酒母、醪及麹取締法
法令番号: 法律第七號
公布年月日: 明治38年1月1日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル酒母、醪及麴取締法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十七年十二月三十一日
內閣總理大臣 伯爵 桂太郞
大藏大臣 男爵 曾禰荒助
法律第七號
酒母、醪及麴取締法
第一條 本法ハ酒造稅法ニ依リ酒類ノ製造免許ヲ受ケスシテ酒母又ハ醪ヲ製造スル者、販賣ノ爲ニ麴ヲ製造スル者及麴ヲ請賣スル者ニ之ヲ適用ス
第二條 酒母、醪又ハ麴ヲ製造セムトスル者ハ製造場一箇所每ニ政府ノ免許ヲ受クヘシ
第三條 酒母、醪又ハ麴ノ製造者及麴ノ請賣者ハ帳簿ヲ調製シ酒母、醪又ハ麴ノ製造出入ニ關スル事實ヲ詳細明瞭ニ記載スヘシ
第四條 收稅官吏ハ酒母、醪若ハ麴ノ製造場又ハ麴ノ販賣場ニ臨ミ酒母、醪又ハ麴、其ノ原料、製造用容器、器具、器械、建築物若ハ帳簿書類ヲ檢査スルコトヲ得
收稅官吏監督上必要ト認ムルトキハ前項ノ物件ニ封印ヲ施スコトヲ得
第五條 收稅官吏ハ運搬中ニ在ル酒母、醪又ハ麴ヲ檢査シ其ノ出所又ハ到達先ヲ質問スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ監督上必要ト認ムルトキハ收稅官吏ハ其ノ運搬ヲ停止シ又ハ荷物若ハ船車ニ封印ヲ施スコトヲ得
第六條 酒母、醪又ハ麴ノ製造者其ノ製造ヲ廢止スルモ製造場內ニ酒母、醪、麴、製造用容器、器具又ハ器械ノ現存スル間ハ收稅官吏ハ其ノ製造場ニ臨ミ建築物又ハ其ノ現在品ヲ檢査シ又ハ之ニ封印ヲ施スコトヲ得
第七條 醪ハ之ヲ讓渡シ、質入シ、飮料トシテ消費シ又ハ收稅官吏ノ承認ヲ受ケスシテ製造場外ヘ移出スルコトヲ得ス
第八條 酒母ハ政府ノ交付シタル買入認許證ヲ所持スル者ニ讓渡スノ外讓渡シ又ハ質入スルコトヲ得ス
酒母ハ政府ノ交付シタル買入認許證ヲ所持スル者ニ讓渡シタル場合ノ外收稅官吏ノ承認ヲ受ケスシテ製造場外ヘ移出スルコトヲ得ス
第九條 免許ヲ受ケスシテ酒母、醪若ハ麴ヲ製造シタル者又ハ第七條若ハ第八條ニ違反シタル者ハ三十圓以上五百圓以下ノ罰金ニ處シ仍其ノ酒母、醪ハ濁酒ト看做シ酒造稅法ニ依リ其ノ總石數ニ對シ直ニ造石稅ヲ徵收ス
第十條 酒母、醪又ハ麴ノ檢査ヲ免カレ又ハ免カレムトシタル者ハ十圓以上二百圓以下ノ罰金ニ處ス
第十一條 酒母、醪若ハ麴ノ製造者又ハ麴ノ請賣者酒母、醪又ハ麴ノ製造出入ニ關スル帳簿書類ヲ隱匿シタルトキハ五圓以上百圓以下ノ罰金ニ處シ帳簿ヲ調製セス又ハ其ノ記載ヲ怠リ若ハ不正ノ記載ヲ爲シタルトキハ三圓以上三十圓以下ノ罰金ニ處ス
第十二條 收稅官吏ノ尋問ニ對シ虛僞ノ答辯ヲ爲シ又ハ收稅官吏ノ職務執行ヲ拒ミ之ヲ忌避シ若ハ之ニ支障ヲ加ヘタル者ハ三圓以上三十圓以下ノ罰金ニ處ス其ノ刑法ニ正條アルモノハ刑法ニ依ル
第十三條 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ノ規定ニ違反シタル者ニハ刑法ノ減輕、再犯加重、數罪俱發ノ例ヲ用井ス
第十四條 酒母、醪若ハ麴ノ製造者又ハ麴ノ請賣者カ未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ノ規定ニ依リ當業者ニ適用スヘキ罰則ハ之ヲ法定代理人ニ適用ス但シ其ノ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第十五條 酒母、醪若ハ麴ノ製造者又ハ麴ノ請賣者ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ニシテ其ノ業務ニ關シ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ノ規定ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出サルノ故ヲ以テ處罰ヲ免ルルコトヲ得ス
第十六條 間接國稅犯則者處分法及明治三十三年法律第五十二號ハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ノ規定ニ違反シタル者ニ之ヲ準用ス
第十七條 酒母、醪又ハ麴ノ製造者ニシテ其ノ製造ヲ廢止シタルトキハ其ノ旨政府ニ申吿スヘシ
第十八條 第九條又ハ第十條ノ處罰ヲ受ケタル者ニ對シテハ政府ハ酒母、醪又ハ麴ノ製造ノ免許ヲ取消スコトヲ得
附 則
第十九條 本法ハ發布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
第二十條 本法施行前酒造稅法第二十條ニ依リ酒母又ハ醪製造ノ免許ヲ受ケタル者ハ本法ニ依リ免許ヲ受ケタルモノト看做ス
第二十一條 本法施行前ヨリ麴ヲ製造シ本法施行後引續キ之ヲ製造セムトスル者ハ本法施行後十五日以內ニ本法ニ依リ免許ヲ受クヘシ
前項ノ期間內ハ從前ノ製造ヲ繼續スルコトヲ得
第二十二條 沖繩縣及東京府下小笠原島伊豆七島ニハ本法ヲ施行セス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル酒母、醪及麹取締法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十七年十二月三十一日
内閣総理大臣 伯爵 桂太郎
大蔵大臣 男爵 曽祢荒助
法律第七号
酒母、醪及麹取締法
第一条 本法ハ酒造税法ニ依リ酒類ノ製造免許ヲ受ケスシテ酒母又ハ醪ヲ製造スル者、販売ノ為ニ麹ヲ製造スル者及麹ヲ請売スル者ニ之ヲ適用ス
第二条 酒母、醪又ハ麹ヲ製造セムトスル者ハ製造場一箇所毎ニ政府ノ免許ヲ受クヘシ
第三条 酒母、醪又ハ麹ノ製造者及麹ノ請売者ハ帳簿ヲ調製シ酒母、醪又ハ麹ノ製造出入ニ関スル事実ヲ詳細明瞭ニ記載スヘシ
第四条 収税官吏ハ酒母、醪若ハ麹ノ製造場又ハ麹ノ販売場ニ臨ミ酒母、醪又ハ麹、其ノ原料、製造用容器、器具、器械、建築物若ハ帳簿書類ヲ検査スルコトヲ得
収税官吏監督上必要ト認ムルトキハ前項ノ物件ニ封印ヲ施スコトヲ得
第五条 収税官吏ハ運搬中ニ在ル酒母、醪又ハ麹ヲ検査シ其ノ出所又ハ到達先ヲ質問スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ監督上必要ト認ムルトキハ収税官吏ハ其ノ運搬ヲ停止シ又ハ荷物若ハ船車ニ封印ヲ施スコトヲ得
第六条 酒母、醪又ハ麹ノ製造者其ノ製造ヲ廃止スルモ製造場内ニ酒母、醪、麹、製造用容器、器具又ハ器械ノ現存スル間ハ収税官吏ハ其ノ製造場ニ臨ミ建築物又ハ其ノ現在品ヲ検査シ又ハ之ニ封印ヲ施スコトヲ得
第七条 醪ハ之ヲ譲渡シ、質入シ、飲料トシテ消費シ又ハ収税官吏ノ承認ヲ受ケスシテ製造場外ヘ移出スルコトヲ得ス
第八条 酒母ハ政府ノ交付シタル買入認許証ヲ所持スル者ニ譲渡スノ外譲渡シ又ハ質入スルコトヲ得ス
酒母ハ政府ノ交付シタル買入認許証ヲ所持スル者ニ譲渡シタル場合ノ外収税官吏ノ承認ヲ受ケスシテ製造場外ヘ移出スルコトヲ得ス
第九条 免許ヲ受ケスシテ酒母、醪若ハ麹ヲ製造シタル者又ハ第七条若ハ第八条ニ違反シタル者ハ三十円以上五百円以下ノ罰金ニ処シ仍其ノ酒母、醪ハ濁酒ト看做シ酒造税法ニ依リ其ノ総石数ニ対シ直ニ造石税ヲ徴収ス
第十条 酒母、醪又ハ麹ノ検査ヲ免カレ又ハ免カレムトシタル者ハ十円以上二百円以下ノ罰金ニ処ス
第十一条 酒母、醪若ハ麹ノ製造者又ハ麹ノ請売者酒母、醪又ハ麹ノ製造出入ニ関スル帳簿書類ヲ隠匿シタルトキハ五円以上百円以下ノ罰金ニ処シ帳簿ヲ調製セス又ハ其ノ記載ヲ怠リ若ハ不正ノ記載ヲ為シタルトキハ三円以上三十円以下ノ罰金ニ処ス
第十二条 収税官吏ノ尋問ニ対シ虚偽ノ答弁ヲ為シ又ハ収税官吏ノ職務執行ヲ拒ミ之ヲ忌避シ若ハ之ニ支障ヲ加ヘタル者ハ三円以上三十円以下ノ罰金ニ処ス其ノ刑法ニ正条アルモノハ刑法ニ依ル
第十三条 本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ノ規定ニ違反シタル者ニハ刑法ノ減軽、再犯加重、数罪俱発ノ例ヲ用井ス
第十四条 酒母、醪若ハ麹ノ製造者又ハ麹ノ請売者カ未成年者又ハ禁治産者ナルトキハ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ノ規定ニ依リ当業者ニ適用スヘキ罰則ハ之ヲ法定代理人ニ適用ス但シ其ノ営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第十五条 酒母、醪若ハ麹ノ製造者又ハ麹ノ請売者ハ其ノ代理人、戸主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ従業者ニシテ其ノ業務ニ関シ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ノ規定ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出サルノ故ヲ以テ処罰ヲ免ルルコトヲ得ス
第十六条 間接国税犯則者処分法及明治三十三年法律第五十二号ハ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ノ規定ニ違反シタル者ニ之ヲ準用ス
第十七条 酒母、醪又ハ麹ノ製造者ニシテ其ノ製造ヲ廃止シタルトキハ其ノ旨政府ニ申告スヘシ
第十八条 第九条又ハ第十条ノ処罰ヲ受ケタル者ニ対シテハ政府ハ酒母、醪又ハ麹ノ製造ノ免許ヲ取消スコトヲ得
附 則
第十九条 本法ハ発布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
第二十条 本法施行前酒造税法第二十条ニ依リ酒母又ハ醪製造ノ免許ヲ受ケタル者ハ本法ニ依リ免許ヲ受ケタルモノト看做ス
第二十一条 本法施行前ヨリ麹ヲ製造シ本法施行後引続キ之ヲ製造セムトスル者ハ本法施行後十五日以内ニ本法ニ依リ免許ヲ受クヘシ
前項ノ期間内ハ従前ノ製造ヲ継続スルコトヲ得
第二十二条 沖縄県及東京府下小笠原島伊豆七島ニハ本法ヲ施行セス