第一條 本法ハ酒造稅法ニ依リ酒類ノ製造免許ヲ受ケスシテ酒母又ハ醪ヲ製造スル者、販賣ノ爲ニ麴ヲ製造スル者及麴ヲ請賣スル者ニ之ヲ適用ス
第二條 酒母、醪又ハ麴ヲ製造セムトスル者ハ製造場一箇所每ニ政府ノ免許ヲ受クヘシ
第三條 酒母、醪又ハ麴ノ製造者及麴ノ請賣者ハ帳簿ヲ調製シ酒母、醪又ハ麴ノ製造出入ニ關スル事實ヲ詳細明瞭ニ記載スヘシ
第四條 收稅官吏ハ酒母、醪若ハ麴ノ製造場又ハ麴ノ販賣場ニ臨ミ酒母、醪又ハ麴、其ノ原料、製造用容器、器具、器械、建築物若ハ帳簿書類ヲ檢査スルコトヲ得
收稅官吏監督上必要ト認ムルトキハ前項ノ物件ニ封印ヲ施スコトヲ得
第五條 收稅官吏ハ運搬中ニ在ル酒母、醪又ハ麴ヲ檢査シ其ノ出所又ハ到達先ヲ質問スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ監督上必要ト認ムルトキハ收稅官吏ハ其ノ運搬ヲ停止シ又ハ荷物若ハ船車ニ封印ヲ施スコトヲ得
第六條 酒母、醪又ハ麴ノ製造者其ノ製造ヲ廢止スルモ製造場內ニ酒母、醪、麴、製造用容器、器具又ハ器械ノ現存スル間ハ收稅官吏ハ其ノ製造場ニ臨ミ建築物又ハ其ノ現在品ヲ檢査シ又ハ之ニ封印ヲ施スコトヲ得
第七條 醪ハ之ヲ讓渡シ、質入シ、飮料トシテ消費シ又ハ收稅官吏ノ承認ヲ受ケスシテ製造場外ヘ移出スルコトヲ得ス
第八條 酒母ハ政府ノ交付シタル買入認許證ヲ所持スル者ニ讓渡スノ外讓渡シ又ハ質入スルコトヲ得ス
酒母ハ政府ノ交付シタル買入認許證ヲ所持スル者ニ讓渡シタル場合ノ外收稅官吏ノ承認ヲ受ケスシテ製造場外ヘ移出スルコトヲ得ス
第九條 免許ヲ受ケスシテ酒母、醪若ハ麴ヲ製造シタル者又ハ第七條若ハ第八條ニ違反シタル者ハ三十圓以上五百圓以下ノ罰金ニ處シ仍其ノ酒母、醪ハ濁酒ト看做シ酒造稅法ニ依リ其ノ總石數ニ對シ直ニ造石稅ヲ徵收ス
第十條 酒母、醪又ハ麴ノ檢査ヲ免カレ又ハ免カレムトシタル者ハ十圓以上二百圓以下ノ罰金ニ處ス
第十一條 酒母、醪若ハ麴ノ製造者又ハ麴ノ請賣者酒母、醪又ハ麴ノ製造出入ニ關スル帳簿書類ヲ隱匿シタルトキハ五圓以上百圓以下ノ罰金ニ處シ帳簿ヲ調製セス又ハ其ノ記載ヲ怠リ若ハ不正ノ記載ヲ爲シタルトキハ三圓以上三十圓以下ノ罰金ニ處ス
第十二條 收稅官吏ノ尋問ニ對シ虛僞ノ答辯ヲ爲シ又ハ收稅官吏ノ職務執行ヲ拒ミ之ヲ忌避シ若ハ之ニ支障ヲ加ヘタル者ハ三圓以上三十圓以下ノ罰金ニ處ス其ノ刑法ニ正條アルモノハ刑法ニ依ル
第十三條 本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ノ規定ニ違反シタル者ニハ刑法ノ減輕、再犯加重、數罪俱發ノ例ヲ用井ス
第十四條 酒母、醪若ハ麴ノ製造者又ハ麴ノ請賣者カ未成年者又ハ禁治產者ナルトキハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ノ規定ニ依リ當業者ニ適用スヘキ罰則ハ之ヲ法定代理人ニ適用ス但シ其ノ營業ニ關シ成年者ト同一ノ能力ヲ有スル未成年者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第十五條 酒母、醪若ハ麴ノ製造者又ハ麴ノ請賣者ハ其ノ代理人、戶主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ從業者ニシテ其ノ業務ニ關シ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ノ規定ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出サルノ故ヲ以テ處罰ヲ免ルルコトヲ得ス
第十六條 間接國稅犯則者處分法及明治三十三年法律第五十二號ハ本法又ハ本法ニ基キテ發スル命令ノ規定ニ違反シタル者ニ之ヲ準用ス
第十七條 酒母、醪又ハ麴ノ製造者ニシテ其ノ製造ヲ廢止シタルトキハ其ノ旨政府ニ申吿スヘシ
第十八條 第九條又ハ第十條ノ處罰ヲ受ケタル者ニ對シテハ政府ハ酒母、醪又ハ麴ノ製造ノ免許ヲ取消スコトヲ得