(目的)
第一条 この法律は、公立学校の学校医の公務上の災害に対する補償を行うとともに、当該補償に要する経費についての費用負担に関し必要な事項を定めることを目的とする。
(補償義務)
第二条 地方公共団体は、その設置する学校(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校をいう。)の非常勤の学校医(以下「学校医」という。)の公務上の災害(負傷、疾病、廃疾又は死亡をいう。以下同じ。)に対し、この法律の定めるところにより、補償を行わなければならない。
(補償の種類)
第三条 この法律により地方公共団体が行う学校医の公務上の災害に対する補償(以下「補償」という。)の種類は、次に掲げるものとする。
一 療養補償(学校医が公務上負傷し、又は疾病にかかつた場合における必要な療養の実施又は必要な療養の費用の支給)
二 休業補償(学校医が公務上負傷し、又は疾病にかかり、療養のため勤務その他の業務に従事することができない場合において、給与その他の業務上の収入を得ることができないときにおける補償)
三 障害補償(学校医が公務上負傷し、又は疾病にかかり、なおつた場合においてなお存する身体障害に対する補償)
四 遺族補償(学校医が公務上死亡した場合におけるその遺族に対する補償)
五 葬祭補償(学校医が公務上死亡した場合における葬祭を行う者に対する補償)
六 打切補償(学校医が療養補償開始後三年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合における補償)
(補償の範囲、金額、支給方法等)
第四条 前条各号の補償の範囲、金額及び支給方法その他補償に関し必要な事項は、政令で定める基準に従い、地方公共団体の条例で定める。ただし、市(特別区を含む。以下同じ。)町村立の小学校、中学校、盲学校、聾学校及び養護学校(以下「義務教育諸学校」という。)の学校医に関するものについては、都道府県の条例で定める。
2 前項の規定により政令で基準を定める場合には、政府は、国家公務員災害補償法(昭和二十六年法律第百九十一号)の規定を参しやくするとともに、前条各号の補償が、同一の学歴及び医師としての経験年数を有する常勤の国家公務員で職務上医師として医療に従事する者の公務上の災害に対し同法により行われる同種の補償と、おおむね同程度のものとなるようにこれを定めなければならない。
(都道府県の負担)
第五条 都道府県は、市町村立の義務教育諸学校の学校医に係るこの法律による補償に要する経費を負担しなければならない。
(国の負担)
第六条 国は、公立の義務教育諸学校の学校医に係るこの法律による補償に要する経費の二分の一を負担する。
(協議)
第七条 市町村の教育委員会は、第五条に規定する学校医に係るこの法律による補償を行う場合においては、あらかじめ都道府県の教育委員会と協議しなければならない。
(審査)
第八条 この法律による公務上の災害の認定、療養の方法、補償金額の決定その他補償の実施に関して異議のある者は、当該都道府県の人事委員会に対し、人事委員会規則で定めるところにより、審査の請求をすることができる。
2 前項の請求があつたときは、当該都道府県の人事委員会は、直ちにこれを審査して裁定を行い、これを本人及び当該教育委員会に通知しなければならない。
3 第一項の規定による審査の請求は、時効の中断に関しては、裁判上の請求とみなす。
(損害賠償の免責)
第九条 地方公共団体は、この法律による補償を行つた場合においては、同一の事由については、その価額の限度において、国家賠償法(昭和二十二年法律第百二十五号)又は民法(明治二十九年法律第八十九号)による損害賠償の責を免かれる。
(第三者に対する損害賠償の請求)
第十条 地方公共団体は、補償の原因である災害が第三者の行為によつて生じた場合においてこの法律による補償を行つたときは、その価額の限度において、この法律による補償を受けた者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。
2 前項の場合において、この法律による補償を受けるべき者が当該第三者から同一の事由につき損害賠償を受けたときは、地方公共団体は、その価額の限度において、この法律による補償の責を免かれる。
(補償を受ける権利)
第十一条 学校医が離職した場合においても、この法律による補償を受ける権利は、影響を受けない。
2 この法律による補償を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることはできない。
(時効)
第十二条 この法律による補償を受ける権利は、二年間行わないときは、時効により消滅する。
(非課税等)
第十三条 この法律により支給を受けた金品を標準として、租税その他の公課を課してはならない。
第十四条 この法律による補償に関する書類には、印紙税を課さない。
(無料証明)
第十五条 教育委員会又はこの法律による補償を受けようとする者は、学校医の戸籍に関して、戸籍事務をつかさどる者又はその代理者に対して無料で証明を請求することができる。