朕陸軍戰時給與規則ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十七年七月三十一日
陸軍大臣 伯爵 大山巖
勅令第百三十三號
陸軍戰時給與規則
第一條 戰時若クハ事變ニ際シ各部、各隊及軍人軍屬ノ給與ハ本規則ニ依ル但本規則ニ明文ナキモノハ平時給與ノ規程ヲ適用ス
第二條 平時經理ヲ委任セラレタル軍隊ニシテ本規則ニ依リ給與ヲ受クルトキハ其ノ期間委任經理ニ屬スル給與ヲ停止ス
第三條 本規則ニ於テ俸給ト稱スルハ陸軍給與令第一表ノ俸給ニ職務俸若クハ特別俸、上級ノ職務心得勤加給俸ヲ加算シタルモノ、給料ト稱スルハ同令第三表ノ給料ニ增俸及加俸ヲ加算シタルモノヲ云フ
第四條 士官以上ノ職務俸ハ陸軍給與令第二表甲額トス但特別ノ俸給ヲ受クル者ハ各其ノ定ムル所ニ依ル
第五條 士官ノ階級ニアラスシテ士官ノ勤務ニ服スル者ノ給料ハ特務曹長ノ二等給ニ該ル金額トス
第六條 戰地若クハ臨戰合圍地境ニ出發ノ者ハ其ノ出發ノ日ヨリ歸著ノ日マテ准士官以上及文官ニハ俸給五分ノ二、特務曹長、下士以下及前條ニ揭クル士官ノ勤務ニ服スル者ニハ給料四分ノ二ヲ增給ス
守備隊又ハ臨戰合圍地境ニ在ル者ハ戒嚴布吿又ハ宣吿ノ日若クハ開戰ノ當日ヨリ戒嚴解止ノ日又ハ平定ノ日マテ前項ニ依ル
出戰若クハ戰備ノ姿勢ヲ完成シタルモノハ其ノ完成ノ日ヨリ戰地若クハ臨戰合圍地境ニ出發ノ前日又ハ戒嚴布吿若クハ宣吿ノ前日マテ前項ノ區分ニ依リ俸給ハ五分ノ一、給料ハ四分ノ一ヲ增給ス
第七條 戰地若クハ臨戰合圍地境ニ出發スル准士官以上、營外居住ノ下士以下及文官ニハ手當トシテ一囘限リ其ノ俸給若クハ給料ノ一箇月分ヲ給ス但單ニ往復ニ止ル者ハ一囘限リ其ノ半額ヲ給ス
准士官以上、營外居住ノ下士以下及文官ニシテ前條第二項ニ依リ增給ヲ受クル者モ亦前項ニ同シ
豫備後備ノ軍籍ニアル將校竝ニ相當官ニシテ召集ニ應シ就職スル者ニハ一囘限リ手當トシテ其ノ俸給ノ半箇月分ヲ給ス但第一項ノ手當金ヲ受クル場合ニ在テハ之ヲ本項ノ金額ニ差繼支給ス
第八條 軍人軍屬ノ糧食及馬匹ノ飼料ハ第六條第一項及第二項ノ增給ヲ受クルノ期間現品ヲ給ス其ノ定量及臨時飮食物加給ノ要否ハ陸軍大臣之ヲ定ム
軍人軍屬外ノ者ニシテ糧食給與ノ必要アルトキハ前項ニ依リ適宜現品ヲ給與スルコトヲ得
平時定額馬飼料ノ支給ハ出發ノ翌月ヨリ歸著ノ前日マテ、守備隊又ハ臨戰合圍地境ニ在ル者ニハ戒嚴布吿又ハ宣吿ノ翌月若クハ開戰ノ翌月ヨリ戒嚴解止ノ前日又ハ平定ノ前日マテ之ヲ停止ス
裝蹄其ノ他器具ノ保續等ハ總テ官費トス其ノ期間ハ第一項ニ同シ
第九條 特務曹長、下士以下及第五條ニ揭クル者ノ被服ハ營內居住ト營外居住トニ拘ラス第六條第一項及第二項ノ增給ヲ受クルノ期間實際ノ所要ニ應シ現品ヲ給ス但平時定額ヲ以テ交付スヘキ金額ハ出發ノ翌月ヨリ歸著ノ前月マテ、守備隊又ハ臨戰合圍地境ニ在ル者ニハ戒嚴布吿又ハ宣吿ノ翌月若クハ開戰ノ翌月ヨリ戒嚴解止ノ前月又ハ平定ノ前月マテ之ヲ停止ス
第十條 軍人軍屬ノ旅費ハ總テ實費拂トス但單獨旅行ノ者內地ニ在テハ陸軍給與令第三十二表ノ定額ヲ給スルコトヲ得
第十一條 准士官以上及特務曹長ニシテ休職、停職中ノ者充員下令ノ爲メ就職スルトキハ陸軍給與令第三十二表ノ旅費ヲ給ス但平時ニ復シ休職トナラサル者(特務曹長ハ除ク)ニハ同令第三十三表ノ移轉料ヲ給ス
第十二條 軍人軍屬死亡スルトキハ戰時陸軍埋葬規則ニ基キ官費ヲ以テ之ヲ埋葬ス但軍人軍屬外ニシテ戰役ニ從事スル者官ニ於テ埋葬ヲ要スルトキモ亦同シ
第十三條 傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リタル軍人軍屬ノ藥餌ハ總テ官給トス軍人軍屬外ト雖戰役ニ從事スル者ハ時宜ニ依リ官給スルコトヲ得
第十四條 各部、各隊及軍人軍屬ニ要スル筆紙墨文具其ノ他消耗品等ハ總テ現品ヲ給ス
第十五條 戰地若クハ臨戰合圍地境ニアラサルモ戰時若クハ事變ニ際シ特別ノ任務ヲ受ケ外國ニ出張スル者ノ給與モ亦本規則ニ依ルコトヲ得
附 則
第十六條 戰時若クハ事變ノ爲メ繁劇ノ事務ニ從事スル官衙ニアル者ハ其ノ期間准士官以上及文官ハ俸給五分ノ一、下士以下ハ給料四分ノ一ヲ增給ス其ノ官衙ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第十七條 豫備後備ノ籍ニアル將校竝ニ相當官ニシテ本年六月一日以降召集ニ應シ就職シタル者ニモ本規則第七條第三項ヲ適用ス
第十八條 本規則ニ依レル給與ノ時期、停止、減額及本規則ノ施行細則ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第十九條 明治二十七年勅令第六十三號陸軍臨時給與規則ハ本規則施行ノ日ヨリ廢止ス
朕陸軍戦時給与規則ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十七年七月三十一日
陸軍大臣 伯爵 大山巌
勅令第百三十三号
陸軍戦時給与規則
第一条 戦時若クハ事変ニ際シ各部、各隊及軍人軍属ノ給与ハ本規則ニ依ル但本規則ニ明文ナキモノハ平時給与ノ規程ヲ適用ス
第二条 平時経理ヲ委任セラレタル軍隊ニシテ本規則ニ依リ給与ヲ受クルトキハ其ノ期間委任経理ニ属スル給与ヲ停止ス
第三条 本規則ニ於テ俸給ト称スルハ陸軍給与令第一表ノ俸給ニ職務俸若クハ特別俸、上級ノ職務心得勤加給俸ヲ加算シタルモノ、給料ト称スルハ同令第三表ノ給料ニ増俸及加俸ヲ加算シタルモノヲ云フ
第四条 士官以上ノ職務俸ハ陸軍給与令第二表甲額トス但特別ノ俸給ヲ受クル者ハ各其ノ定ムル所ニ依ル
第五条 士官ノ階級ニアラスシテ士官ノ勤務ニ服スル者ノ給料ハ特務曹長ノ二等給ニ該ル金額トス
第六条 戦地若クハ臨戦合囲地境ニ出発ノ者ハ其ノ出発ノ日ヨリ帰著ノ日マテ准士官以上及文官ニハ俸給五分ノ二、特務曹長、下士以下及前条ニ掲クル士官ノ勤務ニ服スル者ニハ給料四分ノ二ヲ増給ス
守備隊又ハ臨戦合囲地境ニ在ル者ハ戒厳布告又ハ宣告ノ日若クハ開戦ノ当日ヨリ戒厳解止ノ日又ハ平定ノ日マテ前項ニ依ル
出戦若クハ戦備ノ姿勢ヲ完成シタルモノハ其ノ完成ノ日ヨリ戦地若クハ臨戦合囲地境ニ出発ノ前日又ハ戒厳布告若クハ宣告ノ前日マテ前項ノ区分ニ依リ俸給ハ五分ノ一、給料ハ四分ノ一ヲ増給ス
第七条 戦地若クハ臨戦合囲地境ニ出発スル准士官以上、営外居住ノ下士以下及文官ニハ手当トシテ一回限リ其ノ俸給若クハ給料ノ一箇月分ヲ給ス但単ニ往復ニ止ル者ハ一回限リ其ノ半額ヲ給ス
准士官以上、営外居住ノ下士以下及文官ニシテ前条第二項ニ依リ増給ヲ受クル者モ亦前項ニ同シ
予備後備ノ軍籍ニアル将校並ニ相当官ニシテ召集ニ応シ就職スル者ニハ一回限リ手当トシテ其ノ俸給ノ半箇月分ヲ給ス但第一項ノ手当金ヲ受クル場合ニ在テハ之ヲ本項ノ金額ニ差継支給ス
第八条 軍人軍属ノ糧食及馬匹ノ飼料ハ第六条第一項及第二項ノ増給ヲ受クルノ期間現品ヲ給ス其ノ定量及臨時飲食物加給ノ要否ハ陸軍大臣之ヲ定ム
軍人軍属外ノ者ニシテ糧食給与ノ必要アルトキハ前項ニ依リ適宜現品ヲ給与スルコトヲ得
平時定額馬飼料ノ支給ハ出発ノ翌月ヨリ帰著ノ前日マテ、守備隊又ハ臨戦合囲地境ニ在ル者ニハ戒厳布告又ハ宣告ノ翌月若クハ開戦ノ翌月ヨリ戒厳解止ノ前日又ハ平定ノ前日マテ之ヲ停止ス
装蹄其ノ他器具ノ保続等ハ総テ官費トス其ノ期間ハ第一項ニ同シ
第九条 特務曹長、下士以下及第五条ニ掲クル者ノ被服ハ営内居住ト営外居住トニ拘ラス第六条第一項及第二項ノ増給ヲ受クルノ期間実際ノ所要ニ応シ現品ヲ給ス但平時定額ヲ以テ交付スヘキ金額ハ出発ノ翌月ヨリ帰著ノ前月マテ、守備隊又ハ臨戦合囲地境ニ在ル者ニハ戒厳布告又ハ宣告ノ翌月若クハ開戦ノ翌月ヨリ戒厳解止ノ前月又ハ平定ノ前月マテ之ヲ停止ス
第十条 軍人軍属ノ旅費ハ総テ実費払トス但単独旅行ノ者内地ニ在テハ陸軍給与令第三十二表ノ定額ヲ給スルコトヲ得
第十一条 准士官以上及特務曹長ニシテ休職、停職中ノ者充員下令ノ為メ就職スルトキハ陸軍給与令第三十二表ノ旅費ヲ給ス但平時ニ復シ休職トナラサル者(特務曹長ハ除ク)ニハ同令第三十三表ノ移転料ヲ給ス
第十二条 軍人軍属死亡スルトキハ戦時陸軍埋葬規則ニ基キ官費ヲ以テ之ヲ埋葬ス但軍人軍属外ニシテ戦役ニ従事スル者官ニ於テ埋葬ヲ要スルトキモ亦同シ
第十三条 傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リタル軍人軍属ノ薬餌ハ総テ官給トス軍人軍属外ト雖戦役ニ従事スル者ハ時宜ニ依リ官給スルコトヲ得
第十四条 各部、各隊及軍人軍属ニ要スル筆紙墨文具其ノ他消耗品等ハ総テ現品ヲ給ス
第十五条 戦地若クハ臨戦合囲地境ニアラサルモ戦時若クハ事変ニ際シ特別ノ任務ヲ受ケ外国ニ出張スル者ノ給与モ亦本規則ニ依ルコトヲ得
附 則
第十六条 戦時若クハ事変ノ為メ繁劇ノ事務ニ従事スル官衙ニアル者ハ其ノ期間准士官以上及文官ハ俸給五分ノ一、下士以下ハ給料四分ノ一ヲ増給ス其ノ官衙ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第十七条 予備後備ノ籍ニアル将校並ニ相当官ニシテ本年六月一日以降召集ニ応シ就職シタル者ニモ本規則第七条第三項ヲ適用ス
第十八条 本規則ニ依レル給与ノ時期、停止、減額及本規則ノ施行細則ハ陸軍大臣之ヲ定ム
第十九条 明治二十七年勅令第六十三号陸軍臨時給与規則ハ本規則施行ノ日ヨリ廃止ス