憲兵条例
法令番号: 勅令第三百三十七號
公布年月日: 明治31年11月30日
法令の形式: 勅令
朕憲兵條例ノ改正ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十一年十一月二十九日
內務大臣 侯爵 西鄕從道
陸軍大臣 子爵 桂太郞
海軍大臣 山本權兵衞
司法大臣 淸浦奎吾
勅令第三百三十七號
憲兵條例
第一章 總則
第一條 憲兵ハ陸軍大臣ノ管轄ニ屬シ主トシテ軍事警察ヲ掌リ兼テ行政警察、司法警察ヲ掌ル臺灣ニ在テハ軍事警察、行政警察、司法警察ヲ掌ル
第二條 憲兵ハ其ノ職務ノ執行ニ付軍事警察ニ係ルモノハ陸軍大臣及海軍大臣行政警察ニ係ルモノハ內務大臣司法警察ニ係ルモノハ司法大臣ノ指揮ヲ承ク臺灣ニ於ケル軍事警察、行政警察、司法警察ニ係ルモノハ臺灣總督ノ指揮ヲ承ク
第三條 憲兵ハ行政警察、司法警察ニ係ル事件ニ付テハ警視總監、北海道廳長官、府縣知事東京府知事ヲ除ク及檢事ノ指示ヲ承ク但シ臺灣ニ於ケル行政警察、司法警察ニ係ル事件ニ付テハ縣知事、廳長及法院檢察官ノ指示ヲ承ク
憲兵ハ臺灣ニ於ケル地方守備ニ關スル軍事警察ニ付テハ臺灣守備混成旅團長、要塞司令官及守備隊長ノ指示ヲ承ク
第四條 憲兵ハ其ノ職務上ニ關シ正當ノ職權ヲ有スル者ヨリ要求アルトキハ直ニ之ニ應スヘシ
第五條 憲兵ハ左ニ記載スル場合ニアラサレハ兵器ヲ用ウルコトヲ得ス
一 暴行ヲ受クルトキ
二 其ノ占守スル土地若ハ委託セラレタル場所又ハ人ヲ防衞スルニ兵力ヲ用ウルノ外他ニ手段ナキトキ又ハ兵力ヲ以テセサレハ抗抵ニ勝ツ能ハサルトキ
第二章 配置、職員
第六條 東京ニ憲兵司令部ヲ置キ各憲兵隊管區ニ一憲兵隊ヲ配置ス
憲兵隊ニハ其ノ管區ノ番號ヲ附ス
憲兵隊管區ノ區域ハ別表ニ依ル
第七條 憲兵隊本部ハ各師團司令部及各臺灣守備混成旅團司令部所在地ニ之ヲ置ク
第八條 各憲兵隊管區ヲ數箇ノ憲兵警察區ニ分チ各警察區ニ一憲兵分隊ヲ置ク但シ臺灣ニ在テハ憲兵分隊ノ一部ヲ分駐セシメテ支部ヲ置キ其ノ管轄區域ヲ特ニ憲兵警察區ト爲スコトヲ得
憲兵分隊竝憲兵警察區ニハ憲兵分隊本部所在ノ地名ヲ冠ス但シ分隊支部ヲ置キタル場合ニ於テハ支部及其ノ警察區ニ支部所在ノ地名ヲ冠ス
憲兵警察區ノ區域及憲兵分隊ノ配置ハ陸軍大臣之ヲ定ム但シ臺灣ニ在テハ臺灣總督之ヲ定ム
第九條 憲兵分隊本部ハ衞戍地及樞要ノ地ニ之ヲ置ク
第十條 憲兵ノ職員左ノ如シ
憲兵司令部
憲兵司令官 少將若ハ憲兵大佐
憲兵副官 憲兵少佐、大、中尉
軍吏
書記 憲兵下士、軍吏部下士若ハ判任文官
第一乃至第十二憲兵隊
本部
憲兵隊長 憲兵中、少佐、大尉
憲兵隊副官 憲兵中尉
軍吏
書記 憲兵下士、軍吏部下士
分隊
本部
憲兵分隊長 憲兵大、中尉
憲兵分隊副長 憲兵中、少尉
書記 憲兵下士
憲兵伍長 憲兵曹長、一等軍曹
憲兵下士、上等兵
第十三乃至第十五憲兵隊
本部
憲兵隊長 憲兵大、中佐
憲兵隊副官 憲兵大、中尉
軍醫
獸醫
軍吏
書記 憲兵下士、軍吏部下士
看護長
蹄鐵工(下)長
分隊
本部
憲兵分隊長 憲兵大、中尉
憲兵分隊副長 憲兵中、少尉
軍醫
書記 憲兵下士
看護長
憲兵伍長 憲兵下士
憲兵上等兵
第十一條 憲兵下士、上等兵四名乃至八名ヲ以テ一伍トシ數伍ヲ以テ一分隊トシ數分隊ヲ以テ一隊ト爲ス
必要ニ依リ伍ニ乘馬ヲ附ス
第十二條 陸軍大臣及臺灣總督ハ必要ニ際シ一時憲兵隊ノ一部ヲ其ノ管區外ニ派遣スルコトヲ得
第十三條 憲兵司令官ハ各憲兵警察區內臺灣ヲ除クニ於テ憲兵ノ常時巡察スヘキ地域ヲ定ムヘシ
臨時急要ノ場合ニ際シテハ憲兵隊長ハ憲兵ヲ前項地域外ニ使用スルコトヲ得但シ其ノ警察區域外ニ使用スルコトヲ得ス
第三章 職務
第十四條 憲兵司令官ハ各憲兵隊ヲ統轄シ司令部ノ事務ヲ總理ス
第十五條 憲兵司令官ハ憲兵隊ノ軍紀、風紀、訓練、敎育及職務服行ノ程度ヲ檢閱スヘシ
第十六條 憲兵隊長ハ各分隊ヲ統轄シ其ノ勤務方法ヲ指定シ隊中ノ事務ヲ總理ス
第十七條 憲兵分隊長ハ部下ヲ指揮監督シ其ノ勤務ノ方法ヲ指定シ分隊ノ事務ヲ處理ス
第十八條 憲兵分隊副長ハ分隊長ヲ輔佐ス
憲兵分隊副長ハ支部ノ長ト爲リ分隊長統轄ノ下ニ在テ分隊ノ一部ヲ指揮スルコトアルヘシ
第十九條 憲兵伍長ハ部下ノ下士上等兵ノ勤務ヲ指示監督スヘシ
第二十條 憲兵ノ服務ニ係ル規定ハ各主管大臣之ヲ定ム但シ臺灣ニ在テハ臺灣總督之ヲ定ム
附 則
第二十一條 當分ノ內憲兵隊長、副官、分隊長、分隊副長ハ豫備役、後備役ノ者ヲ以テ充ツルコトヲ得其ノ身分取扱ハ召集中ノ者ニ同シ
第二十二條 上等伍長タル者ニシテ本令施行ノ際伍長ヲ命セラルル者ノ身分取扱及諸給與ハ陸軍服役條例第五十四條第二ニ揭クル服役期限滿ツル迄若ハ旣ニ許可ヲ得タル再服役期限滿ツル迄從前ノ規定ニ依ル
第二十三條 本令ハ明治三十一年十二月一日ヨリ施行ス
(別表)
憲兵隊管區表
管區名
區域
第一憲兵隊管區
近衞師管、第一師管
第二憲兵隊管區
第二師管
第三憲兵隊管區
第三師管
第四憲兵隊管區
第四師管
第五憲兵隊管區
第五師管
第六憲兵隊管區
第六師管
第七憲兵隊管區
第七師管
第八憲兵隊管區
第八師管
第九憲兵隊管區
第九師管
第十憲兵隊管區
第十師管
第十一憲兵隊管區
第十一師管
第十二憲兵隊管區
第十二師管
第十三憲兵隊管區
臺灣守備混成第一旅團守備管區
第十四憲兵隊管區
臺灣守備混成第二旅團守備管區
第十五憲兵隊管區
臺灣守備混成第三旅團守備管區
朕憲兵条例ノ改正ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十一年十一月二十九日
内務大臣 侯爵 西郷従道
陸軍大臣 子爵 桂太郎
海軍大臣 山本権兵衛
司法大臣 清浦奎吾
勅令第三百三十七号
憲兵条例
第一章 総則
第一条 憲兵ハ陸軍大臣ノ管轄ニ属シ主トシテ軍事警察ヲ掌リ兼テ行政警察、司法警察ヲ掌ル台湾ニ在テハ軍事警察、行政警察、司法警察ヲ掌ル
第二条 憲兵ハ其ノ職務ノ執行ニ付軍事警察ニ係ルモノハ陸軍大臣及海軍大臣行政警察ニ係ルモノハ内務大臣司法警察ニ係ルモノハ司法大臣ノ指揮ヲ承ク台湾ニ於ケル軍事警察、行政警察、司法警察ニ係ルモノハ台湾総督ノ指揮ヲ承ク
第三条 憲兵ハ行政警察、司法警察ニ係ル事件ニ付テハ警視総監、北海道庁長官、府県知事東京府知事ヲ除ク及検事ノ指示ヲ承ク但シ台湾ニ於ケル行政警察、司法警察ニ係ル事件ニ付テハ県知事、庁長及法院検察官ノ指示ヲ承ク
憲兵ハ台湾ニ於ケル地方守備ニ関スル軍事警察ニ付テハ台湾守備混成旅団長、要塞司令官及守備隊長ノ指示ヲ承ク
第四条 憲兵ハ其ノ職務上ニ関シ正当ノ職権ヲ有スル者ヨリ要求アルトキハ直ニ之ニ応スヘシ
第五条 憲兵ハ左ニ記載スル場合ニアラサレハ兵器ヲ用ウルコトヲ得ス
一 暴行ヲ受クルトキ
二 其ノ占守スル土地若ハ委託セラレタル場所又ハ人ヲ防衛スルニ兵力ヲ用ウルノ外他ニ手段ナキトキ又ハ兵力ヲ以テセサレハ抗抵ニ勝ツ能ハサルトキ
第二章 配置、職員
第六条 東京ニ憲兵司令部ヲ置キ各憲兵隊管区ニ一憲兵隊ヲ配置ス
憲兵隊ニハ其ノ管区ノ番号ヲ附ス
憲兵隊管区ノ区域ハ別表ニ依ル
第七条 憲兵隊本部ハ各師団司令部及各台湾守備混成旅団司令部所在地ニ之ヲ置ク
第八条 各憲兵隊管区ヲ数箇ノ憲兵警察区ニ分チ各警察区ニ一憲兵分隊ヲ置ク但シ台湾ニ在テハ憲兵分隊ノ一部ヲ分駐セシメテ支部ヲ置キ其ノ管轄区域ヲ特ニ憲兵警察区ト為スコトヲ得
憲兵分隊並憲兵警察区ニハ憲兵分隊本部所在ノ地名ヲ冠ス但シ分隊支部ヲ置キタル場合ニ於テハ支部及其ノ警察区ニ支部所在ノ地名ヲ冠ス
憲兵警察区ノ区域及憲兵分隊ノ配置ハ陸軍大臣之ヲ定ム但シ台湾ニ在テハ台湾総督之ヲ定ム
第九条 憲兵分隊本部ハ衛戍地及枢要ノ地ニ之ヲ置ク
第十条 憲兵ノ職員左ノ如シ
憲兵司令部
憲兵司令官 少将若ハ憲兵大佐
憲兵副官 憲兵少佐、大、中尉
軍吏
書記 憲兵下士、軍吏部下士若ハ判任文官
第一乃至第十二憲兵隊
本部
憲兵隊長 憲兵中、少佐、大尉
憲兵隊副官 憲兵中尉
軍吏
書記 憲兵下士、軍吏部下士
分隊
本部
憲兵分隊長 憲兵大、中尉
憲兵分隊副長 憲兵中、少尉
書記 憲兵下士
憲兵伍長 憲兵曹長、一等軍曹
憲兵下士、上等兵
第十三乃至第十五憲兵隊
本部
憲兵隊長 憲兵大、中佐
憲兵隊副官 憲兵大、中尉
軍医
獣医
軍吏
書記 憲兵下士、軍吏部下士
看護長
蹄鉄工(下)長
分隊
本部
憲兵分隊長 憲兵大、中尉
憲兵分隊副長 憲兵中、少尉
軍医
書記 憲兵下士
看護長
憲兵伍長 憲兵下士
憲兵上等兵
第十一条 憲兵下士、上等兵四名乃至八名ヲ以テ一伍トシ数伍ヲ以テ一分隊トシ数分隊ヲ以テ一隊ト為ス
必要ニ依リ伍ニ乗馬ヲ附ス
第十二条 陸軍大臣及台湾総督ハ必要ニ際シ一時憲兵隊ノ一部ヲ其ノ管区外ニ派遣スルコトヲ得
第十三条 憲兵司令官ハ各憲兵警察区内台湾ヲ除クニ於テ憲兵ノ常時巡察スヘキ地域ヲ定ムヘシ
臨時急要ノ場合ニ際シテハ憲兵隊長ハ憲兵ヲ前項地域外ニ使用スルコトヲ得但シ其ノ警察区域外ニ使用スルコトヲ得ス
第三章 職務
第十四条 憲兵司令官ハ各憲兵隊ヲ統轄シ司令部ノ事務ヲ総理ス
第十五条 憲兵司令官ハ憲兵隊ノ軍紀、風紀、訓練、教育及職務服行ノ程度ヲ検閲スヘシ
第十六条 憲兵隊長ハ各分隊ヲ統轄シ其ノ勤務方法ヲ指定シ隊中ノ事務ヲ総理ス
第十七条 憲兵分隊長ハ部下ヲ指揮監督シ其ノ勤務ノ方法ヲ指定シ分隊ノ事務ヲ処理ス
第十八条 憲兵分隊副長ハ分隊長ヲ輔佐ス
憲兵分隊副長ハ支部ノ長ト為リ分隊長統轄ノ下ニ在テ分隊ノ一部ヲ指揮スルコトアルヘシ
第十九条 憲兵伍長ハ部下ノ下士上等兵ノ勤務ヲ指示監督スヘシ
第二十条 憲兵ノ服務ニ係ル規定ハ各主管大臣之ヲ定ム但シ台湾ニ在テハ台湾総督之ヲ定ム
附 則
第二十一条 当分ノ内憲兵隊長、副官、分隊長、分隊副長ハ予備役、後備役ノ者ヲ以テ充ツルコトヲ得其ノ身分取扱ハ召集中ノ者ニ同シ
第二十二条 上等伍長タル者ニシテ本令施行ノ際伍長ヲ命セラルル者ノ身分取扱及諸給与ハ陸軍服役条例第五十四条第二ニ掲クル服役期限満ツル迄若ハ既ニ許可ヲ得タル再服役期限満ツル迄従前ノ規定ニ依ル
第二十三条 本令ハ明治三十一年十二月一日ヨリ施行ス
(別表)
憲兵隊管区表
管区名
区域
第一憲兵隊管区
近衛師管、第一師管
第二憲兵隊管区
第二師管
第三憲兵隊管区
第三師管
第四憲兵隊管区
第四師管
第五憲兵隊管区
第五師管
第六憲兵隊管区
第六師管
第七憲兵隊管区
第七師管
第八憲兵隊管区
第八師管
第九憲兵隊管区
第九師管
第十憲兵隊管区
第十師管
第十一憲兵隊管区
第十一師管
第十二憲兵隊管区
第十二師管
第十三憲兵隊管区
台湾守備混成第一旅団守備管区
第十四憲兵隊管区
台湾守備混成第二旅団守備管区
第十五憲兵隊管区
台湾守備混成第三旅団守備管区