(支援決定)
第二十五条 過大な債務を負っている中堅事業者、中小企業者その他の事業者であって、債権者その他の者と協力してその事業の再生を図ろうとするもの(次に掲げる法人を除く。)は、機構に対し、再生支援の申込みをすることができる。
一 地方住宅供給公社、地方道路公社及び土地開発公社
二 前号に掲げるもののほか、国又は地方公共団体が資本金、基本金その他これらに準ずるものの四分の一以上を出資している法人(国又は地方公共団体がその経営を実質的に支配することができないものとして政令で定める法人を除く。)
三 前二号に掲げるもののほか、その役員に占める公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律(平成十二年法律第五十号)第三条第二項に規定する派遣職員又は同法第十条第二項に規定する退職派遣者の割合が政令で定める割合を超えている法人その他国又は地方公共団体がその経営を実質的に支配することが可能な関係にあるものとして政令で定める法人
2 前項の申込みは、当該申込みをする事業者の事業の再生の計画(以下「事業再生計画」という。)を添付して行わなければならない。
3 第一項の申込みをする事業者が認定支援機関(産業活力再生特別措置法第四十一条第二項に規定する認定支援機関をいう。以下同じ。)から第六十二条第二項の規定による書面の交付を受けた中小企業者であるときは、当該書面を添付して申込みをすることができる。
4 機構は、第一項の申込みがあったときは、遅滞なく、支援基準に従って、再生支援をするかどうかを決定するとともに、その結果を当該申込みをした事業者(前項に規定する中小企業者が申込みをした場合にあっては、当該申込みをした中小企業者及び当該書面を交付した認定支援機関)に通知しなければならない。この場合において、機構は、再生支援をする旨の決定(以下「支援決定」という。)を行ったときは、併せて、次条第一項に規定する関係金融機関等の選定、対象事業者の事業の再生のために当該関係金融機関等が同項各号に掲げる申込み又は同意をすることが必要と認められる債権の額(以下「必要債権額」という。)及び同項に規定する買取申込み等期間の決定並びに第二十七条第一項に規定する回収等停止要請をすべきかどうかの決定を行わなければならない。
5 機構は、再生支援をするかどうかを決定するに当たっては、第一項の申込みをした事業者における事業再生計画についての労働者との協議の状況等に配慮しなければならない。
6 機構は、再生支援をするかどうかを決定するに当たっては、第一項の申込みをした事業者の企業規模が小さいことのみを理由として不利益な取扱いをしてはならない。
7 機構は、再生支援をするかどうかを決定しようとするときは、あらかじめ、主務大臣にその旨を通知し、相当の期間を定めて、意見を述べる機会を与えなければならない。
8 主務大臣は、前項の規定による通知を受けたときは、遅滞なく、その内容を事業所管大臣及び第六十一条に規定する場合における同条の各省各庁の長(次項において「事業所管大臣等」という。)に通知するものとする。
9 事業所管大臣等は、前項の規定による通知を受けた場合において、過剰供給構造(供給能力が需要に照らし著しく過剰であり、かつ、その状態が長期にわたり継続することが見込まれる事業分野の状態をいう。)その他の当該事業者の属する事業分野の実態を考慮して必要があると認めるときは、第七項の期間内に、機構に対して意見を述べることができる。
10 支援決定は、機構の成立の日から二年以内に行わなければならない。ただし、機構があらかじめ主務大臣の認可を受けた事業者に対しては、当該成立の日から二年六月以内に行うことができる。
(買取申込み等の求め)
第二十六条 機構は、支援決定を行ったときは、直ちに、その対象となった事業者(以下「対象事業者」という。)の債権者である金融機関等のうち事業再生計画に基づく対象事業者の事業の再生のために協力を求める必要があると認められるもの(以下「関係金融機関等」という。)に対し、支援決定の日から起算して三月以内で機構が定める期間(以下「買取申込み等期間」という。)内に、当該関係金融機関等が対象事業者に対して有するすべての債権につき、次に掲げる申込み又は同意をする旨の回答(以下「買取申込み等」という。)をするように求めなければならない。この場合において、関係金融機関等に対する求めは、支援決定を行った旨の通知及び事業再生計画を添付して行わなければならない。
二 事業再生計画に従って債権の管理又は処分をすることの同意(対象事業者に対する貸付債権を信託財産とし、当該同意に係る事業再生計画に従ってその管理又は処分を機構に行わせるための信託の申込みを含む。)
2 前項第一号の債権の買取りの申込みは、価格を示して行うものとする。
(回収等停止要請)
第二十七条 機構は、関係金融機関等が対象事業者に対し債権の回収その他主務省令で定める債権者としての権利の行使(以下「回収等」という。)をすることにより、買取申込み等期間が満了する前に対象事業者の事業の再生が困難となるおそれがあると認められるときは、すべての関係金融機関等に対し、前条第一項前段の規定による求めに併せて、買取申込み等期間が満了するまでの間、回収等をしないことの要請(以下「回収等停止要請」という。)をしなければならない。
2 機構は、前項の場合において、買取申込み等期間が満了する前に、次条第一項に規定する買取決定を行い、又は第三十二条第一項第三号の規定により支援決定を撤回したときは、直ちに、回収等停止要請を撤回し、その旨をすべての関係金融機関等に通知しなければならない。
(買取決定)
第二十八条 機構は、買取申込み等期間が満了し、又は買取申込み等期間が満了する前にすべての関係金融機関等から買取申込み等があったときは、速やかに、それぞれの買取申込み等(第二十六条第一項第一号に掲げる債権の買取りの申込み又は同項第二号に規定する信託の申込みをする旨のものに限る。第三項において同じ。)に対し、支援基準に従って、債権買取り等をするかどうかを決定しなければならない。この場合において、債権買取り等をする旨の決定(以下「買取決定」という。)をするときは、一括して行わなければならない。
2 前項の場合において、機構は、買取申込み等に係る債権のうち、買取りをすることができると見込まれるものの額及び第二十六条第一項第二号に掲げる同意に係るものの額の合計額が必要債権額に満たないときは、買取決定を行ってはならない。
3 第一項の場合において、関係金融機関等が回収等停止要請に反して回収等をしたときは、機構は、当該関係金融機関等からの買取申込み等に対し、買取決定を行ってはならない。
4 機構は、買取決定を行おうとするときは、あらかじめ、主務大臣にその旨を通知し、相当の期間を定めて、意見を述べる機会を与えなければならない。
(買取価格)
第二十九条 機構が債権の買取りを行う場合の価格は、支援決定に係る事業再生計画を勘案した適正な時価を上回ってはならない。
(買取申込み等期間の延長)
第三十条 機構は、買取申込み等に係る債権のうち、買取りをすることができると見込まれるものの額及び第二十六条第一項第二号に掲げる同意に係るものの額の合計額が、買取申込み等期間が満了しても必要債権額に満たないことになると見込まれるときは、当該買取申込み等期間の延長を決定することができる。この場合において、当該延長をする買取申込み等期間の末日は、支援決定の日から起算して三月以内でなければならない。
2 機構は、前項の規定により買取申込み等期間の延長を決定したときは、直ちに、その旨をすべての関係金融機関等に通知するとともに、まだ買取申込み等をしていない関係金融機関等に対し、当該延長をした買取申込み等期間内に買取申込み等をするように求めなければならない。
3 第二十六条第二項、第二十七条から前条まで及び第一項の規定は、同項の規定により買取申込み等期間の延長を決定した場合について準用する。この場合において、これらの規定中「買取申込み等期間」とあるのは「延長をした買取申込み等期間」と、第二十七条第一項中「前条第一項前段」とあるのは「第三十条第二項」と読み替えるものとする。
(出資決定)
第三十一条 機構は、買取決定又は第二十六条第一項第二号に掲げる同意をする旨の買取申込み等に係る債権額のみで必要債権額を満たした場合における債権買取り等をしない旨の決定(以下「買取決定等」という。)を行った後でなければ、対象事業者に出資をする決定(次項及び第三十四条第一項第三号において「出資決定」という。)をしてはならない。
2 機構は、出資決定を行おうとするときは、あらかじめ、主務大臣にその旨を通知し、相当の期間を定めて、意見を述べる機会を与えなければならない。
(支援決定の撤回)
第三十二条 機構は、次に掲げる場合には、速やかに、支援決定を撤回しなければならない。
一 買取申込み等期間(第三十条第一項の規定により延長をした買取申込み等期間を含む。第三号及び第四号において同じ。)が満了しても、買取申込み等がなかったとき。
三 買取申込み等期間内に、関係金融機関等が回収等停止要請に反して回収等を行ったことにより、他の関係金融機関等による買取申込み等に係る債権額では必要債権額に満たないことが明らかになったとき。
四 買取申込み等期間内に、対象事業者が破産手続開始の決定、再生手続開始の決定、更生手続開始の決定、特別清算開始の命令又は外国倒産処理手続の承認の決定を受けたとき。
2 機構は、前項の規定により支援決定を撤回したときは、直ちに、対象事業者(当該対象事業者が第二十五条第三項に規定する中小企業者である場合にあっては、当該対象事業者及び当該対象事業者に第六十二条第二項の規定による書面を交付した認定支援機関。以下この項において同じ。)及び関係金融機関等(前項第一号に掲げる場合にあっては対象事業者、同項第二号に掲げる場合にあっては対象事業者及び買取申込み等をした関係金融機関等)に対し、その旨を通知しなければならない。
(債権等の譲渡その他の処分の決定等)
第三十三条 機構は、対象事業者に係る債権又は株式若しくは持分の譲渡その他の処分の決定を行おうとするときは、あらかじめ、主務大臣にその旨を通知し、相当の期間を定めて、意見を述べる機会を与えなければならない。
2 第二十五条第八項及び第九項の規定は、経済情勢の変化等に伴い、機構が支援決定に係る事業再生計画に予定していない債務の免除を行う必要が新たに生じた場合における当該債務の免除に係る前項の決定に関し、同項の規定により主務大臣が通知を受けた場合について準用する。この場合において、同条第九項中「第七項」とあるのは、「第三十三条第一項」と読み替えるものとする。
3 機構は、経済情勢、対象事業者の事業の状況等を考慮しつつ、支援決定の日から三年(第二十五条第十項ただし書の認可を受けて支援決定を行った場合は、機構の成立の日から五年。以下この条において同じ。)以内に、当該支援決定に係るすべての再生支援を完了するように努めなければならない。
4 機構が貸付債権の信託の引受けを行う場合における信託契約の終了の日は、支援決定の日から三年以内でなければならない。
5 機構が債務の保証を行う場合におけるその対象となる貸付金の償還期限は、支援決定の日から三年以内でなければならない。
(決定の公表)
第三十四条 機構は、次に掲げるときは、速やかに、その旨、対象事業者の氏名又は名称その他機構が行ったことの概要を示すために必要なものとして主務省令で定める事項を公表しなければならない。
四 対象事業者に係る債権又は株式若しくは持分の譲渡その他の処分の決定を行ったとき。
五 一の支援決定に係るすべての再生支援を完了したとき。
2 機構は、再生支援の申込みをした事業者があらかじめ申し出た場合には、買取決定等を公表するまでの間に限り、支援決定(支援決定の撤回を含む。)を公表しないことができる。
(資金の貸付けに関する機構の確認)
第三十五条 対象事業者に係る支援決定の時から買取決定等の時までの間に当該対象事業者に資金の貸付けを行おうとする金融機関等は、機構に対し、当該貸付けが次の各号のいずれにも適合することの確認を求めることができる。
一 当該貸付けが、対象事業者の事業の継続に欠くことができないものとして主務大臣が定める基準に該当するものであること。
二 対象事業者の事業再生計画に、当該貸付けに係る債権の弁済を機構及び第二十六条第一項第二号に掲げる同意をした関係金融機関等(以下「機構等」という。)が有する他の債権の弁済よりも優先的に取り扱う旨が記載されていること(当該事業再生計画に、機構等が対象事業者の債務を免除する旨が記載されている場合に限る。)。
2 機構は、前項の確認を行ったときは、直ちに、その旨を、当該金融機関等に通知するとともに、公告するものとする。
3 前項の規定による公告は、時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法又はインターネットを利用する主務省令で定める方法でしなければならない。
4 機構は、第一項の確認を行った場合において、当該対象事業者に係る買取決定等を行ったときは、直ちに、その旨を当該確認を受けた金融機関等に通知するものとし、当該金融機関等がその通知を受けた時までに当該確認に係る貸付けを行っていないときは、当該確認は、その効力を失う。
(再生手続の特例)
第三十六条 裁判所(再生事件を取り扱う一人の裁判官又は裁判官の合議体をいう。次項において同じ。)は、機構が対象事業者に係る買取決定等の時から当該対象事業者に係るすべての債権並びに株式及び持分についての譲渡その他の処分の決定の時までの間に当該対象事業者について再生手続開始の申立てが行われた場合(当該申立ての時までに、機構等が事業再生計画に従って当該対象事業者の債務を免除している場合に限る。)において、前条第一項の規定により機構が確認を行った貸付けに係る再生債権と他の再生債権との間に権利の変更の内容に差を設ける再生計画案が提出され、又は可決されたときは、次に掲げる事項を考慮した上で、当該再生計画案が民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第百五十五条第一項ただし書に規定する差を設けても衡平を害しない場合に該当するかどうかを判断しなければならない。
一 当該貸付けが、対象事業者の事業の継続に欠くことができないものであることが確認されていること。
二 機構等が事業再生計画に従って対象事業者の債務を免除していること及びその額
2 裁判所は、前項に規定する差が設けられた再生計画案が提出され、又は可決された場合には、機構に対し、意見の陳述を求めることができる。
(更生手続についての準用)
第三十七条 前条の規定は、機構が対象事業者に係る買取決定等の時から当該対象事業者に係るすべての債権並びに株式及び持分についての譲渡その他の処分の決定の時までの間に当該対象事業者について更生手続開始の申立てが行われた場合(当該申立ての時までに、機構等が事業再生計画に従って当該対象事業者の債務を免除している場合に限る。)について準用する。この場合において、同条第一項中「再生事件」とあるのは「更生事件(会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第二条第三項に規定する更生事件をいう。)」と、「再生債権と他の再生債権」とあるのは「更生債権(同法第二条第八項に規定する更生債権をいう。以下同じ。)とこれと同一の種類の他の更生債権」と、同条中「再生計画案」とあるのは「更生計画案」と、同条第一項中「民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第百五十五条第一項ただし書」とあるのは「同法第百六十八条第一項ただし書」と読み替えるものとする。
(資料の交付又は閲覧)
第三十八条 機構は、その業務を行うために必要があるときは、次の各号に掲げる者に対し、当該各号に定める者の業務又は財産の状況に関する資料の提出を求めることができる。
一 再生支援の申込みをした事業者又は当該事業者に対して債権を有する金融機関等 当該事業者
2 前項の規定により資料の提出を求められた者は、遅滞なく、これを機構に提出しなければならない。
3 国、地方公共団体又は日本銀行は、機構がその業務を行うために特に必要があると認めて要請をしたときは、機構に対し、必要な資料を交付し、又はこれを閲覧させることができる。