農業機械化促進法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十八年八月二十七日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第二百五十二号
農業機械化促進法
(目的)
第一条 この法律は、農業機械化を促進するため、農機具の検査、必要な資金の確保その他必要な措置を講じて農機具の改良普及に資し、もつて農業生産力の増進と農業経営の改善に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「農機具」とは、耕うん整地、肥培管理、有害動植物の防除、家畜家きんの飼養管理、調製加工その他農作業(これに附随する作業を含む。)を効率的に行うために必要な機械器具(その附属品及び部品を含む。)をいう。
2 この法律において「農業機械化」とは、動力又は畜力を利用する優良な農機具を効果的に導入して農業の生産技術を高度化することをいう。
(農業機械化を促進する義務)
第三条 国又は都道府県は、この法律で定めるものの外、研修会、共進会その他農業機械化の促進に有効な事項については、これを積極的に行わなければならない。
(融資)
第四条 国は、農業を営む者が農機具を導入し又は農業を営む者が組織する営利を目的としない法人がこれを組織する者の共同利用に供する農機具を導入するのに必要とする資金につき、長期且つ低利の資金を確保するよう必要な措置を講じなければならない。
(試験研究の助長)
第五条 国は、農業機械化を促進するために必要な科学的試験研究については、これを積極的に助長しなければならない。
(国の補助)
第六条 国は、都道府県に対し、毎年度予算の範囲内において、省令の定めるところにより、左の各号に掲げる事業を行うに要する経費の二分の一を補助することができる。
一 農民に対して農機具の展示及びその利用についての教習を行うために必要な施設の設置及び運営
二 農機具の普及を促進するための農機具共同利用組織の整備及び運営についての指導
三 農機具の共同利用を推進する農民技能者の養成
四 農機具の修理施設の設置及び運営
(検査)
第七条 農林大臣は、農機具の改良普及に資するため、依頼を受けて農機具の検査を行う。
2 農林大臣は、毎年、当該年度において依頼を受けて検査を実施する農機具の種類及び検査の時期を定めて公示しなければならない。
3 検査は、検査を依頼する者(以下「依頼者」という。)が提出した農機具の構造、性能、耐久性及び操作の難易が農林大臣の指定する基準(以下「検査基準」という。)に適合しているかどうかについて行うものとする。
4 前項の規定により検査を依頼するため提出する農機具は、通常製造されたもののうちから抽出されたものでなければならない。
(検査成績)
第八条 農林大臣は、前条に規定する検査の結果、検査に供した農機具が検査基準に適合すると認める場合は、その検査に合格したことを証する検査合格証及び検査成績表を、検査基準に適合しないと認める場合は検査成績表を添えて、合格又は不合格を依頼者に通知しなければならない。
2 農林大臣は、必要があると認めるときは、前項の検査合格証を交付する場合に、次条第一項の証票を附することができる期間を指定することができる。
3 農林大臣は、検査に合格した農機具の銘柄、型式、依頼者の氏名若しくは名称及び検査合格証票の番号並びに前項の規定により期間を指定したときはその期間を公示する。
(検査合格証票の添附)
第九条 検査に合格した農機具の依頼者は、当該銘柄及び型式の農機具に検査に合格したことを示す証票(以下「検査合格証票」という。)を附することができる。但し、前条第二項の期間の指定がある場合は、その期間内に限る。
(手数料)
第十条 第七条第一項の規定により検査を依頼する者は、検査に要する費用の範囲内において省令で定める額の手数料を納めなければならない。
(事後検査)
第十一条 農林大臣は、検査合格証票を附した農機具が検査基準に適合しているかどうかを随時検査することができる。
2 農林大臣は、前項の検査をする場合において、必要があると認めるときは、その職員(非常勤職員を含む。以下同じ。)をして同項の農機具について第七条第一項の検査を依頼した者の事業場、店舗又は倉庫に立ち入り、当該農機具を検査させ、関係者に質問させ、又は当該農機具を農林大臣の指定する場所に提出させることができる。但し、農機具を指定する場所に提出させるときは、必要な費用を支払わなければならない。
3 前項の規定により職員が立入検査をする場合においては、その身分を示す証票を携帯し、関係者の請求があつたときは、これを呈示しなければならない。
(合格の取消)
第十二条 農林大臣は、前条第一項の規定による検査の結果、同項の農機具が検査基準に適合していないと認めるときは、当該農機具についての合格の決定を取り消すことができる。
2 農林大臣は、前項の取消をしたときは、これを公示するとともに当該農機具の依頼者にその旨を通知しなければならない。
(異議の申立)
第十三条 第八条第一項の検査成績又は前条第一項の取消について異議のある者は、その通知を受けた日から三十日以内に、農林大臣に対し、書面をもつて異議の申立をすることができる。
2 農林大臣は、前項の申立があつたときは、その申立の日から六十日以内に決定をし、これを申立人に通知しなければならない。
3 農林大臣は、前項の決定をする場合には、申立人に対し、あらかじめ、期日及び場所を通知して公開による聴問を行い、その者又はその代理人が証拠を呈示し、意見を述べる機会を与えなければならない。
(意見聴取)
第十四条 農林大臣は、左の各号に掲げる場合においては、農業機械化審議会の意見を聞かなければならない。
一 第七条第二項の規定により検査を実施する農機具の種類及び検査の時期を決定するとき。
二 同条第三項の検査基準を指定するとき。
三 第八条第一項の規定により合格不合格を決定し、及び同条第二項の規定により期間を指定するとき。
四 第十二条第一項の規定により合格の決定を取り消すとき。
五 前条第二項の規定により異議の申立に対する決定をするとき。
(農業機械化審議会)
第十五条 この法律の適正な運営を図るため、農林省に農業機械化審議会を置く。
2 農業機械化審議会は、前条各号に掲げる事項につき意見を述べる外、農林大臣の諮問に応じ、農業機械化に関する重要事項を調査審議し、及びこれに関し必要と認める事項を農林大臣に建議することができる。
3 農業機械化審議会の組織、議事及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
(委任事項)
第十六条 この法律で定めるものの外、この法律実施のための手続その他その執行について必要な事項は、省令で定める。
附 則
1 この法律の施行期日は、公布の日から起算して九十日をこえない期間内において政令で定める。
2 農林省設置法(昭和二十四年法律第百五十三号)の一部を次のように改正する。
第四条中第三十六号の次に次の一号を加える。
三十六の二 農業機械化促進法(昭和二十八年法律第二百五十二号)に基き都道府県に対し、補助金を交付すること。
第三十四条第一項の表中
農業資材審議会
農産種苗法(昭和二十二年法律第百十五号)及び農薬取締法(昭和二十三年法律第八十二号)に規定する権限並びに農機具の検査を行うとともに、農産種苗、農薬及び農機具に関する重要事項を調査審議すること。
農業資材審議会
農産種苗法(昭和二十二年法律第百十五号)及び農薬取締法(昭和二十三年法律第八十二号)に規定する権限並びに農産種苗及び農薬に関する重要事項を調査審議すること。
に、
海岸砂地地帯農業振興対策審議会
海岸砂地地帯農業振興臨時措置法(昭和二十八年法律第十二号)の規定によりその権限に属せしめられた事項を行うこと。
海岸砂地地帯農業振興対策審議会
海岸砂地地帯農業振興臨時措置法(昭和二十八年法律第十二号)の規定によりその権限に属せしめられた事項を行うこと。
農業機械化審議会
農業機械化促進法(昭和二十八年法律第二百五十二号)に規定する権限及び農業機械化に関する重要事項を調査審議すること。
に改める。
農林大臣 保利茂
内閣総理大臣 吉田茂