(行動制限等)
第九十二条 指定入院医療機関の管理者は、第四十二条第一項第一号又は第六十一条第一項第一号の決定により入院している者につき、その医療又は保護に欠くことのできない限度において、その行動について必要な制限を行うことができる。
2 前項の規定にかかわらず、指定入院医療機関の管理者は、信書の発受の制限、弁護士及び行政機関の職員との面会の制限その他の行動の制限であって、厚生労働大臣があらかじめ社会保障審議会の意見を聴いて定める行動の制限については、これを行うことができない。
3 第一項の規定による行動の制限のうち、厚生労働大臣があらかじめ社会保障審議会の意見を聴いて定める患者の隔離その他の行動の制限は、当該指定入院医療機関に勤務する精神保健指定医が必要と認める場合でなければ行うことができない。
第九十三条 前条に定めるもののほか、厚生労働大臣は、第四十二条第一項第一号又は第六十一条第一項第一号の決定により指定入院医療機関に入院している者の処遇について必要な基準を定めることができる。
2 前項の基準が定められたときは、指定入院医療機関の管理者は、その基準を遵守しなければならない。
3 厚生労働大臣は、第一項の基準を定めようとするときは、あらかじめ、社会保障審議会の意見を聴かなければならない。
(精神保健指定医の指定入院医療機関の管理者への報告)
第九十四条 精神保健指定医は、その勤務する指定入院医療機関に第四十二条第一項第一号又は第六十一条第一項第一号の決定により入院している者の処遇が第九十二条の規定に違反していると思料するとき、前条第一項の基準に適合していないと認めるときその他当該入院している者の処遇が著しく適当でないと認めるときは、当該指定入院医療機関の管理者にその旨を報告することにより、当該管理者において当該入院している者の処遇の改善のために必要な措置が採られるよう努めなければならない。
(処遇改善の請求)
第九十五条 第四十二条第一項第一号又は第六十一条第一項第一号の決定により指定入院医療機関に入院している者又はその保護者は、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣に対し、指定入院医療機関の管理者に対して当該入院している者の処遇の改善のために必要な措置を採ることを命ずることを求めることができる。
(処遇改善の請求による審査)
第九十六条 厚生労働大臣は、前条の規定による請求を受けたときは、当該請求の内容を社会保障審議会に通知し、当該請求に係る入院中の者について、その処遇が適当であるかどうかに関し審査を求めなければならない。
2 社会保障審議会は、前項の規定により審査を求められたときは、当該審査に係る入院中の者について、その処遇が適当であるかどうかに関し審査を行い、その結果を厚生労働大臣に通知しなければならない。
3 社会保障審議会は、前項の審査をするに当たっては、当該審査に係る前条の規定による請求をした者及び当該審査に係る入院中の者が入院している指定入院医療機関の管理者の意見を聴かなければならない。ただし、社会保障審議会がこれらの者の意見を聴く必要がないと特に認めたときは、この限りでない。
4 社会保障審議会は、前項に定めるもののほか、第二項の審査をするに当たって必要があると認めるときは、当該審査に係る入院中の者の同意を得て、社会保障審議会が指名する精神保健指定医に診察させ、又はその者が入院している指定入院医療機関の管理者その他関係者に対して報告を求め、診療録その他の帳簿書類の提出を命じ、若しくは出頭を命じて審問することができる。
5 厚生労働大臣は、第二項の規定により通知された社会保障審議会の審査の結果に基づき、必要があると認めるときは、当該指定入院医療機関の管理者に対し、その者の処遇の改善のための措置を採ることを命じなければならない。
6 厚生労働大臣は、前条の規定による請求をした者に対し、当該請求に係る社会保障審議会の審査の結果及びこれに基づき採った措置を通知しなければならない。
(報告徴収等)
第九十七条 厚生労働大臣は、必要があると認めるときは、指定入院医療機関の管理者に対し、第四十二条第一項第一号若しくは第六十一条第一項第一号の決定により当該指定入院医療機関に入院している者の症状若しくは処遇に関し、報告を求め、若しくは診療録その他の帳簿書類の提出若しくは提示を命じ、当該職員若しくはその指定する精神保健指定医に、指定入院医療機関に立ち入り、これらの事項に関し、診療録その他の帳簿書類を検査させ、若しくは第四十二条第一項第一号若しくは第六十一条第一項第一号の決定により当該指定入院医療機関に入院している者その他の関係者に質問させ、又はその指定する精神保健指定医に、指定入院医療機関に立ち入り、第四十二条第一項第一号若しくは第六十一条第一項第一号の決定により当該指定入院医療機関に入院している者を診察させることができる。
2 前項の規定により立入検査、質問又は診察を行う精神保健指定医及び当該職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
3 第一項に規定する立入検査又は質問の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(改善命令)
第九十八条 厚生労働大臣は、第四十二条第一項第一号又は第六十一条第一項第一号の決定により指定入院医療機関に入院している者の処遇が第九十二条の規定に違反していると認めるとき、第九十三条第一項の基準に適合していないと認めるときその他第四十二条第一項第一号又は第六十一条第一項第一号の決定により指定入院医療機関に入院している者の処遇が著しく適当でないと認めるときは、当該指定入院医療機関の管理者に対し、措置を講ずべき事項及び期限を示して、処遇を確保するための改善計画の提出を求め、若しくは提出された改善計画の変更を命じ、又はその処遇の改善のために必要な措置を採ることを命ずることができる。
(無断退去者に対する措置)
第九十九条 第四十二条第一項第一号又は第六十一条第一項第一号の決定により指定入院医療機関に入院している者が無断で退去した場合(第百条第一項又は第二項の規定により外出又は外泊している者が同条第一項に規定する医学的管理の下から無断で離れた場合を含む。)には、当該指定入院医療機関の職員は、これを連れ戻すことができる。
2 前項の場合において、当該指定入院医療機関の職員による連戻しが困難であるときは、当該指定入院医療機関の管理者は、警察官に対し、連戻しについて必要な援助を求めることができる。
3 第一項の場合において、当該無断で退去し、又は離れた者の行方が不明になったときは、当該指定入院医療機関の管理者は、所轄の警察署長に対し、次の事項を通知してその所在の調査を求めなければならない。
四 退去者を発見するために参考となるべき人相、服装その他の事項
4 警察官は、前項の所在の調査を求められた者を発見したときは、直ちに、その旨を当該指定入院医療機関の管理者に通知しなければならない。この場合において、警察官は、当該指定入院医療機関の管理者がその者を引き取るまでの間、二十四時間を限り、その者を、警察署、病院、救護施設その他の精神障害者を保護するのに適当な場所に、保護することができる。
5 指定入院医療機関の職員は、第一項に規定する者が無断で退去した時(第百条第一項又は第二項の規定により外出又は外泊している者が同条第一項に規定する医学的管理の下から無断で離れた場合においては、当該無断で離れた時)から四十八時間を経過した後は、裁判官のあらかじめ発する連戻状によらなければ、第一項に規定する連戻しに着手することができない。
6 前項の連戻状は、指定入院医療機関の管理者の請求により、当該指定入院医療機関の所在地を管轄する地方裁判所の裁判官が発する。
7 第二十八条第四項から第六項まで及び第三十四条第六項の規定は、第五項の連戻状について準用する。この場合において、第二十八条第四項中「指定された裁判所その他の場所」とあるのは、「指定入院医療機関」と読み替えるものとする。
8 前三項に規定するもののほか、連戻状について必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
(外出等)
第百条 指定入院医療機関の管理者は、次の各号のいずれかに該当する場合には、第四十二条第一項第一号又は第六十一条第一項第一号の決定により当該指定入院医療機関に入院している者を、当該指定入院医療機関に勤務する医師又は看護師による付添いその他の方法による医学的管理の下に、当該指定入院医療機関の敷地外に外出させることができる。
一 指定入院医療機関の管理者が、当該指定入院医療機関に勤務する精神保健指定医による診察の結果、その者の症状に照らし当該指定入院医療機関の敷地外に外出させて経過を見ることが適当であると認める場合
二 その者が精神障害の医療以外の医療を受けるために他の医療施設に通院する必要がある場合
三 前二号に掲げる場合のほか、政令で定める場合において、指定入院医療機関の管理者が必要と認めるとき。
2 指定入院医療機関の管理者は、次の各号のいずれかに該当する場合には、第四十二条第一項第一号又は第六十一条第一項第一号の決定により当該指定入院医療機関に入院している者を、前項に規定する医学的管理の下に、一週間を超えない期間を限り、当該指定入院医療機関の敷地外に外泊させることができる。
一 指定入院医療機関の管理者が、当該指定入院医療機関に勤務する精神保健指定医による診察の結果、その者の症状に照らし当該指定入院医療機関の敷地外に外泊させて経過を見ることが適当であると認める場合
二 前号に掲げる場合のほか、政令で定める場合において、指定入院医療機関の管理者が必要と認めるとき。
3 指定入院医療機関の管理者は、第四十二条第一項第一号又は第六十一条第一項第一号の決定により当該指定入院医療機関に入院している者が精神障害の医療以外の医療を受けるために他の医療施設に入院する必要がある場合には、その者を他の医療施設に入院させることができる。この場合において、厚生労働大臣は、第八十一条第一項の規定にかかわらず、当該入院に係る医療が開始された日の翌日から当該入院に係る医療が終了した日の前日までの間に限り、その者に対する同項に規定する医療を行わないことができる。
4 前項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。
(生活環境の調整)
第百一条 保護観察所の長は、第四十二条第一項第一号又は第六十一条第一項第一号の決定があったときは、当該決定を受けた者の社会復帰の促進を図るため、当該決定を受けた者及びその家族等の相談に応じ、当該決定を受けた者が、指定入院医療機関の管理者による第九十一条の規定に基づく援助並びに都道府県及び市町村(特別区を含む。以下同じ。)による精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第四十七条、第四十九条その他の精神障害者の保健又は福祉に関する法令の規定に基づく援助を受けることができるようあっせんする等の方法により、退院後の生活環境の調整を行わなければならない。
2 保護観察所の長は、前項の援助が円滑かつ効果的に行われるよう、当該指定入院医療機関の管理者並びに当該決定を受けた者の居住地を管轄する都道府県知事及び市町村長に対し、必要な協力を求めることができる。