朕は、帝國議會の協贊を經た企業再建整備法を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十一年十月十八日
内閣總理大臣 吉田茂
司法大臣 木村篤太郎
農林大臣 和田博雄
商工大臣 星島二郎
厚生大臣 河合良成
運輸大臣 平塚常次郎
大藏大臣 石橋湛山
法律第四十號
企業再建整備法目次
第一章
總則
第二章
特別損失
第三章
整備計畫の立案
第四章
整備計畫の實行
第五章
舊勘定及び新勘定の併合
第六章
經濟再建整備委員會
第七章
雜則
第八章
罰則
企業再建整備法
第一章 總則
第一條 この法律は、會社經理應急措置法の適用を受けるものについて、戰時補償特別税を課せられること等に因り生じた損失を適正に處理し、その速かな再建整備を促進し、以て産業の健全な囘復及び振興を圖ることを目的とする。
第二條 この法律で、特別經理會社、指定時、存外資金、會社財産、舊勘定、新勘定又は特別管理人といふのは、會社經理應急措置法の特別經理會社、指定時、存外資産、會社財産、舊勘定、新勘定又は特別管理人をいふ。
第二章 特別損失
第三條 特別經理會社である株式會社(以下特別經理株式會社といふ。)は命令の定めるところにより、指定時現在で、左の計算をしなければならない。
一 左の各號に掲げる額(計算の際、額が確定してゐないものについては、その豫想額)の金額を合計する。
イ 戰時補償特別税を課せられることに因り生ずる損失額
ロ 在外資金についての損失額
ハ 會社經理應急措置法第五條の財産目録(以下財産目録といふ。)に記載した金融機關に對する預貯金等が金融緊急措置令施行規則第一條ノ三の規定により第二封鎖預金等となり、支拂を受けることが不能となることに因り生ずる損失額
ニ 前各號に掲げるものを除くの外、終戰又は戰時補償特別措置法の施行に伴ひ生ずる損失額
ホ 會社經理特別措置令第二條第三號、企業整備資金措置法施行令第六條第三號竝びに商法第二百八十六條、第二百八十七條及び第二百九十一條第三項の規定により、會社經理應急措置法第五條の貸借對照表(本條中以下貸借對照表といふ。)の資産の部に計上した金額の合計額
ヘ 貸借對照表の資産の部に計上した指定時を以て終了する事業年度の缺損及び繰越缺損の額
ト 前各號に掲げるものを除くの外、指定時後舊勘定及び新勘定の併合(舊勘定のみを設ける特別經理株式會社については、舊勘定の廢止。以下同じ。)の時までに舊勘定に生ずる總損金の額
チ その他命令を以て定める額
二 左の各號に掲げる額(計算の際、額が確定してゐないものについては、その豫想額)の金額を合計する。
イ 貸借對照表の負債の部に計上した指定時を以て終了する事業年度の利益金及び繰越利益金の額
ロ 貸借對照表の負債の部に計上した積立金で、命令を以て定めるものの額
ハ 指定時後舊勘定及び新勘定の併合の時までに舊勘定に生ずる總益金の額
ニ その他命令を以て定める額
第四條 前條第一號の規定による合計金額が同條第二號の規定による合計金額を超える場合における超過額は、これを特別損失の額といふ。
第三章 整備計畫の立案
第五條 資本金百萬圓以上の特別經理株式會社、昭和二十年勅令第六百五十七號第一條ノ二の規定による指定會社である特別經理株式會社及び第七條第二號の規定により舊債權の負擔額の計算をなし、第八條の規定により會社財産につき評價換をなし、又は第三十四條第一項の規定による處理をなす特別經理株式會社の特別管理人は、命令の定めるところにより、整備計畫を立案し、命令の定める期間内に、主務大臣の認可を申請しなければならない。
昭和二十年勅令第六百五十七號第一條ノ二の規定による指定會社である特別經理株式會社及び昭和二十一年 商工 文部 省令第一號第一條第一項の規定による經營者又は昭和二十一年運輸省令第三十二號第一條第一項の規定による經營者等である特別經理株式會社が、その整備計畫に、これらの法令に基いて認可を受けなければならない事項について定をなす場合の前項の規定による認可の申請は、これらの法令の適用については、これを、これらの法令に基く認可の申請とする。
第六條 整備計畫には、命令の定めるところにより、左に掲げる事項に關して定をなさなければならない。
一 會社の存續又は解散の別
二 存續する場合には、整備計畫を行ふに當つて、商法の會社の整理によるか、否かの別
三 存續する場合には、今後の會社の事業計畫及び資金計畫竝びに役員の氏名
四 解散する場合には、解散の時期及び清算又は特別清算の何れの手續によるかの別
五 合併する場合には、合併の相手方、方法及び期限
六 合併に因り會社を設立する場合には、その會社の事業計畫及び資金計畫竝びに株主、役員及び債權者の氏名又は名稱
七 その營業の經營の全部若しくは一部を委任し、又はその資産の全部若しくは一部を賃貸し、出資し、若しくは讓渡すべき會社をあらたに設立する場合には、その計畫の大要、株主及び役員の氏名又は名稱、第十條の規定による債務の承繼に關する事項竝びに株式の賣出その他處分に關する事項
八 舊勘定に所屬する資産の處分の方法に關する事項
九 前二號に係るものの外、資産の處分の方法に關する事項
十 特別損失の額、特別損失を負擔する知れたる債權の總額及び特別損失を負擔する知れたる債權の總額と第七條の規定により舊債權の負擔額として計算する額との割合竝びに第八條の規定による評價換に關する事項
十一 會社經理應急措置法第十四條第一項の舊債權(同項但書の債權を除く。以下同じ。)についての條件の變更に關する事項
十二 未拂込株金の拂込に關する事項
十三 第十一條の規定による株式の發行に關する事項
十四 第十三條の規定による議決權の制限に關する事項
十五 第二十四條乃至第二十六條の規定による利益の歸屬に關する事項
十六 第三十四條第一項の規定による繰越缺損としての處理に關する事項
十七 第三十四條第二項の規定による資本の減少に關する事項
十八 整備計畫を行ふについての計畫に關する事項
十九 その他命令の定める事項
第七條 特別經理株式會社は、特別損失の額について、左の順序により、その負擔額を計算しなければならない。
一 特別損失の額について、資本金の額の十分の九に相當する額(資本金が十萬圓を超え五十萬圓未滿の特別經理株式會社については資本金の額から五萬圓を控除した額、資本金が十萬圓以下の特別經理株式會社については資本金の額の二分の一)まで、株主の負擔額として、これを計算する。
二 前號によるもなほ特別損失の額が殘るときには、その殘額は、會社經理應急措置法第十四條第一項の舊債權のうち知れたる債權(以下知れたる特別損失負擔債權といふ。)の額の十分の七に達するまで、知れたる特別損失負擔債權の債權者の負擔額として、これを計算する。
三 前號によるもなほ特別損失の額が殘るときには、その殘額は、資本金の額の十分の一に相當する額(資本金が十萬圓を超え五十萬圓未滿の特別經理株式會社については五萬圓、資本金が十萬圓以下の特別經理株式會社については資本金の額の二分の一)まで、株主の負擔額として、これを計算する。
四 前號によるもなほ特別損失の額が殘るときには、その殘額は、知れたる特別損失負擔債權の額の十分の三に達するまで、知れたる特別損失負擔債權の債權者の負擔額として、これを計算する。
第八條 特別經理株式會社の特別管理人は、會社財産についての命令を以て定める評價換を行はうとするときには、これを整備計畫に定めなければならない。
前項の規定による命令を以て定める評價換に關しては、他の法令の規定又は定款の定は、これを適用しない。
第一項の規定により評價換を行ふ場合には、その評價換によつて生じた益金は、特別損失の計算については、これを第三條第二號の合計金額に加算しなければならない。
第九條 特別經理株式會社は、命令の定めるところにより、第三條及び第七條の規定による計算を明かならしめる書類を作成し、特別管理人の承認を受けなければならない。
前項の會社は、命令の定めるところにより、遲滯なく、同項の承認を受けた書類を當該會社の知れたる債權者に提出すると共に、公告をなし、且つその書類を本店及び支店に備ヘ置き、利害關係人の閲覽に供しなければならない。
第一項の會社は、前項の規定により知れたる債權者に提出する書類には、第一項の承認を受けたことを證明する書類竝びに前條の規定による評價換を行ふ場合にはその評價換を行はずしてなした第三條及び第七條の規定による計算を明かならしめる書類を添附しなければならない。
第十條 特別經理株式會社が新勘定に所屬する資産の全部又は一部を出資する場合においては、その出資を受ける者は、命令の定めるところにより、指定時後特別經理株式會社の新勘定の負擔となつた債務を承繼する。
前項の債務の承繼については整備計畫において、これを定めなければならない。
第十一條 整備計畫に議決權のない株式であつて議決權のある株式に轉換することを請求することができるものを發行することを定めた場合には、當該會社については、商法第二百四十二條第二項の規定は、これを適用しない。
前項の場合における轉換の請求の期間については、命令を以てこれを定める。
第十二條 整備計畫の定めるところによつてなす未拂込株金の拂込の場合に關しては、他の法令又は定款にかかはらず、命令を以て別段の定をなすことができる。
第十三條 特別經理株式會社が、第六條第七號の規定による會社(以下第二會社といふ。)の株式の相當多數を當該會社その他の者が所有する場合に、その議決權を受託機關を設けてこれに行使せしめ、その他議決權の行使の制限をしようとするときには、整備計畫にその旨を定めなければならない。
第十四條 特別經理株式會社の特別管理人は、第五條第一項の規定による認可を申請したときには、遲滯なく第六條第十號に掲げる事項を公告し、且つ當該整備計畫を記載した書類を當該會社の本店及び支店に備へ置き、利害關係人の閲覽に供しなければならない。
株主及び債權者は、當該整備計畫に定める事項に異議があれば、前項の規定による公告の日から一箇月以内に、事由を具して主務大臣にその旨を申し出ることができる。
第十五條 主務大臣は、第五條第一項の規定による申請があつた場合には、當該整備計畫が適正でその實行に支障がなく、且つ公益に反しないか否かを審査し、前條第二項の期間經過後文書によつて認可又は不認可の處分をなす。
主務大臣は、前條第二項の規定による申出のあつた場合において必要があると認めるときには、整備計畫に定める事項を變更して認可することができる。
主務大臣は、前項の規定により整備計畫に定める事項を變更して認可したとき、前條第二項の規定による異議を採用しなかつたとき、又は不認可の處分をなしたときには、第一項の規定による認可又は不認可の文書に、その理由を附記することを要する。
第十六條 第五條第一項の規定により認可を申請した特別經理株式會社の特別管理人は、前條第一項の規定により不認可の處分を受けた場合には、同條第三項の規定により不認可の文書に附記された理由に基き、當該整備計畫に所要の修正を加へ、不認可の處分の日から一箇月以内にあらためて第五條第一項の規定による認可を申請しなければならない。
第十七條 主務大臣は、第五條第一項の規定の適用を受ける特別經理株式會社の特別管理人が同項の命令の定める期間内又は前條の期間内に整備計畫の認可を申請しない場合及びふたたび整備計畫の不認可の處分を受けた場合には、當該會社に對しその解散を命ずることができる。
前項の規定による命令を受けた特別經理株式會社は、同項の規定による命令に因り解散する。
第十八條 特別經理株式會社の特別管理人は、第十五條第一項又は第二項の規定による認可があつた場合には、命令の定めるところにより、遲滯なく第六條第十號に掲げる事項を公告し、且つ認可を受けた整備計畫(以下決定整備計畫といふ。)を記載した書類を當該會社の本店及び支店に備へ置き、利害關係人の閲覽に供しなければならない。
第十九條 會社經理應急措置法第十四條第一項の舊債權は、決定整備計畫に定める第六條第十號の割合を乘じた額に相當する額だけ、第十五條第一項又は第二項の規定による認可を受けた日に消滅し、その債權の額は、その認可に因り確定する。
前項の場合においては、社債の種類竝びに留置權、先取特權、質權及び抵當權の有無にかかはらず、すべての債權者の負擔の比率は、平等とする。
第二十條 已むを得ない事由により、決定整備計畫に定める事項(前條の規定による債權の消滅及び確定に關する事項を除く。)を變更する必要を生じたときには、特別管理人は、命令の定めるところにより、命令の定める期間内に、決定整備計畫を變更し、主務大臣の認可を申請しなければならない。但し、命令の定める場合はこの限りでない。
第十四條乃至第十八條の規定は、前項の場合に、これを準用する。
第二十一條 第五條第一項の規定の適用を受ける特別經理株式會社以外の特別經理株式會社の特別管理人は、必要があると認めるときには、整備計畫を立案し、命令の定めるところにより、主務大臣の認可を申請することができる。
第五條第二項、第十四條、第十五條、第十八條及び前條の規定は、前項の場合に、これを準用する。
第一項の規定により認可の申請をなした特別經理株式會社の特別管理人は、前項において準用する第十五條第一項の規定により不認可の處分を受けた場合においては、前項において準用する第十五條第三項の規定により不認可の文書に附記された理由に基いて、當該整備計畫に所要の修正を加へ、不認可の處分の日から一箇月以内に、あらためて第一項の規定による認可を申請することができる。
第四章 整備計畫の實行
第二十二條 特別經理株式會社の特別管理人が、第十五條第一項又は第二項の規定(第二十條第二項及び前條第二項において準用する場合を含む。以下同じ。)による認可を受けたときには、當該會社は、決定整備計畫に從ひ遲滯なく整備を行はなければならない。
第二十三條 主務大臣は、商法の會社の整理又は特別清算の手續による旨の定のある整備計畫を認可したときには、その旨を裁判所に通告することを要する。
前項の規定による通告は、決定整備計畫の定めるところに從ひ、會社の整理又は特別清算の開始の通告とみなす。
第二十四條 特別經理株式會社は、決定整備計畫の定めるところに從ひ、第六條第七號乃至第九號に定める會社の資産を處分する場合において、處分益又は處分損を生じたときは、命令の定めるところによりその處分益又は處分損を夫ゝ假勘定として貸借對照表の負債の部又は資産の部に計上しなければならない。
第二十五條 特別經理株式會社は、決定整備計畫に定めた特別損失の額が増減した場合においては、命令の定めるところにより、その増加額又は減少額を夫ゝ假勘定として貸借對照表の負債の部又は資産の部に計上しなければならない。
第二十六條 特別經理株式會社は、前二條の規定により、假勘定として經理すべき額が確定した時において、當該假勘定として負債の部又は資産の部に計上した額の合計差引計算をなし、負債の部に計上した額の合計金額が資産の部に計上した額の合計金額を超える場合においては、その超過額に相當する金額を決定整備計畫に定める方法により、第十九條の規定により消滅した債權の額の限度において、會社經理應急措置法第十四條第一項の舊債權に歸屬せしめなければならない。
特別經理株式會社は、前項の規定による假勘定の合計差引計算の結果、負債の部に計上した額の合計金額が資産の部に計上した額の合計金額を超える場合において、その超過額から同項の規定により債權者に歸屬せしめる額を控除してなほ殘額があるときには、その殘額を假勘定の額の確定した日の屬する事業年度の益金として經理し、負債の部に計上した額の合計金額が資産の部に計上した額の合計金額に滿たない場合においては、その不足額を假勘定の額の確定した日の屬する事業年度の損金として經理しなければならない。
第二十七條 決定整備計畫に定める事項については、行政官廳の認可、許可、免許その他の處分を要する旨を規定する他の法令(昭和二十年勅令第六百五十七號、昭和二十一年商工文部省令第一號及び昭和二十一年運輸省令第三十二號を除く。)の規定はこれを適用しない。
第二十八條 特別經理株式會社は、決定整備計畫に定める資産の處分を行ふについては、工場抵當法第十三條第二項若しくは第十四條第二項の規定(鑛業抵當法第三條及び漁業財團抵當法第六條において準用する場合を含む。)、鐵道抵當法第四條若しくは第二十條の規定(明治四十二年法律第二十八號第一條及び運河法第十三條において準用する明治四十二年法律第二十八號第一條において準用する場合を含む。)及び自動車交通事業法第四十四條の規定にかかはらず、これを行ふことができる。
前項の規定は、新勘定に屬する會社の資産については、これを適用しない。
特別經理株式會社は、決定整備計畫に定める資産の處分を行ふについては、會社經理應急措置法第二十二條の規定、物資の配給の統制に關する法令の規定、定款の定又は既存の契約の條項にかかはらず、これを行ふことができる。
前項の場合においては、資産の處分の相手方の行爲についても、決定整備計畫に定める事項については、物資の配給の統制に關する法令の規定は、これを適用しない。
第二十九條 特別經理株式會社は、決定整備計畫に定める事項については、法令の規定又は定款の定にかかはらず、株主總會又は社債權者集會の決議を經ることを要しない。
第十三條の規定による決定整備計畫の定は、第二會社の株主である特別經理株式會社以外の者をも拘束する。
第三十條 整備計畫の認可があつたときには、會社經理應急措置法第十五條第三項の規定によつて中止した強制執行、假差押若しくは假處分又は競賣法による競賣手續は、決定整備計畫の實行に牴觸しないものはこれを續行し、牴觸するものは決定整備計畫の認可の時からその效力を失ふ。
前項の規定により效力を失つた強制執行、假差押若しくは假處分又は競賣法による競賣手續の費用の負擔については、命令を以て、これを定める。
第三十一條 特別經理株式會社が、決定整備計畫に定めるところにより、第二會社を設立する場合においては、商法第百六十五條、第百七十三條、第百八十一條、第百八十四條第二項及び第百八十五條乃至第百八十七條の規定は、これを適用しない。但し、決定整備計畫に定めた方針を變更しない範圍の定款の變更については、この限りでない。
第三十二條 特別經理株式會社は、決定整備計畫に定める解散の事由に因り解散する。
第三十三條 決定整備計畫に從つてなす特別經理株式會社の行爲については、民法第四百二十四條の規定は、これを適用しない。
第三十四條 特別經理株式會社は、命令を以て定める場合には、整備計畫の定めるところに從ひ、特別損失の額の全部又は一部を繰越缺損として處理することができる。
第五條第一項の規定による認可を申請し特別損失の額の全部を繰越缺損として處理する旨を定めた整備計畫の認可のあつた場合を除くの外、特別經理株式會社は、決定整備計畫に定める特別損失の額から會社經理應急措置法第十四條第一項の舊債權の負擔額として計算した額と前項の規定により繰越缺損として處理する額との合計額を控除した額を下らない額の資本を、減少しなければならない。
前項の場合においては、商法第二百二條第二項の規定は、これを適用しない。
第二項の規定による資本の減少により、株式の金額が商法第二百二條第二項に規定する金額を下る場合においては、特別經理株式會社は、資本減少の登記の日から一年以内に、同法第三百七十七條乃至第三百七十九條の規定に準じ、株式の併合をなし、株式の金額を同法第二百二條第二項に規定する金額以上に上せなければならない。
特別經理株式會社は、その株式の金額を商法第二百二條第二項に規定する金額以上に上せなければ、その資本を増加することができない。
特別經理株式會社が第二項の規定により、資本を減少する場合においては、その登記の日から一年を限り資本金額の制限に關する他の法令の規定は、これを適用しない。
第二項の規定により株式の金額が商法第二百二條第二項に規定する金額を下る場合においては、第四項の規定により同法第二百二條第二項に規定する金額以上に上せられない間において行はれた當該株式の讓渡は、命令の定める場合を除くの外、その效力を生じない。
第二項の規定による資本の減少に關し必要な事項は、命令を以て、これを定める。
第五章 舊勘定及び新勘定の併合
第三十五條 第二十一條第一項に掲げる特別經理株式會社でその特別管理人が整備計畫を提出しないものは、命令の定めるところにより、命令の定める期間内に、舊勘定及び新勘定の併合について、主務大臣の認可を申請しなければならない。
前項の規定により認可を申請する場合には、特別經理株式會社は、命令の定めるところにより、第三條及び第七條第一號の規定による計算を明かならしめる書類を作成し、特別管理人の承認を受けなければならない。
第九條第二項、第十四條第二項及び第十五條第二項の規定は、前二項の場合に、これを準用する。
第一項の規定の適用を受ける特別經理株式會社が同項の命令の定める期間内に同項の認可を申請しない場合には、主務大臣は、當該會社に對し、期限を定めて第一項の規定による認可の申請をなすべきことを命ずることができる。
前項の規定による命令を受けた特別經理株式會社が同項の期限までに第一項の規定による認可の申請をしなかつた場合には、當該會社は、その期限到來の日に解散するものとする。
第三十六條 特別經理株式會社の舊勘定及び新勘定は、左に掲げる日に併合するものとする。
一 特別管理人が第十五條第一項又は第二項の規定による認可を受けた特別經理株式會社においては、その認可を受けた日、但し、決定整備計畫において、第二會社を設立し、又は新勘定に所屬する會社財産で決定整備計畫に定める相當部分を出資し、讓渡し、賃貸し、若しくはその營業で決定整備計畫に定める相當部分の經營を委任する旨を定める場合においては、第二會社の設立の登記をした日又は決定整備計畫に從ひ出資、讓渡、賃貸若しくは營業の經營の委任をした日(これらの日が二以上あるときはその最も遲き日)
二 第五條第一項の規定により整備計畫の認可を申請しなければならない特別經理株式會社の特別管理人が、同項の規定により、命令の定める期間内に認可を申請しなかつた場合においては、その期間滿了の日
三 第十六條の規定によりあらためて整備計畫の認可を申請しなければならない特別經理株式會社の特別管理人が、同條の規定により、命令の定める期間内に認可を申請しなかつた場合においては、その期間滿了の日
四 第二十一條第三項の規定によりあらためて整備計畫の認可を申請することができる特別經理株式會社の特別管理人が、同項に定める期間内に認可を申請しなかつた場合においては、その期間滿了の日
五 第十六條又は第二十一條第三項の規定によりあらためて整備計畫の認可を申請した特別經理株式會社の特別管理人が、不認可の處分を受けた場合においては、その不認可の處分を受けた日
六 前條第一項の規定による認可を受けた特別經理株式會社においては、その認可を受けた日
七 前條第五項の規定の適用を受ける特別經理株式會社においては、その解散の日
特別經理株式會社は、前項の規定により舊勘定及び新勘定の併合があつた後においても、第二十四條乃至第二十六條の規定による經理に係る資産については、特別の帳簿を作成し、その他の資産との區別を明確にしておかなければならない。
第三十七條 特別經理株式會社は、舊勘定及び新勘定の併合があつたときには、遲滯なくその旨を公告し、本店の所在地においては二週間以内に、支店の所在地においては三週間以内に、舊勘定及び新勘定の併合の登記をなし、且つ會社經理應急措置法第八條第六項の規定による登記又は登録を抹消しなければならない。
前項の規定によつて登記又は登録しなければならない事項は、登記又は登録の後でなければ第三者に對抗できない。
第三十八條 會社經理應急措置法第七條乃至第十一條、第十三條乃至第十五條、第十六條第一項乃至第三項及び第五項、第十九條竝びに第二十一條乃至第二十三條の規定は、第三十六條第一項第一號の特別經理株式會社について、舊勘定及び新勘定の併合の日から、これを適用しない。
第三十九條 第八條の規定による命令を以て定める評價換により附せられた價額は、當該財産については、これを商法第二百八十五條に定める取得價額若しくは製作價額又は平均價額とみなす。
第八條の規定による評價換に係る營業用の固定財産の償却、その他に關し必要な事項は命令を以てこれを定める。
第八條の規定による評價換に伴ふ利益は、命令の定めるところにより、法人税法による所得、營業税法による純益の計算上これを益金に算入しない。
第四十條 特別經理株式會社が第十五條第一項又は第二項の規定による認可を受けたときには、財産目録に記載した價額は、會社經理應急措置法第九條及び第十條の規定の適用については、當該會社財産を新勘定に所屬せしめた日において第八條の規定による評價換の額にあらためられたものとする。
第四十一條 特別經理株式會社(決定整備計畫の實行により特別經理株式會社が消滅する場合においては、命令の定める者)は、命令の定めるところにより、決定整備計畫の全部の實行を終つたときには、遲滯なく主務大臣にその旨を報告し、命令の定めるところにより、公告しなければならない。
主務大臣は、前項の規定による整備計畫の全部の實行を終つた旨の報告を受ける以前において、整備計畫の迅速且つ公正な實行を確保するため、必要な命令をなすことができる。
主務大臣は、特別經理株式會社が、決定整備計畫に違反した行爲をしたときには、これを取消すことができる。
特別經理株式會社の利害關係人は、特別經理株式會社に對して、整備計畫の迅速且つ公正な實行を確保するため、必要な措置を要求し、又は主務大臣に對して、前二項の規定による主務大臣の命令を申請することができる。
第四十二條 會社經理應急措置法は、第三十六條第一項第一號の特別經理株式會社については前條第一項の規定による實行を終つた日から、其の他の特別經理株式會社については舊勘定及び新勘定の併合の日からこれを適用しない。但し、その日までになした行爲に對する罰則については、この限りでない。
特別經理株式會社は、前項に規定する日から、本店の所在地においては二週間以内に、支店の所在地においては三週間以内に、會社經理應急措置法第十七條第三項の登記を抹消し、資本金が二十萬圓未滿の特別經理株式會社は、同法第三條第一項の登記を抹消しなければならない。
第四十三條 主務大臣は、特別經理株式會社、その債權者その他の者が特別經理株式會社又は第二會社の株式を取得して、當該會社の經營を支配する虞がある場合において、必要があると認めるときには、當該株式の所有者に對し、必要な事項を指示して株式の讓渡を命じ、又は當該株式の議決權の行使を命令の定める者に委任すべきことを命ずることができる。
第六章 經濟再建整備委員會
第四十四條 この法律の圓滑な運營を圖るため、經濟再建整備委員會を置く。
第四十五條 主務大臣は、この法律の運營に關し、重要な事項の決定をなす場合、第十五條第一項又は第二項の規定による認可、第十七條第一項又は第四十三條の規定による命令及び第四十七條の規定による裁定をなす場合には、經濟再建整備委員會に諮問することを要する。
第四十六條 この法律に定めるものの外、經濟再建整備委員會に關し必要な事項は、勅令でこれを定める。
第七章 雜則
第四十七條 特別管理人がこの法律による職權を行ふについては、その過半數を以てこれを決する。但し、可否の意見が同數の場合には、特別管理人の申請により、主務大臣がこれを裁定する。
第四十八條 主務大臣は、特別經理株式會社がこの法律施行の日(この法律施行後會社經理應急措置法第一條第一項第二號の指定を受けた特別經理株式會社については、その指定の日とする。以下同じ。)前四箇月以内に公正なる再建整備を妨げることを知つてなした行爲があるときには、この法律施行の日から一年を限り、これを取消すことができる。
第四十九條 主務大臣は、必要があると認めるときには、特別經理株式會社に對して、監督上必要な命令をなすことができる。
主務大臣は、この法律の施行に關し必要があると認めるときには、關係者から報告をとり、又は當該官吏に、必要な場所に臨檢し、業務の状況若しくは帳簿、書類その他必要な物件を檢査させることができる。
前項の規定により、當該官吏に臨檢檢査させる場合には、命令の定めるところにより、その身分を示す證票を携帶させなければならない。
第五十條 主務大臣は、この法律に規定する職權の一部を地方官衙の長をして行はせることができる。
第五十一條 主務大臣は、命令の定めるところにより、この法律の施行に關する事務の一部を、日本銀行をして取り扱はせることができる。
第五十二條 この法律の中必要な規定は、命令の定めるところにより、左に掲げるものに、これを準用する。
一 株式會社以外の特別經理會社
二 特別經理會社以外のもので會社經理應急措置法の準用を受けるもの
前項の規定によりこの法律の規定を準用するにつき必要な事項に關しては、命令で特別の定をすることができる。
第五十三條 特別經理株式會社が、第三條、第七條若しくは第二十四條乃至第二十六條の規定に違反し又は不正の評價をなし、債權者又は株主に損害を及ぼしたときには、當該會社の業務を執行する役員、清算人、商法第三百九十八條の管理人若しくは破産管財人又は特別管理人は、當該會社と連帶してその損害を賠償しなければならない。但し、業務を執行する役員等で、第三條、第七條若しくは第二十四條乃至第二十六條の計算又は第八條の評價換に關し過失がなかつた者については、この限りでない。
前項の損害賠償の請求權は、第十五條第一項又は第二項の規定による認可の日から五年を經過した時、時效によつて消滅する。
第五十四條 破産手續中の特別經理株式會社については、この法律の適用に關し、命令を以て特別の定をなすことができる。
第五十五條 この法律に定めるものの外、登記その他企業の再建整備に關し必要な事項は、命令の定めるところによる。
第八章 罰則
第五十六條 左の各號の一に該當する者は、これを三年以下の懲役又は三萬圓以下の罰金に處する。
一 第三條及び第七條の規定による計算を明かならしめる書類に虚僞の記載をした者
二 第六條第十號に掲げる事項を定める整備計畫の書類に虚僞の記載をした者
三 決定整備計畫に違反して整備を實行した者
四 第四十三條の規定による命令に違反した者
第五十七條 左の各號の一に該當する者は、これを一年以下の懲役又は一萬圓以下の罰金に處する。
一 第四十一條第二項の規定による命令に違反した者
二 第四十九條第二項の規定による報告を怠り、又は虚僞の報告をした者
三 正當な事由がなく、第四十九條第二項の規定による檢査を拒み、妨げ、又は忌避した者
第五十八條 特別管理人が第五條第一項、第十六條又は第二十條第一項の規定に違反して、認可の申請を怠つたときには、これを一年以下の懲役又は一萬圓以下の罰金に處する。
第五十九條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者がその法人又は人の業務又は財産に關して第五十六條又は第五十七條第一號若しくは第二號の違反行爲をしたときには、行爲者を罰する外、その法人又は人に對しても、各本條の罰金刑を科する。
第六十條 左の場合においては、その行爲をなした特別經理株式會社の取締役その他これに準ずる者又は特別管理人は、これを五千圓以下の過料に處する。
一 第九條第二項、第十四條第一項若しくは第十八條(第二十條第二項及び第二十一條第二項において準用する場合を含む。以下同じ。)、第三十七條第一項又は第四十一條第一項の規定による公告をせず、又は虚僞の公告をしたとき
二 第九條第二項、第十四條第一項又は第十八條の規定に違反して書類を備へ置かず、又は正當の事由なくして書類の閲覽を拒んだとき
三 第九條第一項又は第三十五條第二項の規定に違反して特別管理人の承認を受けなかつたとき
四 この法律又はこの法律に基いて發する命令に違反して登記又は登録を怠つたとき
五 第三十四條第四項又は第五項の規定に違反して株式の併合をなさず、又は資本の増加をしたとき
六 第三十九條第二項の規定に基いて發する命令又は第四十九條第一項の規定による命令に違反したとき
七 第四十一條第一項の規定による報告を怠つたとき
第六十一條 第五十六條乃至前條の規定は、第五十二條の場合に、これを適用する。但し第六十條中特別經理株式會社とあるのは、第五十四條の規定による特別經理株式會社以外のものとする。
附 則
この法律の施行の期日は、勅令でこれを定める。
會社經理應急措置法の一部を左のやうに改正する。
第一條第一項第一號中「財産目録に記載した動産、不動産、債權その他の財産の指定時における價格(株式會社、株式合資會社又は有限會社の營業用の固定財産及び取引所の相場のある有價證券については、商法第二百八十五條又は同法第四百五十八條第二項若しくは有限會社法第四十六條第一項において準用する商法第二百八十五條に定める價額を超えることができない。)が當該財産目録に記載した價額を超える場合におけるその超過額」を「貸借對照表に記載した指定時を以て終了する事業年度の利益金額」に改める。
第四條第一項中「第一條第一項第二號」を「第一條第一項第一號本文の會社又は同項第二號」に、「同號」を「この法律施行の日まで又は同項第二號」に改め、同條第三項中「指定時から」の下に「この法律施行の日前まで又は」を加へる。
第八條の二 特別經理會社が新勘定に所屬せしめた會社財産のうちで舊勘定に所屬せしめることを必要とするものを生じたときには、特別管理人の決定に基き主務大臣の認可を受け、これを舊勘定に振り替へることができる。この場合においては、當該會社財産は、舊勘定に振り替へられた日において、舊勘定に所屬せしめられたものとし、第十四條第五項の規定を準用する。
第八條第一項乃至第四項及び第六項の規定は、新勘定から舊勘定に振り替へた會社財産についてこれを準用する。
第三十八條 削除
第三十九條第二項中「前項において」を「前二項において」に、「前項の特別經理會社以外の者」を「第一項の特別經理會社以外の者又は前項の會社その他の者」に、「前項の規定」を「前二項の規定」に改め、同條第一項の次に左の一項を加へる。
この法律のうち必要な規定は、命令の定めるところによつて、命令の定める日以後命令の定める損失に因り債務超過又は支拂不能に陷る虞のある會社その他の者に對し、これを準用することができる。
朕は、帝国議会の協賛を経た企業再建整備法を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
御名御璽
昭和二十一年十月十八日
内閣総理大臣 吉田茂
司法大臣 木村篤太郎
農林大臣 和田博雄
商工大臣 星島二郎
厚生大臣 河合良成
運輸大臣 平塚常次郎
大蔵大臣 石橋湛山
法律第四十号
企業再建整備法目次
第一章
総則
第二章
特別損失
第三章
整備計画の立案
第四章
整備計画の実行
第五章
旧勘定及び新勘定の併合
第六章
経済再建整備委員会
第七章
雑則
第八章
罰則
企業再建整備法
第一章 総則
第一条 この法律は、会社経理応急措置法の適用を受けるものについて、戦時補償特別税を課せられること等に因り生じた損失を適正に処理し、その速かな再建整備を促進し、以て産業の健全な回復及び振興を図ることを目的とする。
第二条 この法律で、特別経理会社、指定時、存外資金、会社財産、旧勘定、新勘定又は特別管理人といふのは、会社経理応急措置法の特別経理会社、指定時、存外資産、会社財産、旧勘定、新勘定又は特別管理人をいふ。
第二章 特別損失
第三条 特別経理会社である株式会社(以下特別経理株式会社といふ。)は命令の定めるところにより、指定時現在で、左の計算をしなければならない。
一 左の各号に掲げる額(計算の際、額が確定してゐないものについては、その予想額)の金額を合計する。
イ 戦時補償特別税を課せられることに因り生ずる損失額
ロ 在外資金についての損失額
ハ 会社経理応急措置法第五条の財産目録(以下財産目録といふ。)に記載した金融機関に対する預貯金等が金融緊急措置令施行規則第一条ノ三の規定により第二封鎖預金等となり、支払を受けることが不能となることに因り生ずる損失額
ニ 前各号に掲げるものを除くの外、終戦又は戦時補償特別措置法の施行に伴ひ生ずる損失額
ホ 会社経理特別措置令第二条第三号、企業整備資金措置法施行令第六条第三号並びに商法第二百八十六条、第二百八十七条及び第二百九十一条第三項の規定により、会社経理応急措置法第五条の貸借対照表(本条中以下貸借対照表といふ。)の資産の部に計上した金額の合計額
ヘ 貸借対照表の資産の部に計上した指定時を以て終了する事業年度の欠損及び繰越欠損の額
ト 前各号に掲げるものを除くの外、指定時後旧勘定及び新勘定の併合(旧勘定のみを設ける特別経理株式会社については、旧勘定の廃止。以下同じ。)の時までに旧勘定に生ずる総損金の額
チ その他命令を以て定める額
二 左の各号に掲げる額(計算の際、額が確定してゐないものについては、その予想額)の金額を合計する。
イ 貸借対照表の負債の部に計上した指定時を以て終了する事業年度の利益金及び繰越利益金の額
ロ 貸借対照表の負債の部に計上した積立金で、命令を以て定めるものの額
ハ 指定時後旧勘定及び新勘定の併合の時までに旧勘定に生ずる総益金の額
ニ その他命令を以て定める額
第四条 前条第一号の規定による合計金額が同条第二号の規定による合計金額を超える場合における超過額は、これを特別損失の額といふ。
第三章 整備計画の立案
第五条 資本金百万円以上の特別経理株式会社、昭和二十年勅令第六百五十七号第一条ノ二の規定による指定会社である特別経理株式会社及び第七条第二号の規定により旧債権の負担額の計算をなし、第八条の規定により会社財産につき評価換をなし、又は第三十四条第一項の規定による処理をなす特別経理株式会社の特別管理人は、命令の定めるところにより、整備計画を立案し、命令の定める期間内に、主務大臣の認可を申請しなければならない。
昭和二十年勅令第六百五十七号第一条ノ二の規定による指定会社である特別経理株式会社及び昭和二十一年 商工 文部 省令第一号第一条第一項の規定による経営者又は昭和二十一年運輸省令第三十二号第一条第一項の規定による経営者等である特別経理株式会社が、その整備計画に、これらの法令に基いて認可を受けなければならない事項について定をなす場合の前項の規定による認可の申請は、これらの法令の適用については、これを、これらの法令に基く認可の申請とする。
第六条 整備計画には、命令の定めるところにより、左に掲げる事項に関して定をなさなければならない。
一 会社の存続又は解散の別
二 存続する場合には、整備計画を行ふに当つて、商法の会社の整理によるか、否かの別
三 存続する場合には、今後の会社の事業計画及び資金計画並びに役員の氏名
四 解散する場合には、解散の時期及び清算又は特別清算の何れの手続によるかの別
五 合併する場合には、合併の相手方、方法及び期限
六 合併に因り会社を設立する場合には、その会社の事業計画及び資金計画並びに株主、役員及び債権者の氏名又は名称
七 その営業の経営の全部若しくは一部を委任し、又はその資産の全部若しくは一部を賃貸し、出資し、若しくは譲渡すべき会社をあらたに設立する場合には、その計画の大要、株主及び役員の氏名又は名称、第十条の規定による債務の承継に関する事項並びに株式の売出その他処分に関する事項
八 旧勘定に所属する資産の処分の方法に関する事項
九 前二号に係るものの外、資産の処分の方法に関する事項
十 特別損失の額、特別損失を負担する知れたる債権の総額及び特別損失を負担する知れたる債権の総額と第七条の規定により旧債権の負担額として計算する額との割合並びに第八条の規定による評価換に関する事項
十一 会社経理応急措置法第十四条第一項の旧債権(同項但書の債権を除く。以下同じ。)についての条件の変更に関する事項
十二 未払込株金の払込に関する事項
十三 第十一条の規定による株式の発行に関する事項
十四 第十三条の規定による議決権の制限に関する事項
十五 第二十四条乃至第二十六条の規定による利益の帰属に関する事項
十六 第三十四条第一項の規定による繰越欠損としての処理に関する事項
十七 第三十四条第二項の規定による資本の減少に関する事項
十八 整備計画を行ふについての計画に関する事項
十九 その他命令の定める事項
第七条 特別経理株式会社は、特別損失の額について、左の順序により、その負担額を計算しなければならない。
一 特別損失の額について、資本金の額の十分の九に相当する額(資本金が十万円を超え五十万円未満の特別経理株式会社については資本金の額から五万円を控除した額、資本金が十万円以下の特別経理株式会社については資本金の額の二分の一)まで、株主の負担額として、これを計算する。
二 前号によるもなほ特別損失の額が残るときには、その残額は、会社経理応急措置法第十四条第一項の旧債権のうち知れたる債権(以下知れたる特別損失負担債権といふ。)の額の十分の七に達するまで、知れたる特別損失負担債権の債権者の負担額として、これを計算する。
三 前号によるもなほ特別損失の額が残るときには、その残額は、資本金の額の十分の一に相当する額(資本金が十万円を超え五十万円未満の特別経理株式会社については五万円、資本金が十万円以下の特別経理株式会社については資本金の額の二分の一)まで、株主の負担額として、これを計算する。
四 前号によるもなほ特別損失の額が残るときには、その残額は、知れたる特別損失負担債権の額の十分の三に達するまで、知れたる特別損失負担債権の債権者の負担額として、これを計算する。
第八条 特別経理株式会社の特別管理人は、会社財産についての命令を以て定める評価換を行はうとするときには、これを整備計画に定めなければならない。
前項の規定による命令を以て定める評価換に関しては、他の法令の規定又は定款の定は、これを適用しない。
第一項の規定により評価換を行ふ場合には、その評価換によつて生じた益金は、特別損失の計算については、これを第三条第二号の合計金額に加算しなければならない。
第九条 特別経理株式会社は、命令の定めるところにより、第三条及び第七条の規定による計算を明かならしめる書類を作成し、特別管理人の承認を受けなければならない。
前項の会社は、命令の定めるところにより、遅滞なく、同項の承認を受けた書類を当該会社の知れたる債権者に提出すると共に、公告をなし、且つその書類を本店及び支店に備ヘ置き、利害関係人の閲覧に供しなければならない。
第一項の会社は、前項の規定により知れたる債権者に提出する書類には、第一項の承認を受けたことを証明する書類並びに前条の規定による評価換を行ふ場合にはその評価換を行はずしてなした第三条及び第七条の規定による計算を明かならしめる書類を添附しなければならない。
第十条 特別経理株式会社が新勘定に所属する資産の全部又は一部を出資する場合においては、その出資を受ける者は、命令の定めるところにより、指定時後特別経理株式会社の新勘定の負担となつた債務を承継する。
前項の債務の承継については整備計画において、これを定めなければならない。
第十一条 整備計画に議決権のない株式であつて議決権のある株式に転換することを請求することができるものを発行することを定めた場合には、当該会社については、商法第二百四十二条第二項の規定は、これを適用しない。
前項の場合における転換の請求の期間については、命令を以てこれを定める。
第十二条 整備計画の定めるところによつてなす未払込株金の払込の場合に関しては、他の法令又は定款にかかはらず、命令を以て別段の定をなすことができる。
第十三条 特別経理株式会社が、第六条第七号の規定による会社(以下第二会社といふ。)の株式の相当多数を当該会社その他の者が所有する場合に、その議決権を受託機関を設けてこれに行使せしめ、その他議決権の行使の制限をしようとするときには、整備計画にその旨を定めなければならない。
第十四条 特別経理株式会社の特別管理人は、第五条第一項の規定による認可を申請したときには、遅滞なく第六条第十号に掲げる事項を公告し、且つ当該整備計画を記載した書類を当該会社の本店及び支店に備へ置き、利害関係人の閲覧に供しなければならない。
株主及び債権者は、当該整備計画に定める事項に異議があれば、前項の規定による公告の日から一箇月以内に、事由を具して主務大臣にその旨を申し出ることができる。
第十五条 主務大臣は、第五条第一項の規定による申請があつた場合には、当該整備計画が適正でその実行に支障がなく、且つ公益に反しないか否かを審査し、前条第二項の期間経過後文書によつて認可又は不認可の処分をなす。
主務大臣は、前条第二項の規定による申出のあつた場合において必要があると認めるときには、整備計画に定める事項を変更して認可することができる。
主務大臣は、前項の規定により整備計画に定める事項を変更して認可したとき、前条第二項の規定による異議を採用しなかつたとき、又は不認可の処分をなしたときには、第一項の規定による認可又は不認可の文書に、その理由を附記することを要する。
第十六条 第五条第一項の規定により認可を申請した特別経理株式会社の特別管理人は、前条第一項の規定により不認可の処分を受けた場合には、同条第三項の規定により不認可の文書に附記された理由に基き、当該整備計画に所要の修正を加へ、不認可の処分の日から一箇月以内にあらためて第五条第一項の規定による認可を申請しなければならない。
第十七条 主務大臣は、第五条第一項の規定の適用を受ける特別経理株式会社の特別管理人が同項の命令の定める期間内又は前条の期間内に整備計画の認可を申請しない場合及びふたたび整備計画の不認可の処分を受けた場合には、当該会社に対しその解散を命ずることができる。
前項の規定による命令を受けた特別経理株式会社は、同項の規定による命令に因り解散する。
第十八条 特別経理株式会社の特別管理人は、第十五条第一項又は第二項の規定による認可があつた場合には、命令の定めるところにより、遅滞なく第六条第十号に掲げる事項を公告し、且つ認可を受けた整備計画(以下決定整備計画といふ。)を記載した書類を当該会社の本店及び支店に備へ置き、利害関係人の閲覧に供しなければならない。
第十九条 会社経理応急措置法第十四条第一項の旧債権は、決定整備計画に定める第六条第十号の割合を乗じた額に相当する額だけ、第十五条第一項又は第二項の規定による認可を受けた日に消滅し、その債権の額は、その認可に因り確定する。
前項の場合においては、社債の種類並びに留置権、先取特権、質権及び抵当権の有無にかかはらず、すべての債権者の負担の比率は、平等とする。
第二十条 已むを得ない事由により、決定整備計画に定める事項(前条の規定による債権の消滅及び確定に関する事項を除く。)を変更する必要を生じたときには、特別管理人は、命令の定めるところにより、命令の定める期間内に、決定整備計画を変更し、主務大臣の認可を申請しなければならない。但し、命令の定める場合はこの限りでない。
第十四条乃至第十八条の規定は、前項の場合に、これを準用する。
第二十一条 第五条第一項の規定の適用を受ける特別経理株式会社以外の特別経理株式会社の特別管理人は、必要があると認めるときには、整備計画を立案し、命令の定めるところにより、主務大臣の認可を申請することができる。
第五条第二項、第十四条、第十五条、第十八条及び前条の規定は、前項の場合に、これを準用する。
第一項の規定により認可の申請をなした特別経理株式会社の特別管理人は、前項において準用する第十五条第一項の規定により不認可の処分を受けた場合においては、前項において準用する第十五条第三項の規定により不認可の文書に附記された理由に基いて、当該整備計画に所要の修正を加へ、不認可の処分の日から一箇月以内に、あらためて第一項の規定による認可を申請することができる。
第四章 整備計画の実行
第二十二条 特別経理株式会社の特別管理人が、第十五条第一項又は第二項の規定(第二十条第二項及び前条第二項において準用する場合を含む。以下同じ。)による認可を受けたときには、当該会社は、決定整備計画に従ひ遅滞なく整備を行はなければならない。
第二十三条 主務大臣は、商法の会社の整理又は特別清算の手続による旨の定のある整備計画を認可したときには、その旨を裁判所に通告することを要する。
前項の規定による通告は、決定整備計画の定めるところに従ひ、会社の整理又は特別清算の開始の通告とみなす。
第二十四条 特別経理株式会社は、決定整備計画の定めるところに従ひ、第六条第七号乃至第九号に定める会社の資産を処分する場合において、処分益又は処分損を生じたときは、命令の定めるところによりその処分益又は処分損を夫ゝ仮勘定として貸借対照表の負債の部又は資産の部に計上しなければならない。
第二十五条 特別経理株式会社は、決定整備計画に定めた特別損失の額が増減した場合においては、命令の定めるところにより、その増加額又は減少額を夫ゝ仮勘定として貸借対照表の負債の部又は資産の部に計上しなければならない。
第二十六条 特別経理株式会社は、前二条の規定により、仮勘定として経理すべき額が確定した時において、当該仮勘定として負債の部又は資産の部に計上した額の合計差引計算をなし、負債の部に計上した額の合計金額が資産の部に計上した額の合計金額を超える場合においては、その超過額に相当する金額を決定整備計画に定める方法により、第十九条の規定により消滅した債権の額の限度において、会社経理応急措置法第十四条第一項の旧債権に帰属せしめなければならない。
特別経理株式会社は、前項の規定による仮勘定の合計差引計算の結果、負債の部に計上した額の合計金額が資産の部に計上した額の合計金額を超える場合において、その超過額から同項の規定により債権者に帰属せしめる額を控除してなほ残額があるときには、その残額を仮勘定の額の確定した日の属する事業年度の益金として経理し、負債の部に計上した額の合計金額が資産の部に計上した額の合計金額に満たない場合においては、その不足額を仮勘定の額の確定した日の属する事業年度の損金として経理しなければならない。
第二十七条 決定整備計画に定める事項については、行政官庁の認可、許可、免許その他の処分を要する旨を規定する他の法令(昭和二十年勅令第六百五十七号、昭和二十一年商工文部省令第一号及び昭和二十一年運輸省令第三十二号を除く。)の規定はこれを適用しない。
第二十八条 特別経理株式会社は、決定整備計画に定める資産の処分を行ふについては、工場抵当法第十三条第二項若しくは第十四条第二項の規定(鉱業抵当法第三条及び漁業財団抵当法第六条において準用する場合を含む。)、鉄道抵当法第四条若しくは第二十条の規定(明治四十二年法律第二十八号第一条及び運河法第十三条において準用する明治四十二年法律第二十八号第一条において準用する場合を含む。)及び自動車交通事業法第四十四条の規定にかかはらず、これを行ふことができる。
前項の規定は、新勘定に属する会社の資産については、これを適用しない。
特別経理株式会社は、決定整備計画に定める資産の処分を行ふについては、会社経理応急措置法第二十二条の規定、物資の配給の統制に関する法令の規定、定款の定又は既存の契約の条項にかかはらず、これを行ふことができる。
前項の場合においては、資産の処分の相手方の行為についても、決定整備計画に定める事項については、物資の配給の統制に関する法令の規定は、これを適用しない。
第二十九条 特別経理株式会社は、決定整備計画に定める事項については、法令の規定又は定款の定にかかはらず、株主総会又は社債権者集会の決議を経ることを要しない。
第十三条の規定による決定整備計画の定は、第二会社の株主である特別経理株式会社以外の者をも拘束する。
第三十条 整備計画の認可があつたときには、会社経理応急措置法第十五条第三項の規定によつて中止した強制執行、仮差押若しくは仮処分又は競売法による競売手続は、決定整備計画の実行に牴触しないものはこれを続行し、牴触するものは決定整備計画の認可の時からその効力を失ふ。
前項の規定により効力を失つた強制執行、仮差押若しくは仮処分又は競売法による競売手続の費用の負担については、命令を以て、これを定める。
第三十一条 特別経理株式会社が、決定整備計画に定めるところにより、第二会社を設立する場合においては、商法第百六十五条、第百七十三条、第百八十一条、第百八十四条第二項及び第百八十五条乃至第百八十七条の規定は、これを適用しない。但し、決定整備計画に定めた方針を変更しない範囲の定款の変更については、この限りでない。
第三十二条 特別経理株式会社は、決定整備計画に定める解散の事由に因り解散する。
第三十三条 決定整備計画に従つてなす特別経理株式会社の行為については、民法第四百二十四条の規定は、これを適用しない。
第三十四条 特別経理株式会社は、命令を以て定める場合には、整備計画の定めるところに従ひ、特別損失の額の全部又は一部を繰越欠損として処理することができる。
第五条第一項の規定による認可を申請し特別損失の額の全部を繰越欠損として処理する旨を定めた整備計画の認可のあつた場合を除くの外、特別経理株式会社は、決定整備計画に定める特別損失の額から会社経理応急措置法第十四条第一項の旧債権の負担額として計算した額と前項の規定により繰越欠損として処理する額との合計額を控除した額を下らない額の資本を、減少しなければならない。
前項の場合においては、商法第二百二条第二項の規定は、これを適用しない。
第二項の規定による資本の減少により、株式の金額が商法第二百二条第二項に規定する金額を下る場合においては、特別経理株式会社は、資本減少の登記の日から一年以内に、同法第三百七十七条乃至第三百七十九条の規定に準じ、株式の併合をなし、株式の金額を同法第二百二条第二項に規定する金額以上に上せなければならない。
特別経理株式会社は、その株式の金額を商法第二百二条第二項に規定する金額以上に上せなければ、その資本を増加することができない。
特別経理株式会社が第二項の規定により、資本を減少する場合においては、その登記の日から一年を限り資本金額の制限に関する他の法令の規定は、これを適用しない。
第二項の規定により株式の金額が商法第二百二条第二項に規定する金額を下る場合においては、第四項の規定により同法第二百二条第二項に規定する金額以上に上せられない間において行はれた当該株式の譲渡は、命令の定める場合を除くの外、その効力を生じない。
第二項の規定による資本の減少に関し必要な事項は、命令を以て、これを定める。
第五章 旧勘定及び新勘定の併合
第三十五条 第二十一条第一項に掲げる特別経理株式会社でその特別管理人が整備計画を提出しないものは、命令の定めるところにより、命令の定める期間内に、旧勘定及び新勘定の併合について、主務大臣の認可を申請しなければならない。
前項の規定により認可を申請する場合には、特別経理株式会社は、命令の定めるところにより、第三条及び第七条第一号の規定による計算を明かならしめる書類を作成し、特別管理人の承認を受けなければならない。
第九条第二項、第十四条第二項及び第十五条第二項の規定は、前二項の場合に、これを準用する。
第一項の規定の適用を受ける特別経理株式会社が同項の命令の定める期間内に同項の認可を申請しない場合には、主務大臣は、当該会社に対し、期限を定めて第一項の規定による認可の申請をなすべきことを命ずることができる。
前項の規定による命令を受けた特別経理株式会社が同項の期限までに第一項の規定による認可の申請をしなかつた場合には、当該会社は、その期限到来の日に解散するものとする。
第三十六条 特別経理株式会社の旧勘定及び新勘定は、左に掲げる日に併合するものとする。
一 特別管理人が第十五条第一項又は第二項の規定による認可を受けた特別経理株式会社においては、その認可を受けた日、但し、決定整備計画において、第二会社を設立し、又は新勘定に所属する会社財産で決定整備計画に定める相当部分を出資し、譲渡し、賃貸し、若しくはその営業で決定整備計画に定める相当部分の経営を委任する旨を定める場合においては、第二会社の設立の登記をした日又は決定整備計画に従ひ出資、譲渡、賃貸若しくは営業の経営の委任をした日(これらの日が二以上あるときはその最も遅き日)
二 第五条第一項の規定により整備計画の認可を申請しなければならない特別経理株式会社の特別管理人が、同項の規定により、命令の定める期間内に認可を申請しなかつた場合においては、その期間満了の日
三 第十六条の規定によりあらためて整備計画の認可を申請しなければならない特別経理株式会社の特別管理人が、同条の規定により、命令の定める期間内に認可を申請しなかつた場合においては、その期間満了の日
四 第二十一条第三項の規定によりあらためて整備計画の認可を申請することができる特別経理株式会社の特別管理人が、同項に定める期間内に認可を申請しなかつた場合においては、その期間満了の日
五 第十六条又は第二十一条第三項の規定によりあらためて整備計画の認可を申請した特別経理株式会社の特別管理人が、不認可の処分を受けた場合においては、その不認可の処分を受けた日
六 前条第一項の規定による認可を受けた特別経理株式会社においては、その認可を受けた日
七 前条第五項の規定の適用を受ける特別経理株式会社においては、その解散の日
特別経理株式会社は、前項の規定により旧勘定及び新勘定の併合があつた後においても、第二十四条乃至第二十六条の規定による経理に係る資産については、特別の帳簿を作成し、その他の資産との区別を明確にしておかなければならない。
第三十七条 特別経理株式会社は、旧勘定及び新勘定の併合があつたときには、遅滞なくその旨を公告し、本店の所在地においては二週間以内に、支店の所在地においては三週間以内に、旧勘定及び新勘定の併合の登記をなし、且つ会社経理応急措置法第八条第六項の規定による登記又は登録を抹消しなければならない。
前項の規定によつて登記又は登録しなければならない事項は、登記又は登録の後でなければ第三者に対抗できない。
第三十八条 会社経理応急措置法第七条乃至第十一条、第十三条乃至第十五条、第十六条第一項乃至第三項及び第五項、第十九条並びに第二十一条乃至第二十三条の規定は、第三十六条第一項第一号の特別経理株式会社について、旧勘定及び新勘定の併合の日から、これを適用しない。
第三十九条 第八条の規定による命令を以て定める評価換により附せられた価額は、当該財産については、これを商法第二百八十五条に定める取得価額若しくは製作価額又は平均価額とみなす。
第八条の規定による評価換に係る営業用の固定財産の償却、その他に関し必要な事項は命令を以てこれを定める。
第八条の規定による評価換に伴ふ利益は、命令の定めるところにより、法人税法による所得、営業税法による純益の計算上これを益金に算入しない。
第四十条 特別経理株式会社が第十五条第一項又は第二項の規定による認可を受けたときには、財産目録に記載した価額は、会社経理応急措置法第九条及び第十条の規定の適用については、当該会社財産を新勘定に所属せしめた日において第八条の規定による評価換の額にあらためられたものとする。
第四十一条 特別経理株式会社(決定整備計画の実行により特別経理株式会社が消滅する場合においては、命令の定める者)は、命令の定めるところにより、決定整備計画の全部の実行を終つたときには、遅滞なく主務大臣にその旨を報告し、命令の定めるところにより、公告しなければならない。
主務大臣は、前項の規定による整備計画の全部の実行を終つた旨の報告を受ける以前において、整備計画の迅速且つ公正な実行を確保するため、必要な命令をなすことができる。
主務大臣は、特別経理株式会社が、決定整備計画に違反した行為をしたときには、これを取消すことができる。
特別経理株式会社の利害関係人は、特別経理株式会社に対して、整備計画の迅速且つ公正な実行を確保するため、必要な措置を要求し、又は主務大臣に対して、前二項の規定による主務大臣の命令を申請することができる。
第四十二条 会社経理応急措置法は、第三十六条第一項第一号の特別経理株式会社については前条第一項の規定による実行を終つた日から、其の他の特別経理株式会社については旧勘定及び新勘定の併合の日からこれを適用しない。但し、その日までになした行為に対する罰則については、この限りでない。
特別経理株式会社は、前項に規定する日から、本店の所在地においては二週間以内に、支店の所在地においては三週間以内に、会社経理応急措置法第十七条第三項の登記を抹消し、資本金が二十万円未満の特別経理株式会社は、同法第三条第一項の登記を抹消しなければならない。
第四十三条 主務大臣は、特別経理株式会社、その債権者その他の者が特別経理株式会社又は第二会社の株式を取得して、当該会社の経営を支配する虞がある場合において、必要があると認めるときには、当該株式の所有者に対し、必要な事項を指示して株式の譲渡を命じ、又は当該株式の議決権の行使を命令の定める者に委任すべきことを命ずることができる。
第六章 経済再建整備委員会
第四十四条 この法律の円滑な運営を図るため、経済再建整備委員会を置く。
第四十五条 主務大臣は、この法律の運営に関し、重要な事項の決定をなす場合、第十五条第一項又は第二項の規定による認可、第十七条第一項又は第四十三条の規定による命令及び第四十七条の規定による裁定をなす場合には、経済再建整備委員会に諮問することを要する。
第四十六条 この法律に定めるものの外、経済再建整備委員会に関し必要な事項は、勅令でこれを定める。
第七章 雑則
第四十七条 特別管理人がこの法律による職権を行ふについては、その過半数を以てこれを決する。但し、可否の意見が同数の場合には、特別管理人の申請により、主務大臣がこれを裁定する。
第四十八条 主務大臣は、特別経理株式会社がこの法律施行の日(この法律施行後会社経理応急措置法第一条第一項第二号の指定を受けた特別経理株式会社については、その指定の日とする。以下同じ。)前四箇月以内に公正なる再建整備を妨げることを知つてなした行為があるときには、この法律施行の日から一年を限り、これを取消すことができる。
第四十九条 主務大臣は、必要があると認めるときには、特別経理株式会社に対して、監督上必要な命令をなすことができる。
主務大臣は、この法律の施行に関し必要があると認めるときには、関係者から報告をとり、又は当該官吏に、必要な場所に臨検し、業務の状況若しくは帳簿、書類その他必要な物件を検査させることができる。
前項の規定により、当該官吏に臨検検査させる場合には、命令の定めるところにより、その身分を示す証票を携帯させなければならない。
第五十条 主務大臣は、この法律に規定する職権の一部を地方官衙の長をして行はせることができる。
第五十一条 主務大臣は、命令の定めるところにより、この法律の施行に関する事務の一部を、日本銀行をして取り扱はせることができる。
第五十二条 この法律の中必要な規定は、命令の定めるところにより、左に掲げるものに、これを準用する。
一 株式会社以外の特別経理会社
二 特別経理会社以外のもので会社経理応急措置法の準用を受けるもの
前項の規定によりこの法律の規定を準用するにつき必要な事項に関しては、命令で特別の定をすることができる。
第五十三条 特別経理株式会社が、第三条、第七条若しくは第二十四条乃至第二十六条の規定に違反し又は不正の評価をなし、債権者又は株主に損害を及ぼしたときには、当該会社の業務を執行する役員、清算人、商法第三百九十八条の管理人若しくは破産管財人又は特別管理人は、当該会社と連帯してその損害を賠償しなければならない。但し、業務を執行する役員等で、第三条、第七条若しくは第二十四条乃至第二十六条の計算又は第八条の評価換に関し過失がなかつた者については、この限りでない。
前項の損害賠償の請求権は、第十五条第一項又は第二項の規定による認可の日から五年を経過した時、時効によつて消滅する。
第五十四条 破産手続中の特別経理株式会社については、この法律の適用に関し、命令を以て特別の定をなすことができる。
第五十五条 この法律に定めるものの外、登記その他企業の再建整備に関し必要な事項は、命令の定めるところによる。
第八章 罰則
第五十六条 左の各号の一に該当する者は、これを三年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
一 第三条及び第七条の規定による計算を明かならしめる書類に虚偽の記載をした者
二 第六条第十号に掲げる事項を定める整備計画の書類に虚偽の記載をした者
三 決定整備計画に違反して整備を実行した者
四 第四十三条の規定による命令に違反した者
第五十七条 左の各号の一に該当する者は、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
一 第四十一条第二項の規定による命令に違反した者
二 第四十九条第二項の規定による報告を怠り、又は虚偽の報告をした者
三 正当な事由がなく、第四十九条第二項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
第五十八条 特別管理人が第五条第一項、第十六条又は第二十条第一項の規定に違反して、認可の申請を怠つたときには、これを一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。
第五十九条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務又は財産に関して第五十六条又は第五十七条第一号若しくは第二号の違反行為をしたときには、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
第六十条 左の場合においては、その行為をなした特別経理株式会社の取締役その他これに準ずる者又は特別管理人は、これを五千円以下の過料に処する。
一 第九条第二項、第十四条第一項若しくは第十八条(第二十条第二項及び第二十一条第二項において準用する場合を含む。以下同じ。)、第三十七条第一項又は第四十一条第一項の規定による公告をせず、又は虚偽の公告をしたとき
二 第九条第二項、第十四条第一項又は第十八条の規定に違反して書類を備へ置かず、又は正当の事由なくして書類の閲覧を拒んだとき
三 第九条第一項又は第三十五条第二項の規定に違反して特別管理人の承認を受けなかつたとき
四 この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反して登記又は登録を怠つたとき
五 第三十四条第四項又は第五項の規定に違反して株式の併合をなさず、又は資本の増加をしたとき
六 第三十九条第二項の規定に基いて発する命令又は第四十九条第一項の規定による命令に違反したとき
七 第四十一条第一項の規定による報告を怠つたとき
第六十一条 第五十六条乃至前条の規定は、第五十二条の場合に、これを適用する。但し第六十条中特別経理株式会社とあるのは、第五十四条の規定による特別経理株式会社以外のものとする。
附 則
この法律の施行の期日は、勅令でこれを定める。
会社経理応急措置法の一部を左のやうに改正する。
第一条第一項第一号中「財産目録に記載した動産、不動産、債権その他の財産の指定時における価格(株式会社、株式合資会社又は有限会社の営業用の固定財産及び取引所の相場のある有価証券については、商法第二百八十五条又は同法第四百五十八条第二項若しくは有限会社法第四十六条第一項において準用する商法第二百八十五条に定める価額を超えることができない。)が当該財産目録に記載した価額を超える場合におけるその超過額」を「貸借対照表に記載した指定時を以て終了する事業年度の利益金額」に改める。
第四条第一項中「第一条第一項第二号」を「第一条第一項第一号本文の会社又は同項第二号」に、「同号」を「この法律施行の日まで又は同項第二号」に改め、同条第三項中「指定時から」の下に「この法律施行の日前まで又は」を加へる。
第八条の二 特別経理会社が新勘定に所属せしめた会社財産のうちで旧勘定に所属せしめることを必要とするものを生じたときには、特別管理人の決定に基き主務大臣の認可を受け、これを旧勘定に振り替へることができる。この場合においては、当該会社財産は、旧勘定に振り替へられた日において、旧勘定に所属せしめられたものとし、第十四条第五項の規定を準用する。
第八条第一項乃至第四項及び第六項の規定は、新勘定から旧勘定に振り替へた会社財産についてこれを準用する。
第三十八条 削除
第三十九条第二項中「前項において」を「前二項において」に、「前項の特別経理会社以外の者」を「第一項の特別経理会社以外の者又は前項の会社その他の者」に、「前項の規定」を「前二項の規定」に改め、同条第一項の次に左の一項を加へる。
この法律のうち必要な規定は、命令の定めるところによつて、命令の定める日以後命令の定める損失に因り債務超過又は支払不能に陥る虞のある会社その他の者に対し、これを準用することができる。