(目的)
第一条 この法律は、高速輸送体系の形成が国土の総合的かつ普遍的開発に果たす役割の重要性にかんがみ、新幹線鉄道による全国的な鉄道網の整備を図り、もつて国民経済の発展と国民生活領域の拡大に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「新幹線鉄道」とは、その主たる区間を列車が二百キロメートル毎時以上の高速度で走行できる幹線鉄道をいう。
(新幹線鉄道の路線)
第三条 新幹線鉄道の路線は、全国的な幹線鉄道網を形成するに足るものであるとともに、全国の中核都市を有機的かつ効率的に連結するものであつて、第一条の目的を達成しうるものとする。
(新幹線鉄道の建設及び営業)
第四条 新幹線鉄道の建設は、日本国有鉄道又は日本鉄道建設公団が行なうものとし、その営業は、日本国有鉄道が行なうものとする。
(基本計画)
第五条 運輸大臣は、鉄道輸送の需要の動向、国土開発の重点的な方向その他新幹線鉄道の効果的な整備を図るため必要な事項を考慮し、政令で定めるところにより、建設を開始すべき新幹線鉄道の路線(以下「建設線」という。)を定める基本計画(以下「基本計画」という。)を決定しなければならない。
2 運輸大臣は、前項の規定により基本計画を決定しようとするときは、あらかじめ、鉄道建設審議会に諮問しなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
3 運輸大臣は、第一項の規定により基本計画を決定したときは、遅滞なく、これを公示しなければならない。これを変更したときも、同様とする。
(建設線の調査の指示)
第六条 運輸大臣は、前条の規定により基本計画を決定したときは、日本国有鉄道又は日本鉄道建設公団に対し、建設線の建設に関し必要な調査を行なうべきことを指示しなければならない。基本計画を変更したときも、同様とする。
(整備計画)
第七条 運輸大臣は、政令で定めるところにより、基本計画で定められた建設線の建設に関する整備計画(以下「整備計画」という。)を決定しなければならない。
2 第五条第二項の規定は、整備計画を決定し、又は変更しようとする場合について準用する。
(建設線の建設の指示)
第八条 運輸大臣は、前条の規定により整備計画を決定したときは、日本国有鉄道又は日本鉄道建設公団に対し、整備計画に基づいて当該建設線の建設を行なうべきことを指示しなければならない。整備計画を変更したときも、同様とする。
(工事実施計画)
第九条 日本国有鉄道又は日本鉄道建設公団は、前条の規定による指示により建設線の建設を行なおうとするときは、整備計画に基づいて、路線名、工事の区間、工事方法その他運輸省令で定める事項を記載した建設線の工事実施計画を作成し、運輸大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の工事実施計画には、線路の位置を表示する図面その他運輸省令で定める書類を添附しなければならない。
3 日本鉄道建設公団は、第一項の規定により工事実施計画を作成し、又は変更しようとするときは、あらかじめ、日本国有鉄道に協議しなければならない。
4 日本鉄道建設公団は、第一項の規定による運輸大臣の認可を受けたときは、工事実施計画に関する書類を日本国有鉄道に提出しなければならない。
(行為制限区域の指定及びその解除)
第十条 運輸大臣は、前条第一項の規定による認可に係る新幹線鉄道の建設に要する土地で政令で定めるものについて、当該新幹線鉄道の建設を円滑に遂行させるため第十一条第一項に規定する行為の制限が必要であると認めるときは、区域を定め、当該区域を行為制限区域として指定することができる。
2 運輸大臣は、前項の規定により行為制限区域を指定しようとするときは、あらかじめ、当該新幹線鉄道の建設を行なう日本国有鉄道又は日本鉄道建設公団(以下「建設主体」という。)の意見をきかなければならない。
3 運輸大臣は、第一項の行為制限区域の指定に関し必要があると認めるときは、建設主体に対し、必要な資料の提出を求めることができる。
4 運輸大臣は、第一項の規定により行為制限区域を指定するときは、運輸省令で定めるところにより、当該行為制限区域を公示し、かつ、これを表示する図面を一般の縦覧に供しなければならない。
5 運輸大臣は、第一項の規定により指定した行為制限区域に係る新幹線鉄道の建設の工事が完了したときは、すみやかに、当該行為制限区域の指定を解除し、運輸省令で定めるところにより、その旨を公示しなければならない。工事の完了前において当該行為制限区域を存続させる必要がなくなつたと認めるときも、同様とする。
6 第二項の規定は、前項の規定により行為制限区域の指定を解除しようとする場合について準用する。
(行為の制限)
第十一条 前条第一項の規定により指定された行為制限区域内においては、何人も、土地の形質を変更し、又は工作物を新設し、改築し、若しくは増築してはならない。ただし、非常災害のため必要な応急措置として行なう行為及び政令で定めるその他の行為については、この限りでない。
2 前項の規定による行為の制限により損失を受ける者がある場合においては、建設主体は、その者に対して通常受けるべき損失を補償しなければならない。
3 前項の規定による損失の補償については、建設主体と損失を受けた者とが協議しなければならない。
4 前項の規定による協議が成立しないときは、建設主体又は損失を受けた者は、政令で定めるところにより、収用委員会に土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)第九十四条の規定による裁決を申請することができる。
(他人の土地の立入り又は一時使用)
第十二条 日本国有鉄道若しくは日本鉄道建設公団又はその委任を受けた者は、新幹線鉄道の建設に関する調査、測量又は工事のためやむを得ない必要があるときは、その必要の限度において、他人の占有する土地に立ち入り、又は特別の用途のない他人の土地を材料置場若しくは作業場として一時使用することができる。
2 前項の規定により他人の占有する土地に立ち入ろうとする者は、あらかじめ、当該土地の占有者にその旨を通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難である場合においては、この限りでない。
3 第一項の規定により建築物が所在し、又はかき、さく等で囲まれた他人の占有する土地に立ち入ろうとする場合においては、その立ち入ろうとする者は、立入りの際、あらかじめ、その旨を当該土地の占有者に告げなければならない。
4 日出前及び日没後においては、土地の占有者の承諾があつた場合を除き、前項の規定する土地に立ち入つてはならない。
5 第一項の規定により他人の占有する土地に立ち入ろうとする者は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
6 第一項の規定により特別の用途のない他人の土地を材料置場又は作業場として一時使用しようとする者は、あらかじめ、当該土地の占有者及び所有者に通知して、その意見をきかなければならない。
7 土地の占有者又は所有者は、正当な理由がない限り、第一項の規定による立入り又は一時使用を拒み、又は妨げてはならない。
8 前条第二項から第四項までの規定は、第一項の現定による立入り又は一時使用により損失を受けた者の損失補償について準用する。
9 第五項に規定する証明書の様式その他必要な事項は、運輸省令で定める。
(財政上の措置等)
第十三条 国は、新幹線鉄道が国土の総合的かつ普遍的開発、国民経済の発展及び国民生活の向上に果たす役割の重要性並びに新幹線鉄道の整備の緊要性等にかんがみ、新幹線鉄道に関し、その建設のため必要な資金についての助成その他必要な措置を講ずるよう配慮しなければならない。
2 地方公共団体は、新幹線鉄道が当該地方の開発発展及び住民の生活の向上に果たす役割の重要性にかんがみ、新幹線鉄道に関し、その建設のため必要な資金についての援助、その建設に要する土地の取得のあつせんその他必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(日本国有鉄道法の適用除外)
第十四条 日本国有鉄道が行なう新幹線鉄道の建設については、日本国有鉄道法(昭和二十三年法律第二百五十六号)第五十三条の規定は、適用しない。
(運輸省令への委任)
第十五条 この法律に定めるもののほか、この法律を実施するため必要な事項は、運輸省令で定める。
(罰則)
第十六条 次の各号の一に該当する者は、十万円以下の罰金に処する。
第十七条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、同条の罰金刑を科する。
第十八条 日本国有鉄道又は日本鉄道建設公団が第九条第一項の規定に違反して認可を受けなかつた場合には、その違反行為をした日本国有鉄道又は日本鉄道建設公団の役員は、十万円以下の罰金に処する。