特定水道利水障害の防止のための水道水源水域の水質の保全に関する特別措置法をここに公布する。
御名御璽
平成六年三月四日
内閣総理大臣 細川護熙
法律第九号
特定水道利水障害の防止のための水道水源水域の水質の保全に関する特別措置法
目次
第一章
総則(第一条―第三条)
第二章
指定水域の水質の保全のための施策
第一節
指定水域の水質の保全に関する計画等(第四条―第六条)
第二節
指定水域の水質の保全に資する事業の実施等(第七条・第八条)
第三節
指定水域の水質の汚濁の防止のための規制等(第九条―第十九条)
第四節
生活排水対策の推進等(第二十条・第二十一条)
第三章
雑則(第二十二条―第二十七条)
第四章
罰則(第二十八条―第三十三条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、特定水道利水障害を防止する上で水道水源水域の水質の保全を図ることが重要であることにかんがみ、水道水源水域の水質の保全に関する基本方針を定めるとともに、特定水道利水障害の防止のための対策を実施しなければならない水道水源水域について、水質の保全に関し実施すべき施策に関する計画の策定、水質の保全に資する事業の実施、水質の汚濁の防止のための規制その他の措置を総合的かつ計画的に講ずることにより、水道水源水域の水質の保全を図り、もって国民の健康を保護することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「特定水道利水障害」とは、水道水(水道法(昭和三十二年法律第百七十七号)第三条第一項に規定する水道により供給される水をいう。以下同じ。)が、同法第四条第一項第三号の物質のうち第四項の水道原水の浄水処理に伴い副次的に生成する物質であって人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるものとして政令で定めるものに係る同号に掲げる要件を満たさないことをいう。
2 この法律において「特定項目」とは、前項の政令で定める物質の生成の原因となる物質による水の汚染状態の程度を示す項目として政令で定める項目をいう。
3 この法律において「水道事業者」とは、水道法第六条第一項の規定による認可を受けて同法第三条第二項に規定する水道事業(同条第五項に規定する水道用水供給事業者により供給される水道水のみをその用に供するものを除く。)を経営する者及び同条第五項に規定する水道用水供給事業者をいう。
4 この法律において「水道水源水域」とは、水質汚濁防止法(昭和四十五年法律第百三十八号)第二条第一項に規定する公共用水域(以下「公共用水域」という。)であってその水が前項の水道事業又は水道法第三条第四項に規定する水道用水供給事業のための原水(以下「水道原水」という。)として取水施設により取り入れられるもの及びその公共用水域にその水が流入する公共用水域をいう。
5 この法律において「水道水源特定施設」とは、水質汚濁防止法第二条第二項に規定する特定施設(以下「特定施設」という。)以外の施設であって、特定水道利水障害を生じさせるおそれがある程度の汚水又は廃液を排出するものとして政令で定めるものをいう。
6 この法律において「水道水源特定事業場」とは、特定施設又は水道水源特定施設(第十二条第二項を除き、以下「特定施設等」という。)を設置する工場又は事業場であって、政令で定める規模以上のものをいう。
7 この法律において「構造等基準に係る施設」とは、水道水源特定事業場に設置されている特定施設以外の特定施設であって、第四条第一項の指定水域の水質の保全上その構造及び使用の方法に係る規制を行う必要があるものとして政令で定めるものをいう。
8 この法律において「排出水」とは、第四条第一項の指定地域内の水道水源水域に排出される水をいう。
(基本方針)
第三条 国は、特定水道利水障害の防止のための水道水源水域の水質の保全に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。
2 基本方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 水道水源水域の水質の保全に関する基本的な指針
二 第五条第一項の水質保全計画の策定その他次条第一項の指定水域の水質の保全のための施策に関する基本的な事項
三 前二号に掲げるもののほか、水道水源水域の水質の保全に関する重要事項
3 内閣総理大臣は、基本方針の案を作成して、閣議の決定を求めなければならない。
4 内閣総理大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、基本方針を公表しなければならない。
5 前二項の規定は、基本方針の変更について準用する。
第二章 指定水域の水質の保全のための施策
第一節 指定水域の水質の保全に関する計画等
(指定水域及び指定地域)
第四条 内閣総理大臣は、都道府県知事の申出に基づき、水道水源水域のうち、その水質の汚濁の状況、その水を水道原水として利用する水道水の水質の状況、水道事業者が講ずる特定水道利水障害を防止するための措置その他の事情からみてその水を水道原水として利用する水道水において特定水道利水障害が生ずるおそれがあると認められるものであって、水道事業者がその水質の汚濁の状況に応じた措置を講ずることにより特定水道利水障害を防止することが困難であり、かつ、特定水道利水障害を防止するため水質の保全に関する施策を総合的かつ計画的に講ずる必要があると認められるものを指定水域として指定し、及び指定水域の水質の汚濁に関係があると認められる地域を指定地域として指定することができる。
2 水道事業者は、水道水源水域の水質の汚濁によりその供給する水道水において特定水道利水障害が生ずるおそれがあると認められる場合において、その水質の汚濁の状況に応じた措置を講ずることにより特定水道利水障害を防止することが困難であるときは、総理府令で定めるところにより、その水道水源水域に係る水道原水の取水地点をその区域に含む都道府県の知事に対し、前項の申出をするよう要請することができる。
3 水道事業者が特定水道利水障害に関し水道原水水質保全事業の実施の促進に関する法律(平成六年法律第八号)第四条第一項の規定による要請をしたときは、その水道事業者は、前項の規定による要請をしたものとみなす。この場合において、同条第一項の規定による要請を受けた都府県が前項の都府県と異なるときは、その要請を受けた都府県の知事は、その旨を同項の都府県の知事に対し通知しなければならない。
4 内閣総理大臣は、第一項の規定による指定をしようとするときは、その指定に係る水域又は地域を管轄する都道府県知事(同項の申出をした都道府県知事を除く。)の意見を聴かなければならない。
5 都道府県知事は、第一項の申出をし、又は前項の意見を述べようとするときは、関係市町村長の意見を聴くとともに、その申出又は意見に係る水道水源水域の水を水道原水として利用する水道事業者(第二項の規定による要請をした水道事業者を除く。)がその水道水源水域の水質の汚濁の状況に応じた措置を講ずることにより特定水道利水障害を防止することが困難であるかどうかについて、総理府令で定めるところにより、その水道事業者の意見を聴かなければならない。
6 内閣総理大臣が第一項の規定による指定をするには、閣議の決定を経なければならない。
7 内閣総理大臣は、第一項の規定による指定をするときは、その旨を官報で公示しなければならない。
8 第一項の規定による指定の変更又は解除は、都道府県知事の申出に基づき行うものとする。この場合において、都道府県知事は、事情の変化により同項の規定による指定の変更又は解除の必要が生じたと認めるときは、その旨の申出をしなければならない。
9 第二項から第七項までの規定は第一項の規定による指定の変更について、第四項から第七項までの規定は第一項の規定による指定の解除について準用する。この場合において、第二項中「前項の申出」とあり、第四項中「同項の申出」とあるのは「第八項の申出」と、第五項中「水道事業者(第二項の規定による要請をした水道事業者を除く。)」とあるのは第一項の規定による指定の解除については「水道事業者」と読み替えるものとする。
(水質保全計画)
第五条 都道府県知事は、指定水域の水質の保全のための施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、基本方針に基づき、指定地域において特定水道利水障害を防止するため指定水域の水質の保全に関し実施すべき施策に関する計画(以下「水質保全計画」という。)を定めなければならない。
2 水質保全計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 指定水域の水質の保全に関する方針
二 水道事業者が指定水域の水質の汚濁の状況に応じて講じ、及び講じようとする措置
三 指定水域の水質の保全に関する目標
四 下水道、し尿処理施設及び浄化槽の整備、しゅんせつその他の指定水域の水質の保全に資する事業に関する事項
五 指定水域の水質の汚濁の防止のための規制その他の措置に関する事項
六 前各号に掲げるもののほか、指定水域の水質の保全のために必要な措置に関する事項
3 前項第二号に規定する措置は、前条第二項の規定による要請をし、又は同条第五項の意見を述べた水道事業者が講ずべき措置であって、その要請をし、又は意見を述べた際その要請又は意見に係る水道水源水域の水質の汚濁の状況に応じて講じ、及び講じようとしているものとする。
4 都道府県知事は、水質保全計画を定めるに当たっては、水道事業者の第二項第二号に規定する措置を踏まえて指定水域の特性及び汚濁原因に応じた均衡ある対策が適切に講じられるよう配慮しなければならない。
5 指定地域において水道原水水質保全事業の実施の促進に関する法律第五条第一項の規定により都道府県計画が定められ、又は同法第七条第一項の規定により河川管理者事業計画が定められるときは、水質保全計画は、その都道府県計画又は河川管理者事業計画と一体のものとして作成することができる。
6 指定地域が二以上の都府県の区域にわたる場合にあっては、関係都府県知事は、その協議によって水質保全計画を定めるものとする。
7 都道府県知事は、水質保全計画を定めようとするときは、都道府県環境審議会、その水質保全計画に定められる第二項第四号に規定する事業を実施する者(国を除く。)及び関係市町村長から意見を聴き、指定水域の水を水道原水として利用する水道事業者から第二項第二号に掲げる事項について聴取し、かつ、指定地域内の水道水源水域を管理する河川管理者(河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)第七条(同法第百条において準用する場合を含む。)に規定する河川管理者をいう。)に協議しなければならない。
8 都道府県知事は、水質保全計画を定めようとするときは、内閣総理大臣に協議しなければならない。この場合において、内閣総理大臣は、協議を受けた水質保全計画の案を公害対策会議に報告するとともに、その水質保全計画の案について公害対策会議の議を経て決定した方針に基づきその協議に応じなければならない。
9 都道府県知事は、前項の規定による協議と併せて、指定水域の水質の保全に関する普及啓発並びに指定水域及び水道水の水質の測定に関する事項であってその協議に係る水質保全計画の達成に必要なものについて、総理府令で定めるところにより、内閣総理大臣に報告しなければならない。
10 都道府県知事は、水質保全計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
11 水質汚濁防止法第二十一条第二項の規定は、第七項の規定により都道府県環境審議会の意見を聴く場合について準用する。この場合において、同条第二項中「前項の事務を行う」とあるのは、「特定水道利水障害の防止のための水道水源水域の水質の保全に関する特別措置法第五条第七項の規定により意見を述べる」と読み替えるものとする。
12 第四項から前項までの規定は、水質保全計画の変更について準用する。この場合において、第九項中「前項」とあるのは「第十二項において準用する前項」と、前項中「規定は、第七項」とあるのは「規定は、次項において準用する第七項」と、「特定水道利水障害の防止のための水道水源水域の水質の保全に関する特別措置法第五条第七項」とあるのは「特定水道利水障害の防止のための水道水源水域の水質の保全に関する特別措置法第五条第十二項において準用する同条第七項」と読み替えるものとする。
(水質保全計画の達成の推進)
第六条 国及び地方公共団体は、水質保全計画の達成に必要な措置を講ずるように努めるものとする。
第二節 指定水域の水質の保全に資する事業の実施等
(指定水域の水質の保全に資する事業の実施)
第七条 水質保全計画に定められた事業は、当該事業に関する法律(これに基づく命令を含む。)の規定に従い、国、地方公共団体その他の者が実施するものとする。
(助言その他の措置)
第八条 国は、地方公共団体が水質保全計画に定められた事業を円滑に実施することができるよう、地方公共団体に対し、助言その他必要な援助を行うように努めなければならない。
第三節 指定水域の水質の汚濁の防止のための規制等
(基準の設定)
第九条 都道府県知事は、指定地域にあっては、水質保全計画に基づき、水道水源特定事業場から排出される排出水の特定項目で示される汚染状態について、総理府令で定めるところにより、指定水域の水質の汚濁を防止するための排水基準(以下「特定排水基準」という。)を定めなければならない。
2 特定排水基準は、水道水源特定事業場について、特定項目の項目ごとに定める許容限度とする。
3 都道府県知事は、水質保全計画に基づき、指定地域内の構造等基準に係る施設について、総理府令で定めるところにより、指定水域の水質の汚濁を防止するための構造及び使用の方法に関する基準(以下「構造等基準」という。)を定めなければならない。
4 都道府県知事は、特定排水基準及び構造等基準を定めるときは、公示しなければならない。これを変更し、又は廃止するときも、同様とする。
(基準の遵守義務等)
第十条 水道水源特定事業場から排出水を排出する者は、その水道水源特定事業場の排水口(排出水を排出する場所をいう。以下同じ。)における排出水について特定排水基準を遵守しなければならない。
2 水道水源特定事業場から排出水を排出する者は、総理府令で定めるところにより、その排出水の特定項目で示される汚染状態を測定し、その結果を記録しておかなければならない。
3 指定地域において構造等基準に係る施設を設置している者は、その施設に係る構造等基準を遵守しなければならない。
(特定施設等の設置の届出)
第十一条 工場又は事業場から排出水を排出する者は、水道水源特定施設(次項に規定するものを除く。次条第一項において同じ。)を設置しようとするときは、総理府令で定めるところにより、次に掲げる事項を都道府県知事に届け出なければならない。
一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
二 工場又は事業所の名称及び所在地
三 水道水源特定施設の種類
四 水道水源特定施設の構造
五 水道水源特定施設の使用の方法
六 汚水等(特定施設等から排出される汚水又は廃液をいう。以下同じ。)の処理の方法
七 排出水の特定項目に係る汚染状態及び量
八 その他総理府令で定める事項
2 工場又は事業場から排出水を排出する者は、特定施設を設置し、又は水質汚濁防止法第二条第三項に規定する指定地域特定施設(瀬戸内海環境保全特別措置法(昭和四十八年法律第百十号)第十二条の二の政令で定める施設及び湖沼水質保全特別措置法(昭和五十九年法律第六十一号)第十四条の政令で定める施設を含む。)であって水道水源特定施設であるものを設置しようとするときは、総理府令で定めるところにより、次に掲げる事項を都道府県知事に届け出なければならない。
一 排出水の特定項目に係る汚染状態及び量
二 その他総理府令で定める事項
(経過措置)
第十二条 一の施設が水道水源特定施設となった際現に指定地域においてその施設を設置している者(設置の工事をしている者を含む。以下この条において同じ。)又は一の地域が指定地域となった際現にその地域において水道水源特定施設を設置している者であって、その水道水源特定施設を設置する工場又は事業場から排出水を排出するものは、その施設が水道水源特定施設となった日又はその地域が指定地域となった日から六十日以内に、総理府令で定めるところにより、前条第一項各号に掲げる事項を都道府県知事に届け出なければならない。
2 一の施設が特定施設又は前条第二項に規定する水道水源特定施設(以下この項において「特定施設等」という。)となった際現に指定地域においてその施設を設置している者又は一の地域が指定地域となった際現にその地域において特定施設等を設置している者であって、その特定施設等を設置する工場又は事業場から排出水を排出するものは、その施設が特定施設等となった日又はその地域が指定地域となった日から六十日以内に、総理府令で定めるところにより、前条第二項各号に掲げる事項を都道府県知事に届け出なければならない。
(特定施設等の構造の変更等の届出)
第十三条 第十一条又は前条の規定による届出をした者は、その届出に係る第十一条第一項第四号から第八号までに掲げる事項又は同条第二項各号に掲げる事項の変更をしようとするときは、総理府令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
2 第十一条第一項又は前条第一項の規定による届出をした者は、その届出に係る第十一条第一項第一号若しくは第二号に掲げる事項に変更があったとき、又はその届出に係る水道水源特定施設の使用を廃止したときは、その日から三十日以内に、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
(地位の承継)
第十四条 水質汚濁防止法第十一条第一項及び第二項の規定は、第十一条又は第十二条の規定による届出をした者の地位の承継について準用する。
2 前項において準用する水質汚濁防止法第十一条第一項又は第二項の規定により前項に規定する者の地位を承継した者は、その承継があった日から三十日以内に、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
(勧告及び命令)
第十五条 都道府県知事は、第十一条又は第十三条第一項の規定による届出があった場合において、その届出に係る特定施設等を設置する水道水源特定事業場の排水口において排出水の汚染状態が特定排水基準に適合しないと認めるときは、その届出を受理した日から三十日以内に限り、その届出をした者に対し、その特定施設等の構造若しくは使用の方法又は汚水等の処理の方法に関する計画の変更を勧告することができる。
2 都道府県知事は、水道水源特定事業場から排出水を排出する者が、その水道水源特定事業場の排水口において汚染状態が特定排水基準に適合しない排出水を排出していると認めるときは、その者に対し、期限を定めて、その水道水源特定事業場に係る特定施設等の構造若しくは使用の方法又は汚水等の処理の方法を改善し、その水道水源特定事業場からの排出水の排出を一時停止し、その他必要な措置をとるべきことを勧告することができる。
3 都道府県知事は、指定地域において構造等基準に係る施設を設置している者がその施設に係る構造等基準を遵守していないと認めるときは、その者に対し、期限を定めて、その施設の構造又は使用の方法を改善すべきことを勧告することができる。
4 都道府県知事は、第一項の規定による勧告を受けた者がその勧告に従わないで特定施設等を使用しているとき、又は前二項の規定による勧告を受けた者がその勧告に従わないときは、これらの者に対し、期限を定めて、これらの勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。
5 前三項の規定は、特定排水基準の適用の際現に特定施設等を設置している者(設置の工事をしている者を含む。)に係る水道水源特定事業場及び構造等基準の適用の際現に構造等基準に係る施設を設置している者(設置の工事をしている者を含む。)に係る構造等基準に係る施設については、これらの基準の適用の日から六月間(その水道水源特定事業場に係る特定施設等又はその構造等基準に係る施設(以下この項において「適用除外に係る特定施設等」という。)が政令で定める施設である場合にあっては、一年間)は、適用しない。ただし、これらの基準の適用の際現に水道水源特定事業場又は構造等基準に係る施設について地方公共団体の条例の規定で第一項から第三項までの規定に相当するものが適用されているとき、これらの基準の適用の日以降適用除外に係る特定施設等について第十一条第一項第四号から第八号までに掲げる事項又は同条第二項各号若しくは水質汚濁防止法第五条第一項第四号から第六号までに掲げる事項の変更(総理府令で定める軽微な変更を除く。)があったとき、並びにこれらの基準の適用の日以降その水道水源特定事業場に適用除外に係る特定施設等以外の特定施設等が設置されたときは、この限りでない。
6 都道府県知事は、小規模の事業者に対する第一項から第四項までの規定の適用に当たっては、その者の事業活動の遂行に著しい支障を生ずることのないようこれらの規定による勧告又は命令の内容について特に配慮しなければならない。
(適用除外等)
第十六条 鉱山保安法(昭和二十四年法律第七十号)第八条第一項に規定する建設物、工作物その他の施設である特定施設等を設置する同法第二条第二項本文に規定する鉱山から排出水を排出する者及び当該鉱山に当該特定施設等を設置する者に関しては当該鉱山について、電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第二条第七項に規定する電気工作物である特定施設等を設置する工場又は事業場から排出水を排出する者及び当該特定施設等を設置する者に関しては当該特定施設等について、第十一条から前条までの規定を適用せず、これらの法律の相当規定の定めるところによる。
2 前項に規定する法律に基づく権限を有する国の行政機関の長(以下この条において単に「行政機関の長」という。)は、第十一条、第十三条又は第十四条第二項の規定に相当する鉱山保安法又は電気事業法の規定による前項に規定する特定施設等に係る許可若しくは認可の申請又は届出があったときは、その許可若しくは認可の申請又は届出に係る事項のうちこれらの規定による届出事項に該当する事項を当該特定施設等を設置する工場又は事業場の所在地を管轄する都道府県知事に通知するものとする。
3 都道府県知事は、第一項に規定する特定施設等に係る排出水が特定排水基準に適合していないと認めるとき、又は当該特定施設等がその特定施設等に係る構造等基準に適合していないと認めるときは、行政機関の長に対し、前条の規定に相当する鉱山保安法又は電気事業法の規定による措置をとるべきことを要請することができる。
4 水質汚濁防止法第二十三条第五項の規定は、前項の規定による要請について準用する。
(指導等)
第十七条 都道府県知事は、水質保全計画に基づき、水道水源特定事業場から排出水を排出する者及び構造等基準に係る施設を設置する者以外の者であって、指定地域において汚水、廃液その他の物で指定水域における第二条第一項の政令で定める物質の生成の原因となる物質による水質の汚濁の原因となるものを水道水源水域に排出するものに対し、指定水域の水質の保全のために必要な指導、助言及び勧告をすることができる。
(報告及び検査)
第十八条 都道府県知事は、この法律の施行に必要な限度において、水道水源特定事業場から排出水を排出する者又は指定地域において構造等基準に係る施設を設置する者に対し、特定施設等の状況その他必要な事項に関し報告を求め、又はその職員に、特定施設等を設置する場所に立ち入り、その特定施設等その他の物件を検査させることができる。
2 水質汚濁防止法第二十二条第三項及び第四項の規定は、前項の規定による立入検査について準用する。
(事業者への支援)
第十九条 国は、指定地域において事業者が行う汚水等による水質の汚濁の防止のための施設の整備について、必要な資金のあっせん、技術的な助言その他の措置を講ずるように努めなければならない。
2 前項の措置を講ずるに当たっては、中小企業者に対する特別の配慮がなされなければならない。
第四節 生活排水対策の推進等
(生活排水対策の推進)
第二十条 都道府県知事は、水質保全計画に基づき、水質汚濁防止法第十四条の六第一項の規定による生活排水対策重点地域の指定その他の生活排水対策の実施を推進しなければならない。
(普及啓発等)
第二十一条 国は、教育活動、広報活動等を通じて、水道水源水域の水質の保全に関し、普及啓発を図るとともに、国民の協力を求めるように努めなければならない。
第三章 雑則
(資料の提出の要求等)
第二十二条 環境庁長官は、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、関係地方公共団体の長に対し、必要な資料の提出及び説明を求めることができる。
2 都道府県知事は、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長又は関係地方公共団体の長に対し、必要な資料の送付その他の協力を求め、又は指定水域の水質の保全に関して意見を述べることができる。
3 河川管理者その他指定地域内の水道水源水域の管理を行う者で政令で定めるものは、この法律の施行に関してその水道水源水域の管理上必要があると認めるときは、都道府県知事に対し、指定水域の水質の保全に関して意見を述べることができる。
(水道事業者の水道水の水質記録の提出の要求)
第二十三条 都道府県知事は、水質保全計画の達成に資するため必要があると認めるときは、第五条第二項第二号に規定する水道事業者に対し、指定水域の水を水道原水として利用する水道水について水道法第二十条第二項の規定により作成した記録の提出を求めることができる。
(測定計画)
第二十四条 都道府県知事は、水道水源水域における特定項目で示される水質の汚濁の状況が的確に把握されるよう水質汚濁防止法第十六条第一項の測定計画を作成するものとする。
(研究の推進等)
第二十五条 国は、特定水道利水障害の防止のために必要な汚水等の処理に関する技術の研究その他水道水源水域の水質の保全に関する研究を推進し、その成果の普及に努めなければならない。
(経過措置)
第二十六条 この法律の規定に基づき政令又は総理府令を制定し、又は改廃する場合においては、その政令又は総理府令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。
(事務の委任等)
第二十七条 この法律の規定により都道府県知事の権限に属する事務(第四条第一項及び第八項、第五条第一項、第九条第一項及び第三項、第二十三条並びに第二十四条に規定する事務を除く。)は、指定地域の全部又は一部が政令で定める市の区域内にある場合には、その区域については、政令で定めるところにより、当該市の長に委任することができる。
2 前項の政令で定める市の長は、この法律の施行に必要な事項で総理府令で定めるものを都道府県知事に通知しなければならない。
第四章 罰則
第二十八条 第十五条第四項の規定による命令に違反した者(次条に規定する者を除く。)は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第二十九条 第十五条第三項の規定による勧告に係る同条第四項の規定による命令に違反した者は、五十万円以下の罰金に処する。
第三十条 第十一条又は第十三条第一項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、三十万円以下の罰金に処する。
第三十一条 次の各号のいずれかに該当する者は、二十万円以下の罰金に処する。
一 第十二条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
二 第十八条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
第三十二条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第二十八条から前条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。
第三十三条 第十三条第二項又は第十四条第二項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、十万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(経過措置)
第二条 環境基本法(平成五年法律第九十一号)附則ただし書に規定する規定が施行されるまでの間においては、第五条第七項及び第十一項中「都道府県環境審議会」とあるのは、「都道府県公害対策審議会」とする。
(環境庁設置法の一部改正)
第三条 環境庁設置法(昭和四十六年法律第八十八号)の一部を次のように改正する。第四条第十五号中「及び特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律(平成四年法律第百八号)」を「、特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律(平成四年法律第百八号)及び特定水道利水障害の防止のための水道水源水域の水質の保全に関する特別措置法(平成六年法律第九号)」に改める。
内閣総理大臣 細川護熙