第二條 本法ニ於テアルコールトハアルコール分九十度以上ノアルコールヲ謂フ
アルコール分トハ攝氏十五度ノ時ニ於テ原容量百分中ニ含有スル〇・七九四七ノ比重ヲ有スルアルコールノ容量ヲ謂フ
第三條 政府ハ本法施行前一年間引續キ業トシテアルコールヲ製造シタル者ニ對シ本法施行ノ際ニ限リ其ノ製造ヲ特許スルコトヲ得
相續、會社ノ合併又ハ營業ノ讓受ニ因リアルコールノ製造業ヲ承繼シタル場合ニ於テハ被相續人、合併ニ因リテ消滅シタル會社又ハ讓渡人ノ爲シタル製造ハ前項ノ規定ノ適用ニ付テハ之ヲ相續人、合併後存續スル會社若ハ合併ニ因リテ設立シタル會社又ハ讓受人ノ爲シタル製造ト看做ス
第四條 アルコールハ政府又ハ政府ノ命ヲ受ケタル者ニ非ザレバ之ヲ輸入又ハ移入スルコトヲ得ズ
第五條 アルコール製造者ハ製造場一個所每ニ每年其ノ年四月一日ヨリ翌年三月三十一日迄ノ一年度內ニ製造スベキアルコールノ數量、製造方法及アルコール分ノ度數ヲ定メ豫メ政府ノ許可ヲ受クベシ
政府ハ特ニ必要アル場合ニ於テハアルコールノ製造原料ヲ指定スルコトヲ得
第六條 アルコール製造者ノ製造スベキアルコールノ數量ハ製造場一個所每ニ一年度內五十石ヲ下ルコトヲ得ズ但シ同一製造場內ニ於テ第十七條ノアルコールヲ製造スルトキハ其ノ數量ヲ合算スルモノトス
アルコール製造者前項ノ制限石數以上ノ製造ヲ爲サザルトキハ災害其ノ他已ムコトヲ得ザル事由ニ因ルコトヲ證明スルニ非ザレバ政府ハ其ノ不足石數ニ對シ其ノ賠償價額ト第十九條ノ規定ニ依リ算出シタル金額トノ差額ニ相當スル金額ヲ徵收ス
第七條 アルコール製造者ハ左ノ場合ニ於テハ政府ノ許可ヲ受クベシ
一 製造場又ハ藏置場ヲ新設、變更又ハ廢止セントスルトキ
二 其ノ他本法ニ依リ政府ノ許可ヲ受ケタル事項ヲ變更セントスルトキ
第八條 アルコール製造者ノ製造ニ係ル酒母及醪ハ之ヲ讓渡シ、質入シ、飮料トシテ消費シ又ハ當該官吏ノ承認ヲ受ケズシテ製造場ヨリ移出スルコトヲ得ズ
第九條 相續人ガ被相續人ノアルコールノ製造業ヲ承繼シタルトキハ相續人ハ其ノ製造ノ特許ヲ受ケタルモノト看做ス
合併後存續スル會社又ハ合併ニ因リテ設立シタル會社ガ合併ニ因リテ消滅シタル會社ノアルコールノ製造業ヲ承繼シタルトキハ合併後存續スル會社又ハ合併ニ因リテ設立シタル會社ハ其ノ製造ノ特許ヲ受ケタルモノト看做ス
第十條 アルコールノ製造業ヲ讓受ケアルコールヲ製造セントスル者ハ讓受前アルコール製造ノ特許ノ承繼ヲ申請スルコトヲ得
前項ノ申請アリタル場合ニ於テ之ヲ相當ト認ムルトキハ政府ハ特許ノ承繼ヲ許可スルコトヲ得
第十一條 アルコール製造者其ノ製造ヲ廢止セントスルトキハ特許ノ取消ヲ求ムベシ
第十二條 アルコール製造者左ノ各號ノ一ニ該當スルトキハ政府ハ其ノアルコール製造ノ特許ヲ取消スコトヲ得
二 第三十三條第三號ノ規定ニ依リ處罰又ハ處分セラレタルトキ
前項ノ規定ニ依リ特許ヲ取消シタル場合ニ於テハ命令ノ定ムル所ニ依リ一定ノ期間內製造其ノ他必要ノ行爲ヲ繼續セシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ仍本法ヲ適用ス
第十三條 アルコール製造者ノ製造シタルアルコールハ政府之ヲ收納ス
第十四條 政府ハ收納スルアルコールノ品質及アルコール分ノ度數ヲ定ムルコトヲ得
收納ニ適セザルアルコールニ付テハ政府ハ適當ナル處理ヲ爲スベキ旨ヲ命ズルコトヲ得
第十五條 政府ハ收納シタルアルコールニ對シ賠償金ヲ交付ス
第十六條 アルコール製造者ノ製造シタルアルコールハ總テ之ヲ政府ニ納付スベシ
第十七條 酒造稅法又ハ酒精及酒精含有飮料稅法ニ依リ製造免許ヲ受ケタル者ガ酒類又ハアルコール含有飮料ノ原料トシテ其ノ同一製造場內ニ於テ製造スルアルコールニハ本法ヲ適用セズ
第十八條 アルコールノ製造方法ヲ試驗硏究スル爲アルコールヲ製造セントスル者ハ政府ノ許可ヲ受クベシ
第七條、第八條、第十一條乃至第十六條、第三十條、第三十九條及第四十一條ノ規定ハ前項ノ場合ニ付之ヲ準用ス但シ其ノ收納及賣渡ニ付テハ命令ヲ以テ別段ノ定ヲ爲スコトヲ得
第十九條 政府ハ其ノ賣渡スアルコールノ價格ヲ定メ之ヲ公示スベシ
第二十條 左ニ揭グル用途ニ供スル場合ニ於テハ政府ハ前條ノ價格ニ拘ラズ特ニ定メタル價格ヲ以テアルコールノ賣渡ヲ爲スコトヲ得
第二十一條 前條ノ價格ヲ以テ賣渡スアルコールニ付テハ政府ハ買受人ヲシテ其ノ賣渡價額ト第十九條ノ規定ニ依リ算出シタル金額トノ差額ノ全部又ハ一部ニ相當スル擔保ヲ提供セシムルコトヲ得
第二十二條 第二十條ノ價格ヲ以テアルコールヲ買受ケタル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ其ノ用途ニ供シタルコトヲ證スル書類ヲ政府ニ提出スベシ
正當ノ事由ナクシテ前項ノ書類ヲ提出セザルトキハ政府ハ其ノ賣渡價額ト第十九條ノ規定ニ依リ算出シタル金額トノ差額ニ相當スル金額ヲ納付セシム
買受人前項ノ金額ヲ納付セザル場合ニ於テ前條ノ規定ニ依リ提供セシメタル擔保アルトキハ之ヲ以テ納付セシムベキ金額ニ充ツ但シ金錢以外ノ擔保ハ之ヲ公賣ニ付シ公賣ノ費用及前項ノ金額ニ充テ不足アルトキハ之ヲ徵收シ殘金アルトキハ之ヲ還付ス
第二十三條 第二十一條ノ規定ニ依リ擔保ヲ提供シタル者前條第一項ノ書類ヲ提出シ又ハ前條第二項ノ金額ヲ納付シタルトキハ政府ハ其ノ擔保ヲ還付ス
第二十四條 第二十條ノ價格ヲ以テ買受ケタルアルコールヲ讓渡シ、質入シ又ハ其ノ用途ヲ變更セントスルトキハ政府ノ許可ヲ受クベシ
第二十二條及前條ノ規定ハ前項ノアルコールヲ讓渡シ又ハ其ノ用途ヲ變更シタル場合ニ付之ヲ準用ス
第二十五條 第二十條ノ價格ヲ以テ買受ケタルアルコールノ使用數量ガ買受數量ニ對シ正當ノ事由ナクシテ不足シタルトキハ其ノ不足數量ニ對シ第二十二條第二項及第三項竝ニ第二十三條ノ規定ヲ準用ス
第二十六條 第二十條第二號ノ用途ニ供スルアルコールニ付テハ政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ變性ヲ命ズルコトヲ得
第二十七條 第十九條ノ價格ヲ以テ政府ノ賣渡シタルアルコールヲ命令ノ定ムル所ニ依リ第二十條第二號又ハ第三號ノ用途ニ供シタル者ハ其ノ買受價額ト第二十條第二號又ハ第三號ノ規定ニ依リ算出シタル金額トノ差額ニ相當スル金額ノ交付ヲ政府ニ請求スルコトヲ得
前項ノ請求ハアルコールノ使用、輸出又ハ移出後一年ヲ經過シタルトキハ之ヲ爲スコトヲ得ズ
第二十八條 アルコールハ政府又ハ政府ノ指定シタル賣捌人ニ非ザレバ之ヲ販賣スルコトヲ得ズ
アルコール賣捌人及アルコールノ販賣ニ關スル規程ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二十九條 アルコールハ政府ノ賣渡シタルモノニ非ザレバ之ヲ所有シ、所持シ、讓渡シ、質入シ又ハ消費スルコトヲ得ズ但シ試驗硏究ノ爲政府ノ許可ヲ得テ製造スル場合又ハアルコール製造者納付期日前若ハ正當ノ事由ニ因リ納付ノ遲延シタル場合ニ於テ所有又ハ所持スルハ此ノ限ニ在ラズ
第三十條 當該官吏ハアルコール製造者、アルコール賣捌人又ハ第二十條ノ規定ニ依リアルコールヲ政府ヨリ買受ケタル者ニ對シテ質問ヲ爲シ又ハ左ニ揭グル物件ニ付檢査ヲ爲シ若ハ監督上必要ノ處分ヲ爲スコトヲ得
一 アルコール製造者、アルコール賣捌人又ハ第二十條ノ規定ニ依リアルコールヲ政府ヨリ買受ケタル者ノ所持スルアルコール
二 アルコールノ製造、納付又ハ販賣ニ關スル一切ノ帳簿書類
三 アルコールノ製造又ハ販賣上必要ナル建築物、機械、器具、容器、材料其ノ他ノ物件
第三十一條 本法ニ依リ納付セシムベキ金額ノ徵收ニ關シテハ國稅徵收法ヲ準用ス
第三十二條 政府ハアルコール製造ノ委託ヲ爲スコトヲ得
前項ノ委託ヲ受ケントスル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ガ申請ヲ爲スベシ
第七條、第八條、第十六條、第二十九條、第三十條、第三十九條及第四十一條ノ規定ハ第一項ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第三十三條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ五千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 政府ノ特許、許可又ハ委託ヲ受ケズシテアルコールヲ製造シタル者
二 第四條ノ規定ニ違反シアルコールノ輸入又ハ移入ヲ爲シタル者
三 政府ニ納付スベキアルコールヲ讓渡シ、消費シ又ハ隱匿シタル者
第三十四條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ千圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第七條ノ規定ニ違反シ製造場若ハ藏置場ヲ新設、變更若ハ廢止シ又ハ許可ヲ受ケタル事項ヲ變更シタル者
二 第二十四條第一項ノ規定ニ違反シアルコールヲ讓渡シ、質入シ又ハ其ノ用途ヲ變更シタル者
三 第二十九條ノ規定ニ違反シ政府ノ賣渡サザルアルコールヲ所有シ、所持シ、讓渡シ、質入シ又ハ消費シタル者
四 アルコール賣捌人ニ非ズシテアルコールヲ販賣シタル者
第二十二條第二項及第三項竝ニ第二十三條ノ規定ハ前項第二號ノ場合ニ付之ヲ準用ス
第三十五條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ五百圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第五條第二項ノ規定ニ依リ政府ノ指定シタル製造原料ヲ使用セザル者
二 第八條ノ規定ニ違反シ酒母又ハ醪ヲ讓渡シ、質入シ、消費シ又ハ製造場ヨリ移出シタル者
第三十六條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ百圓以下ノ罰金又ハ科料ニ處ス
一 第十四條第二項ノ規定ニ依リ政府ノ命令シタル處理ヲ爲サザル者
二 正當ノ事由ナクシテ政府ノ指定シタル納付期日ニアルコールヲ納付セザル者
三 第三十條ノ規定ニ依ル當該官吏ノ質問ニ對シ答辯ヲ爲サズ、虛僞ノ陳述ヲ爲シ又ハ其ノ職務ノ執行ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シタル者
第三十七條 第三十三條、第三十四條第三號若ハ第四號又ハ第三十五條第二號ノ罪ヲ犯シタル者アルトキハ其ノ犯罪ニ係ルアルコール、酒母、醪及其ノ容器竝ニアルコール製造用機械器具ハ之ヲ沒收ス其ノアルコール、酒母又ハ醪ニシテ沒收スルコト能ハザルニ至リタルトキハ其ノ價額ヲ追徵ス
第三十八條 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ違反シタル者ニ付テハ刑法第三十八條第三項但書、第三十九條第二項、第四十條、第四十一條、第四十八條第二項、第六十三條及第六十六條ノ規定ヲ適用セズ但シ第三十六條第三號ノ罪ヲ犯シタル者ニ付テハ此ノ限ニ在ラズ
第三十九條 アルコール製造者、アルコール賣捌人又ハアルコールヲ政府ヨリ買受ケタル者ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人、其ノ他ノ從業者ガ其ノ業務ニ關シ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ處罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第四十條 間接國稅犯則者處分法及明治三十三年法律第五十二號ハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ニ依ル犯罪ニ付之ヲ準用ス
間接國稅犯則者處分法中收稅官吏及稅務署長ニ屬スル職務ヲ行フベキ官吏ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第四十一條 アルコール製造者其ノ製造ノ特許ヲ取消サレ又ハ其ノ業務ヲ廢止スルモ製造場又ハ藏置場ニアルコール、酒母又ハ醪ノ現存スル間ハ仍本法ヲ適用ス
第四十二條 本法ニ依リ特許又ハ委託ヲ受ケアルコールヲ製造スル者ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ特許又ハ委託ヲ受ケタル年及其ノ翌年ヨリ五年間其ノ事業ニ付所得稅及營業收益稅ヲ免除ス
前項ノ規定ハ特許又ハ委託ヲ受ケタル者ガ其ノ製造場ヲ新設シタル場合ニ付之ヲ準用ス