(この法律の目的)
第一條 この法律は、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定を実施するため、日本国に駐留するアメリカ合衆国の軍隊(以下「駐留軍」という。)の用に供する土地等の使用又は収用に関し規定することを目的とする。
(定義)
第二條 この法律において「土地等」とは、土地若しくは建物若しくはこれらに定着する物件又は土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)第五條に規定する権利をいい、建物にある設備又は備品で当該建物の運営上これと一体的に使用されるべきものを含むものとする。
(土地等の使用又は収用)
第三條 駐留軍の用に供するため土地等を必要とする場合において、その土地等を駐留軍の用に供することが適正且つ合理的であるときは、この法律の定めるところにより、これを使用し、又は収用することができる。
(土地等の使用又は収用の認定の申請)
第四條 調達局長は、この法律により土地等を使用し、又は収用しようとするときは、土地等の所有者(土地収用法第五條に規定する権利にあつては、権利者。以下同じ。)又は関係人の意見書その他政令で定める書類を添附の上、使用認定申請書又は収用認定申請書を調達庁長官を通じ内閣総理大臣に提出し、その認定を受けなければならない。
2 前項の使用認定申請書及び収用認定申請書の様式は、総理府令で定める。
(土地等の使用又は収用の認定)
第五條 内閣総理大臣は、申請に係る土地等の使用又は収用が第三條に規定する要件に該当すると認めるときは、遅滞なく、土地等の使用又は収用の認定をしなければならない。
(関係行政機関等の意見の聴取)
第六條 内閣総理大臣は、土地等の使用又は収用の認定に関する処分を行おうとする場合において、必要があると認めるときは、関係行政機関の長及び学識経験を有する者の意見を求めることができる。
2 関係行政機関の長は、土地等の使用又は収用の認定に関する処分について、内閣総理大臣に意見を述べることができる。
(土地等の使用又は収用の認定に関する処分の通知、告示及び公告)
第七條 内閣総理大臣は、土地等の使用又は収用の認定をしたときは、遅滞なく、その旨を当該調達局長に文書で通知するとともに、当該調達局長の名称及び使用し、又は収用すべき土地等を官報で告示しなければならない。
2 調達局長は、前項の通知を受けたときは、遅滞なく、使用し、又は収用しようとする土地等の所在、種類及び数量を、調達局長が定める方法で公告するとともに、土地等の所有者及び関係人に通知しなければならない。
3 内閣総理大臣は、土地等の使用又は収用の認定を拒否したときは、遅滞なく、その旨を当該調達局長に文書で通知しなければならない。
(土地等の使用又は収用の認定の失効)
第八條 前條第一項の規定による告示があつた後、土地等を使用し、又は収用する必要がなくなつたときは、調達局長は、遅滞なく、その旨を内閣総理大臣に報告しなければならない。この場合において、その事由の発生が同條第二項の規定による通知の後であるときは、土地等の所有者及び関係人にも、遅滞なく、その旨を通知しなければならない。
2 内閣総理大臣は、前項の規定による報告を受けたときは、土地等の使用又は収用の認定が将来に向つてその効力を失う旨を官報で告示しなければならない。
(建物の使用に代る収用の請求)
第九條 建物を使用する場合において、建物の使用が三年以上(使用期間の更新の結果三年以上となる場合を含む。)にわたるとき、又は建物の使用に因つて建物の形状を変更し従来用いた目的に供することを著しく困難にするときは、建物の所有者は、その建物の収用を請求することができる。
2 土地収用法第八十一條第二項及び第三項の規定は、前項の規定による建物の収用について準用する。この場合において、土地収用法第八十一條第二項中「土地」とあるのは「建物」と、同條第三項第二号中「起業者」とあるのは「調達局長」と、「事業」とあるのは「建物の使用」と読み替えるものとする。
(土地等の使用に対する損失補償の金額の支払)
第十條 土地等を使用する場合において、その使用の期間が一年をこえるときは、調達局長は、当該使用に対する損失補償の金額を一年分ごとに分割して支払うことができる。但し、その支払は、当該分割して支払われる損失補償の金額に対応する使用の期間の開始する日までにしなければならない。
(土地等の返還及び原状回復の制限)
第十一條 調達局長は、この法律により駐留軍の用に供した土地等を返還するに際し、土地等の所有者から原状回復の請求があつた場合において、土地等を原状に回復することが著しく困難であるとき、又は土地等を原状に回復しないでもこれを有効且つ合理的に使用することができると認めるときは、その土地等を原状に回復しないで返還することができる。
2 前項の場合においては、土地等の所有者及び関係人の受ける損失は、補償しなければならない。
3 土地等を原状に回復しないで返還する場合において、建物の使用中に有益費が費されたことに因り、その建物の所有者に利得が生じているときは、利得の存する限度において、これを国に納付させることができる。
4 前項の規定により納付すべき金額については、政令で定めるところにより、七年以内の範囲内において延納を認めることができる。
(不服の申立)
第十二條 前條第一項の規定により原状に回復しないで返還すること、同條第二項の規定による損失の補償又は同條第三項の規定による利得の納付について不服のある者は、政令で定めるところにより、内閣総理大臣に対し不服の申立をすることができる。
2 内閣総理大臣は、前項の不服の申立に対し裁決をしようとするときは、あらかじめ、中央調達不動産審議会の意見を聞かなければならない。
(引渡調書)
第十三條 調達局長は、土地等を返還するときは、その土地等の所有者及び関係人を立ち会わせた上、総理府令で定める引渡調書を作成しなければならない。
2 前項の引渡調書には、左に掲げる事項を記載しなければならない。
一 返還する土地等の所在、地番及び地目並びに土地等の所有者及び関係人の氏名及び住所
3 土地収用法第三十六條第二項から第五項まで及び第三十八條の規定は、前項の引渡調書の作成及び効力について準用する。この場合において、これらの規定中「土地調書及び物件調書」とあるのは「引渡調書」と、「起業者」とあるのは「調達局長」と、「土地所有者」とあるのは「土地等の所有者」と読み替えるものとする。
(土地収用法の適用)
第十四條 第三條の規定による土地等の使用又は収用に関しては、この法律に特別の定のある場合を除く外、「土地等の使用又は収用」を「土地収用法第三條各号の一に掲げる事業」と、「調達局長」を「起業者」と、「土地等の使用又は収用の認定」を「事業の認定」と、「土地等の使用又は収用の認定の告示」を「事業の認定の告示」と、「第七條第二項の規定による公告及び通知」を「土地収用法第三十三條の規定による土地細目の公告及び通知」とみなして、土地収用法の規定(第一條から第三條まで、第五條から第七條まで、第八條第一項、第九條、第三章、第三十一條から第三十三條まで、第五章第一節、第百二十二條、第百二十三條第六項、第百二十五條第一号及び第三号から第五号まで、第百二十九條第一項、第百三十條第一項、第百三十九條並びに第百四十三條第五号の規定を除く。)を適用する。但し、土地等の使用の期間が一年をこえる場合においては、土地収用法第九十五條第一項及び第百條中「裁決に係る補償金の払渡」とあるのは、「裁決に係る補償金のうち、使用に対する損失補償に係るもの中最初の一年間の使用に対応する部分の払渡」とする。
2 前項但書に規定するものを除く外、同項の適用に関し必要な技術的事項は、政令で定める。