朕樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ關東都督府官制ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十九年七月三十一日
內閣總理大臣 侯爵 西園寺公望
陸軍大臣 寺內正毅
外務大臣 子爵 林董
勅令第百九十六號
關東都督府官制
第一條 關東州ニ關東都督府ヲ置ク
第二條 關東都督府ニ關東都督ヲ置ク
都督ハ關東州ヲ管轄シ竝南滿洲ニ於ケル鐵道線路ノ保護及取締ノ事ヲ掌ル
都督ハ南滿洲鐵道株式會社ノ業務ヲ監督ス
第三條 都督ハ親任トス陸軍大將又ハ陸軍中將ヲ以テ之ニ充ツ
第四條 都督ハ部下軍隊ヲ統率シ外務大臣ノ監督ヲ承ケ諸般ノ政務ヲ統理ス
第五條 都督ハ特別ノ委任ニ依リ淸國地方官憲トノ交涉事務ヲ掌理ス
第六條 都督ハ軍政及陸軍軍人軍屬ノ人事ニ關シテハ陸軍大臣、作戰及動員計畫ニ關シテハ參謀總長、軍隊敎育ニ關シテハ敎育總監ノ區處ヲ承ク
第七條 都督ハ其ノ職權又ハ特別ノ委任ニ依リ都督府令ヲ發シ之ニ禁錮一年以下又ハ罰金二百圓以內ノ罰則ヲ附スルコトヲ得
第八條 都督ハ安寧秩序ヲ保持スル爲臨時緊急ヲ要スル場合ニ於テ前條ノ制限ヲ超ユル罰則ヲ附シタル命令ヲ發スルコトヲ得
前項ニ依リ發シタル命令ハ發布後直ニ外務大臣ヲ經由シテ勅裁ヲ請フヘシ若シ勅裁ヲ得サルトキハ都督ハ直ニ其ノ命令ノ將來ニ向テ效力ナキコトヲ公布スヘシ
第九條 都督ハ其ノ管轄區域內ノ防備ノ事ヲ掌ル
第十條 都督ハ其ノ管轄區域內ノ安寧秩序ヲ保持シ又ハ鐵道線路ノ保護及取締ヲ行フ爲必要ト認ムルトキハ兵力ヲ使用スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ直ニ外務大臣、陸軍大臣及參謀總長ニ之ヲ報吿スヘシ
第十一條 都督ハ所轄官廳ノ命令又ハ處分ニシテ成規ニ違ヒ、公益ヲ害シ又ハ權限ヲ犯スモノアリト認ムルトキハ其ノ命令又ハ處分ヲ停止シ又ハ之ヲ取消スコトヲ得
第十二條 都督ハ所部ノ官吏ヲ統督シ奏任文官ノ進退ハ外務大臣ニ由リ內閣總理大臣ヲ經テ之ヲ上奏シ判任文官以下ノ進退ハ之ヲ專行ス
第十三條 都督ハ外務大臣ニ由リ內閣總理大臣ヲ經テ所部文官ノ敍位敍勳ヲ上奏ス
第十四條 都督ハ所部ノ文官ヲ懲戒ス其ノ勅任官ニ係ルモノ及奏任官ノ免官ハ外務大臣ニ由リ內閣總理大臣ヲ經テ之ヲ上奏ス
第十五條 都督府ニ都督官房ヲ置ク
都督官房ニ副官一人及祕書官專任一人ヲ置キ機密ニ關スル事務ヲ掌ラシム
副官ハ陸軍佐尉官ヲ以テ之ニ充ツ
祕書官ハ奏任トス
第十六條 都督府ニ民政部及陸軍部ヲ置ク
陸軍部ニ關スル條例ハ別ニ之ヲ定ム
第十七條 民政部ハ軍事行政ヲ除クノ外一切ノ行政事務ヲ掌ル
第十八條 民政部ニ左ノ四課及一署ヲ置ク其ノ事務ノ分掌ハ都督之ヲ定ム
庶務課
警務課
財務課
土木課
監獄署
第十九條 關東州ヲ三區ニ分チ各區ニ民政署ヲ置ク其ノ位置、名稱及管轄區域ハ都督之ヲ定ム
第二十條 民政署及監獄署ノ事務ヲ分掌セシムル爲須要ノ地ニ民政支署及監獄支署ヲ置ク其ノ位置、名稱及管轄區域ハ都督之ヲ定ム
第二十一條 都督府ニ左ノ職員ヲ置ク
民政長官 一人 勅任
參事官 專任二人 奏任
事務官 專任六人 奏任
民政署長 專任三人 奏任
技師 專任十八人 奏任
警視 專任六人 奏任
典獄 專任一人 奏任
翻譯官 專任三人 奏任
警部
技手
監吏
監獄醫
翻譯生
專任二百二十人 判任
第二十二條 民政長官ハ都督ヲ佐ケ民政部ノ事務ヲ總理ス
第二十三條 參事官ハ上官ノ命ヲ承ケ審議立案ヲ掌リ又ハ各課ノ事務ヲ助ク
第二十四條 事務官ハ各課ノ長ト爲リ又ハ各課ニ分屬シ上官ノ命ヲ承ケ事務ヲ掌理ス
第二十五條 民政署長ハ都督ノ指揮監督ヲ承ケ法律命令ヲ施行シ部內ノ行政事務ヲ管理ス
第二十六條 民政署長ハ部內ノ行政事務ニ付其ノ職權又ハ特別ノ委任ニ依リ管內一般又ハ其ノ一部ニ民政署令ヲ發シ之ニ十圓以內ノ罰金又ハ拘留ノ罰則ヲ附スルコトヲ得
第二十七條 民政署長ハ管內ノ靜謐ヲ維持スル爲兵力ヲ要スルトキハ之ヲ都督ニ具狀スヘシ但シ非常急變ノ場合ニ際シテハ直ニ其ノ附近ノ守備隊長ニ出兵ヲ要求スルコトヲ得
第二十八條 民政署長ハ所部ノ官吏ヲ監督シ判任官ノ進退ヲ都督ニ具狀ス
第二十九條 民政署長ハ署中處務ノ細則ヲ設クルコトヲ得
第三十條 民政署長事故アルトキハ上席ノ官吏其ノ職務ヲ代理ス
民政署長ハ部下ノ官吏ヲシテ其ノ事務ノ一部ヲ臨時代理セシムルコトヲ得
第三十一條 技師ハ上官ノ命ヲ承ケ技術ヲ掌ル
第三十二條 警視ハ上官ノ命ヲ承ケ警察ニ關スル事務ヲ掌理ス
第三十三條 典獄ハ監獄署ノ長ト爲リ上官ノ命ヲ承ケ監獄事務ヲ掌理ス
第三十四條 翻譯官ハ上官ノ命ヲ承ケ翻譯通辯ヲ掌ル
第三十五條 屬ハ上官ノ指揮ヲ承ケ庶務ニ從事ス
第三十六條 警部ハ上官ノ指揮ヲ承ケ警察ニ關スル事務ニ從事シ部下ノ巡査ヲ指揮監督ス
第三十七條 技手ハ上官ノ指揮ヲ承ケ技術ニ從事ス
第三十八條 監吏ハ監獄署ニ屬シ上官ノ指揮ヲ承ケ監獄ノ戒護及庶務ニ從事シ部下ノ看守ヲ指揮監督ス
第三十九條 監獄醫ハ監獄署ニ屬シ上官ノ指揮ヲ承ケ醫務ニ從事ス
第四十條 翻譯生ハ上官ノ指揮ヲ承ケ翻譯通辯ニ從事ス
第四十一條 民政支署長ハ警視、屬又ハ警部、監獄支署長ハ監吏ヲ以テ之ニ充ツ
第四十二條 民政支署長事故アルトキハ上席官吏其ノ職務ヲ代理ス
第四十三條 都督府ニ巡査及看守ヲ置ク判任官ノ待遇トス
巡査及看守ノ定員ハ都督之ヲ定ム
附 則
本令ハ明治三十九年九月一日ヨリ之ヲ施行ス
朕枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ関東都督府官制ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十九年七月三十一日
内閣総理大臣 侯爵 西園寺公望
陸軍大臣 寺内正毅
外務大臣 子爵 林董
勅令第百九十六号
関東都督府官制
第一条 関東州ニ関東都督府ヲ置ク
第二条 関東都督府ニ関東都督ヲ置ク
都督ハ関東州ヲ管轄シ並南満洲ニ於ケル鉄道線路ノ保護及取締ノ事ヲ掌ル
都督ハ南満洲鉄道株式会社ノ業務ヲ監督ス
第三条 都督ハ親任トス陸軍大将又ハ陸軍中将ヲ以テ之ニ充ツ
第四条 都督ハ部下軍隊ヲ統率シ外務大臣ノ監督ヲ承ケ諸般ノ政務ヲ統理ス
第五条 都督ハ特別ノ委任ニ依リ清国地方官憲トノ交渉事務ヲ掌理ス
第六条 都督ハ軍政及陸軍軍人軍属ノ人事ニ関シテハ陸軍大臣、作戦及動員計画ニ関シテハ参謀総長、軍隊教育ニ関シテハ教育総監ノ区処ヲ承ク
第七条 都督ハ其ノ職権又ハ特別ノ委任ニ依リ都督府令ヲ発シ之ニ禁錮一年以下又ハ罰金二百円以内ノ罰則ヲ附スルコトヲ得
第八条 都督ハ安寧秩序ヲ保持スル為臨時緊急ヲ要スル場合ニ於テ前条ノ制限ヲ超ユル罰則ヲ附シタル命令ヲ発スルコトヲ得
前項ニ依リ発シタル命令ハ発布後直ニ外務大臣ヲ経由シテ勅裁ヲ請フヘシ若シ勅裁ヲ得サルトキハ都督ハ直ニ其ノ命令ノ将来ニ向テ効力ナキコトヲ公布スヘシ
第九条 都督ハ其ノ管轄区域内ノ防備ノ事ヲ掌ル
第十条 都督ハ其ノ管轄区域内ノ安寧秩序ヲ保持シ又ハ鉄道線路ノ保護及取締ヲ行フ為必要ト認ムルトキハ兵力ヲ使用スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ直ニ外務大臣、陸軍大臣及参謀総長ニ之ヲ報告スヘシ
第十一条 都督ハ所轄官庁ノ命令又ハ処分ニシテ成規ニ違ヒ、公益ヲ害シ又ハ権限ヲ犯スモノアリト認ムルトキハ其ノ命令又ハ処分ヲ停止シ又ハ之ヲ取消スコトヲ得
第十二条 都督ハ所部ノ官吏ヲ統督シ奏任文官ノ進退ハ外務大臣ニ由リ内閣総理大臣ヲ経テ之ヲ上奏シ判任文官以下ノ進退ハ之ヲ専行ス
第十三条 都督ハ外務大臣ニ由リ内閣総理大臣ヲ経テ所部文官ノ叙位叙勲ヲ上奏ス
第十四条 都督ハ所部ノ文官ヲ懲戒ス其ノ勅任官ニ係ルモノ及奏任官ノ免官ハ外務大臣ニ由リ内閣総理大臣ヲ経テ之ヲ上奏ス
第十五条 都督府ニ都督官房ヲ置ク
都督官房ニ副官一人及秘書官専任一人ヲ置キ機密ニ関スル事務ヲ掌ラシム
副官ハ陸軍佐尉官ヲ以テ之ニ充ツ
秘書官ハ奏任トス
第十六条 都督府ニ民政部及陸軍部ヲ置ク
陸軍部ニ関スル条例ハ別ニ之ヲ定ム
第十七条 民政部ハ軍事行政ヲ除クノ外一切ノ行政事務ヲ掌ル
第十八条 民政部ニ左ノ四課及一署ヲ置ク其ノ事務ノ分掌ハ都督之ヲ定ム
庶務課
警務課
財務課
土木課
監獄署
第十九条 関東州ヲ三区ニ分チ各区ニ民政署ヲ置ク其ノ位置、名称及管轄区域ハ都督之ヲ定ム
第二十条 民政署及監獄署ノ事務ヲ分掌セシムル為須要ノ地ニ民政支署及監獄支署ヲ置ク其ノ位置、名称及管轄区域ハ都督之ヲ定ム
第二十一条 都督府ニ左ノ職員ヲ置ク
民政長官 一人 勅任
参事官 専任二人 奏任
事務官 専任六人 奏任
民政署長 専任三人 奏任
技師 専任十八人 奏任
警視 専任六人 奏任
典獄 専任一人 奏任
翻訳官 専任三人 奏任
警部
技手
監吏
監獄医
翻訳生
専任二百二十人 判任
第二十二条 民政長官ハ都督ヲ佐ケ民政部ノ事務ヲ総理ス
第二十三条 参事官ハ上官ノ命ヲ承ケ審議立案ヲ掌リ又ハ各課ノ事務ヲ助ク
第二十四条 事務官ハ各課ノ長ト為リ又ハ各課ニ分属シ上官ノ命ヲ承ケ事務ヲ掌理ス
第二十五条 民政署長ハ都督ノ指揮監督ヲ承ケ法律命令ヲ施行シ部内ノ行政事務ヲ管理ス
第二十六条 民政署長ハ部内ノ行政事務ニ付其ノ職権又ハ特別ノ委任ニ依リ管内一般又ハ其ノ一部ニ民政署令ヲ発シ之ニ十円以内ノ罰金又ハ拘留ノ罰則ヲ附スルコトヲ得
第二十七条 民政署長ハ管内ノ静謐ヲ維持スル為兵力ヲ要スルトキハ之ヲ都督ニ具状スヘシ但シ非常急変ノ場合ニ際シテハ直ニ其ノ附近ノ守備隊長ニ出兵ヲ要求スルコトヲ得
第二十八条 民政署長ハ所部ノ官吏ヲ監督シ判任官ノ進退ヲ都督ニ具状ス
第二十九条 民政署長ハ署中処務ノ細則ヲ設クルコトヲ得
第三十条 民政署長事故アルトキハ上席ノ官吏其ノ職務ヲ代理ス
民政署長ハ部下ノ官吏ヲシテ其ノ事務ノ一部ヲ臨時代理セシムルコトヲ得
第三十一条 技師ハ上官ノ命ヲ承ケ技術ヲ掌ル
第三十二条 警視ハ上官ノ命ヲ承ケ警察ニ関スル事務ヲ掌理ス
第三十三条 典獄ハ監獄署ノ長ト為リ上官ノ命ヲ承ケ監獄事務ヲ掌理ス
第三十四条 翻訳官ハ上官ノ命ヲ承ケ翻訳通弁ヲ掌ル
第三十五条 属ハ上官ノ指揮ヲ承ケ庶務ニ従事ス
第三十六条 警部ハ上官ノ指揮ヲ承ケ警察ニ関スル事務ニ従事シ部下ノ巡査ヲ指揮監督ス
第三十七条 技手ハ上官ノ指揮ヲ承ケ技術ニ従事ス
第三十八条 監吏ハ監獄署ニ属シ上官ノ指揮ヲ承ケ監獄ノ戒護及庶務ニ従事シ部下ノ看守ヲ指揮監督ス
第三十九条 監獄医ハ監獄署ニ属シ上官ノ指揮ヲ承ケ医務ニ従事ス
第四十条 翻訳生ハ上官ノ指揮ヲ承ケ翻訳通弁ニ従事ス
第四十一条 民政支署長ハ警視、属又ハ警部、監獄支署長ハ監吏ヲ以テ之ニ充ツ
第四十二条 民政支署長事故アルトキハ上席官吏其ノ職務ヲ代理ス
第四十三条 都督府ニ巡査及看守ヲ置ク判任官ノ待遇トス
巡査及看守ノ定員ハ都督之ヲ定ム
附 則
本令ハ明治三十九年九月一日ヨリ之ヲ施行ス