(目的)
第一条 この法律は、中部国際空港の設置及び管理を効率的に行うための措置を定めることにより、航空輸送の円滑化を図り、もって航空の総合的な発達に資することを目的とする。
(中部国際空港)
第二条 中部国際空港は、国際航空路線に必要な公共用飛行場として、愛知県の地先水面で政令で定める位置に設置するものとする。
(中部国際空港等の設置及び管理)
第三条 中部国際空港及び同空港における航空機の離陸又は着陸の安全を確保するために必要な航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第二条第四項に規定する航空保安施設(次条第一項において「中部国際空港等」という。)の設置及び管理は、運輸大臣が定める基本計画に適合するものでなければならない。
2 前項の基本計画に関し必要な事項は、政令で定める。
(中部国際空港等の設置及び管理を行う者の指定)
第四条 運輸大臣は、第六条第一項の事業を営むことを目的として設立された株式会社であって、次の各号に掲げる要件を備えていると認められるものを、その申請により、中部国際空港等の設置及び管理を行う者として指定することができる。
一 前条第一項の基本計画に従って中部国際空港等の設置及び管理を行うことについて適正かつ確実な計画を有すると認められる者であること。
二 前条第一項の基本計画に従って中部国際空港等の設置及び管理を行うことについて十分な経理的基礎及び技術的能力を有すると認められる者であること。
三 次条第一項の規定に基づき政府が引き受ける株式を適正な価額で発行すると認められる者であること。
2 運輸大臣は、前項の規定による指定をしたときは、当該指定を受けた者(以下「指定会社」という。)の商号及び本店の所在地を官報で公示しなければならない。
3 指定会社は、その商号又は本店の所在地を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を運輸大臣に届け出なければならない。
4 運輸大臣は、前項の規定による届出があったときは、その旨を官報で公示しなければならない。
(政府及び地方公共団体の出資)
第五条 政府は、前条第一項の規定による指定をしたときは、予算で定める金額の範囲内において、指定会社の株式を引き受けるものとする。
2 政府は、必要があると認めるときは、予算で定める金額の範囲内において、指定会社に追加して出資することができる。
3 地方公共団体は、自治大臣の承認を受けて、指定会社に出資することができる。
4 指定会社は、新株を発行しようとするときは、運輸大臣の認可を受けなければならない。
(指定会社の事業)
第六条 指定会社は、次の事業を営むものとする。
二 中部国際空港における航空機の離陸又は着陸の安全を確保するために必要な航空法第二条第四項に規定する航空保安施設の設置及び管理
三 中部国際空港の機能を確保するために必要な航空旅客及び航空貨物の取扱施設、航空機給油施設その他の政令で定める施設並びにこれらの施設以外の施設で中部国際空港を利用する者の利便に資するために当該空港の敷地内に建設することが適当であると認められる事務所、店舗その他の政令で定めるものの建設及び管理
五 前各号に掲げるもののほか、中部国際空港の設置及び管理を効率的に行うために必要な事業
2 指定会社は、前項第五号の事業を行おうとするときは、あらかじめ運輸大臣の認可を受けなければならない。
(一般担保)
第七条 指定会社の社債権者は、指定会社の財産について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
2 前項の先取特権の順位は、民法(明治二十九年法律第八十九号)の規定による一般の先取特権に次ぐものとする。
(債務保証)
第八条 政府は、法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律(昭和二十一年法律第二十四号)第三条の規定にかかわらず、国会の議決を経た金額の範囲内において、指定会社の債務(国際復興開発銀行等からの外資の受入に関する特別措置に関する法律(昭和二十八年法律第五十一号)第二条第一項の規定に基づき政府が保証契約をすることができる債務を除く。)について、保証契約をすることができる。
2 政府は、前項の規定によるほか、指定会社が債券又はその利札を失った者に交付するために政令で定めるところにより発行する債券又は利札に係る債務について、保証契約をすることができる。
(資金の貸付け)
第九条 政府は、予算の範囲内において、指定会社に対し、第六条第一項第一号から第四号までの事業に要する経費に充てる資金を無利子で貸し付けることができる。
(中部国際空港整備準備金)
第十条 指定会社が中部国際空港の整備に要する費用の支出に備えるために必要な金額を中部国際空港整備準備金として積み立てた場合には、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)で定めるところにより、特別の措置を講ずるものとする。
(国及び地方公共団体の配慮)
第十一条 国及び地方公共団体は、指定会社の事業の円滑かつ効率的な遂行を図るため、適当と認める人的及び技術的援助について必要な配慮を加えるものとする。
(指定会社の職員に係る退職手当等の特例)
第十二条 指定会社の職員(常時勤務に服することを要しない者を除く。次項において同じ。)は、国家公務員退職手当法(昭和二十八年法律第百八十二号)第七条の二第一項に規定する公庫等職員とみなして、同条の規定を適用する。
2 指定会社又は指定会社の職員は、国家公務員共済組合法(昭和三十三年法律第百二十八号)第百二十四条の二第一項に規定する公庫等若しくは公庫等職員又は地方公務員等共済組合法(昭和三十七年法律第百五十二号)第百四十条第一項に規定する公庫等若しくは公庫等職員とみなして、それぞれ国家公務員共済組合法第百二十四条の二又は地方公務員等共済組合法第百四十条の規定を適用する。
(代表取締役等の選定等の決議)
第十三条 指定会社の代表取締役の選定及び解職並びに監査役の選任及び解任の決議は、運輸大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
(事業計画)
第十四条 指定会社は、毎営業年度の開始前に(第四条第一項の規定による指定を受けた日の属する営業年度にあっては、その指定を受けた後速やかに)、運輸省令で定めるところにより、当該営業年度の事業計画を運輸大臣に提出して、その認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(社債及び借入金)
第十五条 指定会社は、社債を募集し、又は弁済期限が一年を超える資金を借り入れようとするときは、運輸大臣の認可を受けなければならない。
2 前項の規定は、指定会社が、債券を失った者に交付するために政令で定めるところにより債券を発行し、当該債券の発行により新たに債務を負担することとなる場合には、適用しない。
(重要な財産の譲渡等)
第十六条 指定会社は、運輸省令で定める重要な財産を譲渡し、又は担保に供しようとするときは、運輸大臣の認可を受けなければならない。
(定款の変更等)
第十七条 指定会社の定款の変更、利益の処分又は損失の処理、合併及び解散の決議は、運輸大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
(財務諸表)
第十八条 指定会社は、毎営業年度終了後三月以内に、その営業年度の貸借対照表、損益計算書及び営業報告書を運輸大臣に提出しなければならない。
(監督命令)
第十九条 運輸大臣は、第六条第一項第一号から第四号までの事業の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、指定会社に対し、業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
(報告及び検査)
第二十条 運輸大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、指定会社からその業務に関し報告をさせ、又はその職員に、指定会社の営業所、事務所その他の事業場に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人にこれを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(指定の取消し)
第二十一条 運輸大臣は、指定会社が次の各号のいずれかに該当するときは、第四条第一項の規定による指定を取り消すことができる。
一 第六条第一項第一号から第四号までの事業を適正に営むことができないと認めるとき。
二 この法律又はこの法律に基づく命令に違反したとき。
2 運輸大臣は、前項の規定により第四条第一項の規定による指定を取り消したときは、その旨を官報で公示しなければならない。
(指定を取り消した場合における措置)
第二十二条 前条第一項の規定により第四条第一項の規定による指定を取り消した場合における当該取消しに係る指定会社の権利及び義務の取扱いその他必要な措置については、別に法律で定める。
2 前条第一項の規定により第四条第一項の規定による指定を取り消した場合において、前項の法律に基づく必要な措置がとられるまでの間は、運輸大臣が、政令で定めるところにより、第六条第一項第一号から第四号までの事業に係る財産の管理その他の業務を行うものとする。
(協議)
第二十三条 運輸大臣は、次の場合には、大蔵大臣に協議しなければならない。
二 第四条第一項の規定による指定又は第二十一条第一項の規定による指定の取消しをしようとするとき。
三 第五条第四項、第六条第二項、第十四条、第十五条第一項、第十六条又は第十七条(指定会社の定款の変更の決議に係るものについては、指定会社が発行する株式の総数を変更するものに限る。)の認可をしようとするとき。
(罰則)
第二十四条 指定会社の役員又は職員が、その職務に関して、わいろを収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、三年以下の懲役に処する。これによって不正の行為をし、又は相当の行為をしなかったときは、五年以下の懲役に処する。
2 前項の場合において、犯人が収受したわいろは、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。
第二十五条 前条第一項のわいろを供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪を犯した者が自首したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。
第二十六条 第二十条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、その違反行為をした指定会社の役員又は職員は、二十万円以下の罰金に処する。
第二十七条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした指定会社の役員は、百万円以下の過料に処する。
一 第五条第四項の規定に違反して、新株を発行したとき。
二 第六条第二項の規定に違反して、事業を行ったとき。
三 第十四条の規定に違反して、事業計画の認可を受けなかったとき。
四 第十五条第一項の規定に違反して、社債を募集し、又は資金を借り入れたとき。
五 第十六条の規定に違反して、財産を譲渡し、又は担保に供したとき。
六 第十八条の規定に違反して、貸借対照表、損益計算書若しくは営業報告書を提出せず、又は不実の記載をしたこれらの書類を提出したとき。