理科教育振興法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十八年八月八日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百八十六号
理科教育振興法
目次
第一章
総則(第一条―第三条)
第二章
理科教育審議会(第四条―第八条)
第三章
国の補助(第九条―第十一条)
附則
第一章 総則
(この法律の目的)
第一条 この法律は、理科教育が文化的な国家の建設の基盤として特に重要な使命を有することにかんがみ、教育基本法(昭和二十二年法律第二十五号)及び学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)の精神にのつとり、理科教育を通じて、科学的な知識、技能及び態度を習得させるとともに、工夫創造の能力を養い、もつて日常生活を合理的に営み、且つ、わが国の発展に貢献しうる有為な国民を育成するため、理科教育の振興を図ることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律で「理科教育」とは、小学校(盲学校、ろう学校及び養護学校の小学部を含む。以下同じ。)。中学校(盲学校、ろう学校及び養護学校の中学部を含む。以下同じ。)又は高等学校(盲学校、ろう学校及び養護学校の高等部を含む。以下同じ。)において行われる理科に関する教育をいう。
(国の任務)
第三条 国は、この法律及び他の法令の定めるところにより、理科教育の振興を図るように努めるとともに、地方公共団体が左の各号に掲げるような方法によつて理科教育の振興を図ることを奨励しなければならない。
一 理科教育の振興に関する総合計画を樹立すること。
二 理科教育に関する教育の内容及び方法の改善を図ること。
三 理科教育に関する施設又は設備を整備し、及びその充実を図ること。
四 理科教育に従事する教員又は指導者の現職教育又は養成の計画を樹立し、及びその実施を図ること。
第二章 理科教育審議会
(設置)
第四条 文部省に理科教育審議会(以下「審議会」という。)を置く。
(組織)
第五条 審議会は、二十人の委員で組織する。
2 委員は、理科教育その他教育に関する学識経験のある者及び関係行政機関の職員の中から、文部大臣が任命する。
3 前項の学識経験のある者の中から任命される委員の任期は、二年とする。但し、欠員が生じた場合の補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
4 委員は、再任されることができる。
(権限)
第六条 審議会は、第三条各号に掲げるような事項その他理科教育に関する重要事項について、文部大臣の諮問に応じて調査審議し、及びこれらの事項に関して文部大臣に建議する。
(委員の費用弁償等)
第七条 委員は、非常勤とする。
2 委員は、その職務を行うために要する費用の弁償を受けることができる。
3 費用弁償の額及びその支給方法は、文部大臣が大蔵大臣と協議して定める。
(政令への委任)
第八条 審議会に関し必要な事項は、この法律に規定するものを除く外、政令で定める。
第三章 国の補助
(国の補助)
第九条 国は、公立学校の設置者が、左の各号に掲げる設備で審議会の議を経て政令で定める基準に達していないものについて、これを当該基準にまで高めようとする場合においては、これに要する経費の二分の一を、当該学校の設置者に対し、予算の範囲内において補助する。
一 小学校、中学校又は高等学校における理科教育のための設備
二 理科教育に従事する教員又は指導者の現職教育又は養成を行う大学が当該現職教育又は養成のために使用する設備
2 前項に規定するものの外、国は、公立学校に係る理科教育の振興のために特に必要と認められる経費の二分の一を、当該学校の設置者に対し、予算の範囲内において補助する。
(補助金の返還等)
第十条 文部大臣は、前条の規定により補助金の交付を受けた者が左の各号の一に該当するときは、当該年度におけるその後の補助金の交付をやめるとともに、すでに交付した当該年度の補助金を返還させるものとする。
一 この法律又はこの法律に基く政令の規定に違反したとき。
二 補助金の交付の条件に違反したとき。
三 虚偽の方法によつて補助金の交付を受けたことが明らかになつたとき。
(政令への委任)
第十一条 前二条に規定するものを除く外、補助金の交付に関し必要な事項は、政令で定める。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、昭和二十九年四月一日から施行する。
(最初に任命される審議会の委員の任期の特例)
2 この法律施行後最初に任命される審議会の委員で学識経験のある者の中から任命される者のうち、半数の者の任期は、第五条第三項の規定にかかわらず、一年とする。
3 前項の規定により任期を一年とする委員は、くじで定める。
(文部省設置法の一部改正)
4 文部省設置法(昭和二十四年法律第百四十六号)の一部を次のように改正する。
第二十七条第一項の表中学徒厚生審議会の項の前に次の一項を加える。
理科教育審議会
理科教育振興法(昭和二十八年法律第百八十六号)に基き文部大臣の諮問に応じ、理科教育に関する重要事項を調査審議し、及び理科教育に関する重要事項に関して文部大臣に建議すること。
(義務教育費国庫負担法の一部改正)
5 義務教育費国庫負担法(昭和二十七年法律第三百三号)の一部を次のように改正する。
第三条第一項中「経費」の下に「(理科教育振興法(昭和二十八年法律第百八十六号)第九条に規定する経費を除く。)」を加える。
大蔵大臣 小笠原三九郎
文部大臣 大達茂雄
内閣総理大臣 吉田茂