(この法律の目的)
第一條 この法律は、道路運送事業及び通運事業に関する信用の増進により、これらの事業の健全な発達を図ることを目的とする。
(定義)
第二條 この法律で「事業単位」とは、道路運送法(昭和二十六年法律第百八十三号)による一般自動車運送事業若しくは自動車道事業又は通運事業法(昭和二十四年法律第二百四十一号)による通運事業(同法第四條第三項の規定により荷主の指定のある免許に係るものを除く。)に係る業務が独立して運営され、且つ、適当な事業規模を有すると運輸大臣(自動車道事業に係るものにあつては、運輸大臣及び建設大臣)(以下「主務大臣」という。)が認定したものをいい、「事業者」とは、これらの事業を営む者をいう。
(財団の設定)
第三條 事業者は、抵当権の目的とするため、一又は二以上の事業単位につき、道路交通事業財団(以下「事業財団」という。)を設定することができる。
(財団の組成)
第四條 事業財団は、左に掲げるもので、同一の事業者に属し、且つ、当該事業単位に関するものをもつて組成する。
三 地上権、賃貸人の承諾があるときは物の賃借権及び第一号に掲げる土地のために存する地役権
(財団設定の制限)
第五條 自動車運送事業及び通運事業にあつては、前條第一号に掲げる不動産及び事業用自動車、自動車道事業にあつては、一般自動車道の敷地が存しないときは、事業者は、事業財団を設定することができない。
(所有権保存の登記)
第六條 事業財団の設定は、道路交通事業財団登記簿に所有権保存の登記をすることによつて行う。
2 前項の登記をしたときは、第四條に規定するものは、当該事業財団に属する。但し、他人の権利の目的であるもの又は差押、仮差押若しくは仮処分の目的であるものは、この限りでない。
3 第四條に規定するもので、事業財団の設定後新たに当該事業単位に属したものは、当然事業財団に属する。この場合においては、前項但書の規定を準用する。
第七條 事業単位に属する土地、建物又は道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)による自動車で軽自動車及び二輪の小型自動車以外のものであつて、未登記又は未登録のものがあるときは、事業財団の所有権保存の登記を申請する前に、登記又は登録を受けなければならない。
2 前項の規定は、同項の土地、建物又は自動車が、事業財団の設定後新たに当該事業単位に属した場合における第十三條の道路交通事業財団目録の記載の変更の登記の申請に準用する。
(事業財団を目的とする権利)
第九條 事業財団は、所有権及び抵当権以外の権利の目的とすることができない。
(管轄登記所)
第十條 事業財団の登記に関する事務は、不動産の所在地を管轄する法務局若しくは地方法務局又はこれらの支局若しくは出張所が、管轄登記所としてつかさどる。
2 不動産登記法(明治三十二年法律第二十四号)第八條第二項の規定は、不動産が数個の登記所の管轄区域にまたがり、又は数個の不動産が数個の登記所の管轄区域内にある場合について準用する。
(主務大臣に対する通知)
第十一條 左の場合においては、登記所は、直ちにその旨を主務大臣に通知しなければならない。
一 事業財団について第一順位の抵当権の設定を登記したとき。
二 事業財団について道路交通事業財団登記簿の用紙を閉鎖したとき。
(登記の申請)
第十二條 登記の申請書には、不動産登記法第三十六條第三号から第八号までに掲げる事項の外、左に掲げる事項を記載しなければならない。
一 事業単位に係る事業についての道路運送法第三條第二項各号の事業、自動車道事業又は通運事業の別
二 路線を定める自動車運送事業又は自動車道事業の事業単位にあつては、その路線
三 事業区域を定める自動車運送事業の事業単位にあつては、その事業区域
五 道路運送法第四條第三項又は通運事業法第四條第三項の規定により業務の範囲を限定して行つた免許に係る事業単位にあつては、その業務の範囲
六 道路運送法第四條第四項の規定により期間を限定して行つた免許に係る事業単位にあつては、その期間
(道路交通事業財団目録)
第十三條 事業財団につき所有権保存の登記を申請する場合においては、不動産登記法第三十五條第一項に掲げる書面の外、道路交通事業財団目録を提出しなければならない。
(免許の取消及び失効)
第十四條 免許の取消又は事業単位に属する路線若しくは事業区域の全部について免許の失効があつたときは、主務大臣は、直ちにその旨を抵当権者に通知しなければならない。
2 前項の場合には、抵当権者は、その権利を実行することができる。
3 前項の規定により抵当権を実行しようとするときは、抵当権者は、第一項の通知を受けた日から六箇月以内に、その手続をしなければならない。
4 免許は、第一項の取消又は失効の日から、前項の期間が終了し又は抵当権の実行が終了する日までは、抵当権の実行の目的の範囲内において、なお、存続するものとみなす。
5 事業財団の競落代金の全部の支払があつたときは、前項の規定により存続するものとみなされた免許についての取消又は失効(期間を限定して行つた免許についての当該期間の満了による失効を除く。)は、なかつたものとみなす。
第十五條 事業財団に対する抵当権の実行のための競売手続又は事業財団に対する強制競売手続の開始決定の時以後において、事業財団に関する免許の取消又は失効があつたときは、免許は、事業財団の競落代金の全部の支払があるまでは、競売の目的の範囲内において、なお、存続するものとみなす。
2 事業財団の競落代金の全部の支払があつたときは、その競売手続の開始決定の時以後における免許の取消又は失効(期間を限定して行つた免許についての当該期間の満了による失効を除く。)は、なかつたものとみなす。
(事業財団の差押等の管轄)
第十六條 事業財団の差押、仮差押又は仮処分は、事業財団に属する不動産の所在地の地方裁判所の管轄とする。
2 民事訴訟法(明治二十三年法律第二十九号)第二十四條の規定は、事業財団に属する不動産が数個の地方裁判所の管轄区域にまたがり、又は事業財団に属する数個の不動産が数個の地方裁判所の管轄区域内にある場合について準用する。
(競落代金の支払の通知)
第十七條 裁判所は、事業財団の競落代金の全部の支払があつたときは、直ちにその旨を主務大臣に通知しなければならない。
(免許に基く権利義務の承継)
第十八條 前條の競落代金の支払があつたときは、競落人は、その時において免許に基く権利義務を承継する。但し、競落人が道路運送法第六條第二項各号、同法第四十九條第二項各号又は通運事業法第六條第二項各号の一に該当する者であるときは、主務大臣は、当該免許を取り消すことができる。
2 主務大臣は、前項の免許に基く権利義務を承継した者に対し、事業を休止することができる期間を指定することができる。
(準用規定)
第十九條 事業財団については、工場抵当法(明治三十八年法律第五十四号)第八條第二項及び第三項、第十條、第十三條第二項、第十五條、第十六條第一項(民法第三百八十八條及び第三百八十九條の準用に関する部分に限る。)及び第三項、第十七條ノ二から第二十條まで、第二十二條第二項及び第三項、第二十三條から第四十四條ノ三まで並びに第四十六條から第四十八條までの規定を準用する。この場合において、「工場財団登記簿」とあるのは「道路交通事業財団登記簿」と、「工場財団目録」とあるのは「道路交通事業財団目録」と、第十七條ノ二及び第十七條ノ三中「工場」とあるのは「不動産」と、その他の規定中「工場」とあるのは「事業単位」と読み替えるものとする。
(職権の委任)
第二十條 この法律に規定する運輸大臣の職権の一部は、政令で定めるところにより、陸運局長に委任することができる。
(罰則)
第二十一條 事業者が、譲渡又は質入の目的をもつて、この法律の規定により抵当権の目的となつている事業財団に属する動産を第三者に引き渡したときは、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関し前項の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対し、同項の罰金刑を科する。