朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル軌道法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正十年四月十三日
內閣總理大臣 原敬
內務大臣 床次竹二郞
鐵道大臣 元田肇
法律第七十六號
軌道法
第一條 本法ハ一般交通ノ用ニ供スル爲敷設スル軌道ニ之ヲ適用ス
一般交通ノ用ニ供セサル軌道ニ關スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二條 軌道ハ特別ノ事由アル場合ヲ除クノ外之ヲ道路ニ敷設スヘシ
第三條 軌道ヲ敷設シテ運輸事業ヲ經營セムトスル者ハ主務大臣ノ特許ヲ受クヘシ
第四條 前條ノ規定ニ依リ特許ヲ受ケタル軌道經營者ハ軌道敷設ニ要スル道路ノ占用ニ付道路管理者ノ許可又ハ承認ヲ受ケタルモノト看做ス此ノ場合ニ於ケル道路ノ占用料ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依ル
第五條 軌道經營者ハ主務大臣ノ指定スル期間內ニ工事施行ノ認可ヲ申請スヘシ
天災事變其ノ他已ムコトヲ得サル事由ニ因リ前項ノ期間內ニ工事施行ノ認可ヲ申請スルコト能ハサル場合ニ於テハ其ノ期間ノ伸長ヲ申請スルコトヲ得
第六條 軌道經營者工事施行ノ認可ヲ受ケタルトキハ道路ニ關スル工事ニ付道路管理者ノ許可又ハ承認ヲ受ケタルモノト看做ス河川法、砂防法及之ニ基キテ發スル命令ニ依ル許可又ハ認可ニ付亦同シ
第七條 軌道經營者工事施行ノ認可ヲ受ケタルトキハ主務大臣ノ指定スル期間內ニ工事ニ著手シ之ヲ竣功セシムヘシ
第五條第二項ノ規定ハ前項ノ期間ニ付之ヲ準用ス
第八條 地方長官必要アリト認ムルトキハ道路管理者ヲシテ道路ニ敷設スル軌道工事及之カ爲必要ヲ生シタル道路ニ關スル工事ノ全部又ハ一部ヲ執行セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル工事ニ要スル費用ノ負擔ニ付道路管理者及軌道經營者ノ協議調ハサルトキハ申請ニ因リ主務大臣之ヲ裁定ス
第九條 道路管理者道路ノ新設又ハ改築ノ爲必要アリト認ムルトキハ軌道經營者ノ新設シタル軌道敷地ヲ無償ニテ道路敷地ト爲スコトヲ得
第十條 軌道經營者ハ地方長官ノ認可ヲ受クルニ非サレハ運輸ヲ開始スルコトヲ得ス
第十一條 軌道經營者ハ旅客及荷物ノ運賃其ノ他運輸ニ關スル料金竝運轉時刻ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
主務大臣ハ公益上必要アリト認ムルトキハ運賃、料金又ハ運轉時刻ノ變更ヲ命スルコトヲ得
第十二條 軌道經營者ハ軌條間ノ全部及其ノ左右各二尺ヲ限リ道路ノ維持及修繕ヲ爲スヘシ
地方長官必要アリト認ムルトキハ道路管理者ヲシテ前項ノ維持及修繕ヲ爲サシムルコトヲ得此ノ場合ニ於ケル費用ノ負擔ニ付テハ第八條第二項ノ規定ヲ準用ス
第九條ノ規定ニ依リ道路敷地ト爲シタルモノニ付テハ第一項ノ維持及修繕ハ道路管理者之ヲ爲スヘシ
第十三條 主務大臣又ハ地方長官ハ監督上必要アリト認ムルトキハ軌道經營者ヲシテ帳簿、書類及圖面ヲ提出セシメ又ハ監查員ヲ派遣シテ軌道ノ設備、事業ノ狀況竝會計及財產ノ實況ヲ監查セシムルコトヲ得
第十四條 軌道ノ建設、運輸、運轉、係員及會計ニ關スル規程ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十五條 軌道經營者ハ主務大臣ノ許可ヲ受ケタル場合ニ限リ特許ニ因リテ生スル權利義務ヲ他人ニ讓渡スルコトヲ得
第十六條 軌道經營者ハ主務大臣ノ許可ヲ受ケタル場合ニ限リ軌道ノ讓渡又ハ事業若ハ運轉ノ管理ノ委託若ハ受託ヲ爲スコトヲ得
前項ノ管理ノ委託ヲ受ケタル者ハ其ノ管理ニ付主務大臣ニ對シ委託ヲ爲シタル者ト共ニ其ノ責ニ任ス
第十七條 軌道經營者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非サレハ軌道ノ附屬物件ノ讓渡又ハ貸渡ヲ爲スコトヲ得ス
第十八條 國又ハ公共團體ニ於テ公益上ノ必要ニ因リ軌道ノ全部又ハ一部及其ノ附屬物件ヲ買收セムトスルトキハ軌道經營者ハ之ヲ拒ムコトヲ得ス
公共團體ニ於テ前項ノ規定ニ依ル買收ヲ爲サムトスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
公共團體ニ於テ第一項ノ規定ニ依ル買收ヲ爲シタルトキハ特許ニ因リテ生スル權利義務ヲ承繼ス
第十九條 地方鐵道法第三十一條乃至第三十五條ノ規定ハ國ニ於テ前條第一項ノ規定ニ依ル買收ヲ爲ス場合ニ之ヲ準用ス
公共團體カ前條第一項ノ規定ニ依ル買收ヲ爲ス場合ニ於テハ買收價額ハ協定ニ依ル協議調ハサルトキハ申請ニ因リ前項ノ規定ニ準シ算出シタル金額ヲ標準トシテ主務大臣之ヲ裁定ス
第二十條 公共團體カ第十八條第一項ノ規定ニ依ル買收ヲ爲ス場合ニ於テ公益上ノ必要ニ因リ兼業ニ屬スル資產及軌道經營ニ必要ナル貯藏物品ヲ買收セムトスルトキハ軌道經營者ハ之ヲ拒ムコトヲ得ス
公共團體カ第十八條第一項ノ規定ニ依ル買收ヲ爲ス場合ニ於テハ軌道經營者ハ兼業ニ屬スル資產及軌道經營ニ必要ナル貯藏物品ノ買收ヲ求ムルコトヲ得
前二項ノ場合ニ於テ買收價額ニ付協議調ハサルトキハ申請ニ因リ主務大臣之ヲ裁定ス
第二十一條 軌道會社ノ株金ノ第一囘拂込金額ハ株金ノ十分ノ一迄下ルコトヲ得
軌道會社ハ株金全額拂込前ト雖主務大臣ノ認可ヲ受ケ線路ノ延長又ハ改良ノ費用ニ充ツル爲其ノ資本ヲ增加スルコトヲ得
前二項ノ規定ハ地方鐵道會社ニ非サル會社カ兼業トシテ軌道ヲ敷設スル場合ニハ之ヲ適用セス
第二十二條 軌道會社ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非サレハ合併ヲ爲スコトヲ得ス
第二十三條 左ノ場合ニ於テハ特許ハ其ノ效力ヲ失フ
一 工事施行ノ認可申請期間內ニ認可ヲ申請セサルトキ
二 工事施行ノ認可ヲ受ケサルトキ
三 事業廢止ノ許可ヲ受ケタルトキ
四 特許ヲ受ケタル者會社ノ發起人ナルトキハ工事施行ノ認可申請期間內ニ會社設立ノ登記ヲ爲ササルトキ
第二十四條 軌道經營者軌道ニ關スル工作物ノ使用ヲ廢止シタルトキハ地方長官ノ指示スル所ニ從ヒ道路ヲ原狀ニ囘復スヘシ
地方長官必要アリト認ムルトキハ軌道經營者ノ負擔ニ於テ道路管理者ヲシテ前項ノ規定ニ依ル工事ヲ爲サシムルコトヲ得
第二十五條 本法ニ規定スル主務大臣ノ職權ノ一部ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ地方長官ニ委任スルコトヲ得
第二十六條 地方鐵道法第七條第二項第三項、第八條第一項、第十條第二項、第十一條、第十五條、第十七條、第十九條第二項、第二十三條第二項第三項、第二十五條、第二十七條、第三十條第二項及第三十六條ノ規定ハ軌道ニ之ヲ準用ス但シ地方鐵道法第七條第三項及第八條第一項中鐵道抵當法トアルハ明治四十二年法律第二十八號トス
第二十七條 軌道經營者カ法令若ハ法令ニ基キテ爲ス命令又ハ特許、許可若ハ認可ニ附シタル條件ニ違反シ其ノ他公益ヲ害スル行爲ヲ爲シタルトキハ主務大臣ハ左ノ處分ヲ爲スコトヲ得
一 取締役其ノ他ノ役員ヲ解任スルコト
二 他人ヲシテ軌道經營者ノ計算ニ於テ必要ナル施設又ハ事業ノ管理ヲ爲サシムルコト
三 特許ノ全部又ハ一部ヲ取消スコト
前項ノ規定ニ依リテ解任セラレタル取締役其ノ他ノ役員ハ再任セラルルコトヲ得ス
第一項第二號ノ規定ニ依リ事業ノ管理ヲ爲ス者ハ其ノ管理ニ付主務大臣ニ對シ當該軌道經營者ト共ニ其ノ責ニ任ス
第二十八條 特許ヲ受ケスシテ軌道ヲ敷設シ又ハ認可ヲ受ケスシテ運輸ヲ開始シタル者ハ百圓以上二千圓以下ノ罰金ニ處ス
第二十九條 左ノ場合ニ於テハ軌道經營者又ハ其ノ役員若ハ使用人ヲ十圓以上千圓以下ノ過料ニ處ス
一 前條ノ場合ヲ除クノ外本法ニ依リ許可又ハ認可ヲ受クヘキ事項ヲ許可又ハ認可ヲ受ケスシテ爲シタルトキ
二 法令ニ基キテ爲シタル命令又ハ特許、許可若ハ認可ニ附シタル條件ニ基キテ爲シタル命令ニ違反シタルトキ
三 監查員ノ職務ノ執行ヲ妨ケタルトキ
四 法令又ハ法令ニ基キテ爲ス命令ニ依リテ爲スヘキ屆出、報告其ノ他ノ書類圖面ノ提出若ハ調製ヲ怠リ又ハ虛僞ノ屆出、報告若ハ記載ヲ爲シタルトキ
非訟事件手續法第二百六條乃至第二百八條ノ規定ハ前項ノ過料ニ之ヲ準用ス
第三十條 前二條ノ規定ハ公共團體カ軌道ヲ經營スル場合ニ之ヲ適用セス
第三十一條 本法ハ一般交通ノ用ニ供スル軌道ニ準スヘキモノニ之ヲ準用ス
前項ノ軌道ニ準スヘキモノハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十二條 國ニ於テ軌道ヲ敷設シテ運輸事業ヲ經營セムトスルトキハ當該官廳ハ主務大臣ニ協議ヲ爲スヘシ其ノ工事施行ニ付亦同シ
國ニ於テ經營スル軌道ニ付テハ第二條、第十二條第一項、第十四條及第二十四條第一項ノ規定ヲ除クノ外本法ヲ適用セス但シ第十四條中軌道ノ係員及會計ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第一項ノ規定ニ依リ主務大臣ニ協議ヲ了シタルトキハ第四條及第六條ノ規定ヲ準用ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
軌道條例ハ之ヲ廢止ス
舊法ニ依リテ爲シタル特許、認可、處分、手續其ノ他ノ行爲ハ本法中之ニ相當スル規定アル場合ニ於テハ本法ニ依リテ之ヲ爲シタルモノト看做ス但シ其ノ特許、認可其ノ他ノ處分ニ附シタル條件ニシテ本法ニ牴觸スルモノハ其ノ效力ヲ失フ
他ノ法令中軌道條例トアルハ軌道法トス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル軌道法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正十年四月十三日
内閣総理大臣 原敬
内務大臣 床次竹二郎
鉄道大臣 元田肇
法律第七十六号
軌道法
第一条 本法ハ一般交通ノ用ニ供スル為敷設スル軌道ニ之ヲ適用ス
一般交通ノ用ニ供セサル軌道ニ関スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第二条 軌道ハ特別ノ事由アル場合ヲ除クノ外之ヲ道路ニ敷設スヘシ
第三条 軌道ヲ敷設シテ運輸事業ヲ経営セムトスル者ハ主務大臣ノ特許ヲ受クヘシ
第四条 前条ノ規定ニ依リ特許ヲ受ケタル軌道経営者ハ軌道敷設ニ要スル道路ノ占用ニ付道路管理者ノ許可又ハ承認ヲ受ケタルモノト看做ス此ノ場合ニ於ケル道路ノ占用料ニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依ル
第五条 軌道経営者ハ主務大臣ノ指定スル期間内ニ工事施行ノ認可ヲ申請スヘシ
天災事変其ノ他已ムコトヲ得サル事由ニ因リ前項ノ期間内ニ工事施行ノ認可ヲ申請スルコト能ハサル場合ニ於テハ其ノ期間ノ伸長ヲ申請スルコトヲ得
第六条 軌道経営者工事施行ノ認可ヲ受ケタルトキハ道路ニ関スル工事ニ付道路管理者ノ許可又ハ承認ヲ受ケタルモノト看做ス河川法、砂防法及之ニ基キテ発スル命令ニ依ル許可又ハ認可ニ付亦同シ
第七条 軌道経営者工事施行ノ認可ヲ受ケタルトキハ主務大臣ノ指定スル期間内ニ工事ニ著手シ之ヲ竣功セシムヘシ
第五条第二項ノ規定ハ前項ノ期間ニ付之ヲ準用ス
第八条 地方長官必要アリト認ムルトキハ道路管理者ヲシテ道路ニ敷設スル軌道工事及之カ為必要ヲ生シタル道路ニ関スル工事ノ全部又ハ一部ヲ執行セシムルコトヲ得
前項ノ規定ニ依ル工事ニ要スル費用ノ負担ニ付道路管理者及軌道経営者ノ協議調ハサルトキハ申請ニ因リ主務大臣之ヲ裁定ス
第九条 道路管理者道路ノ新設又ハ改築ノ為必要アリト認ムルトキハ軌道経営者ノ新設シタル軌道敷地ヲ無償ニテ道路敷地ト為スコトヲ得
第十条 軌道経営者ハ地方長官ノ認可ヲ受クルニ非サレハ運輸ヲ開始スルコトヲ得ス
第十一条 軌道経営者ハ旅客及荷物ノ運賃其ノ他運輸ニ関スル料金並運転時刻ヲ定メ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
主務大臣ハ公益上必要アリト認ムルトキハ運賃、料金又ハ運転時刻ノ変更ヲ命スルコトヲ得
第十二条 軌道経営者ハ軌条間ノ全部及其ノ左右各二尺ヲ限リ道路ノ維持及修繕ヲ為スヘシ
地方長官必要アリト認ムルトキハ道路管理者ヲシテ前項ノ維持及修繕ヲ為サシムルコトヲ得此ノ場合ニ於ケル費用ノ負担ニ付テハ第八条第二項ノ規定ヲ準用ス
第九条ノ規定ニ依リ道路敷地ト為シタルモノニ付テハ第一項ノ維持及修繕ハ道路管理者之ヲ為スヘシ
第十三条 主務大臣又ハ地方長官ハ監督上必要アリト認ムルトキハ軌道経営者ヲシテ帳簿、書類及図面ヲ提出セシメ又ハ監査員ヲ派遣シテ軌道ノ設備、事業ノ状況並会計及財産ノ実況ヲ監査セシムルコトヲ得
第十四条 軌道ノ建設、運輸、運転、係員及会計ニ関スル規程ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十五条 軌道経営者ハ主務大臣ノ許可ヲ受ケタル場合ニ限リ特許ニ因リテ生スル権利義務ヲ他人ニ譲渡スルコトヲ得
第十六条 軌道経営者ハ主務大臣ノ許可ヲ受ケタル場合ニ限リ軌道ノ譲渡又ハ事業若ハ運転ノ管理ノ委託若ハ受託ヲ為スコトヲ得
前項ノ管理ノ委託ヲ受ケタル者ハ其ノ管理ニ付主務大臣ニ対シ委託ヲ為シタル者ト共ニ其ノ責ニ任ス
第十七条 軌道経営者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非サレハ軌道ノ附属物件ノ譲渡又ハ貸渡ヲ為スコトヲ得ス
第十八条 国又ハ公共団体ニ於テ公益上ノ必要ニ因リ軌道ノ全部又ハ一部及其ノ附属物件ヲ買収セムトスルトキハ軌道経営者ハ之ヲ拒ムコトヲ得ス
公共団体ニ於テ前項ノ規定ニ依ル買収ヲ為サムトスルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
公共団体ニ於テ第一項ノ規定ニ依ル買収ヲ為シタルトキハ特許ニ因リテ生スル権利義務ヲ承継ス
第十九条 地方鉄道法第三十一条乃至第三十五条ノ規定ハ国ニ於テ前条第一項ノ規定ニ依ル買収ヲ為ス場合ニ之ヲ準用ス
公共団体カ前条第一項ノ規定ニ依ル買収ヲ為ス場合ニ於テハ買収価額ハ協定ニ依ル協議調ハサルトキハ申請ニ因リ前項ノ規定ニ準シ算出シタル金額ヲ標準トシテ主務大臣之ヲ裁定ス
第二十条 公共団体カ第十八条第一項ノ規定ニ依ル買収ヲ為ス場合ニ於テ公益上ノ必要ニ因リ兼業ニ属スル資産及軌道経営ニ必要ナル貯蔵物品ヲ買収セムトスルトキハ軌道経営者ハ之ヲ拒ムコトヲ得ス
公共団体カ第十八条第一項ノ規定ニ依ル買収ヲ為ス場合ニ於テハ軌道経営者ハ兼業ニ属スル資産及軌道経営ニ必要ナル貯蔵物品ノ買収ヲ求ムルコトヲ得
前二項ノ場合ニ於テ買収価額ニ付協議調ハサルトキハ申請ニ因リ主務大臣之ヲ裁定ス
第二十一条 軌道会社ノ株金ノ第一回払込金額ハ株金ノ十分ノ一迄下ルコトヲ得
軌道会社ハ株金全額払込前ト雖主務大臣ノ認可ヲ受ケ線路ノ延長又ハ改良ノ費用ニ充ツル為其ノ資本ヲ増加スルコトヲ得
前二項ノ規定ハ地方鉄道会社ニ非サル会社カ兼業トシテ軌道ヲ敷設スル場合ニハ之ヲ適用セス
第二十二条 軌道会社ハ主務大臣ノ認可ヲ受クルニ非サレハ合併ヲ為スコトヲ得ス
第二十三条 左ノ場合ニ於テハ特許ハ其ノ効力ヲ失フ
一 工事施行ノ認可申請期間内ニ認可ヲ申請セサルトキ
二 工事施行ノ認可ヲ受ケサルトキ
三 事業廃止ノ許可ヲ受ケタルトキ
四 特許ヲ受ケタル者会社ノ発起人ナルトキハ工事施行ノ認可申請期間内ニ会社設立ノ登記ヲ為ササルトキ
第二十四条 軌道経営者軌道ニ関スル工作物ノ使用ヲ廃止シタルトキハ地方長官ノ指示スル所ニ従ヒ道路ヲ原状ニ回復スヘシ
地方長官必要アリト認ムルトキハ軌道経営者ノ負担ニ於テ道路管理者ヲシテ前項ノ規定ニ依ル工事ヲ為サシムルコトヲ得
第二十五条 本法ニ規定スル主務大臣ノ職権ノ一部ハ命令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ地方長官ニ委任スルコトヲ得
第二十六条 地方鉄道法第七条第二項第三項、第八条第一項、第十条第二項、第十一条、第十五条、第十七条、第十九条第二項、第二十三条第二項第三項、第二十五条、第二十七条、第三十条第二項及第三十六条ノ規定ハ軌道ニ之ヲ準用ス但シ地方鉄道法第七条第三項及第八条第一項中鉄道抵当法トアルハ明治四十二年法律第二十八号トス
第二十七条 軌道経営者カ法令若ハ法令ニ基キテ為ス命令又ハ特許、許可若ハ認可ニ附シタル条件ニ違反シ其ノ他公益ヲ害スル行為ヲ為シタルトキハ主務大臣ハ左ノ処分ヲ為スコトヲ得
一 取締役其ノ他ノ役員ヲ解任スルコト
二 他人ヲシテ軌道経営者ノ計算ニ於テ必要ナル施設又ハ事業ノ管理ヲ為サシムルコト
三 特許ノ全部又ハ一部ヲ取消スコト
前項ノ規定ニ依リテ解任セラレタル取締役其ノ他ノ役員ハ再任セラルルコトヲ得ス
第一項第二号ノ規定ニ依リ事業ノ管理ヲ為ス者ハ其ノ管理ニ付主務大臣ニ対シ当該軌道経営者ト共ニ其ノ責ニ任ス
第二十八条 特許ヲ受ケスシテ軌道ヲ敷設シ又ハ認可ヲ受ケスシテ運輸ヲ開始シタル者ハ百円以上二千円以下ノ罰金ニ処ス
第二十九条 左ノ場合ニ於テハ軌道経営者又ハ其ノ役員若ハ使用人ヲ十円以上千円以下ノ過料ニ処ス
一 前条ノ場合ヲ除クノ外本法ニ依リ許可又ハ認可ヲ受クヘキ事項ヲ許可又ハ認可ヲ受ケスシテ為シタルトキ
二 法令ニ基キテ為シタル命令又ハ特許、許可若ハ認可ニ附シタル条件ニ基キテ為シタル命令ニ違反シタルトキ
三 監査員ノ職務ノ執行ヲ妨ケタルトキ
四 法令又ハ法令ニ基キテ為ス命令ニ依リテ為スヘキ届出、報告其ノ他ノ書類図面ノ提出若ハ調製ヲ怠リ又ハ虚偽ノ届出、報告若ハ記載ヲ為シタルトキ
非訟事件手続法第二百六条乃至第二百八条ノ規定ハ前項ノ過料ニ之ヲ準用ス
第三十条 前二条ノ規定ハ公共団体カ軌道ヲ経営スル場合ニ之ヲ適用セス
第三十一条 本法ハ一般交通ノ用ニ供スル軌道ニ準スヘキモノニ之ヲ準用ス
前項ノ軌道ニ準スヘキモノハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第三十二条 国ニ於テ軌道ヲ敷設シテ運輸事業ヲ経営セムトスルトキハ当該官庁ハ主務大臣ニ協議ヲ為スヘシ其ノ工事施行ニ付亦同シ
国ニ於テ経営スル軌道ニ付テハ第二条、第十二条第一項、第十四条及第二十四条第一項ノ規定ヲ除クノ外本法ヲ適用セス但シ第十四条中軌道ノ係員及会計ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第一項ノ規定ニ依リ主務大臣ニ協議ヲ了シタルトキハ第四条及第六条ノ規定ヲ準用ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
軌道条例ハ之ヲ廃止ス
旧法ニ依リテ為シタル特許、認可、処分、手続其ノ他ノ行為ハ本法中之ニ相当スル規定アル場合ニ於テハ本法ニ依リテ之ヲ為シタルモノト看做ス但シ其ノ特許、認可其ノ他ノ処分ニ附シタル条件ニシテ本法ニ牴触スルモノハ其ノ効力ヲ失フ
他ノ法令中軌道条例トアルハ軌道法トス