取引所税法
法令番号: 法律第22号
公布年月日: 平成2年5月7日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

最近の先物取引等の実情を踏まえ、取引所税の課税対象及び税率の見直しと納税方法の特別徴収方式への改正を行うため、取引所税法の改正を提案する。具体的には、課税対象を取引所市場における先物取引とオプション取引とし、税率をそれぞれ万分の0.1と万分の1に設定する。また、納税義務者を取引所会員とし、取引所が取引時に会員から徴収・納付する特別徴収方式を導入する。なお、日本円・米ドル通貨先物取引や日本円短期金利先物取引等については経過措置を設ける。

参照した発言:
第118回国会 衆議院 大蔵委員会 第8号

審議経過

第118回国会

衆議院
(平成2年4月17日)
(平成2年4月19日)
参議院
(平成2年4月24日)
(平成2年4月25日)
取引所税法をここに公布する。
御名御璽
平成二年五月七日
内閣総理大臣 海部俊樹
法律第二十二号
取引所税法
取引所税法(大正三年法律第二十三号)の全部を改正する。
目次
第一章
総則(第一条―第六条)
第二章
課税標準及び税率(第七条・第八条)
第三章
特別徴収による納付等(第九条・第十条)
第四章
雑則(第十一条―第十三条)
第五章
罰則(第十四条―第十七条)
附則
第一章 総則
(趣旨)
第一条 この法律は、取引所税について、課税の対象、納税義務者、課税標準、税率、特別徴収による納付の手続及びその納税義務の適正な履行を確保するため必要な事項を定めるものとする。
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 取引所 証券取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第十一項(定義)に規定する証券取引所、商品取引所法(昭和二十五年法律第二百三十九号)第二条第一項(定義)に規定する商品取引所又は金融先物取引法(昭和六十三年法律第七十七号)第二条第五項(定義)に規定する金融先物取引所をいう。
二 市場 証券取引法第二条第十二項に規定する有価証券市場、商品取引所法第二条第三項に規定する商品市場又は金融先物取引法第二条第六項に規定する金融先物市場をいう。
三 有価証券等 証券取引法第二条第一項に規定する有価証券、商品取引所法第二条第二項に規定する商品、金融先物取引法第二条第一項に規定する通貨等その他これらに準ずるものとして政令で定めるものをいう。
四 先物取引 次に掲げる取引(オプション取引に係る権利の行使により行われるものを除く。)をいう。
イ 売買の当事者が取引所の定める基準及び方法に従い、将来の一定の時期において有価証券等及びその対価の授受を約する売買取引であって、当該売買の目的となっている有価証券等の転売又は買戻しをしたときは差金の授受によって決済することができる取引
ロ 取引所の定める基準及び方法に従い、当事者があらかじめ指数等(有価証券等に係る指数、価格又は数値で取引所により定められたものをいう。以下この号において同じ。)として約定する数値(第七条第二項において「約定数値」という。)と将来の一定の時期における現実の当該指数等の数値の差に基づいて算出される金銭の授受を約する取引
五 オプション取引 取引所の定める基準及び方法に従い、当事者の一方の意思表示により当事者間において有価証券等の売買取引又は前号ロに掲げる取引に該当する先物取引(当該先物取引に準ずる取引で取引所により定められたものを含む。)を成立させることができる権利を相手方が当事者の一方に付与し、当事者の一方がこれに対して対価を支払うことを約する取引をいう。
六 先物取引等 先物取引及びオプション取引をいう。
七 取引所の会員 取引所の会員(証券取引法第百七条の二第二項(特別参加者)その他同法、商品取引所法又は金融先物取引法の規定により会員とみなされる者を含む。)であって、証券取引法第百七条(取引資格)若しくは第百七条の二、商品取引所法第七十七条(取引資格)又は金融先物取引法第三十五条(取引資格)の規定によりその取引所の市場において先物取引等を行うことができるものをいう。
(課税の対象)
第三条 先物取引等には、この法律により、取引所税を課する。
(納税義務者)
第四条 取引所の会員は、取引所の市場において行ったその先物取引等につき、この法律により、取引所税を納める義務がある。
(先物取引等とみなす場合)
第五条 取引所の市場における先物取引等の委託を受けた取引所の会員又は先物取引等の委託の媒介、取次ぎ若しくは代理を引き受けた者(以下この項において「委託を受けた取引所の会員等」という。)が、証券取引法第百二十九条第一項(のみ行為の禁止)(同条第二項において準用する場合を含む。)、商品取引所法第九十三条(のみ行為の禁止)又は金融先物取引法第七十三条(のみ行為の禁止)の規定により禁止される売買その他の取引を行ったときは、当該委託を受けた取引所の会員等が、当該取引を行った時に、当該取引所の市場において、当該先物取引等の双方の当事者となって先物取引等を行ったものとみなす。
2 前項の規定により取引所の市場において先物取引等を行ったものとみなされる者が、当該取引所の市場において先物取引等を行うことができる取引所の会員でないときは、その者を当該取引所の会員とみなす。
(納税地)
第六条 取引所税の納税地は、先物取引等が行われた市場を開設する取引所の主たる事務所の所在地とする。
第二章 課税標準及び税率
(課税標準)
第七条 取引所税の課税標準は、次の各号に掲げる先物取引等の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
一 第二条第四号イに掲げる取引に該当する先物取引 当該先物取引に係る売買取引の契約金額
二 第二条第四号ロに掲げる取引に該当する先物取引 当該先物取引に係る取引金額
三 オプション取引 当該オプション取引を行う際に支払うことを約した対価の額
2 前項第二号に規定する取引金額は、同号の先物取引に係る約定数値及び取引単位に基づいて政令で定めるところにより算出した金額とする。
3 第五条第一項の規定により先物取引等を行ったものとみなされる場合における取引所税の課税標準は、委託者(当該先物取引等の委託又は委託の媒介、取次ぎ若しくは代理に係る注文をした顧客をいう。)と同項に規定する委託を受けた取引所の会員等との取引に基づき第一項各号の規定の例により計算した金額とする。
(税率)
第八条 取引所税の税率は、次の各号に掲げる先物取引等の区分に応じ当該各号に定める税率とする。
一 先物取引 万分の〇・一
二 オプション取引 万分の一
第三章 特別徴収による納付等
(特別徴収による納付)
第九条 取引所の会員が取引所の市場において先物取引等を行った場合(第五条第一項の規定により先物取引等を行ったものとみなされる場合を除く。)には、当該取引所は、当該先物取引等が行われた際、当該先物取引等に係る取引所税を当該取引所の会員から徴収し、その徴収の日の属する月の翌月末日までに、これを国に納付しなければならない。
2 取引所が前項の規定により取引所税を納付する場合においては、その月中の取引所の市場において行われた先物取引等を第七条第一項各号に掲げる区分ごとに区分し、その区分ごとに算出したその月中の当該各号に定める金額の合計額を課税標準とし、これにそれぞれの税率を適用して算出した税額の合計額をもってその月分の納付すべき取引所税額とすることができる。
3 第一項の規定により取引所税を徴収して納付する取引所は、その納付の際、国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)第三十四条第一項(納付の手続)に規定する納付書に納付すべき取引所税額その他の大蔵省令で定める事項を記載した計算書を添付しなければならない。
(特別徴収に係る取引所税の徴収等)
第十条 取引所が前条第一項の規定により納付すべき取引所税を納付しなかったときは、税務署長は、その取引所税を当該取引所から徴収する。
2 第五条第一項の規定により取引所の市場において先物取引等を行ったものとみなされる場合における取引所税については、当該取引所の主たる事務所の所在地を所轄する税務署長が、直ちにその取引所税を徴収する。
第四章 雑則
(先物取引等の開廃等の申告)
第十一条 取引所は、その市場において先物取引等を開始しようとするときは、政令で定めるところにより、その旨を当該取引所の主たる事務所の所在地を所轄する税務署長に申告しなければならない。取引所がその市場における先物取引等を廃止し、又は休止しようとする場合も、同様とする。
2 取引所の会員(第五条第二項の規定により取引所の会員とみなされる者を除く。以下この条及び次条において同じ。)は、取引所の市場において先物取引等を行おうとするときは、政令で定めるところにより、その旨を当該取引所の主たる事務所の所在地を所轄する税務署長に申告しなければならない。取引所の会員が取引所の市場における先物取引等を廃止し、又は休止しようとする場合も、同様とする。
3 取引所又は取引所の会員は、前二項の規定により申告した事項に異動を生じた場合には、政令で定めるところにより、その旨を前二項の税務署長に申告しなければならない。
(記帳義務)
第十二条 先物取引等が行われた市場を開設する取引所又は先物取引等を行った取引所の会員は、政令で定めるところにより、当該先物取引等に関する事項を帳簿に記載しなければならない。
2 取引所の会員につき、合併又は相続(包括遺贈を含む。)があったときは、合併後存続する法人若しくは合併により設立された法人又は相続人(包括受遺者を含む。)は、合併により消滅した法人又は被相続人(包括遺贈者を含む。)の前項の規定による記帳の義務を承継する。
(当該職員の質問検査権)
第十三条 国税庁、国税局又は税務署の当該職員(以下「当該職員」という。)は、取引所税に関する調査について必要があるときは、次に掲げる者に質問し、又はその者の業務に関する帳簿書類その他の物件を検査することができる。
一 先物取引等が行われた市場を開設する取引所
二 先物取引等を行った取引所の会員
三 第七条第三項に規定する委託者
2 当該職員は、前項の規定による質問又は検査をする場合には、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があったときは、これを提示しなければならない。
3 第一項の規定による質問又は検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
第五章 罰則
第十四条 第九条第一項の規定により徴収して納付すべき取引所税を納付しなかった場合には、取引所の代表者、代理人、使用人その他の従業者でその違反行為をした者は、三年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 前項の納付しなかった取引所税の額が百万円を超えるときは、情状により、同項の罰金は、百万円を超えその納付しなかった取引所税の額に相当する金額以下とすることができる。
第十五条 次の各号のいずれかに該当する者は、十万円以下の罰金に処する。
一 第十二条第一項の規定による帳簿の記載を怠り、若しくは偽り、又はその帳簿を隠匿した者
二 第十三条第一項の規定による当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
第十六条 取引所税の調査に関する事務に従事している者又は従事していた者が、その事務に関して知ることのできた秘密を漏らし、又は盗用したときは、これを二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
第十七条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して第十四条又は第十五条の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対して当該各条の罰金刑を科する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、平成二年十月一日から施行する。
(一般的経過措置)
第二条 この附則に別段の定めがあるものを除き、改正後の取引所税法(以下「新法」という。)の規定は、この法律の施行の日(以下「施行日」という。)以後に行われる先物取引等に係る取引所税について適用し、施行日前に課した、又は課すべきであった取引税については、なお従前の例による。
(暫定的非課税)
第三条 施行日から平成四年九月三十日までの間に行われる先物取引等のうち、次に掲げるものについては、取引所税を課さない。
一 新法第二条第四号イに掲げる取引に該当する先物取引のうち、本邦通貨又はアメリカ合衆国通貨を当該先物取引に係る売買の目的とするものであって、その対価がそれぞれアメリカ合衆国通貨又は本邦通貨をもって支払われるもの
二 新法第二条第四号ロに掲げる取引に該当する先物取引のうち、当該先物取引に係る指数等(同号ロに規定する指数等をいう。次条において同じ。)が預金契約に基づく債権(アメリカ合衆国通貨をもって支払を受けるものに限る。)の利率に基づいて算出した数値であるもの
(税率の暫定的軽減)
第四条 施行日から平成四年九月三十日までの間に行われる新法第二条第四号ロに掲げる取引に該当する先物取引のうち、当該先物取引に係る指数等が預金契約に基づく債権(本邦通貨をもって支払を受けるものに限る。)の利率に基づいて算出した数値であるものに係る取引所税の税率は、新法第八条第一号の規定にかかわらず、万分の〇・〇一とする。
(先物取引等の開廃等申告に係る経過措置)
第五条 施行日前から引き続いて改正前の取引所税法第五条第一項に規定する売買取引に該当する先物取引等が行われている市場を開設する取引所は、施行日において、新法第十一条第一項前段の規定による申告をしたものとみなす。
2 施行日前から引き続いて先物取引等が行われている市場を開設する取引所(前項の規定の適用を受けるものを除く。)に係る新法第十一条第一項前段の規定による申告については、政令で定めるところにより、その旨を、施行日から起算して一月以内に、当該取引所の主たる事務所の所在地を所轄する税務署長に申告すれば足りるものとする。
3 施行日前から引き続いて第一項の取引所の市場において同項の先物取引等を行っている取引所の会員は、施行日において、新法第十一条第二項前段の規定による申告をしたものとみなす。
4 施行日前から引き続いて取引所の市場において先物取引等を行っている取引所の会員(前項の規定の適用を受けるものを除く。)に係る新法第十一条第二項前段の規定による申告については、政令で定めるところにより、その旨を、施行日から起算して一月以内に、当該取引所の主たる事務所の所在地を所轄する税務署長に申告すれば足りるものとする。
(罰則に係る経過措置)
第六条 この法律の施行前にした行為及び附則第二条の規定によりなお従前の例によることとされる取引税に係るこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
(有価証券取引税法の一部改正)
第七条 有価証券取引税法(昭和二十八年法律第百二号)の一部を次のように改正する。
第三条第一項中「売付」を「売付け」に、「因る」を「よる」に、「買付」を「買付け」に、「因り」を「より」に、「基く」を「基づく」に、「但し」を「ただし」に、「取引所税法(大正三年法律第二十三号)第五条第一項の規定により取引税」を「取引所税法(平成二年法律第二十二号)の規定により取引所税」に改める。
(国税通則法の一部改正)
第八条 国税通則法の一部を次のように改正する。
第二条第二号中「及び有価証券取引税法」を「、有価証券取引税法」に改め、「納付すべき有価証券取引税」の下に「及び取引所税法(平成二年法律第二十二号)第九条(特別徴収による納付)の規定により徴収して納付すべき取引所税」を加える。
第十五条第二項第十一号を次のように改める。
十一 取引所税 先物取引等(取引所税法第二条第六号(定義)に規定する先物取引等をいう。)をした時
大蔵大臣 橋本龍太郎
内閣総理大臣 海部俊樹