家事審判法
法令番号: 法律第152号
公布年月日: 昭和22年12月6日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

日本国憲法の施行に伴う民法改正により、身分法分野で個人の尊厳と両性の本質的平等の原則が確立された。これに関連し、家庭内や親族間の紛争について、従来の訴訟制度では当事者が原告・被告として対立せざるを得ず、家庭の平和維持の観点から問題があった。そこで、裁判官と民間有識者による機関が、訴訟によらず親族間の情誼に即して紛争を処理する制度として、家事審判所制度の設置が要望されてきた。これを受け、改正民法下での平和な家庭生活と健全な親族共同生活の実現のため、家事審判所制度を全面的に採用する必要があり、本法案を提出するものである。

参照した発言:
第1回国会 衆議院 司法委員会 第21号

審議経過

第1回国会

参議院
(昭和22年8月13日)
衆議院
(昭和22年8月14日)
参議院
(昭和22年8月15日)
衆議院
(昭和22年8月18日)
(昭和22年8月23日)
(昭和22年8月25日)
(昭和22年8月28日)
(昭和22年9月18日)
参議院
(昭和22年9月23日)
(昭和22年10月14日)
(昭和22年11月6日)
(昭和22年11月8日)
家事審判法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十二年十二月六日
内閣総理大臣 片山哲
法律第百五十二号
家事審判法
第一章 総則
第一條 この法律は、個人の尊嚴と両性の本質的平等を基本として、家庭の平和と健全な親族共同生活の維持を図ることを目的とする。
第二條 家庭に関する事件につき審判又は調停を行うために裁判所法の規定により設けられた地方裁判所の支部は、これを家事審判所とし、その支部に勤務する裁判官は、これを家事審判官とする。
第三條 審判は、一人の家事審判官が、参與員を立ち会わせ、又はその意見を聽いて、これを行う。
調停は、家事審判官及び調停委員を以て組織する調停委員会がこれを行う。
家事審判所は、相当と認めるときは、前二項の規定にかかわらず、一人の家事審判官だけで審判又は調停を行うことができる。
第四條 裁判所職員の除斥、忌避及び回避に関する民事訴訟法の規定で、裁判官に関するものは、家事審判官及び参與員に、裁判所書記に関するものは、家事審判所の書記にこれを準用する。
第五條 参與員及び調停委員には、最高裁判所の定める旅費、日当及び止宿料を支給する。
第六條 審判又は調停の申立をするには、最高裁判所の定める手数料を納めなければならない。
第七條 特別の定がある場合を除いて、審判及び調停に関しては、その性質に反しない限り、非訟事件手続法第一編の規定を準用する。但し、同法第十五條の規定は、この限りでない。
第八條 この法律に定めるものの外、審判又は調停に関し必要な事項は、最高裁判所がこれを定める。
第二章 審判
第九條 家事審判所は、左の事項について審判を行う。
甲類
一 民法第七條及び第十條の規定による禁治産の宣告及びその取消
二 民法第十二條第二項及び第十三條の規定による準禁治産の宣告、その取消その他の準禁治産に関する処分
三 民法第二十五條乃至第二十九條の規定による不在者の財産の管理に関する処分
四 民法第三十條及び第三十二條第一項の規定による失踪の宣告及びその取消
五 民法第七百七十五條の規定による特別代理人の選任
六 民法第七百九十一條第一項又は第二項の規定による子の氏の変更についての許可
七 民法第七百九十四條又は第七百九十八條の規定による養子をするについての許可
八 民法第八百十一條第三項の規定による離縁をするについての許可
九 民法第八百二十二條又は第八百五十七條(同法第八百六十七條第二項において準用する場合を含む。)の規定による懲戒に関する許可その他の処分
十 民法第八百二十六條(同法第八百六十條において準用する場合を含む。)の規定による特別代理人の選任
十一 民法第八百三十條第二項乃至第四項(同法第八百六十九條において準用する場合を含む。)の規定による財産管理者の選任その他の財産の管理に関する処分
十二 民法第八百三十四條乃至第八百三十六條の規定による親権又は管理権の喪失の宣告及びその取消
十三 民法第八百三十七條の規定による親権又は管理権を辞し、又は回復するについての許可
十四 民法第八百四十一條(同法第八百四十七條第一項において準用する場合を含む。)又は第八百四十九條の規定による後見人、保佐人又は後見監督人の選任
十五 民法第八百四十四條(同法第八百四十七條第一項及び第八百五十二條において準用する場合を含む。)の規定による後見人、保佐人又は後見監督人の辞任についての許可
十六 民法第八百四十五條(同法第八百四十七條第一項及び第八百五十二條において準用する場合を含む。)の規定による後見人、保佐人又は後見監督人の解任
十七 民法第八百四十七條第二項の規定による臨時保佐人の選任
十八 民法第八百五十三條第一項但書(同法第八百六十七條第二項において準用する場合を含む。)の規定による財産目録の調製の期間の伸長
十九 民法第八百五十八條第二項の規定による禁治産者の入院、監置等についての許可
二十 民法第八百六十二條(同法第八百六十七條第二項において準用する場合を含む。)の規定による後見人に対する報酬の付與
二十一 民法第八百六十三條(同法第八百六十七條第二項において準用する場合を含む。)の規定による後見の事務の報告、財産目録の提出、後見の事務又は財産の状況の調査、財産の管理その他の後見の事務に関する処分
二十二 民法第八百七十條但書の規定による管理計算の期間の伸長
二十三 民法第八百九十五條の規定による遺産の管理に関する処分
二十四 民法第九百十五條第一項但書の規定による相続の承認又は放棄の期間の伸長
二十五 民法第九百十八條第二項及び第三項(同法第九百二十六條第二項、第九百三十六條第三項及び第九百四十條第二項において準用する場合を含む。)の規定による相続財産の保存又は管理に関する処分
二十六 民法第九百二十四條の規定による相続の限定承認の申述の受理
二十七 民法第九百三十條第二項(同法第九百四十七條第三項、第九百五十條第二項及び第九百五十七條第二項において準用する場合を含む。)第九百三十二條但書(同法第九百四十七條第三項及び第九百五十條第二項において準用する場合を含む。)又は第千二十九條第二項の規定による鑑定人の選任
二十八 民法第九百三十六條第一項の規定による相続財産の管理人の選任
二十九 民法第九百三十八條の規定による相続の放棄の申述の受理
三十 民法第九百四十一條第一項又は第九百五十條第一項の規定による相続財産の分離に関する処分
三十一 民法第九百四十三條(同法第九百五十條第二項において準用する場合を含む。)の規定による相続財産の管理に関する処分
三十二 民法第九百五十二條及び第九百五十三條又は第九百五十八條の規定による相続財産の管理人の選任その他相続財産の管理に関する処分
三十三 民法第九百七十六條第二項又は第九百七十九條第二項の規定による遺言の確認
三十四 民法第千四條第一項の規定による遺言書の檢認
三十五 民法第千十條の規定による遺言執行者の選任
三十六 民法第千十八條第一項の規定による遺言執行者に対する報酬の付與
三十七 民法第千十九條の規定による遺言執行者の解任及び遺言執行者の辞任についての許可
三十八 民法第千二十七條の規定による遺言の取消
三十九 民法第千四十三條第一項の規定による遺留分の放棄についての許可
乙類
一 民法第七百五十二條の規定による夫婦の同居その他の夫婦間の協力扶助に関する処分
二 民法第七百五十八條第二項及び第三項の規定による財産の管理者の変更及び共有財産の分割に関する処分
三 民法第七百六十條の規定による婚姻から生ずる費用の分担に関する処分
四 民法第七百六十六條第一項又は第二項(同法第七百四十九條、第七百七十一條及び第七百八十八條において準用する場合を含む。)の規定による子の監護者の指定その他子の監護に関する処分
五 民法第七百六十八條第二項(同法第七百四十九條及び第七百七十一條において準用する場合を含む。)の規定による財産の分與に関する処分
六 民法第七百六十九條第二項(同法第七百四十九條、第七百五十一條第二項、第七百七十一條、第八百八條第二項及び第八百十七條において準用する場合を含む。)又は第八百九十七條第二項の規定による同條第一項の権利の承継者の指定
七 民法第八百十九條第五項又は第六項の規定による親権者の指定又は変更
八 民法第八百七十七條乃至第八百八十條の規定による扶養に関する処分
九 民法第八百九十二條乃至第八百九十四條の規定による推定相続人の廃除及びその取消
十 民法第九百七條第二項及び第三項の規定による遺産の分割に関する処分
家事審判所は、この法律に定めるものの外、他の法律において特に家事審判所の権限に属させた事項についても、審判を行う権限を有する。
第十條 参與員の員数は、各事件について一人以上とする。
参與員は、地方裁判所が毎年前もつて選任する者の中から、家事審判所が各事件についてこれを指定する。
前項の規定により選任される者の資格、員数その他同項の選任に関し必要な事項は、最高裁判所がこれを定める。
第十一條 家事審判所は、何時でも、職権で第九條第一項乙類に規定する審判事件を調停に付することができる。
第十二條 家事審判所は、相当と認めるときは、審判の結果について利害関係を有する者を審判手続に参加させることができる。
第十三條 審判は、これを受ける者に告知することによつてその効力を生ずる。但し、即時抗告をすることのできる審判は、確定しなければその効力を生じない。
第十四條 審判に対しては、最高裁判所の定めるところにより、即時抗告のみをすることができる。その期間は、これを二週間とする。
第十五條 金銭の支拂、物の引渡、登記義務の履行その他の給付を命ずる審判は、執行力ある債務名義と同一の効力を有する。
第十六條 民法第六百四十四條、第六百四十六條、第六百四十七條及び第六百五十條の規定は、家事審判所が選任した財産の管理をする者にこれを準用する。
第三章 調停
第十七條 家事審判所は、人事に関する訴訟事件その他一般に家庭に関する事件について調停を行う。但し、第九條第一項甲類に規定する審判事件については、この限りでない。
第十八條 前條の規定により調停を行うことができる事件について訴を提起しようとする者は、まず家事審判所に調停の申立をしなければならない。
前項の事件について調停の申立をすることなく訴を提起した場合には、裁判所は、その事件を家事審判所の調停に付しなければならない。但し、裁判所が事件を調停に付することを適当でないと認めるときは、この限りでない。
第十九條 第十七條の規定により調停を行うことができる事件に係る訴訟が係属している場合には、裁判所は、何時でも、職権でその事件を家事審判所の調停に付することができる。
第二十條 第十二條の規定は、調停手続にこれを準用する。
第二十一條 調停において当事者間に合意が成立し、これを調書に記載したときは、調停が成立したものとし、その記載は、確定判決と同一の効力を有する。但し、第九條第一項乙類に掲げる事項については、確定した審判と同一の効力を有する。
前項の規定は、第二十三條に掲げる事件については、これを適用しない。
第二十二條 調停委員会の組織は、家事審判官一人及び調停委員二人以上とする。
調停委員は、左の者の中から、家事審判官が各事件についてこれを指定する。
一 地方裁判所が毎年前もつて選任する者
二 当事者が合意で定める者
家事審判官は、事件の処理上必要と認めるときは、前項に掲げる者以外の者を調停委員に指定することができる。
第二十三條 婚姻又は養子縁組の無効又は取消に関する事件の調停委員会の調停において、当事者間に合意が成立し無効又は取消の原因の有無について爭がない場合には、家事審判所は、必要な事実を調査した上、調停委員の意見を聽き、正当と認めるときは、婚姻又は縁組の無効又は取消に関し、当該合意に相当する審判をすることができる。
前項の規定は、協議上の離婚若しくは離縁の無効若しくは取消、認知、認知の無効若しくは取消、民法第七百七十三條の規定により父を定めること、嫡出子の否認又は身分関係の存否の確定に関する事件の調停委員会の調停にこれを準用する。
第二十四條 家事審判所は、調停委員会の調停が成立しない場合において相当と認めるときは、調停委員の意見を聽き、当事者双方のため衡平に考慮し、一切の事情を観て、職権で、当事者双方の申立の趣旨に反しない限度で、事件の解決のため離婚、離縁その他必要な審判をすることができる。この審判においては、金銭の支拂その他財産上の給付を命ずることができる。
前項の規定は、第九條第一項乙類に規定する審判事件の調停については、これを適用しない。
第二十五條 第二十三條又は前條第一項の規定による審判に対しては、最高裁判所の定めるところにより、家事審判所に対し異議の申立をすることができる。その期間は、これを二週間とする。
前項の期間内に異議の申立があつたときは、同項の審判は、その効力を失う。
第一項の期間内に異議の申立がないときは、同項の審判は、確定判決と同一の効力を有する。
第二十六條 第九條第一項乙類の規定する審判事件について調停が成立しない場合には、調停の申立の時に、審判の申立があつたものとみなす。
第十七條の規定により調停を行うことができる事件について調停が成立せず、且つ、その事件について第二十三條若しくは第二十四條第一項の規定による審判をせず、又は前條第二項の規定により審判が効力を失つた場合において、当事者がその旨の通知を受けた日から二週間以内に訴を提起したときは、調停の申立の時に、その訴の提起があつたものとみなす。
第四章 罰則
第二十七條 家事審判所又は調停委員会の呼出を受けた事件の関係人が正当な事由がなく出頭しないときは、家事審判所は、これを五百円以下の過料に処する。
第二十八條 調停委員又は調停委員であつた者が正当な事由がなく評議の経過又は家事審判官若しくは調停委員の意見若しくはその多少の数を漏らしたときは、千円以下の罰金に処する。
参與員又は参與員であつた者が正当な事由がなく家事審判官又は参與員の意見を漏らしたときも、前項と同樣である。
第二十九條 参與員、調停委員又はこれらの職に在つた者が正当な事由がなくその職務上取り扱つたことについて知り得た人の祕密を漏らしたときは、六箇月以下の懲役又は三千円以下の罰金に処する。
附 則
この法律は、昭和二十三年一月一日から、これを施行する。
この法律の規定の適用に関しては、この法律と同日に施行される民法の一部を改正する法律の附則(以下新民法附則という。)第十條の規定による財産の分與に関する処分、新民法附則第十四條第二項又は第三項の規定による親権者の指定又は変更、新民法附則第二十四條の規定による扶養に関してされた判決の変更又は取消、新民法附則第二十七條第二項(新民法附則第二十五條第二項但書、第二十六條第二項及び第二十八條において準用する場合を含む。)の規定による財産の分配に関する処分及び新民法附則第三十二條の規定による遺産の分割に関する処分は、これを第九條第一項乙類に掲げる事項とみなし、新民法附則第三十三條の規定による遺言の確認は、これを第九條第一項甲類に掲げる事項とみなす。
司法大臣 鈴木義男
内閣総理大臣 片山哲
家事審判法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十二年十二月六日
内閣総理大臣 片山哲
法律第百五十二号
家事審判法
第一章 総則
第一条 この法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等を基本として、家庭の平和と健全な親族共同生活の維持を図ることを目的とする。
第二条 家庭に関する事件につき審判又は調停を行うために裁判所法の規定により設けられた地方裁判所の支部は、これを家事審判所とし、その支部に勤務する裁判官は、これを家事審判官とする。
第三条 審判は、一人の家事審判官が、参与員を立ち会わせ、又はその意見を聴いて、これを行う。
調停は、家事審判官及び調停委員を以て組織する調停委員会がこれを行う。
家事審判所は、相当と認めるときは、前二項の規定にかかわらず、一人の家事審判官だけで審判又は調停を行うことができる。
第四条 裁判所職員の除斥、忌避及び回避に関する民事訴訟法の規定で、裁判官に関するものは、家事審判官及び参与員に、裁判所書記に関するものは、家事審判所の書記にこれを準用する。
第五条 参与員及び調停委員には、最高裁判所の定める旅費、日当及び止宿料を支給する。
第六条 審判又は調停の申立をするには、最高裁判所の定める手数料を納めなければならない。
第七条 特別の定がある場合を除いて、審判及び調停に関しては、その性質に反しない限り、非訟事件手続法第一編の規定を準用する。但し、同法第十五条の規定は、この限りでない。
第八条 この法律に定めるものの外、審判又は調停に関し必要な事項は、最高裁判所がこれを定める。
第二章 審判
第九条 家事審判所は、左の事項について審判を行う。
甲類
一 民法第七条及び第十条の規定による禁治産の宣告及びその取消
二 民法第十二条第二項及び第十三条の規定による準禁治産の宣告、その取消その他の準禁治産に関する処分
三 民法第二十五条乃至第二十九条の規定による不在者の財産の管理に関する処分
四 民法第三十条及び第三十二条第一項の規定による失踪の宣告及びその取消
五 民法第七百七十五条の規定による特別代理人の選任
六 民法第七百九十一条第一項又は第二項の規定による子の氏の変更についての許可
七 民法第七百九十四条又は第七百九十八条の規定による養子をするについての許可
八 民法第八百十一条第三項の規定による離縁をするについての許可
九 民法第八百二十二条又は第八百五十七条(同法第八百六十七条第二項において準用する場合を含む。)の規定による懲戒に関する許可その他の処分
十 民法第八百二十六条(同法第八百六十条において準用する場合を含む。)の規定による特別代理人の選任
十一 民法第八百三十条第二項乃至第四項(同法第八百六十九条において準用する場合を含む。)の規定による財産管理者の選任その他の財産の管理に関する処分
十二 民法第八百三十四条乃至第八百三十六条の規定による親権又は管理権の喪失の宣告及びその取消
十三 民法第八百三十七条の規定による親権又は管理権を辞し、又は回復するについての許可
十四 民法第八百四十一条(同法第八百四十七条第一項において準用する場合を含む。)又は第八百四十九条の規定による後見人、保佐人又は後見監督人の選任
十五 民法第八百四十四条(同法第八百四十七条第一項及び第八百五十二条において準用する場合を含む。)の規定による後見人、保佐人又は後見監督人の辞任についての許可
十六 民法第八百四十五条(同法第八百四十七条第一項及び第八百五十二条において準用する場合を含む。)の規定による後見人、保佐人又は後見監督人の解任
十七 民法第八百四十七条第二項の規定による臨時保佐人の選任
十八 民法第八百五十三条第一項但書(同法第八百六十七条第二項において準用する場合を含む。)の規定による財産目録の調製の期間の伸長
十九 民法第八百五十八条第二項の規定による禁治産者の入院、監置等についての許可
二十 民法第八百六十二条(同法第八百六十七条第二項において準用する場合を含む。)の規定による後見人に対する報酬の付与
二十一 民法第八百六十三条(同法第八百六十七条第二項において準用する場合を含む。)の規定による後見の事務の報告、財産目録の提出、後見の事務又は財産の状況の調査、財産の管理その他の後見の事務に関する処分
二十二 民法第八百七十条但書の規定による管理計算の期間の伸長
二十三 民法第八百九十五条の規定による遺産の管理に関する処分
二十四 民法第九百十五条第一項但書の規定による相続の承認又は放棄の期間の伸長
二十五 民法第九百十八条第二項及び第三項(同法第九百二十六条第二項、第九百三十六条第三項及び第九百四十条第二項において準用する場合を含む。)の規定による相続財産の保存又は管理に関する処分
二十六 民法第九百二十四条の規定による相続の限定承認の申述の受理
二十七 民法第九百三十条第二項(同法第九百四十七条第三項、第九百五十条第二項及び第九百五十七条第二項において準用する場合を含む。)第九百三十二条但書(同法第九百四十七条第三項及び第九百五十条第二項において準用する場合を含む。)又は第千二十九条第二項の規定による鑑定人の選任
二十八 民法第九百三十六条第一項の規定による相続財産の管理人の選任
二十九 民法第九百三十八条の規定による相続の放棄の申述の受理
三十 民法第九百四十一条第一項又は第九百五十条第一項の規定による相続財産の分離に関する処分
三十一 民法第九百四十三条(同法第九百五十条第二項において準用する場合を含む。)の規定による相続財産の管理に関する処分
三十二 民法第九百五十二条及び第九百五十三条又は第九百五十八条の規定による相続財産の管理人の選任その他相続財産の管理に関する処分
三十三 民法第九百七十六条第二項又は第九百七十九条第二項の規定による遺言の確認
三十四 民法第千四条第一項の規定による遺言書の検認
三十五 民法第千十条の規定による遺言執行者の選任
三十六 民法第千十八条第一項の規定による遺言執行者に対する報酬の付与
三十七 民法第千十九条の規定による遺言執行者の解任及び遺言執行者の辞任についての許可
三十八 民法第千二十七条の規定による遺言の取消
三十九 民法第千四十三条第一項の規定による遺留分の放棄についての許可
乙類
一 民法第七百五十二条の規定による夫婦の同居その他の夫婦間の協力扶助に関する処分
二 民法第七百五十八条第二項及び第三項の規定による財産の管理者の変更及び共有財産の分割に関する処分
三 民法第七百六十条の規定による婚姻から生ずる費用の分担に関する処分
四 民法第七百六十六条第一項又は第二項(同法第七百四十九条、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護者の指定その他子の監護に関する処分
五 民法第七百六十八条第二項(同法第七百四十九条及び第七百七十一条において準用する場合を含む。)の規定による財産の分与に関する処分
六 民法第七百六十九条第二項(同法第七百四十九条、第七百五十一条第二項、第七百七十一条、第八百八条第二項及び第八百十七条において準用する場合を含む。)又は第八百九十七条第二項の規定による同条第一項の権利の承継者の指定
七 民法第八百十九条第五項又は第六項の規定による親権者の指定又は変更
八 民法第八百七十七条乃至第八百八十条の規定による扶養に関する処分
九 民法第八百九十二条乃至第八百九十四条の規定による推定相続人の廃除及びその取消
十 民法第九百七条第二項及び第三項の規定による遺産の分割に関する処分
家事審判所は、この法律に定めるものの外、他の法律において特に家事審判所の権限に属させた事項についても、審判を行う権限を有する。
第十条 参与員の員数は、各事件について一人以上とする。
参与員は、地方裁判所が毎年前もつて選任する者の中から、家事審判所が各事件についてこれを指定する。
前項の規定により選任される者の資格、員数その他同項の選任に関し必要な事項は、最高裁判所がこれを定める。
第十一条 家事審判所は、何時でも、職権で第九条第一項乙類に規定する審判事件を調停に付することができる。
第十二条 家事審判所は、相当と認めるときは、審判の結果について利害関係を有する者を審判手続に参加させることができる。
第十三条 審判は、これを受ける者に告知することによつてその効力を生ずる。但し、即時抗告をすることのできる審判は、確定しなければその効力を生じない。
第十四条 審判に対しては、最高裁判所の定めるところにより、即時抗告のみをすることができる。その期間は、これを二週間とする。
第十五条 金銭の支払、物の引渡、登記義務の履行その他の給付を命ずる審判は、執行力ある債務名義と同一の効力を有する。
第十六条 民法第六百四十四条、第六百四十六条、第六百四十七条及び第六百五十条の規定は、家事審判所が選任した財産の管理をする者にこれを準用する。
第三章 調停
第十七条 家事審判所は、人事に関する訴訟事件その他一般に家庭に関する事件について調停を行う。但し、第九条第一項甲類に規定する審判事件については、この限りでない。
第十八条 前条の規定により調停を行うことができる事件について訴を提起しようとする者は、まず家事審判所に調停の申立をしなければならない。
前項の事件について調停の申立をすることなく訴を提起した場合には、裁判所は、その事件を家事審判所の調停に付しなければならない。但し、裁判所が事件を調停に付することを適当でないと認めるときは、この限りでない。
第十九条 第十七条の規定により調停を行うことができる事件に係る訴訟が係属している場合には、裁判所は、何時でも、職権でその事件を家事審判所の調停に付することができる。
第二十条 第十二条の規定は、調停手続にこれを準用する。
第二十一条 調停において当事者間に合意が成立し、これを調書に記載したときは、調停が成立したものとし、その記載は、確定判決と同一の効力を有する。但し、第九条第一項乙類に掲げる事項については、確定した審判と同一の効力を有する。
前項の規定は、第二十三条に掲げる事件については、これを適用しない。
第二十二条 調停委員会の組織は、家事審判官一人及び調停委員二人以上とする。
調停委員は、左の者の中から、家事審判官が各事件についてこれを指定する。
一 地方裁判所が毎年前もつて選任する者
二 当事者が合意で定める者
家事審判官は、事件の処理上必要と認めるときは、前項に掲げる者以外の者を調停委員に指定することができる。
第二十三条 婚姻又は養子縁組の無効又は取消に関する事件の調停委員会の調停において、当事者間に合意が成立し無効又は取消の原因の有無について争がない場合には、家事審判所は、必要な事実を調査した上、調停委員の意見を聴き、正当と認めるときは、婚姻又は縁組の無効又は取消に関し、当該合意に相当する審判をすることができる。
前項の規定は、協議上の離婚若しくは離縁の無効若しくは取消、認知、認知の無効若しくは取消、民法第七百七十三条の規定により父を定めること、嫡出子の否認又は身分関係の存否の確定に関する事件の調停委員会の調停にこれを準用する。
第二十四条 家事審判所は、調停委員会の調停が成立しない場合において相当と認めるときは、調停委員の意見を聴き、当事者双方のため衡平に考慮し、一切の事情を観て、職権で、当事者双方の申立の趣旨に反しない限度で、事件の解決のため離婚、離縁その他必要な審判をすることができる。この審判においては、金銭の支払その他財産上の給付を命ずることができる。
前項の規定は、第九条第一項乙類に規定する審判事件の調停については、これを適用しない。
第二十五条 第二十三条又は前条第一項の規定による審判に対しては、最高裁判所の定めるところにより、家事審判所に対し異議の申立をすることができる。その期間は、これを二週間とする。
前項の期間内に異議の申立があつたときは、同項の審判は、その効力を失う。
第一項の期間内に異議の申立がないときは、同項の審判は、確定判決と同一の効力を有する。
第二十六条 第九条第一項乙類の規定する審判事件について調停が成立しない場合には、調停の申立の時に、審判の申立があつたものとみなす。
第十七条の規定により調停を行うことができる事件について調停が成立せず、且つ、その事件について第二十三条若しくは第二十四条第一項の規定による審判をせず、又は前条第二項の規定により審判が効力を失つた場合において、当事者がその旨の通知を受けた日から二週間以内に訴を提起したときは、調停の申立の時に、その訴の提起があつたものとみなす。
第四章 罰則
第二十七条 家事審判所又は調停委員会の呼出を受けた事件の関係人が正当な事由がなく出頭しないときは、家事審判所は、これを五百円以下の過料に処する。
第二十八条 調停委員又は調停委員であつた者が正当な事由がなく評議の経過又は家事審判官若しくは調停委員の意見若しくはその多少の数を漏らしたときは、千円以下の罰金に処する。
参与員又は参与員であつた者が正当な事由がなく家事審判官又は参与員の意見を漏らしたときも、前項と同様である。
第二十九条 参与員、調停委員又はこれらの職に在つた者が正当な事由がなくその職務上取り扱つたことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、六箇月以下の懲役又は三千円以下の罰金に処する。
附 則
この法律は、昭和二十三年一月一日から、これを施行する。
この法律の規定の適用に関しては、この法律と同日に施行される民法の一部を改正する法律の附則(以下新民法附則という。)第十条の規定による財産の分与に関する処分、新民法附則第十四条第二項又は第三項の規定による親権者の指定又は変更、新民法附則第二十四条の規定による扶養に関してされた判決の変更又は取消、新民法附則第二十七条第二項(新民法附則第二十五条第二項但書、第二十六条第二項及び第二十八条において準用する場合を含む。)の規定による財産の分配に関する処分及び新民法附則第三十二条の規定による遺産の分割に関する処分は、これを第九条第一項乙類に掲げる事項とみなし、新民法附則第三十三条の規定による遺言の確認は、これを第九条第一項甲類に掲げる事項とみなす。
司法大臣 鈴木義男
内閣総理大臣 片山哲