倉庫業法
法令番号: 法律第121号
公布年月日: 昭和31年6月1日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

倉庫業は重要物資の大量保管を任務とし、倉庫証券の発行により商品売買や金融上の重要な機能を持つため、公益的性格が強い。しかし現行法は倉庫証券の発行取締りのみを目的とし、一般的監督規制の法規が不備なため、戦後の特殊事情により劣悪な業者が増加し、保管設備や経営方法に問題が生じている。そのため倉庫業と倉庫証券の信用が低下し、機能発揮に支障をきたしている。この状況を改善するため、一般的監督規制の法規を整備し、不適切な設備や信用力の低い業者を取り締まるとともに、適切な監督を行うことで、倉庫業の健全な発達を図る必要がある。

参照した発言:
第24回国会 衆議院 運輸委員会 第21号

審議経過

第24回国会

衆議院
(昭和31年3月27日)
参議院
(昭和31年3月27日)
衆議院
(昭和31年4月10日)
参議院
(昭和31年4月13日)
(昭和31年4月17日)
(昭和31年4月19日)
衆議院
(昭和31年4月24日)
(昭和31年4月25日)
(昭和31年4月27日)
(昭和31年5月2日)
参議院
(昭和31年5月17日)
(昭和31年5月18日)
衆議院
(昭和31年6月3日)
参議院
(昭和31年6月3日)
倉庫業法をここに公布する。
御名御璽
昭和三十一年六月一日
内閣総理大臣 鳩山一郎
法律第百二十一号
倉庫業法
(目的)
第一条 この法律は、倉庫業の適正な運営及び倉庫証券の円滑な流通を確保することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律で「倉庫」とは、物品の滅失若しくは損傷を防止するための工作物又は物品の滅失若しくは損傷を防止するための工作を施した土地若しくは水面であつて、物品の保管の用に供するものをいう。
2 この法律で「倉庫業」とは、寄託を受けた物品の倉庫における保管(保護預り、一時預りその他の政令で定めるものを除く。)を行う営業をいう。
3 この法律で「倉庫証券」とは、預証券及び質入証券又は倉荷証券をいう。
(営業の許可)
第三条 倉庫業を営もうとする者は、運輸大臣の許可を受けなければならない。
(許可の申請)
第四条 前条の許可を受けようとする者は、次の事項を記載した申請書を運輸大臣に提出しなければならない。
一 倉庫の位置、構造及び設備
二 保管する物品の種類
三 その他運輸省令で定める事項
2 前項の申請書には、倉庫の図面その他運輸省令で定める書類を添附しなければならない。
(許可の基準)
第五条 運輸大臣は、第三条の許可の申請があつたときは、次の各号の一に該当する場合を除き、許可をしなければならない。
一 申請者が一年以上の懲役又は禁錮の刑に処せられ、その執行を終り、又は執行を受けることがなくなつた日から二年を経過しない者であるとき。
二 申請者が第三条の許可の取消を受け、その取消の日から二年を経過しない者であるとき。
三 申請者が法人である場合において、その役員が前二号の一に該当する者であるとき。
四 倉庫の位置、構造又は設備が保管する物品の種類に応じて運輸省令で定める基準に適合しないときその他倉庫業の適確な遂行に支障があるとき。
(料金)
第六条 第三条の許可を受けた者(以下「倉庫業者」という。)は、倉庫保管料、倉庫荷役料その他の営業に関する料金を定め、その実施前に、運輸大臣に届け出なければならない。これを変更しようとするときも同様とする。
2 運輸大臣は、前項の料金が次の各号の一に該当すると認めるときは、当該倉庫業者に対し、期限を定めてその料金を変更すべきことを命ずることができる。
一 能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものをこえるものであるとき。
二 特定の荷主に対して不当な差別的取扱をするものであるとき。
三 他の倉庫業者との間に不当な競争をひき起すおそれがあるものであるとき。
第七条 倉庫業者は、収受した料金の割戻をしてはならない。
(倉庫寄託約款)
第八条 倉庫業者は、倉庫寄託約款を定め、その実施前に、運輸大臣に届け出なければならない。これを変更しようとするときも同様とする。
2 運輸大臣は、前項の倉庫寄託約款が寄託者又は倉庫証券の所持人の正当な利益を害するおそれがあると認めるときは、当該倉庫業者に対し、期限を定めてその倉庫寄託約款を変更すべきことを命ずることができる。
(料金等の掲示)
第九条 倉庫業者は、料金及び倉庫寄託約款を営業所その他の事業所において利用者に見やすいように掲示しておかなければならない。
(差別的取扱の禁止)
第十条 倉庫業者は、特定の利用者に対して不当な差別的取扱をしてはならない。
(倉庫の位置等の変更)
第十一条 倉庫業者は、第四条第一項第一号又は第二号に掲げる事項を変更しようとするときは、運輸大臣の認可を受けなければならない。ただし、倉庫の用途を廃止する場合その他運輸省令で定める場合は、この限りでない。
2 第五条第四号の規定は、前項の認可について準用する。
(倉庫の構造及び設備)
第十二条 倉庫業者は、営業に使用する倉庫をその構造及び設備が第五条第四号の基準に適合するように維持しなければならない。
2 運輸大臣は、営業に使用する倉庫の構造又は設備が第五条第四号の基準に適合していないと認めるときは、当該倉庫業者に対し、期限を定めて当該倉庫を修理し、若しくは改造し、又は保管する物品の種類を変更すべきことを命ずることができる。
(倉庫証券の発行)
第十三条 倉庫証券は、運輸大臣の許可を受けた倉庫業者でなければ、発行してはならない。
2 運輸大臣は、前項の許可をしようとするときは、次の基準によつてしなければならない。
一 当該業務を適確に遂行するに必要な経験又は能力を有すること。
二 当該業務を適確に遂行するに足る資力信用を有すること。
3 運輸大臣は、第一項の許可を受けようとする者が次の各号の一に該当するときは、その許可をしてはならない。
一 第一項の許可の取消を受け、その取消の日から二年を経過しない者であるとき。
二 法人である場合において、その役員が前号に該当する者であるとき。
(火災保険に付する義務)
第十四条 前条第一項の許可を受けた倉庫業者(以下「発券倉庫業者」という。)は、倉庫証券を発行する場合においては、寄託者のために当該受寄物を火災保険に付さなければならない。ただし、寄託者が反対の意思を表示した場合又は運輸省令で定める場合は、この限りでない。
(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外)
第十五条 倉庫業者が他の倉庫業者とする集荷に関する事項を内容とする協定、契約又は共同行為(以下「協定等」という。)については、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)の規定を適用しない。ただし、不公正な取引方法を用いる場合は、この限りでない。
(協定等の届出)
第十六条 倉庫業者は、前条に規定する協定等をしようとするときは、あらかじめ運輸大臣に届け出なければならない。これを変更しようとするときも同様とする。
(営業の譲渡及び譲受並びに法人の合併)
第十七条 倉庫業者(発券倉庫業者を除く。)が当該倉庫業の全部又は一部を譲渡したときは、譲受人は、倉庫業者の地位を承継する。
2 倉庫業者(発券倉庫業者を除く。)たる法人の合併があつたときは、合併後存続する法人又は合併により設立された法人は、倉庫業者の地位を承継する。
3 前二項の規定により倉庫業者の地位を承継した者は、その承継の日から三十日以内に、その旨を運輸大臣に届け出なければならない。
第十八条 発券倉庫業者が当該倉庫業の全部又は一部を譲渡する場合において、譲渡人及び譲受人が譲渡及び譲受について運輸大臣の認可を受けたときは、譲受人は、発券倉庫業者の地位を承継する。
2 発券倉庫業者たる法人の合併の場合(発券倉庫業者たる法人と発券倉庫業者でない法人が合併して発券倉庫業者たる法人が存続する場合を除く。)において、当該合併について運輸大臣の認可を受けたときは、合併後存続する法人又は合併により設立された法人は、発券倉庫業者の地位を承継する。
3 第五条並びに第十三条第二項及び第三項の規定は、前二項の認可について準用する。
(相続)
第十九条 倉庫業者が死亡したときは、その相続人は、被相続人たる倉庫業者の地位を承継する。この場合において、相続人は、その旨を被相続人の死亡を知つた日から三十日以内に運輸大臣に届け出なければならない。
2 被相続人が発券倉庫業者である場合においては、前項の相続人が被相続人の死亡後六十日以内にその相続について運輸大臣の認可を申請しなければ、その期間の経過後は、第十三条第一項の許可は、その効力を失う。認可の申請に対し認可しない旨の処分があつた場合において、その旨の通知を受けた日以後についても同様とする。
3 第十三条第二項及び第三項の規定は、前項の認可について準用する。
(営業の廃止)
第二十条 倉庫業者は、その営業を廃止したときは、その日から三十日以内に、その旨を運輸大臣に届け出なければならない。
(営業の停止及び許可の取消)
第二十一条 運輸大臣は、倉庫業者が次の各号の一に該当するときは、三月以内において期間を定めて営業の停止を命じ、又は第三条の許可を取り消すことができる。
一 この法律、この法律に基く処分又は許可若しくは認可に附した条件に違反したとき。
二 第五条第一号又は第三号に該当することとなつたとき。
三 営業に関し不正な行為をしたとき。
(倉庫証券の発行の停止及び許可の取消)
第二十二条 運輸大臣は、発券倉庫業者が第十三条第三項第二号に該当することとなつたとき、又は前条第一号若しくは第三号に該当するときは、三月以内において期間を定めて倉庫証券の発行の停止を命じ、又は第十三条第一項の許可を取り消すことができる。
(許可等の条件)
第二十三条 許可又は認可には、条件を附し、及びこれを変更することができる。
2 前項の条件は、公共の利益を確保するため必要な最少限度のものに限り、かつ、当該倉庫業者に不当な義務を課することとならないものでなければならない。
(聴聞)
第二十四条 運輸大臣は、第六条第二項、第八条第二項、第十二条第二項、第二十一条又は第二十二条の規定による処分をしようとするときは、当該倉庫業者に対し、あらかじめ期日及び場所を指定して、聴聞をしなければならない。聴聞に際しては、当該倉庫業者に、意見を述べ、及び証拠を提出する機会が与えられなければならない。
(訴願)
第二十五条 この法律の規定により行政官庁のした処分に不服のある者は、訴願をすることができる。
(権限の委任)
第二十六条 この法律の規定により運輸大臣の権限に属する事項は、政令で定めるところにより、海運局長又は陸運局長に行わせることができる。
(報告及び検査)
第二十七条 運輸大臣は、第一条の目的を達成するために必要な限度において、倉庫業者に対して、その営業に関し報告をさせ、又はその職員に倉庫業者の営業所、倉庫その他の場所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証票を携帯し、かつ、関係者の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(罰則)
第二十八条 第三条の規定に違反して倉庫業を営んだ者は、十万円以下の罰金に処する。
第二十九条 次の各号の一に該当する者は、五万円以下の罰金に処する。
一 第六条第二項、第八条第二項又は第十二条第二項の規定による命令に違反した者
二 第十三条第一項の許可を受けないで倉庫証券を発行した者
三 第二十一条の規定による営業の停止の処分又は第二十二条の規定による倉庫証券の発行の停止の処分に違反した者
第三十条 次の各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する。
一 第六条第一項の規定による届出をしないで料金を収受した者
二 第八条第一項の規定による届出をしないで寄託の引受をした者
三 第十一条第一項の規定により認可を受けてしなければならない事項を認可を受けないでした者
四 第二十七条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
五 第二十七条第一項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
第三十一条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関して、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の刑を科する。
第三十二条 次の各号の一に該当する者は、三万円以下の過料に処する。
一 第九条の規定による掲示をせず、又は虚偽の掲示をした者
二 第十六条の規定による届出をしないで第十五条に規定する協定等をした者
三 第十七条第三項、第十九条第一項後段又は第二十条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を経過した日から施行する。
(倉庫業法の廃止)
第二条 倉庫業法(昭和十年法律第四十一号。以下「旧法」という。)は、廃止する。
(経過規定)
第三条 この法律の施行の際現に旧法第七条ノ二の規定による営業開始の届出をして倉庫業(附則第六条第一項に規定する倉庫業を除く。)を営んでいる者は、この法律の施行の日から三年間は、倉庫業者とみなす。その者がその期間内に第三条の許可を申請した場合において、その申請について許可をする旨又は許可をしない旨の通知を受けるまでの期間についても同様とする。
2 前項の規定により倉庫業者とみなされた者がこの法律の施行の際現に営業に使用している倉庫についての第十二条の規定の適用に関しては、この法律の施行の日から三年間は、同条中「第五条第四号の基準」とあるのは、「運輸省令で定める基準」とする。
第四条 この法律の施行前に旧法の規定によりした許可、届出その他の行為で、この法律中相当する規定があるものは、運輸省令で定めるところにより、この法律の規定によりしたものとみなす。
第五条 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、旧法は、なおその効力を有する。
(適用の特例)
第六条 政令で定める特殊の保管方法を用いて営む倉庫業については、当分の間、第三条の規定を適用しない。
2 前項に規定する倉庫業を営む者は、営業の開始の日から三十日以内に、その旨を運輸大臣に届け出なければならない。
3 前項の規定による届出をした者は、倉庫業者とみなす。
4 前項の規定により倉庫業者とみなされた者については、第十一条、第十五条、第十六条及び第二十一条の規定は、適用しない。
5 第三項の規定により倉庫業者とみなされた者についての第十二条及び第十八条第三項の規定の適用に関しては、第十二条中「第五条第四号の基準」とあるのは「運輸省令で定める基準」と、第十八条第三項中「第五条並びに第十三条第二項及び第三項」とあるのは「第十三条第二項及び第三項」とする。
6 第二項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、三万円以下の過料に処する。
(水産業協同組合法の改正)
第七条 水産業協同組合法(昭和二十三年法律第二百四十二号)の一部を次のように改正する。
第十二条第四項を次のように改める。
4 倉庫業法(昭和三十一年法律第百二十一号)第六条第二項、第八条第二項、第十二条、第二十二条及び第二十七条の規定は、第一項の場合にこれを準用する。この場合において、これらの規定中「運輸大臣」とあるのは「主務大臣」と、第十二条中「第五条第四号の基準」とあるのは「省令で定める基準」と読み替えるものとする。
第百二十九条第一項中「倉庫業法第八条第一項」を「倉庫業法第二十七条第一項」に改める。
(中小企業等協同組合法の改正)
第八条 中小企業等協同組合法(昭和二十四年法律第百八十一号)の一部を次のように改正する。
第九条の三第四項を次のように改める。
4 第一項の場合については、倉庫業法(昭和三十一年法律第百二十一号)第六条第二項、第八条第二項、第十二条、第二十二条及び第二十七条(監督)の規定を準用する。この場合において、同法第十二条中「第五条第四号の基準」とあるのは、「運輸省令で定める基準」と読み替えるものとする。
第百十四条第一項中「倉庫業法第八条第一項」を「倉庫業法第二十七条第一項」に改める。
(森林法の改正)
第九条 森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)の一部を次のように改正する。
第八十条第四項を次のように改める。
4 倉庫業法(昭和三十一年法律第百二十一号)第六条第二項、第八条第二項、第十二条、第二十二条及び第二十七条(行政官庁の監督)の規定は、第一項の場合に準用する。この場合において、これらの規定中「運輸大臣」とあるのは「主務大臣」と、第十二条中「第五条第四号の基準」とあるのは「省令で定める基準」と読み替えるものとする。
第二百十一条中「倉庫業法第八条第一項」を「倉庫業法第二十七条第一項」に改める。
(水産業協同組合法等の改正に伴う経過規定)
第十条 改正前の水産業協同組合法第十二条第四項(第九十二条第一項、第九十六条第一項及び第百条第一項において準用する場合を含む。)、中小企業等協同組合法第九条の三第四項(第九条の九第三項において準用する場合を含む。)及び森林法第八十条第四項(第百五十九条第一項において準用する場合を含む。)の規定において準用する旧法第十条の規定によりした処分は、改正後のこれらの規定において準用する第二十二条の規定によりしたものとみなす。
第十一条 改正前の水産業協同組合法第十二条第四項(第九十二条第一項、第九十六条第一項及び第百条第一項において準用する場合を含む。)、中小企業等協同組合法第九条の三第四項及び森林法第八十条第四項(第百五十九条第一項において準用する場合を含む。)の規定において準用する旧法第八条第一項の規定に違反した行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
内閣総理大臣 鳩山一郎
農林大臣 河野一郎
通商産業大臣 石橋湛山
運輸大臣 吉野信次