(目的)
第一条 この法律は、農業者が農業経営の改善を目的として自主的に能率的な農業技術を導入し、及び農業施設を改良し、造成し、又は取得することを促進するため、農業者等に対する技術導入資金の貸付又は農業者等が融資を受ける施設資金に係る債務の保証を行う都道府県に対し、政府が必要な助成を行う制度を確立し、もつて農業経営の安定と農業生産力の増強に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「技術導入資金」とは、農業経営の改善を促進するために普及を図る必要があると認められる能率的な農業(畜産業及び養蚕業を含む。以下同じ。)の技術の導入に必要な資金で政令で定めるものをいう。
2 この法律において「施設資金」とは、農業経営の改善を図るために必要と認められる農機具、畜舎、農業用道路その他の施設の改良、造成又は取得に要する資金(技術導入資金を除く。)で政令で定めるものをいう。
(政府の助成)
第三条 政府は、都道府県がこの法律の定めるところにより次に掲げる事業を行うときは、当該都道府県に対し、予算の範囲内において、当該事業に必要な資金の一部に充てるため補助金を交付することができる。ただし、当該事業に係る資金の額が当該事業を行うのに必要かつ適当と認められる一定額に達した都道府県については、この限りでない。
一 農業者又はその組織する団体(以下「農業者等」という。)に対する技術導入資金の貸付
二 農業者等が農業協同組合から施設資金を次に掲げる条件で借り受けることにより当該農業協同組合に対して負担する債務の保証
イ 利率が、年一割五厘をこえない範囲内において施設資金の種類ごとに政令で定める率以内であること。
ロ 償還期間及び据置期間が、それぞれ十年及び三年をこえない範囲内において施設資金の種類ごとに政令で定める期間であること。
2 前項ただし書の一定額は、都道府県別並びに同項第一号及び第二号の事業別に、農林大臣が大蔵大臣と協議して定める。
3 政府は、都道府県が第一項第二号の保証に係る貸付金につき当該農業協同組合との契約により利子補給を行うときは、当該都道府県に対し、当該利子補給に要する財源について必要な措置を講ずることができる。
(貸付金の限度)
第四条 前条第一項第一号の貸付に係る資金(以下「貸付金」という。)の一農業者等ごとの限度額は、技術導入資金の種類ごとに、農林省令で定める標準資金需要額を基準として都道府県が定める額の百分の七十とする。
(貸付金の利率、償還期間等)
第五条 貸付金は、無利子とし、その償還期間は、技術導入資金の種類ごとに、三年をこえない範囲内で政令で定める期間とする。
2 貸付金の償還は、償還期間が一年以内の貸付金にあつては一時払の方法、その他の貸付金にあつては均等年賦支払の方法によるものとする。ただし、貸付金の貸付を受けた者は、いつでも繰上償還をすることができる。
(保証人)
第六条 第三条第一項第一号の貸付については、都道府県は、貸付金の貸付を受ける者に対し、保証人を立てさせなければならない。
2 前項の保証人は、貸付金の貸付を受けた者と連帯して債務を負担するものとする。
(貸付の申請)
第七条 第三条第一項第一号の貸付は、同号に規定する者からの申請によつて行うものとする。
(貸付を行う場合)
第八条 第三条第一項第一号の貸付は、その申請者(その者が団体である場合には、その団体を構成する農業者)が申請に係る技術導入資金をもつて能率的な農業の技術を導入することによりその経営を改善する見込があり、かつ、申請に係る地域においては当該農業の技術を導入することが必要であると認められる場合に限り、行うものとする。
(一時償還)
第九条 都道府県は、貸付金の貸付を受けた者が次の各号の一に該当する場合には、第五条の規定にかかわらず、当該貸付を受けた者に対し、いつでも貸付金の全部又は一部につき、一時償還を請求することができる。
三 前二号に掲げる場合のほか、正当な理由がなくて貸付の条件に違反したとき。
(支払の猶予)
第十条 都道府県は、災害その他政令で定めるやむを得ない理由により貸付金の償還が著しく困難であると認められる場合には、償還金の支払を猶予することができる。
(違約金)
第十一条 都道府県は、貸付金の貸付を受けた者が支払期日に償還金又は第九条の規定により一時償還をすべき金額を支払わなかつた場合には、延滞金額百円につき一日三銭四厘の割合をもつて支払期日の翌日から支払当日までの日数により計算した違約金を徴収するものとする。
(債務保証規程)
第十二条 都道府県は、第三条第一項第二号の事業を行おうとするときは、債務保証規程を定め、農林大臣に提出してその承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の債務保証規程に記載すべき事項は、次のとおりとする。
四 保証に係る借入資金の種類及びその借入期間の最高限度
(保証債務の合計額の限度)
第十三条 都道府県は、第三条第一項第二号の保証を行うに当つては、当該保証を行うことにより負担する保証債務の額に当該保証をするまでに行つた同号の保証により負担するすべての保証債務の額の合計額を加えた額が第十九条の基金として管理する額に政令で定める倍率を乗じて得た金額をこえることとならないようにしなければならない。
(債務保証の限度)
第十四条 第三条第一項第二号の保証の金額の一被保証人についての限度額は、被保証人が負担する同号の債務の額の百分の八十とする。
(債務保証の申請)
第十五条 第三条第一項第二号の債務の保証は、農業者等からの申請によつて行うものとする。
(債務保証を行う場合)
第十六条 第三条第一項第二号の債務の保証は、その申請者(その者が団体である場合には、その団体を構成する農業者)が当該申請に係る施設資金をもつて改良され、造成され、又は取得される第二条第二項の施設を利用して農業を営むとすればその経営を著しく改善する見込があり、当該施設の改良、造成又は取得のためには当該施設資金の貸付を受けることが必要であり、かつ、当該貸付を受けるためには当該債務の保証による以外には他に適当な方法がないと認められる場合に限り、行うものとする。
(法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律の適用除外)
第十七条 法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律(昭和二十一年法律第二十四号)第三条の規定は、都道府県が行う第三条第一項第二号の事業については、適用しない。
(特別会計)
第十八条 都道府県が、第三条に規定する事業を行う場合には、当該事業の経理は、政令で定めるところにより、特別会計を設けて行わなければならない。
2 前項の規定により設置する特別会計(以下「特別会計」という。)においては、一般会計からの繰入金、第三条の規定による国からの補助金、貸付金の償還金(第十一条の規定による違約金を含む。)、保証債務の弁済により得た求償権の行使により取得する金額及び附属雑収入をもつてその歳入とし、貸付金、保証債務に係る弁済金、利子補給金、貸付及び債務の保証に関する事務費その他の諸費をもつてその歳出とする。
(基金)
第十九条 特別会計においては、保証債務の弁済金の財源に充てることを目的とする一般会計からの繰入金及び保証債務の弁済金の財源に充てることを条件として第三条第一項の規定により交付された補助金を、その負担する保証債務の弁済に充てるための基金として管理しなければならない。都道府県が保証債務の弁済によつて得た求償権の行使により取得した金額についても、同様とする。
(事務の委託)
第二十条 都道府県は、政令で定めるところにより、その行う第三条第一項に規定する事業に係る事務の一部(貸付及び債務の保証の決定を除く。)を農業協同組合法(昭和二十二年法律第百三十二号)第十条第一項第一号及び第二号の事業をあわせ行う農業協同組合連合会に委託することができる。
2 前項の農業協同組合連合会は、農業協同組合法第十条の規定にかかわらず、同項の規定による事務の委託を受け、当該事務を行うことができる。
(補助金の額)
第二十一条 政府が第三条第一項の規定により交付する補助金の額は、都道府県が貸付金の財源に充てるため一般会計から特別会計に繰り入れる金額の二倍に相当する金額と保証債務の弁済金の財源に充てるため一般会計から特別会計に繰り入れる金額に相当する金額との合計額又は都道府県ごとに農林大臣が定める金額のどちらか低い額以内とする。
(納付金)
第二十二条 都道府県は、第三条第一項に規定する事業を廃止したときは、政令で定めるところにより、次に掲げる金額の一部を政府から補助を受けた割合に応じて政府に納付しなければならない。
一 第三条第一項第一号の事業を廃止した場合には、その廃止の際における貸付金の未貸付額及びその後において支払を受けた貸付金の償還金の額の合計額
二 第三条第一項第二号の事業を廃止した場合には、その廃止の際において第十九条の基金として管理されている金額及び保証債務の弁済によつて得た求償権の行使によりその後において取得した金額の合計額