朕徵兵令改正ノ件ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十二年一月二十一日
內閣總理大臣 伯爵 黑田淸隆
陸軍大臣 伯爵 大山巖
海軍大臣 伯爵 西鄕從道
法律第一號
徵兵令
第一章 總則
第一條 日本帝國臣民ニシテ滿十七歲ヨリ滿四十歲迄ノ男子ハ總テ兵役ニ服スルノ義務アルモノトス
第二條 兵役ハ分テ常備兵役後備兵役及國民兵役トス
第三條 常備兵役ハ分テ現役及豫備役トス
現役ハ陸軍ハ三箇年海軍ハ四箇年ニシテ滿二十歲ニ至リタル者之ニ服シ豫備役ハ陸軍ハ四箇年海軍ハ三箇年ニシテ現役ヲ終リタル者之ニ服ス
第四條 後備兵役ハ五箇年ニシテ常備兵役ヲ終リタル者之ニ服ス
第五條 國民兵役ハ滿十七歲ヨリ滿四十歲迄ノ者ニシテ常備兵役及後備兵役ニ在ラサル者之ニ服ス
第六條 各兵役ノ期限既ニ滿ルト雖モ戰時或ハ事變ニ際スルトキ若クハ臨時ニ演習或ハ觀兵ノ擧アルトキ若クハ航海中或ハ外國駐劄中ハ其期ヲ延スコトアル可シ
第七條 重罪ノ刑ニ處セラレタル者ハ兵役ニ服スルコトヲ許サス
第二章 服役
第八條 陸軍現役兵ハ每年所要ノ人員ニ應シ壯丁ノ身材藝能職業ニ從ヒ步兵騎兵砲兵工兵輜重兵職工及雜卒ニ區別シ抽籤ノ法ニ依リ當籤ノ者ヲ以テ之ニ充ツ
海軍現役兵ハ每年所要ノ人員ニ應シ沿海地方及島嶼ノ壯丁ヲ調査シ海軍ニ適スル職業ニ從ヒ水兵火夫職工及雜卒ニ區別シ抽籤ノ法ニ依リ當籤ノ者ヲ以テ之ニ充ツ但海軍志願兵徵募規則ニ依リ服役スル者ハ本令ノ限ニ在ラス
警備隊ヲ置キタル島嶼ノ壯丁ハ總テ之ヲ警備隊ニ充テ其地ニ於テ服役セシム但在營期限ハ一箇年以內トス
第九條 雜卒ノ現役期限ハ其職務ニ因リ之ヲ短縮スルコトアル可シ但常備兵役ノ全期ハ之ヲ減スルコトナシ
第十條 二十歲ニ至ラスト雖モ滿十七歲以上ノ者ハ志願ニ由リ現役ニ服スルコトヲ得
第十一條 滿十七歲以上滿二十六歲以下ニシテ官立學校帝國大學撰科及小學科ヲ除ク府縣立師範學校中學校若クハ文部大臣ニ於テ中學校ノ學科程度ト同等以上ト認メタル學校若クハ文部大臣ノ認可ヲ經タル學則ニ依リ法律學政治學理財學ヲ敎授スル私立學校ノ卒業證書ヲ所持シ若クハ陸軍試驗委員ノ試驗ニ及第シ服役中食料被服裝具等ノ費用ヲ自辨スル者ハ志願ニ由リ一箇年間陸軍現役ニ服スルコトヲ得但費用ノ全額ヲ自辨シ能ハサルノ證アル者ニハ其幾部ヲ官給スルコトアル可シ
前項ノ一年志願兵ハ特別ノ敎育ヲ授ケ現役滿期ノ後二箇年間豫備役ニ五箇年間後備役ニ服セシム
滿十七歲以上二十六歲以下ニシテ官立府縣立師範學校ノ卒業者ハ六箇月間陸軍現役ニ服スルコトヲ得其服役中ノ費用ハ當該學校ヨリ之ヲ辨償スルモノトス
前項志願兵ニシテ現役ヲ終リタル者ハ七箇年間豫備役ニ服シ三箇年間後備役ニ服ス
第十二條 禁錮ノ刑ニ處セラレ若クハ賭博犯ニ由リ懲罰ニ處セラレタル者ハ一年志願兵タルコトヲ許サス
第十三條 現役中殊ニ勤務ニ熟シ品行方正ナル者ハ歸休ヲ命スルコトアル可シ
第十四條 豫備兵ハ戰時若クハ事變ニ際シ之ヲ召集ス平常ニ在テハ每年一度六十日以內勤務演習ノ爲メ之ヲ召集シ又每年一度簡閱㸃呼ヲ爲ス
第十五條 後備兵ハ戰時若クハ事變ニ際シ豫備兵ニ次テ之ヲ召集ス平常ニ在テ勤務演習及簡閱㸃呼ヲ爲スコト豫備兵ニ同シ
第十六條 國民兵ハ戰時若クハ事變ニ際シ後備兵ヲ召集シ仍ホ兵員ヲ要スルトキニ限リ之ヲ召集ス
第三章 免役延期及猶豫
第十七條 兵役ヲ免スルハ癈疾又ハ不具等ニシテ徵兵檢査規則ニ照シ兵役ニ堪ヘサル者ニ限ル
第十八條 左ニ揭クル者ハ徵集ヲ延期ス次年ニ於テ仍ホ徵集ニ適セサル者ハ國民兵役ニ服セシム
第一 體格完全且强壯ナルモ身幹未タ定尺ニ滿タサル者
第二 疾病中又ハ病後ニシテ勞役ニ堪ヘサル者
第十九條 公權ノ剝奪若クハ停止ヲ附加ス可キ重輕罪ノ爲メ訊問若クハ抅留中ノ者ハ徵集ヲ延期ス
第二十條 徵集ニ應スルトキハ其家族自活シ能ハサルノ確證アル者ハ本人ノ願ニ由リ徵集ヲ延期ス其事故三箇年ヲ過クルモ仍ホ止マサル者ハ國民兵役ニ服セシム但分家又ハ絕家廢家再興ノ故ヲ以テ本條ニ當ル者其他自活シ能ハサル事故ヲ作爲シタル者ハ其願ヲ許可セス
第二十一條 第十一條ニ揭クル學校ニ在校ノ者ハ本人ノ願ニ由リ滿二十六歲迄徵集ヲ猶豫ス其事故滿二十六歲迄ニ止ミ又ハ二十六歲ヲ過クルモ仍ホ止マサル者ハ抽籤ノ法ニ依ラスシテ之ヲ徵集ス但第十一條ニ依リ一年志願兵ヲ志願スル者ハ此限ニ在ラス
學術修業ノ爲メ外國ニ寄留スル者ハ本人ノ願ニ由リ滿二十六歲迄徵集ヲ猶豫ス二十六歲迄ニ歸朝シ又ハ二十六歲ヲ過キ歸朝スル者ハ抽籤ノ法ニ依ラスシテ之ヲ徵集ス但陸軍試驗委員ノ試驗ニ及第シタル者ハ一年志願兵ヲ志願スルコトヲ得
第二十二條 餘人ヲ以テ代フ可カラサル職務ヲ奉スル官吏及市町村長、助役及收入役ハ豫備兵ニ在ルト後備兵ニ在ルトヲ問ハス勤務演習簡閱㸃呼ノ爲メ召集スルコトナシ
法律ヲ以テ設立シタル議會ノ議員其開會中亦同シ
第四章 豫備徵員
第二十三條 抽籤番號ノ順序ニ從ヒ每年所要ノ現役兵員ニ超過スル壯丁ハ一箇年間十二月一日ヨリ起算ス豫備徵員トシ戰時若クハ事變ニ際シ兵員ヲ要スルトキ又ハ其年徵集ノ兵員缺クルトキ之ヲ徵集ス
第二十四條 豫備徵員ニシテ其期限內ニ徵集セサル者ハ國民兵役ニ服セシム
第五章 雜則
第二十五條 每年一月ヨリ十二月迄ニ滿二十歲ト爲ル者ハ其年ノ一月一日ヨリ同月三十一日迄ニ書面ヲ以テ戶主ニ非サル者ハ其戶主ヨリ本籍ノ市町村長ニ屆出可シ但二十歲未滿ニシテ現役ヲ終ヘタル者又ハ現役中ノ者ハ本條ノ屆出ヲ爲スニ及ハス
第二十六條 徵集ハ本籍所在ノ徵募區ニ於テスルヲ例トス他ノ徵募區ニ寄留スル者ハ願ニ由リ其區ニ於テ徵集ニ應スルコトヲ得
第二十七條 疾病又ハ犯罪等ノ爲メ期限ニ際シ入營シ難キ者ハ翌年之ヲ徵集ス
第二十八條 兵役ヲ免レンカ爲メ身體ヲ毀傷シ疾病ヲ作爲シ其他詐僞ノ所爲ヲ用ヒ又ハ逃亡若クハ潜匿シタル者又ハ正當ノ事故ナク身體ノ檢査ヲ受ケサル者ハ抽籤ノ法ニ依ラスシテ之ヲ徵集ス
第二十九條 現役年期ノ計算ハ總テ其入營スル年ノ十二月一日ヨリ起算シ豫備役及後備役年期ノ計算ハ其轉役スル年ノ十二月一日ヨリ起算ス第六條ニ依リ延期シタル者モ其起算法亦同シ但禁錮ノ刑ニ處セラレ又ハ監視ニ付セラレ又ハ逃亡若クハ失踪シタル者其刑期中及逃亡失踪中ノ日數ハ服役年期ニ算入セス
第六章 罰則
第三十條 第二十五條ノ屆出ヲ爲サヽル者及正當ノ事故ナク身體ノ檢査ヲ受ケサル者ハ三圓以上三十圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十一條 兵役ヲ免レンカ爲メ逃亡シ又ハ潜匿シ若クハ身體ヲ毀傷シ疾病ヲ作爲シ其他詐僞ノ所爲ヲ用ヒタル者ハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ處シ三圓以上三十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第七章 附則
第三十二條 本令ハ明治二十二年一月ヨリ施行ス但第二十五條ノ屆出期限ハ明治二十二年ニ限リ三月一日ヨリ同月十五日迄トス
第三十三條 本令ハ北海道ニ於テ函館江差福山ヲ除クノ外及沖繩縣並東京府管下小笠原島ニハ當分之ヲ施行セス
第三十四條 本令中市町村長トアルハ市制町村制ヲ實施スル迄ノ間戶長ノコトトス
第三十五條 舊令第十一條ニ依リ一箇年間陸軍現役ニ服シタル者ハ本令第十一條ニ照シ二箇年間豫備役ニ五箇年間後備役ニ服セシメ其豫備役二箇年ヲ終リタル者ハ直ニ後備役ニ服セシメ通シテ七箇年トス
第三十六條 舊令第十七條ニ依リ徵集猶豫ニ屬シタル者ハ徵集ヲ延期シ其事故七箇年ヲ過クルモ仍ホ止マサルトキハ國民兵役ニ服セシム
第三十七條 舊令第十八條第二項ニ依リ徵集猶豫ニ屬シタル者ハ徵集ヲ延期シ其事故七箇年ヲ過クルモ仍ホ止マサルトキハ國民兵役ニ服セシム
第三十八條 舊令第十八條第七項及第二十一條ニ依リ徵集猶豫ニ屬シタル者ハ徵集ヲ延期シ其事故七箇年ヲ過クルモ仍ホ止マサルトキハ國民兵役ニ服セシム
第三十九條 舊令第十八條第三項ノ生徒ニシテ第一豫備徵員ト爲リ仍ホ在校ノ者ハ該徵員タルコトヲ止メ滿二十七歲迄徵集ヲ猶豫シ其事故二十七歲ヲ過クルモ仍ホ止マサルトキハ國民兵役ニ服セシム
第四十條 第三十六條第三十七條第三十八條及第三十九條ニ揭クル者其事故各其本條ノ期限內ニ止ミタルトキハ抽籤ノ法ニ依リ徵集ス但一年志願兵ヲ志願スルコトヲ得
第四十一條 舊令第十八條第三項若クハ第十九條ニ依リ徵集猶豫ニ屬シ在校ノ者ハ其事故六箇年以內ニ止ミタルトキ又ハ六箇年ヲ過クルモ仍ホ止マサルトキハ抽籤ノ法ニ依リ徵集ス但一年志願兵ヲ志願スルコトヲ得
第四十二條 舊令第三十條ニ依リ補充員ト爲リタル者ハ之ヲ豫備徵員ト爲シ一箇年間明治二十一年十二月一日ヨリ起算スニ徵集セサル者ハ國民兵役ニ服セシム
第四十三條 舊令第三十一條ニ依リ第一豫備徵員ト爲リ在校セサル者及舊令第三十二條ニ依リ第二豫備徵員ト爲リタル者ハ直ニ國民兵役ニ服セシム補充員ヨリ第一豫備徵員ト爲リタル者亦同シ
第四十四條 明治十二年第四十六號布吿徵兵令ニ依リ國民軍ノ外免役又ハ平時免役若クハ徵集猶豫ニ屬シタル者ハ直ニ國民兵役ニ服セシム
第四十五條 舊令第八條ニ依リ海軍兵ト爲リタル者ノ服役期限ハ同令第三條及第四條ニ依ル
第四十六條 第三十六條第三十七條第三十八條ニ揭クル徵集延期ノ者及第三十九條第四十一條ニ揭クル徵集猶豫ノ者其事故各其本條ノ期限內ニ止ミタルトキハ三日以內ニ本籍ノ市町村長ニ屆出可シ
前項ノ屆出ヲ爲サヽル者及本令施行前舊令第三十五條第三十六條ノ屆出ヲ爲サスシテ本令施行後ニ於テ發覺スル者ハ本令第三十條ニ依リ處分ス可シ
朕徴兵令改正ノ件ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十二年一月二十一日
内閣総理大臣 伯爵 黒田清隆
陸軍大臣 伯爵 大山巌
海軍大臣 伯爵 西郷従道
法律第一号
徴兵令
第一章 総則
第一条 日本帝国臣民ニシテ満十七歳ヨリ満四十歳迄ノ男子ハ総テ兵役ニ服スルノ義務アルモノトス
第二条 兵役ハ分テ常備兵役後備兵役及国民兵役トス
第三条 常備兵役ハ分テ現役及予備役トス
現役ハ陸軍ハ三箇年海軍ハ四箇年ニシテ満二十歳ニ至リタル者之ニ服シ予備役ハ陸軍ハ四箇年海軍ハ三箇年ニシテ現役ヲ終リタル者之ニ服ス
第四条 後備兵役ハ五箇年ニシテ常備兵役ヲ終リタル者之ニ服ス
第五条 国民兵役ハ満十七歳ヨリ満四十歳迄ノ者ニシテ常備兵役及後備兵役ニ在ラサル者之ニ服ス
第六条 各兵役ノ期限既ニ満ルト雖モ戦時或ハ事変ニ際スルトキ若クハ臨時ニ演習或ハ観兵ノ挙アルトキ若クハ航海中或ハ外国駐箚中ハ其期ヲ延スコトアル可シ
第七条 重罪ノ刑ニ処セラレタル者ハ兵役ニ服スルコトヲ許サス
第二章 服役
第八条 陸軍現役兵ハ毎年所要ノ人員ニ応シ壮丁ノ身材芸能職業ニ従ヒ歩兵騎兵砲兵工兵輜重兵職工及雑卒ニ区別シ抽籤ノ法ニ依リ当籤ノ者ヲ以テ之ニ充ツ
海軍現役兵ハ毎年所要ノ人員ニ応シ沿海地方及島嶼ノ壮丁ヲ調査シ海軍ニ適スル職業ニ従ヒ水兵火夫職工及雑卒ニ区別シ抽籤ノ法ニ依リ当籤ノ者ヲ以テ之ニ充ツ但海軍志願兵徴募規則ニ依リ服役スル者ハ本令ノ限ニ在ラス
警備隊ヲ置キタル島嶼ノ壮丁ハ総テ之ヲ警備隊ニ充テ其地ニ於テ服役セシム但在営期限ハ一箇年以内トス
第九条 雑卒ノ現役期限ハ其職務ニ因リ之ヲ短縮スルコトアル可シ但常備兵役ノ全期ハ之ヲ減スルコトナシ
第十条 二十歳ニ至ラスト雖モ満十七歳以上ノ者ハ志願ニ由リ現役ニ服スルコトヲ得
第十一条 満十七歳以上満二十六歳以下ニシテ官立学校帝国大学撰科及小学科ヲ除ク府県立師範学校中学校若クハ文部大臣ニ於テ中学校ノ学科程度ト同等以上ト認メタル学校若クハ文部大臣ノ認可ヲ経タル学則ニ依リ法律学政治学理財学ヲ教授スル私立学校ノ卒業証書ヲ所持シ若クハ陸軍試験委員ノ試験ニ及第シ服役中食料被服装具等ノ費用ヲ自弁スル者ハ志願ニ由リ一箇年間陸軍現役ニ服スルコトヲ得但費用ノ全額ヲ自弁シ能ハサルノ証アル者ニハ其幾部ヲ官給スルコトアル可シ
前項ノ一年志願兵ハ特別ノ教育ヲ授ケ現役満期ノ後二箇年間予備役ニ五箇年間後備役ニ服セシム
満十七歳以上二十六歳以下ニシテ官立府県立師範学校ノ卒業者ハ六箇月間陸軍現役ニ服スルコトヲ得其服役中ノ費用ハ当該学校ヨリ之ヲ弁償スルモノトス
前項志願兵ニシテ現役ヲ終リタル者ハ七箇年間予備役ニ服シ三箇年間後備役ニ服ス
第十二条 禁錮ノ刑ニ処セラレ若クハ賭博犯ニ由リ懲罰ニ処セラレタル者ハ一年志願兵タルコトヲ許サス
第十三条 現役中殊ニ勤務ニ熟シ品行方正ナル者ハ帰休ヲ命スルコトアル可シ
第十四条 予備兵ハ戦時若クハ事変ニ際シ之ヲ召集ス平常ニ在テハ毎年一度六十日以内勤務演習ノ為メ之ヲ召集シ又毎年一度簡閲点呼ヲ為ス
第十五条 後備兵ハ戦時若クハ事変ニ際シ予備兵ニ次テ之ヲ召集ス平常ニ在テ勤務演習及簡閲点呼ヲ為スコト予備兵ニ同シ
第十六条 国民兵ハ戦時若クハ事変ニ際シ後備兵ヲ召集シ仍ホ兵員ヲ要スルトキニ限リ之ヲ召集ス
第三章 免役延期及猶予
第十七条 兵役ヲ免スルハ廃疾又ハ不具等ニシテ徴兵検査規則ニ照シ兵役ニ堪ヘサル者ニ限ル
第十八条 左ニ掲クル者ハ徴集ヲ延期ス次年ニ於テ仍ホ徴集ニ適セサル者ハ国民兵役ニ服セシム
第一 体格完全且強壮ナルモ身幹未タ定尺ニ満タサル者
第二 疾病中又ハ病後ニシテ労役ニ堪ヘサル者
第十九条 公権ノ剥奪若クハ停止ヲ附加ス可キ重軽罪ノ為メ訊問若クハ拘留中ノ者ハ徴集ヲ延期ス
第二十条 徴集ニ応スルトキハ其家族自活シ能ハサルノ確証アル者ハ本人ノ願ニ由リ徴集ヲ延期ス其事故三箇年ヲ過クルモ仍ホ止マサル者ハ国民兵役ニ服セシム但分家又ハ絶家廃家再興ノ故ヲ以テ本条ニ当ル者其他自活シ能ハサル事故ヲ作為シタル者ハ其願ヲ許可セス
第二十一条 第十一条ニ掲クル学校ニ在校ノ者ハ本人ノ願ニ由リ満二十六歳迄徴集ヲ猶予ス其事故満二十六歳迄ニ止ミ又ハ二十六歳ヲ過クルモ仍ホ止マサル者ハ抽籤ノ法ニ依ラスシテ之ヲ徴集ス但第十一条ニ依リ一年志願兵ヲ志願スル者ハ此限ニ在ラス
学術修業ノ為メ外国ニ寄留スル者ハ本人ノ願ニ由リ満二十六歳迄徴集ヲ猶予ス二十六歳迄ニ帰朝シ又ハ二十六歳ヲ過キ帰朝スル者ハ抽籤ノ法ニ依ラスシテ之ヲ徴集ス但陸軍試験委員ノ試験ニ及第シタル者ハ一年志願兵ヲ志願スルコトヲ得
第二十二条 余人ヲ以テ代フ可カラサル職務ヲ奉スル官吏及市町村長、助役及収入役ハ予備兵ニ在ルト後備兵ニ在ルトヲ問ハス勤務演習簡閲点呼ノ為メ召集スルコトナシ
法律ヲ以テ設立シタル議会ノ議員其開会中亦同シ
第四章 予備徴員
第二十三条 抽籤番号ノ順序ニ従ヒ毎年所要ノ現役兵員ニ超過スル壮丁ハ一箇年間十二月一日ヨリ起算ス予備徴員トシ戦時若クハ事変ニ際シ兵員ヲ要スルトキ又ハ其年徴集ノ兵員欠クルトキ之ヲ徴集ス
第二十四条 予備徴員ニシテ其期限内ニ徴集セサル者ハ国民兵役ニ服セシム
第五章 雑則
第二十五条 毎年一月ヨリ十二月迄ニ満二十歳ト為ル者ハ其年ノ一月一日ヨリ同月三十一日迄ニ書面ヲ以テ戸主ニ非サル者ハ其戸主ヨリ本籍ノ市町村長ニ届出可シ但二十歳未満ニシテ現役ヲ終ヘタル者又ハ現役中ノ者ハ本条ノ届出ヲ為スニ及ハス
第二十六条 徴集ハ本籍所在ノ徴募区ニ於テスルヲ例トス他ノ徴募区ニ寄留スル者ハ願ニ由リ其区ニ於テ徴集ニ応スルコトヲ得
第二十七条 疾病又ハ犯罪等ノ為メ期限ニ際シ入営シ難キ者ハ翌年之ヲ徴集ス
第二十八条 兵役ヲ免レンカ為メ身体ヲ毀傷シ疾病ヲ作為シ其他詐偽ノ所為ヲ用ヒ又ハ逃亡若クハ潜匿シタル者又ハ正当ノ事故ナク身体ノ検査ヲ受ケサル者ハ抽籤ノ法ニ依ラスシテ之ヲ徴集ス
第二十九条 現役年期ノ計算ハ総テ其入営スル年ノ十二月一日ヨリ起算シ予備役及後備役年期ノ計算ハ其転役スル年ノ十二月一日ヨリ起算ス第六条ニ依リ延期シタル者モ其起算法亦同シ但禁錮ノ刑ニ処セラレ又ハ監視ニ付セラレ又ハ逃亡若クハ失踪シタル者其刑期中及逃亡失踪中ノ日数ハ服役年期ニ算入セス
第六章 罰則
第三十条 第二十五条ノ届出ヲ為サヽル者及正当ノ事故ナク身体ノ検査ヲ受ケサル者ハ三円以上三十円以下ノ罰金ニ処ス
第三十一条 兵役ヲ免レンカ為メ逃亡シ又ハ潜匿シ若クハ身体ヲ毀傷シ疾病ヲ作為シ其他詐偽ノ所為ヲ用ヒタル者ハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ処シ三円以上三十円以下ノ罰金ヲ附加ス
第七章 附則
第三十二条 本令ハ明治二十二年一月ヨリ施行ス但第二十五条ノ届出期限ハ明治二十二年ニ限リ三月一日ヨリ同月十五日迄トス
第三十三条 本令ハ北海道ニ於テ函館江差福山ヲ除クノ外及沖縄県並東京府管下小笠原島ニハ当分之ヲ施行セス
第三十四条 本令中市町村長トアルハ市制町村制ヲ実施スル迄ノ間戸長ノコトトス
第三十五条 旧令第十一条ニ依リ一箇年間陸軍現役ニ服シタル者ハ本令第十一条ニ照シ二箇年間予備役ニ五箇年間後備役ニ服セシメ其予備役二箇年ヲ終リタル者ハ直ニ後備役ニ服セシメ通シテ七箇年トス
第三十六条 旧令第十七条ニ依リ徴集猶予ニ属シタル者ハ徴集ヲ延期シ其事故七箇年ヲ過クルモ仍ホ止マサルトキハ国民兵役ニ服セシム
第三十七条 旧令第十八条第二項ニ依リ徴集猶予ニ属シタル者ハ徴集ヲ延期シ其事故七箇年ヲ過クルモ仍ホ止マサルトキハ国民兵役ニ服セシム
第三十八条 旧令第十八条第七項及第二十一条ニ依リ徴集猶予ニ属シタル者ハ徴集ヲ延期シ其事故七箇年ヲ過クルモ仍ホ止マサルトキハ国民兵役ニ服セシム
第三十九条 旧令第十八条第三項ノ生徒ニシテ第一予備徴員ト為リ仍ホ在校ノ者ハ該徴員タルコトヲ止メ満二十七歳迄徴集ヲ猶予シ其事故二十七歳ヲ過クルモ仍ホ止マサルトキハ国民兵役ニ服セシム
第四十条 第三十六条第三十七条第三十八条及第三十九条ニ掲クル者其事故各其本条ノ期限内ニ止ミタルトキハ抽籤ノ法ニ依リ徴集ス但一年志願兵ヲ志願スルコトヲ得
第四十一条 旧令第十八条第三項若クハ第十九条ニ依リ徴集猶予ニ属シ在校ノ者ハ其事故六箇年以内ニ止ミタルトキ又ハ六箇年ヲ過クルモ仍ホ止マサルトキハ抽籤ノ法ニ依リ徴集ス但一年志願兵ヲ志願スルコトヲ得
第四十二条 旧令第三十条ニ依リ補充員ト為リタル者ハ之ヲ予備徴員ト為シ一箇年間明治二十一年十二月一日ヨリ起算スニ徴集セサル者ハ国民兵役ニ服セシム
第四十三条 旧令第三十一条ニ依リ第一予備徴員ト為リ在校セサル者及旧令第三十二条ニ依リ第二予備徴員ト為リタル者ハ直ニ国民兵役ニ服セシム補充員ヨリ第一予備徴員ト為リタル者亦同シ
第四十四条 明治十二年第四十六号布告徴兵令ニ依リ国民軍ノ外免役又ハ平時免役若クハ徴集猶予ニ属シタル者ハ直ニ国民兵役ニ服セシム
第四十五条 旧令第八条ニ依リ海軍兵ト為リタル者ノ服役期限ハ同令第三条及第四条ニ依ル
第四十六条 第三十六条第三十七条第三十八条ニ掲クル徴集延期ノ者及第三十九条第四十一条ニ掲クル徴集猶予ノ者其事故各其本条ノ期限内ニ止ミタルトキハ三日以内ニ本籍ノ市町村長ニ届出可シ
前項ノ届出ヲ為サヽル者及本令施行前旧令第三十五条第三十六条ノ届出ヲ為サスシテ本令施行後ニ於テ発覚スル者ハ本令第三十条ニ依リ処分ス可シ