第一條 本法ハ支那事變ニ關聯シ物資及資金ノ需給ノ適合ニ資スル爲國內資金ノ使用ヲ調整スルヲ目的トス
第二條 銀行、信託會社、保險會社、產業組合中央金庫、商工組合中央金庫及北海道府縣ヲ區域トスル信用組合聯合會(以下金融機關ト總稱ス)ハ事業ニ屬スル設備ノ新設、擴張若ハ改良ニ關スル資金ノ貸付ヲ爲シ又ハ有價證券ノ應募、引受若ハ募集ノ取扱ヲ爲サントスルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ許可ヲ受クベシ金融機關ニ非ズシテ有價證券ノ引受又ハ募集ノ取扱ヲ業トスル者(以下之ヲ證券引受業者ト稱ス)有價證券ノ應募、引受又ハ募集ノ取扱ヲ爲サントスルトキ亦同ジ
第三條 金融機關又ハ證券引受業者前條ノ貸付又ハ有價證券ノ應募、引受若ハ募集ノ取扱ニ關シ本法ノ目的ニ從ヒ政府ノ適當ト認ムル方法ニ依リ自治的ニ調整ヲ爲スモノナルトキハ之ニ對シ命令ノ定ムル所ニ依リ前條ノ規定ヲ適用セザルコトヲ得
第四條 命令ノ定ムル會社ノ設立ハ政府ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ效力ヲ生ゼズ會社ノ資本增加、合併又ハ目的變更ニシテ命令ノ定ムルモノニ付亦同ジ
命令ノ定ムル會社左ノ各號ノ一ニ該當スル場合ニ於テハ政府ノ許可ヲ受クベシ
二 株金ノ拂込、社債ノ募集又ハ金融機關ヨリノ借入ニ依ラズシテ命令ノ定ムル限度ヲ超ユル事業設備ノ新設、擴張又ハ改良ヲ爲サントスルトキ
三 他人ヲシテ引受又ハ募集ノ取扱ヲ爲サシメズシテ社債ヲ募集セントスルトキ
第五條 政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ第二條又ハ前條ノ許可又ハ認可ニ關スル事務ヲ日本銀行ヲシテ取扱ハシム
第一項ノ場合ニ於テ當該事務ニ從事スル日本銀行職員ハ之ヲ法令ニ依リ公務ニ從事スル職員ト看做ス
第六條 日本興業銀行ハ五億圓ヲ限リ日本興業銀行法第十二條ノ規定ニ依ル制限ヲ超エテ債券ヲ發行スルコトヲ得
日本興業銀行ハ其ノ債券借換ノ爲債券ヲ發行スル場合ニ於テハ前項ノ制限ニ依ラザルコトヲ得
政府ハ第一項ノ規定ニ依リ發行スル債券ニ付命令ノ定ムル所ニ依リ額面金額五億圓ヲ限リ其ノ元本ノ償還及利息ノ支拂ヲ保證スルコトヲ得
第七條 金資金ハ金資金特別會計法第四條ノ規定ニ依ルノ外之ヲ興業債券ニ運用スルコトヲ得
第八條 命令ノ定ムル時局ニ緊要ナル事業ヲ營ム會社ハ事業擴張ノ場合ニ於テ命令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ認可ヲ受ケ其ノ事業ニ屬スル設備ノ費用ニ充ツル爲株金全額拂込前ト雖モ其ノ資本ヲ增加スルコトヲ得
第九條 命令ノ定ムル時局ニ緊要ナル事業ヲ營ム會社ハ命令ノ定ムル所ニ依リ政府ノ認可ヲ受ケ其ノ事業ニ屬スル設備ノ費用ニ充ツル爲商法第二百條ノ規定ニ依ル制限ヲ超エテ社債ヲ募集スルコトヲ得但シ社債ノ總額ハ拂込ミタル株金額ノ二倍ヲ超ユルコトヲ得ズ
最終ノ貸借對照表ニ依リ會社ニ現存スル財產ガ拂込ミタル株金額ニ滿タザルトキハ前項ノ規定ヲ適用セズ
第一項ノ規定ニ依リ募集スル社債ニ付テハ擔保附社債信託法ニ依ル物上擔保ヲ附スルコトヲ要ス
第十條 政府ハ第八條ノ規定ニ依リ資本ヲ增加シタル會社又ハ前條ノ規定ニ依リ社債ヲ募集シタル會社ニ對シ其ノ業務及會計ニ關シ監督上必要ナル命令ヲ發シ又ハ處分ヲ爲スコトヲ得
第十一條 資金使用ノ調整ニ關シ重要ナル事項ヲ調査審議スル爲臨時資金調整委員會ヲ置ク
臨時資金調整委員會ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十二條 第二條、第四條、第八條又ハ第九條第一項ノ規定ニ依ル許可又ハ認可ニ關スル處分ニシテ事案ノ重要ナルモノニ付テハ臨時資金審査委員會ノ議ヲ經ベシ
臨時資金審査委員會ニ關スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第十三條 政府ハ日本勸業銀行ヲシテ收入金二億圓ニ達スル迄貯蓄債券ヲ發行セシムルコトヲ得
第十四條 貯蓄債券ハ發行ノ翌年ヨリ三十五年內ニ每年二囘以上抽籤ヲ以テ之ヲ償還スベシ
貯蓄債券ヲ償還スル場合ニハ賣出價格ノ百五十倍以內ノ割增金ヲ附與スルコトヲ得其ノ方法及金額ハ主務大臣之ヲ定ム
前項ノ割增金ハ主務大臣ノ定ムル價格ニ依リ國債證券ヲ以テ交付スルコトヲ得
第十五條 復興貯蓄債券法第三條、第五條、第六條、第七條第一項及第八條竝ニ日本勸業銀行法第三十五條ノ二、第三十五條ノ三、第四十條及第四十二條ノ規定ハ貯蓄債券ニ之ヲ準用ス
第十六條 政府ハ資金ノ狀況ヲ調査スル爲必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ左ノ各號ニ揭グル事項ニ關シ關係者ヨリ報吿ヲ徵シ又ハ帳簿其ノ他ノ檢査ヲ爲スコトヲ得
第十七條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第二條ノ規定ニ違反シ許可ヲ受ケズシテ資金ノ貸付ヲ爲シ又ハ有價證券ノ應募、引受若ハ募集ノ取扱ヲ爲シタル者
二 第四條第二項ノ規定ニ違反シ許可ヲ受ケズシテ株金拂込ノ催吿、設備ノ新設、擴張若ハ改良又ハ社債ノ募集ヲ爲シタル者
第十八條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
二 第十六條ノ規定ニ違反シ報吿ヲ爲サズ、虛僞ノ報吿ヲ爲シ又ハ檢査ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シタル者
三 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依リ政府ニ提出スベキ許可又ハ認可ノ申請書其ノ他ノ書類ニ虛僞ノ記載ヲ爲シタル者
第十九條 法人ノ代表者又ハ法人若ハ人ノ代理人、使用人其ノ他ノ從業者ガ其ノ法人又ハ人ノ業務ニ關シテ前二條ノ違反行爲ヲ爲シタルトキハ行爲者ヲ罰スルノ外其ノ法人又ハ人ニ對シ亦前二條ノ罰金刑ヲ科ス
第二十條 當該官吏、委員若ハ第五條第三項ニ規定スル日本銀行職員又ハ其ノ職ニ在リタル者本法ニ依ル職務執行ニ關シ知得タル法人又ハ人ノ業務上ノ祕密ヲ漏洩シ又ハ竊用シタルトキハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十一條 本法ヲ朝鮮、臺灣又ハ樺太ニ施行スル場合ニ於テ必要アルトキハ勅令ヲ以テ特別ノ定ヲ爲スコトヲ得