(助成の基準)
第二條 政府は、農業に関する諸原理及びその應用に関する科学的試驗研究を助長するため、本章の規定に從い、都道府縣及びその他の試驗研究機関に対し補助金又は委託金(以下本章中資金という。)を交付する。
2 前項の資金は、農業に関する地方的な事情と必要性とを正しく考慮して適当と考えられる特定の試驗研究で、農業及び農民生活に直接関係し、國の農業事情からみて緊要と認められ、且つ不必要に重複していないものを助長するために交付されなければならない。
3 本章の規定により資金の交付を受ける試驗研究機関の数は、いずれの年度においても、全國を通じて七十五を超えることはできない。
4 農業に関する都道府縣の試驗場以外の試驗研究機関における試驗研究を助長するために交付される資金は、第一項の資金の総額の二割を超えてはならない。
(農林大臣の任務)
第三條 農林大臣は、農事試驗場その他の試驗研究機関における試驗研究につき、その重複反復を避け、成果を高め、結果報告の形式を統一するために、結果報告の具体的方法を示すとともに、随時、最も重要と考えられる檢討方向を示し、その他この法律の目的を最善に達成するため必要な忠告及び助力を與えなければならない。
(助成の申請)
第四條 本章の規定により資金の交付を受け、又は受けようとする都道府縣又はその他の試驗研究機関は、毎年一月三十一日までに、農林大臣の定める樣式により、資金の交付申請書を、次年度において施行しようとする事業の計画書及び経費見積書並びに過去一箇年間における農業に関する試驗研究の実績報告書とともに、農林大臣に提出しなければならない。
2 前項の実績報告書は、いずれの年度においても、都道府縣又はその他の試驗研究機関が本章の規定により次年度の資金の割当の決定を受ける以前において、農林大臣の承認を受けなければならない。その承認を受けないものは、次年度の資金の割当の決定を受けることができない。
(資金の割当)
第五條 農林大臣は、前條の提出書類を審査の上、都道府縣又はその他の試驗研究機関別に、毎年三月三十一日までに、本章の目的のために定められた予算の範囲内において、事業を指定し事業別に資金の割当を決定しなければならない。但し、予算成立の遅延のため三月三十一日までにその決定ができない場合には、予算成立後一箇月以内にこれを決定しなければならない。
(助成の承諾)
第六條 都道府縣又はその他の試驗研究機関は、前條の規定により割当の決定を受けこれを承諾するときは、その割当決定に基いて実施する旨の承諾書を、遅滯なく農林大臣に提出しなければならない。承諾書には、左に掲げる書類を添付しなければならない。
一 事業実施計画書
二 收支予算書(委託の場合には経費見積書)
(計画の変更)
第七條 都道府縣又はその他の試驗研究機関が、承諾書を提出した後、前條各号の書類に記載した事項に重要な変更を加えようとするときは、あらかじめ農林大臣の承認を受けなければならない。
(資金の流用禁止)
第八條 本章の規定により交付される資金は、直接と間接とを問わず、これを諸建物の購入、建造、保全若しくは修理若しくは土地の購入若しくは借入に使用し、又は指定された事業以外に、若しくは指定された事業の間に流用してはならない。
(資金の還付)
第九條 農林大臣は、本章の規定により資金の交付を受けた都道府縣又はその他の試驗研究機関が左の各号の一に該当するときは、資金の全部又は一部の還付を命ずることができる。
一 前二條の規定に違反したとき。
二 支出額が予算額に比し減少したとき。
2 農林大臣は、都道府縣又はその他の試驗研究機関が前項の規定により還付を命ぜられた場合正当な理由がないのに還付しないときは、当該都道府縣又はその他の試驗研究機関に対する資金の割当又は交付をしない。
(收支決算書)
第十條 本章の規定により資金の交付を受けた都道府縣又はその他の試驗研究機関は、農林大臣の定める樣式により、收支決算書を、次年度六月三十日までに農林大臣に提出しなければならない。
(年次報告書)
第十一條 農林大臣は、毎年度、都道府縣又はその他の試驗研究機関が本章の規定により資金の交付を受けて実施した事業と農業に関する國立の試驗研究機関の試驗研究事業とを檢討整理しなければならない。
2 農林大臣は、前項の檢討整理の結果及び本章の目的のために定められた予算の支出額の年次報告書を作成し、これを大藏大臣に送付しなければならない。
3 内閣は、前項の年次報告書を、財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第四十條の規定による歳入歳出決算の添附書類として、國会に提出するものとする。
(異議の申立)
第十二條 農林大臣は、二年以上継続して資金を交付することを承認した試驗研究事業につき、その継続に必要な予算が成立している場合において、都道府縣又はその他の試驗研究機関が左の各号の一に該当することを事由として当該資金の割当又は交付をしないときは、その事実及び事由を遅滯なく内閣総理大臣に報告するとともに当該都道府縣又はその他の試驗研究機関に通知しなければならない。
一 第四條第二項の承認がないこと。
二 第九條第一項の規定により命ぜられた資金の還付をしないことにつき正当な理由がないこと。
三 提出した事業計画の内容が不適当であること。
2 前項の通知を受けた都道府縣又はその他の試驗研究機関は、その通知に係る事由に不服があるときは、その通知を受けた日から一箇月以内に、内閣総理大臣に対し異議の申立をすることができる。
3 内閣総理大臣は、前項の異議の申立があつたときは、その申立を受けた日から一箇月以内にその当否を決定しなければならない。異議の申立を正当と認める決定があつたときは、農林大臣は、当該資金の割当又は交付をしなければならない。
4 農林大臣は、第二項の期間内に異議の申立がない場合又は異議の申立を不当と認める決定があつた場合には、当該資金を他の都道府縣又はその他の試驗研究機関に割り当てることができる。
第三章 農業に関する普及事業の助長
(助成の目的)
第十三條 政府は、農民が農業及び農民生活に関する有益且つ実用的な知識を取得交換し、それを有効に應用することができるように、都道府縣が農林省と協同して行う農業に関する普及事業を助長するため、本章の規定に從い、都道府縣に対し補助金を交付する。
2 この法律は、個人的寄附又は農業協同組合その他政府若しくは都道府縣以外の團体によつて支持されている普及事業を打ち切り、又は退歩させる意図があると解すべきではない。
(協同農業普及事業)
第十四條 本章の規定により補助金を交付される「協同農業普及事業」とは、專門指導員の巡回指導、農場展示、出版物の配付その他の手段により、農民に対し農業及び農民生活の改善に関する教示及び実地展示をすることをいう。
2 前項の普及事業は、農林大臣と本章の規定により補助金の交付を受ける都道府縣とが協議して定める方針に從つて、これを実施するものとする。
(助成の申請)
第十五條 本章の規定により補助金の交付を受け、又は受けようとする都道府縣は、毎年一月三十一日までに、農林大臣の定める樣式により、補助金の交付申請書を、次年度において施行しようとする事業の計画書及び経費見積書並びに過去一箇年間における普及事業の実績報告書とともに、農林大臣に提出しなければならない。
2 前項の実績報告書は、いずれの年度においても、都道府縣が本章の規定により次年度の補助金の割当の決定を受ける以前において、農林大臣の承認を受けなければならない。その承認を受けないものは、次年度の補助金の割当の決定を受けることができない。
(補助金の割当)
第十六條 農林大臣は、前條の提出書類を審査の上、毎年三月三十一日までに、本章の目的のために定められた予算の範囲内において、左の各号の規定に從い、都道府縣別に補助金の割当を決定しなければならない。但し、予算成立の遅延のため三月三十一日までにその決定ができない場合には、予算成立後一箇月以内にこれを決定しなければならない。
一 当該予算総額の四割五分は、各都道府縣の農業人口に應じて各都道府縣に配分する。
二 当該予算総額の四割五分は、各都道府縣の耕地面積に應じて各都道府縣に配分する。
三 当該予算総額の一割は、天災又は農業資源の開発不十分のため農業改良に必要な協同農業普及事業を施行することが困難である都道府縣及び農業の発展のため緊要な協同農業普及事業の施行を必要とする都道府縣に配分する。
2 前項第一号及び第二号の規定により都道府縣に配分される補助金の額が、当該都道府縣において協同農業普及事業を維持するためその年度に支出する都道府縣費の倍額を超えるときは、その超える部分については、当該都道府縣は、これを受領することができない。
(助成の承諾)
第十七條 都道府縣は、前條の規定により割当の決定を受けこれを承諾するときは、その割当決定に基いて実施する旨の承諾書を、遅滯なく農林大臣に提出しなければならない。承諾書には、左に掲げる書類を添附しなければならない。
一 事業実施計画書
二 收支予算書
(計画の変更)
第十八條 都道府縣が、承諾書を提出した後、前條各号の書類に記載した事項に重要な変更を加えようとするときは、あらかじめ農林大臣の承認を受けなければならない。
(補助金の流用禁止)
第十九條 本章の規定により交付される補助金は、直接と間接とを問わず、これを諸建物の購入、建造、保全若しくは修理、土地の購入若しくは借入、研究若しくは普及のための農場の経営、取締事務その他本章に規定する目的以外の目的に使用してはならない。
(補助金の還付)
第二十條 農林大臣は、本章の規定により補助金の交付を受けた都道府縣が左の各号の一に該当するときは、補助金の全部又は一部の還付を命ずることができる。
一 前二條の規定に違反したとき。
二 支出額が予算額に比し減少したとき。
2 農林大臣は、都道府縣が前項の規定により還付を命ぜられた場合正当な理由がないのに還付しないときは、当該都道府縣に対する補助金の割当又は交付をしない。
(收支決算書)
第二十一條 本章の規定により補助金の交付を受けた都道府縣は、農林大臣の定める樣式により、收支決算書を、次年度六月三十日までに農林大臣に提出しなければならない。
(年次報告書)
第二十二條 農林大臣は、毎年度、本章の目的のために定められた予算の支出額及び本章の規定により補助金の交付を受けて実施した事業の結果の年次報告書を作成し、これを大藏大臣に送付しなければならない。
2 内閣は、前項の年次報告書を、財政法第四十條の規定による歳入歳出決算の添附書類として、國会に提出するものとする。
(異議の申立)
第二十三條 農林大臣は、都道府縣が左の各号の一に該当することを事由として第十六條第一項第一号及び第二号の規定による補助金の割当又は交付をしないときは、その事実及び事由を遅滯なく内閣総理大臣に報告するとともに当該都道府縣に通知しなければならない。
一 第十五條第二項の承認がないこと。
二 第二十條第一項の規定により命ぜられた補助金の還付をしないことにつき正当な理由がないこと。
2 前項の通知を受けた都道府縣は、その通知に係る事由に不服があるときは、その通知を受けた日から一箇月以内に、内閣総理大臣に対し異議の申立をすることができる。
3 内閣総理大臣は、前項の異議の申立があつたときは、その申立を受けた日から一箇月以内にその当否を決定しなければならない。異議の申立を正当と認める決定があつたときは、農林大臣は、当該補助金の割当又は交付をしなければならない。
4 農林大臣は、第二項の期間内に異議の申立がない場合又は異議の申立を不当と認める決定があつた場合には、当該補助金を不要額とする。
附 則
第二十四條 この法律施行の期日は、その公布の日から三箇月を超えない期間内において、政令でこれを定める。
第二十五條 第四條第一項及び第十五條第一項に規定する書類の提出に関しては、昭和二十三年度に限り、同條の規定にかかわらず、農林大臣の指示するところによるものとする。
2 第四條第二項及び第十五條第二項の規定は、昭和二十三年度に限り、これを適用しない。
第二十六條 第五條及び第十六條第一項中割当の期日に関する規定は、昭和二十三年度に限り、これを適用しない。
第二十七條 第十六條第二項の規定は、昭和二十三年度に限り、これを適用しない。
第二十八條 産業試驗費講習費國庫補助法(明治三十九年法律第九号)は、これを廃止する。
大藏大臣 北村徳太郎
農林大臣 永江一夫
内閣総理大臣 芦田均
農業改良助長法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十三年七月十五日
内閣総理大臣 芦田均
法律第百六十五号
農業改良助長法
第一章 総則
(法律の目的)
第一条 この法律は、能率的な農法の発達、農業生産の増大及び農民生活の改善のために、農民が農業に関する諸問題につき有益、適切且つ実用的な知識を得、これを普及交換して公共の福祉を増進することを目的とする。
2 この法律は、蚕糸業に関する試験研究及び普及事業には、これを適用しない。
第二章 農業に関する試験研究の助長
(助成の基準)
第二条 政府は、農業に関する諸原理及びその応用に関する科学的試験研究を助長するため、本章の規定に従い、都道府県及びその他の試験研究機関に対し補助金又は委託金(以下本章中資金という。)を交付する。
2 前項の資金は、農業に関する地方的な事情と必要性とを正しく考慮して適当と考えられる特定の試験研究で、農業及び農民生活に直接関係し、国の農業事情からみて緊要と認められ、且つ不必要に重複していないものを助長するために交付されなければならない。
3 本章の規定により資金の交付を受ける試験研究機関の数は、いずれの年度においても、全国を通じて七十五を超えることはできない。
4 農業に関する都道府県の試験場以外の試験研究機関における試験研究を助長するために交付される資金は、第一項の資金の総額の二割を超えてはならない。
(農林大臣の任務)
第三条 農林大臣は、農事試験場その他の試験研究機関における試験研究につき、その重複反復を避け、成果を高め、結果報告の形式を統一するために、結果報告の具体的方法を示すとともに、随時、最も重要と考えられる検討方向を示し、その他この法律の目的を最善に達成するため必要な忠告及び助力を与えなければならない。
(助成の申請)
第四条 本章の規定により資金の交付を受け、又は受けようとする都道府県又はその他の試験研究機関は、毎年一月三十一日までに、農林大臣の定める様式により、資金の交付申請書を、次年度において施行しようとする事業の計画書及び経費見積書並びに過去一箇年間における農業に関する試験研究の実績報告書とともに、農林大臣に提出しなければならない。
2 前項の実績報告書は、いずれの年度においても、都道府県又はその他の試験研究機関が本章の規定により次年度の資金の割当の決定を受ける以前において、農林大臣の承認を受けなければならない。その承認を受けないものは、次年度の資金の割当の決定を受けることができない。
(資金の割当)
第五条 農林大臣は、前条の提出書類を審査の上、都道府県又はその他の試験研究機関別に、毎年三月三十一日までに、本章の目的のために定められた予算の範囲内において、事業を指定し事業別に資金の割当を決定しなければならない。但し、予算成立の遅延のため三月三十一日までにその決定ができない場合には、予算成立後一箇月以内にこれを決定しなければならない。
(助成の承諾)
第六条 都道府県又はその他の試験研究機関は、前条の規定により割当の決定を受けこれを承諾するときは、その割当決定に基いて実施する旨の承諾書を、遅滞なく農林大臣に提出しなければならない。承諾書には、左に掲げる書類を添付しなければならない。
一 事業実施計画書
二 収支予算書(委託の場合には経費見積書)
(計画の変更)
第七条 都道府県又はその他の試験研究機関が、承諾書を提出した後、前条各号の書類に記載した事項に重要な変更を加えようとするときは、あらかじめ農林大臣の承認を受けなければならない。
(資金の流用禁止)
第八条 本章の規定により交付される資金は、直接と間接とを問わず、これを諸建物の購入、建造、保全若しくは修理若しくは土地の購入若しくは借入に使用し、又は指定された事業以外に、若しくは指定された事業の間に流用してはならない。
(資金の還付)
第九条 農林大臣は、本章の規定により資金の交付を受けた都道府県又はその他の試験研究機関が左の各号の一に該当するときは、資金の全部又は一部の還付を命ずることができる。
一 前二条の規定に違反したとき。
二 支出額が予算額に比し減少したとき。
2 農林大臣は、都道府県又はその他の試験研究機関が前項の規定により還付を命ぜられた場合正当な理由がないのに還付しないときは、当該都道府県又はその他の試験研究機関に対する資金の割当又は交付をしない。
(収支決算書)
第十条 本章の規定により資金の交付を受けた都道府県又はその他の試験研究機関は、農林大臣の定める様式により、収支決算書を、次年度六月三十日までに農林大臣に提出しなければならない。
(年次報告書)
第十一条 農林大臣は、毎年度、都道府県又はその他の試験研究機関が本章の規定により資金の交付を受けて実施した事業と農業に関する国立の試験研究機関の試験研究事業とを検討整理しなければならない。
2 農林大臣は、前項の検討整理の結果及び本章の目的のために定められた予算の支出額の年次報告書を作成し、これを大蔵大臣に送付しなければならない。
3 内閣は、前項の年次報告書を、財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第四十条の規定による歳入歳出決算の添附書類として、国会に提出するものとする。
(異議の申立)
第十二条 農林大臣は、二年以上継続して資金を交付することを承認した試験研究事業につき、その継続に必要な予算が成立している場合において、都道府県又はその他の試験研究機関が左の各号の一に該当することを事由として当該資金の割当又は交付をしないときは、その事実及び事由を遅滞なく内閣総理大臣に報告するとともに当該都道府県又はその他の試験研究機関に通知しなければならない。
一 第四条第二項の承認がないこと。
二 第九条第一項の規定により命ぜられた資金の還付をしないことにつき正当な理由がないこと。
三 提出した事業計画の内容が不適当であること。
2 前項の通知を受けた都道府県又はその他の試験研究機関は、その通知に係る事由に不服があるときは、その通知を受けた日から一箇月以内に、内閣総理大臣に対し異議の申立をすることができる。
3 内閣総理大臣は、前項の異議の申立があつたときは、その申立を受けた日から一箇月以内にその当否を決定しなければならない。異議の申立を正当と認める決定があつたときは、農林大臣は、当該資金の割当又は交付をしなければならない。
4 農林大臣は、第二項の期間内に異議の申立がない場合又は異議の申立を不当と認める決定があつた場合には、当該資金を他の都道府県又はその他の試験研究機関に割り当てることができる。
第三章 農業に関する普及事業の助長
(助成の目的)
第十三条 政府は、農民が農業及び農民生活に関する有益且つ実用的な知識を取得交換し、それを有効に応用することができるように、都道府県が農林省と協同して行う農業に関する普及事業を助長するため、本章の規定に従い、都道府県に対し補助金を交付する。
2 この法律は、個人的寄附又は農業協同組合その他政府若しくは都道府県以外の団体によつて支持されている普及事業を打ち切り、又は退歩させる意図があると解すべきではない。
(協同農業普及事業)
第十四条 本章の規定により補助金を交付される「協同農業普及事業」とは、専門指導員の巡回指導、農場展示、出版物の配付その他の手段により、農民に対し農業及び農民生活の改善に関する教示及び実地展示をすることをいう。
2 前項の普及事業は、農林大臣と本章の規定により補助金の交付を受ける都道府県とが協議して定める方針に従つて、これを実施するものとする。
(助成の申請)
第十五条 本章の規定により補助金の交付を受け、又は受けようとする都道府県は、毎年一月三十一日までに、農林大臣の定める様式により、補助金の交付申請書を、次年度において施行しようとする事業の計画書及び経費見積書並びに過去一箇年間における普及事業の実績報告書とともに、農林大臣に提出しなければならない。
2 前項の実績報告書は、いずれの年度においても、都道府県が本章の規定により次年度の補助金の割当の決定を受ける以前において、農林大臣の承認を受けなければならない。その承認を受けないものは、次年度の補助金の割当の決定を受けることができない。
(補助金の割当)
第十六条 農林大臣は、前条の提出書類を審査の上、毎年三月三十一日までに、本章の目的のために定められた予算の範囲内において、左の各号の規定に従い、都道府県別に補助金の割当を決定しなければならない。但し、予算成立の遅延のため三月三十一日までにその決定ができない場合には、予算成立後一箇月以内にこれを決定しなければならない。
一 当該予算総額の四割五分は、各都道府県の農業人口に応じて各都道府県に配分する。
二 当該予算総額の四割五分は、各都道府県の耕地面積に応じて各都道府県に配分する。
三 当該予算総額の一割は、天災又は農業資源の開発不十分のため農業改良に必要な協同農業普及事業を施行することが困難である都道府県及び農業の発展のため緊要な協同農業普及事業の施行を必要とする都道府県に配分する。
2 前項第一号及び第二号の規定により都道府県に配分される補助金の額が、当該都道府県において協同農業普及事業を維持するためその年度に支出する都道府県費の倍額を超えるときは、その超える部分については、当該都道府県は、これを受領することができない。
(助成の承諾)
第十七条 都道府県は、前条の規定により割当の決定を受けこれを承諾するときは、その割当決定に基いて実施する旨の承諾書を、遅滞なく農林大臣に提出しなければならない。承諾書には、左に掲げる書類を添附しなければならない。
一 事業実施計画書
二 収支予算書
(計画の変更)
第十八条 都道府県が、承諾書を提出した後、前条各号の書類に記載した事項に重要な変更を加えようとするときは、あらかじめ農林大臣の承認を受けなければならない。
(補助金の流用禁止)
第十九条 本章の規定により交付される補助金は、直接と間接とを問わず、これを諸建物の購入、建造、保全若しくは修理、土地の購入若しくは借入、研究若しくは普及のための農場の経営、取締事務その他本章に規定する目的以外の目的に使用してはならない。
(補助金の還付)
第二十条 農林大臣は、本章の規定により補助金の交付を受けた都道府県が左の各号の一に該当するときは、補助金の全部又は一部の還付を命ずることができる。
一 前二条の規定に違反したとき。
二 支出額が予算額に比し減少したとき。
2 農林大臣は、都道府県が前項の規定により還付を命ぜられた場合正当な理由がないのに還付しないときは、当該都道府県に対する補助金の割当又は交付をしない。
(収支決算書)
第二十一条 本章の規定により補助金の交付を受けた都道府県は、農林大臣の定める様式により、収支決算書を、次年度六月三十日までに農林大臣に提出しなければならない。
(年次報告書)
第二十二条 農林大臣は、毎年度、本章の目的のために定められた予算の支出額及び本章の規定により補助金の交付を受けて実施した事業の結果の年次報告書を作成し、これを大蔵大臣に送付しなければならない。
2 内閣は、前項の年次報告書を、財政法第四十条の規定による歳入歳出決算の添附書類として、国会に提出するものとする。
(異議の申立)
第二十三条 農林大臣は、都道府県が左の各号の一に該当することを事由として第十六条第一項第一号及び第二号の規定による補助金の割当又は交付をしないときは、その事実及び事由を遅滞なく内閣総理大臣に報告するとともに当該都道府県に通知しなければならない。
一 第十五条第二項の承認がないこと。
二 第二十条第一項の規定により命ぜられた補助金の還付をしないことにつき正当な理由がないこと。
2 前項の通知を受けた都道府県は、その通知に係る事由に不服があるときは、その通知を受けた日から一箇月以内に、内閣総理大臣に対し異議の申立をすることができる。
3 内閣総理大臣は、前項の異議の申立があつたときは、その申立を受けた日から一箇月以内にその当否を決定しなければならない。異議の申立を正当と認める決定があつたときは、農林大臣は、当該補助金の割当又は交付をしなければならない。
4 農林大臣は、第二項の期間内に異議の申立がない場合又は異議の申立を不当と認める決定があつた場合には、当該補助金を不要額とする。
附 則
第二十四条 この法律施行の期日は、その公布の日から三箇月を超えない期間内において、政令でこれを定める。
第二十五条 第四条第一項及び第十五条第一項に規定する書類の提出に関しては、昭和二十三年度に限り、同条の規定にかかわらず、農林大臣の指示するところによるものとする。
2 第四条第二項及び第十五条第二項の規定は、昭和二十三年度に限り、これを適用しない。
第二十六条 第五条及び第十六条第一項中割当の期日に関する規定は、昭和二十三年度に限り、これを適用しない。
第二十七条 第十六条第二項の規定は、昭和二十三年度に限り、これを適用しない。
第二十八条 産業試験費講習費国庫補助法(明治三十九年法律第九号)は、これを廃止する。
大蔵大臣 北村徳太郎
農林大臣 永江一夫
内閣総理大臣 芦田均