(目的)
第一條 この法律は、国民の栄養改善思想を高め、国民の栄養状態を明らかにし、且つ、国民の栄養を改善する方途を講じて国民の健康及び体力の維持向上を図り、もつて国民の福祉の増進に奇与することを目的とする。
(国民栄養調査の実施)
第二條 国は、栄養改善の方途を講ずる基礎資料として国民の健康状態、栄養摂取量、栄養摂取と経済負担との関係等を明らかにするため、国民栄養調査を実施する。
2 国民栄養調査は、身体状況調査及び栄養摂取状況調査とし、毎年、厚生大臣の定める時期に行う。
3 都道府県知事は、厚生大臣の指揮監督を受けて、その管轄区域内の国民栄養調査の執行に関する事務を行う。
(被調査者の選定及び協力義務)
第三條 国民栄養調査の対象の選定は、無作為抽出法により、毎年、厚生大臣が調査地区を定め、その地区内において都道府県知事が調査世帯を指定することによつて行う。
2 前項の規定により指定された調査世帯に属する者(以下被調査者という。)は、国民栄養調査の実施に協力しなければならない。
3 被調査者が未成年者又は禁治産者である場合には、その親権者、後見人又は現に監護を行つている者において、前項の義務を果させるために必要な措置を講じなければならない。
(国民栄養調査員)
第四條 国民栄養調査の事務に従事させるため、都道府県に国民栄養調査員を置く。
2 国民栄養調査員は、医師、栄養士、保健婦その他の者のうちから、毎年、都道府県知事が任命する。
4 国民栄養調査員は、実施につきその職務を行う場合には、その身分を示す証票を携帯し、且つ、関係人の請求があるときは、これを呈示しなければならない。
(費用負担)
第五條 国庫は、国民栄養調査に要する費用を負担する。
(調査票の使用制限)
第六條 国民栄養調査のために徴した調査票は、栄養改善その他直接国民の福祉の向上を図る目的以外の目的のために使用してはならない。
(省令への委任)
第七條 前五條に定めるものの外、国民栄養調査の方法、調査項目その他国民栄養調査の実施に関して必要な事項は、厚生省令で定める。
(栄養相談所)
第八條 都道府県及び保健所を設置する市は、保健所の附属機関として、栄養相談所を設置することができる。
2 栄養相談所は、食生活改善の促進を図ることを目的として、一般の食事又は病人の食事の献立及び調理、食品の栄養価、食品の栄養効果その他栄養改善に関する事項につき相談に応ずるところとする。
3 栄養相談所は、前項に規定する事項につき相談を受けたときは、懇切にこれに応じなければならない。
(栄養指導員)
第九條 都道府県及び保健所を設置する市に、栄養指導員を置く。
2 栄養指導員は、食品の栄養上合理的な消費、栄養効果の充分な給食の実施、給食担当者の栄養に関する知識の向上及び食品の調理方法の改善等について必要な援助及び指導を行つて、住民の栄養状態の改善に努めるものとする。
3 栄養指導員は、都道府県又は市の技術吏員とし、医師又は栄養士の資格を有する者について都道府県知事又は市長が任命する。
(集団給食施設における栄養管理)
第十條 特定多数人に対して、通例として、継続的に一回百食以上又は一日二百五十食以上の食事を供給する施設(以下集団給食施設という。)で栄養士を置かないもの(医師が管理するものを除く。)にあつては、その供給する食事につき、献立の内容、栄養価の算定及び調理の方法に関して、厚生省令の定めるところにより栄養指導員の指導を受けなければならない。
(調査指導)
第十一條 都道府県知事又は保健所を設置する市の市長は、栄養改善指導上必要があると認めるときは、集団給食施設の管理者から必要な報告を求め、又は栄養指導員に特定多数人に対して継続的に食事を供給する施設について栄養改善の見地から必要な指導をさせることができる。
2 前項の規定により栄養指導員が指導を行う場合には、その身分を示す証票を携帯し、且つ、関係人の請求があるときは、これを呈示しなければならない。
(特殊栄養食品の標示)
第十二條 販売に供する食品につき、栄養成分の補給ができる旨の標示又は乳児用、幼児用、妊産婦用、病者用等の特別の用途に適する旨の標示をしようとする者は、厚生大臣の許可を受けなければならない。
2 前項の許可を受けようとする者は、製品見本を添え、商品名、原材料の配合割合及び当該製品の製造方法、成分分析表、許可を受けようとする標示の内容その他厚生省令で定める事項を記載した申請書を、その営業所所在地の都道府県知事(保健所を設置する市にあつては市長)を経由して厚生大臣に提出しなければならない。
3 前項の申請書には、許可審査手数料として三千円に相当する収入印紙をちよう附しなければならない。
4 第一項の許可を受けて標示をする者は、厚生省令で定める事項を当該食品の容器包装の見やすい箇所に明記した標示をしなければならない。
(栄養審議会の設置及び権限)
第十三條 国民の栄養的欠陥、必要栄養素の基準量、栄養改善上必要な食糧構成、食品の強化、食生活の改善その他国民栄養の改善に関する事項を調査審議し、及び栄養士試験に関する事務をつかさどらせるため、厚生省に栄養審議会を置く。
3 栄養審議会は、国民栄養の改善に関し、関係行政機関に意見を具申することができる。
4 栄養審議会は、特に必要があるときは、関係行政機関に対し、所属職員の出席、説明及び資料の提供を求めることができる。
(栄養審議会の組織)
第十四條 栄養審議会は、委員十五人以内で組織する。
2 栄養審議会に、特別の事項を調査審議するため必要があるときは、臨時委員を置くことができる。
3 委員及び臨時委員は、関係行政機関の職員及び学識経験のある者のうちから厚生大臣が任命する。
4 委員のうち学識経験のある者のうちから任命されたものの任期は、三年とする。欠員を生じた場合の補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
(政令への委任)
第十五條 前二條に定めるものの外、委員長の職務及び栄養審議会の運営に関して必要な事項は、政令で定める。
(特殊栄養食品の検査及び収去)
第十六條 厚生大臣又は都道府県知事(保健所を設置する市にあつては市長)は、必要があると認めるときは、当該職員に第十二條(特殊栄養食品の標示)の規定により許可を受けた特殊栄養食品の製造施設、貯蔵施設又は販売施設に立ち入らせ、販売の用に供する特殊栄養食品を検査させ、又は試験の用に供するのに必要な限度において当該特殊栄養食品を収去させることができる。
2 前項の規定により当該職員が立入検査又は収去をする場合には、その身分を示す証票を携帯し、且つ、関係人の請求があつたときは、これを呈示しなければならない。
3 第一項に規定する当該職員の職権は、食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号)第十九條(食品衛生監視員の設置)に規定する食品衛生監視員が行う。
(特殊栄養食品の標示の許可の取消)
第十七條 厚生大臣は、第十二條第一項(特殊栄養食品の標示の許可)の許可を受けて標示をする者が同條第四項(特殊栄養食品の標示内容)に規定する標示をせず又は虚偽の標示をしたときは、当該許可を取り消すことができる。
(雑則)
第十八條 教育委員会が所管する集団給食施設に対する第十條(集団給食施設における栄養管理)の規定による指導並びに第十一條(調査指導)の規定による報告の聴取及び指導は、教育委員会を通じて行うものとする。
(罰則)
第十九條 第十二條第一項(特殊栄養食品の標示の許可)の規定に違反した者は、五万円以下の罰金に処する。
2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関して前項の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても同項の罰金刑を科する。但し、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため、その業務について相当の注意及び監督が尽されたことの証明があつたときは、その法人又は人については、この限りでない。
第二十條 第十一條第一項(調査指導)の規定に違反して報告をせず又は虚偽の報告をした者は、五千円以下の過料に処する。