果樹農業振興特別措置法
法令番号: 法律第15号
公布年月日: 昭和36年3月30日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

果樹農業の粗生産は昭和25年度から34年度の間に約3倍に伸び、農業総生産額の約5%を占めるまでに成長した。今後も果実需要の大幅な増大が見込まれる中、果樹農業の健全な発展のため、栽培適地での合理的な果樹園経営の確立が必要である。そのため、果実の長期的需給動向に即した適正な果樹の植栽と生産の誘導、樹園地の集団化、効率的な機械・施設の導入等を計画的に推進する必要がある。本法案は、果樹の長期見通しの策定、合理的な果樹園経営計画に基づく樹園地の集団化、農作業の共同化の推進、果実の流通・加工の合理化等の措置を講じ、果樹農業の健全な発展に寄与することを目的とする。

参照した発言:
第38回国会 衆議院 農林水産委員会 第10号

審議経過

第38回国会

衆議院
(昭和36年3月2日)
参議院
(昭和36年3月2日)
衆議院
(昭和36年3月9日)
(昭和36年3月10日)
(昭和36年3月14日)
参議院
(昭和36年3月14日)
衆議院
(昭和36年3月15日)
参議院
(昭和36年3月16日)
衆議院
(昭和36年3月17日)
参議院
(昭和36年3月17日)
(昭和36年3月22日)
(昭和36年3月24日)
(昭和36年3月31日)
衆議院
(昭和36年6月28日)
果樹農業振興特別措置法をここに公布する。
御名御璽
昭和三十六年三月三十日
内閣総理大臣 池田勇人
法律第十五号
果樹農業振興特別措置法
(目的)
第一条 この法律は、果実の需要の動向に即応してその生産の安定と拡大を図るため、合理的な果樹園経営の基盤を確立するための措置並びにこれにあわせて果実の流通及び加工の合理化に資するための措置を定めることにより、果樹農業の健全な発展に寄与することを目的とする。
(果樹の植栽等についての長期見通し等)
第二条 農林大臣は、政令で定めるところにより、果実の需要及び生産の長期の見通しに即して、主要な果樹の種類ごとに、植栽及びその果実の生産についての長期見通しをたて、これを公表しなければならない。
2 国及び都道府県は、前項の規定により公表された長期見通しに即応し、かつ、必要に応じ地域ごとの特性を考慮して、果樹農業の健全な発展を図るため必要な施策を講ずるように努めるものとする。
(果樹園経営計画)
第三条 次の各号の一に該当する者は、農林省令で定める手続により、果樹園経営計画を作成し、これを都道府県知事に提出して、その果樹園経営計画が適当であるかどうかにつき認定を求めることができる。
一 果樹(政令で定める果樹に限る。以下同じ。)の集団的な栽培に供される土地(以下「樹園地」という。)につき果樹を栽培しているか、又は栽培しようとする農業者(以下「果樹農業者」という。)の二以上が共同してその樹園地における果樹の栽培を計画的かつ効率的に行なおうとする場合における当該果樹農業者
二 前号に掲げる果樹農業者が構成員となつている法人
2 前項の果樹園経営計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 農業経営の現状
二 樹園地の所在及び面積
三 次に掲げる施設等についての現状及び効率的な果樹園経営を推進するためこれらの施設等についてとるべき措置に関する計画
イ 樹園地
ロ 植栽に係る果樹
ハ 病害虫の防除施設その他果樹の管理のために必要な施設
ニ 選果施設その他果実の収穫、集荷、貯蔵又は販売のために必要な施設
四 果実の生産及び販売の数量に関する計画
五 第三号の措置に関する計画を達成するために必要な資金の額及び調達方法
六 前号の資金のうち農林漁業金融公庫(以下「公庫」という。)から借入れを必要とするものがある場合にはその資金の額並びにその使用計画及び償還計画
七 その他農林省令で定める事項
3 第一項の認定の請求は、昭和四十一年三月三十一日までにするものとする。
(都道府県知事の認定)
第四条 都道府県知事は、前条第一項の認定を受けたい旨の請求があつた場合において、その果樹園経営計画に係る事項が次の各号の要件のすべてをみたすときは、当該計画が適当である旨の認定をするものとする。
一 当該計画に係る樹園地の面積、その集団する度合い及び立地条件が農林省令で定める基準に適合することとなること。
二 前条第二項第三号の措置に関する計画が合理的な果樹園経営の基盤の確立を図るために必要かつ適当なものであること。
三 前条第二項第四号の計画が果実の需給事情に照らし適当と認められるものであること。
四 当該計画に係る事項の達成される見込みが確実であること。
五 当該計画に前条第二項第六号の額及び計画が記載されているものについては、当該計画に記載されたところによつて公庫から資金の貸付けを受けることが必要であつて、他に適当な方法がないこと。
(公庫からの資金の貸付け)
第五条 公庫は、果樹園経営計画(第三条第二項第六号の額及び計画が記載されていないものを除く。)につき前条の認定を受けた者に対し、その申請に基づき、この法律及び農林漁業金融公庫法(昭和二十七年法律第三百五十五号)の定めるところにより、当該認定に係る果樹園経営計画に記載された第三条第二項第六号の資金の貸付けを行なうものとする。
2 公庫が前項に規定する者に対し同項の資金のうち果樹の植栽に要する資金の貸付けを行なう場合における貸付金の利率は、年七分以内において公庫が定めるものとする。
3 公庫は、第一項の資金の貸付けを行なう場合には、貸付けの申込みをした者につき、前条の認定に係る果樹園経営計画を参酌して、貸付金額及び償還期間その他の貸付条件を定めなければならない。
(果実等の生産等の状況に関する情報の提供)
第六条 国及び都道府県は、果樹農業の健全な発展並びに果実の流通及び加工の合理化に資するため、果実及び果実製品(果実を加工し又はこれを原料として製造した製品をいう。以下同じ。)の生産、集荷、貯蔵、販売等の状況を調査し、これらに関し必要な情報を提供するように努めるものとする。
(その他の援助措置)
第七条 国及び都道府県は、前条に規定する措置のほか、果樹園経営計画の作成及びその達成のために必要な助言及び指導、優良苗木の供給の円滑化のための援助その他果樹農業の振興のために必要な援助を行なうように努めるものとする。
(報告の徴収)
第八条 農林大臣又は都道府県知事は、この法律を施行するため必要があるときは、果実又は果実製品の生産、集荷、貯蔵又は販売の事業を行なう者又はこれらの者の組織する法人から、これらの事業に係る業務に関して、必要な報告を徴することができる。
(果樹農業振興審議会)
第九条 農林省に果樹農業振興審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、農林大臣の諮問に応じ、果樹農業の振興に関する重要事項を調査審議する。
3 審議会は、前項に規定する事項に関し、農林大臣に意見を述べることができる。
第十条 審議会は、委員十二人以内で組織する。
2 委員は、前条第二項に規定する事項に関し学識経験を有する者のうちから農林大臣が任命する。
3 委員は、非常勤とする。
第十一条 審議会に会長を置き、委員の互選によりこれを定める。
2 会長は、会務を総理する。
3 会長に事故があるときは、あらかじめ会長が指名する委員がその職務を代理する。
第十二条 専門の事項を調査審議させるため、審議会に専門委員を置くことができる。
2 専門委員は、第九条第二項に規定する事項に関し学識経験を有する者のうちから農林大臣が任命する。
3 専門委員は、非常勤とする。
第十三条 前四条に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
(罰則)
第十四条 第八条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は一万円以下の過料に処する。
附 則
1 この法律は、公布の日から起算して六十日をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。
2 この法律の規定により公庫が行なう資金の貸付けについての農林漁業金融公庫法第二十九条第二項及び第三十条第二項の規定の適用については、同法第二十九条第二項中「融通法」とあるのは「果樹農業振興特別措置法(昭和三十六年法律第十五号)」と、同法第三十条第二項第一号中「融通法」とあるのは「果樹農業振興特別措置法」とする。
3 農林省設置法(昭和二十四年法律第百五十三号)の一部を次のように改正する。
第三十四条第一項の表中
酪農審議会
酪農振興法(昭和二十九年法律第百八十二号)により酪農振興に関する重要事項を調査審議すること。
果樹農業振興審議会
果樹農業振興特別措置法(昭和三十六年法律第十五号)により果樹農業の振興に関する重要事項を調査審議すること。
酪農審議会
酪農振興法(昭和二十九年法律第百八十二号)により酪農振興に関する重要事項を調査審議すること。
に改める。
4 農林漁業金融公庫法の一部を次のように改正する。
第十八条第一項第一号の次に次の一号を加える。
一の二 果樹の植栽に必要な資金
別表中
(一) 農地又は牧野の改良、造成又は復旧に必要な資金
年   七分
   十五年
    七年
(一) 農地又は牧野の改良、造成又は復旧に必要な資金
年   七分
   十五年
    七年
(一の二) 果樹の植栽に必要な資金
年   八分
   十五年
    十年
に改める。
大蔵大臣 水田三喜男
農林大臣 周東英雄
内閣総理大臣 池田勇人