公害紛争処理法をここに公布する。
御名御璽
昭和四十五年六月一日
内閣総理大臣 佐藤栄作
法律第百八号
公害紛争処理法
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
公害に係る紛争の処理機構
第一節
中央公害審査委員会(第三条―第十二条)
第二節
都道府県公害審査会等(第十三条―第二十三条)
第三節
管轄(第二十四条・第二十五条)
第三章
公害に係る紛争の処理
第一節
総則(第二十六条・第二十七条)
第二節
和解の仲介(第二十八条―第三十条)
第三節
調停(第三十一条―第三十八条)
第四節
仲裁(第三十九条―第四十二条)
第五節
補則(第四十三条―第四十七条)
第四章
雑則(第四十八条―第五十条)
第五章
罰則(第五十一条・第五十二条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、公害に係る紛争について、和解の仲介、調停及び仲裁の制度を設けること等により、その迅速かつ適正な解決を図ることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「公害」とは、公害対策基本法(昭和四十二年法律第百三十二号)第二条第一項に規定する公害をいう。
第二章 公害に係る紛争の処理機構
第一節 中央公害審査委員会
(設置)
第三条 内閣総理大臣の所轄の下に、中央公害審査委員会(以下「中央委員会」という。)を置く。
(所掌事務)
第四条 中央委員会の所掌事務は、次のとおりとする。
一 この法律の定めるところにより、公害に係る紛争について、調停及び仲裁を行なうこと。
二 前号に掲げるもののほか、この法律の定めるところにより、中央委員会の権限に属させられた事項を行なうこと。
(組織)
第五条 中央委員会は、委員長及び委員五人をもつて組織とする。
2 委員のうち三人は、非常勤とする。
3 委員長は、会務を総理し、中央委員会を代表する。
4 委員長に事故があるときは、あらかじめその指名する常勤の委員が、その職務を代理する。
(委員長及び委員)
第六条 委員長及び委員は、人格が高潔で識見の高い者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。
2 委員長又は委員につき任期が満了し、又は欠員を生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、内閣総理大臣は、前項の規定にかかわらず、同項に定める資格を有する者のうちから、委員長又は委員を任命することができる。
3 前項の場合においては、任命後最初の国会において両議院の事後の承認を得なければならない。この場合において、両議院の事後の承認が得られないときは、内閣総理大臣は、直ちに、その委員長又は委員を罷免しなければならない。
4 次の各号の一に該当する者は、委員長又は委員となることができない。
一 禁治産者若しくは準禁治産者又は破産者で復権を得ないもの
二 禁錮以上の刑に処せられた者
5 委員長及び委員の任期は、三年とする。ただし、補欠の委員長又は委員の任期は、前任者の残任期間とする。
6 委員長及び委員は、再任されることができる。
7 委員長又は委員は、第四項各号の一に該当するに至つた場合においては、その職を失うものとする。
8 内閣総理大臣は、委員長若しくは委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認めるとき、又は委員長若しくは委員に職務上の義務違反その他委員長若しくは委員たるに適しない行為があると認めるときは、両議院の同意を得て、これらを罷免することができる。
(職権の行使)
第七条 委員長及び委員は、独立してその職権を行なう。
(会議)
第八条 中央委員会は、委員長が招集する。
2 中央委員会は、委員長及び過半数の委員の出席がなければ、会議を開き、議決をすることができない。
3 中央委員会の議事は、出席者の過半数でこれを決し、可否同数のときは、委員長の決するところによる。
4 委員長に事故がある場合の第二項の規定の適用については、第五条第四項に規定する常勤の委員は、委員長とみなす。
(委員長及び委員の服務等)
第九条 委員長及び委員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。
2 委員長及び委員は、在任中、政党その他の政治的団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない。
3 委員長及び常勤の委員は、在任中、内閣総理大臣の許可のある場合を除くほか、報酬を得て他の職務に従事し、又は営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行なつてはならない。
4 委員長及び委員の給与は、別に法律で定める。
(専門調査員)
第十条 中央委員会に、専門の事項を調査させるため、専門調査員三十人以内を置くことができる。
2 専門調査員は、非常勤とする。
3 前条第一項の規定は、専門調査員について準用する。
(事務局)
第十一条 中央委員会の事務を処理させるため、中央委員会に事務局を置く。
2 事務局に、事務局長その他の職員を置く。
3 事務局長は、委員長の命を受けて、局務を掌理する。
(政令への委任)
第十二条 この法律に定めるもののほか、中央委員会に関し必要な事項は、政令で定める。
第二節 都道府県公害審査会等
(審査会の設置)
第十三条 都道府県は、条例で定めるところにより、都道府県公害審査会(以下「審査会」という。)を置くことができる。
(審査会の所掌事務)
第十四条 審査会の所掌事務は、次のとおりとする。
一 この法律の定めるところにより、公害に係る紛争について、和解の仲介、調停及び仲裁を行なうこと。
二 前号に掲げるもののほか、この法律の定めるところにより、審査会の権限に属させられた事項を行なうこと。
(審査会の組織)
第十五条 審査会は、委員九人以上十五人以内をもつて組織する。
2 審査会に会長を置き、委員の互選によつてこれを定める。
3 会長は、会務を総理し、審査会を代表する。
4 会長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理する。
(審査会の委員)
第十六条 委員は、人格が高潔で識見の高い者のうちから、都道府県知事が、議会の同意を得て、任命する。
(審査会に係る準用規定)
第十七条 第六条第四項、第五項本文及び第六項から第八項まで並びに第九条第一項及び第二項の規定は審査会の委員について、第八条の規定は審査会の会議について準用する。この場合において、第六条第八項中「内閣総理大臣」とあるのは「都道府県知事」と、「両議院の同意を得て、これらを」とあるのは「議会の同意を得て、これを」と、第八条第一項から第三項までの規定中「委員長」とあるのは「会長」と、同条第四項中「委員長」とあるのは「会長」と、「第五条第四項に規定する常勤の委員」とあるのは「第十五条第四項に規定する委員」と読み替えるものとする。
(公害審査委員候補者)
第十八条 審査会を置かない都道府県においては、都道府県知事は、毎年、公害審査委員候補者九人以上十五人以内を委嘱し、公害審査委員候補者名簿(以下「候補者名簿」という。)を作成しておかなければならない。
2 公害審査委員候補者は、人格が高潔で識見の高い者のうちから、委嘱されなければならない。
(公害審査委員候補者に係る準用規定)
第十九条 第六条第四項及び第七項の規定は、公害審査委員候補者について準用する。この場合において、同条第七項中「その職」とあるのは、「その地位」と読み替えるものとする。
(連合審査会の設置)
第二十条 都道府県は、他の都道府県と共同して、事件ごとに、都道府県連合公害審査会(以下「連合審査会」という。)を置くことができる。
(連合審査会の所掌事務)
第二十一条 連合審査会は、この法律の定めるところにより、公害に係る紛争について、和解の仲介及び調停を行なう。
(連合審査会の組織)
第二十二条 連合審査会は、関係都道府県の審査会の委員(審査会を置かない都道府県にあつては、候補者名簿に記載されている者)のうちから、当該関係都道府県の審査会の会長(審査会を置かない都道府県にあつては、都道府県知事)が指名する同数の委員をもつて組織する。
(連合審査会の委員に係る準用規定)
第二十三条 第六条第八項並びに第九条第一項及び第二項の規定は、候補者名簿に記載されている者のうちからの指名に係る連合審査会の委員について準用する。この場合において、第六条第八項中「内閣総理大臣」とあるのは「都道府県知事」と、「両議院の同意を得て、これらを」とあるのは「これを」と読み替えるものとする。
第三節 管轄
(管轄)
第二十四条 中央委員会は、次の各号に掲げる紛争に関する調停及び仲裁について管轄する。
一 現に人の健康又は生活環境(公害対策基本法第二条第二項に規定する生活環境をいう。)に公害に係る著しい被害が生じ、かつ、当該被害が相当多数の者に及び、又は及ぶおそれのある場合における当該公害に係る紛争であつて政令で定めるもの
二 前号に掲げるもののほか、二以上の都道府県にわたる広域的な見地から解決する必要がある公害に係る紛争であつて政令で定めるもの
三 前二号に掲げるもののほか、事業活動その他の人の活動の行なわれた場所及び当該活動に伴う公害に係る被害の生じた場所が異なる都道府県の区域内にある場合又はこれらの場所の一方若しくは双方が二以上の都道府県の区域内にある場合における当該公害に係る紛争
2 審査会(審査会を置かない都道府県にあつては、都道府県知事とし、以下「審査会等」という。)は、前項各号に掲げる紛争以外の紛争に関する和解の仲介、調停及び仲裁について管轄する。
3 前二項の規定にかかわらず、仲裁については、当事者は、双方の合意によつてその管轄を定めることができる。
(移送)
第二十五条 中央委員会又は審査会等は、次条第一項の申請に係る事件が、その管轄に属しないときは、事件を管轄審査会等又は中央委員会に移送するものとする。
第三章 公害に係る紛争の処理
第一節 総則
(申請)
第二十六条 公害に係る被害について、損害賠償に関する紛争その他の民事上の紛争が生じた場合においては、当事者の一方又は双方は、政令で定めるところにより、書面をもつて、審査会等に対し和解の仲介の申請を、中央委員会又は審査会等に対し調停又は仲裁の申請をすることができる。この場合において、審査会に対する申請は、都道府県知事を経由してしなければならない。
2 当事者の一方からする仲裁の申請は、この法律の規定による仲裁に付する旨の合意に基づくものでなければならない。
(第二十四条第一項第三号に掲げる紛争に関する特例)
第二十七条 第二十四条第一項第三号に掲げる紛争に関する和解の仲介及び調停の申請は、関係都道府県のいずれか一の知事に対してしなければならない。
2 審査会等は、前条第一項の和解の仲介又は調停の申請に係る紛争が第二十四条第一項第三号に掲げる紛争に該当するときは、その旨を都道府県知事に通知しなければならない。
3 第一項の申請があつたとき、又は前項の規定による通知があつたときは、当該都道府県知事は、当該申請又は通知に係る紛争を処理するため連合審査会を置くことについて、関係都道府県知事と協議しなければならない。
4 第一項の申請又は第二項の規定による通知に係る紛争を処理するため連合審査会が置かれたときは、当該連合審査会は、当該紛争に関する和解の仲介又は調停について管轄するものとする。この場合においては、中央委員会は、当該紛争については管轄しない。
5 第三項の規定による協議がととのわない場合において、当該紛争に係る事件が調停の申請に係るものであるときは、都道府県知事は、遅滞なく、当該事件の関係書類を、中央委員会に送付するものとする。
第二節 和解の仲介
(仲介委員の指名等)
第二十八条 審査会等による和解の仲介は、三人の仲介委員が行なう。
2 前項の仲介委員は、審査会の委員(審査会を置かない都道府県にあつては、候補者名簿に記載されている者とし、以下「審査会の委員等」という。)のうちから、事件ごとに、審査会の会長(審査会を置かない都道府県にあつては、都道府県知事とし、以下「審査会の会長等」という。)が指名する。
3 連合審査会による和解の仲介は、連合審査会の委員の全員が仲介委員となつて行なう。
4 第六条第八項並びに第九条第一項及び第二項の規定は、候補者名簿に記載されている者のうちからの指名に係る仲介委員について準用する。この場合において、第六条第八項中「内閣総理大臣」とあるのは「都道府県知事」と、「両議院の同意を得て、これらを」とあるのは「これを」と読み替えるものとする。
(仲介委員の任務)
第二十九条 仲介委員は、当事者双方の主張の要点を確かめ、事件が公正に解決されるように努めなければならない。
(和解の仲介の打切り)
第三十条 仲介委員は、申請に係る紛争について、和解の仲介によつては紛争の解決の見込みがないと認めるときは、和解の仲介を打ち切ることができる。
第三節 調停
(調停委員の指名等)
第三十一条 中央委員会又は審査会等による調停は、三人の調停委員からなる調停委員会を設けて行なう。
2 前項の調停委員は、中央委員会の委員長及び委員又は審査会の委員等のうちから、事件ごとに、それぞれ、中央委員会の委員長又は審査会の会長等が指名する。
3 連合審査会による調停は、連合審査会の委員の全員を調停委員とする調停委員会を設けて行なう。
4 第六条第八項並びに第九条第一項及び第二項の規定は、候補者名簿に記載されている者のうちからの指名に係る調停委員について準用する。この場合において、第六条第八項中「内閣総理大臣」とあるのは「都道府県知事」と、「両議院の同意を得て、これらを」とあるのは「これを」と読み替えるものとする。
(出頭の要求)
第三十二条 調停委員会は、調停のため必要があると認めるときは、当事者の出頭を求め、その意見をきくことができる。
(文書の提出等)
第三十三条 中央委員会に設けられる調停委員会は、第二十四条第一項第一号に掲げる紛争に関する調停を行なう場合において、必要があると認めるときは、当事者から当該調停に係る事件に関係のある文書又は物件の提出を求めることができる。
2 前項の調停委員会は、第二十四条第一項第一号に掲げる紛争に関する調停を行なう場合において、紛争の原因たる事実関係を明確にするため、必要があると認めるときは、当事者の占有する工場、事業場その他事件に関係のある場所に立ち入つて、事件に関係のある文書又は物件を検査することができる。
3 第一項の調停委員会は、前項の規定による立入検査をする場合においては、調停委員の一人をしてこれを行なわせることができる。
4 第一項の調停委員会は、第二項の規定による立入検査について、専門調査員をして補助させることができる。
(調停案の作成)
第三十四条 調停委員会は、調停案を作成し、当事者に対し、その受諾を勧告することができる。
2 前項の調停案は、調停委員の過半数の意見で作成しなければならない。
(調停をしない場合)
第三十五条 調停委員会は、申請に係る紛争がその性質上調停をするのに適当でないと認めるとき、又は当事者が不当な目的でみだりに調停の申請をしたと認めるときは、調停をしないものとすることができる。
(調停の打切り)
第三十六条 調停委員会は、申請に係る紛争について当事者間に合意が成立する見込みがないと認めるときは、調停を打ち切ることができる。
(手続の非公開)
第三十七条 調停委員会の行なう調停の手続は、公開しない。
(事件の引継ぎ)
第三十八条 審査会等又は連合審査会は、その調停に係る事件について、相当と認める理由があるときは、調停委員会の申立てに基づき、当該調停の申請をした者の同意を得、かつ、中央委員会と協議したうえ、これを中央委員会に引き継ぐことができる。
2 中央委員会は、前項の規定により審査会等から引き継いだ事件については、第二十四条第一項の規定にかかわらず、調停を行なうことができる。
第四節 仲裁
(仲裁委員の指名等)
第三十九条 中央委員会又は審査会等による仲裁は、三人の仲裁委員からなる仲裁委員会を設けて行なう。
2 前項の仲裁委員は、中央委員会の委員長及び委員又は審査会の委員等のうちから、当事者が合意によつて選定した者につき、事件ごとに、それぞれ、中央委員会の委員長又は審査会の会長等が指名する。ただし、当事者の合意による選定がなされなかつたときは、中央委員会の委員長及び委員又は審査会の委員等のうちから、事件ごとに、それぞれ、中央委員会の委員長又は審査会の会長等が指名する。
3 第一項の仲裁委員のうち少なくとも一人は、弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第二章の規定により、弁護士となる資格を有する者でなければならない。
4 第六条第八項並びに第九条第一項及び第二項の規定は、候補者名簿に記載されている者のうちからの指名に係る仲裁委員について準用する。この場合において、第六条第八項中「内閣総理大臣」とあるのは「都道府県知事」と、「両議院の同意を得て、これらを」とあるのは「これを」と読み替えるものとする。
(文書の提出等)
第四十条 仲裁委員会は、仲裁を行なう場合において、必要があると認めるときは、当事者から当該仲裁に係る事件に関係のある文書又は物件の提出を求めることができる。
2 仲裁委員会は、仲裁を行なう場合において、紛争の原因たる事実関係を明確にするため、必要があると認めるときは、当事者の占有する工場、事業場その他事件に関係のある場所に立ち入つて、事件に関係のある文書又は物件を検査することができる。
3 仲裁委員会は、前項の規定による立入検査をする場合においては、仲裁委員の一人をしてこれを行なわせることができる。
4 中央委員会に設けられる仲裁委員会は、第二項の規定による立入検査について、専門調査員をして補助させることができる。
(民事訴訟法の準用)
第四十一条 仲裁委員会の行なう仲裁については、この法律に別段の定めがある場合を除き、仲裁委員を仲裁人とみなして、民事訴訟法(明治二十三年法律第二十九号)第八編(仲裁手続)の規定を準用する。
(準用規定)
第四十二条 第三十七条の規定は、仲裁委員会の行なう仲裁の手続について準用する。
第五節 補則
(資料提出の要求等)
第四十三条 中央委員会は公害に係る紛争に関する調停又は仲裁を行なうため、審査会等は公害に係る紛争に関する和解の仲介、調停又は仲裁を行なうため、連合審査会は公害に係る紛争に関する和解の仲介又は調停を行なうため、それぞれ、必要があると認めるときは、関係行政機関の長又は関係地方公共団体の長に対し、公害発生の原因の調査に関する資料その他の資料の提出、意見の開陳、技術的知識の提供その他必要な協力を求めることができる。
(紛争処理の手続に要する費用)
第四十四条 中央委員会において行なう調停又は仲裁の手続に要する費用は、政令で定めるものを除き、各当事者が負担する。
2 審査会等において行なう和解の仲介、調停又は仲裁の手続に要する費用は、条例で定めるものを除き、各当事者が負担する。
3 連合審査会において行なう和解の仲介又は調停の手続に要する費用は、関係都道府県が協議によつて定める規約で定めるものを除き、各当事者が負担する。
(申請手数料)
第四十五条 中央委員会に対し調停又は仲裁の申請をする者は、政令で定めるところにより、申請手数料を納めなければならない。この場合においては、当該申請手数料は、国の収入とする。
2 審査会又は都道府県知事に対し調停又は仲裁の申請をする者は、条例で定めるところにより、申請手数料を納めなければならない。この場合においては、当該申請手数料は、当該都道府県の収入とする。
(都道府県知事に対する報告)
第四十六条 候補者名簿からの指名に係る仲介委員、候補者名簿からの指名に係る調停委員からなる調停委員会又は候補者名簿からの指名に係る仲裁委員からなる仲裁委員会は、その行なう和解の仲介、調停又は仲裁の事件が終了したときは、都道府県知事に対し、すみやかに、その概要を報告しなければならない。
(政令への委任)
第四十七条 この章に規定するもののほか、紛争の処理の手続その他紛争の処理に関し必要な事項は、政令で定める。
第四章 雑則
(意見の申出)
第四十八条 中央委員会は内閣総理大臣又は関係行政機関の長に対し、審査会は当該都道府県知事に対し、その所掌事務の遂行を通じて得られた公害の防止に関する施策の改善についての意見を述べることができる。
(苦情の処理)
第四十九条 地方公共団体は、関係行政機関と協力して公害に関する苦情の適切な処理に努めるものとする。
2 都道府県及び政令で定める市は、公害苦情相談員を置かなければならない。
3 前項の市以外の市及び町村は、公害苦情相談員を置くことができる。
4 公害苦情相談員は、公害に関する苦情について、住民の相談に応じ、その処理のために必要な調査その他の事務を行なうものとする。
(防衛施設)
第五十条 防衛施設周辺の整備等に関する法律(昭和四十一年法律第百三十五号)第二条第二項に規定する防衛施設に係る公害対策基本法第二十一条第一項に規定する事項に関しては、別に法律で定めるところによる。
第五章 罰則
第五十一条 第九条第一項(第十条第三項、第十七条、第二十三条、第二十八条第四項、第三十一条第四項及び第三十九条第四項において準用する場合を含む。)の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
第五十二条 次の各号に掲げる違反があつた場合においては、その行為をした当事者を一万円以下の過料に処する。
一 正当な理由がなくて第三十二条の規定による出頭の要求に応じなかつたとき。
二 正当な理由がなくて第三十三条第一項又は第四十条第一項の規定による文書又は物件の提出の要求に応じなかつたとき。
三 正当な理由がなくて第三十三条第二項又は第四十条第二項の規定による立入検査を拒み、妨げ、又は忌避したとき。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して六月をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第六条第一項中両議院の同意を得ることに係る部分は、公布の日から施行する。
(中央委員会の最初の委員長及び委員の任命)
2 この法律の施行後最初に任命される中央委員会の委員長及び委員の任命について、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、第六条第二項及び第三項の規定を準用する。
(他の法律の一部改正)
3 総理府設置法(昭和二十四年法律第百二十七号)の一部を次のように改正する。
目次中「第十六条の四」を「第十六条の五」に改める。
第二章第三節中第十六条の四を第十六条の五とし、第十六条の三を第十六条の四とし、第十六条の二の次に次の一条を加える。
(中央公害審査委員会)
第十六条の三 総理府の機関として、中央公害審査委員会を置く。
2 中央公害審査委員会は、公害に係る紛争の迅速かつ適正な解決を図るための機関とする。
3 中央公害審査委員会の組織及び所掌事務については、公害紛争処理法(昭和四十五年法律第百八号)の定めるところによる。
4 公共用水域の水質の保全に関する法律(昭和三十三年法律第百八十一号)の一部を次のように改正する。
目次中「第四章 和解の仲介(第二十一条―第二十五条)」を削る。
第一条中「水質の保全を図り、あわせて水質の汚濁に関する紛争の解決に資するため」を「水質の保全を図るため」に改める。
第三条第二項中「第二条に規定する水洗炭業をいう。以下同じ。」を「第二条に規定する水洗炭業をいう。」に改める。
第四章を削る。
5 大気汚染防止法(昭和四十三年法律第九十七号)の一部を次のように改正する。
目次中「第四章 和解の仲介(第二十二条―第二十五条)」を「第四章 削除」に改める。
第一条第一項中「とともに、大気の汚染に関する紛争について和解の仲介の制度を設けることにより、その解決に資する」を削る。
第四章を次のように改める。
第四章 削除
第二十二条から第二十五条まで 削除
6 騒音規制法(昭和四十三年法律第九十八号)の一部を次のように改正する。
目次中「第四章 和解の仲介(第十六条―第十九条)」を「第四章 削除」に改める。
第一条中「とともに、騒音に関する紛争について和解の仲介の制度を設けることにより、その解決に資する」を削る。
第四章を次のように改める。
第四章 削除
第十六条から第十九条まで 削除
7 この法律の施行前に、公共用水域の水質の保全に関する法律第二十一条、大気汚染防止法第二十二条又は騒音規制法第十六条の規定によつて申立てのあつた和解の仲介については、この法律の施行後も、なお従前の例による。
8 特別職の職員の給与に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十二号)の一部を次のように改正する。
第一条第十三号の五の次に次の一号を加える。
十三の六 中央公害審査委員会の委員長及び常勤の委員
第一条第十九号の五の次に次の一号を加える。
十九の六 中央公害審査委員会の非常勤の委員
別表第一官職名の欄中「地方財政審議会会長」を
地方財政審議会会長
中央公害審査委員会委員長
に、「土地鑑定委員会の常勤の委員」を
土地鑑定委員会の常勤の委員
中央公害審査委員会の常勤の委員
に改める。
内閣総理大臣 佐藤栄作
法務大臣 小林武治
大蔵大臣 福田赳夫
厚生大臣 内田常雄
農林大臣 倉石忠雄
通商産業大臣 宮澤喜一
運輸大臣 橋本登美三郎
労働大臣 野原正勝
建設大臣 根本龍太郎
自治大臣 秋田大助
公害紛争処理法をここに公布する。
御名御璽
昭和四十五年六月一日
内閣総理大臣 佐藤栄作
法律第百八号
公害紛争処理法
目次
第一章
総則(第一条・第二条)
第二章
公害に係る紛争の処理機構
第一節
中央公害審査委員会(第三条―第十二条)
第二節
都道府県公害審査会等(第十三条―第二十三条)
第三節
管轄(第二十四条・第二十五条)
第三章
公害に係る紛争の処理
第一節
総則(第二十六条・第二十七条)
第二節
和解の仲介(第二十八条―第三十条)
第三節
調停(第三十一条―第三十八条)
第四節
仲裁(第三十九条―第四十二条)
第五節
補則(第四十三条―第四十七条)
第四章
雑則(第四十八条―第五十条)
第五章
罰則(第五十一条・第五十二条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、公害に係る紛争について、和解の仲介、調停及び仲裁の制度を設けること等により、その迅速かつ適正な解決を図ることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「公害」とは、公害対策基本法(昭和四十二年法律第百三十二号)第二条第一項に規定する公害をいう。
第二章 公害に係る紛争の処理機構
第一節 中央公害審査委員会
(設置)
第三条 内閣総理大臣の所轄の下に、中央公害審査委員会(以下「中央委員会」という。)を置く。
(所掌事務)
第四条 中央委員会の所掌事務は、次のとおりとする。
一 この法律の定めるところにより、公害に係る紛争について、調停及び仲裁を行なうこと。
二 前号に掲げるもののほか、この法律の定めるところにより、中央委員会の権限に属させられた事項を行なうこと。
(組織)
第五条 中央委員会は、委員長及び委員五人をもつて組織とする。
2 委員のうち三人は、非常勤とする。
3 委員長は、会務を総理し、中央委員会を代表する。
4 委員長に事故があるときは、あらかじめその指名する常勤の委員が、その職務を代理する。
(委員長及び委員)
第六条 委員長及び委員は、人格が高潔で識見の高い者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。
2 委員長又は委員につき任期が満了し、又は欠員を生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、内閣総理大臣は、前項の規定にかかわらず、同項に定める資格を有する者のうちから、委員長又は委員を任命することができる。
3 前項の場合においては、任命後最初の国会において両議院の事後の承認を得なければならない。この場合において、両議院の事後の承認が得られないときは、内閣総理大臣は、直ちに、その委員長又は委員を罷免しなければならない。
4 次の各号の一に該当する者は、委員長又は委員となることができない。
一 禁治産者若しくは準禁治産者又は破産者で復権を得ないもの
二 禁錮以上の刑に処せられた者
5 委員長及び委員の任期は、三年とする。ただし、補欠の委員長又は委員の任期は、前任者の残任期間とする。
6 委員長及び委員は、再任されることができる。
7 委員長又は委員は、第四項各号の一に該当するに至つた場合においては、その職を失うものとする。
8 内閣総理大臣は、委員長若しくは委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認めるとき、又は委員長若しくは委員に職務上の義務違反その他委員長若しくは委員たるに適しない行為があると認めるときは、両議院の同意を得て、これらを罷免することができる。
(職権の行使)
第七条 委員長及び委員は、独立してその職権を行なう。
(会議)
第八条 中央委員会は、委員長が招集する。
2 中央委員会は、委員長及び過半数の委員の出席がなければ、会議を開き、議決をすることができない。
3 中央委員会の議事は、出席者の過半数でこれを決し、可否同数のときは、委員長の決するところによる。
4 委員長に事故がある場合の第二項の規定の適用については、第五条第四項に規定する常勤の委員は、委員長とみなす。
(委員長及び委員の服務等)
第九条 委員長及び委員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。
2 委員長及び委員は、在任中、政党その他の政治的団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない。
3 委員長及び常勤の委員は、在任中、内閣総理大臣の許可のある場合を除くほか、報酬を得て他の職務に従事し、又は営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行なつてはならない。
4 委員長及び委員の給与は、別に法律で定める。
(専門調査員)
第十条 中央委員会に、専門の事項を調査させるため、専門調査員三十人以内を置くことができる。
2 専門調査員は、非常勤とする。
3 前条第一項の規定は、専門調査員について準用する。
(事務局)
第十一条 中央委員会の事務を処理させるため、中央委員会に事務局を置く。
2 事務局に、事務局長その他の職員を置く。
3 事務局長は、委員長の命を受けて、局務を掌理する。
(政令への委任)
第十二条 この法律に定めるもののほか、中央委員会に関し必要な事項は、政令で定める。
第二節 都道府県公害審査会等
(審査会の設置)
第十三条 都道府県は、条例で定めるところにより、都道府県公害審査会(以下「審査会」という。)を置くことができる。
(審査会の所掌事務)
第十四条 審査会の所掌事務は、次のとおりとする。
一 この法律の定めるところにより、公害に係る紛争について、和解の仲介、調停及び仲裁を行なうこと。
二 前号に掲げるもののほか、この法律の定めるところにより、審査会の権限に属させられた事項を行なうこと。
(審査会の組織)
第十五条 審査会は、委員九人以上十五人以内をもつて組織する。
2 審査会に会長を置き、委員の互選によつてこれを定める。
3 会長は、会務を総理し、審査会を代表する。
4 会長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理する。
(審査会の委員)
第十六条 委員は、人格が高潔で識見の高い者のうちから、都道府県知事が、議会の同意を得て、任命する。
(審査会に係る準用規定)
第十七条 第六条第四項、第五項本文及び第六項から第八項まで並びに第九条第一項及び第二項の規定は審査会の委員について、第八条の規定は審査会の会議について準用する。この場合において、第六条第八項中「内閣総理大臣」とあるのは「都道府県知事」と、「両議院の同意を得て、これらを」とあるのは「議会の同意を得て、これを」と、第八条第一項から第三項までの規定中「委員長」とあるのは「会長」と、同条第四項中「委員長」とあるのは「会長」と、「第五条第四項に規定する常勤の委員」とあるのは「第十五条第四項に規定する委員」と読み替えるものとする。
(公害審査委員候補者)
第十八条 審査会を置かない都道府県においては、都道府県知事は、毎年、公害審査委員候補者九人以上十五人以内を委嘱し、公害審査委員候補者名簿(以下「候補者名簿」という。)を作成しておかなければならない。
2 公害審査委員候補者は、人格が高潔で識見の高い者のうちから、委嘱されなければならない。
(公害審査委員候補者に係る準用規定)
第十九条 第六条第四項及び第七項の規定は、公害審査委員候補者について準用する。この場合において、同条第七項中「その職」とあるのは、「その地位」と読み替えるものとする。
(連合審査会の設置)
第二十条 都道府県は、他の都道府県と共同して、事件ごとに、都道府県連合公害審査会(以下「連合審査会」という。)を置くことができる。
(連合審査会の所掌事務)
第二十一条 連合審査会は、この法律の定めるところにより、公害に係る紛争について、和解の仲介及び調停を行なう。
(連合審査会の組織)
第二十二条 連合審査会は、関係都道府県の審査会の委員(審査会を置かない都道府県にあつては、候補者名簿に記載されている者)のうちから、当該関係都道府県の審査会の会長(審査会を置かない都道府県にあつては、都道府県知事)が指名する同数の委員をもつて組織する。
(連合審査会の委員に係る準用規定)
第二十三条 第六条第八項並びに第九条第一項及び第二項の規定は、候補者名簿に記載されている者のうちからの指名に係る連合審査会の委員について準用する。この場合において、第六条第八項中「内閣総理大臣」とあるのは「都道府県知事」と、「両議院の同意を得て、これらを」とあるのは「これを」と読み替えるものとする。
第三節 管轄
(管轄)
第二十四条 中央委員会は、次の各号に掲げる紛争に関する調停及び仲裁について管轄する。
一 現に人の健康又は生活環境(公害対策基本法第二条第二項に規定する生活環境をいう。)に公害に係る著しい被害が生じ、かつ、当該被害が相当多数の者に及び、又は及ぶおそれのある場合における当該公害に係る紛争であつて政令で定めるもの
二 前号に掲げるもののほか、二以上の都道府県にわたる広域的な見地から解決する必要がある公害に係る紛争であつて政令で定めるもの
三 前二号に掲げるもののほか、事業活動その他の人の活動の行なわれた場所及び当該活動に伴う公害に係る被害の生じた場所が異なる都道府県の区域内にある場合又はこれらの場所の一方若しくは双方が二以上の都道府県の区域内にある場合における当該公害に係る紛争
2 審査会(審査会を置かない都道府県にあつては、都道府県知事とし、以下「審査会等」という。)は、前項各号に掲げる紛争以外の紛争に関する和解の仲介、調停及び仲裁について管轄する。
3 前二項の規定にかかわらず、仲裁については、当事者は、双方の合意によつてその管轄を定めることができる。
(移送)
第二十五条 中央委員会又は審査会等は、次条第一項の申請に係る事件が、その管轄に属しないときは、事件を管轄審査会等又は中央委員会に移送するものとする。
第三章 公害に係る紛争の処理
第一節 総則
(申請)
第二十六条 公害に係る被害について、損害賠償に関する紛争その他の民事上の紛争が生じた場合においては、当事者の一方又は双方は、政令で定めるところにより、書面をもつて、審査会等に対し和解の仲介の申請を、中央委員会又は審査会等に対し調停又は仲裁の申請をすることができる。この場合において、審査会に対する申請は、都道府県知事を経由してしなければならない。
2 当事者の一方からする仲裁の申請は、この法律の規定による仲裁に付する旨の合意に基づくものでなければならない。
(第二十四条第一項第三号に掲げる紛争に関する特例)
第二十七条 第二十四条第一項第三号に掲げる紛争に関する和解の仲介及び調停の申請は、関係都道府県のいずれか一の知事に対してしなければならない。
2 審査会等は、前条第一項の和解の仲介又は調停の申請に係る紛争が第二十四条第一項第三号に掲げる紛争に該当するときは、その旨を都道府県知事に通知しなければならない。
3 第一項の申請があつたとき、又は前項の規定による通知があつたときは、当該都道府県知事は、当該申請又は通知に係る紛争を処理するため連合審査会を置くことについて、関係都道府県知事と協議しなければならない。
4 第一項の申請又は第二項の規定による通知に係る紛争を処理するため連合審査会が置かれたときは、当該連合審査会は、当該紛争に関する和解の仲介又は調停について管轄するものとする。この場合においては、中央委員会は、当該紛争については管轄しない。
5 第三項の規定による協議がととのわない場合において、当該紛争に係る事件が調停の申請に係るものであるときは、都道府県知事は、遅滞なく、当該事件の関係書類を、中央委員会に送付するものとする。
第二節 和解の仲介
(仲介委員の指名等)
第二十八条 審査会等による和解の仲介は、三人の仲介委員が行なう。
2 前項の仲介委員は、審査会の委員(審査会を置かない都道府県にあつては、候補者名簿に記載されている者とし、以下「審査会の委員等」という。)のうちから、事件ごとに、審査会の会長(審査会を置かない都道府県にあつては、都道府県知事とし、以下「審査会の会長等」という。)が指名する。
3 連合審査会による和解の仲介は、連合審査会の委員の全員が仲介委員となつて行なう。
4 第六条第八項並びに第九条第一項及び第二項の規定は、候補者名簿に記載されている者のうちからの指名に係る仲介委員について準用する。この場合において、第六条第八項中「内閣総理大臣」とあるのは「都道府県知事」と、「両議院の同意を得て、これらを」とあるのは「これを」と読み替えるものとする。
(仲介委員の任務)
第二十九条 仲介委員は、当事者双方の主張の要点を確かめ、事件が公正に解決されるように努めなければならない。
(和解の仲介の打切り)
第三十条 仲介委員は、申請に係る紛争について、和解の仲介によつては紛争の解決の見込みがないと認めるときは、和解の仲介を打ち切ることができる。
第三節 調停
(調停委員の指名等)
第三十一条 中央委員会又は審査会等による調停は、三人の調停委員からなる調停委員会を設けて行なう。
2 前項の調停委員は、中央委員会の委員長及び委員又は審査会の委員等のうちから、事件ごとに、それぞれ、中央委員会の委員長又は審査会の会長等が指名する。
3 連合審査会による調停は、連合審査会の委員の全員を調停委員とする調停委員会を設けて行なう。
4 第六条第八項並びに第九条第一項及び第二項の規定は、候補者名簿に記載されている者のうちからの指名に係る調停委員について準用する。この場合において、第六条第八項中「内閣総理大臣」とあるのは「都道府県知事」と、「両議院の同意を得て、これらを」とあるのは「これを」と読み替えるものとする。
(出頭の要求)
第三十二条 調停委員会は、調停のため必要があると認めるときは、当事者の出頭を求め、その意見をきくことができる。
(文書の提出等)
第三十三条 中央委員会に設けられる調停委員会は、第二十四条第一項第一号に掲げる紛争に関する調停を行なう場合において、必要があると認めるときは、当事者から当該調停に係る事件に関係のある文書又は物件の提出を求めることができる。
2 前項の調停委員会は、第二十四条第一項第一号に掲げる紛争に関する調停を行なう場合において、紛争の原因たる事実関係を明確にするため、必要があると認めるときは、当事者の占有する工場、事業場その他事件に関係のある場所に立ち入つて、事件に関係のある文書又は物件を検査することができる。
3 第一項の調停委員会は、前項の規定による立入検査をする場合においては、調停委員の一人をしてこれを行なわせることができる。
4 第一項の調停委員会は、第二項の規定による立入検査について、専門調査員をして補助させることができる。
(調停案の作成)
第三十四条 調停委員会は、調停案を作成し、当事者に対し、その受諾を勧告することができる。
2 前項の調停案は、調停委員の過半数の意見で作成しなければならない。
(調停をしない場合)
第三十五条 調停委員会は、申請に係る紛争がその性質上調停をするのに適当でないと認めるとき、又は当事者が不当な目的でみだりに調停の申請をしたと認めるときは、調停をしないものとすることができる。
(調停の打切り)
第三十六条 調停委員会は、申請に係る紛争について当事者間に合意が成立する見込みがないと認めるときは、調停を打ち切ることができる。
(手続の非公開)
第三十七条 調停委員会の行なう調停の手続は、公開しない。
(事件の引継ぎ)
第三十八条 審査会等又は連合審査会は、その調停に係る事件について、相当と認める理由があるときは、調停委員会の申立てに基づき、当該調停の申請をした者の同意を得、かつ、中央委員会と協議したうえ、これを中央委員会に引き継ぐことができる。
2 中央委員会は、前項の規定により審査会等から引き継いだ事件については、第二十四条第一項の規定にかかわらず、調停を行なうことができる。
第四節 仲裁
(仲裁委員の指名等)
第三十九条 中央委員会又は審査会等による仲裁は、三人の仲裁委員からなる仲裁委員会を設けて行なう。
2 前項の仲裁委員は、中央委員会の委員長及び委員又は審査会の委員等のうちから、当事者が合意によつて選定した者につき、事件ごとに、それぞれ、中央委員会の委員長又は審査会の会長等が指名する。ただし、当事者の合意による選定がなされなかつたときは、中央委員会の委員長及び委員又は審査会の委員等のうちから、事件ごとに、それぞれ、中央委員会の委員長又は審査会の会長等が指名する。
3 第一項の仲裁委員のうち少なくとも一人は、弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第二章の規定により、弁護士となる資格を有する者でなければならない。
4 第六条第八項並びに第九条第一項及び第二項の規定は、候補者名簿に記載されている者のうちからの指名に係る仲裁委員について準用する。この場合において、第六条第八項中「内閣総理大臣」とあるのは「都道府県知事」と、「両議院の同意を得て、これらを」とあるのは「これを」と読み替えるものとする。
(文書の提出等)
第四十条 仲裁委員会は、仲裁を行なう場合において、必要があると認めるときは、当事者から当該仲裁に係る事件に関係のある文書又は物件の提出を求めることができる。
2 仲裁委員会は、仲裁を行なう場合において、紛争の原因たる事実関係を明確にするため、必要があると認めるときは、当事者の占有する工場、事業場その他事件に関係のある場所に立ち入つて、事件に関係のある文書又は物件を検査することができる。
3 仲裁委員会は、前項の規定による立入検査をする場合においては、仲裁委員の一人をしてこれを行なわせることができる。
4 中央委員会に設けられる仲裁委員会は、第二項の規定による立入検査について、専門調査員をして補助させることができる。
(民事訴訟法の準用)
第四十一条 仲裁委員会の行なう仲裁については、この法律に別段の定めがある場合を除き、仲裁委員を仲裁人とみなして、民事訴訟法(明治二十三年法律第二十九号)第八編(仲裁手続)の規定を準用する。
(準用規定)
第四十二条 第三十七条の規定は、仲裁委員会の行なう仲裁の手続について準用する。
第五節 補則
(資料提出の要求等)
第四十三条 中央委員会は公害に係る紛争に関する調停又は仲裁を行なうため、審査会等は公害に係る紛争に関する和解の仲介、調停又は仲裁を行なうため、連合審査会は公害に係る紛争に関する和解の仲介又は調停を行なうため、それぞれ、必要があると認めるときは、関係行政機関の長又は関係地方公共団体の長に対し、公害発生の原因の調査に関する資料その他の資料の提出、意見の開陳、技術的知識の提供その他必要な協力を求めることができる。
(紛争処理の手続に要する費用)
第四十四条 中央委員会において行なう調停又は仲裁の手続に要する費用は、政令で定めるものを除き、各当事者が負担する。
2 審査会等において行なう和解の仲介、調停又は仲裁の手続に要する費用は、条例で定めるものを除き、各当事者が負担する。
3 連合審査会において行なう和解の仲介又は調停の手続に要する費用は、関係都道府県が協議によつて定める規約で定めるものを除き、各当事者が負担する。
(申請手数料)
第四十五条 中央委員会に対し調停又は仲裁の申請をする者は、政令で定めるところにより、申請手数料を納めなければならない。この場合においては、当該申請手数料は、国の収入とする。
2 審査会又は都道府県知事に対し調停又は仲裁の申請をする者は、条例で定めるところにより、申請手数料を納めなければならない。この場合においては、当該申請手数料は、当該都道府県の収入とする。
(都道府県知事に対する報告)
第四十六条 候補者名簿からの指名に係る仲介委員、候補者名簿からの指名に係る調停委員からなる調停委員会又は候補者名簿からの指名に係る仲裁委員からなる仲裁委員会は、その行なう和解の仲介、調停又は仲裁の事件が終了したときは、都道府県知事に対し、すみやかに、その概要を報告しなければならない。
(政令への委任)
第四十七条 この章に規定するもののほか、紛争の処理の手続その他紛争の処理に関し必要な事項は、政令で定める。
第四章 雑則
(意見の申出)
第四十八条 中央委員会は内閣総理大臣又は関係行政機関の長に対し、審査会は当該都道府県知事に対し、その所掌事務の遂行を通じて得られた公害の防止に関する施策の改善についての意見を述べることができる。
(苦情の処理)
第四十九条 地方公共団体は、関係行政機関と協力して公害に関する苦情の適切な処理に努めるものとする。
2 都道府県及び政令で定める市は、公害苦情相談員を置かなければならない。
3 前項の市以外の市及び町村は、公害苦情相談員を置くことができる。
4 公害苦情相談員は、公害に関する苦情について、住民の相談に応じ、その処理のために必要な調査その他の事務を行なうものとする。
(防衛施設)
第五十条 防衛施設周辺の整備等に関する法律(昭和四十一年法律第百三十五号)第二条第二項に規定する防衛施設に係る公害対策基本法第二十一条第一項に規定する事項に関しては、別に法律で定めるところによる。
第五章 罰則
第五十一条 第九条第一項(第十条第三項、第十七条、第二十三条、第二十八条第四項、第三十一条第四項及び第三十九条第四項において準用する場合を含む。)の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
第五十二条 次の各号に掲げる違反があつた場合においては、その行為をした当事者を一万円以下の過料に処する。
一 正当な理由がなくて第三十二条の規定による出頭の要求に応じなかつたとき。
二 正当な理由がなくて第三十三条第一項又は第四十条第一項の規定による文書又は物件の提出の要求に応じなかつたとき。
三 正当な理由がなくて第三十三条第二項又は第四十条第二項の規定による立入検査を拒み、妨げ、又は忌避したとき。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して六月をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第六条第一項中両議院の同意を得ることに係る部分は、公布の日から施行する。
(中央委員会の最初の委員長及び委員の任命)
2 この法律の施行後最初に任命される中央委員会の委員長及び委員の任命について、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、第六条第二項及び第三項の規定を準用する。
(他の法律の一部改正)
3 総理府設置法(昭和二十四年法律第百二十七号)の一部を次のように改正する。
目次中「第十六条の四」を「第十六条の五」に改める。
第二章第三節中第十六条の四を第十六条の五とし、第十六条の三を第十六条の四とし、第十六条の二の次に次の一条を加える。
(中央公害審査委員会)
第十六条の三 総理府の機関として、中央公害審査委員会を置く。
2 中央公害審査委員会は、公害に係る紛争の迅速かつ適正な解決を図るための機関とする。
3 中央公害審査委員会の組織及び所掌事務については、公害紛争処理法(昭和四十五年法律第百八号)の定めるところによる。
4 公共用水域の水質の保全に関する法律(昭和三十三年法律第百八十一号)の一部を次のように改正する。
目次中「第四章 和解の仲介(第二十一条―第二十五条)」を削る。
第一条中「水質の保全を図り、あわせて水質の汚濁に関する紛争の解決に資するため」を「水質の保全を図るため」に改める。
第三条第二項中「第二条に規定する水洗炭業をいう。以下同じ。」を「第二条に規定する水洗炭業をいう。」に改める。
第四章を削る。
5 大気汚染防止法(昭和四十三年法律第九十七号)の一部を次のように改正する。
目次中「第四章 和解の仲介(第二十二条―第二十五条)」を「第四章 削除」に改める。
第一条第一項中「とともに、大気の汚染に関する紛争について和解の仲介の制度を設けることにより、その解決に資する」を削る。
第四章を次のように改める。
第四章 削除
第二十二条から第二十五条まで 削除
6 騒音規制法(昭和四十三年法律第九十八号)の一部を次のように改正する。
目次中「第四章 和解の仲介(第十六条―第十九条)」を「第四章 削除」に改める。
第一条中「とともに、騒音に関する紛争について和解の仲介の制度を設けることにより、その解決に資する」を削る。
第四章を次のように改める。
第四章 削除
第十六条から第十九条まで 削除
7 この法律の施行前に、公共用水域の水質の保全に関する法律第二十一条、大気汚染防止法第二十二条又は騒音規制法第十六条の規定によつて申立てのあつた和解の仲介については、この法律の施行後も、なお従前の例による。
8 特別職の職員の給与に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十二号)の一部を次のように改正する。
第一条第十三号の五の次に次の一号を加える。
十三の六 中央公害審査委員会の委員長及び常勤の委員
第一条第十九号の五の次に次の一号を加える。
十九の六 中央公害審査委員会の非常勤の委員
別表第一官職名の欄中「地方財政審議会会長」を
地方財政審議会会長
中央公害審査委員会委員長
に、「土地鑑定委員会の常勤の委員」を
土地鑑定委員会の常勤の委員
中央公害審査委員会の常勤の委員
に改める。
内閣総理大臣 佐藤栄作
法務大臣 小林武治
大蔵大臣 福田赳夫
厚生大臣 内田常雄
農林大臣 倉石忠雄
通商産業大臣 宮沢喜一
運輸大臣 橋本登美三郎
労働大臣 野原正勝
建設大臣 根本龍太郎
自治大臣 秋田大助