狂犬病予防法
法令番号: 法律第247号
公布年月日: 昭和25年8月26日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

狂犬病は人や他の動物にも感染する重篤な伝染病であり、一度発病すると不治の病となる。近年、犬の飼育頭数と野犬の増加に伴い、関東地方を中心に狂犬病が蔓延し、社会不安を引き起こしている。従来は家畜伝染病予防法で対応してきたが、狂犬病は他の家畜伝染病とは性質が異なり、防疫措置も大きく異なることから、独立した法律で適切な防疫措置を講じる必要がある。全国民の安全を確保するため、速やかに狂犬病を撲滅することを目的として本法案を提案する。

参照した発言:
第8回国会 衆議院 厚生委員会 第7号

審議経過

第8回国会

衆議院
(昭和25年7月29日)
(昭和25年7月29日)
参議院
(昭和25年7月30日)
衆議院
(昭和25年7月31日)
(昭和25年7月31日)
参議院
(昭和25年7月31日)
(昭和25年7月31日)
狂犬病予防法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十五年八月二十六日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第二百四十七号
狂犬病予防法
目次
第一章
総則(第一條―第三條)
第二章
通常措置(第四條―第七條)
第三章
狂犬病発生時の措置(第八條―第十九條)
第四章
補則(第二十條―第二十五條)
第五章
罰則(第二十六條・第二十七條)
附則
第一章 総則
(目的)
第一條 この法律は、狂犬病の発生を予防し、そのまん延を防止し、及びこれを撲滅することにより、公衆衞生の向上及び公共の福祉の増進を図ることを目的とする。
(適用範囲)
第二條 この法律は、動物の狂犬病のうち、犬の狂犬病に限りこれを適用する。但し、厚生大臣は、家畜伝染病予防法(大正十一年法律第二十九号)第一條第一項に掲げる家畜以外の動物について狂犬病が発生して公衆衞生に重大な影響があると認めるときは、動物の種類、期間及び地域を指定してこの法律の一部を準用することができる。この場合において、その期間は、一年をこえることができない。
(狂犬病予防員)
第三條 都道府県知事は、当該都道府県の職員で獸医師であるもののうちから狂犬病予防員(以下「予防員」という。)を任命しなければならない。
2 予防員は、その事務に従事するときは、その身分を示す証票を携帶し、関係人の求めにより、これを呈示しなければならない。
第二章 通常措置
(登録)
第四條 犬の所有者は、厚生省令の定めるところにより毎年一回その犬の所在地を管轄する都道府県知事に市町村長(都の区の存する区域にあつては区長とする。以下同じ。)を経て犬の登録を申請しなければならない。
2 都道府県知事は、前項の登録の申請があつたときは、原簿に登録し、その犬の所有者に犬の鑑札を前項の市町村長を経て交付しなければならない。
3 犬の所有者は、前項の鑑札をその犬に着けておかなければならない。
4 都道府県知事は、犬の登録について、一頭につき一年三百円以内の手数料を徴收することができる。
(予防注射)
第五條 犬の所有者(所有者以外の者が管理する場合には、その者。以下同じ。)は、その犬について、厚生省令の定めるところにより、狂犬病の予防注射を六箇月ごとに受けさせなければならない。
2 保健所長は、前項の予防注射を受けた犬の所有者に注射済票を交付しなければならない。
3 犬の所有者は、前項の注射済票をその犬に着けておかなければならない。
(抑留)
第六條 予防員は、第四條に規定する登録を受けず、若しくは鑑札を着けず、又は前條に規定する予防注射を受けず、若しくは注射済票を着けていない犬があると認めたときは、これを抑留しなければならない。
2 予防員は、前項の抑留を行うため、あらかじめ、都道府県知事が指定した捕獲人を使用して、その犬を捕獲することができる。
3 前項の捕獲人が犬の捕獲に従事するときは、第三條第二項の規定を準用する。
4 予防員は、第一項の規定により犬を抑留したときは、所有者の知れているものについてはその所有者にこれを引き取るべき旨を通知し、所有者の知れていないものについてはその犬を抑留した場所を管轄する市町村長にその旨を通知しなければならない。
5 市町村長は、前項の規定による通知を受けたときは、その旨を二日間公示しなければならない。
6 第四項の通知を受け取つた後又は前項の公示期間満了の後三日以内に所有者がその犬を引き取らないときは、予防員は、これを処分することができる。
7 前項の場合において、都道府県は、その処分によつて損害を受けた所有者に通常生ずべき損害を補償する。
(輸出入検疫)
第七條 何人も、検疫を受けた犬でなければ輸出し、又は輸入してはならない。
2 前項の検疫に関する事務は、農林大臣の所管とし、その検疫に関する事項は、農林省令でこれを定める。
第三章 狂犬病発生時の措置
(届出義務)
第八條 狂犬病にかかつた犬若しくは狂犬病にかかつた疑のある犬又はこれらの犬にかまれた犬については、これを診断し、又はその死体を検案した獸医師は、厚生省令の定めるところにより、直ちに、その犬の所在地を管轄する市町村長にその旨を届け出なければならない。但し、獸医師の診断又は検案を受けない場合においては、その犬の所有者がこれをしなければならない。
2 市町村長は、前項の届出があつたときは、直ちに、その旨を都道府県知事に報告しなければならない。
3 都道府県知事は、前項の報告を受けたときは、厚生大臣に報告し、且つ、隣接都道府県知事に通報しなければならない。
(隔離義務)
第九條 前條第一項の犬を診断した獸医師又はその所有者は、直ちに、その犬を隔離しなければならない。但し、人命に危險があつて緊急やむをえないときは、殺すことをさまたげない。
2 予防員は、前項の隔離について必要な指示をすることができる。
(公示及びけい留命令等)
第十條 都道府県知事は、狂犬病(狂犬病の疑似症を含む。以下この章から第五章まで同じ。)が発生したと認めたときは、直ちに、その旨を公示し、その発生地を中心として半径五キロメートル以内における区域及び期間を定めて、その区域内のすべての犬に口輪をかけ、又はこれをけい留することを命じなければならない。
(殺害禁止)
第十一條 第九條第一項の規定により隔離された犬は、予防員の許可を受けなければこれを殺してはならない。
(死体の引渡)
第十二條 第八條第一項に規定する犬が死んだ場合には、その所有者は、その死体を検査又は解剖のため予防員に引き渡さなければならない。但し、予防員が許可した場合又はその引取を必要としない場合は、この限りでない。
(検診及び予防注射)
第十三條 都道府県知事は、狂犬病が発生した場合において、そのまん延の防止及び撲滅のため必要と認めるときは、期間及び区域を定めて予防員をして犬の一せい検診をさせ、又は臨時の予防注射を行わせることができる。
(病性鑑定のための措置)
第十四條 予防員は、病性鑑定のため必要があるときは、都道府県知事の許可を受けて、犬の死体を解剖し、又は解剖のため狂犬病にかかつた犬を殺すことができる。
2 前項の場合においては、第六條第七項の規定を準用する。
(移動の制限)
第十五條 都道府県知事は、狂犬病のまん延の防止及び撲滅のため必要と認めるときは、期間及び区域を定めて、犬又はその死体の当該都道府県の区域内における移動、当該都道府県内への移入又は当該都道府県外への移出を禁止し、又は制限することができる。
(交通のしや断又は制限)
第十六條 都道府県知事は、狂犬病が発生した場合において緊急の必要があると認めるときは、厚生省令の定めるところにより、期間を定めて、狂犬病にかかつた犬の所在の場所及びその附近の交通をしや断し、又は制限することができる。但し、その期間は、七十二時間をこえることができない。
(集合施設の禁止)
第十七條 都道府県知事は、狂犬病のまん延の防止及び撲滅のため必要と認めるときは、犬の展覽会その他の集合施設の禁止を命ずることができる。
(けい留されていない犬の抑留)
第十八條 都道府県知事は、狂犬病のまん延の防止及び撲滅のため必要と認めるときは、予防員をして第十條の規定によるけい留の命令が発せられているにかかわらずけい留されていない犬を抑留させることができる。
2 前項の場合には、第六條第二項から第七項までの規定を準用する。
(厚生大臣の実施命令)
第十九條 厚生大臣は、狂犬病のまん延の防止及び撲滅のため緊急の必要があると認めるときは、地域及び期間を限り、都道府県知事に第十三條及び第十五條から前條までの規定による措置の実施を命ずることができる。
第四章 補則
(公務員等の協力)
第二十條 公衆衞生又は治安維持の職務にたずさわる公務員及び獸医師は、狂犬病予防のため、予防員から協力を求められたときは、これを拒んではならない。
(抑留所の設置)
第二十一條 都道府県知事は、第六條及び第十八條の規定により抑留した犬を收容するため、当該都道府県内に犬の抑留所を設け、予防員にこれを管理させなければならない。
(手数料の費途)
第二十二條 第四條第四項の規定により徴收された手数料は、すべてこの法律の目的達成のために用いられなければならない。
(費用負担区分)
第二十三條 この法律の規定の実施に要する費用は、左に掲げるものを除き、都道府県の負担とする。
第一 国の負担する費用
第七條の規定による輸出入検疫に要する費用(輸出入検疫中の犬の飼養管理費を除く。)
第二 犬の所有者の負担する費用
一 第四條の規定による登録の手続に要する費用
二 第五條及び第十三條の規定による犬の予防注射の費用
三 第六條及び第十八條の規定による犬の抑留中の飼養管理費及びその返還に要する費用
四 第七條の規定による輸出入検疫中の犬の飼養管理費
五 第八條の規定による届出に要する費用
六 第九條の規定による隔離及び指示により行つた処置に要した費用
(処分等の行為の承継人に対する効力)
第二十四條 この法律又はこの法律に基く命令の規定による処分及び手続その他の行為は、当該行為の目的である犬について所有権その他の権利を有する者の承継人に対しても、またその効力を有する。
(政令で定める市)
第二十五條 この法律中「都道府県」又は「都道府県知事」とあるのは、保健所法(昭和二十二年法律第百一号)第一條の規定に基く政令で定める市については、「市」又は「市長」と読み替えるものとする。但し、第八條第二項及び第三項の規定については、この限りでない。
第五章 罰則
第二十六條 左の各号の一に該当する者は、五万円以下の罰金に処する。
一 第七條の規定に違反して検疫を受けない犬(第二條の規定により準用した場合における動物を含む。以下この章中同じ。)を輸出し、又は輸入した者
二 第八條第一項の規定に違反して犬についての届出をしなかつた者
三 第九條第一項の規定に違反して犬を隔離しなかつた者
第二十七條 左の各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する。
一 第四條の規定に違反して犬の登録の申請をせず、又は鑑札を犬に着けなかつた者
二 第五條の規定に違反して犬に予防注射を受けさせず、又は注射済票を着けなかつた者
三 第九條第二項に規定する犬の隔離についての指示に従わなかつた者
四 第十條に規定する犬に口輪をかけ、又はこれをけい留する命令に従わなかつた者
五 第十一條の規定に違反して犬を殺した者
六 第十二條の規定に違反して犬の死体を引き渡さなかつた者
七 第十三條に規定する犬の検診又は予防注射を受けさせなかつた者
八 第十五條に規定する犬又はその死体の移動、移入又は移出の禁止又は制限に従わなかつた者
九 第十六條に規定する犬の狂犬病のための交通のしや断又は制限に従わなかつた者
十 第十七條に規定する犬の集合施設の禁止の命令に従わなかつた者
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 昭和二十五年における第四條に規定する犬の登録及び第五條に規定する予防注射は、同年九月三十日までにこれを行うように厚生省令をもつて定めなければならない。
3 家畜伝染病予防法の一部を次のように改正する。
第一條第一項中「犬、」を削る。
第四條第一項第一号中「牛疫、牛肺疫又ハ狂犬病」を「牛疫又ハ牛肺疫」に改め、同條第二項を削る。
第五條第一項第一号中「豚ノパラチフス、」の次に「狂犬病、」を加える。
第十七條を次のように改める。
第十七條 削除
第二十三條第三項第五号を削り、第六号を第五号とする。
第二十四條第一項第一号但書中「犬及」を削る。
4 この法律施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
内閣総理大臣 吉田茂
厚生大臣 黒川武雄
農林大臣 広川弘禪
狂犬病予防法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十五年八月二十六日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第二百四十七号
狂犬病予防法
目次
第一章
総則(第一条―第三条)
第二章
通常措置(第四条―第七条)
第三章
狂犬病発生時の措置(第八条―第十九条)
第四章
補則(第二十条―第二十五条)
第五章
罰則(第二十六条・第二十七条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、狂犬病の発生を予防し、そのまん延を防止し、及びこれを撲滅することにより、公衆衛生の向上及び公共の福祉の増進を図ることを目的とする。
(適用範囲)
第二条 この法律は、動物の狂犬病のうち、犬の狂犬病に限りこれを適用する。但し、厚生大臣は、家畜伝染病予防法(大正十一年法律第二十九号)第一条第一項に掲げる家畜以外の動物について狂犬病が発生して公衆衛生に重大な影響があると認めるときは、動物の種類、期間及び地域を指定してこの法律の一部を準用することができる。この場合において、その期間は、一年をこえることができない。
(狂犬病予防員)
第三条 都道府県知事は、当該都道府県の職員で獣医師であるもののうちから狂犬病予防員(以下「予防員」という。)を任命しなければならない。
2 予防員は、その事務に従事するときは、その身分を示す証票を携帯し、関係人の求めにより、これを呈示しなければならない。
第二章 通常措置
(登録)
第四条 犬の所有者は、厚生省令の定めるところにより毎年一回その犬の所在地を管轄する都道府県知事に市町村長(都の区の存する区域にあつては区長とする。以下同じ。)を経て犬の登録を申請しなければならない。
2 都道府県知事は、前項の登録の申請があつたときは、原簿に登録し、その犬の所有者に犬の鑑札を前項の市町村長を経て交付しなければならない。
3 犬の所有者は、前項の鑑札をその犬に着けておかなければならない。
4 都道府県知事は、犬の登録について、一頭につき一年三百円以内の手数料を徴収することができる。
(予防注射)
第五条 犬の所有者(所有者以外の者が管理する場合には、その者。以下同じ。)は、その犬について、厚生省令の定めるところにより、狂犬病の予防注射を六箇月ごとに受けさせなければならない。
2 保健所長は、前項の予防注射を受けた犬の所有者に注射済票を交付しなければならない。
3 犬の所有者は、前項の注射済票をその犬に着けておかなければならない。
(抑留)
第六条 予防員は、第四条に規定する登録を受けず、若しくは鑑札を着けず、又は前条に規定する予防注射を受けず、若しくは注射済票を着けていない犬があると認めたときは、これを抑留しなければならない。
2 予防員は、前項の抑留を行うため、あらかじめ、都道府県知事が指定した捕獲人を使用して、その犬を捕獲することができる。
3 前項の捕獲人が犬の捕獲に従事するときは、第三条第二項の規定を準用する。
4 予防員は、第一項の規定により犬を抑留したときは、所有者の知れているものについてはその所有者にこれを引き取るべき旨を通知し、所有者の知れていないものについてはその犬を抑留した場所を管轄する市町村長にその旨を通知しなければならない。
5 市町村長は、前項の規定による通知を受けたときは、その旨を二日間公示しなければならない。
6 第四項の通知を受け取つた後又は前項の公示期間満了の後三日以内に所有者がその犬を引き取らないときは、予防員は、これを処分することができる。
7 前項の場合において、都道府県は、その処分によつて損害を受けた所有者に通常生ずべき損害を補償する。
(輸出入検疫)
第七条 何人も、検疫を受けた犬でなければ輸出し、又は輸入してはならない。
2 前項の検疫に関する事務は、農林大臣の所管とし、その検疫に関する事項は、農林省令でこれを定める。
第三章 狂犬病発生時の措置
(届出義務)
第八条 狂犬病にかかつた犬若しくは狂犬病にかかつた疑のある犬又はこれらの犬にかまれた犬については、これを診断し、又はその死体を検案した獣医師は、厚生省令の定めるところにより、直ちに、その犬の所在地を管轄する市町村長にその旨を届け出なければならない。但し、獣医師の診断又は検案を受けない場合においては、その犬の所有者がこれをしなければならない。
2 市町村長は、前項の届出があつたときは、直ちに、その旨を都道府県知事に報告しなければならない。
3 都道府県知事は、前項の報告を受けたときは、厚生大臣に報告し、且つ、隣接都道府県知事に通報しなければならない。
(隔離義務)
第九条 前条第一項の犬を診断した獣医師又はその所有者は、直ちに、その犬を隔離しなければならない。但し、人命に危険があつて緊急やむをえないときは、殺すことをさまたげない。
2 予防員は、前項の隔離について必要な指示をすることができる。
(公示及びけい留命令等)
第十条 都道府県知事は、狂犬病(狂犬病の疑似症を含む。以下この章から第五章まで同じ。)が発生したと認めたときは、直ちに、その旨を公示し、その発生地を中心として半径五キロメートル以内における区域及び期間を定めて、その区域内のすべての犬に口輪をかけ、又はこれをけい留することを命じなければならない。
(殺害禁止)
第十一条 第九条第一項の規定により隔離された犬は、予防員の許可を受けなければこれを殺してはならない。
(死体の引渡)
第十二条 第八条第一項に規定する犬が死んだ場合には、その所有者は、その死体を検査又は解剖のため予防員に引き渡さなければならない。但し、予防員が許可した場合又はその引取を必要としない場合は、この限りでない。
(検診及び予防注射)
第十三条 都道府県知事は、狂犬病が発生した場合において、そのまん延の防止及び撲滅のため必要と認めるときは、期間及び区域を定めて予防員をして犬の一せい検診をさせ、又は臨時の予防注射を行わせることができる。
(病性鑑定のための措置)
第十四条 予防員は、病性鑑定のため必要があるときは、都道府県知事の許可を受けて、犬の死体を解剖し、又は解剖のため狂犬病にかかつた犬を殺すことができる。
2 前項の場合においては、第六条第七項の規定を準用する。
(移動の制限)
第十五条 都道府県知事は、狂犬病のまん延の防止及び撲滅のため必要と認めるときは、期間及び区域を定めて、犬又はその死体の当該都道府県の区域内における移動、当該都道府県内への移入又は当該都道府県外への移出を禁止し、又は制限することができる。
(交通のしや断又は制限)
第十六条 都道府県知事は、狂犬病が発生した場合において緊急の必要があると認めるときは、厚生省令の定めるところにより、期間を定めて、狂犬病にかかつた犬の所在の場所及びその附近の交通をしや断し、又は制限することができる。但し、その期間は、七十二時間をこえることができない。
(集合施設の禁止)
第十七条 都道府県知事は、狂犬病のまん延の防止及び撲滅のため必要と認めるときは、犬の展覧会その他の集合施設の禁止を命ずることができる。
(けい留されていない犬の抑留)
第十八条 都道府県知事は、狂犬病のまん延の防止及び撲滅のため必要と認めるときは、予防員をして第十条の規定によるけい留の命令が発せられているにかかわらずけい留されていない犬を抑留させることができる。
2 前項の場合には、第六条第二項から第七項までの規定を準用する。
(厚生大臣の実施命令)
第十九条 厚生大臣は、狂犬病のまん延の防止及び撲滅のため緊急の必要があると認めるときは、地域及び期間を限り、都道府県知事に第十三条及び第十五条から前条までの規定による措置の実施を命ずることができる。
第四章 補則
(公務員等の協力)
第二十条 公衆衛生又は治安維持の職務にたずさわる公務員及び獣医師は、狂犬病予防のため、予防員から協力を求められたときは、これを拒んではならない。
(抑留所の設置)
第二十一条 都道府県知事は、第六条及び第十八条の規定により抑留した犬を収容するため、当該都道府県内に犬の抑留所を設け、予防員にこれを管理させなければならない。
(手数料の費途)
第二十二条 第四条第四項の規定により徴収された手数料は、すべてこの法律の目的達成のために用いられなければならない。
(費用負担区分)
第二十三条 この法律の規定の実施に要する費用は、左に掲げるものを除き、都道府県の負担とする。
第一 国の負担する費用
第七条の規定による輸出入検疫に要する費用(輸出入検疫中の犬の飼養管理費を除く。)
第二 犬の所有者の負担する費用
一 第四条の規定による登録の手続に要する費用
二 第五条及び第十三条の規定による犬の予防注射の費用
三 第六条及び第十八条の規定による犬の抑留中の飼養管理費及びその返還に要する費用
四 第七条の規定による輸出入検疫中の犬の飼養管理費
五 第八条の規定による届出に要する費用
六 第九条の規定による隔離及び指示により行つた処置に要した費用
(処分等の行為の承継人に対する効力)
第二十四条 この法律又はこの法律に基く命令の規定による処分及び手続その他の行為は、当該行為の目的である犬について所有権その他の権利を有する者の承継人に対しても、またその効力を有する。
(政令で定める市)
第二十五条 この法律中「都道府県」又は「都道府県知事」とあるのは、保健所法(昭和二十二年法律第百一号)第一条の規定に基く政令で定める市については、「市」又は「市長」と読み替えるものとする。但し、第八条第二項及び第三項の規定については、この限りでない。
第五章 罰則
第二十六条 左の各号の一に該当する者は、五万円以下の罰金に処する。
一 第七条の規定に違反して検疫を受けない犬(第二条の規定により準用した場合における動物を含む。以下この章中同じ。)を輸出し、又は輸入した者
二 第八条第一項の規定に違反して犬についての届出をしなかつた者
三 第九条第一項の規定に違反して犬を隔離しなかつた者
第二十七条 左の各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する。
一 第四条の規定に違反して犬の登録の申請をせず、又は鑑札を犬に着けなかつた者
二 第五条の規定に違反して犬に予防注射を受けさせず、又は注射済票を着けなかつた者
三 第九条第二項に規定する犬の隔離についての指示に従わなかつた者
四 第十条に規定する犬に口輪をかけ、又はこれをけい留する命令に従わなかつた者
五 第十一条の規定に違反して犬を殺した者
六 第十二条の規定に違反して犬の死体を引き渡さなかつた者
七 第十三条に規定する犬の検診又は予防注射を受けさせなかつた者
八 第十五条に規定する犬又はその死体の移動、移入又は移出の禁止又は制限に従わなかつた者
九 第十六条に規定する犬の狂犬病のための交通のしや断又は制限に従わなかつた者
十 第十七条に規定する犬の集合施設の禁止の命令に従わなかつた者
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 昭和二十五年における第四条に規定する犬の登録及び第五条に規定する予防注射は、同年九月三十日までにこれを行うように厚生省令をもつて定めなければならない。
3 家畜伝染病予防法の一部を次のように改正する。
第一条第一項中「犬、」を削る。
第四条第一項第一号中「牛疫、牛肺疫又ハ狂犬病」を「牛疫又ハ牛肺疫」に改め、同条第二項を削る。
第五条第一項第一号中「豚ノパラチフス、」の次に「狂犬病、」を加える。
第十七条を次のように改める。
第十七条 削除
第二十三条第三項第五号を削り、第六号を第五号とする。
第二十四条第一項第一号但書中「犬及」を削る。
4 この法律施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
内閣総理大臣 吉田茂
厚生大臣 黒川武雄
農林大臣 広川弘禅