(流体の浸入等の防止)
第四條 鉱業権者又は租鉱権者は、油層(ガス層を含む。以下同じ。)以外の地下の部分にある流体が油層に浸入し、又は油層内の石油若しくはガスがその油層以外の地下の部分に漏出しないように、坑井について省令で定める方法による仕上工事を行つた後でなければ、その坑井を石油又はガスの採取の目的に使用してはならない。但し、通商産業大臣の認可を受けたときは、この限りでない。
2 鉱業権者又は租鉱権者は、前項の仕上工事を行つたときは、遅滞なく、その坑井について省令で定める方法による検査を実施しなければならない。
(坑井間隔)
第五條 通商産業大臣は、油層の形質が明らかである場合において、石油又はガスの完全な開発を行うため必要があると認めるときは、油層を指定して、その油層から石油又はガスを採取する二以上の坑井がその油層と交わる部分相互間の距離(以下「坑井間隔」という。)を定めることができる。
2 鉱業権者又は租鉱権者は、前項の規定により指定された油層については、現にその油層から石油又はガスを採取する坑井との坑井間隔が同項の規定により定められた距離以内の坑井から石油又はガスを採取してはならない。但し、同項の規定による指定の際現にその油層から石油又はガスを採取している坑井については、この限りでない。
(ガス油比)
第六條 通商産業大臣は、油層の形質が明らかである場合において、石油の完全な開発を行うため必要があると認めるときは、油層を指定して、その油層から一日に石油とともに採取されるガスの体積が指定する圧力及び温度の下においてその石油の体積に対して有する割合(以下「ガス油比」という。)を定めることができる。
(坑井の封鎖)
第七條 鉱業権者又は租鉱権者は、石油を採取している坑井に端水(油層と同一の地層内に油層に接して存し、その油層から石油を坑井に排出するように作用する水をいう。以下同じ。)のみが出るようになつたとき、又は石油の採取を目的とする坑井を掘さくした場合において、石油を採取しようとする油層に係る端水若しくはガスキヤツプ(油層と同一の地層内に油層に接して存し、その油層から石油を坑井に排出するように作用するガスをいう。以下同じ。)に達するに至つたときは、その坑井を通じて地下の流体が移動しないように、遅滞なく、省令で定める措置を講じなければならない。但し、通商産業大臣の認可を受けたとき、及び第十一條第一項の省令で定める方法の実施に使用するときは、この限りでない。
(掘採の方法に関する命令等)
第八條 通商産業大臣は、鉱業権者又は租鉱権者が石油又はガスの採取を目的とする坑井を掘さくしようとする場合において、掘さく泥水(掘さくに際し坑井内に注入する泥水をいう。以下同じ。)が油層に浸入し、これに損害を及ぼすおそれがあると認めるときは、その鉱業権者又は租鉱権者に対し、掘さく泥水の成分を変更すべきことを命ずることができる。
第九條 通商産業大臣は、鉱業権者又は租鉱権者が石油又は水に溶解しているガス(以下「溶解ガス」という。)の採取を目的とする坑井を掘さくしようとする場合において、当該油層から石油又は溶解ガスを採取する坑井との坑井間隔が小さいため石油又は溶解ガスの完全な開発に支障を及ぼすおそれがあると認めるときは、その鉱業権者又は租鉱権者に対し、掘さくする坑井の位置を変更すべきことを命ずることができる。
第十條 通商産業大臣は、鉱業権者又は租鉱権者が石油を採取している場合において、坑井におけるガス油比が大であり、又は坑井から多量の端水が出るようになつたため石油の完全な開発に支障を及ぼすおそれがあると認めるときは、その鉱業権者又は租鉱権者に対し、期間を定めて、石油の採取を制限し、又は中止すべきことを勧告することができる。
2 前項の規定による勧告があつたときは、鉱業権者又は租鉱権者は、通商産業大臣に対し、その指定する日までに、当該勧告を応諾するかしないか(応諾しない場合にはその理由及び勧告に係る措置にかわるべき措置の内容を附して)を回答しなければならない。
3 通商産業大臣は、鉱業権者又は租鉱権者が前項に規定する回答をしないとき、その応諾しない理由が正当でないと認めるとき、又はその回答に係る措置の内容が適当でないと認めるときは、その鉱業権者又は租鉱権者に対し、理由を示して、第一項の勧告に係る措置をとるべきこと又はその回答に係る措置の内容を変更して実施すべきことを命ずることができる。
(二次採取法)
第十一條 鉱業権者又は租鉱権者は、石油を採取しようとする油層に係る端水又はガスキヤツプがその油層から石油を坑井に排出する作用を促進する方法であつて省令で定めるもの(以下「二次採取法」という。)を実施しようとするときは、実施計画を定め、その実施に必要な施設の工事の開始の日の九十日前までに、これを通商産業大臣に届け出なければならない。
2 鉱業権者又は租鉱権者は、次項の規定による命令に基く場合を除き、前項の実施計画を変更しようとするときは、変更に係る事項の実施に必要な施設の工事の開始の日の六十日前までに、変更する事項を通商産業大臣に届け出なければならない。
3 通商産業大臣は、前二項の規定による届出のあつた実施計画を実施することにより油層に損害を及ぼすと認めるときは、その実施計画を変更すべきことを命ずることができる。
4 前項の規定による命令は、第一項又は第二項の工事の開始の後は、することができない。
5 鉱業権者又は租鉱権者は、第一項又は第二項の規定により届け出た実施計画(第三項の規定による命令があつたときは、その命令により変更されたもの)によらなければ、二次採取法を実施してはならない。
(坑井の位置に関する協議)
第十二條 鉱業権者又は租鉱権者は、石油又はガスを採取しようとする油層の一部が他の鉱業権者又は租鉱権者の鉱区又は租鉱区内にあるときは、坑井の位置についてその鉱業権者又は租鉱権者と協議し、その協議のととのつたところによらなければ、鉱区又は租鉱区の境界線から省令で定める距離以内の地域の直下の油層の部分に坑井を掘さくしてはならない。
2 鉱業権者又は租鉱権者は、前項の協議がととのつたときは、遅滞なく、協議の結果を通商産業大臣に届け出なければならない。
第十三條 鉱業権者又は租鉱権者は、前條第一項の規定による協議をすることができず、又は協議がととのわないときは、通商産業大臣の決定を申請することができる。
2 通商産業大臣は、前項の規定による決定の申請を受理したときは、その申請書の副本を関係鉱業権者又は租鉱権者に交付し、期間を指定して答弁書を提出する機会を与えなければならない。
3 通商産業大臣は、第一項の決定をしたときは、決定書の謄本を当事者に交付しなければならない。
4 第一項の決定があつたときは、決定の定めるところに従い、当事者の間に協議がととのつたものとみなす。