朕帝國議會ノ協贊ヲ經タルアルコール專賣法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十二年三月三十一日
內閣總理大臣 林銑十郞
大藏大臣 結城豊太郞
法律第三十二號
アルコール專賣法
第一條 アルコールノ製造ハ政府ニ專屬ス
第二條 本法ニ於テアルコールトハアルコール分九十度以上ノアルコールヲ謂フ
アルコール分トハ攝氏十五度ノ時ニ於テ原容量百分中ニ含有スル〇・七九四七ノ比重ヲ有スルアルコールノ容量ヲ謂フ
第三條 政府ハ本法施行前一年間引續キ業トシテアルコールヲ製造シタル者ニ對シ本法施行ノ際ニ限リ其ノ製造ヲ特許スルコトヲ得
相續、會社ノ合併又ハ營業ノ讓受ニ因リアルコールノ製造業ヲ承繼シタル場合ニ於テハ被相續人、合併ニ因リテ消滅シタル會社又ハ讓渡人ノ爲シタル製造ハ前項ノ規定ノ適用ニ付テハ之ヲ相續人、合併後存續スル會社若ハ合併ニ因リテ設立シタル會社又ハ讓受人ノ爲シタル製造ト看做ス
第四條 アルコールハ政府又ハ政府ノ命ヲ受ケタル者ニ非ザレバ之ヲ輸入又ハ移入スルコトヲ得ズ
第五條 アルコール製造者ハ製造場一個所每ニ每年其ノ年四月一日ヨリ翌年三月三十一日迄ノ一年度內ニ製造スベキアルコールノ數量、製造方法及アルコール分ノ度數ヲ定メ豫メ政府ノ許可ヲ受クベシ
政府ハ特ニ必要アル場合ニ於テハアルコールノ製造原料ヲ指定スルコトヲ得
第六條 アルコール製造者ノ製造スベキアルコールノ數量ハ製造場一個所每ニ一年度內五十石ヲ下ルコトヲ得ズ但シ同一製造場內ニ於テ第十七條ノアルコールヲ製造スルトキハ其ノ數量ヲ合算スルモノトス
アルコール製造者前項ノ制限石數以上ノ製造ヲ爲サザルトキハ災害其ノ他已ムコトヲ得ザル事由ニ因ルコトヲ證明スルニ非ザレバ政府ハ其ノ不足石數ニ對シ其ノ賠償價額ト第十九條ノ規定ニ依リ算出シタル金額トノ差額ニ相當スル金額ヲ徵收ス
第七條 アルコール製造者ハ左ノ場合ニ於テハ政府ノ許可ヲ受クベシ
一 製造場又ハ藏置場ヲ新設、變更又ハ廢止セントスルトキ
二 其ノ他本法ニ依リ政府ノ許可ヲ受ケタル事項ヲ變更セントスルトキ
第八條 アルコール製造者ノ製造ニ係ル酒母及醪ハ之ヲ讓渡シ、質入シ、飮料トシテ消費シ又ハ當該官吏ノ承認ヲ受ケズシテ製造場ヨリ移出スルコトヲ得ズ
第九條 相續人ガ被相續人ノアルコールノ製造業ヲ承繼シタルトキハ相續人ハ其ノ製造ノ特許ヲ受ケタルモノト看做ス
合併後存續スル會社又ハ合併ニ因リテ設立シタル會社ガ合併ニ因リテ消滅シタル會社ノアルコールノ製造業ヲ承繼シタルトキハ合併後存續スル會社又ハ合併ニ因リテ設立シタル會社ハ其ノ製造ノ特許ヲ受ケタルモノト看做ス
第十條 アルコールノ製造業ヲ讓受ケアルコールヲ製造セントスル者ハ讓受前アルコール製造ノ特許ノ承繼ヲ申請スルコトヲ得
前項ノ申請アリタル場合ニ於テ之ヲ相當ト認ムルトキハ政府ハ特許ノ承繼ヲ許可スルコトヲ得
第十一條 アルコール製造者其ノ製造ヲ廢止セントスルトキハ特許ノ取消ヲ求ムベシ
第十二條 アルコール製造者左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ政府ハ其ノアルコール製造ノ特許ヲ取消スコトヲ得
一 三年以上引續キ其ノ製造ヲ爲サザルトキ
二 第三十三條第三號ノ規定ニ依リ處罰又ハ處分セラレタルトキ
前項ノ規定ニ依リ特許ヲ取消シタル場合ニ於テハ命令ノ定ムル所ニ依リ一定ノ期間內製造其ノ他必要ノ行爲ヲ繼續セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ仍本法ヲ適用ス
第十三條 アルコール製造者ノ製造シタルアルコールハ政府之ヲ收納ス
第十四條 政府ハ收納スルアルコールノ品質及アルコール分ノ度數ヲ定ムルコトヲ得
收納ニ適セザルアルコールニ付テハ政府ハ適當ナル處理ヲ爲スベキ旨ヲ命ズルコトヲ得
第十五條 政府ハ收納シタルアルコールニ對シ賠償金ヲ交付ス
賠償價格ハ政府之ヲ定メ豫メ公示ス
第十六條 アルコール製造者ノ製造シタルアルコールハ總テ之ヲ政府ニ納付スベシ
政府ハ納付ノ期日及場所ヲ定ムルコトヲ得
第十七條 酒造稅法又ハ酒精及酒精含有飮料稅法ニ依リ製造免許ヲ受ケタル者ガ酒類又ハアルコール含有飮料ノ原料トシテ其ノ同一製造場內ニ於テ製造スルアルコールニハ本法ヲ適用セズ
第十八條 アルコールノ製造方法ヲ試驗硏究スル爲アルコールヲ製造セントスル者ハ政府ノ許可ヲ受クベシ
第七條、第八條、第十一條乃至第十六條、第三十條、第三十九條及第四十一條ノ規定ハ前項ノ場合ニ付之ヲ準用ス但シ其ノ收納及賣渡ニ付テハ命令ヲ以テ別段ノ定ヲ爲スコトヲ得
第十九條 政府ハ其ノ賣渡スアルコールノ價格ヲ定メ之ヲ公示スベシ
第二十條 左ニ揭グル用途ニ供スル場合ニ於テハ政府ハ前條ノ價格ニ拘ラズ特ニ定メタル價格ヲ以テアルコールノ賣渡ヲ爲スコトヲ得
一 命令ヲ以テ定ムル揮發油混入ノ用ニ使用スルトキ
二 命令ヲ以テ定ムル工業ノ用ニ使用スルトキ
三 輸出又ハ移出ノ用ニ供スルトキ
第二十一條 前條ノ價格ヲ以テ賣渡スアルコールニ付テハ政府ハ買受人ヲシテ其ノ賣渡價額ト第十九條ノ規定ニ依リ算出シタル金額トノ差額ノ全部又ハ一部ニ相當スル擔保ヲ提供セシムルコトヲ得
前項ノ擔保ニ關スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十二條 第二十條ノ價格ヲ以テアルコールヲ買受ケタル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ其ノ用途ニ供シタルコトヲ證スル書類ヲ政府ニ提出スベシ
正當ノ事由ナクシテ前項ノ書類ヲ提出セザルトキハ政府ハ其ノ賣渡價額ト第十九條ノ規定ニ依リ算出シタル金額トノ差額ニ相當スル金額ヲ納付セシム
買受人前項ノ金額ヲ納付セザル場合ニ於テ前條ノ規定ニ依リ提供セシメタル擔保アルトキハ之ヲ以テ納付セシムベキ金額ニ充ツ但シ金錢以外ノ擔保ハ之ヲ公賣ニ付シ公賣ノ費用及前項ノ金額ニ充テ不足アルトキハ之ヲ徵收シ殘金アルトキハ之ヲ還付ス
第二十三條 第二十一條ノ規定ニ依リ擔保ヲ提供シタル者前條第一項ノ書類ヲ提出シ又ハ前條第二項ノ金額ヲ納付シタルトキハ政府ハ其ノ擔保ヲ還付ス
第二十四條 第二十條ノ價格ヲ以テ買受ケタルアルコールヲ讓渡シ、質入シ又ハ其ノ用途ヲ變更セントスルトキハ政府ノ許可ヲ受クベシ
第二十二條及前條ノ規定ハ前項ノアルコールヲ讓渡シ又ハ其ノ用途ヲ變更シタル場合ニ付之ヲ準用ス
第二十五條 第二十條ノ價格ヲ以テ買受ケタルアルコールノ使用數量ガ買受數量ニ對シ正當ノ事由ナクシテ不足シタルトキハ其ノ不足數量ニ對シ第二十二條第二項及第三項竝ニ第二十三條ノ規定ヲ準用ス
第二十六條 第二十條第二號ノ用途ニ供スルアルコールニ付テハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ變性ヲ命ズルコトヲ得
第二十七條 第十九條ノ價格ヲ以テ政府ノ賣渡シタルアルコールヲ命令ノ定ムル所ニ依リ第二十條第二號又ハ第三號ノ用途ニ供シタル者ハ其ノ買受價額ト第二十條第二號又ハ第三號ノ規定ニ依リ算出シタル金額トノ差額ニ相當スル金額ノ交付ヲ政府ニ請求スルコトヲ得
前項ノ請求ハアルコールノ使用、輸出又ハ移出後一年ヲ經過シタルトキハ之ヲ爲スコトヲ得ズ
第二十八條 アルコールハ政府又ハ政府ノ指定シタル賣捌人ニ非ザレバ之ヲ販賣スルコトヲ得ズ
アルコール賣捌人及アルコールノ販賣ニ關スル規程ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十九條 アルコールハ政府ノ賣渡シタルモノニ非ザレバ之ヲ所有シ、所持シ、讓渡シ、質入シ又ハ消費スルコトヲ得ズ但シ試驗硏究ノ爲政府ノ許可ヲ得テ製造スル場合又ハアルコール製造者納付期日前若ハ正當ノ事由ニ因リ納付ノ遲延シタル場合ニ於テ所有又ハ所持スルハ此ノ限ニ在ラズ
第三十條 當該官吏ハアルコール製造者、アルコール賣捌人又ハ第二十條ノ規定ニ依リアルコールヲ政府ヨリ買受ケタル者ニ對シテ質問ヲ爲シ又ハ左ニ揭グル物件ニ付檢査ヲ爲シ若ハ監督上必要ノ處分ヲ爲スコトヲ得
一 アルコール製造者、アルコール賣捌人又ハ第二十條ノ規定ニ依リアルコールヲ政府ヨリ買受ケタル者ノ所持スルアルコール
二 アルコールノ製造、納付又ハ販賣ニ關スル一切ノ帳簿書類
三 アルコールノ製造又ハ販賣上必要ナル建築物、機械、器具、容器、材料其ノ他ノ物件
第三十一條 本法ニ依リ納付セシムベキ金額ノ徵收ニ關シテハ國稅徵收法ヲ準用ス
第三十二條 政府ハアルコール製造ノ委託ヲ爲スコトヲ得
前項ノ委託ヲ受ケントスル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ガ申請ヲ爲スベシ
第七條、第八條、第十六條、第二十九條、第三十條、第三十九條及第四十一條ノ規定ハ第一項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第三十三條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 政府ノ特許、許可又ハ委託ヲ受ケズシテアルコールヲ製造シタル者
二 第四條ノ規定ニ違反シアルコールノ輸入又ハ移入ヲ爲シタル者
三 政府ニ納付スベキアルコールヲ讓渡シ、消費シ又ハ隱匿シタル者
第三十四條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第七條ノ規定ニ違反シ製造場若ハ藏置場ヲ新設、變更若ハ廢止シ又ハ許可ヲ受ケタル事項ヲ變更シタル者
二 第二十四條第一項ノ規定ニ違反シアルコールヲ讓渡シ、質入シ又ハ其ノ用途ヲ變更シタル者
三 第二十九條ノ規定ニ違反シ政府ノ賣渡サザルアルコールヲ所有シ、所持シ、讓渡シ、質入シ又ハ消費シタル者
四 アルコール賣捌人ニ非ズシテアルコールヲ販賣シタル者
第二十二條第二項及第三項竝ニ第二十三條ノ規定ハ前項第二號ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第三十五條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第五條第二項ノ規定ニ依リ政府ノ指定シタル製造原料ヲ使用セザル者
二 第八條ノ規定ニ違反シ酒母又ハ醪ヲ讓渡シ、質入シ、消費シ又ハ製造場ヨリ移出シタル者
第三十六條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
一 第十四條第二項ノ規定ニ依リ政府ノ命令シタル處理ヲ爲サザル者
二 正當ノ事由ナクシテ政府ノ指定シタル納付期日ニアルコールヲ納付セザル者
三 第三十條ノ規定ニ依ル當該官吏ノ質問ニ對シ答辯ヲ爲サズ、虛僞ノ陳述ヲ爲シ又ハ其ノ職務ノ執行ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シタル者
第三十七條 第三十三條、第三十四條第三號若ハ第四號又ハ第三十五條第二號ノ罪ヲ犯シタル者アルトキハ其ノ犯罪ニ係ルアルコール、酒母、醪及其ノ容器竝ニアルコール製造用機械器具ハ之ヲ沒收ス其ノアルコール、酒母又ハ醪ニシテ沒收スルコト能ハザルニ至リタルトキハ其ノ價額ヲ追徵ス
第三十八條 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ違反シタル者ニ付テハ刑法第三十八條第三項但書、第三十九條第二項、第四十條、第四十一條、第四十八條第二項、第六十三條及第六十六條ノ規定ヲ適用セズ但シ第三十六條第三號ノ罪ヲ犯シタル者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第三十九條 アルコール製造者、アルコール賣捌人又ハアルコールヲ政府ヨリ買受ケタル者ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人、其ノ他ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第四十條 間接國稅犯則者處分法及明治三十三年法律第五十二號ハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依ル犯罪ニ付之ヲ準用ス
間接國稅犯則者處分法中收稅官吏及稅務署長ニ屬スル職務ヲ行フベキ官吏ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十一條 アルコール製造者其ノ製造ノ特許ヲ取消サレ又ハ其ノ業務ヲ廢止スルモ製造場又ハ藏置場ニアルコール、酒母又ハ醪ノ現存スル間ハ仍本法ヲ適用ス
第四十二條 本法ニ依リ特許又ハ委託ヲ受ケアルコールヲ製造スル者ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ特許又ハ委託ヲ受ケタル年及其ノ翌年ヨリ五年間其ノ事業ニ付所得稅及營業收益稅ヲ免除ス
前項ノ規定ハ特許又ハ委託ヲ受ケタル者ガ其ノ製造場ヲ新設シタル場合ニ付之ヲ準用ス
附 則
第四十三條 本法ハ昭和十二年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
第四十四條 第三條ノアルコール製造者又ハ本法施行ノ際現ニアルコールノ製造方法ヲ試驗硏究スル爲アルコールノ製造ヲ爲ス者ニシテ本法施行後其ノ製造ヲ繼續セントスルモノハ本法施行ノ日ヨリ一月內ニ製造ノ特許又ハ許可ヲ受クベシ其ノ期間內ハアルコールノ製造ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ特許又ハ許可ヲ受クル迄ノ間ニ製造シタルアルコールニ關シテハ本法ヲ準用ス
第四十五條 本法施行ノ際現ニアルコールノ販賣ヲ爲ス者ニシテ本法施行後其ノ販賣ヲ繼續セントスルモノハ本法施行ノ日ヨリ二月內ニアルコール賣捌人ノ指定ヲ受クベシ其ノ期間內ハアルコールノ販賣ヲ爲スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ指定ヲ受クル迄ノ間ニ於ケル販賣ニ付テハ本法ヲ準用ス
第四十六條 昭和十二年三月三十一日迄ニ酒精及酒精含有飮料稅法ニ依リ査定又ハ檢定ヲ受ケタルアルコールニシテ本法施行ノ際現存スルモノニ付テハ仍從前ノ例ニ依ル
第四十七條 
酒精及酒精含有飮料稅法第四條中「及淸涼飮料」ヲ「、淸涼飮料及アルコール專賣法ノ適用ヲ受クル酒精」ニ改ム
第四十八條 
酒母、醪及麴取締法第一條中「酒類ノ製造免許」ノ下ニ「又ハアルコール專賣法ニ依リアルコール製造ノ特許、許可若ハ委託」ヲ加フ
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タルアルコール専売法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
昭和十二年三月三十一日
内閣総理大臣 林銑十郎
大蔵大臣 結城豊太郎
法律第三十二号
アルコール専売法
第一条 アルコールノ製造ハ政府ニ専属ス
第二条 本法ニ於テアルコールトハアルコール分九十度以上ノアルコールヲ謂フ
アルコール分トハ摂氏十五度ノ時ニ於テ原容量百分中ニ含有スル〇・七九四七ノ比重ヲ有スルアルコールノ容量ヲ謂フ
第三条 政府ハ本法施行前一年間引続キ業トシテアルコールヲ製造シタル者ニ対シ本法施行ノ際ニ限リ其ノ製造ヲ特許スルコトヲ得
相続、会社ノ合併又ハ営業ノ譲受ニ因リアルコールノ製造業ヲ承継シタル場合ニ於テハ被相続人、合併ニ因リテ消滅シタル会社又ハ譲渡人ノ為シタル製造ハ前項ノ規定ノ適用ニ付テハ之ヲ相続人、合併後存続スル会社若ハ合併ニ因リテ設立シタル会社又ハ譲受人ノ為シタル製造ト看做ス
第四条 アルコールハ政府又ハ政府ノ命ヲ受ケタル者ニ非ザレバ之ヲ輸入又ハ移入スルコトヲ得ズ
第五条 アルコール製造者ハ製造場一個所毎ニ毎年其ノ年四月一日ヨリ翌年三月三十一日迄ノ一年度内ニ製造スベキアルコールノ数量、製造方法及アルコール分ノ度数ヲ定メ予メ政府ノ許可ヲ受クベシ
政府ハ特ニ必要アル場合ニ於テハアルコールノ製造原料ヲ指定スルコトヲ得
第六条 アルコール製造者ノ製造スベキアルコールノ数量ハ製造場一個所毎ニ一年度内五十石ヲ下ルコトヲ得ズ但シ同一製造場内ニ於テ第十七条ノアルコールヲ製造スルトキハ其ノ数量ヲ合算スルモノトス
アルコール製造者前項ノ制限石数以上ノ製造ヲ為サザルトキハ災害其ノ他已ムコトヲ得ザル事由ニ因ルコトヲ証明スルニ非ザレバ政府ハ其ノ不足石数ニ対シ其ノ賠償価額ト第十九条ノ規定ニ依リ算出シタル金額トノ差額ニ相当スル金額ヲ徴収ス
第七条 アルコール製造者ハ左ノ場合ニ於テハ政府ノ許可ヲ受クベシ
一 製造場又ハ蔵置場ヲ新設、変更又ハ廃止セントスルトキ
二 其ノ他本法ニ依リ政府ノ許可ヲ受ケタル事項ヲ変更セントスルトキ
第八条 アルコール製造者ノ製造ニ係ル酒母及醪ハ之ヲ譲渡シ、質入シ、飲料トシテ消費シ又ハ当該官吏ノ承認ヲ受ケズシテ製造場ヨリ移出スルコトヲ得ズ
第九条 相続人ガ被相続人ノアルコールノ製造業ヲ承継シタルトキハ相続人ハ其ノ製造ノ特許ヲ受ケタルモノト看做ス
合併後存続スル会社又ハ合併ニ因リテ設立シタル会社ガ合併ニ因リテ消滅シタル会社ノアルコールノ製造業ヲ承継シタルトキハ合併後存続スル会社又ハ合併ニ因リテ設立シタル会社ハ其ノ製造ノ特許ヲ受ケタルモノト看做ス
第十条 アルコールノ製造業ヲ譲受ケアルコールヲ製造セントスル者ハ譲受前アルコール製造ノ特許ノ承継ヲ申請スルコトヲ得
前項ノ申請アリタル場合ニ於テ之ヲ相当ト認ムルトキハ政府ハ特許ノ承継ヲ許可スルコトヲ得
第十一条 アルコール製造者其ノ製造ヲ廃止セントスルトキハ特許ノ取消ヲ求ムベシ
第十二条 アルコール製造者左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ政府ハ其ノアルコール製造ノ特許ヲ取消スコトヲ得
一 三年以上引続キ其ノ製造ヲ為サザルトキ
二 第三十三条第三号ノ規定ニ依リ処罰又ハ処分セラレタルトキ
前項ノ規定ニ依リ特許ヲ取消シタル場合ニ於テハ命令ノ定ムル所ニ依リ一定ノ期間内製造其ノ他必要ノ行為ヲ継続セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ仍本法ヲ適用ス
第十三条 アルコール製造者ノ製造シタルアルコールハ政府之ヲ収納ス
第十四条 政府ハ収納スルアルコールノ品質及アルコール分ノ度数ヲ定ムルコトヲ得
収納ニ適セザルアルコールニ付テハ政府ハ適当ナル処理ヲ為スベキ旨ヲ命ズルコトヲ得
第十五条 政府ハ収納シタルアルコールニ対シ賠償金ヲ交付ス
賠償価格ハ政府之ヲ定メ予メ公示ス
第十六条 アルコール製造者ノ製造シタルアルコールハ総テ之ヲ政府ニ納付スベシ
政府ハ納付ノ期日及場所ヲ定ムルコトヲ得
第十七条 酒造税法又ハ酒精及酒精含有飲料税法ニ依リ製造免許ヲ受ケタル者ガ酒類又ハアルコール含有飲料ノ原料トシテ其ノ同一製造場内ニ於テ製造スルアルコールニハ本法ヲ適用セズ
第十八条 アルコールノ製造方法ヲ試験研究スル為アルコールヲ製造セントスル者ハ政府ノ許可ヲ受クベシ
第七条、第八条、第十一条乃至第十六条、第三十条、第三十九条及第四十一条ノ規定ハ前項ノ場合ニ付之ヲ準用ス但シ其ノ収納及売渡ニ付テハ命令ヲ以テ別段ノ定ヲ為スコトヲ得
第十九条 政府ハ其ノ売渡スアルコールノ価格ヲ定メ之ヲ公示スベシ
第二十条 左ニ掲グル用途ニ供スル場合ニ於テハ政府ハ前条ノ価格ニ拘ラズ特ニ定メタル価格ヲ以テアルコールノ売渡ヲ為スコトヲ得
一 命令ヲ以テ定ムル揮発油混入ノ用ニ使用スルトキ
二 命令ヲ以テ定ムル工業ノ用ニ使用スルトキ
三 輸出又ハ移出ノ用ニ供スルトキ
第二十一条 前条ノ価格ヲ以テ売渡スアルコールニ付テハ政府ハ買受人ヲシテ其ノ売渡価額ト第十九条ノ規定ニ依リ算出シタル金額トノ差額ノ全部又ハ一部ニ相当スル担保ヲ提供セシムルコトヲ得
前項ノ担保ニ関スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十二条 第二十条ノ価格ヲ以テアルコールヲ買受ケタル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ其ノ用途ニ供シタルコトヲ証スル書類ヲ政府ニ提出スベシ
正当ノ事由ナクシテ前項ノ書類ヲ提出セザルトキハ政府ハ其ノ売渡価額ト第十九条ノ規定ニ依リ算出シタル金額トノ差額ニ相当スル金額ヲ納付セシム
買受人前項ノ金額ヲ納付セザル場合ニ於テ前条ノ規定ニ依リ提供セシメタル担保アルトキハ之ヲ以テ納付セシムベキ金額ニ充ツ但シ金銭以外ノ担保ハ之ヲ公売ニ付シ公売ノ費用及前項ノ金額ニ充テ不足アルトキハ之ヲ徴収シ残金アルトキハ之ヲ還付ス
第二十三条 第二十一条ノ規定ニ依リ担保ヲ提供シタル者前条第一項ノ書類ヲ提出シ又ハ前条第二項ノ金額ヲ納付シタルトキハ政府ハ其ノ担保ヲ還付ス
第二十四条 第二十条ノ価格ヲ以テ買受ケタルアルコールヲ譲渡シ、質入シ又ハ其ノ用途ヲ変更セントスルトキハ政府ノ許可ヲ受クベシ
第二十二条及前条ノ規定ハ前項ノアルコールヲ譲渡シ又ハ其ノ用途ヲ変更シタル場合ニ付之ヲ準用ス
第二十五条 第二十条ノ価格ヲ以テ買受ケタルアルコールノ使用数量ガ買受数量ニ対シ正当ノ事由ナクシテ不足シタルトキハ其ノ不足数量ニ対シ第二十二条第二項及第三項並ニ第二十三条ノ規定ヲ準用ス
第二十六条 第二十条第二号ノ用途ニ供スルアルコールニ付テハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ変性ヲ命ズルコトヲ得
第二十七条 第十九条ノ価格ヲ以テ政府ノ売渡シタルアルコールヲ命令ノ定ムル所ニ依リ第二十条第二号又ハ第三号ノ用途ニ供シタル者ハ其ノ買受価額ト第二十条第二号又ハ第三号ノ規定ニ依リ算出シタル金額トノ差額ニ相当スル金額ノ交付ヲ政府ニ請求スルコトヲ得
前項ノ請求ハアルコールノ使用、輸出又ハ移出後一年ヲ経過シタルトキハ之ヲ為スコトヲ得ズ
第二十八条 アルコールハ政府又ハ政府ノ指定シタル売捌人ニ非ザレバ之ヲ販売スルコトヲ得ズ
アルコール売捌人及アルコールノ販売ニ関スル規程ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十九条 アルコールハ政府ノ売渡シタルモノニ非ザレバ之ヲ所有シ、所持シ、譲渡シ、質入シ又ハ消費スルコトヲ得ズ但シ試験研究ノ為政府ノ許可ヲ得テ製造スル場合又ハアルコール製造者納付期日前若ハ正当ノ事由ニ因リ納付ノ遅延シタル場合ニ於テ所有又ハ所持スルハ此ノ限ニ在ラズ
第三十条 当該官吏ハアルコール製造者、アルコール売捌人又ハ第二十条ノ規定ニ依リアルコールヲ政府ヨリ買受ケタル者ニ対シテ質問ヲ為シ又ハ左ニ掲グル物件ニ付検査ヲ為シ若ハ監督上必要ノ処分ヲ為スコトヲ得
一 アルコール製造者、アルコール売捌人又ハ第二十条ノ規定ニ依リアルコールヲ政府ヨリ買受ケタル者ノ所持スルアルコール
二 アルコールノ製造、納付又ハ販売ニ関スル一切ノ帳簿書類
三 アルコールノ製造又ハ販売上必要ナル建築物、機械、器具、容器、材料其ノ他ノ物件
第三十一条 本法ニ依リ納付セシムベキ金額ノ徴収ニ関シテハ国税徴収法ヲ準用ス
第三十二条 政府ハアルコール製造ノ委託ヲ為スコトヲ得
前項ノ委託ヲ受ケントスル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ガ申請ヲ為スベシ
第七条、第八条、第十六条、第二十九条、第三十条、第三十九条及第四十一条ノ規定ハ第一項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第三十三条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ五千円以下ノ罰金ニ処ス
一 政府ノ特許、許可又ハ委託ヲ受ケズシテアルコールヲ製造シタル者
二 第四条ノ規定ニ違反シアルコールノ輸入又ハ移入ヲ為シタル者
三 政府ニ納付スベキアルコールヲ譲渡シ、消費シ又ハ隠匿シタル者
第三十四条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ千円以下ノ罰金ニ処ス
一 第七条ノ規定ニ違反シ製造場若ハ蔵置場ヲ新設、変更若ハ廃止シ又ハ許可ヲ受ケタル事項ヲ変更シタル者
二 第二十四条第一項ノ規定ニ違反シアルコールヲ譲渡シ、質入シ又ハ其ノ用途ヲ変更シタル者
三 第二十九条ノ規定ニ違反シ政府ノ売渡サザルアルコールヲ所有シ、所持シ、譲渡シ、質入シ又ハ消費シタル者
四 アルコール売捌人ニ非ズシテアルコールヲ販売シタル者
第二十二条第二項及第三項並ニ第二十三条ノ規定ハ前項第二号ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第三十五条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ五百円以下ノ罰金ニ処ス
一 第五条第二項ノ規定ニ依リ政府ノ指定シタル製造原料ヲ使用セザル者
二 第八条ノ規定ニ違反シ酒母又ハ醪ヲ譲渡シ、質入シ、消費シ又ハ製造場ヨリ移出シタル者
第三十六条 左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ百円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス
一 第十四条第二項ノ規定ニ依リ政府ノ命令シタル処理ヲ為サザル者
二 正当ノ事由ナクシテ政府ノ指定シタル納付期日ニアルコールヲ納付セザル者
三 第三十条ノ規定ニ依ル当該官吏ノ質問ニ対シ答弁ヲ為サズ、虚偽ノ陳述ヲ為シ又ハ其ノ職務ノ執行ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シタル者
第三十七条 第三十三条、第三十四条第三号若ハ第四号又ハ第三十五条第二号ノ罪ヲ犯シタル者アルトキハ其ノ犯罪ニ係ルアルコール、酒母、醪及其ノ容器並ニアルコール製造用機械器具ハ之ヲ没収ス其ノアルコール、酒母又ハ醪ニシテ没収スルコト能ハザルニ至リタルトキハ其ノ価額ヲ追徴ス
第三十八条 本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ違反シタル者ニ付テハ刑法第三十八条第三項但書、第三十九条第二項、第四十条、第四十一条、第四十八条第二項、第六十三条及第六十六条ノ規定ヲ適用セズ但シ第三十六条第三号ノ罪ヲ犯シタル者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第三十九条 アルコール製造者、アルコール売捌人又ハアルコールヲ政府ヨリ買受ケタル者ハ其ノ代理人、戸主、家族、同居者、雇人、其ノ他ノ従業者ガ其ノ業務ニ関シ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ処罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第四十条 間接国税犯則者処分法及明治三十三年法律第五十二号ハ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ依ル犯罪ニ付之ヲ準用ス
間接国税犯則者処分法中収税官吏及税務署長ニ属スル職務ヲ行フベキ官吏ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十一条 アルコール製造者其ノ製造ノ特許ヲ取消サレ又ハ其ノ業務ヲ廃止スルモ製造場又ハ蔵置場ニアルコール、酒母又ハ醪ノ現存スル間ハ仍本法ヲ適用ス
第四十二条 本法ニ依リ特許又ハ委託ヲ受ケアルコールヲ製造スル者ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ特許又ハ委託ヲ受ケタル年及其ノ翌年ヨリ五年間其ノ事業ニ付所得税及営業収益税ヲ免除ス
前項ノ規定ハ特許又ハ委託ヲ受ケタル者ガ其ノ製造場ヲ新設シタル場合ニ付之ヲ準用ス
附 則
第四十三条 本法ハ昭和十二年四月一日ヨリ之ヲ施行ス
第四十四条 第三条ノアルコール製造者又ハ本法施行ノ際現ニアルコールノ製造方法ヲ試験研究スル為アルコールノ製造ヲ為ス者ニシテ本法施行後其ノ製造ヲ継続セントスルモノハ本法施行ノ日ヨリ一月内ニ製造ノ特許又ハ許可ヲ受クベシ其ノ期間内ハアルコールノ製造ヲ為スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ特許又ハ許可ヲ受クル迄ノ間ニ製造シタルアルコールニ関シテハ本法ヲ準用ス
第四十五条 本法施行ノ際現ニアルコールノ販売ヲ為ス者ニシテ本法施行後其ノ販売ヲ継続セントスルモノハ本法施行ノ日ヨリ二月内ニアルコール売捌人ノ指定ヲ受クベシ其ノ期間内ハアルコールノ販売ヲ為スコトヲ得
前項ノ規定ニ依リ指定ヲ受クル迄ノ間ニ於ケル販売ニ付テハ本法ヲ準用ス
第四十六条 昭和十二年三月三十一日迄ニ酒精及酒精含有飲料税法ニ依リ査定又ハ検定ヲ受ケタルアルコールニシテ本法施行ノ際現存スルモノニ付テハ仍従前ノ例ニ依ル
第四十七条 
酒精及酒精含有飲料税法第四条中「及清涼飲料」ヲ「、清涼飲料及アルコール専売法ノ適用ヲ受クル酒精」ニ改ム
第四十八条 
酒母、醪及麹取締法第一条中「酒類ノ製造免許」ノ下ニ「又ハアルコール専売法ニ依リアルコール製造ノ特許、許可若ハ委託」ヲ加フ