朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル水利組合法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十一年四月十一日
內閣總理大臣 侯爵 西園寺公望
內務大臣 原敬
法律第五十號
水利組合法
第一章 總則
第一條 水利土功ニ關スル事業ニシテ特別ノ事情ニ依リ府縣其ノ他ノ地方公共團體ノ事業ト爲スコトヲ得サルモノアル場合ニ於テハ水利組合ヲ設置スルコトヲ得
第二條 水利組合ハ法人トス
第三條 水利組合ハ組合規約ヲ設ケ組合ニ關スル重要ノ事項ヲ規定スヘシ
組合規約ハ之ヲ吿示スヘシ其ノ改正アリタルトキ亦同シ
第四條 水利組合ハ分チテ左ノ二種トス
一 普通水利組合
二 水害豫防組合
第五條 普通水利組合ハ灌漑排水ニ關スル事業ノ爲設置スルモノトス
第六條 普通水利組合ハ組合事業ノ爲利益ヲ受クル土地ヲ以テ區域トシ其ノ區域內ニ於テ土地ヲ所有スル者ヲ以テ組合員トス但シ舊慣アルモノハ其ノ舊慣ニ依リ區域ヲ畫スルコトヲ得
第七條 水害豫防組合ハ水害防禦ニ關スル事業ノ爲設置スルモノトス
第八條 水害豫防組合ハ水害ヲ受クヘキ土地ヲ以テ區域トシ其ノ區域內ニ於テ土地、家屋及組合規約ニ指定スル工作物ヲ所有スル者ヲ以テ組合員トス但シ舊慣アルモノハ其ノ舊慣ニ依リ區域ヲ畫スルコトヲ得
第九條 水害豫防組合ニ於テ其ノ區域全部ニ涉リ灌漑排水ニ關スル事業ノ必要アルトキハ組合會ノ議決ニ依リ府縣知事ノ許可ヲ得テ其ノ事業ヲ兼營スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ灌漑排水ノ事業ニ關スル部分ニ付テハ普通水利組合ノ規定ヲ準用ス
第二章 組合ノ設置及廢止
第十條 水利組合ヲ設置セムトスルトキハ府縣知事ニ於テ組合區域ヲ指定シ關係地ノ郡長市町村長ノ內一人又ハ數人ニ創立委員ヲ命スヘシ但シ普通水利組合ノ設置ニ付テハ組合員タルヘキ者五人以上ノ申請又ハ組合事業ニ關係アル郡長又ハ市町村長ノ具申アル場合ニ限ル
第三十三條第三項ノ規定ハ創立委員ニ之ヲ準用ス
第十一條 創立委員ハ組合規約案ヲ調製シ關係者ノ總會議ニ付スヘシ關係者百人以上アルトキハ府縣知事ノ許可ヲ得テ便宜總代人ヲ選ハシメ其ノ集會ヲ以テ總會議ニ充ツルコトヲ得
總會議又ハ總代人會ノ議長ハ創立委員ヲ以テ之ニ充ツ創立委員數人アルトキハ府縣知事其ノ中一人ヲ指定ス
總會議又ハ總代人會ハ關係者又ハ總代人ノ三分ノ二以上出席スルニ非サレハ會議ヲ開クコトヲ得ス但シ特別ノ事情アルトキハ創立委員ハ府縣知事ノ定ムル所ニ依リ關係者又ハ總代人ノ代人ヲ許スコトヲ得
總會議又ハ總代人會ノ議事ハ過半數ヲ以テ之ヲ決ス可否同數ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
總會議費又ハ總代人會費其ノ他創立ニ關スル費用ハ組合設置ノ後組合費ヨリ之ヲ支辨スヘシ
第十二條 創立委員ハ組合規約ノ議決ヲ經タルトキ府縣知事ニ其ノ許可ヲ請フヘシ
第十三條 普通水利組合關係者ノ總會議又ハ總代人會ニ於テ議決シタル組合規約又ハ其ノ議決ノ方法法令ニ背キ又ハ公益ニ害アリト認ムルトキハ府縣知事ハ理由ヲ示シテ之ヲ再議ニ付シ仍其ノ議決ヲ改メサルトキハ內務大臣ノ指揮ヲ請フヘシ
水害豫防組合關係者ノ總會議若ハ總代人會成立セス又ハ其ノ議決スヘキ事件ヲ議決セス又ハ議決スルモ其ノ議決公益ニ害アリト認ムルトキハ府縣知事ニ於テ其ノ議決スヘキ事件ヲ處分スルコトヲ得
第十四條 水利組合ハ組合規約ノ許可又ハ前條第二項ニ依ル組合規約ノ設定ニ依リ成立ス
前項ノ場合ニ於テハ府縣知事ハ組合設置ノ旨ヲ吿示スヘシ
第十五條 水利組合ノ廢置分合又ハ區域ノ變更ハ普通水利組合ニ在リテハ組合會ノ議決又ハ協議ニ依リ府縣知事ノ許可ヲ得テ之ヲ行ヒ水害豫防組合ニ在リテハ組合會ノ意見ヲ徵シ府縣知事之ヲ行フ
前項ノ場合ニ於テ組合規約ノ設定若ハ改正又ハ財產處分ヲ要スルトキハ組合會ノ議決又ハ協議ニ依リ府縣知事ノ許可ヲ受クヘシ但シ水害豫防組合ニ於テ協議調ハサルトキハ府縣知事之ヲ定ム
水利組合ハ民法上ノ義務ヲ完了スルニ非サレハ之ヲ廢止スルコトヲ得ス
普通水利組合ノ區域ヲ變更スル場合ニ於テ新ニ組合區域ニ編入セラルル土地アルトキハ管理者ハ其ノ土地ノ關係者ノ同意又ハ關係者ノ總會議若ハ總代人會ノ同意ヲ得ルヲ要ス
前項總會議又ハ總代人會ニ關シテハ第十一條ノ規定ヲ準用ス但シ創立委員ノ職務ハ管理者之ヲ行フ
第十六條 水利組合ノ廢置分合又ハ區域ノ變更アリタルトキハ府縣知事ハ之ヲ吿示スヘシ
第三章 組合ノ會議
第十七條 水利組合ニ組合會ヲ置ク
第十八條 組合會議員ハ其ノ被選擧權アル者ニ就キ選擧人之ヲ選擧ス
組合會議員選擧人被選擧人ノ資格議員ノ定數任期及選擧ニ關スル事項ハ組合規約ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
組合會議員ノ選擧ヲ終リタルトキハ管理者ハ直ニ選擧錄ノ謄本ヲ添ヘ之ヲ第一次監督官廳ニ報吿スヘシ
當選者定リタルトキハ管理者ハ直ニ其ノ住所氏名ヲ吿示シ併セテ之ヲ第一次監督官廳ニ報吿スヘシ
組合會議員ノ選擧ニ付テハ衆議院議員選擧ニ關スル罰則ヲ準用ス
第十九條 選擧ノ規定ニ違反スルコトアルトキハ選擧ノ結果ニ異動ヲ生スルノ虞アル場合ニ限リ其ノ選擧ノ全部又ハ一部ヲ無效トス
當選者ニシテ被選擧權ヲ有セサルトキハ其ノ當選ヲ無效トス
第二十條 選擧人選擧又ハ當選ノ效力ニ關シ異議アルトキハ選擧ニ關シテハ選擧ノ日ヨリ當選ニ關シテハ吿示ノ日ヨリ七日以內ニ之ヲ管理者ニ申立ツルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ管理者ハ十四日以內ニ組合會ノ決定ニ付スヘシ組合會ハ其ノ送付ヲ受ケタル日ヨリ十四日以內ニ之ヲ決定スヘシ
前項組合會ノ決定ニ不服アル者ハ第一次監督官廳ニ訴願スルコトヲ得
第一次監督官廳ニ於テ選擧又ハ當選ノ效力ニ關シ異議アルトキハ選擧又ハ當選ノ報吿ヲ受ケタル日ヨリ二十日以內ニ之ヲ處分スルコトヲ得
前項ノ處分アリタルトキハ其ノ前後ニ爲シタル異議ノ申立及組合會ノ決定ハ無效トス
本條第一次監督官廳ノ處分又ハ裁決ニ不服アル者ハ府縣知事ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得但シ府縣知事カ第一次監督官廳タル場合ニ於テ其ノ處分又ハ裁決ニ不服アル者ハ直ニ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
組合會議員ハ選擧又ハ當選ニ關スル異議ノ決定訴願ノ裁決確定シ又ハ判決アル迄ハ會議ニ列席シ議事ニ參與スルノ權ヲ失ハス
第二十一條 組合會議員ニシテ被選擧權ヲ有セサル者ハ其ノ職ヲ失フ其ノ被選擧權ニ關スル異議ハ組合會之ヲ決定ス
管理者ニ於テ組合會議員中被選擧權ヲ有セサル者アリト認ムルトキハ之ヲ組合會ノ決定ニ付スヘシ
本條組合會ノ決定ニ不服アル者ハ第一次監督官廳ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ府縣知事ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得但シ府縣知事カ第一次監督官廳タル場合ニ於テ其ノ裁決ニ不服アル者ハ直ニ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第二十條第六項ノ規定ハ本條ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十二條 前二條ニ規定スル異議ノ決定訴願ノ裁決及第二十條第三項ノ處分ハ直ニ之ヲ吿示スヘシ
第二十三條 組合會ハ組合ニ關スル事件ヲ議決ス
組合會ノ議決スヘキ事件ノ槪目左ノ如シ
一 組合規約ヲ設定改正スル事
二 組合費ヲ以テ支辨スヘキ事業
三 歲入出豫算ヲ定ムル事
四 決算報吿ヲ認定スル事
五 法律勅令ニ定ムルモノヲ除クノ外使用料手數料加入金組合費及夫役現品ノ賦課徵收ニ關スル事
六 不動產ノ管理處分及取得ニ關スル事
七 積立基金ノ設置管理及處分ニ關スル事
八 歲入出豫算ヲ以テ定ムルモノヲ除クノ外新ニ義務ノ負擔ヲ爲シ及權利ノ抛棄ヲ爲ス事
九 財產及營造物ノ管理方法ヲ定ムル事
十 組合吏員ノ身元保證ニ關スル事
十一 組合ニ係ル訴願訴訟及和解ニ關スル事
第二十四條 組合會ハ組合ノ事務ニ關スル書類及計算書ヲ檢閱シ管理者ノ報吿ヲ請求シテ事務ノ管理議決ノ執行及出納ヲ檢査スルコトヲ得
組合會ハ議員中ヨリ委員ヲ選擧シ管理者又ハ其ノ指定シタル吏員立會ノ上實地ニ就キ前項組合會ノ權限ニ屬スル事件ヲ行ハシムルコトヲ得
第二十五條 組合會ハ管理者ヲ以テ議長トス管理者故障アルトキハ其ノ代理者議長ノ職務ヲ代理ス管理者及其ノ代理者共ニ故障アルトキハ臨時ニ議員中ヨリ假議長ヲ選擧スヘシ
組合會ハ組合ノ區域數市町村ニ涉ルモノニ在リテハ組合規約ヲ以テ議員中ヨリ議長副議長各一人ヲ選擧スルコトヲ得此ノ場合ニ於テ議長故障アルトキハ副議長之ニ代リ議長副議長共ニ故障アルトキハ前項ノ例ニ依ル
前項選擧ニ關スル事項ハ組合規約ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
議員中ヨリ議長ヲ選擧スル組合ニ在リテハ議長ハ會議錄ヲ添ヘ會議ノ結果ヲ管理者ニ報吿スヘシ
第二十六條 管理者及其ノ委任又ハ囑託ヲ受ケタル者ハ會議ニ於テ議事ニ付辯明ヲ爲スコトヲ得
第二十七條 組合會ハ每年一囘通常會ヲ開キ其ノ他臨時ノ必要アル每ニ臨時會ヲ開ク
臨時會ニ付スヘキ事件ハ招集ノ吿知ト共ニ之ヲ吿知スヘシ但シ其ノ開會中急施ヲ要スル事件アルトキハ管理者ハ直ニ之ヲ其ノ會議ニ付スルコトヲ得
組合會ハ管理者之ヲ招集ス議員定數三分ノ一以上ノ請求アルトキハ管理者ハ之ヲ招集スヘシ
管理者ハ必要アル場合ニ於テハ會期ヲ定メテ組合會ヲ招集スルコトヲ得
組合會ノ會議ハ公開ス但シ左ノ場合ハ此ノ限ニ在ラス
一 管理者ヨリ傍聽禁止ノ要求ヲ受ケタルトキ
二 議長ニ於テ傍聽禁止ノ必要アリト認メタルトキ
三 議員三人以上ノ發議ニ依リ傍聽禁止ヲ可決シタルトキ
前項第三號ニ依ル發議ハ討論ヲ用井ス其ノ可否ヲ決スヘシ
招集ハ開會ノ日ヨリ少クトモ三日前ニ吿知スヘシ但シ急施ヲ要スル場合ハ此ノ限ニ在ラス
組合會ハ管理者之ヲ開閉ス
第二十八條 組合會ハ議員定數ノ半數以上出席スルニ非サレハ會議ヲ開クコトヲ得ス但シ同一ノ事件ニ付招集再囘ニ至ルモ仍半數ニ滿タサルトキ又ハ招集ニ應スルモ出席議員定數ヲ闕キ議長ニ於テ更ニ出席ヲ催吿シ仍半數ニ滿タサルトキハ此ノ限ニ在ラス
第二十九條 組合會ノ議事ハ過半數ヲ以テ決ス可否同數ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
第三十條 組合規約ノ設定改正及普通水利組合ノ廢置分合又ハ區域ノ變更ニ關スル議決ハ議員定數ノ三分ノ二以上ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
第三十一條 組合會ノ職務權限及處務規程ニ關シテハ本章中規定スルモノノ外市制町村制ノ規定ヲ準用ス
第三十二條 特別ノ事情アル組合ニ於テハ府縣知事ハ組合會ヲ設ケス組合員ノ總會ヲ以テ之ニ充ツルコトヲ得但シ總會ニ出席スヘキ組合員ニ關シテハ組合規約ノ定ムル所ニ依ル
組合總會ニ關シテハ組合會ニ關スル規定ヲ準用ス
第四章 組合ノ管理
第三十三條 府縣知事ハ水利組合關係地ノ郡長又ハ市町村長ノ內一人ヲ指定シ其ノ組合ノ事務ヲ管理セシムヘシ
府縣知事ニ於テ管理者ヲ指定シタルトキハ直ニ之ヲ吿示スヘシ
管理者タル郡長又ハ市町村長故障アルトキハ其ノ代理者之ヲ代理ス
組合ノ區域數市町村ニ涉ル場合ニ於テ選擧區又ハ選擧分會ヲ設ケタルトキハ各市町村長又ハ其ノ代理者ハ管理者ノ求ニ依リ議員選擧ニ關スル事務ヲ管理スヘシ組合員及組合費賦課物件ノ異動ニ關スル事務ニ付テモ亦同シ
第三十四條 組合ノ出納其ノ他會計事務ハ郡長管理者タル場合ハ郡長ノ指定シタル郡書記ヲシテ之ヲ掌ラシメ市町村長管理者タル場合ハ其ノ市町村收入役ヲシテ之ヲ掌ラシムヘシ
特別ノ事情アル場合ニ於テハ管理者ニ於テ第三十六條ノ吏員中ニ就キ會計事務ヲ掌ル者ヲ定ムルコトヲ得
前項會計事務ヲ掌ル吏員ニ付テハ第一次監督官廳ノ認可ヲ受クヘシ
第三十五條 組合ハ組合規約ヲ以テ臨時又ハ常設ノ委員ヲ置クコトヲ得
委員ノ組織選任任期等ニ關スル事項ハ組合規約ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
第三十六條 組合ハ書記技術員其ノ他ノ有給吏員ヲ置クコトヲ得
吏員ハ管理者之ヲ任免ス
第三十七條 管理者ハ組合ヲ代表シ組合一切ノ事務ヲ擔任ス
管理者ノ擔任スル事務ノ槪目左ノ如シ
一 組合會ノ議決ヲ經ヘキ事件ニ付其ノ議案ヲ發シ及其ノ議決ヲ執行スル事
二 財產及營造物ヲ管理スル事
三 收入支出ヲ命令シ及會計ヲ監督スル事
四 證書及公文書類ヲ保管スル事
五 法令又ハ組合會ノ議決ニ依リ使用料手數料加入金組合費及夫役現品ヲ賦課徵收スル事
第三十八條 管理者ハ組合吏員ヲ指揮監督シ其ノ任命ニ係ル組合吏員ニ對シテハ懲戒ヲ行フコトヲ得其ノ懲戒處分ハ譴責及五圓以下ノ過怠金トス
第三十九條 組合會ノ議決若ハ選擧其ノ權限ヲ越エ又ハ法令若ハ組合規約ニ背クト認ムルトキハ管理者ハ其ノ意見ニ依リ又ハ監督官廳ノ指揮ニ依リ理由ヲ示シ其ノ執行ヲ要スルモノニ在リテハ其ノ執行ヲ停止シ之ヲ再議ニ付シ又ハ再選擧ヲ行ハシメ仍議決ニ付テハ其ノ議決ヲ改メサルトキハ第一次監督官廳ノ指揮ヲ請フヘシ但シ場合ニ依リ再議ニ付セスシテ直ニ指揮ヲ請フコトヲ得
監督官廳ハ前項ノ議決又ハ選擧ヲ取消スコトヲ得但シ指揮ノ申請アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス
前二項郡長ノ處分ニ不服アル組合會ハ府縣知事ニ訴願シ其ノ裁決又ハ前二項府縣知事ノ處分ニ不服アル組合會ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
組合會ノ議決公益ヲ害シ又ハ組合ノ收支ニ關シ不適當ナリト認ムルトキハ管理者ハ其ノ意見ニ依リ又ハ監督官廳ノ指揮ニ依リ理由ヲ示シ其ノ執行ヲ要スルモノニ在リテハ其ノ執行ヲ停止シ之ヲ再議ニ付シ仍其ノ議決ヲ改メサルトキハ第一次監督官廳ノ指揮ヲ請フヘシ但シ場合ニ依リ再議ニ付セスシテ直ニ指揮ヲ請フコトヲ得
前項第一次監督官廳ノ處分ニ不服アル組合會ハ府縣知事ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アルトキハ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得但シ府縣知事カ第一次監督官廳タル場合ニ於テ其ノ裁決ニ不服アルトキハ直ニ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得
第四十條 組合會成立セス又ハ第二十八條但書ノ場合ニ於テ仍會議ヲ開クコト能ハサルトキハ管理者ハ第一次監督官廳ニ具狀シテ指揮ヲ請ヒ其ノ議決スヘキ事件ヲ處分スルコトヲ得
組合會ニ於テ其ノ議決スヘキ事件ヲ議決セサルトキハ前項ノ例ニ依ル
組合會ノ決定スヘキ事件ニ關シテハ前二項ノ例ニ依ル此ノ場合ニ於ケル管理者ノ處分ニ關シテハ各本條ノ規定ニ準シ訴願及訴訟ヲ提起スルコトヲ得
本條ノ處分ハ次囘ノ會議ニ於テ之ヲ組合會ニ報吿スヘシ
第四十一條 組合會ノ權限ニ屬スル事件ニ關シ臨時急施ヲ要スル場合ニ於テ組合會成立セス又ハ管理者ニ於テ之ヲ招集スルノ暇ナシト認ムルトキハ管理者ハ專決處分シ次囘ノ會議ニ於テ之ヲ組合會ニ報吿スヘシ
前項管理者ノ處分ニ關シテハ各本條ノ規定ニ準シ訴願及訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第四十二條 委員ハ管理者ノ指揮監督ヲ承ケ財產又ハ營造物ヲ管理シ其ノ他組合事務ノ一部ヲ調査シ又ハ一時ノ委託ニ依リ事務ヲ處辨ス
第四十三條 吏員ハ管理者ノ命ヲ承ケ庶務ニ從事ス
第四十四條 組合會議員及委員ハ職務ノ爲要スル費用ノ辨償ヲ受クルコトヲ得郡長又ハ市町村長ニ於テ管理者タル職務ヲ行フ爲要スル費用第三十三條第四項ノ事務ヲ行フ爲要スル費用及郡書記又ハ市町村收入役ニ於テ組合ノ會計事務ヲ行フ爲要スル費用ニ付亦同シ
吏員ニハ退隱料退職給與金死亡給與金及遺族扶助料ヲ支給スルコトヲ得
第四十五條 費用辨償額給料額旅費額及其ノ支給方法ハ組合會ノ議決ヲ經第一次監督官廳ノ許可ヲ得テ之ヲ定ム
退隱料退職給與金死亡給與金遺族扶助料及其ノ支給方法ハ組合會ノ議決ヲ經內務大臣ノ許可ヲ得テ之ヲ定ム
第四十六條 費用辨償給料旅費退隱料退職給與金死亡給與金及遺族扶助料ハ組合ノ負擔トス
第五章 組合ノ財務
第四十七條 組合ハ其ノ必要ナル費用及法律勅令ニ依リ組合ノ負擔ニ屬スル費用ヲ支辨スル義務ヲ負フ
第四十八條 普通水利組合費ハ土地ニ對シテ之ヲ賦課シ水害豫防組合費ハ土地及家屋其ノ他第八條ニ依ル工作物ニ對シテ之ヲ賦課スルモノトス但シ特別ノ事情アルモノハ土地ニ對シテノミ之ヲ賦課スルコトヲ得
普通水利組合ニ於テハ新ニ區域內ニ編入スル土地ニ付組合費ノ外一時ノ加入金ヲ徵收スルコトヲ得
第四十九條 組合ハ其ノ事業ノ爲夫役現品ヲ組合員ニ賦課スルコトヲ得
水害豫防組合ニ在リテハ夫役ニ限リ其ノ區域內ノ總居住者ニ之ヲ賦課スルコトヲ得
夫役現品及其ノ代納ニ關スル規定ハ組合規約ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
第五十條 非常災害ノ爲必要アルトキハ組合ハ他人ノ土地ヲ一時使用シ又ハ其ノ土石竹木其ノ他ノ現品ヲ使用シ若ハ收用スルコトヲ得但シ其ノ損失ヲ補償スルコトヲ要ス
水害豫防組合ニ於テハ前項ノ外出水ノ爲危險アルトキニ限リ管理者警察官又ハ監督官廳ニ於テ組合區域內ノ總居住者ヲシテ防禦ニ從事セシムルコトヲ得
第一項ニ依リ補償スヘキ金額ハ協議ニ依リ之ヲ定ム協議調ハサルトキハ鑑定人ノ意見ヲ徵シ府縣知事之ヲ決定ス其ノ決定ニ不服アル者ハ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得
第一項土地ノ一時使用ニ關スル組合ノ處分ニ不服アル者ハ第一次監督官廳ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ府縣知事ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得但シ府縣知事カ第一次監督官廳タル場合ニ於テ其ノ裁決ニ不服アル者ハ直ニ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得
第五十一條 組合內ノ一部ニ對シ特ニ利益アル事件ニ關シテハ組合ハ不均一ノ賦課ヲ爲シ又ハ組合內ノ一部ニ對シ特ニ賦課スルコトヲ得
舊慣アルモノハ組合規約ヲ以テ特別ノ賦課方法ヲ定ムルコトヲ得
第五十二條 組合費ノ賦課ヲ免除スヘキモノニ關シテハ市町村稅ノ例ニ依ル
第五十三條 組合ハ其ノ營造物ヲ事業ノ妨害ト爲ラサル範圍內ニ於テ他ノ目的ニ使用セシムルコトヲ得
前項ノ使用ニ付テハ使用料ヲ徵收スルコトヲ得
第五十四條 組合ノ區域數市町村ニ涉ルトキハ各市町村ハ管理者ノ求ニ依リ其ノ市町村內ニ於ケル組合費其ノ他組合ノ收入ノ賦課徵收ヲ爲スヘシ
前項組合費其ノ他組合ノ收入ノ徵收ニ關シテハ組合規約ノ規定ニ依リ徵收金百分ノ四以內ヲ其ノ市町村ニ交付スルコトヲ得
第五十五條 市町村ハ避クヘカラサル災害ニ因リ旣收ノ組合費其ノ他組合ノ收入ヲ失ヒタルトキハ其ノ納入義務ノ免除ヲ組合ニ請求スルコトヲ得
組合ニ於テ前項ノ請求ニ應セサルトキハ市町村ハ其ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ十四日以內ニ組合ノ第一次監督官廳ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アルトキハ府縣知事ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アルトキハ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得但シ府縣知事カ第一次監督官廳タル場合ニ於テ其ノ裁決ニ不服アルトキハ直ニ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ對シテハ組合ヨリモ亦訴願ヲ提起スルコトヲ得
本條ノ裁決書ハ之ヲ市町村及組合ニ交付スヘシ
第五十六條 組合費其ノ他組合ノ收入ノ督促及滯納處分ニ關シテハ市町村稅ノ例ニ依ル
前項ノ場合ニ關シテハ第五十四條第一項ノ規定ヲ準用ス
第五十七條 組合費其ノ他組合ノ收入ノ督促ニ付テハ手數料ヲ徵收スルコトヲ得
前條第二項ノ場合ニ於テハ前項ノ督促手數料ヲ其ノ市町村ニ交付スヘシ
組合ノ徵收金ハ市町村ノ徵收金ニ次テ先取特權ヲ有シ其ノ追徵還付及時效ニ付テハ國稅ノ例ニ依ル
第五十八條 管理者ハ組合費ノ賦課ヲ受ケタル者ノ中特別ノ事情アル者ニ對シ會計年度內ニ限リ其ノ納付ノ延期ヲ許スコトヲ得其ノ年度ヲ越ユル場合ハ組合會ノ議決ヲ經ヘシ
管理者ハ特別ノ事情アル者ニ限リ組合會ノ議決ヲ經テ組合費ヲ減免スルコトヲ得
第五十九條 組合費及夫役現品ノ賦課ヲ受ケタル者其ノ賦課ニ付違法又ハ錯誤アリト認ムルトキハ賦課令狀ノ交付後三月以內ニ管理者ニ異議ノ申立ヲ爲スコトヲ得
加入金使用料及手數料ノ徵收ニ付テモ亦前項ノ例ニ依ル
本條ノ異議ハ組合會ノ決定ニ付スヘシ其ノ決定ニ不服アル者ハ第一次監督官廳ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ府縣知事ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得但シ府縣知事カ第一次監督官廳タル場合ニ於テ其ノ裁決ニ不服アル者ハ直ニ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
組合費其ノ他組合ノ收入ノ滯納處分ニ不服アル者ハ第一次監督官廳ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ府縣知事ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得但シ府縣知事カ第一次監督官廳タル場合ニ於テ其ノ裁決ニ不服アル者ハ直ニ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
組合費其ノ他組合ノ收入ノ滯納處分中差押物件ノ公賣ハ處分ノ確定ニ至ル迄執行ヲ停止ス
第六十條 組合ハ特定ノ目的ノ爲積立基金ヲ設クルコトヲ得
第六十一條 組合ハ其ノ事業ノ關係上必要アル場合ニ於テハ寄附又ハ補助ヲ爲スコトヲ得
第六十二條 組合ハ其ノ負債ヲ償還スル爲又ハ組合永久ノ利益トナルヘキ支出ヲ要スル爲又ハ天災事變等ノ爲已ムヲ得サル場合ニ限リ組合債ヲ起スコトヲ得
組合債ヲ起スニ付組合會ノ議決ヲ經ルトキハ併セテ起債ノ方法利息ノ定率及償還ノ方法ニ付議決ヲ經ヘシ
組合ハ豫算內ノ支出ヲ爲ス爲本條ノ例ニ依ラス一時ノ借入金ヲ爲スコトヲ得
前項ノ借入金ハ其ノ會計年度內ノ收入ヲ以テ償還スヘシ
第六十三條 管理者ハ每會計年度ノ歲入出豫算ヲ調製シ會計年度前通常組合會ノ議決ニ付スヘシ
管理者ハ組合會ノ議決ヲ經テ旣定豫算ノ追加又ハ更正ヲ爲スコトヲ得
組合ノ會計年度ハ政府ノ會計年度ニ同シ
第六十四條 組合費ヲ以テ支辨スル事件ニシテ數年ヲ期シテ施行スヘキモノ又ハ數年ヲ期シテ其ノ費用ヲ支出スヘキモノハ組合會ノ議決ヲ經テ其ノ年期間各年度ノ支出額ヲ定メ繼續費ト爲スコトヲ得
第六十五條 豫算外ノ支出又ハ豫算超過ノ支出ニ充ツル爲豫備費ヲ設クヘシ
豫備費ハ組合會ノ否決シタル費途ニ充ツルコトヲ得ス
第六十六條 豫算ハ議決ヲ經タル後直ニ之ヲ第一次監督官廳ニ報吿シ且其ノ要領ヲ吿示スヘシ
第六十七條 組合會ニ於テ豫算ヲ議決シタルトキハ管理者ヨリ其ノ謄本ヲ組合ノ會計事務ヲ掌ル官吏吏員ニ交付スヘシ
會計事務ヲ掌ル官吏吏員ハ管理者又ハ監督官廳ノ命令アルニ非サレハ支拂ヲ爲スコトヲ得ス又命令ヲ受クルモ支出ノ豫算ナキトキ又ハ豫備費支出及費目流用其ノ他財務ニ關スル規定ニ依ラサルトキ亦同シ
第六十八條 組合ノ支拂金ニ關スル時效ニ付テハ政府ノ支拂金ノ例ニ依ル
第六十九條 組合ノ出納ハ翌年度六月三十日ヲ以テ閉鎖ス
決算ハ出納閉鎖後一月以內ニ證書類ヲ併セテ會計事務ヲ掌ル官吏吏員ヨリ之ヲ管理者ニ提出スヘシ管理者ハ之ヲ審査シ意見ヲ付シテ次ノ通常會迄ニ組合會ノ認定ニ付スヘシ
決算及其ノ認定ニ關スル組合會ノ議決ハ之ヲ第一次監督官廳ニ報吿シ且決算ハ其ノ要領ヲ吿示スヘシ
決算ノ認定ニ關スル會議ニ於テハ管理者及其ノ代理者共ニ議長タルコトヲ得ス
第七十條 豫算調製ノ式及費目流用其ノ他財務ニ關シ必要ナル規定ハ內務大臣之ヲ定ム
第六章 組合ノ聯合
第七十一條 水利組合ニ於テ共同事業ヲ爲スノ必要アルトキハ其ノ協議ニ依リ府縣知事ノ許可ヲ得テ水利組合ノ聯合ヲ設クルコトヲ得
水利組合聯合ハ之ヲ法人トス
水利組合聯合ニシテ其ノ聯合組合ノ數ヲ增減シ又ハ共同事業ノ變更ヲ爲サムトスルトキハ組合ノ協議ニ依リ府縣知事ノ許可ヲ受クヘシ其ノ聯合ヲ解カムトスルトキ亦同シ
水利組合聯合ニ關シテハ水利組合ニ關スル規定ヲ準用ス其ノ準用シ難キ事項及特ニ必要ナル事項ハ內務大臣ノ許可ヲ得テ府縣知事之ヲ定ム
第七章 組合ノ監督
第七十二條 組合ハ第一次ニ於テ郡長之ヲ監督シ第二次ニ於テ府縣知事之ヲ監督シ第三次ニ於テ內務大臣之ヲ監督ス但シ組合ノ區域郡市若ハ數郡ニ涉リ又ハ市內ニ止ル場合及郡內ニ止ルモ郡長管理者タル場合ハ第一次ニ於テ府縣知事之ヲ監督シ第二次ニ於テ內務大臣之ヲ監督ス
監督官廳ハ組合事務ノ監督上必要ナル命令ヲ發シ處分ヲ爲スコトヲ得
上級監督官廳ハ下級監督官廳ノ組合事務ニ關シテ爲シタル命令又ハ處分ヲ停止シ又ハ之ヲ取消スコトヲ得
第七十三條 本法ニ規定スル異議ノ申立又ハ訴願ノ提起ハ處分ヲ爲シ又ハ決定書若ハ裁決書ノ交付ヲ受ケタル日ヨリ其ノ交付ヲ受ケサル者ハ吿示ノ日ヨリ十四日以內ニ之ヲ爲スヘシ但シ本法中別ニ期間ヲ定メタルモノハ此ノ限ニ在ラス
本法ニ規定スル行政訴訟ハ處分ヲ爲シ又ハ裁決書ノ交付ヲ受ケタル日ヨリ其ノ交付ヲ受ケサル者ハ吿示ノ日ヨリ二十一日以內ニ之ヲ提起スヘシ
本法ニ規定スル異議ノ決定ハ文書ヲ以テ之ヲ爲シ理由ヲ付シ之ヲ申立人ニ交付スヘシ
本法ニ規定スル異議ノ申立ニ關スル期間ノ計算ニ付テハ訴願法ノ規定ニ依ル
異議ノ申立アルモ處分ノ執行ハ之ヲ停止セス但シ行政廳ハ其ノ職權ニ依リ又ハ關係者ノ請求ニ依リ必要ト認ムルトキハ之ヲ停止スルコトヲ得
第七十四條 監督官廳ハ必要アル場合ニ於テハ期間ヲ定メテ組合會ノ停會ヲ命スルコトヲ得
第七十五條 內務大臣ハ組合會ノ解散ヲ命スルコトヲ得
組合會解散ノ場合ニ於テハ三月以內ニ議員ヲ選擧スヘシ
第七十六條 組合ニ於テ法律勅令ニ依テ負擔シ又ハ當該官廳ノ職權ニ依テ命スル所ノ費用ヲ豫算ニ載セサルトキハ第一次監督官廳ハ理由ヲ示シテ其ノ費用ヲ豫算ニ加フルコトヲ得
組合又ハ管理者其ノ他ノ官吏吏員ニ於テ執行スヘキ事件ヲ執行セサルトキハ第一次監督官廳ニ於テ之ヲ執行スルコトヲ得但シ其ノ費用ハ組合ノ負擔トス
本條ノ處分ニ不服アル組合又ハ管理者其ノ他ノ官吏吏員ハ府縣知事ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アルトキハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得但シ府縣知事カ第一次監督官廳タル場合ニ於テ其ノ處分又ハ裁決ニ不服アルトキハ直ニ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第七十七條 組合ニ於テ負債ヲ起シ竝起債ノ方法利息ノ定率及償還ノ方法ヲ定メ又ハ變更セムトスルトキハ內務大臣及大藏大臣ノ許可ヲ受クヘシ但シ第六十二條第三項ノ借入金ハ此ノ限ニ在ラス
第七十八條 左ニ揭クル事件ハ府縣知事ノ許可ヲ受クヘシ
一 組合規約ヲ設定改正スル事
二 不動產ノ管理及處分ニ關スル事
三 不均一ノ賦課ヲ爲シ又ハ組合內ノ一部ニ對シ特ニ賦課ヲ爲ス事
四 加入金使用料手數料ヲ新設シ增額シ又ハ變更スル事
五 積立基金ノ設置管理及處分ニ關スル事
六 寄附及補助ヲ爲ス事
七 繼續費ヲ定メ又ハ變更スル事
第七十九條 組合ノ事務ニ關シ監督官廳ノ許可ヲ受クヘキ事件ニ付テハ監督官廳ハ許可申請ノ趣旨ニ反セスト認ムル範圍內ニ於テ更正シテ許可ヲ與フルコトヲ得
第八十條 組合ノ事務ニ關シ監督官廳ノ許可ヲ受クヘキ事件中其ノ輕易ナルモノハ命令ノ規定ニ依リ其ノ許可ノ職權ヲ下級監督官廳ニ委任スルコトヲ得
第八十一條 監督官廳タル府縣知事郡長ハ第三十五條ノ委員及第三十六條ノ吏員ニ對シ懲戒ヲ行フコトヲ得其ノ懲戒處分ハ譴責二十五圓以下ノ過怠金及解職トス
郡長ノ行ヒタル解職ニ不服アル者ハ府縣知事ニ訴願シ其ノ裁決又ハ府縣知事ノ行ヒタル解職ニ不服アル者ハ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得
府縣知事ハ吏員ノ解職ヲ行ハムトスル前其ノ停職ヲ命シ且場合ニ依リ給料又ハ報酬ヲ支給セシメサルコトヲ得
懲戒ニ依リ解職セラレタル者ハ二年間水利組合ノ公職ニ選擧セラレ又ハ任命セラルルコトヲ得ス
第八十二條 組合吏員ノ服務紀律賠償責任身元保證及事務引繼ニ關スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第八章 雜則
第八十三條 本法ノ規定ニ依リ初テ議員ヲ選擧スル場合ニ於テ組合會ノ議決スヘキ事項ハ其ノ成立ニ至ル迄管理者ニ於テ之ヲ行フヘシ
第八十四條 本法ノ規定ニ依リ府縣知事ノ職權ニ屬スル事件ニシテ數府縣ニ涉ルモノアルトキハ關係府縣知事ノ具狀ニ依リ內務大臣ニ於テ其ノ事件ヲ管理スヘキ府縣知事ヲ指定スヘシ
第八十五條 本法ハ市制町村制ヲ施行セサル地ニハ之ヲ施行セス勅令ヲ以テ別ニ其ノ制ヲ定ム
附 則
第八十六條 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
水利組合條例ハ之ヲ廢止ス
第八十七條 本法施行ノ際現ニ存スル水利組合ハ本法ニ依リ設置シタルモノト看做ス
第八十八條 水利組合條例ニ依リ爲シタル諸般ノ行爲ハ仍其ノ效力ヲ有ス
第八十九條 水利組合條例ニ依リ爲シタル處分ニ對スル異議訴願又ハ訴訟ニ關シテハ水利組合條例ニ依ル
第九十條 本法施行ノ際現ニ存スル舊町村會又ハ水利土功會ニシテ其ノ目的トスル事業カ本法ノ規定ニ牴觸セサルトキハ之ヲ本法ノ規定ニ依リ設置シタル水利組合ト看做ス
前項ノ場合ニ於テ從來ノ吏員及議員ハ總テ其ノ職ヲ失フモノトス
第一項ノ水利組合及其ノ管理者ハ府縣知事ニ於テ直ニ之ヲ吿示スヘシ
前項ノ吿示アリタルトキハ管理者ハ遲滯ナク組合規約ヲ定メ府縣知事ノ許可ヲ受クヘシ
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル水利組合法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十一年四月十一日
内閣総理大臣 侯爵 西園寺公望
内務大臣 原敬
法律第五十号
水利組合法
第一章 総則
第一条 水利土功ニ関スル事業ニシテ特別ノ事情ニ依リ府県其ノ他ノ地方公共団体ノ事業ト為スコトヲ得サルモノアル場合ニ於テハ水利組合ヲ設置スルコトヲ得
第二条 水利組合ハ法人トス
第三条 水利組合ハ組合規約ヲ設ケ組合ニ関スル重要ノ事項ヲ規定スヘシ
組合規約ハ之ヲ告示スヘシ其ノ改正アリタルトキ亦同シ
第四条 水利組合ハ分チテ左ノ二種トス
一 普通水利組合
二 水害予防組合
第五条 普通水利組合ハ灌漑排水ニ関スル事業ノ為設置スルモノトス
第六条 普通水利組合ハ組合事業ノ為利益ヲ受クル土地ヲ以テ区域トシ其ノ区域内ニ於テ土地ヲ所有スル者ヲ以テ組合員トス但シ旧慣アルモノハ其ノ旧慣ニ依リ区域ヲ画スルコトヲ得
第七条 水害予防組合ハ水害防禦ニ関スル事業ノ為設置スルモノトス
第八条 水害予防組合ハ水害ヲ受クヘキ土地ヲ以テ区域トシ其ノ区域内ニ於テ土地、家屋及組合規約ニ指定スル工作物ヲ所有スル者ヲ以テ組合員トス但シ旧慣アルモノハ其ノ旧慣ニ依リ区域ヲ画スルコトヲ得
第九条 水害予防組合ニ於テ其ノ区域全部ニ渉リ灌漑排水ニ関スル事業ノ必要アルトキハ組合会ノ議決ニ依リ府県知事ノ許可ヲ得テ其ノ事業ヲ兼営スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ灌漑排水ノ事業ニ関スル部分ニ付テハ普通水利組合ノ規定ヲ準用ス
第二章 組合ノ設置及廃止
第十条 水利組合ヲ設置セムトスルトキハ府県知事ニ於テ組合区域ヲ指定シ関係地ノ郡長市町村長ノ内一人又ハ数人ニ創立委員ヲ命スヘシ但シ普通水利組合ノ設置ニ付テハ組合員タルヘキ者五人以上ノ申請又ハ組合事業ニ関係アル郡長又ハ市町村長ノ具申アル場合ニ限ル
第三十三条第三項ノ規定ハ創立委員ニ之ヲ準用ス
第十一条 創立委員ハ組合規約案ヲ調製シ関係者ノ総会議ニ付スヘシ関係者百人以上アルトキハ府県知事ノ許可ヲ得テ便宜総代人ヲ選ハシメ其ノ集会ヲ以テ総会議ニ充ツルコトヲ得
総会議又ハ総代人会ノ議長ハ創立委員ヲ以テ之ニ充ツ創立委員数人アルトキハ府県知事其ノ中一人ヲ指定ス
総会議又ハ総代人会ハ関係者又ハ総代人ノ三分ノ二以上出席スルニ非サレハ会議ヲ開クコトヲ得ス但シ特別ノ事情アルトキハ創立委員ハ府県知事ノ定ムル所ニ依リ関係者又ハ総代人ノ代人ヲ許スコトヲ得
総会議又ハ総代人会ノ議事ハ過半数ヲ以テ之ヲ決ス可否同数ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
総会議費又ハ総代人会費其ノ他創立ニ関スル費用ハ組合設置ノ後組合費ヨリ之ヲ支弁スヘシ
第十二条 創立委員ハ組合規約ノ議決ヲ経タルトキ府県知事ニ其ノ許可ヲ請フヘシ
第十三条 普通水利組合関係者ノ総会議又ハ総代人会ニ於テ議決シタル組合規約又ハ其ノ議決ノ方法法令ニ背キ又ハ公益ニ害アリト認ムルトキハ府県知事ハ理由ヲ示シテ之ヲ再議ニ付シ仍其ノ議決ヲ改メサルトキハ内務大臣ノ指揮ヲ請フヘシ
水害予防組合関係者ノ総会議若ハ総代人会成立セス又ハ其ノ議決スヘキ事件ヲ議決セス又ハ議決スルモ其ノ議決公益ニ害アリト認ムルトキハ府県知事ニ於テ其ノ議決スヘキ事件ヲ処分スルコトヲ得
第十四条 水利組合ハ組合規約ノ許可又ハ前条第二項ニ依ル組合規約ノ設定ニ依リ成立ス
前項ノ場合ニ於テハ府県知事ハ組合設置ノ旨ヲ告示スヘシ
第十五条 水利組合ノ廃置分合又ハ区域ノ変更ハ普通水利組合ニ在リテハ組合会ノ議決又ハ協議ニ依リ府県知事ノ許可ヲ得テ之ヲ行ヒ水害予防組合ニ在リテハ組合会ノ意見ヲ徴シ府県知事之ヲ行フ
前項ノ場合ニ於テ組合規約ノ設定若ハ改正又ハ財産処分ヲ要スルトキハ組合会ノ議決又ハ協議ニ依リ府県知事ノ許可ヲ受クヘシ但シ水害予防組合ニ於テ協議調ハサルトキハ府県知事之ヲ定ム
水利組合ハ民法上ノ義務ヲ完了スルニ非サレハ之ヲ廃止スルコトヲ得ス
普通水利組合ノ区域ヲ変更スル場合ニ於テ新ニ組合区域ニ編入セラルル土地アルトキハ管理者ハ其ノ土地ノ関係者ノ同意又ハ関係者ノ総会議若ハ総代人会ノ同意ヲ得ルヲ要ス
前項総会議又ハ総代人会ニ関シテハ第十一条ノ規定ヲ準用ス但シ創立委員ノ職務ハ管理者之ヲ行フ
第十六条 水利組合ノ廃置分合又ハ区域ノ変更アリタルトキハ府県知事ハ之ヲ告示スヘシ
第三章 組合ノ会議
第十七条 水利組合ニ組合会ヲ置ク
第十八条 組合会議員ハ其ノ被選挙権アル者ニ就キ選挙人之ヲ選挙ス
組合会議員選挙人被選挙人ノ資格議員ノ定数任期及選挙ニ関スル事項ハ組合規約ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
組合会議員ノ選挙ヲ終リタルトキハ管理者ハ直ニ選挙録ノ謄本ヲ添ヘ之ヲ第一次監督官庁ニ報告スヘシ
当選者定リタルトキハ管理者ハ直ニ其ノ住所氏名ヲ告示シ併セテ之ヲ第一次監督官庁ニ報告スヘシ
組合会議員ノ選挙ニ付テハ衆議院議員選挙ニ関スル罰則ヲ準用ス
第十九条 選挙ノ規定ニ違反スルコトアルトキハ選挙ノ結果ニ異動ヲ生スルノ虞アル場合ニ限リ其ノ選挙ノ全部又ハ一部ヲ無効トス
当選者ニシテ被選挙権ヲ有セサルトキハ其ノ当選ヲ無効トス
第二十条 選挙人選挙又ハ当選ノ効力ニ関シ異議アルトキハ選挙ニ関シテハ選挙ノ日ヨリ当選ニ関シテハ告示ノ日ヨリ七日以内ニ之ヲ管理者ニ申立ツルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ管理者ハ十四日以内ニ組合会ノ決定ニ付スヘシ組合会ハ其ノ送付ヲ受ケタル日ヨリ十四日以内ニ之ヲ決定スヘシ
前項組合会ノ決定ニ不服アル者ハ第一次監督官庁ニ訴願スルコトヲ得
第一次監督官庁ニ於テ選挙又ハ当選ノ効力ニ関シ異議アルトキハ選挙又ハ当選ノ報告ヲ受ケタル日ヨリ二十日以内ニ之ヲ処分スルコトヲ得
前項ノ処分アリタルトキハ其ノ前後ニ為シタル異議ノ申立及組合会ノ決定ハ無効トス
本条第一次監督官庁ノ処分又ハ裁決ニ不服アル者ハ府県知事ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得但シ府県知事カ第一次監督官庁タル場合ニ於テ其ノ処分又ハ裁決ニ不服アル者ハ直ニ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
組合会議員ハ選挙又ハ当選ニ関スル異議ノ決定訴願ノ裁決確定シ又ハ判決アル迄ハ会議ニ列席シ議事ニ参与スルノ権ヲ失ハス
第二十一条 組合会議員ニシテ被選挙権ヲ有セサル者ハ其ノ職ヲ失フ其ノ被選挙権ニ関スル異議ハ組合会之ヲ決定ス
管理者ニ於テ組合会議員中被選挙権ヲ有セサル者アリト認ムルトキハ之ヲ組合会ノ決定ニ付スヘシ
本条組合会ノ決定ニ不服アル者ハ第一次監督官庁ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ府県知事ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得但シ府県知事カ第一次監督官庁タル場合ニ於テ其ノ裁決ニ不服アル者ハ直ニ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第二十条第六項ノ規定ハ本条ノ場合ニ之ヲ準用ス
第二十二条 前二条ニ規定スル異議ノ決定訴願ノ裁決及第二十条第三項ノ処分ハ直ニ之ヲ告示スヘシ
第二十三条 組合会ハ組合ニ関スル事件ヲ議決ス
組合会ノ議決スヘキ事件ノ概目左ノ如シ
一 組合規約ヲ設定改正スル事
二 組合費ヲ以テ支弁スヘキ事業
三 歳入出予算ヲ定ムル事
四 決算報告ヲ認定スル事
五 法律勅令ニ定ムルモノヲ除クノ外使用料手数料加入金組合費及夫役現品ノ賦課徴収ニ関スル事
六 不動産ノ管理処分及取得ニ関スル事
七 積立基金ノ設置管理及処分ニ関スル事
八 歳入出予算ヲ以テ定ムルモノヲ除クノ外新ニ義務ノ負担ヲ為シ及権利ノ抛棄ヲ為ス事
九 財産及営造物ノ管理方法ヲ定ムル事
十 組合吏員ノ身元保証ニ関スル事
十一 組合ニ係ル訴願訴訟及和解ニ関スル事
第二十四条 組合会ハ組合ノ事務ニ関スル書類及計算書ヲ検閲シ管理者ノ報告ヲ請求シテ事務ノ管理議決ノ執行及出納ヲ検査スルコトヲ得
組合会ハ議員中ヨリ委員ヲ選挙シ管理者又ハ其ノ指定シタル吏員立会ノ上実地ニ就キ前項組合会ノ権限ニ属スル事件ヲ行ハシムルコトヲ得
第二十五条 組合会ハ管理者ヲ以テ議長トス管理者故障アルトキハ其ノ代理者議長ノ職務ヲ代理ス管理者及其ノ代理者共ニ故障アルトキハ臨時ニ議員中ヨリ仮議長ヲ選挙スヘシ
組合会ハ組合ノ区域数市町村ニ渉ルモノニ在リテハ組合規約ヲ以テ議員中ヨリ議長副議長各一人ヲ選挙スルコトヲ得此ノ場合ニ於テ議長故障アルトキハ副議長之ニ代リ議長副議長共ニ故障アルトキハ前項ノ例ニ依ル
前項選挙ニ関スル事項ハ組合規約ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
議員中ヨリ議長ヲ選挙スル組合ニ在リテハ議長ハ会議録ヲ添ヘ会議ノ結果ヲ管理者ニ報告スヘシ
第二十六条 管理者及其ノ委任又ハ嘱託ヲ受ケタル者ハ会議ニ於テ議事ニ付弁明ヲ為スコトヲ得
第二十七条 組合会ハ毎年一回通常会ヲ開キ其ノ他臨時ノ必要アル毎ニ臨時会ヲ開ク
臨時会ニ付スヘキ事件ハ招集ノ告知ト共ニ之ヲ告知スヘシ但シ其ノ開会中急施ヲ要スル事件アルトキハ管理者ハ直ニ之ヲ其ノ会議ニ付スルコトヲ得
組合会ハ管理者之ヲ招集ス議員定数三分ノ一以上ノ請求アルトキハ管理者ハ之ヲ招集スヘシ
管理者ハ必要アル場合ニ於テハ会期ヲ定メテ組合会ヲ招集スルコトヲ得
組合会ノ会議ハ公開ス但シ左ノ場合ハ此ノ限ニ在ラス
一 管理者ヨリ傍聴禁止ノ要求ヲ受ケタルトキ
二 議長ニ於テ傍聴禁止ノ必要アリト認メタルトキ
三 議員三人以上ノ発議ニ依リ傍聴禁止ヲ可決シタルトキ
前項第三号ニ依ル発議ハ討論ヲ用井ス其ノ可否ヲ決スヘシ
招集ハ開会ノ日ヨリ少クトモ三日前ニ告知スヘシ但シ急施ヲ要スル場合ハ此ノ限ニ在ラス
組合会ハ管理者之ヲ開閉ス
第二十八条 組合会ハ議員定数ノ半数以上出席スルニ非サレハ会議ヲ開クコトヲ得ス但シ同一ノ事件ニ付招集再回ニ至ルモ仍半数ニ満タサルトキ又ハ招集ニ応スルモ出席議員定数ヲ闕キ議長ニ於テ更ニ出席ヲ催告シ仍半数ニ満タサルトキハ此ノ限ニ在ラス
第二十九条 組合会ノ議事ハ過半数ヲ以テ決ス可否同数ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
第三十条 組合規約ノ設定改正及普通水利組合ノ廃置分合又ハ区域ノ変更ニ関スル議決ハ議員定数ノ三分ノ二以上ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
第三十一条 組合会ノ職務権限及処務規程ニ関シテハ本章中規定スルモノノ外市制町村制ノ規定ヲ準用ス
第三十二条 特別ノ事情アル組合ニ於テハ府県知事ハ組合会ヲ設ケス組合員ノ総会ヲ以テ之ニ充ツルコトヲ得但シ総会ニ出席スヘキ組合員ニ関シテハ組合規約ノ定ムル所ニ依ル
組合総会ニ関シテハ組合会ニ関スル規定ヲ準用ス
第四章 組合ノ管理
第三十三条 府県知事ハ水利組合関係地ノ郡長又ハ市町村長ノ内一人ヲ指定シ其ノ組合ノ事務ヲ管理セシムヘシ
府県知事ニ於テ管理者ヲ指定シタルトキハ直ニ之ヲ告示スヘシ
管理者タル郡長又ハ市町村長故障アルトキハ其ノ代理者之ヲ代理ス
組合ノ区域数市町村ニ渉ル場合ニ於テ選挙区又ハ選挙分会ヲ設ケタルトキハ各市町村長又ハ其ノ代理者ハ管理者ノ求ニ依リ議員選挙ニ関スル事務ヲ管理スヘシ組合員及組合費賦課物件ノ異動ニ関スル事務ニ付テモ亦同シ
第三十四条 組合ノ出納其ノ他会計事務ハ郡長管理者タル場合ハ郡長ノ指定シタル郡書記ヲシテ之ヲ掌ラシメ市町村長管理者タル場合ハ其ノ市町村収入役ヲシテ之ヲ掌ラシムヘシ
特別ノ事情アル場合ニ於テハ管理者ニ於テ第三十六条ノ吏員中ニ就キ会計事務ヲ掌ル者ヲ定ムルコトヲ得
前項会計事務ヲ掌ル吏員ニ付テハ第一次監督官庁ノ認可ヲ受クヘシ
第三十五条 組合ハ組合規約ヲ以テ臨時又ハ常設ノ委員ヲ置クコトヲ得
委員ノ組織選任任期等ニ関スル事項ハ組合規約ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
第三十六条 組合ハ書記技術員其ノ他ノ有給吏員ヲ置クコトヲ得
吏員ハ管理者之ヲ任免ス
第三十七条 管理者ハ組合ヲ代表シ組合一切ノ事務ヲ担任ス
管理者ノ担任スル事務ノ概目左ノ如シ
一 組合会ノ議決ヲ経ヘキ事件ニ付其ノ議案ヲ発シ及其ノ議決ヲ執行スル事
二 財産及営造物ヲ管理スル事
三 収入支出ヲ命令シ及会計ヲ監督スル事
四 証書及公文書類ヲ保管スル事
五 法令又ハ組合会ノ議決ニ依リ使用料手数料加入金組合費及夫役現品ヲ賦課徴収スル事
第三十八条 管理者ハ組合吏員ヲ指揮監督シ其ノ任命ニ係ル組合吏員ニ対シテハ懲戒ヲ行フコトヲ得其ノ懲戒処分ハ譴責及五円以下ノ過怠金トス
第三十九条 組合会ノ議決若ハ選挙其ノ権限ヲ越エ又ハ法令若ハ組合規約ニ背クト認ムルトキハ管理者ハ其ノ意見ニ依リ又ハ監督官庁ノ指揮ニ依リ理由ヲ示シ其ノ執行ヲ要スルモノニ在リテハ其ノ執行ヲ停止シ之ヲ再議ニ付シ又ハ再選挙ヲ行ハシメ仍議決ニ付テハ其ノ議決ヲ改メサルトキハ第一次監督官庁ノ指揮ヲ請フヘシ但シ場合ニ依リ再議ニ付セスシテ直ニ指揮ヲ請フコトヲ得
監督官庁ハ前項ノ議決又ハ選挙ヲ取消スコトヲ得但シ指揮ノ申請アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス
前二項郡長ノ処分ニ不服アル組合会ハ府県知事ニ訴願シ其ノ裁決又ハ前二項府県知事ノ処分ニ不服アル組合会ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
組合会ノ議決公益ヲ害シ又ハ組合ノ収支ニ関シ不適当ナリト認ムルトキハ管理者ハ其ノ意見ニ依リ又ハ監督官庁ノ指揮ニ依リ理由ヲ示シ其ノ執行ヲ要スルモノニ在リテハ其ノ執行ヲ停止シ之ヲ再議ニ付シ仍其ノ議決ヲ改メサルトキハ第一次監督官庁ノ指揮ヲ請フヘシ但シ場合ニ依リ再議ニ付セスシテ直ニ指揮ヲ請フコトヲ得
前項第一次監督官庁ノ処分ニ不服アル組合会ハ府県知事ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アルトキハ内務大臣ニ訴願スルコトヲ得但シ府県知事カ第一次監督官庁タル場合ニ於テ其ノ裁決ニ不服アルトキハ直ニ内務大臣ニ訴願スルコトヲ得
第四十条 組合会成立セス又ハ第二十八条但書ノ場合ニ於テ仍会議ヲ開クコト能ハサルトキハ管理者ハ第一次監督官庁ニ具状シテ指揮ヲ請ヒ其ノ議決スヘキ事件ヲ処分スルコトヲ得
組合会ニ於テ其ノ議決スヘキ事件ヲ議決セサルトキハ前項ノ例ニ依ル
組合会ノ決定スヘキ事件ニ関シテハ前二項ノ例ニ依ル此ノ場合ニ於ケル管理者ノ処分ニ関シテハ各本条ノ規定ニ準シ訴願及訴訟ヲ提起スルコトヲ得
本条ノ処分ハ次回ノ会議ニ於テ之ヲ組合会ニ報告スヘシ
第四十一条 組合会ノ権限ニ属スル事件ニ関シ臨時急施ヲ要スル場合ニ於テ組合会成立セス又ハ管理者ニ於テ之ヲ招集スルノ暇ナシト認ムルトキハ管理者ハ専決処分シ次回ノ会議ニ於テ之ヲ組合会ニ報告スヘシ
前項管理者ノ処分ニ関シテハ各本条ノ規定ニ準シ訴願及訴訟ヲ提起スルコトヲ得
第四十二条 委員ハ管理者ノ指揮監督ヲ承ケ財産又ハ営造物ヲ管理シ其ノ他組合事務ノ一部ヲ調査シ又ハ一時ノ委託ニ依リ事務ヲ処弁ス
第四十三条 吏員ハ管理者ノ命ヲ承ケ庶務ニ従事ス
第四十四条 組合会議員及委員ハ職務ノ為要スル費用ノ弁償ヲ受クルコトヲ得郡長又ハ市町村長ニ於テ管理者タル職務ヲ行フ為要スル費用第三十三条第四項ノ事務ヲ行フ為要スル費用及郡書記又ハ市町村収入役ニ於テ組合ノ会計事務ヲ行フ為要スル費用ニ付亦同シ
吏員ニハ退隠料退職給与金死亡給与金及遺族扶助料ヲ支給スルコトヲ得
第四十五条 費用弁償額給料額旅費額及其ノ支給方法ハ組合会ノ議決ヲ経第一次監督官庁ノ許可ヲ得テ之ヲ定ム
退隠料退職給与金死亡給与金遺族扶助料及其ノ支給方法ハ組合会ノ議決ヲ経内務大臣ノ許可ヲ得テ之ヲ定ム
第四十六条 費用弁償給料旅費退隠料退職給与金死亡給与金及遺族扶助料ハ組合ノ負担トス
第五章 組合ノ財務
第四十七条 組合ハ其ノ必要ナル費用及法律勅令ニ依リ組合ノ負担ニ属スル費用ヲ支弁スル義務ヲ負フ
第四十八条 普通水利組合費ハ土地ニ対シテ之ヲ賦課シ水害予防組合費ハ土地及家屋其ノ他第八条ニ依ル工作物ニ対シテ之ヲ賦課スルモノトス但シ特別ノ事情アルモノハ土地ニ対シテノミ之ヲ賦課スルコトヲ得
普通水利組合ニ於テハ新ニ区域内ニ編入スル土地ニ付組合費ノ外一時ノ加入金ヲ徴収スルコトヲ得
第四十九条 組合ハ其ノ事業ノ為夫役現品ヲ組合員ニ賦課スルコトヲ得
水害予防組合ニ在リテハ夫役ニ限リ其ノ区域内ノ総居住者ニ之ヲ賦課スルコトヲ得
夫役現品及其ノ代納ニ関スル規定ハ組合規約ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
第五十条 非常災害ノ為必要アルトキハ組合ハ他人ノ土地ヲ一時使用シ又ハ其ノ土石竹木其ノ他ノ現品ヲ使用シ若ハ収用スルコトヲ得但シ其ノ損失ヲ補償スルコトヲ要ス
水害予防組合ニ於テハ前項ノ外出水ノ為危険アルトキニ限リ管理者警察官又ハ監督官庁ニ於テ組合区域内ノ総居住者ヲシテ防禦ニ従事セシムルコトヲ得
第一項ニ依リ補償スヘキ金額ハ協議ニ依リ之ヲ定ム協議調ハサルトキハ鑑定人ノ意見ヲ徴シ府県知事之ヲ決定ス其ノ決定ニ不服アル者ハ内務大臣ニ訴願スルコトヲ得
第一項土地ノ一時使用ニ関スル組合ノ処分ニ不服アル者ハ第一次監督官庁ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ府県知事ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ内務大臣ニ訴願スルコトヲ得但シ府県知事カ第一次監督官庁タル場合ニ於テ其ノ裁決ニ不服アル者ハ直ニ内務大臣ニ訴願スルコトヲ得
第五十一条 組合内ノ一部ニ対シ特ニ利益アル事件ニ関シテハ組合ハ不均一ノ賦課ヲ為シ又ハ組合内ノ一部ニ対シ特ニ賦課スルコトヲ得
旧慣アルモノハ組合規約ヲ以テ特別ノ賦課方法ヲ定ムルコトヲ得
第五十二条 組合費ノ賦課ヲ免除スヘキモノニ関シテハ市町村税ノ例ニ依ル
第五十三条 組合ハ其ノ営造物ヲ事業ノ妨害ト為ラサル範囲内ニ於テ他ノ目的ニ使用セシムルコトヲ得
前項ノ使用ニ付テハ使用料ヲ徴収スルコトヲ得
第五十四条 組合ノ区域数市町村ニ渉ルトキハ各市町村ハ管理者ノ求ニ依リ其ノ市町村内ニ於ケル組合費其ノ他組合ノ収入ノ賦課徴収ヲ為スヘシ
前項組合費其ノ他組合ノ収入ノ徴収ニ関シテハ組合規約ノ規定ニ依リ徴収金百分ノ四以内ヲ其ノ市町村ニ交付スルコトヲ得
第五十五条 市町村ハ避クヘカラサル災害ニ因リ既収ノ組合費其ノ他組合ノ収入ヲ失ヒタルトキハ其ノ納入義務ノ免除ヲ組合ニ請求スルコトヲ得
組合ニ於テ前項ノ請求ニ応セサルトキハ市町村ハ其ノ通知ヲ受ケタル日ヨリ十四日以内ニ組合ノ第一次監督官庁ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アルトキハ府県知事ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アルトキハ内務大臣ニ訴願スルコトヲ得但シ府県知事カ第一次監督官庁タル場合ニ於テ其ノ裁決ニ不服アルトキハ直ニ内務大臣ニ訴願スルコトヲ得
前項ノ裁決ニ対シテハ組合ヨリモ亦訴願ヲ提起スルコトヲ得
本条ノ裁決書ハ之ヲ市町村及組合ニ交付スヘシ
第五十六条 組合費其ノ他組合ノ収入ノ督促及滞納処分ニ関シテハ市町村税ノ例ニ依ル
前項ノ場合ニ関シテハ第五十四条第一項ノ規定ヲ準用ス
第五十七条 組合費其ノ他組合ノ収入ノ督促ニ付テハ手数料ヲ徴収スルコトヲ得
前条第二項ノ場合ニ於テハ前項ノ督促手数料ヲ其ノ市町村ニ交付スヘシ
組合ノ徴収金ハ市町村ノ徴収金ニ次テ先取特権ヲ有シ其ノ追徴還付及時効ニ付テハ国税ノ例ニ依ル
第五十八条 管理者ハ組合費ノ賦課ヲ受ケタル者ノ中特別ノ事情アル者ニ対シ会計年度内ニ限リ其ノ納付ノ延期ヲ許スコトヲ得其ノ年度ヲ越ユル場合ハ組合会ノ議決ヲ経ヘシ
管理者ハ特別ノ事情アル者ニ限リ組合会ノ議決ヲ経テ組合費ヲ減免スルコトヲ得
第五十九条 組合費及夫役現品ノ賦課ヲ受ケタル者其ノ賦課ニ付違法又ハ錯誤アリト認ムルトキハ賦課令状ノ交付後三月以内ニ管理者ニ異議ノ申立ヲ為スコトヲ得
加入金使用料及手数料ノ徴収ニ付テモ亦前項ノ例ニ依ル
本条ノ異議ハ組合会ノ決定ニ付スヘシ其ノ決定ニ不服アル者ハ第一次監督官庁ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ府県知事ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得但シ府県知事カ第一次監督官庁タル場合ニ於テ其ノ裁決ニ不服アル者ハ直ニ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
組合費其ノ他組合ノ収入ノ滞納処分ニ不服アル者ハ第一次監督官庁ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ府県知事ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得但シ府県知事カ第一次監督官庁タル場合ニ於テ其ノ裁決ニ不服アル者ハ直ニ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
組合費其ノ他組合ノ収入ノ滞納処分中差押物件ノ公売ハ処分ノ確定ニ至ル迄執行ヲ停止ス
第六十条 組合ハ特定ノ目的ノ為積立基金ヲ設クルコトヲ得
第六十一条 組合ハ其ノ事業ノ関係上必要アル場合ニ於テハ寄附又ハ補助ヲ為スコトヲ得
第六十二条 組合ハ其ノ負債ヲ償還スル為又ハ組合永久ノ利益トナルヘキ支出ヲ要スル為又ハ天災事変等ノ為已ムヲ得サル場合ニ限リ組合債ヲ起スコトヲ得
組合債ヲ起スニ付組合会ノ議決ヲ経ルトキハ併セテ起債ノ方法利息ノ定率及償還ノ方法ニ付議決ヲ経ヘシ
組合ハ予算内ノ支出ヲ為ス為本条ノ例ニ依ラス一時ノ借入金ヲ為スコトヲ得
前項ノ借入金ハ其ノ会計年度内ノ収入ヲ以テ償還スヘシ
第六十三条 管理者ハ毎会計年度ノ歳入出予算ヲ調製シ会計年度前通常組合会ノ議決ニ付スヘシ
管理者ハ組合会ノ議決ヲ経テ既定予算ノ追加又ハ更正ヲ為スコトヲ得
組合ノ会計年度ハ政府ノ会計年度ニ同シ
第六十四条 組合費ヲ以テ支弁スル事件ニシテ数年ヲ期シテ施行スヘキモノ又ハ数年ヲ期シテ其ノ費用ヲ支出スヘキモノハ組合会ノ議決ヲ経テ其ノ年期間各年度ノ支出額ヲ定メ継続費ト為スコトヲ得
第六十五条 予算外ノ支出又ハ予算超過ノ支出ニ充ツル為予備費ヲ設クヘシ
予備費ハ組合会ノ否決シタル費途ニ充ツルコトヲ得ス
第六十六条 予算ハ議決ヲ経タル後直ニ之ヲ第一次監督官庁ニ報告シ且其ノ要領ヲ告示スヘシ
第六十七条 組合会ニ於テ予算ヲ議決シタルトキハ管理者ヨリ其ノ謄本ヲ組合ノ会計事務ヲ掌ル官吏吏員ニ交付スヘシ
会計事務ヲ掌ル官吏吏員ハ管理者又ハ監督官庁ノ命令アルニ非サレハ支払ヲ為スコトヲ得ス又命令ヲ受クルモ支出ノ予算ナキトキ又ハ予備費支出及費目流用其ノ他財務ニ関スル規定ニ依ラサルトキ亦同シ
第六十八条 組合ノ支払金ニ関スル時効ニ付テハ政府ノ支払金ノ例ニ依ル
第六十九条 組合ノ出納ハ翌年度六月三十日ヲ以テ閉鎖ス
決算ハ出納閉鎖後一月以内ニ証書類ヲ併セテ会計事務ヲ掌ル官吏吏員ヨリ之ヲ管理者ニ提出スヘシ管理者ハ之ヲ審査シ意見ヲ付シテ次ノ通常会迄ニ組合会ノ認定ニ付スヘシ
決算及其ノ認定ニ関スル組合会ノ議決ハ之ヲ第一次監督官庁ニ報告シ且決算ハ其ノ要領ヲ告示スヘシ
決算ノ認定ニ関スル会議ニ於テハ管理者及其ノ代理者共ニ議長タルコトヲ得ス
第七十条 予算調製ノ式及費目流用其ノ他財務ニ関シ必要ナル規定ハ内務大臣之ヲ定ム
第六章 組合ノ連合
第七十一条 水利組合ニ於テ共同事業ヲ為スノ必要アルトキハ其ノ協議ニ依リ府県知事ノ許可ヲ得テ水利組合ノ連合ヲ設クルコトヲ得
水利組合連合ハ之ヲ法人トス
水利組合連合ニシテ其ノ連合組合ノ数ヲ増減シ又ハ共同事業ノ変更ヲ為サムトスルトキハ組合ノ協議ニ依リ府県知事ノ許可ヲ受クヘシ其ノ連合ヲ解カムトスルトキ亦同シ
水利組合連合ニ関シテハ水利組合ニ関スル規定ヲ準用ス其ノ準用シ難キ事項及特ニ必要ナル事項ハ内務大臣ノ許可ヲ得テ府県知事之ヲ定ム
第七章 組合ノ監督
第七十二条 組合ハ第一次ニ於テ郡長之ヲ監督シ第二次ニ於テ府県知事之ヲ監督シ第三次ニ於テ内務大臣之ヲ監督ス但シ組合ノ区域郡市若ハ数郡ニ渉リ又ハ市内ニ止ル場合及郡内ニ止ルモ郡長管理者タル場合ハ第一次ニ於テ府県知事之ヲ監督シ第二次ニ於テ内務大臣之ヲ監督ス
監督官庁ハ組合事務ノ監督上必要ナル命令ヲ発シ処分ヲ為スコトヲ得
上級監督官庁ハ下級監督官庁ノ組合事務ニ関シテ為シタル命令又ハ処分ヲ停止シ又ハ之ヲ取消スコトヲ得
第七十三条 本法ニ規定スル異議ノ申立又ハ訴願ノ提起ハ処分ヲ為シ又ハ決定書若ハ裁決書ノ交付ヲ受ケタル日ヨリ其ノ交付ヲ受ケサル者ハ告示ノ日ヨリ十四日以内ニ之ヲ為スヘシ但シ本法中別ニ期間ヲ定メタルモノハ此ノ限ニ在ラス
本法ニ規定スル行政訴訟ハ処分ヲ為シ又ハ裁決書ノ交付ヲ受ケタル日ヨリ其ノ交付ヲ受ケサル者ハ告示ノ日ヨリ二十一日以内ニ之ヲ提起スヘシ
本法ニ規定スル異議ノ決定ハ文書ヲ以テ之ヲ為シ理由ヲ付シ之ヲ申立人ニ交付スヘシ
本法ニ規定スル異議ノ申立ニ関スル期間ノ計算ニ付テハ訴願法ノ規定ニ依ル
異議ノ申立アルモ処分ノ執行ハ之ヲ停止セス但シ行政庁ハ其ノ職権ニ依リ又ハ関係者ノ請求ニ依リ必要ト認ムルトキハ之ヲ停止スルコトヲ得
第七十四条 監督官庁ハ必要アル場合ニ於テハ期間ヲ定メテ組合会ノ停会ヲ命スルコトヲ得
第七十五条 内務大臣ハ組合会ノ解散ヲ命スルコトヲ得
組合会解散ノ場合ニ於テハ三月以内ニ議員ヲ選挙スヘシ
第七十六条 組合ニ於テ法律勅令ニ依テ負担シ又ハ当該官庁ノ職権ニ依テ命スル所ノ費用ヲ予算ニ載セサルトキハ第一次監督官庁ハ理由ヲ示シテ其ノ費用ヲ予算ニ加フルコトヲ得
組合又ハ管理者其ノ他ノ官吏吏員ニ於テ執行スヘキ事件ヲ執行セサルトキハ第一次監督官庁ニ於テ之ヲ執行スルコトヲ得但シ其ノ費用ハ組合ノ負担トス
本条ノ処分ニ不服アル組合又ハ管理者其ノ他ノ官吏吏員ハ府県知事ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アルトキハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得但シ府県知事カ第一次監督官庁タル場合ニ於テ其ノ処分又ハ裁決ニ不服アルトキハ直ニ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第七十七条 組合ニ於テ負債ヲ起シ並起債ノ方法利息ノ定率及償還ノ方法ヲ定メ又ハ変更セムトスルトキハ内務大臣及大蔵大臣ノ許可ヲ受クヘシ但シ第六十二条第三項ノ借入金ハ此ノ限ニ在ラス
第七十八条 左ニ掲クル事件ハ府県知事ノ許可ヲ受クヘシ
一 組合規約ヲ設定改正スル事
二 不動産ノ管理及処分ニ関スル事
三 不均一ノ賦課ヲ為シ又ハ組合内ノ一部ニ対シ特ニ賦課ヲ為ス事
四 加入金使用料手数料ヲ新設シ増額シ又ハ変更スル事
五 積立基金ノ設置管理及処分ニ関スル事
六 寄附及補助ヲ為ス事
七 継続費ヲ定メ又ハ変更スル事
第七十九条 組合ノ事務ニ関シ監督官庁ノ許可ヲ受クヘキ事件ニ付テハ監督官庁ハ許可申請ノ趣旨ニ反セスト認ムル範囲内ニ於テ更正シテ許可ヲ与フルコトヲ得
第八十条 組合ノ事務ニ関シ監督官庁ノ許可ヲ受クヘキ事件中其ノ軽易ナルモノハ命令ノ規定ニ依リ其ノ許可ノ職権ヲ下級監督官庁ニ委任スルコトヲ得
第八十一条 監督官庁タル府県知事郡長ハ第三十五条ノ委員及第三十六条ノ吏員ニ対シ懲戒ヲ行フコトヲ得其ノ懲戒処分ハ譴責二十五円以下ノ過怠金及解職トス
郡長ノ行ヒタル解職ニ不服アル者ハ府県知事ニ訴願シ其ノ裁決又ハ府県知事ノ行ヒタル解職ニ不服アル者ハ内務大臣ニ訴願スルコトヲ得
府県知事ハ吏員ノ解職ヲ行ハムトスル前其ノ停職ヲ命シ且場合ニ依リ給料又ハ報酬ヲ支給セシメサルコトヲ得
懲戒ニ依リ解職セラレタル者ハ二年間水利組合ノ公職ニ選挙セラレ又ハ任命セラルルコトヲ得ス
第八十二条 組合吏員ノ服務紀律賠償責任身元保証及事務引継ニ関スル規定ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第八章 雑則
第八十三条 本法ノ規定ニ依リ初テ議員ヲ選挙スル場合ニ於テ組合会ノ議決スヘキ事項ハ其ノ成立ニ至ル迄管理者ニ於テ之ヲ行フヘシ
第八十四条 本法ノ規定ニ依リ府県知事ノ職権ニ属スル事件ニシテ数府県ニ渉ルモノアルトキハ関係府県知事ノ具状ニ依リ内務大臣ニ於テ其ノ事件ヲ管理スヘキ府県知事ヲ指定スヘシ
第八十五条 本法ハ市制町村制ヲ施行セサル地ニハ之ヲ施行セス勅令ヲ以テ別ニ其ノ制ヲ定ム
附 則
第八十六条 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
水利組合条例ハ之ヲ廃止ス
第八十七条 本法施行ノ際現ニ存スル水利組合ハ本法ニ依リ設置シタルモノト看做ス
第八十八条 水利組合条例ニ依リ為シタル諸般ノ行為ハ仍其ノ効力ヲ有ス
第八十九条 水利組合条例ニ依リ為シタル処分ニ対スル異議訴願又ハ訴訟ニ関シテハ水利組合条例ニ依ル
第九十条 本法施行ノ際現ニ存スル旧町村会又ハ水利土功会ニシテ其ノ目的トスル事業カ本法ノ規定ニ牴触セサルトキハ之ヲ本法ノ規定ニ依リ設置シタル水利組合ト看做ス
前項ノ場合ニ於テ従来ノ吏員及議員ハ総テ其ノ職ヲ失フモノトス
第一項ノ水利組合及其ノ管理者ハ府県知事ニ於テ直ニ之ヲ告示スヘシ
前項ノ告示アリタルトキハ管理者ハ遅滞ナク組合規約ヲ定メ府県知事ノ許可ヲ受クヘシ