朕樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ關東廳官制ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正八年四月十一日
內閣總理大臣 原敬
外務大臣 子爵 內田康哉
陸軍大臣 田中義一
勅令第九十四號
關東廳官制
第一條 關東州ニ關東廳ヲ置ク
第二條 關東廳ニ關東長官ヲ置ク
關東長官ハ關東州ヲ管轄シ南滿洲ニ於ケル鐵道線路ノ警務上ノ取締ノ事ヲ掌ル
關東長官ハ南滿洲鐵道株式會社ノ業務ヲ監督ス
第三條 關東長官ハ親任トス
陸軍武官關東長官ニ任セラレタルトキハ之ニ關東軍司令官ヲ兼ネシムルコトヲ得
第四條 關東長官ハ內閣總理大臣ノ監督ヲ承ケ諸般ノ政務ヲ統理ス但シ涉外事項ニ關シテハ外務大臣ノ監督ヲ承ク
第五條 關東長官ハ其ノ職權又ハ特別ノ委任ニ依リ廳令ヲ發シ之ニ一年以下ノ懲役、禁錮若ハ拘留又ハ二百圓以內ノ罰金若ハ科料ノ罰則ヲ附スルコトヲ得
第六條 關東長官ハ安寧秩序ヲ保持スル爲臨時緊急ヲ要スル場合ニ於テ前條ノ制限ヲ超ユル罰則ヲ附シタル命令ヲ發スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リテ發シタル命令ハ發布後直ニ內閣總理大臣ヲ經テ勅裁ヲ請フヘシ若シ勅裁ヲ得サルトキハ關東長官ハ直ニ其ノ命令ノ將來ニ向テ效力ナキコトヲ公布スヘシ
第七條 關東長官ハ其ノ管轄區域ノ安寧秩序ノ保持又ハ鐵道線路ノ警護ノ爲必要アルトキハ關東軍司令官ニ兵力ノ使用ヲ請求スルコトヲ得
第八條 關東長官ハ所轄官廳ノ命令又ハ處分ニシテ成規ニ違ヒ、公益ヲ害シ又ハ權限ヲ犯スモノアリト認ムルトキハ其ノ命令又ハ處分ヲ停止シ又ハ之ヲ取消スコトヲ得
第九條 關東長官ハ所部ノ職員ヲ統督シ奏任官ノ進退ハ內閣總理大臣ヲ經テ之ヲ上奏シ判任官以下ノ進退ハ之ヲ專行ス
第十條 關東長官ハ內閣總理大臣ヲ經テ所部ノ職員ノ敍位敍勳ヲ上奏ス
第十一條 關東長官ハ所部ノ職員ヲ懲戒ス其ノ勅任官ニ係ルモノ及奏任官ノ免官ハ內閣總理大臣ヲ經テ之ヲ上奏ス
第十二條 關東廳ニ長官官房、民政部及外事部ヲ置ク長官官房、民政部及外事部ノ事務ノ分掌ハ關東長官之ヲ定ム
第十三條 關東州ヲ二區ニ分チ各區ニ民政署ヲ置ク其ノ位置、名稱及管轄區域ハ關東長官之ヲ定ム
第十四條 民政署ノ事務ヲ分掌セシムル爲須要ノ地ニ民政支署ヲ置ク其ノ位置、名稱及管轄區域ハ關東長官之ヲ定ム
第十五條 關東廳ニ左ノ職員ヲ置ク
事務總長 勅任
民政部長
外事部長
參事官 專任一人 奏任
事務官 專任七人 奏任但シ內一人ヲ勅任ヲ爲スコトヲ得
警務官 專任一人 奏任
祕書官 專任一人 奏任
學務官 專任一人 奏任
技師 專任九人 奏任
警視 專任九人 奏任
翻譯官 專任二人 奏任
視學
警部
技手
翻譯生
專任百七十三人 判任
警部補 專任九十九人 判任
民政部長ハ關東廳事務總長、外事部長ハ奉天ニ駐在スル總領事ヲ以テ之ニ充ツ
事務官ハ南滿洲ニ駐在スル領事官ヲシテ之ヲ兼ネシムルコトヲ得
交通ノ事務ニ關シ關東廳ニ顧問ヲ置ク顧問ハ南滿洲鐵道株式會社ノ社長ヲ以テ之ニ充ツ
第十六條 事務總長ハ關東長官ヲ佐ケ關東長官事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理ス
第十七條 民政部長ハ關東長官ノ命ヲ承ケ民政部ノ事務ヲ掌理ス
外事部長ハ關東長官ノ命ヲ承ケ外事部ノ事務ヲ掌理ス
第十八條 參事官ハ上司ノ命ヲ承ケ審議立案ヲ掌リ又ハ廳務ヲ助ク
第十九條 事務官ハ民政署長タル者ヲ除クノ外上司ノ命ヲ承ケ廳務ヲ分掌ス
第二十條 民政署長ハ事務官ヲ以テ之ニ充ツ關東長官ノ指揮監督ヲ承ケ法律命令ヲ施行シ部內ノ行政事務ヲ管理ス
第二十一條 民政署長ハ部內ノ行政事務ニ付其ノ職權又ハ特別ノ委任ニ依リ管內一般又ハ其ノ一部ニ民政署令ヲ發シ之ニ五十圓以內ノ罰金若ハ科料又ハ拘留ノ罰則ヲ附スルコトヲ得
第二十二條 民政署長ハ管內ノ靜謐ヲ維持スル爲兵力ヲ要スルトキハ之ヲ關東長官ニ具狀スヘシ但シ非常急變ノ場合ニ際シテハ直ニ其ノ附近ノ守備隊長ニ兵力ノ使用ヲ請求スルコトヲ得
第二十三條 民政署長ハ所部ノ職員ヲ監督シ判任官ノ進退ヲ關東長官ニ具狀ス
第二十四條 民政署長ハ署中處務ノ細則ヲ設クルコトヲ得
第二十五條 民政署長事故アルトキハ上席ノ官吏其ノ職務ヲ代理ス
民政署長ハ部下ノ官吏ヲシテ其ノ事務ノ一部ヲ臨時代理セシムルコトヲ得
第二十六條 警務官ハ上司ノ命ヲ承ケ警察ニ關スル事務ヲ掌理ス
第二十七條 祕書官ハ關東長官ノ命ヲ承ケ機密ニ關スル事務ヲ掌ル
第二十八條 學務官ハ上司ノ命ヲ承ケ敎育ニ關スル事務ヲ掌リ兼ネテ學事ノ視察ヲ掌ル
第二十九條 技師ハ上司ノ命ヲ承ケ技術ヲ掌ル
第三十條 警視ハ上司ノ命ヲ承ケ警察ニ關スル事務ヲ掌ル
第三十一條 翻譯官ハ上司ノ命ヲ承ケ翻譯通辯ヲ掌ル
第三十二條 屬ハ上司ノ指揮ヲ承ケ庶務ニ從事ス
第三十三條 視學ハ上司ノ指揮ヲ承ケ學事ニ關スル視察及事務ニ從事ス
第三十四條 警部及警部補ハ上司ノ指揮ヲ承ケ警察ニ關スル事務ニ從事シ部下ノ巡査ヲ指揮監督ス
第三十五條 技手ハ上司ノ指揮ヲ承ケ技術ニ從事ス
第三十六條 翻譯生ハ上司ノ指揮ヲ承ケ翻譯通辯ニ從事ス
第三十七條 民政支署長ハ警視、屬又ハ警部ヲ以テ之ニ充ツ
第三十八條 民政支署長事故アルトキハ上席官吏其ノ職務ヲ代理ス
第三十九條 關東廳ニ巡査ヲ置ク判任官ノ待遇トス
巡査ノ定員ハ關東長官之ヲ定ム
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
關東都督府官制ハ之ヲ廢止ス
本令施行ノ際現ニ關東都督府ノ參事官、事務官、祕書官、學務官、技師、警視、翻譯官、屬、視學、警部、技手、翻譯生、警部補又ハ巡査ノ職ニ在ル者ハ關東廳ノ參事官、事務官、祕書官、學務官、技師、警視、翻譯官、屬、視學、警部、技手、翻譯生、警部補又ハ巡査ニ同官等俸給ヲ以テ任セラレタルモノトス
別ニ定ムルモノヲ除クノ外他ノ勅令中關東都督府トアルハ關東廳、關東都督又ハ都督トアルハ關東長官トス
他ノ勅令中任用給與等ニ付テノ在職年數ニ關スル規定ノ適用ニ付テハ關東都督府職員トシテノ在職ハ之ヲ關東廳職員トシテノ在職ト看做ス
朕枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ関東庁官制ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正八年四月十一日
内閣総理大臣 原敬
外務大臣 子爵 内田康哉
陸軍大臣 田中義一
勅令第九十四号
関東庁官制
第一条 関東州ニ関東庁ヲ置ク
第二条 関東庁ニ関東長官ヲ置ク
関東長官ハ関東州ヲ管轄シ南満洲ニ於ケル鉄道線路ノ警務上ノ取締ノ事ヲ掌ル
関東長官ハ南満洲鉄道株式会社ノ業務ヲ監督ス
第三条 関東長官ハ親任トス
陸軍武官関東長官ニ任セラレタルトキハ之ニ関東軍司令官ヲ兼ネシムルコトヲ得
第四条 関東長官ハ内閣総理大臣ノ監督ヲ承ケ諸般ノ政務ヲ統理ス但シ渉外事項ニ関シテハ外務大臣ノ監督ヲ承ク
第五条 関東長官ハ其ノ職権又ハ特別ノ委任ニ依リ庁令ヲ発シ之ニ一年以下ノ懲役、禁錮若ハ拘留又ハ二百円以内ノ罰金若ハ科料ノ罰則ヲ附スルコトヲ得
第六条 関東長官ハ安寧秩序ヲ保持スル為臨時緊急ヲ要スル場合ニ於テ前条ノ制限ヲ超ユル罰則ヲ附シタル命令ヲ発スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リテ発シタル命令ハ発布後直ニ内閣総理大臣ヲ経テ勅裁ヲ請フヘシ若シ勅裁ヲ得サルトキハ関東長官ハ直ニ其ノ命令ノ将来ニ向テ効力ナキコトヲ公布スヘシ
第七条 関東長官ハ其ノ管轄区域ノ安寧秩序ノ保持又ハ鉄道線路ノ警護ノ為必要アルトキハ関東軍司令官ニ兵力ノ使用ヲ請求スルコトヲ得
第八条 関東長官ハ所轄官庁ノ命令又ハ処分ニシテ成規ニ違ヒ、公益ヲ害シ又ハ権限ヲ犯スモノアリト認ムルトキハ其ノ命令又ハ処分ヲ停止シ又ハ之ヲ取消スコトヲ得
第九条 関東長官ハ所部ノ職員ヲ統督シ奏任官ノ進退ハ内閣総理大臣ヲ経テ之ヲ上奏シ判任官以下ノ進退ハ之ヲ専行ス
第十条 関東長官ハ内閣総理大臣ヲ経テ所部ノ職員ノ叙位叙勲ヲ上奏ス
第十一条 関東長官ハ所部ノ職員ヲ懲戒ス其ノ勅任官ニ係ルモノ及奏任官ノ免官ハ内閣総理大臣ヲ経テ之ヲ上奏ス
第十二条 関東庁ニ長官官房、民政部及外事部ヲ置ク長官官房、民政部及外事部ノ事務ノ分掌ハ関東長官之ヲ定ム
第十三条 関東州ヲ二区ニ分チ各区ニ民政署ヲ置ク其ノ位置、名称及管轄区域ハ関東長官之ヲ定ム
第十四条 民政署ノ事務ヲ分掌セシムル為須要ノ地ニ民政支署ヲ置ク其ノ位置、名称及管轄区域ハ関東長官之ヲ定ム
第十五条 関東庁ニ左ノ職員ヲ置ク
事務総長 勅任
民政部長
外事部長
参事官 専任一人 奏任
事務官 専任七人 奏任但シ内一人ヲ勅任ヲ為スコトヲ得
警務官 専任一人 奏任
秘書官 専任一人 奏任
学務官 専任一人 奏任
技師 専任九人 奏任
警視 専任九人 奏任
翻訳官 専任二人 奏任
視学
警部
技手
翻訳生
専任百七十三人 判任
警部補 専任九十九人 判任
民政部長ハ関東庁事務総長、外事部長ハ奉天ニ駐在スル総領事ヲ以テ之ニ充ツ
事務官ハ南満洲ニ駐在スル領事官ヲシテ之ヲ兼ネシムルコトヲ得
交通ノ事務ニ関シ関東庁ニ顧問ヲ置ク顧問ハ南満洲鉄道株式会社ノ社長ヲ以テ之ニ充ツ
第十六条 事務総長ハ関東長官ヲ佐ケ関東長官事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理ス
第十七条 民政部長ハ関東長官ノ命ヲ承ケ民政部ノ事務ヲ掌理ス
外事部長ハ関東長官ノ命ヲ承ケ外事部ノ事務ヲ掌理ス
第十八条 参事官ハ上司ノ命ヲ承ケ審議立案ヲ掌リ又ハ庁務ヲ助ク
第十九条 事務官ハ民政署長タル者ヲ除クノ外上司ノ命ヲ承ケ庁務ヲ分掌ス
第二十条 民政署長ハ事務官ヲ以テ之ニ充ツ関東長官ノ指揮監督ヲ承ケ法律命令ヲ施行シ部内ノ行政事務ヲ管理ス
第二十一条 民政署長ハ部内ノ行政事務ニ付其ノ職権又ハ特別ノ委任ニ依リ管内一般又ハ其ノ一部ニ民政署令ヲ発シ之ニ五十円以内ノ罰金若ハ科料又ハ拘留ノ罰則ヲ附スルコトヲ得
第二十二条 民政署長ハ管内ノ静謐ヲ維持スル為兵力ヲ要スルトキハ之ヲ関東長官ニ具状スヘシ但シ非常急変ノ場合ニ際シテハ直ニ其ノ附近ノ守備隊長ニ兵力ノ使用ヲ請求スルコトヲ得
第二十三条 民政署長ハ所部ノ職員ヲ監督シ判任官ノ進退ヲ関東長官ニ具状ス
第二十四条 民政署長ハ署中処務ノ細則ヲ設クルコトヲ得
第二十五条 民政署長事故アルトキハ上席ノ官吏其ノ職務ヲ代理ス
民政署長ハ部下ノ官吏ヲシテ其ノ事務ノ一部ヲ臨時代理セシムルコトヲ得
第二十六条 警務官ハ上司ノ命ヲ承ケ警察ニ関スル事務ヲ掌理ス
第二十七条 秘書官ハ関東長官ノ命ヲ承ケ機密ニ関スル事務ヲ掌ル
第二十八条 学務官ハ上司ノ命ヲ承ケ教育ニ関スル事務ヲ掌リ兼ネテ学事ノ視察ヲ掌ル
第二十九条 技師ハ上司ノ命ヲ承ケ技術ヲ掌ル
第三十条 警視ハ上司ノ命ヲ承ケ警察ニ関スル事務ヲ掌ル
第三十一条 翻訳官ハ上司ノ命ヲ承ケ翻訳通弁ヲ掌ル
第三十二条 属ハ上司ノ指揮ヲ承ケ庶務ニ従事ス
第三十三条 視学ハ上司ノ指揮ヲ承ケ学事ニ関スル視察及事務ニ従事ス
第三十四条 警部及警部補ハ上司ノ指揮ヲ承ケ警察ニ関スル事務ニ従事シ部下ノ巡査ヲ指揮監督ス
第三十五条 技手ハ上司ノ指揮ヲ承ケ技術ニ従事ス
第三十六条 翻訳生ハ上司ノ指揮ヲ承ケ翻訳通弁ニ従事ス
第三十七条 民政支署長ハ警視、属又ハ警部ヲ以テ之ニ充ツ
第三十八条 民政支署長事故アルトキハ上席官吏其ノ職務ヲ代理ス
第三十九条 関東庁ニ巡査ヲ置ク判任官ノ待遇トス
巡査ノ定員ハ関東長官之ヲ定ム
附 則
本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
関東都督府官制ハ之ヲ廃止ス
本令施行ノ際現ニ関東都督府ノ参事官、事務官、秘書官、学務官、技師、警視、翻訳官、属、視学、警部、技手、翻訳生、警部補又ハ巡査ノ職ニ在ル者ハ関東庁ノ参事官、事務官、秘書官、学務官、技師、警視、翻訳官、属、視学、警部、技手、翻訳生、警部補又ハ巡査ニ同官等俸給ヲ以テ任セラレタルモノトス
別ニ定ムルモノヲ除クノ外他ノ勅令中関東都督府トアルハ関東庁、関東都督又ハ都督トアルハ関東長官トス
他ノ勅令中任用給与等ニ付テノ在職年数ニ関スル規定ノ適用ニ付テハ関東都督府職員トシテノ在職ハ之ヲ関東庁職員トシテノ在職ト看做ス