司法試驗法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十四年五月三十一日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百四十号
司法試驗法
(目的)
第一條 司法試驗は、裁判官、檢察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその應用能力を有するかどうかを判定することを目的とする國家試驗とする。
2 裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)第六十六條の試驗は、この法律により行う。
(司法試驗の種類)
第二條 司法試驗を分けて、第一次試驗及び第二次試驗とする。
(第一次試驗)
第三條 第一次試驗は、第二次試驗を受けるのに相当な教養と一般的学力を有するかどうかを判定することをもつてその目的とし、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に定める大学卒業程度において一般教養科目について筆記の方法により行う。
(第一次試驗の免除)
第四條 左の各号の一に該当する者に対しては、第一次試驗を免除する。
一 学校教育法に定める大学において学士の称号を得るのに必要な一般教養科目の学習を終つた者
二 旧高等学校令(大正七年勅令第三百八十九号)による高等学校高等科、旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)による大学予科又は旧專門学校令(明治三十六年勅令第六十一号)による專門学校を卒業し、又は修了した者
三 旧高等試驗令(昭和四年勅令第十五号)による高等試驗(以下高等試驗と略称する。)予備試驗に合格した者又はその免除を受けていた者
四 前三号に該当する者の外、司法試驗管理委員会の定めるところにより、前三号に該当する者と同等以上の教養と一般的学力を有すると認められた者
2 第一次試驗に合格した者に対しては、その後第一次試驗を免除する。
(第二次試驗)
第五條 第二次試驗は、裁判官、檢察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその應用能力を有するかどうかを判定することをもつてその目的とし、第六條に定める科目について筆記及び口述の方法により行う。
2 第二次試驗は、第一次試驗に合格した者又は第四條の規定により第一次試驗を免除せられた者に限り、受けることができる。
(第二次試驗の試驗科目)
第六條 筆記試驗は、左の七科目について行う。
一 憲法
二 民法
三 刑法
四 民事訴訟法
五 刑事訴訟法
六 左の科目のうち受驗者のあらかじめ選択する一科目
商法
行政法
七 左の科目のうち受驗者のあらかじめ選択する一科目
商法
行政法
(前号で受驗者が選択しなかつたもの)
破産法
労働法
國際私法
刑事政策
2 口述試驗は、筆記試驗に合格した者につき、憲法、民法、刑法、民事訴訟法及び刑事訴訟法の五科目について行う。
3 筆記試驗に合格した者に対しては、その願により、次回の司法試驗の筆記試驗を免除する。
(司法試驗の施行)
第七條 司法試驗は、毎年一回以上行うものとし、その期日及び場所は、あらかじめ、官報をもつて公告する。
(合格者の決定方法)
第八條 司法試驗の合格者は、司法試驗考査委員の合議によつて定める。
(合格証書)
第九條 司法試驗の各試驗に合格した者には、それぞれ当該試驗に合格したことを証する証書を授與する。
(不正受驗者)
第十條 不正の手段によつて司法試驗を受け、若しくは受けようとした者又はこの法律若しくは司法試驗管理委員会規則に違反した者に対しては、その試驗を停止し、又は合格の決定を取り消すことができる。
(受驗手数料)
第十一條 第一次試驗を受けようとする者は、二百円、第二次試驗を受けようとする者は、五百円を受驗手数料として納付しなければならない。
2 前項の規定により納付した受驗手数料は、司法試驗を受けなかつた場合においても返還しない。
(司法試驗管理委員会)
第十二條 司法試驗に関する事項を管理させるため、法務総裁の所轄の下に司法試驗管理委員会を置く。
(委員)
第十三條 司法試驗管理委員会は、委員三人をもつて組織する。
2 委員のうち二人は、法務総裁官房長及び最高裁判所事務総長をもつて充て、他の委員の一人は、法務総裁が弁護士のうちから弁護士会の推薦に基き任命する。
3 弁護士たる委員の任期は、二年とし、再任を妨げない。
4 弁護士たる委員に対する報酬は、法務総裁が、大藏大臣と協議して定める。
(委員長)
第十四條 委員長は、委員の互選に基き、法務総裁が任命する。
2 委員長は、司法試驗管理委員会の会務を総理し、司法試驗管理委員会を代表する。
3 委員会は、あらかじめ、委員のうちから、委員長に故障のある場合に委員長を代理する者を定めておかなければならない。
(司法試驗考査委員)
第十五條 司法試驗は、法務総裁が、司法試驗管理委員会の推薦に基き、試驗ごとに任命する司法試驗考査委員が行う。
2 司法試驗考査委員の数は、試驗科目一科目につき四人を越えてはならない。
3 司法試驗考査委員に対する報酬は、法務総裁が大藏大臣と協議して定める。
(委員会の庶務)
第十六條 司法試驗管理委員会の庶務は、法務総裁官房においてつかさどる。
(司法試驗管理委員会規則)
第十七條 司法試驗管理委員会は、司法試驗の施行に必要な細則その他その職務を行うために必要な事項について、司法試驗管理委員会規則を制定することができる。
2 司法試驗管理委員会規則は、官報をもつて公布する。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 昭和二十四年中に限り、第一次試驗は、旧高等試驗令による高等試驗予備試驗の例に從つて行うことができる。
3 昭和二十三年に行われた高等試驗司法科試驗の筆記試驗に合格した者に対しては、その願により、この法律により最初に行われる司法試驗の筆記試驗を免除する。
4 高等試驗の行政科試驗に合格した者(昭和十六年勅令第一号附則第二項の規定により行政科の本試驗に合格した者とみなされた者を含む。)で司法試驗を受けようとする者に対しては、第六條の規定にかかわらず、憲法並びに民法及び刑法のうち一科目、民事訴訟法又は刑事訴訟法のうち一科目について試驗を行い、その他の科目についての試驗を免除する。
5 高等試驗司法科試驗に合格した者は、この法律による司法試驗に合格した者とみなす。
内閣総理大臣 吉田茂
大藏大臣 池田勇人
法務総裁 殖田俊吉
文部大臣 高瀬莊太郎
司法試験法をここに公布する。
御名御璽
昭和二十四年五月三十一日
内閣総理大臣 吉田茂
法律第百四十号
司法試験法
(目的)
第一条 司法試験は、裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的とする国家試験とする。
2 裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)第六十六条の試験は、この法律により行う。
(司法試験の種類)
第二条 司法試験を分けて、第一次試験及び第二次試験とする。
(第一次試験)
第三条 第一次試験は、第二次試験を受けるのに相当な教養と一般的学力を有するかどうかを判定することをもつてその目的とし、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に定める大学卒業程度において一般教養科目について筆記の方法により行う。
(第一次試験の免除)
第四条 左の各号の一に該当する者に対しては、第一次試験を免除する。
一 学校教育法に定める大学において学士の称号を得るのに必要な一般教養科目の学習を終つた者
二 旧高等学校令(大正七年勅令第三百八十九号)による高等学校高等科、旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)による大学予科又は旧専門学校令(明治三十六年勅令第六十一号)による専門学校を卒業し、又は修了した者
三 旧高等試験令(昭和四年勅令第十五号)による高等試験(以下高等試験と略称する。)予備試験に合格した者又はその免除を受けていた者
四 前三号に該当する者の外、司法試験管理委員会の定めるところにより、前三号に該当する者と同等以上の教養と一般的学力を有すると認められた者
2 第一次試験に合格した者に対しては、その後第一次試験を免除する。
(第二次試験)
第五条 第二次試験は、裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することをもつてその目的とし、第六条に定める科目について筆記及び口述の方法により行う。
2 第二次試験は、第一次試験に合格した者又は第四条の規定により第一次試験を免除せられた者に限り、受けることができる。
(第二次試験の試験科目)
第六条 筆記試験は、左の七科目について行う。
一 憲法
二 民法
三 刑法
四 民事訴訟法
五 刑事訴訟法
六 左の科目のうち受験者のあらかじめ選択する一科目
商法
行政法
七 左の科目のうち受験者のあらかじめ選択する一科目
商法
行政法
(前号で受験者が選択しなかつたもの)
破産法
労働法
国際私法
刑事政策
2 口述試験は、筆記試験に合格した者につき、憲法、民法、刑法、民事訴訟法及び刑事訴訟法の五科目について行う。
3 筆記試験に合格した者に対しては、その願により、次回の司法試験の筆記試験を免除する。
(司法試験の施行)
第七条 司法試験は、毎年一回以上行うものとし、その期日及び場所は、あらかじめ、官報をもつて公告する。
(合格者の決定方法)
第八条 司法試験の合格者は、司法試験考査委員の合議によつて定める。
(合格証書)
第九条 司法試験の各試験に合格した者には、それぞれ当該試験に合格したことを証する証書を授与する。
(不正受験者)
第十条 不正の手段によつて司法試験を受け、若しくは受けようとした者又はこの法律若しくは司法試験管理委員会規則に違反した者に対しては、その試験を停止し、又は合格の決定を取り消すことができる。
(受験手数料)
第十一条 第一次試験を受けようとする者は、二百円、第二次試験を受けようとする者は、五百円を受験手数料として納付しなければならない。
2 前項の規定により納付した受験手数料は、司法試験を受けなかつた場合においても返還しない。
(司法試験管理委員会)
第十二条 司法試験に関する事項を管理させるため、法務総裁の所轄の下に司法試験管理委員会を置く。
(委員)
第十三条 司法試験管理委員会は、委員三人をもつて組織する。
2 委員のうち二人は、法務総裁官房長及び最高裁判所事務総長をもつて充て、他の委員の一人は、法務総裁が弁護士のうちから弁護士会の推薦に基き任命する。
3 弁護士たる委員の任期は、二年とし、再任を妨げない。
4 弁護士たる委員に対する報酬は、法務総裁が、大蔵大臣と協議して定める。
(委員長)
第十四条 委員長は、委員の互選に基き、法務総裁が任命する。
2 委員長は、司法試験管理委員会の会務を総理し、司法試験管理委員会を代表する。
3 委員会は、あらかじめ、委員のうちから、委員長に故障のある場合に委員長を代理する者を定めておかなければならない。
(司法試験考査委員)
第十五条 司法試験は、法務総裁が、司法試験管理委員会の推薦に基き、試験ごとに任命する司法試験考査委員が行う。
2 司法試験考査委員の数は、試験科目一科目につき四人を越えてはならない。
3 司法試験考査委員に対する報酬は、法務総裁が大蔵大臣と協議して定める。
(委員会の庶務)
第十六条 司法試験管理委員会の庶務は、法務総裁官房においてつかさどる。
(司法試験管理委員会規則)
第十七条 司法試験管理委員会は、司法試験の施行に必要な細則その他その職務を行うために必要な事項について、司法試験管理委員会規則を制定することができる。
2 司法試験管理委員会規則は、官報をもつて公布する。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 昭和二十四年中に限り、第一次試験は、旧高等試験令による高等試験予備試験の例に従つて行うことができる。
3 昭和二十三年に行われた高等試験司法科試験の筆記試験に合格した者に対しては、その願により、この法律により最初に行われる司法試験の筆記試験を免除する。
4 高等試験の行政科試験に合格した者(昭和十六年勅令第一号附則第二項の規定により行政科の本試験に合格した者とみなされた者を含む。)で司法試験を受けようとする者に対しては、第六条の規定にかかわらず、憲法並びに民法及び刑法のうち一科目、民事訴訟法又は刑事訴訟法のうち一科目について試験を行い、その他の科目についての試験を免除する。
5 高等試験司法科試験に合格した者は、この法律による司法試験に合格した者とみなす。
内閣総理大臣 吉田茂
大蔵大臣 池田勇人
法務総裁 殖田俊吉
文部大臣 高瀬荘太郎