朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル取引所稅法改正法律ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正三年三月三十日
內閣總理大臣 伯爵 山本權兵衞
大藏大臣 男爵 高橋是淸
法律第二十三號
取引所稅法
第一條 取引所ニハ賣買手數料收入金額百分ノ十五ノ割合ニ依リ取引所營業稅ヲ課ス
第二條 取引所ハ每月ノ賣買手數料收入金額ヲ翌月十日迄ニ政府ニ申吿スヘシ但シ廢業ノトキハ直ニ之ヲ申吿スヘシ
前項ノ申吿ヲ爲サス又ハ政府ニ於テ申吿ヲ不相當ト認ムルトキハ政府ハ其ノ課稅標準額ヲ決定ス
第三條 取引所營業稅ハ每月分ヲ翌月末日迄ニ納付スヘシ但シ廢業ノトキハ直ニ之ヲ納付スヘシ
第四條 會員組織ノ取引所ニハ取引所營業稅ヲ課セス
第五條 取引所ニ於ケル定期取引ニハ其ノ賣買各約定金高ニ對シ左ノ稅率ニ依リ取引稅ヲ課ス
第一種 地方債證券、社債券 萬分ノ二
第二種 有價證券 萬分ノ五
第三種 商品 萬分ノ五
賣買ヲ解約スルモ其ノ稅金ハ之ヲ免除セス
第六條 定期取引ニ於ケル轉賣及買戾ニハ取引稅ヲ課セス
第七條 國債證券ノ定期取引ニハ取引稅ヲ課セス
第八條 取引所ノ仲買人又ハ會員ハ每月分ノ定期取引ノ賣買各約定金高ヲ種別每ニ記載シタル申吿書ヲ取引所ヲ經テ翌月十日迄ニ政府ニ提出スヘシ
取引所ハ前項ノ申吿書ヲ調査シ其ノ當否ニ付意見ヲ付シ前項ノ期間內ニ之ヲ政府ニ提出スヘシ
前項ノ規定ニ依リ取引所ヲシテ申吿書ノ調査ヲ爲サシムル爲仲買人又ハ會員ハ第一項ノ期日前相當ノ期間內ニ申吿書ヲ取引所ニ送付スヘシ
申吿書ノ提出ナキトキ又ハ政府ニ於テ申吿高ヲ不相當ト認ムルトキハ政府ハ其ノ課稅標準額ヲ決定ス
第九條 取引所ノ仲買人又ハ會員ハ每月分ノ稅金ヲ取引所ヲ經テ翌月末日迄ニ政府ニ納付スヘシ
第十條 政府ハ取引稅ノ納稅吿知書ヲ取引所ニ交付シ取引所ハ之ヲ其ノ仲買人又ハ會員ニ送達スヘシ此ノ場合ニ於テハ取引所ニ交付シタル時ヲ以テ其ノ仲買人又ハ會員ニ送達アリタルモノト看做ス
取引所ハ其ノ仲買人又ハ會員ノ納付スヘキ稅金ヲ取纏メ前條ノ納期內ニ之ヲ政府ニ送付スヘシ
取引所前項ノ規定ニ依リ取纏メタル稅金ヲ送付セサルトキハ國稅徵收法ニ依リ取引所ヨリ之ヲ徵收ス
第十一條 取引所ノ仲買人又ハ會員カ廢業脫退其ノ他ノ事由ニ因リ其ノ資格ヲ失ヒタルトキハ課稅標準額ノ申吿及取引稅ノ納付ハ前三條ノ期限ニ拘ラス直ニ之ヲ爲スヘシ
前項ノ規定ハ取引所ノ廢業シタル場合ニ於テ取引稅ニ付之ヲ準用ス
第十二條 取引所ハ其ノ仲買人又ハ會員ノ取引稅ノ納付ニ付保證ノ責ニ任ス
取引所ノ仲買人又ハ會員納期內ニ取引稅ヲ納付セサルトキハ政府ハ取引所ヨリ之ヲ徵收スルコトヲ得
第十三條 取引所ハ賣買手數料及賣買取引ニ關スル事項ヲ帳簿ニ記載スヘシ
取引所ノ仲買人又ハ會員ハ賣買取引ニ關スル事項ヲ帳簿ニ記載スヘシ
第十四條 收稅官吏ハ取引所、取引所ノ仲買人又ハ會員ニ就キ其ノ賣買手數料又ハ賣買取引ニ關スル帳簿書類ヲ檢査シ又ハ監督上必要ノ處分ヲ爲スコトヲ得
第十五條 取引所第二條ノ申吿ヲ怠リ又ハ詐リタルトキハ百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス因リテ脫稅シタルトキハ脫稅高三倍ニ相當スル罰金又ハ科料ニ處シ直ニ其ノ稅金ヲ徵收ス
第十六條 取引所ノ仲買人又ハ會員第八條又ハ第十一條ノ申吿ヲ怠リ又ハ詐リタルトキハ百圓以下ノ罰金又ハ十圓以上ノ科料ニ處ス因リテ脫稅シタルトキハ脫稅高五倍ニ相當スル罰金ニ處シ直ニ其ノ稅金ヲ徵收ス但シ稅金二十圓未滿ナルトキハ罰金額ヲ百圓トス
第十七條 取引所法第二十五條ノ規定ニ違反シタル行爲アリタルトキハ取引稅ニ關シテハ取引所ニ於テ定期取引ヲ爲シテ脫稅シタルモノト看做シ其ノ稅金五倍ニ相當スル罰金ニ處シ直ニ其ノ稅金ヲ徵收ス但シ稅金二十圓未滿ナルトキハ罰金額ヲ百圓トス
前項ノ場合ニ於テハ委託者ニ對シ約定金高トシテ計算シタル金額ヲ以テ賣買各約定金高トス
第一項ノ稅金ニ關シテハ第八條乃至第十條及第十二條ノ規定ヲ適用セス
第十八條 取引所ノ仲買人又ハ會員ノ爲シタル第八條又ハ第十一條ノ申吿不當ナル場合ニ於テ取引所之ヲ正當ナル申吿トシテ政府ニ提出シタルトキハ百圓以下ノ罰金又ハ十圓以上ノ科料ニ處ス因リテ脫稅スルニ至ラシメタルトキハ脫稅高五倍ニ相當スル罰金ニ處ス但シ稅金二十圓未滿ナルトキハ罰金額ヲ百圓トス
第十九條 取引所又ハ取引所ノ仲買人若ハ會員左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ百圓以下ノ罰金又ハ十圓以上ノ科料ニ處ス
一 取引所第八條又ハ第十一條ノ場合ニ於テ申吿書ニ意見ヲ附セス又ハ申吿書ノ提出ヲ怠リタルトキ
二 賣買手數料又ハ賣買取引ニ關スル帳簿ヲ調製セス、其ノ記載ヲ怠リ若ハ詐リタルトキ又ハ帳簿書類ヲ隱匿シタルトキ
三 收稅官吏ノ質問ニ對シ答辯ヲ爲サス若ハ虛僞ノ陳述ヲ爲シ又ハ其ノ職務ノ執行ヲ拒ミ、之ヲ妨ケ若ハ忌避シタルトキ
第二十條 本法ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十八條第三項但書、第三十九條第二項、第四十條、第四十一條、第四十八條第二項、第六十三條及第六十六條ノ例ヲ用井ス
第二十一條 取引所ノ仲買人又ハ會員ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ニシテ其ノ業務ニ關シ本法ヲ犯シタルトキハ其ノ仲買人又ハ會員ヲ處罰ス
第二十二條 北海道府縣、市町村及北海道沖繩縣ノ區ハ取引所營業稅ニ對シ本稅百分ノ十以內ノ附加稅ヲ課スルノ外取引所ノ業務ニ對シ租稅其ノ他ノ公課ヲ課スルコトヲ得ス
附 則
本法ハ大正三年九月一日ヨリ之ヲ施行ス但シ第二十二條ノ規定ハ大正四年四月一日ヨリ施行ス
本法施行前ノ賣買取引ニ關シテハ仍從前ノ規定ニ依リ取引所稅ヲ徵收ス
本法施行前ニ爲シタル賣買取引ニ係ル賣買手數料ニシテ本法施行後ニ收入スルモノハ取引所營業稅ノ課稅標準額ニ算入セス
明治三十九年法律第十二號ハ之ヲ廢止ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル取引所税法改正法律ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正三年三月三十日
内閣総理大臣 伯爵 山本権兵衛
大蔵大臣 男爵 高橋是清
法律第二十三号
取引所税法
第一条 取引所ニハ売買手数料収入金額百分ノ十五ノ割合ニ依リ取引所営業税ヲ課ス
第二条 取引所ハ毎月ノ売買手数料収入金額ヲ翌月十日迄ニ政府ニ申告スヘシ但シ廃業ノトキハ直ニ之ヲ申告スヘシ
前項ノ申告ヲ為サス又ハ政府ニ於テ申告ヲ不相当ト認ムルトキハ政府ハ其ノ課税標準額ヲ決定ス
第三条 取引所営業税ハ毎月分ヲ翌月末日迄ニ納付スヘシ但シ廃業ノトキハ直ニ之ヲ納付スヘシ
第四条 会員組織ノ取引所ニハ取引所営業税ヲ課セス
第五条 取引所ニ於ケル定期取引ニハ其ノ売買各約定金高ニ対シ左ノ税率ニ依リ取引税ヲ課ス
第一種 地方債証券、社債券 万分ノ二
第二種 有価証券 万分ノ五
第三種 商品 万分ノ五
売買ヲ解約スルモ其ノ税金ハ之ヲ免除セス
第六条 定期取引ニ於ケル転売及買戻ニハ取引税ヲ課セス
第七条 国債証券ノ定期取引ニハ取引税ヲ課セス
第八条 取引所ノ仲買人又ハ会員ハ毎月分ノ定期取引ノ売買各約定金高ヲ種別毎ニ記載シタル申告書ヲ取引所ヲ経テ翌月十日迄ニ政府ニ提出スヘシ
取引所ハ前項ノ申告書ヲ調査シ其ノ当否ニ付意見ヲ付シ前項ノ期間内ニ之ヲ政府ニ提出スヘシ
前項ノ規定ニ依リ取引所ヲシテ申告書ノ調査ヲ為サシムル為仲買人又ハ会員ハ第一項ノ期日前相当ノ期間内ニ申告書ヲ取引所ニ送付スヘシ
申告書ノ提出ナキトキ又ハ政府ニ於テ申告高ヲ不相当ト認ムルトキハ政府ハ其ノ課税標準額ヲ決定ス
第九条 取引所ノ仲買人又ハ会員ハ毎月分ノ税金ヲ取引所ヲ経テ翌月末日迄ニ政府ニ納付スヘシ
第十条 政府ハ取引税ノ納税告知書ヲ取引所ニ交付シ取引所ハ之ヲ其ノ仲買人又ハ会員ニ送達スヘシ此ノ場合ニ於テハ取引所ニ交付シタル時ヲ以テ其ノ仲買人又ハ会員ニ送達アリタルモノト看做ス
取引所ハ其ノ仲買人又ハ会員ノ納付スヘキ税金ヲ取纏メ前条ノ納期内ニ之ヲ政府ニ送付スヘシ
取引所前項ノ規定ニ依リ取纏メタル税金ヲ送付セサルトキハ国税徴収法ニ依リ取引所ヨリ之ヲ徴収ス
第十一条 取引所ノ仲買人又ハ会員カ廃業脱退其ノ他ノ事由ニ因リ其ノ資格ヲ失ヒタルトキハ課税標準額ノ申告及取引税ノ納付ハ前三条ノ期限ニ拘ラス直ニ之ヲ為スヘシ
前項ノ規定ハ取引所ノ廃業シタル場合ニ於テ取引税ニ付之ヲ準用ス
第十二条 取引所ハ其ノ仲買人又ハ会員ノ取引税ノ納付ニ付保証ノ責ニ任ス
取引所ノ仲買人又ハ会員納期内ニ取引税ヲ納付セサルトキハ政府ハ取引所ヨリ之ヲ徴収スルコトヲ得
第十三条 取引所ハ売買手数料及売買取引ニ関スル事項ヲ帳簿ニ記載スヘシ
取引所ノ仲買人又ハ会員ハ売買取引ニ関スル事項ヲ帳簿ニ記載スヘシ
第十四条 収税官吏ハ取引所、取引所ノ仲買人又ハ会員ニ就キ其ノ売買手数料又ハ売買取引ニ関スル帳簿書類ヲ検査シ又ハ監督上必要ノ処分ヲ為スコトヲ得
第十五条 取引所第二条ノ申告ヲ怠リ又ハ詐リタルトキハ百円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス因リテ脱税シタルトキハ脱税高三倍ニ相当スル罰金又ハ科料ニ処シ直ニ其ノ税金ヲ徴収ス
第十六条 取引所ノ仲買人又ハ会員第八条又ハ第十一条ノ申告ヲ怠リ又ハ詐リタルトキハ百円以下ノ罰金又ハ十円以上ノ科料ニ処ス因リテ脱税シタルトキハ脱税高五倍ニ相当スル罰金ニ処シ直ニ其ノ税金ヲ徴収ス但シ税金二十円未満ナルトキハ罰金額ヲ百円トス
第十七条 取引所法第二十五条ノ規定ニ違反シタル行為アリタルトキハ取引税ニ関シテハ取引所ニ於テ定期取引ヲ為シテ脱税シタルモノト看做シ其ノ税金五倍ニ相当スル罰金ニ処シ直ニ其ノ税金ヲ徴収ス但シ税金二十円未満ナルトキハ罰金額ヲ百円トス
前項ノ場合ニ於テハ委託者ニ対シ約定金高トシテ計算シタル金額ヲ以テ売買各約定金高トス
第一項ノ税金ニ関シテハ第八条乃至第十条及第十二条ノ規定ヲ適用セス
第十八条 取引所ノ仲買人又ハ会員ノ為シタル第八条又ハ第十一条ノ申告不当ナル場合ニ於テ取引所之ヲ正当ナル申告トシテ政府ニ提出シタルトキハ百円以下ノ罰金又ハ十円以上ノ科料ニ処ス因リテ脱税スルニ至ラシメタルトキハ脱税高五倍ニ相当スル罰金ニ処ス但シ税金二十円未満ナルトキハ罰金額ヲ百円トス
第十九条 取引所又ハ取引所ノ仲買人若ハ会員左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ百円以下ノ罰金又ハ十円以上ノ科料ニ処ス
一 取引所第八条又ハ第十一条ノ場合ニ於テ申告書ニ意見ヲ附セス又ハ申告書ノ提出ヲ怠リタルトキ
二 売買手数料又ハ売買取引ニ関スル帳簿ヲ調製セス、其ノ記載ヲ怠リ若ハ詐リタルトキ又ハ帳簿書類ヲ隠匿シタルトキ
三 収税官吏ノ質問ニ対シ答弁ヲ為サス若ハ虚偽ノ陳述ヲ為シ又ハ其ノ職務ノ執行ヲ拒ミ、之ヲ妨ケ若ハ忌避シタルトキ
第二十条 本法ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十八条第三項但書、第三十九条第二項、第四十条、第四十一条、第四十八条第二項、第六十三条及第六十六条ノ例ヲ用井ス
第二十一条 取引所ノ仲買人又ハ会員ノ代理人、戸主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ従業者ニシテ其ノ業務ニ関シ本法ヲ犯シタルトキハ其ノ仲買人又ハ会員ヲ処罰ス
第二十二条 北海道府県、市町村及北海道沖縄県ノ区ハ取引所営業税ニ対シ本税百分ノ十以内ノ附加税ヲ課スルノ外取引所ノ業務ニ対シ租税其ノ他ノ公課ヲ課スルコトヲ得ス
附 則
本法ハ大正三年九月一日ヨリ之ヲ施行ス但シ第二十二条ノ規定ハ大正四年四月一日ヨリ施行ス
本法施行前ノ売買取引ニ関シテハ仍従前ノ規定ニ依リ取引所税ヲ徴収ス
本法施行前ニ為シタル売買取引ニ係ル売買手数料ニシテ本法施行後ニ収入スルモノハ取引所営業税ノ課税標準額ニ算入セス
明治三十九年法律第十二号ハ之ヲ廃止ス