農林漁業資金融通法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十六年三月三十一日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百五号
農林漁業資金融通法
(目的)
第一條 この法律は、農林漁業の生産力の維持増進を図るため、農林漁業者に対し、長期且つ低利の資金を融通することを目的とする。
(資金の貸付)
第二條 政府は、前條に掲げる目的を達成するため、政令の定めるところにより、農業、畜産業、養蚕業、林業、漁業若しくは塩業を営む者又はこれらの者の組織する法人(以下「農林漁業者」という。)に対し、毎年度予算の範囲内において、左に掲げる資金を貸し付けることができる。
一 農地又は牧野の改良、造成又は復旧に必要な資金
二 造林に必要な資金
三 林道の開発又は復旧に必要な資金
四 漁港の修築又は復旧に必要な資金
五 塩田の改良、造成又は復旧に必要な資金
六 農林漁業者の共同利用に供する施設の造成、復旧又は取得に必要な資金
(貸付の條件)
第三條 前條の規定により貸し付ける資金(以下「貸付金」という。)の利率は、左表の範囲内で政令で定め、償還期限及び据置期間は、左表の範囲内で主務大臣が定める。
貸付金の種類
利率
償還期限
据置期間
最高
最低
一 農地又は牧野の改良、造成又は復旧に必要な資金
 イ 公共事業費による補助事業に係るもの
年七分
年六分
十五年
五年
 ロ その他のもの
年五分五厘
年四分四厘
十五年
三年
二 造林に必要な資金
 イ 公共事業費による補助事業に係るもの
年七分
年六分
二十年
五年
 ロ その他のもの
年五分
年四分
二十年
五年
三 林道の開発又は復旧に必要な資金
 イ 公共事業費による補助事業に係るもの
年八分
年七分
十五年
一年
 ロ その他のもの
年六分五厘
年五分五厘
十五年
一年
四 漁港の修築又は復旧に必要な資金
年七分
年六分
十五年
三年
五 塩田の改良、造成又は復旧に必要な資金
 イ 塩田等災害復旧事業等補助法(昭和二十五年法律第二百五十七号)による補助事業に係るもの
年八分
年七分
十五年
五年
 ロ その他のもの
年六分五厘
年五分五厘
十五年
三年
六 農林漁業者の共同利用に供する施設の造成、復旧又は取得に必要な資金
年八分
年七分
十五年
一年
2 貸付金の一事業当りの金額は、公共事業費による補助事業に係るもの及び塩田等災害復旧事業費補助法(昭和二十五年法律第二百五十七号)による補助事業に係るものについては、当該事業に要する費用の額から当該事業について支出される補助金の額を控除した金額の八割に相当する金額、その他の事業に係るものについては、当該事業に要する費用の八割に相当する金額を限度とする。
3 貸付金の償還は、割賦償還の方法によるものとする。但し、資金の貸付を受けた者(その者の包括承継人を含む。以下同じ。)は、貸付金についていつでも繰上償還をすることができる。
4 政府は、前項の規定にかかわらず、左の各号の一に該当する場合には、貸付を受けた者に対し、いつでも貸付金につき一時償還を請求することができる。
一 貸付を受けた者が償還金の支拂を怠つたとき。
二 貸付を受けた者(その者が法人であるときは、その法人を組織する者を含む。)が貸付金を貸付の目的以外の目的に使用したとき。
三 前各号に掲げる場合の外、貸付を受けた者が正当な理由がなくて契約の條項に違反したとき。
5 政府は、資金の貸付を行う場合には、担保を提供させなければならない。但し、担保を提供させることが著しく困難であると認めるときは、その提供を免除することができる。
6 貸付を受けた者が、災害その他特別の事由により、元利金の支拂が著しく困難となつた場合には、政府は、貸付の條件の変更又は延滯元利金の支拂方法の変更をすることができる。
(貸付金の使途の規正)
第四條 貸付を受けた者は、貸付金を貸付の目的以外の目的に使用してはならない。
2 政府は、貸付金が貸付の目的以外の目的に使用されることを防止するために、必要に応じ、貸付金をもつて行う事業の工事施工者等に対して直接に資金を交付する等資金の交付に関し適切な措置をとることができる。
(業務の委託等)
第五條 政府は、農林中央金庫その他主務大臣の指定する金融機関に対し、貸付に関する申込の受理及び審査、資金の貸付、元利金の回收その他貸付及び回收に関する業務を委託することができる。但し、貸付の決定については、この限りでない。
2 政府は、前項の規定により業務の一部を委託しようとする場合においては、当該業務の委託を受ける者(以下「受託者」という。)の受託業務に関する準則を省令で定めなければならない。
3 受託者たる金融機関の役員又は職員であつて第一項の規定による委託業務に従事する者は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の規定の適用については、これを法令により公務に従事する職員とみなす。
4 農林中央金庫は、農林中央金庫法(大正十二年法律第四十二号)第十六條の規定にかかわらず、第一項の規定による業務を行い、及び資金の貸付に基く国の債権につき債務の保証をすることができる。
(報告及び検査)
第六條 政府は、必要があると認めるときは、貸付を受けた者若しくは受託者に対して報告をさせ、又はその職員をして貸付を受けた者若しくは受託者の業務の状況若しくは帳簿、書類その他必要な物件を検査させることができる。但し、貸付を受けた者に対しては貸付金をもつて行う事業の範囲内、受託者に対しては当該委託業務の範囲内に限る。
2 前項の規定により職員が立入検査をする場合においては、その身分を示す証票を携帶し、関係人の請求があつたときは、これを呈示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(主務大臣)
第七條 この法律における主務大臣は、農林大臣及び大蔵大臣とする。
(罰則)
第八條 貸付を受けた者又は受託者たる金融機関の役員若しくは職員が、第六條の規定に違反して報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したときは、三万円以下の罰金に処する。
附 則
1 この法律は、昭和二十六年四月一日から施行する。
2 農林省設置法(昭和二十四年法律第百五十三号)の一部を次のように改正する。
第七條第十三号の二を第十三号の三とし、第十三号の次に次の一号を加える。
十三の二 農林漁業資金を融通すること。
3 大蔵省設置法(昭和二十四年法律第四十四号)の一部を次のように改正する。
第十二條第五号の次に次の一号を加える。
五の二 農林漁業資金を融通すること。
大蔵大臣 池田勇人
農林大臣 廣川弘禅
内閣総理大臣 吉田茂
農林漁業資金融通法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十六年三月三十一日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百五号
農林漁業資金融通法
(目的)
第一条 この法律は、農林漁業の生産力の維持増進を図るため、農林漁業者に対し、長期且つ低利の資金を融通することを目的とする。
(資金の貸付)
第二条 政府は、前条に掲げる目的を達成するため、政令の定めるところにより、農業、畜産業、養蚕業、林業、漁業若しくは塩業を営む者又はこれらの者の組織する法人(以下「農林漁業者」という。)に対し、毎年度予算の範囲内において、左に掲げる資金を貸し付けることができる。
一 農地又は牧野の改良、造成又は復旧に必要な資金
二 造林に必要な資金
三 林道の開発又は復旧に必要な資金
四 漁港の修築又は復旧に必要な資金
五 塩田の改良、造成又は復旧に必要な資金
六 農林漁業者の共同利用に供する施設の造成、復旧又は取得に必要な資金
(貸付の条件)
第三条 前条の規定により貸し付ける資金(以下「貸付金」という。)の利率は、左表の範囲内で政令で定め、償還期限及び据置期間は、左表の範囲内で主務大臣が定める。
貸付金の種類
利率
償還期限
据置期間
最高
最低
一 農地又は牧野の改良、造成又は復旧に必要な資金
 イ 公共事業費による補助事業に係るもの
年七分
年六分
十五年
五年
 ロ その他のもの
年五分五厘
年四分四厘
十五年
三年
二 造林に必要な資金
 イ 公共事業費による補助事業に係るもの
年七分
年六分
二十年
五年
 ロ その他のもの
年五分
年四分
二十年
五年
三 林道の開発又は復旧に必要な資金
 イ 公共事業費による補助事業に係るもの
年八分
年七分
十五年
一年
 ロ その他のもの
年六分五厘
年五分五厘
十五年
一年
四 漁港の修築又は復旧に必要な資金
年七分
年六分
十五年
三年
五 塩田の改良、造成又は復旧に必要な資金
 イ 塩田等災害復旧事業等補助法(昭和二十五年法律第二百五十七号)による補助事業に係るもの
年八分
年七分
十五年
五年
 ロ その他のもの
年六分五厘
年五分五厘
十五年
三年
六 農林漁業者の共同利用に供する施設の造成、復旧又は取得に必要な資金
年八分
年七分
十五年
一年
2 貸付金の一事業当りの金額は、公共事業費による補助事業に係るもの及び塩田等災害復旧事業費補助法(昭和二十五年法律第二百五十七号)による補助事業に係るものについては、当該事業に要する費用の額から当該事業について支出される補助金の額を控除した金額の八割に相当する金額、その他の事業に係るものについては、当該事業に要する費用の八割に相当する金額を限度とする。
3 貸付金の償還は、割賦償還の方法によるものとする。但し、資金の貸付を受けた者(その者の包括承継人を含む。以下同じ。)は、貸付金についていつでも繰上償還をすることができる。
4 政府は、前項の規定にかかわらず、左の各号の一に該当する場合には、貸付を受けた者に対し、いつでも貸付金につき一時償還を請求することができる。
一 貸付を受けた者が償還金の支払を怠つたとき。
二 貸付を受けた者(その者が法人であるときは、その法人を組織する者を含む。)が貸付金を貸付の目的以外の目的に使用したとき。
三 前各号に掲げる場合の外、貸付を受けた者が正当な理由がなくて契約の条項に違反したとき。
5 政府は、資金の貸付を行う場合には、担保を提供させなければならない。但し、担保を提供させることが著しく困難であると認めるときは、その提供を免除することができる。
6 貸付を受けた者が、災害その他特別の事由により、元利金の支払が著しく困難となつた場合には、政府は、貸付の条件の変更又は延滞元利金の支払方法の変更をすることができる。
(貸付金の使途の規正)
第四条 貸付を受けた者は、貸付金を貸付の目的以外の目的に使用してはならない。
2 政府は、貸付金が貸付の目的以外の目的に使用されることを防止するために、必要に応じ、貸付金をもつて行う事業の工事施工者等に対して直接に資金を交付する等資金の交付に関し適切な措置をとることができる。
(業務の委託等)
第五条 政府は、農林中央金庫その他主務大臣の指定する金融機関に対し、貸付に関する申込の受理及び審査、資金の貸付、元利金の回収その他貸付及び回収に関する業務を委託することができる。但し、貸付の決定については、この限りでない。
2 政府は、前項の規定により業務の一部を委託しようとする場合においては、当該業務の委託を受ける者(以下「受託者」という。)の受託業務に関する準則を省令で定めなければならない。
3 受託者たる金融機関の役員又は職員であつて第一項の規定による委託業務に従事する者は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の規定の適用については、これを法令により公務に従事する職員とみなす。
4 農林中央金庫は、農林中央金庫法(大正十二年法律第四十二号)第十六条の規定にかかわらず、第一項の規定による業務を行い、及び資金の貸付に基く国の債権につき債務の保証をすることができる。
(報告及び検査)
第六条 政府は、必要があると認めるときは、貸付を受けた者若しくは受託者に対して報告をさせ、又はその職員をして貸付を受けた者若しくは受託者の業務の状況若しくは帳簿、書類その他必要な物件を検査させることができる。但し、貸付を受けた者に対しては貸付金をもつて行う事業の範囲内、受託者に対しては当該委託業務の範囲内に限る。
2 前項の規定により職員が立入検査をする場合においては、その身分を示す証票を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを呈示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(主務大臣)
第七条 この法律における主務大臣は、農林大臣及び大蔵大臣とする。
(罰則)
第八条 貸付を受けた者又は受託者たる金融機関の役員若しくは職員が、第六条の規定に違反して報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したときは、三万円以下の罰金に処する。
附 則
1 この法律は、昭和二十六年四月一日から施行する。
2 農林省設置法(昭和二十四年法律第百五十三号)の一部を次のように改正する。
第七条第十三号の二を第十三号の三とし、第十三号の次に次の一号を加える。
十三の二 農林漁業資金を融通すること。
3 大蔵省設置法(昭和二十四年法律第四十四号)の一部を次のように改正する。
第十二条第五号の次に次の一号を加える。
五の二 農林漁業資金を融通すること。
大蔵大臣 池田勇人
農林大臣 広川弘禅
内閣総理大臣 吉田茂