朕關東州裁判令ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十一年九月二十二日
內閣總理大臣 侯爵 桂太郞
外務大臣 伯爵 小村壽太郞
勅令第二百十二號
關東州裁判令
第一條 關東州ニ於テハ關東都督府法院及關東都督府民政署長ヲシテ民事刑事ノ裁判ヲ掌ラシム
關東都督ハ必要ト認ムルトキハ民政支署長ヲシテ民政署長ニ屬スル裁判事務ヲ掌ラシムルコトヲ得
第二條 法院ハ關東都督ノ直屬トス
本院ヲ分チテ地方法院及高等法院トス
第三條 關東都督府民政署長ハ左ノ民事刑事ニ付始審ノ裁判ヲ爲ス
一 二百圓ヲ超過セサル金額又ハ價額二百圓ヲ超過セサル物ニ關スル民事事件
二 支那人ノ外ニ關係者ナキ前號以外ノ民事事件
三 拘留又ハ科料ノ刑ニ該ルヘキ罪
四 一年以下ノ懲役若ハ禁錮又ハ二百圓以下ノ罰金ノ刑ニ該ルヘキ行政諸規則違反ノ罪
五 裁判所構成法第十六條ノ一第一項第二號以下ニ揭ケタル支那人ノ罪
前項ノ外民政署長ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ裁判事務ヲ取扱フ
第四條 民政署長又ハ民政支署長事故アルトキハ上席ノ官吏其ノ職務ヲ代理ス
第五條 地方法院ハ第三條以外ノ民事刑事ニ付始審ノ裁判ヲ爲ス
前項ノ外地方法院ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ裁判事務ヲ取扱フ
第六條 高等法院ハ終審トシテ地方法院又ハ民政署長若ハ民政支署長ノ裁判ニ對スル上訴ニ付覆審ヲ爲ス
第七條 各法院ヲ通シテ判官專任六人ヲ置ク
判官ハ奏任トス但シ高等法院長タル判官ハ之ヲ勅任ト爲スコトヲ得
第八條 各法院ニ院長ヲ置ク上級判官ヲ以テ之ニ充ツ
院長ハ院內一般ノ事務ヲ指揮シ其ノ行政事務ヲ監督ス
高等法院ノ院長ハ地方法院ノ行政事務及民政署長ノ司法行政事務ヲ監督ス
院長事故アルトキハ次級判官其ノ職務ヲ代理ス
第九條 地方法院ハ判官單獨ニ審理裁判ス
第十條 高等法院ハ判官三人ノ合議ヲ以テ審理裁判シ上級判官ヲ其ノ裁判長トス
第十一條 各法院ヲ通シテ檢察官專任二人ヲ置ク
檢察官ハ奏任トス司法警察官ヲ指揮監督シ刑事訴追ヲ爲シ其ノ裁判ノ執行ヲ指揮監督ス
高等法院ノ檢察官ハ地方法院ノ檢察官及民政署又ハ民政支署ニ於テ檢察事務ヲ行フ者ヲ指揮監督ス
地方法院ニ於テハ警視又ハ警部ヲシテ檢察官ノ職務ヲ執ラシムルコトヲ得
第十二條 各法院ヲ通シテ通譯官專任一人通譯生專任二人ヲ置ク
通譯官ハ奏任通譯生ハ判任トス通辯翻譯ニ從事ス
第十三條 各法院ヲ通シテ書記專任十一人ヲ置ク
書記ハ判任トス民事刑事ノ審理ニ關スル準備ヲ爲シ調書ヲ作リ及一切ノ訴訟記錄ヲ整理保存ス
書記ハ前項ノ外上官ノ指揮ヲ承ケ法院ニ於ケル諸般ノ事務ニ從事ス
附 則
本令ハ明治四十一年十月一日ヨリ之ヲ施行ス
關東都督府法院令ハ之ヲ廢止ス
朕関東州裁判令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十一年九月二十二日
内閣総理大臣 侯爵 桂太郎
外務大臣 伯爵 小村寿太郎
勅令第二百十二号
関東州裁判令
第一条 関東州ニ於テハ関東都督府法院及関東都督府民政署長ヲシテ民事刑事ノ裁判ヲ掌ラシム
関東都督ハ必要ト認ムルトキハ民政支署長ヲシテ民政署長ニ属スル裁判事務ヲ掌ラシムルコトヲ得
第二条 法院ハ関東都督ノ直属トス
本院ヲ分チテ地方法院及高等法院トス
第三条 関東都督府民政署長ハ左ノ民事刑事ニ付始審ノ裁判ヲ為ス
一 二百円ヲ超過セサル金額又ハ価額二百円ヲ超過セサル物ニ関スル民事事件
二 支那人ノ外ニ関係者ナキ前号以外ノ民事事件
三 拘留又ハ科料ノ刑ニ該ルヘキ罪
四 一年以下ノ懲役若ハ禁錮又ハ二百円以下ノ罰金ノ刑ニ該ルヘキ行政諸規則違反ノ罪
五 裁判所構成法第十六条ノ一第一項第二号以下ニ掲ケタル支那人ノ罪
前項ノ外民政署長ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ裁判事務ヲ取扱フ
第四条 民政署長又ハ民政支署長事故アルトキハ上席ノ官吏其ノ職務ヲ代理ス
第五条 地方法院ハ第三条以外ノ民事刑事ニ付始審ノ裁判ヲ為ス
前項ノ外地方法院ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ裁判事務ヲ取扱フ
第六条 高等法院ハ終審トシテ地方法院又ハ民政署長若ハ民政支署長ノ裁判ニ対スル上訴ニ付覆審ヲ為ス
第七条 各法院ヲ通シテ判官専任六人ヲ置ク
判官ハ奏任トス但シ高等法院長タル判官ハ之ヲ勅任ト為スコトヲ得
第八条 各法院ニ院長ヲ置ク上級判官ヲ以テ之ニ充ツ
院長ハ院内一般ノ事務ヲ指揮シ其ノ行政事務ヲ監督ス
高等法院ノ院長ハ地方法院ノ行政事務及民政署長ノ司法行政事務ヲ監督ス
院長事故アルトキハ次級判官其ノ職務ヲ代理ス
第九条 地方法院ハ判官単独ニ審理裁判ス
第十条 高等法院ハ判官三人ノ合議ヲ以テ審理裁判シ上級判官ヲ其ノ裁判長トス
第十一条 各法院ヲ通シテ検察官専任二人ヲ置ク
検察官ハ奏任トス司法警察官ヲ指揮監督シ刑事訴追ヲ為シ其ノ裁判ノ執行ヲ指揮監督ス
高等法院ノ検察官ハ地方法院ノ検察官及民政署又ハ民政支署ニ於テ検察事務ヲ行フ者ヲ指揮監督ス
地方法院ニ於テハ警視又ハ警部ヲシテ検察官ノ職務ヲ執ラシムルコトヲ得
第十二条 各法院ヲ通シテ通訳官専任一人通訳生専任二人ヲ置ク
通訳官ハ奏任通訳生ハ判任トス通弁翻訳ニ従事ス
第十三条 各法院ヲ通シテ書記専任十一人ヲ置ク
書記ハ判任トス民事刑事ノ審理ニ関スル準備ヲ為シ調書ヲ作リ及一切ノ訴訟記録ヲ整理保存ス
書記ハ前項ノ外上官ノ指揮ヲ承ケ法院ニ於ケル諸般ノ事務ニ従事ス
附 則
本令ハ明治四十一年十月一日ヨリ之ヲ施行ス
関東都督府法院令ハ之ヲ廃止ス