水利組合条例
法令番号: 法律第四十六號
公布年月日: 明治23年6月21日
法令の形式: 法律
朕水利組合條例ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十三年六月二十日
內閣總理大臣 伯爵 山縣有朋
內務大臣 伯爵 西鄕從道
法律第四十六號
水利組合條例
第一章 總則
第一條 府縣稅又ハ郡費ノ支辨ニ屬セサル水利土功ニ關スル事業ニシテ其利害關係ノ區域市町村ノ區域ト符合セサルモノ又ハ符合スト雖二市町村以上ニ涉ルモノニシテ特別ノ事情ニ依リ市町村若ハ町村組合ノ事業トナスコトヲ得サルモノアル場合ニ於テハ此法律ニ依リ水利組合ヲ設置スルコトヲ得
第二條 水利組合ハ分テ左ノ二種トス
一 普通水利組合
二 水害豫防組合
第三條 普通水利組合ハ用惡水等專ラ土地保護ニ關スル事業ノ爲設置スルモノトス
第四條 水害豫防組合ハ水害防禦ノ爲ニスル堤防浚渫沙防等ノ工事ニシテ普通水利組合ノ事業ニ屬セサルモノヽ爲設置スルモノトス
第五條 水利組合ハ組合規約ヲ設ケ其組合ニ關スル重要ノ事項ヲ規定スヘシ
第六條 二府縣以上ニ涉リテ水利組合ヲ設クルノ必要アルトキ此法律中府縣知事ノ職權ニ屬スル事項ハ其關係ノ府縣知事協議ノ上之ヲ處分スヘシ若シ互ニ意見ヲ異ニスルトキハ內務大臣ニ具狀シ指揮ヲ請フヘシ
第二章 組合ノ設置及廢止
第七條 普通水利組合ハ組合事業ノ爲利益ヲ受クル土地ヲ以テ區域トシ其土地所有者ヲ以テ組合員トス但舊慣アルモノハ其舊慣ニ依リ區域ヲ畫スルコトヲ得
第八條 普通水利組合ハ左ノ場合ニ於テ第十條乃至第十二條ノ手續ニ從ヒ之ヲ設置スルモノトス
一 組合員タルコトヲ得ル者五名以上ノ情願アリタルトキ
二 組合事業ニ關係アル土地ノ郡長又ハ市町村長ノ具狀アリタルトキ
第九條 前條ノ情願ニハ市町村長ニ於テ意見ヲ付シ町村長ハ郡長ヲ經、市長ハ直ニ之ヲ府縣知事ニ差出スヘシ
第十條 第八條ノ情願又ハ具狀ニ依リ府縣知事ニ於テ公益上設置スヘキモノト認ムルトキハ假ニ組合關係ノ區域ヲ指定シ其土地ノ郡長又ハ市町村長ノ內一人又ハ數人ニ創立委員ヲ命スヘシ
第十一條 創立委員ハ組合規約案ヲ調製シ關係者ノ總會議ニ付スヘシ關係者百人以上ニ及フトキハ府縣知事ノ認可ヲ經テ便宜總代人ヲ選ハシメ其集會ヲ以テ總會議ニ充ルコトヲ得
前項ノ總會議ハ關係者若ハ總代人ノ全員三分ノ二以上出席スルトキハ議決ヲ爲スコトヲ得其議決ハ過半數ニ依ル
第十二條 創立委員ハ關係者ノ總會議ニ於テ組合規約ノ議決ヲ經タルトキハ府縣知事ノ認可ヲ請フヘシ
府縣知事ニ於テ前項ノ認可ヲ爲ストキハ同時ニ組合設置ノ旨竝其管理者タルヘキ郡長若ハ市町村長ヲ吿示スヘシ
第十三條 普通水利組合ハ組合會ノ議決ニ依リ府縣知事ノ認可ヲ經テ之ヲ廢止スルコトヲ得此場合ニ於テ府縣知事ハ組合廢止ノ旨ヲ吿示スヘシ但組合ニ於テ猶民法上ノ義務ヲ負フトキハ其義務ヲ完了スルカ又ハ完了ノ方法ヲ確定スル迄廢止スルコトヲ得ス
第十四條 水害豫防組合ハ府縣知事ニ於テ第十六條第十七條ノ手續ニ從ヒ水害ヲ受クヘキ地ニ就キ區域ヲ畫シテ之ヲ設置スルモノトス但舊慣アルモノハ舊慣ニ依リ其區域ヲ畫スルコトヲ得
前項ノ區域內ニ土地家屋ヲ所有スル者ハ總テ其組合員トス
第十五條 水害ヲ受ケサル土地ト雖水害ヲ受クヘキ地ニ接近シ組合事業ノ爲直接ノ利益ヲ受クルモノハ之ヲ組合區域內ニ編入スルコトヲ得但此場合ニ於テハ其部分ニ限リ土地所有者ノミ組合員タルモノトス
第十六條 府縣知事ニ於テ水害豫防組合ノ區域ヲ畫セントスルトキハ關係アル郡市參事會ノ意見ヲ聞キ之ヲ定ムヘシ區域ノ變更ヲ要スルトキ亦同シ
第十七條 府縣知事ニ於テ水害豫防組合ノ區域ヲ定メタルトキハ其事業ニ關係アル土地ノ郡長又ハ市町村長ノ內一人又ハ數人ニ創立委員ヲ命スヘシ
創立委員ハ組合規約案ヲ調製シ之ヲ組合員ノ總會議ニ付スヘシ其他ハ第十一條及第十二條ヲ適用ス
第十八條 水害豫防組合ハ府縣知事ニ於テ組合會ノ意見ヲ聞キ之ヲ廢止スルコトヲ得此場合ニ於テ府縣知事ハ組合廢止ノ旨ヲ吿示スヘシ但組合ニ於テ猶民法上ノ義務ヲ負フトキハ第十三條但書ノ例ニ依ル
第三章 水利組合ノ會議
第十九條 水利組合ニ組合會ヲ置ク
第二十條 組合會議員ハ其組合員ニ於テ之ヲ選擧スヘシ議員ノ數、資格、任期及選擧ノ方法ハ組合規約ノ定ムル所ニ依ル
第二十一條 組合會ノ議決スヘキ事件ノ槪目左ノ如シ
一 組合規約ヲ改正追加シ及普通水利組合區域ヲ變更スル事但其議決ハ議員三分ノ二以上ノ同意ヲ得ルヲ要ス
二 組合費ノ豫算ヲ定メ及決算報吿ヲ認定スル事
三 組合費及夫役現品ノ賦課徵收方法ヲ定ムル事
四 組合ニ屬スル財產ノ賣買、交換、讓渡、讓受、竝質入、書入ヲ爲ス事
五 豫算ヲ以テ定ムルモノヲ除クノ外新ニ義務ノ負擔ヲ爲シ及權利ノ棄却ヲ爲ス事
第二十二條 組合會ハ組合事業ニ關スル書類及計算書ヲ檢閱シ管理者ノ報吿ヲ請求シテ事務ノ管理議決ノ施行竝收入支出ノ正否ヲ監査スルコトヲ得
第二十三條 議員選擧ノ効力若ハ議員ノ資格ニ關スル異議ハ組合會之ヲ議決スヘシ組合會ノ議決ニ不服アル者ハ郡參事會ニ訴願スルコトヲ得其組合ノ區域、郡市又ハ數郡ニ涉ル場合ニ於テ組合會ノ議決ニ不服アル者及郡參事會ノ裁決ニ不服アル者ハ府縣參事會ニ訴願スルコトヲ得
前項ニ依リ府縣參事會ニ訴願シ其裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
組合ノ區域二府縣以上ニ涉ル場合ニ於テ府縣參事會ニ訴願スル者アルトキハ其關係參事會ニ於テ協議ノ上主管ヲ定ムヘシ若シ協議調ハサルトキハ內務大臣ノ指揮ヲ請フヘシ
第二十四條 組合會ハ管理者ヲ以テ議長トス管理者故障アルトキハ其代理者ヲ以テ之ニ充ツ
第二十五條 組合會ハ每年一囘若ハ二囘通常會ヲ開キ其他臨時ノ必要アル每ニ臨時會ヲ開ク但通常會ノ時期及度數ハ組合規約ノ定ムル所ニ依ル
組合會ハ管理者之ヲ招集ス若シ議員四分ノ一以上ノ請求アルトキハ必ス之ヲ招集スヘシ
招集狀ハ急施ヲ要スル場合ヲ除クノ外遲クモ會議ノ三日前ニ之ヲ發スヘシ
第二十六條 組合會ハ議員三分ノ一以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開キ議決ヲナスコトヲ得ス
第二十七條 組合會ノ議決ハ過半數ニ依リ之ヲ定ム可否同數ナルトキハ議長ノ可否スル所ニ依ル
第二十八條 組合員少數ノ組合ニ於テハ組合會ヲ設ケス組合規約ノ規定ニ依リ組合員總會ヲ以テ之ニ充ルコトヲ得
第四章 組合ノ管理
第二十九條 水利組合ハ其組合ノ區域一市町村內ニ止ルトキハ其市町村長之ヲ管理シ數市町村又ハ郡市若ハ數郡ニ涉ルトキハ府縣知事ニ於テ便宜郡長又ハ市町村長ノ內一名ヲ指定シ之ヲ管理セシムヘシ
第三十條 水利組合ノ收入及會計ノ事務ハ郡長ニ於テ管理者タル場合ハ郡ノ會計吏ヲシテ兼掌セシメ市町村長ニ於テ管理者タル場合ハ其市町村收入役ヲシテ兼掌セシムヘシ
組合區域數市町村ニ涉ルトキハ各市町村收入役ハ管理者ノ求ニ依リ組合費ノ徵收ヲ爲スヘシ
第三十一條 管理者タル郡長又ハ市町村長ニ於テ行フ職務ニ關シ組合ノ爲特ニ要スル費用ハ其組合ノ負擔トス組合ノ收入及會計事務ヲ兼掌スル郡會計吏又ハ市町村收入役ニ於テ行フ職務ニ關スル費用亦同シ
第三十二條 管理者職務ノ槪目左ノ如シ
一 組合一切ノ事務ヲ管理スル事
二 組合會ノ議事ヲ準備シ及其議決ヲ執行スル事若シ組合會ノ議決其權限ヲ越エ法律命令ニ背キ又ハ公益ニ害アリト認ムルトキハ理由ヲ示シテ議決ノ執行ヲ停止シ之ヲ再議セシメ猶其議決ヲ改メサルトキハ郡參事會ノ裁決ヲ請フヘシ郡參事會ノ裁決ニ不服アル者ハ府縣參事會ニ訴願スルコトヲ得但權限ヲ越エ又ハ法律命令ニ背クニ依テ議決ノ執行ヲ停止シタル場合ニ於テ府縣參事會ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ其組合ノ區域郡市若ハ數郡ニ涉ルトキ又ハ郡長ニ於テ管理者タルトキハ府縣參事會ノ裁決ヲ請フヘシ府縣參事會ノ裁決ニ不服アル者ハ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得但權限ヲ越エ又ハ法律命令ニ背クニ依テ議決ノ執行ヲ停止シタル場合ニ於テ府縣參事會ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
三 組合ノ權利ヲ保護シ收入金其他ノ財產ヲ管理シ歲入出豫算其他組合會ノ議決ニ依テ定マリタル收入支出ヲ命令シ會計及出納ヲ監視スル事
四 諸證書及其他書類ヲ保管スル事
五 外部ニ對シテ組合ヲ代表スル事
第三十三條 管理者ハ特ニ組合會ノ委任ヲ受ケ又ハ其議決ヲ經タル事件ニ非サレハ組合ノ爲契約ヲ結ヒ又ハ義務ヲ負擔スヘキ證書若ハ委任狀ヲ發スルコトヲ得ス
第三十四條 組合ハ必要ナル委員又ハ附屬ノ傭員ヲ置クコトヲ得委員ハ組合會之ヲ選任シ傭員ハ管理者之ヲ任用ス
委員又ハ傭員ノ爲ニ要スル費用ハ其組合ノ負擔トス
第五章 組合ノ會計
第三十五條 普通水利組合費ハ土地ニ賦課シ水害豫防組合費ハ土地及家屋ニ賦課スルモノトス但舊慣アルモノハ專ラ土地ニ賦課スルコトヲ得又第十五條ノ組合員ニ對シテハ土地ニ限リ之ヲ賦課スヘシ
第三十六條 組合費ハ組合規約中ニ豫メ連年据置ノ賦課額ヲ設ケ之ヲ徵收スルコトヲ得
第三十七條 組合費豫算額ノ剩餘ハ之ヲ積金ト爲スノ方法ヲ設クルコトヲ得其積立竝支出ノ方法ハ組合會ノ議決スル所ニ依ル
第三十八條 組合ハ其事業ノ爲夫役現品ヲ組合員ニ賦課スルコトヲ得但水害豫防組合ニ在テハ夫役ニ限リ其區域內ニ住居スル一般ノ人民ニ賦課スルコトヲ得
夫役現品ニ關スル規定ハ組合規約中ニ之ヲ定ムヘシ
第三十九條 普通水利組合費ノ賦課額ハ組合會ノ議決ニ依リ水害豫防組合費ノ賦課額ハ府縣知事ニ於テ其關係郡市參事會ノ意見ヲ聞キ其事業ヨリ受クル利益ノ厚薄ニ依リ區域ヲ限リ其割合ニ差等ヲ設クルコトヲ得
第四十條 組合費ノ徵收及滯納處分ハ市町村稅ノ例ニ依ル
第四十一條 組合ハ天災事變ノ爲止ムヲ得サル支出若ハ組合永久ノ利益トナルヘキ事業ニ付通常ノ歲入ヲ增加スルトキハ其組合員ノ負擔ニ堪ヘサル場合ニ限リ負債ヲ起スコトヲ得
組合ニ於テ負債ヲ起スコトヲ議決スルトキハ其借入及償還ノ方法及期限竝利足ノ定率ヲ定ムヘシ
年度內ノ收入ヲ以テ償還スヘキ一時ノ借入金ハ前項ノ例ニ依ルノ限ニアラス但組合會ノ議決ヲ經ルコトヲ要ス
第四十二條 管理者ハ每會計年度ノ歲入出豫算ヲ調製シ會計年度前ノ通常組合會ノ議決ニ付スヘシ
第四十三條 歲入出豫算ハ組合會ノ議決ヲ經タル後之ヲ府縣知事ニ報吿スヘシ
第四十四條 決算ハ第三十條ノ會計吏又ハ收入役ニ於テ會計年度ノ終ヨリ三箇月以內ニ之ヲ結了シ證書類ヲ併テ之ヲ管理者ニ提出シ管理者ハ之ヲ審査シ意見ヲ附シ之ヲ次回ノ通常組合會ノ認定ニ付スヘシ
決算報吿書竝之ニ關スル議決ハ管理者ヨリ之ヲ府縣知事ニ報吿スヘシ
第六章 水利組合ノ監督
第四十五條 水利組合ハ第一次ニ郡長第二次ニ府縣知事第三次ニ內務大臣之ヲ監督ス其郡長又ハ市長ニ於テ管理スル場合ニ於テハ第一次ニ府縣知事第二次ニ內務大臣之ヲ監督ス
第四十六條 此法律中別段ノ規定アルモノヽ外管理者ノ處分ニ不服アル者ハ組合所在地ノ郡參事會ニ訴願シ郡參事會ノ裁決ニ不服アル者ハ府縣參事會ニ訴願スルコトヲ得其組合ノ區域郡市又ハ數郡ニ涉ル場合ニ於テ管理者ノ處分ニ不服アル者ハ府縣參事會ニ訴願スルコトヲ得
前條ニ依リ府縣參事會ニ訴願シ其裁決ニ不服アル者ハ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得
組合ノ區域二府縣以上ニ涉ル場合ニ於テ府縣參事會ニ訴願スル者アルトキハ第二十三條第三項ノ例ニ依ル
行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得ヘキ場合ニ於テハ內務大臣ニ訴願スルコトヲ得ス
第四十七條 賦課金納付ノ義務ニ關スル訴願ハ其徵收令書ヲ交付シタル日ヨリ三箇月以內ニ提出スヘシ
前項ノ場合ニ屬セサル事件ニ關シ訴願セントスル者ハ處分若ハ裁決ヲ受ケタル日ヨリ二十一日以內ニ其理由ヲ具シテ之ヲ提出スヘシ
第四十八條 水利組合會ハ內務大臣ニ於テ之ヲ解散セシムルコトヲ得解散ヲ命スルトキハ同時ニ三箇月以內更ニ議員ヲ選擧スヘキコトヲ命スヘシ
第四十九條 監督官廳ハ組合事務ノ法律命令ニ背戾セサルヤ其事業ノ公益ヲ害セサルヤ否ヤヲ監視シ兼テ其會計事務ヲシテ錯雜セサラシムルコトヲ務ムヘシ監督官廳ハ之カ爲組合事務ノ報吿ヲ爲サシメ竝實地ニ就テ現況ヲ視察シ出納ヲ檢閱スルコトヲ得
組合ニ於テ公益ヲ害スヘキ工事ヲ執行スルカ又ハ正當爲スヘキ工事ヲ執行セサルカ爲公益ヲ害スルノ虞アルトキハ府縣知事ハ其工事ノ變更又ハ執行ヲ命スルコトヲ得若シ其命令ニ服從セサルトキハ府縣知事ニ於テ之ヲ執行シ其實費ヲ追徵スルコトヲ得
第五十條 組合會ニ於テ組合規約ノ改正追加及普通水利組合區域變更ノ議決ヲ爲シ又ハ不動產ノ賣却、交換、讓渡又ハ質入、書入ノ議決ヲ爲シ又ハ第三十九條ニ依リ普通水利組合費ノ賦課額ニ差等ヲ設クルノ議決ヲ爲シタルトキハ府縣知事ノ認可ヲ受クヘシ
組合會ニ於テ負債ヲ起スコトヲ議決シタルトキハ借入及償還ノ方法及期限竝利息ノ定率ヲモ併テ內務大臣及大藏大臣ノ認可ヲ受クヘシ
其他組合規約中ニ監督官廳ノ認可ヲ受クヘキ事項ヲ增加スルコトヲ得
第五十一條 水害豫防組合關係者總會議又ハ水害豫防組合會ニ於テ其議決スヘキ事項ヲ議決セサルカ爲公益ニ害アリト認ムルトキハ府縣知事ハ府縣參事會若ハ郡參事會ニ付シ代テ決定セシムルコトヲ得關係者總會議ニ出席セス又ハ議員ヲ選擧セス若ハ議員ノ當選ヲ承諾セサル爲總會議又ハ組合會成立ニ至ラサルトキ亦同シ
水害豫防組合會ニ於テ組合事業ノ爲必要ナル費用ヲ否決シ又ハ議決スト雖必要ノ給需ヲ缺クトキハ管理者ハ府縣知事ニ具狀シ其指揮ヲ請ヒ原案ヲ執行スルコトヲ得但府縣知事ハ原案金額ヲ不相當ト認ムルトキハ原案金額以內ニ於テ適當ノ金額ヲ定メ指揮スルコトヲ得
第五十二條 水利組合關係者總會議ニ於テ議決シタル組合規約法律命令ニ背キ又ハ公益ニ害アリト認ムルトキハ府縣知事ハ其理由ヲ示シ之ヲ再議セシメ猶其議決ヲ改メサルトキハ內務大臣ノ指揮ヲ請フヘシ
第五十三條 監督官廳ハ出水ノ爲危險アルトキ水利組合ニ對シ防禦ニ必要ナル命令ヲ發スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ郡長市町村長又ハ警察官ハ組合區域內ニ住居スル一般ノ人民ヲ指揮シテ防禦ニ從事セシメ及必要ナル現品ヲ收用スルコトヲ得但現品ハ追テ組合ノ費用ヲ以テ相當ノ賠償ヲ爲サシムヘシ
第五十四條 水利組合管理者及其事務ニ服從スル者ニ對シ懲戒處分ヲ要スルトキハ町村制第百二十八條ヲ適用シ其職務ヲ盡サス又ハ權限ヲ越エタル爲組合ニ賠償スヘキコトアルトキハ町村制第百二十九條ヲ適用ス
第七章 附則
第五十五條 府縣參事會、郡參事會及行政裁判所ヲ開設スル迄ノ間郡參事會ノ職務ハ郡長府縣參事會ノ職務ハ府縣知事行政裁判所ノ職務ハ從來ノ慣行ニ依リ控訴院ニ於テ之ヲ行フヘシ
第五十六條 此法律ニ依リ初テ議員ヲ選擧スル場合ニ於テ組合會ノ議決スヘキ事項ハ其成立ニ至ル迄ノ間管理者ニ於テ之ヲ行フヘシ
第五十七條 此法律ニ依リ設置スル水利組合ニ於テ舊町村會又ハ水利土功會ノ事業ヲ繼續スルトキハ其既成ノ工事及所屬ノ財產ハ總テ其組合ニ引繼クヘキモノトス
第五十八條 此法律ハ市制町村制ヲ施行スル地方ニ於テ府縣知事ハ內務大臣ニ具狀シ其指揮ニ依リ之ヲ施行ス
朕水利組合条例ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十三年六月二十日
内閣総理大臣 伯爵 山県有朋
内務大臣 伯爵 西郷従道
法律第四十六号
水利組合条例
第一章 総則
第一条 府県税又ハ郡費ノ支弁ニ属セサル水利土功ニ関スル事業ニシテ其利害関係ノ区域市町村ノ区域ト符合セサルモノ又ハ符合スト雖二市町村以上ニ渉ルモノニシテ特別ノ事情ニ依リ市町村若ハ町村組合ノ事業トナスコトヲ得サルモノアル場合ニ於テハ此法律ニ依リ水利組合ヲ設置スルコトヲ得
第二条 水利組合ハ分テ左ノ二種トス
一 普通水利組合
二 水害予防組合
第三条 普通水利組合ハ用悪水等専ラ土地保護ニ関スル事業ノ為設置スルモノトス
第四条 水害予防組合ハ水害防禦ノ為ニスル堤防浚渫沙防等ノ工事ニシテ普通水利組合ノ事業ニ属セサルモノヽ為設置スルモノトス
第五条 水利組合ハ組合規約ヲ設ケ其組合ニ関スル重要ノ事項ヲ規定スヘシ
第六条 二府県以上ニ渉リテ水利組合ヲ設クルノ必要アルトキ此法律中府県知事ノ職権ニ属スル事項ハ其関係ノ府県知事協議ノ上之ヲ処分スヘシ若シ互ニ意見ヲ異ニスルトキハ内務大臣ニ具状シ指揮ヲ請フヘシ
第二章 組合ノ設置及廃止
第七条 普通水利組合ハ組合事業ノ為利益ヲ受クル土地ヲ以テ区域トシ其土地所有者ヲ以テ組合員トス但旧慣アルモノハ其旧慣ニ依リ区域ヲ画スルコトヲ得
第八条 普通水利組合ハ左ノ場合ニ於テ第十条乃至第十二条ノ手続ニ従ヒ之ヲ設置スルモノトス
一 組合員タルコトヲ得ル者五名以上ノ情願アリタルトキ
二 組合事業ニ関係アル土地ノ郡長又ハ市町村長ノ具状アリタルトキ
第九条 前条ノ情願ニハ市町村長ニ於テ意見ヲ付シ町村長ハ郡長ヲ経、市長ハ直ニ之ヲ府県知事ニ差出スヘシ
第十条 第八条ノ情願又ハ具状ニ依リ府県知事ニ於テ公益上設置スヘキモノト認ムルトキハ仮ニ組合関係ノ区域ヲ指定シ其土地ノ郡長又ハ市町村長ノ内一人又ハ数人ニ創立委員ヲ命スヘシ
第十一条 創立委員ハ組合規約案ヲ調製シ関係者ノ総会議ニ付スヘシ関係者百人以上ニ及フトキハ府県知事ノ認可ヲ経テ便宜総代人ヲ選ハシメ其集会ヲ以テ総会議ニ充ルコトヲ得
前項ノ総会議ハ関係者若ハ総代人ノ全員三分ノ二以上出席スルトキハ議決ヲ為スコトヲ得其議決ハ過半数ニ依ル
第十二条 創立委員ハ関係者ノ総会議ニ於テ組合規約ノ議決ヲ経タルトキハ府県知事ノ認可ヲ請フヘシ
府県知事ニ於テ前項ノ認可ヲ為ストキハ同時ニ組合設置ノ旨並其管理者タルヘキ郡長若ハ市町村長ヲ告示スヘシ
第十三条 普通水利組合ハ組合会ノ議決ニ依リ府県知事ノ認可ヲ経テ之ヲ廃止スルコトヲ得此場合ニ於テ府県知事ハ組合廃止ノ旨ヲ告示スヘシ但組合ニ於テ猶民法上ノ義務ヲ負フトキハ其義務ヲ完了スルカ又ハ完了ノ方法ヲ確定スル迄廃止スルコトヲ得ス
第十四条 水害予防組合ハ府県知事ニ於テ第十六条第十七条ノ手続ニ従ヒ水害ヲ受クヘキ地ニ就キ区域ヲ画シテ之ヲ設置スルモノトス但旧慣アルモノハ旧慣ニ依リ其区域ヲ画スルコトヲ得
前項ノ区域内ニ土地家屋ヲ所有スル者ハ総テ其組合員トス
第十五条 水害ヲ受ケサル土地ト雖水害ヲ受クヘキ地ニ接近シ組合事業ノ為直接ノ利益ヲ受クルモノハ之ヲ組合区域内ニ編入スルコトヲ得但此場合ニ於テハ其部分ニ限リ土地所有者ノミ組合員タルモノトス
第十六条 府県知事ニ於テ水害予防組合ノ区域ヲ画セントスルトキハ関係アル郡市参事会ノ意見ヲ聞キ之ヲ定ムヘシ区域ノ変更ヲ要スルトキ亦同シ
第十七条 府県知事ニ於テ水害予防組合ノ区域ヲ定メタルトキハ其事業ニ関係アル土地ノ郡長又ハ市町村長ノ内一人又ハ数人ニ創立委員ヲ命スヘシ
創立委員ハ組合規約案ヲ調製シ之ヲ組合員ノ総会議ニ付スヘシ其他ハ第十一条及第十二条ヲ適用ス
第十八条 水害予防組合ハ府県知事ニ於テ組合会ノ意見ヲ聞キ之ヲ廃止スルコトヲ得此場合ニ於テ府県知事ハ組合廃止ノ旨ヲ告示スヘシ但組合ニ於テ猶民法上ノ義務ヲ負フトキハ第十三条但書ノ例ニ依ル
第三章 水利組合ノ会議
第十九条 水利組合ニ組合会ヲ置ク
第二十条 組合会議員ハ其組合員ニ於テ之ヲ選挙スヘシ議員ノ数、資格、任期及選挙ノ方法ハ組合規約ノ定ムル所ニ依ル
第二十一条 組合会ノ議決スヘキ事件ノ概目左ノ如シ
一 組合規約ヲ改正追加シ及普通水利組合区域ヲ変更スル事但其議決ハ議員三分ノ二以上ノ同意ヲ得ルヲ要ス
二 組合費ノ予算ヲ定メ及決算報告ヲ認定スル事
三 組合費及夫役現品ノ賦課徴収方法ヲ定ムル事
四 組合ニ属スル財産ノ売買、交換、譲渡、譲受、並質入、書入ヲ為ス事
五 予算ヲ以テ定ムルモノヲ除クノ外新ニ義務ノ負担ヲ為シ及権利ノ棄却ヲ為ス事
第二十二条 組合会ハ組合事業ニ関スル書類及計算書ヲ検閲シ管理者ノ報告ヲ請求シテ事務ノ管理議決ノ施行並収入支出ノ正否ヲ監査スルコトヲ得
第二十三条 議員選挙ノ効力若ハ議員ノ資格ニ関スル異議ハ組合会之ヲ議決スヘシ組合会ノ議決ニ不服アル者ハ郡参事会ニ訴願スルコトヲ得其組合ノ区域、郡市又ハ数郡ニ渉ル場合ニ於テ組合会ノ議決ニ不服アル者及郡参事会ノ裁決ニ不服アル者ハ府県参事会ニ訴願スルコトヲ得
前項ニ依リ府県参事会ニ訴願シ其裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
組合ノ区域二府県以上ニ渉ル場合ニ於テ府県参事会ニ訴願スル者アルトキハ其関係参事会ニ於テ協議ノ上主管ヲ定ムヘシ若シ協議調ハサルトキハ内務大臣ノ指揮ヲ請フヘシ
第二十四条 組合会ハ管理者ヲ以テ議長トス管理者故障アルトキハ其代理者ヲ以テ之ニ充ツ
第二十五条 組合会ハ毎年一回若ハ二回通常会ヲ開キ其他臨時ノ必要アル毎ニ臨時会ヲ開ク但通常会ノ時期及度数ハ組合規約ノ定ムル所ニ依ル
組合会ハ管理者之ヲ招集ス若シ議員四分ノ一以上ノ請求アルトキハ必ス之ヲ招集スヘシ
招集状ハ急施ヲ要スル場合ヲ除クノ外遅クモ会議ノ三日前ニ之ヲ発スヘシ
第二十六条 組合会ハ議員三分ノ一以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開キ議決ヲナスコトヲ得ス
第二十七条 組合会ノ議決ハ過半数ニ依リ之ヲ定ム可否同数ナルトキハ議長ノ可否スル所ニ依ル
第二十八条 組合員少数ノ組合ニ於テハ組合会ヲ設ケス組合規約ノ規定ニ依リ組合員総会ヲ以テ之ニ充ルコトヲ得
第四章 組合ノ管理
第二十九条 水利組合ハ其組合ノ区域一市町村内ニ止ルトキハ其市町村長之ヲ管理シ数市町村又ハ郡市若ハ数郡ニ渉ルトキハ府県知事ニ於テ便宜郡長又ハ市町村長ノ内一名ヲ指定シ之ヲ管理セシムヘシ
第三十条 水利組合ノ収入及会計ノ事務ハ郡長ニ於テ管理者タル場合ハ郡ノ会計吏ヲシテ兼掌セシメ市町村長ニ於テ管理者タル場合ハ其市町村収入役ヲシテ兼掌セシムヘシ
組合区域数市町村ニ渉ルトキハ各市町村収入役ハ管理者ノ求ニ依リ組合費ノ徴収ヲ為スヘシ
第三十一条 管理者タル郡長又ハ市町村長ニ於テ行フ職務ニ関シ組合ノ為特ニ要スル費用ハ其組合ノ負担トス組合ノ収入及会計事務ヲ兼掌スル郡会計吏又ハ市町村収入役ニ於テ行フ職務ニ関スル費用亦同シ
第三十二条 管理者職務ノ概目左ノ如シ
一 組合一切ノ事務ヲ管理スル事
二 組合会ノ議事ヲ準備シ及其議決ヲ執行スル事若シ組合会ノ議決其権限ヲ越エ法律命令ニ背キ又ハ公益ニ害アリト認ムルトキハ理由ヲ示シテ議決ノ執行ヲ停止シ之ヲ再議セシメ猶其議決ヲ改メサルトキハ郡参事会ノ裁決ヲ請フヘシ郡参事会ノ裁決ニ不服アル者ハ府県参事会ニ訴願スルコトヲ得但権限ヲ越エ又ハ法律命令ニ背クニ依テ議決ノ執行ヲ停止シタル場合ニ於テ府県参事会ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ其組合ノ区域郡市若ハ数郡ニ渉ルトキ又ハ郡長ニ於テ管理者タルトキハ府県参事会ノ裁決ヲ請フヘシ府県参事会ノ裁決ニ不服アル者ハ内務大臣ニ訴願スルコトヲ得但権限ヲ越エ又ハ法律命令ニ背クニ依テ議決ノ執行ヲ停止シタル場合ニ於テ府県参事会ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
三 組合ノ権利ヲ保護シ収入金其他ノ財産ヲ管理シ歳入出予算其他組合会ノ議決ニ依テ定マリタル収入支出ヲ命令シ会計及出納ヲ監視スル事
四 諸証書及其他書類ヲ保管スル事
五 外部ニ対シテ組合ヲ代表スル事
第三十三条 管理者ハ特ニ組合会ノ委任ヲ受ケ又ハ其議決ヲ経タル事件ニ非サレハ組合ノ為契約ヲ結ヒ又ハ義務ヲ負担スヘキ証書若ハ委任状ヲ発スルコトヲ得ス
第三十四条 組合ハ必要ナル委員又ハ附属ノ傭員ヲ置クコトヲ得委員ハ組合会之ヲ選任シ傭員ハ管理者之ヲ任用ス
委員又ハ傭員ノ為ニ要スル費用ハ其組合ノ負担トス
第五章 組合ノ会計
第三十五条 普通水利組合費ハ土地ニ賦課シ水害予防組合費ハ土地及家屋ニ賦課スルモノトス但旧慣アルモノハ専ラ土地ニ賦課スルコトヲ得又第十五条ノ組合員ニ対シテハ土地ニ限リ之ヲ賦課スヘシ
第三十六条 組合費ハ組合規約中ニ予メ連年据置ノ賦課額ヲ設ケ之ヲ徴収スルコトヲ得
第三十七条 組合費予算額ノ剰余ハ之ヲ積金ト為スノ方法ヲ設クルコトヲ得其積立並支出ノ方法ハ組合会ノ議決スル所ニ依ル
第三十八条 組合ハ其事業ノ為夫役現品ヲ組合員ニ賦課スルコトヲ得但水害予防組合ニ在テハ夫役ニ限リ其区域内ニ住居スル一般ノ人民ニ賦課スルコトヲ得
夫役現品ニ関スル規定ハ組合規約中ニ之ヲ定ムヘシ
第三十九条 普通水利組合費ノ賦課額ハ組合会ノ議決ニ依リ水害予防組合費ノ賦課額ハ府県知事ニ於テ其関係郡市参事会ノ意見ヲ聞キ其事業ヨリ受クル利益ノ厚薄ニ依リ区域ヲ限リ其割合ニ差等ヲ設クルコトヲ得
第四十条 組合費ノ徴収及滞納処分ハ市町村税ノ例ニ依ル
第四十一条 組合ハ天災事変ノ為止ムヲ得サル支出若ハ組合永久ノ利益トナルヘキ事業ニ付通常ノ歳入ヲ増加スルトキハ其組合員ノ負担ニ堪ヘサル場合ニ限リ負債ヲ起スコトヲ得
組合ニ於テ負債ヲ起スコトヲ議決スルトキハ其借入及償還ノ方法及期限並利足ノ定率ヲ定ムヘシ
年度内ノ収入ヲ以テ償還スヘキ一時ノ借入金ハ前項ノ例ニ依ルノ限ニアラス但組合会ノ議決ヲ経ルコトヲ要ス
第四十二条 管理者ハ毎会計年度ノ歳入出予算ヲ調製シ会計年度前ノ通常組合会ノ議決ニ付スヘシ
第四十三条 歳入出予算ハ組合会ノ議決ヲ経タル後之ヲ府県知事ニ報告スヘシ
第四十四条 決算ハ第三十条ノ会計吏又ハ収入役ニ於テ会計年度ノ終ヨリ三箇月以内ニ之ヲ結了シ証書類ヲ併テ之ヲ管理者ニ提出シ管理者ハ之ヲ審査シ意見ヲ附シ之ヲ次回ノ通常組合会ノ認定ニ付スヘシ
決算報告書並之ニ関スル議決ハ管理者ヨリ之ヲ府県知事ニ報告スヘシ
第六章 水利組合ノ監督
第四十五条 水利組合ハ第一次ニ郡長第二次ニ府県知事第三次ニ内務大臣之ヲ監督ス其郡長又ハ市長ニ於テ管理スル場合ニ於テハ第一次ニ府県知事第二次ニ内務大臣之ヲ監督ス
第四十六条 此法律中別段ノ規定アルモノヽ外管理者ノ処分ニ不服アル者ハ組合所在地ノ郡参事会ニ訴願シ郡参事会ノ裁決ニ不服アル者ハ府県参事会ニ訴願スルコトヲ得其組合ノ区域郡市又ハ数郡ニ渉ル場合ニ於テ管理者ノ処分ニ不服アル者ハ府県参事会ニ訴願スルコトヲ得
前条ニ依リ府県参事会ニ訴願シ其裁決ニ不服アル者ハ内務大臣ニ訴願スルコトヲ得
組合ノ区域二府県以上ニ渉ル場合ニ於テ府県参事会ニ訴願スル者アルトキハ第二十三条第三項ノ例ニ依ル
行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得ヘキ場合ニ於テハ内務大臣ニ訴願スルコトヲ得ス
第四十七条 賦課金納付ノ義務ニ関スル訴願ハ其徴収令書ヲ交付シタル日ヨリ三箇月以内ニ提出スヘシ
前項ノ場合ニ属セサル事件ニ関シ訴願セントスル者ハ処分若ハ裁決ヲ受ケタル日ヨリ二十一日以内ニ其理由ヲ具シテ之ヲ提出スヘシ
第四十八条 水利組合会ハ内務大臣ニ於テ之ヲ解散セシムルコトヲ得解散ヲ命スルトキハ同時ニ三箇月以内更ニ議員ヲ選挙スヘキコトヲ命スヘシ
第四十九条 監督官庁ハ組合事務ノ法律命令ニ背戻セサルヤ其事業ノ公益ヲ害セサルヤ否ヤヲ監視シ兼テ其会計事務ヲシテ錯雑セサラシムルコトヲ務ムヘシ監督官庁ハ之カ為組合事務ノ報告ヲ為サシメ並実地ニ就テ現況ヲ視察シ出納ヲ検閲スルコトヲ得
組合ニ於テ公益ヲ害スヘキ工事ヲ執行スルカ又ハ正当為スヘキ工事ヲ執行セサルカ為公益ヲ害スルノ虞アルトキハ府県知事ハ其工事ノ変更又ハ執行ヲ命スルコトヲ得若シ其命令ニ服従セサルトキハ府県知事ニ於テ之ヲ執行シ其実費ヲ追徴スルコトヲ得
第五十条 組合会ニ於テ組合規約ノ改正追加及普通水利組合区域変更ノ議決ヲ為シ又ハ不動産ノ売却、交換、譲渡又ハ質入、書入ノ議決ヲ為シ又ハ第三十九条ニ依リ普通水利組合費ノ賦課額ニ差等ヲ設クルノ議決ヲ為シタルトキハ府県知事ノ認可ヲ受クヘシ
組合会ニ於テ負債ヲ起スコトヲ議決シタルトキハ借入及償還ノ方法及期限並利息ノ定率ヲモ併テ内務大臣及大蔵大臣ノ認可ヲ受クヘシ
其他組合規約中ニ監督官庁ノ認可ヲ受クヘキ事項ヲ増加スルコトヲ得
第五十一条 水害予防組合関係者総会議又ハ水害予防組合会ニ於テ其議決スヘキ事項ヲ議決セサルカ為公益ニ害アリト認ムルトキハ府県知事ハ府県参事会若ハ郡参事会ニ付シ代テ決定セシムルコトヲ得関係者総会議ニ出席セス又ハ議員ヲ選挙セス若ハ議員ノ当選ヲ承諾セサル為総会議又ハ組合会成立ニ至ラサルトキ亦同シ
水害予防組合会ニ於テ組合事業ノ為必要ナル費用ヲ否決シ又ハ議決スト雖必要ノ給需ヲ欠クトキハ管理者ハ府県知事ニ具状シ其指揮ヲ請ヒ原案ヲ執行スルコトヲ得但府県知事ハ原案金額ヲ不相当ト認ムルトキハ原案金額以内ニ於テ適当ノ金額ヲ定メ指揮スルコトヲ得
第五十二条 水利組合関係者総会議ニ於テ議決シタル組合規約法律命令ニ背キ又ハ公益ニ害アリト認ムルトキハ府県知事ハ其理由ヲ示シ之ヲ再議セシメ猶其議決ヲ改メサルトキハ内務大臣ノ指揮ヲ請フヘシ
第五十三条 監督官庁ハ出水ノ為危険アルトキ水利組合ニ対シ防禦ニ必要ナル命令ヲ発スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ郡長市町村長又ハ警察官ハ組合区域内ニ住居スル一般ノ人民ヲ指揮シテ防禦ニ従事セシメ及必要ナル現品ヲ収用スルコトヲ得但現品ハ追テ組合ノ費用ヲ以テ相当ノ賠償ヲ為サシムヘシ
第五十四条 水利組合管理者及其事務ニ服従スル者ニ対シ懲戒処分ヲ要スルトキハ町村制第百二十八条ヲ適用シ其職務ヲ尽サス又ハ権限ヲ越エタル為組合ニ賠償スヘキコトアルトキハ町村制第百二十九条ヲ適用ス
第七章 附則
第五十五条 府県参事会、郡参事会及行政裁判所ヲ開設スル迄ノ間郡参事会ノ職務ハ郡長府県参事会ノ職務ハ府県知事行政裁判所ノ職務ハ従来ノ慣行ニ依リ控訴院ニ於テ之ヲ行フヘシ
第五十六条 此法律ニ依リ初テ議員ヲ選挙スル場合ニ於テ組合会ノ議決スヘキ事項ハ其成立ニ至ル迄ノ間管理者ニ於テ之ヲ行フヘシ
第五十七条 此法律ニ依リ設置スル水利組合ニ於テ旧町村会又ハ水利土功会ノ事業ヲ継続スルトキハ其既成ノ工事及所属ノ財産ハ総テ其組合ニ引継クヘキモノトス
第五十八条 此法律ハ市制町村制ヲ施行スル地方ニ於テ府県知事ハ内務大臣ニ具状シ其指揮ニ依リ之ヲ施行ス