朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル產業組合法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十三年三月六日
內閣總理大臣 侯爵 山縣有朋
農商務大臣 曾禰荒助
法律第三十四號
產業組合法
第一章 總則
第一條 本法ニ於テ產業組合トハ組合員ノ產業又ハ其ノ經濟ノ發達ヲ企圖スル爲左ノ目的ヲ以テ設立スル社團法人ヲ謂フ
一 組合員ニ產業ニ必要ナル資金ヲ貸付シ及貯金ノ便宜ヲ得セシムルコト(信用組合)
二 組合員ノ生產シタル物ニ加工シ又ハ加工セスシテ之ヲ賣却スルコト(販賣組合)
三 產業又ハ生計ニ必要ナル物ヲ購買シテ之ヲ組合員ニ賣却スルコト(購買組合)
四 組合員ノ生產シタル物ニ加工シ又ハ組合員ヲシテ產業ニ必要ナル物ヲ使用セシムルコト(生產組合)
前項第一號ニ揭ケタル事業ハ他ノ各號ニ揭ケタル事業ト相兼ヌルコトヲ得ス
第二條 產業組合ノ組織ハ無限責任、有限責任及保證責任ノ三種トス
無限責任組合ニ在リテハ組合財產ヲ以テ其ノ債務ヲ完濟スルコト能ハサル場合ニ於テ組合員ノ全員カ連帶無限ノ責任ヲ負擔シ、有限責任組合ニ在リテハ組合員ノ全員カ其ノ出資額ヲ限度トシテ責任ヲ負擔シ、保證責任組合ニ在リテハ組合財產ヲ以テ其ノ債務ヲ完濟スルコト能ハサル場合ニ於テ組合員ノ全員カ其ノ出資額ノ外一定ノ金額ヲ限度トシテ責任ヲ負擔ス
第三條 產業組合ノ住所ハ其ノ主タル事務所ノ所在地ニ在ルモノトス
第四條 產業組合ノ名稱中ニハ其ノ組織及目的ヲ示スヘキ文字ヲ用ウヘシ
產業組合ニ非スシテ其ノ名稱中ニ產業組合タルコトヲ示スヘキ文字ヲ用ウルコトヲ得ス
第五條 產業組合ニハ本法ニ別段ノ規定アルモノヲ除クノ外商法及商法施行法中商人ニ關スル規定ヲ準用ス
第六條 產業組合ニハ所得稅及營業稅ヲ課セス
產業組合ニシテ登記ヲ受クルトキハ營利ヲ目的トセサル社團法人ト同一ノ登錄稅ヲ納ムヘシ但シ組合員名簿ノ記載ニ付テハ登錄稅ヲ課セス
第二章 設立
第七條 產業組合ハ七人以上ニ非サレハ之ヲ設立スルコトヲ得ス
第八條 組合ノ設立者ハ定款ヲ作リ之ヲ主タル事務所所在地ノ地方長官ニ差出シ設立ノ許可ヲ請フヘシ
第九條 定款ニハ本法ニ規定アルモノヲ除クノ外左ノ事項ヲ記載シ設立者之ニ署名捺印スヘシ
一 目的
二 名稱
三 組織
四 事務所
五 出資一口ノ金額及其ノ拂込ノ方法
六 第一囘拂込ノ金額
七 剩餘金及損失分配ニ關スル規定
八 準備金ノ額及其ノ積立ノ方法
九 組合員タル資格ニ關スル規定
十 組合員ノ加入及脫退ニ關スル規定
十一 組合ノ目的タル事業ノ執行ニ關スル規定
十二 存立時期又ハ解散ノ事由ヲ定メタルトキハ其ノ時期又ハ事由
信用組合ノ區域ハ市町村ノ區域以內ニ於テ之ヲ定メ定款中ニ記載スヘシ但シ特別ノ事由アルトキハ地方長官ノ認可ヲ得テ此ノ區域ニ依ラサルコトヲ得
第十條 產業組合ハ其ノ組合員ノ數ヲ限定スルコトヲ得ス
第十一條 出資一口ノ金額ハ均一ニ之ヲ定ムヘシ
第十二條 組合カ其ノ設立ノ許可ヲ受ケタルトキハ遲滯ナク各組合員ヲシテ第一囘ノ拂込ヲ爲サシムヘシ
第十三條 前條ノ拂込アリタルトキハ二週間內ニ各事務所ノ所在地ニ於テ設立ノ登記ヲ爲スヘシ
第十四條 登記スヘキ事項左ノ如シ
一 第九條第一號乃至第五號及第十二號ニ揭ケタル事項
二 設立許可ノ年月日
三 理事及監事ノ氏名、住所
前項ニ揭ケタル事項中ニ變更ヲ生シタルトキハ二週間內ニ其ノ登記ヲ爲スヘシ登記前ニ在リテハ其ノ變更ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第十五條 組合ハ其ノ設立ノ登記ノ申請ト共ニ組合員名簿ヲ其ノ主タル事務所所在地ノ裁判所ニ差出スヘシ
組合員名簿ニハ左ノ事項ヲ記載スヘシ
一 各組合員ノ氏名、住所
二 各組合員ノ出資口數
三 各組合員ノ拂込ミタル金額及其ノ拂込ノ年月日
四 出資各口ノ取得ノ年月日
五 保證責任組合ニ在リテハ各組合員ノ保證金額
第十四條第二項ノ規定ハ組合員名簿ノ記載ニ之ヲ準用ス
裁判所ニ差出シタル組合員名簿ハ之ヲ登記簿ノ一部ト看做シ其ノ記載ハ之ヲ登記ト看做ス
第十六條 民法第四十五條第二項、第三項、第四十七條及第四十八條ノ規定ハ產業組合ニ之ヲ準用ス但シ同規定中一週間トアルヲ二週間トス
第三章 組合員ノ權利義務
第十七條 組合員ハ出資一口以上ヲ有スヘシ
組合員ノ有スヘキ出資口數ハ十口ヲ超ユルコトヲ得ス
第十八條 組合員ハ組合ニ拂込ムヘキ出資額ニ付相殺ヲ以テ組合ニ對抗スルコトヲ得ス
第十九條 組合員ハ組合ノ承諾アルニ非サレハ其ノ持分ヲ讓渡スコトヲ得ス
組合員ニ非サル者ニシテ持分ヲ讓受ケムトスルトキハ加入ノ例ニ依ルヘシ
第二十條 組合員ハ持分ヲ共有スルコトヲ得ス
第二十一條 持分ノ讓受人ハ其ノ持分ニ付讓渡人ノ權利義務ヲ承繼ス
第二十二條 新ニ組合ニ加入シタル組合員ハ其ノ加入前ニ生シタル組合ノ債務ニ付テモ亦責任ヲ負擔ス
第二十三條 組合員ハ總組合員五分ノ一以上ノ同意ヲ得テ總會ノ目的及其ノ招集ノ理由ヲ記載シタル書面ヲ提出シテ總會ノ招集ヲ理事ニ請求スルコトヲ得
第二十四條 組合員ニシテ總會ノ招集手續又ハ其ノ決議ノ方法カ法令又ハ定款ニ違背スト認ムルトキハ決議ノ日ヨリ一箇月內ニ其ノ決議ノ取消ヲ地方長官ニ請求スルコトヲ得
第四章 管理
第二十五條 產業組合ニハ理事及監事ヲ置クヘシ
理事及監事ハ總會ニ於テ組合員中ヨリ之ヲ選任ス但シ組合設立ノ當時ノ理事及監事ハ定款ヲ以テ之ヲ定ムルコトヲ得
第二十六條 理事ノ任期ハ三箇年トシ監事ノ任期ハ一箇年トス但シ定款ニ別段ノ定アルトキハ此ノ限ニ在ラス
第二十七條 理事又ハ監事ハ何時ニテモ總會ノ決議ヲ以テ之ヲ解任スルコトヲ得
第二十八條 理事及監事ノ選任及解任ハ總組合員ノ半數以上出席シ其ノ議決權ノ四分ノ三以上ヲ以テ之ヲ決ス但シ定款ニ別段ノ定アルトキハ此ノ限ニ在ラス
第二十九條 理事ハ定款及總會ノ決議錄ヲ各事務所ニ備ヘ置キ且組合員名簿ヲ主タル事務所ニ備ヘ置クヘシ
組合員及組合ノ債權者ハ前項ニ揭ケタル書類ノ閱覽ヲ求ムルコトヲ得
第三十條 理事ハ通常總會ノ會日ヨリ一週間前ニ財產目錄、貸借對照表、事業報吿書及剩餘金處分案ヲ監事ニ提出シ且之ヲ主タル事務所ニ備フヘシ
組合員及組合ノ債權者ハ前項ニ揭ケタル書類ノ閱覽ヲ求ムルコトヲ得
第三十一條 理事ハ前條第一項ニ揭ケタル書類及監事ノ意見書ヲ通常總會ニ提出シテ其ノ承認ヲ求ムヘシ
第三十二條 民法第四十四條第一項、第五十二條第二項、第五十三條乃至第五十五條、第六十條及第六十一條第一項ノ規定ハ產業組合ノ理事ニ之ヲ準用ス
第三十三條 監事ハ理事其ノ他組合ノ事務員ト相兼ヌルコトヲ得ス
第三十四條 民法第五十九條ノ規定ハ產業組合ノ監事ニ之ヲ準用ス
第三十五條 組合カ理事ト契約ヲ爲ス場合ニ於テハ監事組合ヲ代表ス組合ト理事トノ間ノ訴訟ニ付テモ亦同シ
第三十六條 總會ノ決議ハ本法又ハ定款ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外出席シタル組合員ノ議決權ノ過半數ヲ以テ之ヲ爲ス
第三十七條 組合員ハ代理人ヲ以テ議決權ヲ行フコトヲ得此ノ場合ニ於テハ之ヲ出席ト看做ス但シ組合員ニ非サレハ代理人タルコトヲ得ス
代理人ハ代理權ヲ證スル書面ヲ組合ニ差出スヘシ
第三十八條 民法第六十二條、第六十四條、第六十五條第一項及第六十六條ノ規定ハ產業組合ニ之ヲ準用ス
第三十九條 定款ノ變更ハ總會ノ決議ニ依ルヘシ
第二十八條ノ規定ハ前項ノ決議ニ之ヲ準用ス
定款ノ變更ハ地方長官ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其ノ效力ヲ生セス
第四十條 組合カ出資一口ノ金額ノ減少ノ決議ヲ爲シタルトキハ其ノ決議ノ日ヨリ二週間內ニ財產目錄及貸借對照表ヲ作ルヘシ
組合ハ前項ノ期間內ニ其ノ債權者ニ對シ異議アラハ一定ノ期間內ニ之ヲ述フヘキ旨ヲ催吿スヘシ但シ其ノ期間ハ二箇月ヲ下ルコトヲ得ス
第四十一條 債權者カ前條第二項ノ期間內ニ出資ノ減少ニ對シテ異議ヲ述ヘサリシトキハ之ヲ承認シタルモノト看做ス
債權者カ異議ヲ述ヘタルトキハ組合ハ之ニ辨濟ヲ爲シ又ハ相當ノ擔保ヲ供スルニ非サレハ出資ヲ減少スルコトヲ得ス
第四十二條 前二條ノ規定ハ保證責任組合カ組合員ノ保證金額ヲ減少スル場合ニ之ヲ準用ス
第四十三條 組合員カ其ノ出資ノ拂込ヲ終ル迄ハ之ニ配當スヘキ剩餘金ハ其ノ拂込ニ充ツヘシ
第四十四條 組合ハ損失ヲ塡補シタル後ニ非サレハ剩餘金ノ分配ヲ爲スコトヲ得ス
組合員ノ持分ニ對スル剩餘金分配ニ關スル制限ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十五條 組合ハ第五十三條ノ場合ヲ除クノ外持分ノ拂戾ヲ爲スコトヲ得ス
第四十六條 組合ハ定款ヲ以テ定メタル準備金ノ額ニ達スル迄每事業年度ノ剩餘金ノ四分ノ一以上ヲ積立ツヘシ
第四十七條 組合ノ事業年度ハ一箇年トス
第四十八條 組合ハ組合員ノ持分ヲ取得シ又ハ質權ノ目的トシテ之ヲ受クルコトヲ得ス
第五章 加入及脫退
第四十九條 無限責任組合ニ加入セムトスル者ハ總組合員ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
第五十條 定款ヲ以テ組合ノ存立時期ヲ定メタルト否トヲ問ハス組合員ハ事業年度ノ終ニ於テ脫退スルコトヲ得但シ六箇月前ニ其ノ豫吿ヲ爲スヘシ
前項ノ豫吿期間ハ定款ヲ以テ之ヲ延長スルコトヲ得但シ二箇年ヲ超ユルコトヲ得ス
第五十一條 組合員ハ左ノ事由ニ因リテ脫退ス
一 組合員タル資格ノ喪失
二 死亡
三 破產
四 禁治產
五 除名
第五十二條 除名ノ事由ハ定款ヲ以テ之ヲ定ム
除名ハ總會ノ決議ニ依ル但シ除名シタル組合員ニ其ノ旨ヲ通知スルニ非サレハ之ヲ以テ其ノ組合員ニ對抗スルコトヲ得ス
第二十八條ノ規定ハ前項ノ決議ニ之ヲ準用ス
第五十三條 脫退シタル組合員ハ定款ノ定ムル所ニ依リ其ノ持分ノ全部又ハ一部ノ拂戾ヲ請求スルコトヲ得
第五十四條 脫退シタル組合員ノ持分ハ其ノ脫退ヲ組合員名簿ニ記載シタル事業年度ノ終ニ於ケル組合財產ニ依リテ之ヲ定ム
第五十五條 持分ノ拂戾ハ事業年度ノ終ヨリ三箇月內ニ之ヲ爲スヘシ
持分拂戾ノ請求權ハ前項ノ期間經過ノ後二箇年間之ヲ行ハサルニ因リテ消滅ス
第五十六條 持分ノ計算ヲ爲スニ當リ組合財產ヲ以テ組合ノ債務ヲ完濟スルニ足ラサルトキハ脫退シタル組合員ハ其ノ負擔ニ歸スヘキ損失額ヲ拂込ムヘシ
第五十七條 脫退シタル組合員カ組合ニ對スル債務ヲ完濟スル迄ハ組合ハ其ノ持分ノ拂戾ヲ停止スルコトヲ得
第五十八條 無限責任組合及保證責任組合ニ在リテハ脫退シタル組合員ハ脫退前ノ組合債權者ニ對シ其ノ脫退ヲ組合員名簿ニ記載シタル後二箇年間責任ヲ負擔ス
前項ノ規定ハ特別ノ契約ヲ以テ其ノ期間ヲ延長スルコトヲ妨ケス
前二項ノ規定ハ持分ヲ讓渡シタル組合員ニ之ヲ準用ス
第六章 監督
第五十九條 產業組合ハ主務大臣、地方長官及郡長之ヲ監督ス
第六十條 監督官廳ハ何時ニテモ理事ヲシテ組合ノ事業ニ關スル報吿ヲ爲サシメ又ハ組合ノ事業及財產ノ狀況ヲ檢査シ其ノ他必要ナル命令ヲ發シ及處分ヲ行フ
第六十一條 組合ノ事業又ハ組合財產ノ狀況ニ依リ其ノ事業ノ繼續ヲ困難ナリト認ムルトキ又ハ組合ノ行爲カ定款若ハ法令ニ違背シ其ノ他公益ヲ害スルノ虞アルトキハ主務大臣又ハ地方長官ハ總會ノ決議ヲ取消シ、理事、監事若ハ淸算人ノ改選ヲ命シ、組合ノ事業ヲ停止シ又ハ組合ヲ解散スルコトヲ得
第七章 解散
第六十二條 組合ハ左ノ事由ニ因リテ解散ス
一 定款ニ定メタル事由ノ發生
二 總會ノ決議
三 組合ノ合併
四 組合員カ七人未滿ニ減シタルトキ
五 組合ノ破產
第二十八條ノ規定ハ解散及合併ノ決議ニ之ヲ準用ス但シ無限責任組合ノ合併ニ付テハ總組合員ノ同意アルコトヲ要ス
第六十三條 組合カ解散シタルトキハ合併及破產ノ場合ヲ除クノ外二週間內ニ各事務所ノ所在地ニ於テ其ノ登記ヲ爲スヘシ
第六十四條 第四十條及第四十一條ノ規定ハ合併ノ場合ニ之ヲ準用ス
第六十五條 合併ハ地方長官ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其ノ效力ヲ生セス
第六十六條 組合カ合併ヲ爲シタルトキハ二週間內ニ各事務所ノ所在地ニ於テ合併後存續スル組合ニ付テハ變更ノ登記ヲ爲シ、合併ニ因リテ消滅シタル組合ニ付テハ解散ノ登記ヲ爲シ、合併ニ因リテ設立シタル組合ニ付テハ設立ノ登記ヲ爲スヘシ
第六十七條 合併後存續スル組合又ハ合併ニ因リテ設立シタル組合ハ合併ニ因リテ消滅シタル組合ノ權利義務ヲ承繼ス
第六十八條 組合ハ總組合員ノ同意ヲ以テ其ノ組織ヲ變更スルコトヲ得
組合カ組織變更ニ因リ組合員ノ責任ヲ減少スルトキハ第四十條及第四十一條ニ定メタル手續ヲ爲スヘシ
第六十九條 民法第七十條ノ規定ハ產業組合ノ解散ニ之ヲ準用ス
第八章 淸算
第七十條 淸算人ハ其ノ職務ノ範圍內ニ於テ理事ト同一ノ權利義務ヲ有ス
第七十一條 淸算人ハ就職後遲滯ナク組合財產ノ現況ヲ調査シ財產目錄及貸借對照表ヲ作リ之ヲ總會ニ提出シテ其ノ承認ヲ求ムヘシ
第七十二條 淸算人ハ組合ノ債務ヲ辨濟シ又ハ辨濟ニ必要ナル金額ヲ供託スルニ非サレハ組合財產ヲ分配スルコトヲ得ス
第七十三條 淸算事務カ終リタルトキハ淸算人ハ遲滯ナク決算報吿書ヲ作リ之ヲ總會ニ提出シテ其ノ承認ヲ求ムヘシ
第七十四條 淸算人ノ解任アリタルトキハ二週間內ニ各事務所ノ所在地ニ於テ其ノ登記ヲ爲シ且之ヲ地方長官ニ屆出ツヘシ
第七十五條 民法第七十三條乃至第八十三條ノ規定ハ產業組合ノ淸算ニ之ヲ準用ス但シ同規定中一週間トアルハ二週間トス
第九章 罰則
第七十六條 組合ノ理事、監事又ハ淸算人ハ左ノ場合ニ於テハ五圓以上三百圓以下ノ過料ニ處セラル
一 本法ニ定メタル登記ヲ爲スコトヲ怠リ又ハ不正ノ登記ヲ爲シタルトキ
二 官廳又ハ總會ニ對シ不實ノ申立ヲ爲シ又ハ事實ヲ隱蔽シタルトキ
三 第二十九條第一項及第三十條第一項ノ規定ニ違背シ又ハ第二十九條第一項及第三十條第一項ニ揭ケタル書類ニ記載スヘキ事項ヲ記載セス又ハ不正ノ記載ヲ爲シタルトキ若ハ正當ノ理由ナクシテ其ノ閱覽ヲ拒ミタルトキ
四 第四十條、第四十一條、第四十三條乃至第四十六條、第四十八條又ハ第七十二條ノ規定ニ違背シタルトキ
五 第六十條ノ報吿ヲ爲サス又ハ檢査ヲ拒ミ其ノ他監督官廳ノ命令又ハ處分ニ從ハサルトキ
六 民法第七十九條ノ期間內ニ債權者ニ辨償ヲ爲シタルトキ
七 民法第七十九條又ハ第八十一條ニ定メタル公吿ヲ爲スコトヲ怠リ又ハ不正ノ公吿ヲ爲シタルトキ
八 民法第七十條又ハ第八十一條ノ規定ニ違背シタルトキ
第七十七條 非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ハ前條ノ過料ニ之ヲ準用ス
附 則
第七十八條 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七十九條 產業組合ノ登記ニ付テハ其ノ事務所所在地ノ區裁判所又ハ其ノ出張所ヲ以テ管轄登記所トス
第八十條 各登記所ニ產業組合登記簿ヲ備フ
第八十一條 組合設立ノ登記ハ理事及監事ノ全員ノ申請ニ因リテ之ヲ爲ス
申請書ニハ左ノ書類ヲ添附スヘシ
一 定款
二 地方長官ノ許可書又ハ其ノ認證アル謄本
三 第十五條第二號及第五號ニ揭ケタル事項ヲ證スル書面
第八十二條 事務所ノ新設、移轉其ノ他登記事項ノ變更ノ登記ハ理事ノ申請ニ因リテ之ヲ爲ス
申請書ニハ登記事項ノ變更ヲ證スル書面ヲ添附シ且地方長官ノ認可ヲ要スルモノニ付テハ其ノ認可書又ハ其ノ認證アル謄本ヲ添附スヘシ
前二項ノ規定ハ組合員名簿ノ記載ノ申請ニ之ヲ準用ス
第八十三條 出資一口ノ金額又ハ組合員ノ責任ノ減少ノ登記ノ申請書ニハ左ノ書類ヲ添附スヘシ
一 地方長官ノ認可書又ハ其ノ認證アル謄本
二 第四十條第二項ニ依ル催吿ヲ爲シタルコト、若シ異議ヲ述ヘタル債權者アルトキハ之ニ對シ辨濟ヲ爲シ又ハ擔保ヲ供シタルコトヲ證スル書面
第八十四條 組合ノ解散ノ登記ノ申請書ニハ解散ノ事由ヲ記載シ且組合カ總會ノ決議ニ因リテ解散シタルトキハ總會ノ決議錄ヲ添附スヘシ
第八十五條 合併ニ因ル解散ノ登記ノ申請書ニハ第八十三條ニ揭ケタル書面ヲ添附スヘシ
組合カ命令ニ因リテ解散シタルトキハ登記所ハ監督官廳ノ囑託ニ因リテ其ノ登記ヲ爲スヘシ
第八十六條 第八十一條第一項ノ規定ハ出資一口ノ金額又ハ組合員ノ責任ノ減少、組合ノ解散及組合ノ合併ニ因ル變更、設立又ハ解散ノ登記ノ申請ヲ爲ス場合ニ之ヲ準用ス
第八十七條 本法ノ規定ニ依リ登記シタル事項ハ裁判所遲滯ナク之ヲ公吿スヘシ但シ組合員名簿ニ記載シタル事項ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第八十八條 非訟事件手續法第百三十六條乃至第百三十八條、第百四十一條乃至第百五十一條、第百五十四條乃至第百五十八條、第百六十三條乃至第百六十五條及第百七十五條乃至第百七十七條ノ規定ハ產業組合ノ登記ニ之ヲ準用ス
第八十九條 本法ノ規定ニ依リ郡長ノ行フヘキ職務ハ伊豆七島ニ於テハ東京府知事、北海道ニ於テハ支廳長、沖繩縣ノ區ニ於テハ區長、島司ヲ置キタル島嶼ニ於テハ島司之ヲ行フ
第九十條 北海道ニ於ケル產業組合ニ付テハ勅令ヲ以テ別段ノ規定ヲ設クルコトヲ得
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル産業組合法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十三年三月六日
内閣総理大臣 侯爵 山県有朋
農商務大臣 曽祢荒助
法律第三十四号
産業組合法
第一章 総則
第一条 本法ニ於テ産業組合トハ組合員ノ産業又ハ其ノ経済ノ発達ヲ企図スル為左ノ目的ヲ以テ設立スル社団法人ヲ謂フ
一 組合員ニ産業ニ必要ナル資金ヲ貸付シ及貯金ノ便宜ヲ得セシムルコト(信用組合)
二 組合員ノ生産シタル物ニ加工シ又ハ加工セスシテ之ヲ売却スルコト(販売組合)
三 産業又ハ生計ニ必要ナル物ヲ購買シテ之ヲ組合員ニ売却スルコト(購買組合)
四 組合員ノ生産シタル物ニ加工シ又ハ組合員ヲシテ産業ニ必要ナル物ヲ使用セシムルコト(生産組合)
前項第一号ニ掲ケタル事業ハ他ノ各号ニ掲ケタル事業ト相兼ヌルコトヲ得ス
第二条 産業組合ノ組織ハ無限責任、有限責任及保証責任ノ三種トス
無限責任組合ニ在リテハ組合財産ヲ以テ其ノ債務ヲ完済スルコト能ハサル場合ニ於テ組合員ノ全員カ連帯無限ノ責任ヲ負担シ、有限責任組合ニ在リテハ組合員ノ全員カ其ノ出資額ヲ限度トシテ責任ヲ負担シ、保証責任組合ニ在リテハ組合財産ヲ以テ其ノ債務ヲ完済スルコト能ハサル場合ニ於テ組合員ノ全員カ其ノ出資額ノ外一定ノ金額ヲ限度トシテ責任ヲ負担ス
第三条 産業組合ノ住所ハ其ノ主タル事務所ノ所在地ニ在ルモノトス
第四条 産業組合ノ名称中ニハ其ノ組織及目的ヲ示スヘキ文字ヲ用ウヘシ
産業組合ニ非スシテ其ノ名称中ニ産業組合タルコトヲ示スヘキ文字ヲ用ウルコトヲ得ス
第五条 産業組合ニハ本法ニ別段ノ規定アルモノヲ除クノ外商法及商法施行法中商人ニ関スル規定ヲ準用ス
第六条 産業組合ニハ所得税及営業税ヲ課セス
産業組合ニシテ登記ヲ受クルトキハ営利ヲ目的トセサル社団法人ト同一ノ登録税ヲ納ムヘシ但シ組合員名簿ノ記載ニ付テハ登録税ヲ課セス
第二章 設立
第七条 産業組合ハ七人以上ニ非サレハ之ヲ設立スルコトヲ得ス
第八条 組合ノ設立者ハ定款ヲ作リ之ヲ主タル事務所所在地ノ地方長官ニ差出シ設立ノ許可ヲ請フヘシ
第九条 定款ニハ本法ニ規定アルモノヲ除クノ外左ノ事項ヲ記載シ設立者之ニ署名捺印スヘシ
一 目的
二 名称
三 組織
四 事務所
五 出資一口ノ金額及其ノ払込ノ方法
六 第一回払込ノ金額
七 剰余金及損失分配ニ関スル規定
八 準備金ノ額及其ノ積立ノ方法
九 組合員タル資格ニ関スル規定
十 組合員ノ加入及脱退ニ関スル規定
十一 組合ノ目的タル事業ノ執行ニ関スル規定
十二 存立時期又ハ解散ノ事由ヲ定メタルトキハ其ノ時期又ハ事由
信用組合ノ区域ハ市町村ノ区域以内ニ於テ之ヲ定メ定款中ニ記載スヘシ但シ特別ノ事由アルトキハ地方長官ノ認可ヲ得テ此ノ区域ニ依ラサルコトヲ得
第十条 産業組合ハ其ノ組合員ノ数ヲ限定スルコトヲ得ス
第十一条 出資一口ノ金額ハ均一ニ之ヲ定ムヘシ
第十二条 組合カ其ノ設立ノ許可ヲ受ケタルトキハ遅滞ナク各組合員ヲシテ第一回ノ払込ヲ為サシムヘシ
第十三条 前条ノ払込アリタルトキハ二週間内ニ各事務所ノ所在地ニ於テ設立ノ登記ヲ為スヘシ
第十四条 登記スヘキ事項左ノ如シ
一 第九条第一号乃至第五号及第十二号ニ掲ケタル事項
二 設立許可ノ年月日
三 理事及監事ノ氏名、住所
前項ニ掲ケタル事項中ニ変更ヲ生シタルトキハ二週間内ニ其ノ登記ヲ為スヘシ登記前ニ在リテハ其ノ変更ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス
第十五条 組合ハ其ノ設立ノ登記ノ申請ト共ニ組合員名簿ヲ其ノ主タル事務所所在地ノ裁判所ニ差出スヘシ
組合員名簿ニハ左ノ事項ヲ記載スヘシ
一 各組合員ノ氏名、住所
二 各組合員ノ出資口数
三 各組合員ノ払込ミタル金額及其ノ払込ノ年月日
四 出資各口ノ取得ノ年月日
五 保証責任組合ニ在リテハ各組合員ノ保証金額
第十四条第二項ノ規定ハ組合員名簿ノ記載ニ之ヲ準用ス
裁判所ニ差出シタル組合員名簿ハ之ヲ登記簿ノ一部ト看做シ其ノ記載ハ之ヲ登記ト看做ス
第十六条 民法第四十五条第二項、第三項、第四十七条及第四十八条ノ規定ハ産業組合ニ之ヲ準用ス但シ同規定中一週間トアルヲ二週間トス
第三章 組合員ノ権利義務
第十七条 組合員ハ出資一口以上ヲ有スヘシ
組合員ノ有スヘキ出資口数ハ十口ヲ超ユルコトヲ得ス
第十八条 組合員ハ組合ニ払込ムヘキ出資額ニ付相殺ヲ以テ組合ニ対抗スルコトヲ得ス
第十九条 組合員ハ組合ノ承諾アルニ非サレハ其ノ持分ヲ譲渡スコトヲ得ス
組合員ニ非サル者ニシテ持分ヲ譲受ケムトスルトキハ加入ノ例ニ依ルヘシ
第二十条 組合員ハ持分ヲ共有スルコトヲ得ス
第二十一条 持分ノ譲受人ハ其ノ持分ニ付譲渡人ノ権利義務ヲ承継ス
第二十二条 新ニ組合ニ加入シタル組合員ハ其ノ加入前ニ生シタル組合ノ債務ニ付テモ亦責任ヲ負担ス
第二十三条 組合員ハ総組合員五分ノ一以上ノ同意ヲ得テ総会ノ目的及其ノ招集ノ理由ヲ記載シタル書面ヲ提出シテ総会ノ招集ヲ理事ニ請求スルコトヲ得
第二十四条 組合員ニシテ総会ノ招集手続又ハ其ノ決議ノ方法カ法令又ハ定款ニ違背スト認ムルトキハ決議ノ日ヨリ一箇月内ニ其ノ決議ノ取消ヲ地方長官ニ請求スルコトヲ得
第四章 管理
第二十五条 産業組合ニハ理事及監事ヲ置クヘシ
理事及監事ハ総会ニ於テ組合員中ヨリ之ヲ選任ス但シ組合設立ノ当時ノ理事及監事ハ定款ヲ以テ之ヲ定ムルコトヲ得
第二十六条 理事ノ任期ハ三箇年トシ監事ノ任期ハ一箇年トス但シ定款ニ別段ノ定アルトキハ此ノ限ニ在ラス
第二十七条 理事又ハ監事ハ何時ニテモ総会ノ決議ヲ以テ之ヲ解任スルコトヲ得
第二十八条 理事及監事ノ選任及解任ハ総組合員ノ半数以上出席シ其ノ議決権ノ四分ノ三以上ヲ以テ之ヲ決ス但シ定款ニ別段ノ定アルトキハ此ノ限ニ在ラス
第二十九条 理事ハ定款及総会ノ決議録ヲ各事務所ニ備ヘ置キ且組合員名簿ヲ主タル事務所ニ備ヘ置クヘシ
組合員及組合ノ債権者ハ前項ニ掲ケタル書類ノ閲覧ヲ求ムルコトヲ得
第三十条 理事ハ通常総会ノ会日ヨリ一週間前ニ財産目録、貸借対照表、事業報告書及剰余金処分案ヲ監事ニ提出シ且之ヲ主タル事務所ニ備フヘシ
組合員及組合ノ債権者ハ前項ニ掲ケタル書類ノ閲覧ヲ求ムルコトヲ得
第三十一条 理事ハ前条第一項ニ掲ケタル書類及監事ノ意見書ヲ通常総会ニ提出シテ其ノ承認ヲ求ムヘシ
第三十二条 民法第四十四条第一項、第五十二条第二項、第五十三条乃至第五十五条、第六十条及第六十一条第一項ノ規定ハ産業組合ノ理事ニ之ヲ準用ス
第三十三条 監事ハ理事其ノ他組合ノ事務員ト相兼ヌルコトヲ得ス
第三十四条 民法第五十九条ノ規定ハ産業組合ノ監事ニ之ヲ準用ス
第三十五条 組合カ理事ト契約ヲ為ス場合ニ於テハ監事組合ヲ代表ス組合ト理事トノ間ノ訴訟ニ付テモ亦同シ
第三十六条 総会ノ決議ハ本法又ハ定款ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外出席シタル組合員ノ議決権ノ過半数ヲ以テ之ヲ為ス
第三十七条 組合員ハ代理人ヲ以テ議決権ヲ行フコトヲ得此ノ場合ニ於テハ之ヲ出席ト看做ス但シ組合員ニ非サレハ代理人タルコトヲ得ス
代理人ハ代理権ヲ証スル書面ヲ組合ニ差出スヘシ
第三十八条 民法第六十二条、第六十四条、第六十五条第一項及第六十六条ノ規定ハ産業組合ニ之ヲ準用ス
第三十九条 定款ノ変更ハ総会ノ決議ニ依ルヘシ
第二十八条ノ規定ハ前項ノ決議ニ之ヲ準用ス
定款ノ変更ハ地方長官ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其ノ効力ヲ生セス
第四十条 組合カ出資一口ノ金額ノ減少ノ決議ヲ為シタルトキハ其ノ決議ノ日ヨリ二週間内ニ財産目録及貸借対照表ヲ作ルヘシ
組合ハ前項ノ期間内ニ其ノ債権者ニ対シ異議アラハ一定ノ期間内ニ之ヲ述フヘキ旨ヲ催告スヘシ但シ其ノ期間ハ二箇月ヲ下ルコトヲ得ス
第四十一条 債権者カ前条第二項ノ期間内ニ出資ノ減少ニ対シテ異議ヲ述ヘサリシトキハ之ヲ承認シタルモノト看做ス
債権者カ異議ヲ述ヘタルトキハ組合ハ之ニ弁済ヲ為シ又ハ相当ノ担保ヲ供スルニ非サレハ出資ヲ減少スルコトヲ得ス
第四十二条 前二条ノ規定ハ保証責任組合カ組合員ノ保証金額ヲ減少スル場合ニ之ヲ準用ス
第四十三条 組合員カ其ノ出資ノ払込ヲ終ル迄ハ之ニ配当スヘキ剰余金ハ其ノ払込ニ充ツヘシ
第四十四条 組合ハ損失ヲ填補シタル後ニ非サレハ剰余金ノ分配ヲ為スコトヲ得ス
組合員ノ持分ニ対スル剰余金分配ニ関スル制限ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十五条 組合ハ第五十三条ノ場合ヲ除クノ外持分ノ払戻ヲ為スコトヲ得ス
第四十六条 組合ハ定款ヲ以テ定メタル準備金ノ額ニ達スル迄毎事業年度ノ剰余金ノ四分ノ一以上ヲ積立ツヘシ
第四十七条 組合ノ事業年度ハ一箇年トス
第四十八条 組合ハ組合員ノ持分ヲ取得シ又ハ質権ノ目的トシテ之ヲ受クルコトヲ得ス
第五章 加入及脱退
第四十九条 無限責任組合ニ加入セムトスル者ハ総組合員ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
第五十条 定款ヲ以テ組合ノ存立時期ヲ定メタルト否トヲ問ハス組合員ハ事業年度ノ終ニ於テ脱退スルコトヲ得但シ六箇月前ニ其ノ予告ヲ為スヘシ
前項ノ予告期間ハ定款ヲ以テ之ヲ延長スルコトヲ得但シ二箇年ヲ超ユルコトヲ得ス
第五十一条 組合員ハ左ノ事由ニ因リテ脱退ス
一 組合員タル資格ノ喪失
二 死亡
三 破産
四 禁治産
五 除名
第五十二条 除名ノ事由ハ定款ヲ以テ之ヲ定ム
除名ハ総会ノ決議ニ依ル但シ除名シタル組合員ニ其ノ旨ヲ通知スルニ非サレハ之ヲ以テ其ノ組合員ニ対抗スルコトヲ得ス
第二十八条ノ規定ハ前項ノ決議ニ之ヲ準用ス
第五十三条 脱退シタル組合員ハ定款ノ定ムル所ニ依リ其ノ持分ノ全部又ハ一部ノ払戻ヲ請求スルコトヲ得
第五十四条 脱退シタル組合員ノ持分ハ其ノ脱退ヲ組合員名簿ニ記載シタル事業年度ノ終ニ於ケル組合財産ニ依リテ之ヲ定ム
第五十五条 持分ノ払戻ハ事業年度ノ終ヨリ三箇月内ニ之ヲ為スヘシ
持分払戻ノ請求権ハ前項ノ期間経過ノ後二箇年間之ヲ行ハサルニ因リテ消滅ス
第五十六条 持分ノ計算ヲ為スニ当リ組合財産ヲ以テ組合ノ債務ヲ完済スルニ足ラサルトキハ脱退シタル組合員ハ其ノ負担ニ帰スヘキ損失額ヲ払込ムヘシ
第五十七条 脱退シタル組合員カ組合ニ対スル債務ヲ完済スル迄ハ組合ハ其ノ持分ノ払戻ヲ停止スルコトヲ得
第五十八条 無限責任組合及保証責任組合ニ在リテハ脱退シタル組合員ハ脱退前ノ組合債権者ニ対シ其ノ脱退ヲ組合員名簿ニ記載シタル後二箇年間責任ヲ負担ス
前項ノ規定ハ特別ノ契約ヲ以テ其ノ期間ヲ延長スルコトヲ妨ケス
前二項ノ規定ハ持分ヲ譲渡シタル組合員ニ之ヲ準用ス
第六章 監督
第五十九条 産業組合ハ主務大臣、地方長官及郡長之ヲ監督ス
第六十条 監督官庁ハ何時ニテモ理事ヲシテ組合ノ事業ニ関スル報告ヲ為サシメ又ハ組合ノ事業及財産ノ状況ヲ検査シ其ノ他必要ナル命令ヲ発シ及処分ヲ行フ
第六十一条 組合ノ事業又ハ組合財産ノ状況ニ依リ其ノ事業ノ継続ヲ困難ナリト認ムルトキ又ハ組合ノ行為カ定款若ハ法令ニ違背シ其ノ他公益ヲ害スルノ虞アルトキハ主務大臣又ハ地方長官ハ総会ノ決議ヲ取消シ、理事、監事若ハ清算人ノ改選ヲ命シ、組合ノ事業ヲ停止シ又ハ組合ヲ解散スルコトヲ得
第七章 解散
第六十二条 組合ハ左ノ事由ニ因リテ解散ス
一 定款ニ定メタル事由ノ発生
二 総会ノ決議
三 組合ノ合併
四 組合員カ七人未満ニ減シタルトキ
五 組合ノ破産
第二十八条ノ規定ハ解散及合併ノ決議ニ之ヲ準用ス但シ無限責任組合ノ合併ニ付テハ総組合員ノ同意アルコトヲ要ス
第六十三条 組合カ解散シタルトキハ合併及破産ノ場合ヲ除クノ外二週間内ニ各事務所ノ所在地ニ於テ其ノ登記ヲ為スヘシ
第六十四条 第四十条及第四十一条ノ規定ハ合併ノ場合ニ之ヲ準用ス
第六十五条 合併ハ地方長官ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其ノ効力ヲ生セス
第六十六条 組合カ合併ヲ為シタルトキハ二週間内ニ各事務所ノ所在地ニ於テ合併後存続スル組合ニ付テハ変更ノ登記ヲ為シ、合併ニ因リテ消滅シタル組合ニ付テハ解散ノ登記ヲ為シ、合併ニ因リテ設立シタル組合ニ付テハ設立ノ登記ヲ為スヘシ
第六十七条 合併後存続スル組合又ハ合併ニ因リテ設立シタル組合ハ合併ニ因リテ消滅シタル組合ノ権利義務ヲ承継ス
第六十八条 組合ハ総組合員ノ同意ヲ以テ其ノ組織ヲ変更スルコトヲ得
組合カ組織変更ニ因リ組合員ノ責任ヲ減少スルトキハ第四十条及第四十一条ニ定メタル手続ヲ為スヘシ
第六十九条 民法第七十条ノ規定ハ産業組合ノ解散ニ之ヲ準用ス
第八章 清算
第七十条 清算人ハ其ノ職務ノ範囲内ニ於テ理事ト同一ノ権利義務ヲ有ス
第七十一条 清算人ハ就職後遅滞ナク組合財産ノ現況ヲ調査シ財産目録及貸借対照表ヲ作リ之ヲ総会ニ提出シテ其ノ承認ヲ求ムヘシ
第七十二条 清算人ハ組合ノ債務ヲ弁済シ又ハ弁済ニ必要ナル金額ヲ供託スルニ非サレハ組合財産ヲ分配スルコトヲ得ス
第七十三条 清算事務カ終リタルトキハ清算人ハ遅滞ナク決算報告書ヲ作リ之ヲ総会ニ提出シテ其ノ承認ヲ求ムヘシ
第七十四条 清算人ノ解任アリタルトキハ二週間内ニ各事務所ノ所在地ニ於テ其ノ登記ヲ為シ且之ヲ地方長官ニ届出ツヘシ
第七十五条 民法第七十三条乃至第八十三条ノ規定ハ産業組合ノ清算ニ之ヲ準用ス但シ同規定中一週間トアルハ二週間トス
第九章 罰則
第七十六条 組合ノ理事、監事又ハ清算人ハ左ノ場合ニ於テハ五円以上三百円以下ノ過料ニ処セラル
一 本法ニ定メタル登記ヲ為スコトヲ怠リ又ハ不正ノ登記ヲ為シタルトキ
二 官庁又ハ総会ニ対シ不実ノ申立ヲ為シ又ハ事実ヲ隠蔽シタルトキ
三 第二十九条第一項及第三十条第一項ノ規定ニ違背シ又ハ第二十九条第一項及第三十条第一項ニ掲ケタル書類ニ記載スヘキ事項ヲ記載セス又ハ不正ノ記載ヲ為シタルトキ若ハ正当ノ理由ナクシテ其ノ閲覧ヲ拒ミタルトキ
四 第四十条、第四十一条、第四十三条乃至第四十六条、第四十八条又ハ第七十二条ノ規定ニ違背シタルトキ
五 第六十条ノ報告ヲ為サス又ハ検査ヲ拒ミ其ノ他監督官庁ノ命令又ハ処分ニ従ハサルトキ
六 民法第七十九条ノ期間内ニ債権者ニ弁償ヲ為シタルトキ
七 民法第七十九条又ハ第八十一条ニ定メタル公告ヲ為スコトヲ怠リ又ハ不正ノ公告ヲ為シタルトキ
八 民法第七十条又ハ第八十一条ノ規定ニ違背シタルトキ
第七十七条 非訟事件手続法第二百六条乃至第二百八条ノ規定ハ前条ノ過料ニ之ヲ準用ス
附 則
第七十八条 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第七十九条 産業組合ノ登記ニ付テハ其ノ事務所所在地ノ区裁判所又ハ其ノ出張所ヲ以テ管轄登記所トス
第八十条 各登記所ニ産業組合登記簿ヲ備フ
第八十一条 組合設立ノ登記ハ理事及監事ノ全員ノ申請ニ因リテ之ヲ為ス
申請書ニハ左ノ書類ヲ添附スヘシ
一 定款
二 地方長官ノ許可書又ハ其ノ認証アル謄本
三 第十五条第二号及第五号ニ掲ケタル事項ヲ証スル書面
第八十二条 事務所ノ新設、移転其ノ他登記事項ノ変更ノ登記ハ理事ノ申請ニ因リテ之ヲ為ス
申請書ニハ登記事項ノ変更ヲ証スル書面ヲ添附シ且地方長官ノ認可ヲ要スルモノニ付テハ其ノ認可書又ハ其ノ認証アル謄本ヲ添附スヘシ
前二項ノ規定ハ組合員名簿ノ記載ノ申請ニ之ヲ準用ス
第八十三条 出資一口ノ金額又ハ組合員ノ責任ノ減少ノ登記ノ申請書ニハ左ノ書類ヲ添附スヘシ
一 地方長官ノ認可書又ハ其ノ認証アル謄本
二 第四十条第二項ニ依ル催告ヲ為シタルコト、若シ異議ヲ述ヘタル債権者アルトキハ之ニ対シ弁済ヲ為シ又ハ担保ヲ供シタルコトヲ証スル書面
第八十四条 組合ノ解散ノ登記ノ申請書ニハ解散ノ事由ヲ記載シ且組合カ総会ノ決議ニ因リテ解散シタルトキハ総会ノ決議録ヲ添附スヘシ
第八十五条 合併ニ因ル解散ノ登記ノ申請書ニハ第八十三条ニ掲ケタル書面ヲ添附スヘシ
組合カ命令ニ因リテ解散シタルトキハ登記所ハ監督官庁ノ嘱託ニ因リテ其ノ登記ヲ為スヘシ
第八十六条 第八十一条第一項ノ規定ハ出資一口ノ金額又ハ組合員ノ責任ノ減少、組合ノ解散及組合ノ合併ニ因ル変更、設立又ハ解散ノ登記ノ申請ヲ為ス場合ニ之ヲ準用ス
第八十七条 本法ノ規定ニ依リ登記シタル事項ハ裁判所遅滞ナク之ヲ公告スヘシ但シ組合員名簿ニ記載シタル事項ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第八十八条 非訟事件手続法第百三十六条乃至第百三十八条、第百四十一条乃至第百五十一条、第百五十四条乃至第百五十八条、第百六十三条乃至第百六十五条及第百七十五条乃至第百七十七条ノ規定ハ産業組合ノ登記ニ之ヲ準用ス
第八十九条 本法ノ規定ニ依リ郡長ノ行フヘキ職務ハ伊豆七島ニ於テハ東京府知事、北海道ニ於テハ支庁長、沖縄県ノ区ニ於テハ区長、島司ヲ置キタル島嶼ニ於テハ島司之ヲ行フ
第九十条 北海道ニ於ケル産業組合ニ付テハ勅令ヲ以テ別段ノ規定ヲ設クルコトヲ得