刑法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第七十二号
公布年月日: 平成29年6月23日
法令の形式: 法律
刑法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
平成二十九年六月二十三日
内閣総理大臣 安倍晋三
法律第七十二号
刑法の一部を改正する法律
刑法(明治四十年法律第四十五号)の一部を次のように改正する。
目次中「姦淫かんいん」を「強制性交等」に改める。
第三条第五号中「第百七十九条」を「第百八十一条」に、「強かん」を「強制性交等」に、「準強姦、集団強姦等、未遂罪)、第百八十一条(」を「準強制性交等、監護者わいせつ及び監護者性交等、未遂罪、」に改め、同条第十二号中「名誉損」を「名誉毀損」に改め、同条第十三号中「第二百四十一条」を「第二百四十条」に、「、強盗強姦及び同致死)及び」を「)、第二百四十一条第一項及び第三項(強盗・強制性交等及び同致死)並びに」に改める。
第三条の二第一号中「第百七十九条」を「第百八十一条」に、「、強姦」を「、強制性交等」に、「準強姦、集団強姦等、未遂罪)及び第百八十一条(」を「準強制性交等、監護者わいせつ及び監護者性交等、未遂罪、」に改め、同条第六号中「及び第二百三十八条から第二百四十一条まで」を「、第二百三十八条から第二百四十条まで」に、「、強盗強姦」を「)並びに第二百四十一条第一項及び第三項(強盗・強制性交等」に改め、「これらの罪」の下に「(同条第一項の罪を除く。)」を加える。
第二編第二十二章の章名中「姦淫かんいん」を「強制性交等」に改める。
第百七十六条中「男女に」を「者に」に改める。
第百七十七条の見出しを「(強制性交等)」に改め、同条中「暴行」を「十三歳以上の者に対し、暴行」に、「十三歳以上の女子を姦淫かんいんした者は、強姦の罪とし、三年」を「性交、こう門性交又は口くう性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年」に、「女子を姦淫した」を「者に対し、性交等をした」に改める。
第百七十八条の見出し中「準強姦」を「準強制性交等」に改め、同条第二項中「女子」を「人」に、「姦淫した」を「性交等をした」に改める。
第百七十八条の二及び第百八十条を削る。
第百七十九条を第百八十条とし、第百七十八条の次に次の一条を加える。
(監護者わいせつ及び監護者性交等)
第百七十九条 十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。
2 十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第百七十七条の例による。
第百八十一条第一項中「若しくは第百七十八条第一項」を「、第百七十八条第一項若しくは第百七十九条第一項」に改め、同条第二項中「若しくは第百七十八条第二項」を「、第百七十八条第二項若しくは第百七十九条第二項」に、「女子」を「人」に、「五年」を「六年」に改め、同条第三項を削る。
第百八十二条中「姦淫させた」を「かん淫させた」に改める。
第二百二十九条中「、第二百二十五条の罪及びこれら」を「及び同条」に改め、「並びに同条第三項の罪」及び「、営利又は生命若しくは身体に対する加害の目的による場合を除き」を削り、同条ただし書を削る。
第二百四十一条を次のように改める。
(強盗・強制性交等及び同致死)
第二百四十一条 強盗の罪若しくはその未遂罪を犯した者が強制性交等の罪(第百七十九条第二項の罪を除く。以下この項において同じ。)若しくはその未遂罪をも犯したとき、又は強制性交等の罪若しくはその未遂罪を犯した者が強盗の罪若しくはその未遂罪をも犯したときは、無期又は七年以上の懲役に処する。
2 前項の場合のうち、その犯した罪がいずれも未遂罪であるときは、人を死傷させたときを除き、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思によりいずれかの犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
3 第一項の罪に当たる行為により人を死亡させた者は、死刑又は無期懲役に処する。
第二百四十三条中「まで及び」を「まで、」に、「第二百四十一条まで」を「第二百四十条まで及び第二百四十一条第三項」に改める。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。
(経過措置)
第二条 この法律の施行前にした行為の処罰については、なお従前の例による。
2 この法律による改正前の刑法(以下「旧法」という。)第百八十条又は第二百二十九条本文の規定により告訴がなければ公訴を提起することができないとされていた罪(旧法第二百二十四条の罪及び同条の罪をほう助する目的で犯した旧法第二百二十七条第一項の罪並びにこれらの罪の未遂罪を除く。)であってこの法律の施行前に犯したものについては、この法律の施行の際既に法律上告訴がされることがなくなっているものを除き、この法律の施行後は、告訴がなくても公訴を提起することができる。
3 旧法第二百二十九条本文の規定により告訴がなければ公訴を提起することができないとされていた罪(旧法第二百二十四条の罪及び同条の罪を幇助する目的で犯した旧法第二百二十七条第一項の罪並びにこれらの罪の未遂罪を除く。)であってこの法律の施行前に犯したものについてこの法律の施行後にする告訴は、略取され、誘拐され、又は売買された者が犯人と婚姻をしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、この法律の施行の際既に附則第四条の規定による改正前の刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第二百三十五条第二項に規定する期間が経過しているときは、この限りでない。
4 旧法第二百二十四条の罪及び同条の罪を幇助する目的で犯した旧法第二百二十七条第一項の罪並びにこれらの罪の未遂罪であってこの法律の施行前に犯したものについてこの法律の施行後にする告訴の効力については、なお従前の例による。
(盗犯等の防止及び処分に関する法律の一部改正)
第三条 盗犯等の防止及び処分に関する法律(昭和五年法律第九号)の一部を次のように改正する。
第四条中「第二百四十条前段ノ罪若ハ第二百四十一条前段ノ罪又ハ其ノ未遂罪」を「第二百四十条ノ罪(人ヲ傷シタルトキニ限ル)又ハ第二百四十一条第一項ノ罪」に改める。
(刑事訴訟法の一部改正)
第四条 刑事訴訟法の一部を次のように改正する。
第百五十七条の四第一項第一号中「第百七十八条の二」を「第百七十九条」に、「第二百四十一条前段」を「第二百四十一条第一項若しくは第三項」に改める。
第二百三十五条第一項ただし書中「次に掲げる」を「刑法第二百三十二条第二項の規定により外国の代表者が行う告訴及び日本国に派遣された外国の使節に対する同法第二百三十条又は第二百三十一条の罪につきその使節が行う」に改め、同項各号及び同条第二項を削る。
第二百九十条の二第一項第一号中「第百七十八条の二」を「第百七十九条」に、「第二百四十一条」を「第二百四十一条第一項若しくは第三項」に改める。
第三百十六条の三十三第一項第二号中「第百七十八条」を「第百七十九条」に改める。
(刑事訴訟法の一部改正に伴う経過措置)
第五条 附則第二条第一項の規定によりなお従前の例によることとされる場合における旧法第百七十八条の二の罪若しくはその未遂罪、旧法第百八十一条第三項の罪又は旧法第二百四十一条前段の罪若しくはその未遂罪の被害者は、この法律の施行の日から刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成二十八年法律第五十四号。以下この項において「刑事訴訟法等一部改正法」という。)附則第一条第四号に掲げる規定の施行の日(以下この項において「第四号施行日」という。)の前日までの間は、前条の規定による改正後の刑事訴訟法(次項において「新刑事訴訟法」という。)第百五十七条の四第一項の規定の適用については同項第一号に掲げる者とみなし、第四号施行日以後は、刑事訴訟法等一部改正法第二条の規定による改正後の刑事訴訟法第百五十七条の六第一項の規定の適用については同項第一号に掲げる者とみなす。
2 附則第二条第一項の規定によりなお従前の例によることとされる場合における旧法第百七十八条の二の罪若しくはその未遂罪、旧法第百八十一条第三項の罪又は旧法第二百四十一条の罪若しくはその未遂罪に係る事件は、新刑事訴訟法第二百九十条の二第一項の規定の適用については同項第一号に掲げる事件とみなす。
(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部改正)
第六条 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成十一年法律第百三十六号)の一部を次のように改正する。
別表第二号ヨ中「第二百四十一条」を「第二百四十条」に、「、強盗強かん及び同致死」を「)、第二百四十一条第一項(強盗・強制性交等)若しくは第三項(強盗・強制性交等致死」に改める。
(犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律の一部改正)
第七条 犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律(平成十二年法律第七十五号)の一部を次のように改正する。
第二十三条第一項第二号イ中「第百七十八条」を「第百七十九条」に、「強かん」を「強制性交等」に、「準強姦」を「準強制性交等、監護者わいせつ及び監護者性交等」に改める。
(心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律の一部改正)
第八条 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(平成十五年法律第百十号)の一部を次のように改正する。
第二条第一項第二号中「第百七十九条」を「第百八十条」に改める。
(検討)
第九条 政府は、この法律の施行後三年を目途として、性犯罪における被害の実情、この法律による改正後の規定の施行の状況等を勘案し、性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための施策の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
法務大臣 金田勝年
内閣総理大臣 安倍晋三